説明

ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法

【課題】トランス不飽和脂肪酸含有量が低く、色相及びジアシルグリセロール特有の風味の良好なジアシルグリセロール高含有油脂を効率良く製造する方法の提供。
【解決手段】原料油脂を酵素分解法により加水分解して得られる脂肪酸とグリセリンとをエステル化反応させることによりジアシルグリセロール高含有油脂を製造する方法であって、未脱臭油脂を50%以上含有する原料油脂を使用し、且つエステル化反応後に、脱臭時間(x)と脱臭温度(y)の関係が、次式(i)及び(ii);
(i)y≧−2.59x+566
(ii)y≦617x-0.0455 (但し、475≦y≦563)
(ここで、xは脱臭時間(分)、yは脱臭温度(K)を示す。)
を満たす範囲内で脱臭処理を行うジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアシルグリセロールを高濃度に含む油脂は、体脂肪燃焼作用等の生理作用を有することから、食用油として広く使用されている。常法により製造されるジアシルグリセロール高含有油脂の中には、脂肪酸、モノアシルグリセロール、有臭成分等の不純物が含まれており、ジアシルグリセロール高含有油脂を食用油として使用するためにはこれらを除去する事による風味改善が必要である。そのため、高温減圧下で水蒸気と接触させる、いわゆる脱臭操作が一般的に行われている(特許文献1)。
【0003】
ジアシルグリセロール高含有油脂は、通常の脱臭操作では、温度が低い場合は、不純物の留去効果が小さいため、風味が悪く、脂肪酸、モノアシルグリセロールも残留してしまう。一方、不純物を留去するために温度を高くした場合は不均化反応等が生じることにより、モノアシルグリセロール、トリアシルグリセロールが生成し、ジアシルグリセロール含量が低下し、また、トランス不飽和脂肪酸も増加してしまうという問題が生じる。
【0004】
トランス不飽和脂肪酸含量が少ないジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法として、原料油脂を高圧分解法と酵素分解法を組み合わせて加水分解して脂肪酸を製造し、当該脂肪酸とグリセリンをエステル化するという方法がある(特許文献2)。また、薄膜式及びトレイ式の装置を用いて脱臭することにより、トランス酸含量の低い食用油脂を製造するという方法もある(特許文献3)。
【特許文献1】特公平3−7240号公報
【特許文献2】特開2006−137923号公報
【特許文献3】特開2007−14263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジアシルグリセロール高含有油脂を製造する際に、トランス不飽和脂肪酸の生成を抑制する方法について検討したところ、前述の特許文献2の方法では、原料油脂を加水分解する際に高圧分解法を伴うことから必ずしも十分ではないことが判明した。また、原料油脂を加水分解する際に酵素分解法のみにより行うと、得られた脂肪酸とグリセリンとを酵素エステル化反応させたジアシルグリセロールは、風味や色相の点で満足できるものではないという課題があることが判明した。
【0006】
ジアシルグリセロール高含有油脂の脱臭操作においては、ジアシルグリセロールを高純度に維持するため、また、高温によりトランス不飽和脂肪酸の生成速度も大きくなるため、脱臭操作は中温で行う必要があったが、脱臭条件によっては、ジアシルグリセロール特有の旨味やコク味等の風味の点で必ずしも十分に満足いくものが得られず、トランス不飽和脂肪酸の生成も抑制できないことが判明した。
一方、トリグリセリド高含有油脂の脱臭の場合と異なり、ジアシルグリセロール高含有油脂の脱臭の場合、不純物成分のモノアシルグリセロールは、脱臭工程での不均化反応による生成と、留出による除去が競争になる問題点があり、また、トリアシルグリセロールと比べて、ジアシルグリセロールの方が疎水性が弱いため、脂肪酸、モノアシルグリセロールとの親和性が大きく、留去しにくい性質を有している。
【0007】
このようにジアシルグリセロール高含有油脂はトリアシルグリセロール高含有油脂に比べ、不純物除去率を上げるに伴って、油脂収率が大きく低下する、トランス不飽和脂肪酸が増加するという問題を有していた。
従って、本発明の目的は、トランス不飽和脂肪酸含有量が低く、色相及び風味の良好なジアシルグリセロール高含有油脂を効率良く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ジアシルグリセロール高含有油脂の脱臭操作について種々検討してきたところ、未脱臭油脂が50質量%以上の原料油脂を用い、エステル化反応後に、脱臭時間と脱臭温度が一定範囲内となるよう脱臭処理を行うことにより、トランス不飽和脂肪酸含有量が低く、色相及び風味の改善されたジアシルグリセロール高含有油脂が効率よく得られることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、原料油脂を酵素分解法により加水分解して得られる脂肪酸とグリセリンとをエステル化反応させることによりジアシルグリセロール高含有油脂を製造する方法であって、未脱臭油脂を50質量%以上含有する原料油脂を使用し、且つエステル化反応後に、脱臭時間(x)と脱臭温度(y)の関係が、次式(i)及び(ii);
