説明

ジエノゲストを含んでなるホルモン置換療法および抑鬱療法

HRおよび/または避妊のためのエストロゲンとプロゲスチンジエノゲストの共投与による抑鬱の治療および/または予防。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
ホルモンを使用するホルモン置換療法、