(i)y≧−2.59x+566
(ii)y≦617x-0.0455 (但し、475≦y≦563)
(ここで、xは脱臭時間(分)、yは脱臭温度(K)を示す。)
を満たす範囲内で脱臭処理を行うジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トランス不飽和脂肪酸含有量が低く、良好な色相及び風味を有するジアシルグリセロール高含有油脂を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては、油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含有量を低減させ、かつ旨味、コク味等の風味を改善する点から、未脱臭油脂を50質量%(以下、単に「%」で示す)以上含有する原料油脂を用いる。より好ましい未脱臭油脂の含有量は60%以上、特に75〜100%である。本発明において未脱臭油脂とは、原料油脂の精製処理において脱臭を行っていない油脂をいう。脱臭とは、加熱下に減圧水蒸気蒸留を行うことにより有臭成分を除去する操作をいう。
【0012】
原料油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよい。具体的な原料としては、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、大豆油、米油、紅花油、綿実油、牛脂、あまに油、魚油等を挙げることができる。また、これらの油脂を分別、混合したもの、水素添加や、エステル交換反応などにより脂肪酸組成を調整したものも原料として利用できるが、水素添加していないものであることが、油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させる点から好ましい。
【0013】
また、原料油脂は、それぞれの原料となる植物、又は動物から搾油後、油分以外の固形分を濾過や遠心分離等により除去するのが好ましい。次いで、水、場合によっては更に酸を添加混合した後、遠心分離等によってガム分を分離することにより脱ガムすることが好ましい。また、原料油脂は、アルカリを添加混合した後、水洗し脱水することにより脱酸を行うことが好ましい。更に、原料油脂は、ジアシルグリセロール高含有油脂の刺激感等を低減させる点から、活性白土等の吸着剤と接触させた後、吸着剤を濾過等により分離することにより脱色を行うことが好ましい。これらの処理は、以上の順序で行うことが好ましいが、順序を変更しても良い。また、この他に、原料油脂は、ろう分の除去のために、低温で固形分を分離するウインタリングを行っても良い。また、原料油脂の一部として、脱臭を行った油脂を使用しても良い。
【0014】
本発明においては、原料油脂は、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が1.5%以下、更に1%以下、特に0.5%以下のものを用いることが、加水分解後の脂肪酸類の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させる点から好ましい。ここで、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量は、油脂を2種以上使用する場合は、それらの合計量中の含有量である。(実施例中に記載)
【0015】
本発明においては、未脱臭油脂を50%以上含有する原料油脂を酵素分解法により加水分解する。酵素分解法により原料油脂を加水分解し、得られた脂肪酸とグリセリンとを酵素を用いてエステル化反応させ、且つ脱臭時間と脱臭温度が一定範囲内となるよう脱臭処理を行うことで、ジアシルグリセロール高含有油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量を低減させることができ、また旨味、コク味等の風味が良好な油脂が得られる。ここで、「酵素分解法」とは、原料油脂に水を加えて、リパーゼ等の酵素を触媒として用い、低温の条件で反応することにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法をいう。
【0016】
原料油脂の加水分解の方法としては、酵素分解法を用いるが、得られる最終製品の品質を大きく低下させない範囲で、高温高圧分解法を用いても良い。具体的には、加水分解で得られる脂肪酸の量として全体の30%未満に相当する量、好ましくは10%未満に相当する量は、高温高圧分解法を用いても良い。この場合、酵素分解法と高温高圧分解法のどちらを先に行っても良いが、酵素分解法を先に行うことが、高分解率を達成できる点から好ましい。ここで、「高温高圧分解法」とは、原料油脂を高温高圧の状態で水と接触させて反応させることにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法をいう。高温高圧分解法による加水分解は、回分式、連続式、又は半連続式で行うことができ、部分的に加水分解した脂肪酸類と水の装置内への供給は、並流式、向流式どちらでもよい。
【0017】
酵素分解法で使用する酵素としては、リパーゼが好ましい。リパーゼは、動物由来、植物由来のものはもとより、微生物由来の市販リパーゼ、更にリパーゼを固定化した固定化酵素を使用することもできる。例えば、油脂分解用酵素は、リゾプス(Rizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida) 属等の微生物起源のリパーゼ及び膵臓リパーゼ等の動物リパーゼが挙げられる。高分解率を得るためには位置特異性のない(ランダム型)のリパーゼが良く、微生物起源ではシュードモナス(Pseudomonas)属、及びキャンディダ(Candida)属等が良い。
【0018】
更に、油脂の酵素分解法による加水分解は、酵素を担体に固定化した固定化酵素を用いることが酵素活性を有効利用できる点から好ましい。固定化酵素は、固定化担体にリパーゼが担持されたものを用いることが好ましい。固定化担体としては、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体、セラミックスパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等が挙げられるが、特に保水力が高い点からイオン交換樹脂が好ましい。また、イオン交換樹脂の中でも、大きな表面積を有することにより酵素の吸着量を高くできるという点から、多孔質であることが好ましい。
【0019】
固定化担体として用いる樹脂の粒子径は100〜1000μmが好ましく、更に250〜750μmが好ましい。細孔径は10〜150nmが好ましく、更に10〜100nmが好ましい。材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられ、特にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(例えば、Rohm and Hass社製Duolite A−568)が酵素吸着性向上の点から好ましい。
【0020】
酵素を固定化する場合、酵素を担体に直接吸着してもよいが、高活性を発現するような吸着状態にするため、酵素吸着前にあらかじめ担体を脂溶性脂肪酸又はその誘導体で処理して使用してもよい。使用する脂溶性脂肪酸としては、炭素数8〜18の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の、水酸基が置換していてもよい脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、リシノール酸、イソステアリン酸等が挙げられる。またその誘導体としては、これらの脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステル、リン脂質、及びこれらのエステルにエチレンオキサイドを付加した誘導体が挙げられる。具体的には、上記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、モノグリセライド、ジグリセライド、それらのエチレンオキサイド付加体、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体は、2種以上を併用してもよい。
【0021】
これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体と担体の接触法としては、水又は有機溶剤中の担体にこれらを直接加えてもよいが、分散性を良くするため、有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散、溶解させた後、水に分散させた担体に加えてもよい。この有機溶剤としては、クロロホルム、ヘキサン、エタノール等が挙げられる。脂溶性脂肪酸又はその誘導体の使用量は、担体100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して1〜500部、更に10〜200部が好ましい。接触温度は273〜373K、更に293〜333Kが好ましく、接触時間は5分〜5時間程度が好ましい。この処理を終えた担体は、ろ過して回収するが、乾燥してもよい。乾燥温度は288〜373Kが好ましく、減圧乾燥を行ってもよい。
【0022】
酵素の固定化を行う温度は、酵素の特性によって決定することができるが、酵素の失活が起きない温度、すなわち273〜333K、更に278〜313Kが好ましい。また固定化時に使用する酵素溶液のpHは、酵素の変性が起きない範囲であればよく、温度同様酵素の特性によって決定することができるが、pH3〜9が好ましい。このpHを維持するためには緩衝液を使用するが、緩衝液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液等が挙げられる。上記酵素溶液中の酵素濃度は、固定化効率の点から酵素の飽和溶解度以下で、かつ十分な濃度であることが好ましい。また酵素溶液は、必要に応じて不溶部を遠心分離で除去した上澄や、限外濾過等によって精製したものを使用することもできる。また用いる酵素質量はその酵素活性によっても異なるが、担体100部に対して5〜1000部、更に10〜500部が好ましい。
【0023】
酵素の固定化後に加水分解反応に適した状態にする点から、酵素溶液から濾過により、固定化酵素を回収し、余分な水分を除去したのち、乾燥することなしに反応基質となる原料油脂に接触させることが好ましい。接触後の固定化酵素中の水分は、用いる担体の種類によっても異なるが、固定化担体100部に対し0.1〜100部、更に1〜50部、特に5〜50部であることが好ましい。このときカラム等の充填容器に封入して、ポンプ等により油脂を循環しても良いし、油脂中に固定化酵素を分散させても良い。接触させる温度は273〜333Kが良く、酵素の特性によって選ぶことができる。更に、接触する時間は1時間〜48時間程度で良く、この接触が終わったところで濾過し、固定化酵素を回収することが、工業的生産性の点から好ましい。
【0024】
固定化酵素の加水分解活性は20U/g以上、更に100〜10000U/g、特に500〜5000U/gの範囲であることが好ましい。ここで酵素の1Uは、313Kにおいて、油脂:水=100:25(質量比)の混合液を攪拌混合しながら30分間加水分解をさせたとき、1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素の分解能を示す。
【0025】
本発明において、油脂の酵素分解法による加水分解は、回分式、連続式、又は半連続式で行うことができ、原料油脂と水の装置内への供給は、並流式、向流式どちらでもよい。加水分解反応装置に供給される原料油脂は、予め脱気又は脱酸素を行うことが脂肪酸類の酸化抑制の点から好ましい。
【0026】
酵素分解法の反応に用いる固定化酵素量は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、分解する原料油脂100部に対して0.01〜30部、更に0.1〜15部、特に0.2〜10部が好ましい。また水の量は、分解する原料油脂の100部に対して10〜200部、更に20〜100部、特に30〜80部が好ましい。水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、井戸水等いずれのものでも構わない。グリセリン等その他の水溶性成分が混合されていても良い。必要に応じて、酵素の安定性が維持できるようにpH3〜9の緩衝液を用いてもよい。
【0027】
反応温度は、酵素の活性をより有効に引き出し、分解により生じた遊離脂肪酸が結晶とならない温度である273〜343K、更に293〜323Kとすることが好ましい。また反応は、空気との接触が出来るだけ回避されるように、不活性ガス存在下で行うことが好ましい。
【0028】
次いで、得られた脂肪酸とグリセリンをエステル化してジアシルグリセロール高含有油脂を得る。脂肪酸とグリセリンをエステル化する方法は、最終油脂製品中のトランス不飽和脂肪酸含有量を増加させないという点から、酵素法によるのが好ましい。エステル化反応に用いる酵素としては、リパーゼを用いることが好ましく、特に固定化されたものを用いることが、コストの点から好ましい。リパーゼ及び固定化担体としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0029】
エステル化反応により得られたジアシルグリセロール高含有油脂は、後処理を行うことにより製品とすることができる。後処理は、脱酸(未反応の脂肪酸を除去)、酸処理、水洗、脱臭の各工程を行うことが好ましい。脱酸工程は、エステル化反応により得られたジアシルグリセロール高含有油脂を減圧蒸留することにより、エステル化反応油から脂肪酸、モノアシルグリセロールを除去する工程をいう。酸処理工程は、前記脱酸油にクエン酸等のキレート剤を添加、混合し、更に減圧脱水する工程をいう。また、得られた酸処理油は、色相、風味を更に良好とする点から、吸着剤との接触による脱色工程を行っても良い。水洗工程は、前記酸処理油に水を添加して強攪拌し、油水分離を行う操作を行う工程をいう。水洗は複数回(例えば3回)繰り返し、水洗油を得るのが好ましい。
【0030】
脱臭処理は、基本的に減圧水蒸気蒸留で行われ、バッチ式、半連続式、連続式等が挙げられる。少量の場合はバッチ式を用い、多量になると半連続式、連続式を用いることが好ましい。半連続式の場合の装置としては、数段のトレイを備えた脱臭塔からなるガードラー式脱臭装置等が挙げられる。本装置は、上部から脱臭すべき油脂が供給され、油が下段のトレイへ間欠的に次々と下降しながら移動することにより脱臭される。連続式の場合の装置としては、脱臭塔内に気液接触効率と低圧力損失を両立した構造物が充填され、水蒸気との接触効率を向上させた薄膜脱臭装置等がある。
【0031】
脱臭処理を行うには、以上の薄膜脱臭装置またはトレイ式脱臭装置の単独で行う方法の他、これら薄膜脱臭装置を用いた脱臭処理とトレイ式脱臭装置を用いた脱臭処理とを組み合わせて行う方法があるが、本願発明の場合には、装置コスト、トランス不飽和脂肪酸含量、ジアシルグリセロール特有の風味の点から、薄膜式カラムまたはトレイ式脱臭装置の単独で脱臭を行う方法が好ましい。
【0032】
脱臭処理により、水洗油に含まれる有臭成分が除去され、また、カロチノイド系色素は熱分解されるため淡色となり、更に、微量に含まれる不純物質が不活性化し安定な物質となる。よって、通常の油脂を用いた脱臭においては、条件を厳しくすることにより風味的には好ましいものとなる。しかし、ジアシルグリセロール高含有油脂においては、脱臭工程によりコク味が影響を受けるため、製品の品質は脱臭処理の条件により左右されることとなる。
【0033】
本発明において、当該脱臭処理は脱臭時間(x)と脱臭温度(y)が次式(i)及び(ii)を満たす範囲内となるよう行う。
(i)y≧−2.59x+566
(ii)y≦617x-0.0455 (但し、475≦y≦563)
式(i)で規定される範囲より低い温度で脱臭処理を行う場合、あるいは475Kより低い脱臭温度(y)で脱臭処理を行う場合は、刺激感及び重さが低減された油脂は得られず、式(ii)で規定される範囲より長い時間脱臭処理を行う場合は、コク味が十分ではない。ここで、xは脱臭時間(分)、yは脱臭温度(K)を示す。ただし、脱臭中に経時的に温度が変化する場合は、それらの平均値とする。また、脱臭処理は、脱臭効率、風味の向上の点から次式(iii)及び(iv);
(iii)y≧−2.29x+566
(iv)y≦=(617x-0.0455)−3 (但し、480≦y≦558)
を満たす範囲で行うことがより好ましく、更に脱臭温度(y)は、485K以上553K以下であることが好ましい。
【0034】
脱臭処理としては、減圧水蒸気蒸留が好ましく、用いる水蒸気量は油脂に対して0.3〜20%、特に0.5〜10%とすることが、ジアシルグリセロール特有の「旨味」「コク味」等の風味を良好にする点から好ましい。また、圧力は0.01〜4kPa、特に0.06〜0.6kPaとすることが、同様の点から好ましい。
中でも、脱臭温度が528〜558Kで、水蒸気量を油脂に対して0.3〜3%、より好ましくは0.4〜2.5%、特に0.5〜2.2%とすることが、ジアシルグリセロール特有の「旨味」「コク味」等の風味を良好にする点から好ましい。また、脱臭温度が523〜528Kで、水蒸気量を油脂に対して2.1〜5%、より好ましくは2.2〜4.5%、特に2.5〜4%とすることが、同様の点から好ましい。更に、脱臭温度が480〜523Kで、水蒸気量を油脂に対して2.1〜10%、より好ましくは2.2〜8%、特に2.5〜6%とすることが、同様の点から好ましい。
【0035】
脱臭温度への昇温時間は、トランス不飽和脂肪酸含量の点から、温度343Kから温度473Kまで0.5〜60分、温度473Kから脱臭温度まで0.5〜45分とするのが好ましく、更に、温度343Kから温度473Kまで1〜30分、温度473Kから脱臭温度まで1〜20分、特に、温度343Kから温度473Kまで2〜20分、温度473Kから脱臭温度まで2〜15分とするのが好ましい。脱臭温度からの冷却時間は、トランス不飽和脂肪酸含量の点から、脱臭温度から温度473Kまで0.2〜35分、温度473Kから343Kまで0.2〜40分とするのが好ましく、更に、脱臭温度から温度473Kまで0.5〜25分、温度473Kから343Kまで0.5〜30分、特に、脱臭温度から温度473Kまで1〜20分、温度473Kから343Kまで1〜25分とするのが好ましい。
【0036】
当該脱臭処理の結果、精製工程におけるトランス不飽和脂肪酸上昇量を1%以下に抑えることができ、油脂を構成する全脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含有量が2%以下と少ないジアシルグリセロール高含有油脂を得ることができる。ジアシルグリセロール高含有油脂中のトランス不飽和脂肪酸含有量は、更に0〜1.5%、特に0.1〜1.2%であることが、生理効果の点から好ましい。
【0037】
ジアシルグリセロール高含有油脂中のジアシルグリセロール含有量は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは60〜99%、更に70〜98%、特に80〜95%であることが生理効果の点から好ましい。
【0038】
ジアシルグリセロールは、その構成脂肪酸の80〜100%が不飽和脂肪酸(UFA)であることが、外観、生理効果、油脂の工業的生産性の点から好ましく、より好ましくは90〜100%、更に93〜99%、特に94〜99%であるのが好ましい。ここで、この不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが好ましい。通常、不飽和脂肪酸高含有油脂は、加熱によりトランス不飽和脂肪酸となり易いが、本発明の方法によれば、このように不飽和脂肪酸含有量が高い油脂の製造においてもトランス不飽和脂肪酸の生成を低く抑えることができる。
【0039】
また、不飽和脂肪酸のうち、オレイン酸の含有量は20〜90%、更に25〜80%、特に30〜70%、リノール酸の含有量は5〜65%、更に10〜60%、特に15〜55%、リノレン酸の含有量は15%未満、更に0〜13%、特に1〜12%であるのが好ましい。
【0040】
本発明方法により製造されたジアシルグリセロール高含有油脂は、風味がよく、色相も良好である。また、トランス不飽和脂肪酸の生成がなく、ジアシルグリセロール含量が高いため、高い生理効果を有する油脂として有用である。
【実施例】
【0041】
〔分析方法〕
(i)ジアシルグリセロール含有量
ガラス製サンプル瓶に、サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、343Kで15分間加熱した。これに水1.5mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、グリセリド組成の分析を行った。
【0042】
(ii)構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含有量
日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.2−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f-96(GLC法)により測定した値をいう。
【0043】
(iii)色相
脱臭油の色相は、American Oil Chemists. Society Official Method Ca 13e-92 (Lovibond法)で5.25インチセルにより測定し、次の式(1)で求めた値をいう。
色相C=10R+Y (1)
(式中、R=Red値、Y=Yellow値)
【0044】
〔加水分解用固定化酵素の製造法〕
Duolite A−568(Rohm & Hass社製)500gを0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液5000mL中で、1時間攪拌した。その後、5000mLの蒸留水で1時間洗浄し、500mMのリン酸緩衝液(pH7)5000mLで、2時間pHの平衡化を行った。その後50mMのリン酸緩衝液(pH7)5000mLで2時間ずつ2回、pHの平衡化を行った。この後、濾過を行い、担体を回収した後、エタノール2500mLでエタノール置換を30分間行った。濾過した後、大豆脂肪酸を500g含むエタノール2500mLを加え30分間、大豆脂肪酸を担体に吸着させた。この後濾過し、担体を回収した後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)2500mLで4回洗浄し、エタノールを除去し、濾過して担体を回収した。その後、油脂に作用する市販のリパーゼ(リパーゼAY「アマノ」、天野エンザイム社)の10%溶液10000mLと4時間接触させ、固定化を行った。さらに、濾過し固定化酵素を回収して、50mMの酢酸緩衝液(pH7)2500mLで洗浄を行い、固定化していない酵素や蛋白を除去した。以上の操作はいずれも293Kで行った。固定化後の酵素液の残存活性と固定化前の酵素液の活性差より固定化率を求めたところ、95%であった。その後、脱臭大豆油2000gを加え、313K、2時間攪拌した後、濾過して脱臭大豆油と分離し、固定化酵素とした。こうして得られた固定化酵素を、使用前に実際に反応を行う基質である原料油で3回洗浄しろ過した。加水分解活性を測定したところ、2500U/gであった。
【0045】
実施例1〜10
[原料油脂]
原料油脂として表2に示す油脂を用いた。なお、原料油脂中のトランス不飽和脂肪酸含有量の測定は前記の方法により行った。その原料油脂の脂肪酸組成を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
[酵素分解法による加水分解]
表2に示す原料油脂について、前記の加水分解用固定化酵素を用いた酵素分解法による加水分解を行った。125mmの三ヶ月攪拌翼を取り付けた10Lガラス製4ツ口フラスコに、前記加水分解用固定化酵素を乾燥基準で400g充填した。固定化酵素の乾燥基準の質量は、使用したものと同じバッチの固定化酵素を、アセトン及びヘキサンを用いて、固定化酵素に付着している油分を除去し、さらに減圧下で脱水することにより求めた。
10Lガラス製4ツ口フラスコに原料油脂4000gを投入した後、200r/minで攪拌しながら、313Kに昇温した。次に、313Kに加温した蒸留水2400gを投入して加水分解反応を行った。なおこの間、10Lガラス製4ツ口フラスコ内は窒素雰囲気とした。
反応開始から20時間後に、反応液から加水分解用固定化酵素を濾別し、反応液を回転数5000r/minにて10分間、遠心分離することにより甘水層を除去し、脂肪酸を得た。脂肪酸は、さらに温度343K、真空度400Paにて30分間、減圧脱水した。原料油脂を分解した脂肪酸、又は複数の脂肪酸を配合した後の脂肪酸のトランス不飽和脂肪酸含有量を表2に示す。
【0048】
[酵素法によるエステル化]
5Lガラス製4ツ口フラスコに、固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製Lipozyme RM IM)172g(脂肪酸とグリセリンの量の合計に対して5%の量)を投入した。次に、表2に示す原料油脂を酵素で分解した脂肪酸3000gを、温度323Kに調整した後に投入した。温度323Kにて、500r/minで攪拌しながら、脂肪酸とグリセリンのモル比が2:1となるように、グリセリン446gを投入し、反応を開始した。反応開始1分後に減圧を開始し、真空度400Paにてエステル化反応を3時間行った。反応後、固定化酵素を濾別し、エステル化反応油を得た。
【0049】
[脱酸処理]
エステル化反応油を、ワイプトフィルム蒸発装置(神鋼パンテック社 2−03型、内径5cm、伝熱面積0.03m2)を用い、加熱ヒーター温度508K、圧力3.3Pa、流量150ml/minの操作条件で蒸留し、脱酸油を得た。
【0050】
[酸処理]
脱酸油に10%クエン酸水溶液を2%添加し、温度343Kで30分間、400r/minで混合後、温度373K、真空度400Pa、400r/minで混合しながら、30分間減圧脱水し、酸処理油を得た。
【0051】
[水洗処理]
温度373Kに加温した蒸留水を酸処理油に対して10%添加し、温度373Kで30分間、600r/minで強混合後、遠心分離して油相を分取した。この水洗操作を3回行い、温度373K、真空度400Paで30分間減圧脱水し、水洗油を得た。なお、実施例9及び10については、酸処理後に下記の脱色処理を行った後に、水洗処理を行った。
【0052】
[脱色処理]
実施例9及び10については、前記酸処理まで行った後、酸処理油に対して活性白土を2%、活性炭を0.5%添加し、温度383K、真空度400Pa、400r/minで混合しながら、30分間減圧下で脱色を行い、温度373K以下まで冷却後、吸着剤を濾別した。得られた脱色油を水洗処理を行い、水洗油を得た。
【0053】
[脱臭処理]
脱臭処理はバッチ式で行った。真空ポンプは日立製ロータリーバキュームポンプ TYPE160VP-D CuteVacを用いた。300MLガラス製クライゼンフラスコに、水洗油100gを投入した後、水蒸気発生装置を内径2.5mmのキャピラリーガラス管で300MLガラス製クライゼンフラスコに接続した。温度343K、10分間、窒素を流量1L/minでバブリングしながら流通させ装置内を完全に窒素置換した。真空漏れのないことを確認後、真空ポンプで真空状態にし、マントルヒーターで加熱した。加熱時間は、温度343Kから温度473Kまで6〜8分、温度473Kから脱臭温度まで2〜5分要した。脱臭温度、脱臭時間及び水蒸気量は表2に示す各条件とし、圧力は0.2〜0.4kPaで行った。脱臭終了後、マントルヒーターを取り外し、冷風機にて、脱臭温度から温度473Kまでを1〜2分、温度473Kから温度343Kまでを5〜7分かけて冷却した。温度343Kまで冷却後、脱臭装置内に窒素を吹き込み、常圧まで戻した。トコフェロールを水洗油に対し200ppm添加し、脱臭油を得た。
【0054】
【表2】

【0055】
[官能評価]
風味(コク味、刺激感及び重さ)の評価は、5人のパネルにより、各人0.5〜5gを生食し、下記表3に示す基準にて官能評価することにより行った。結果を表2に示す。
本発明において「コク味」とは、本発明の製造方法で製造されたジアシルグリセロールに特有の好ましい風味であり、旨み等が口中で広がり、口あたりの調和のとれた濃厚感のある風味をいう。また、「刺激感」及び「重さ」は、原料である未脱臭油脂に起因する風味や、ジアシルグリセロール高含有油脂の製造工程で生成する不純物からもたらされる好ましくない風味であり、口中やのどにおいて生じる刺激的な感覚(刺激感)及びねっとりと絡みつくような口中感覚(重さ)をいう。
【0056】
【表3】

【0057】
比較例1〜13
[酵素分解法による加水分解]
実施例1等と同じ操作により、表1に示す原料油脂について、加水分解用固定化酵素を用いた酵素分解法による加水分解を行った。比較例13のみ、担体に固定化していない酵素(リパーゼAY「アマノ」、天野エンザイム社)を用いた酵素分解法による加水分解を行った。
【0058】
[高温高圧分解法による加水分解]
油水向流式の高圧熱水型分解装置を用い、原料油脂を装置の下側から、水を装置の上側からそれぞれ連続的に送液した。送液量は、原料油脂100部に対して水50部とした。この時、分解塔内の平均滞留時間(hr)(塔容積(m3)/(原料油の流量(m3/hr)+水の流量(m3/hr))は約4hrであった。装置の中で原料油脂は高圧熱水(5.0MPa、513K)により加熱された。油水向流式の高圧熱水型分解装置の上部にあるサンプリング口から反応液を適宜採取し、窒素シール、遮光状態で298Kまで冷却した。その後、遠心分離(5,000g,30分)し、水層を除去後、脂肪酸層を温度343K、真空度400Paで30分間減圧脱水し、脂肪酸を得た。
【0059】
[エステル化反応等]
実施例1等と同じ操作により、エステル化反応、脱酸、酸処理、水洗、脱色の各処理を行った。なお、比較例5のみ、実施例9又は10と同じ操作により脱色処理を行った。
【0060】
[脱臭処理]
表4に示す条件下で脱臭処理を行った以外は、実施例1等と同じ操作を行った。結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
以上の結果から、原料油脂として未脱臭油脂を50%以上含有する油脂を使用し、酵素分解法により得られる脂肪酸とグリセリンとを酵素を用いてエステル化反応させ、且つ脱臭時間と脱臭温度が一定範囲内となるよう脱臭処理を行うことにより、トランス不飽和脂肪酸含有量が低く、色相及び「旨味」「コク味」等のジアシルグリセロール特有の風味が良好なジアシルグリセロール高含有油脂を効率よく得られることがわかった。
これに対し、原料油脂として脱臭油脂を100%使用して得た油脂は、良好な色相であるが、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含有量が高く、刺激感及び重さが感じられることがわかった。また、原料油脂を高温高圧分解法により加水分解して得た脂肪酸とグリセリンを使用して得た油脂は、刺激感及び重さはないものの、構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含有量が高く、十分なコク味を有する油脂は得られないことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油脂を酵素分解法により加水分解して得られる脂肪酸とグリセリンとをエステル化反応させることによりジアシルグリセロール高含有油脂を製造する方法であって、未脱臭油脂を50%以上含有する原料油脂を使用し、且つエステル化反応後に、脱臭時間(x)と脱臭温度(y)の関係が、次式(i)及び(ii);
(i)y≧−2.59x+566
(ii)y≦617x-0.0455 (但し、475≦y≦563)
(ここで、xは脱臭時間(分)、yは脱臭温度(K)を示す。)
を満たす範囲内で脱臭処理を行うジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
【請求項2】
加水分解反応に供する原料油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が1.5質量%以下である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応を酵素法により行う請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が2質量%以下であるジアシルグリセロール高含有油脂を得るものである請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
ジアシルグリセロール高含有油脂が、ジアシルグリセロールを50質量%以上含有する油脂である請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−40854(P2009−40854A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206413(P2007−206413)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】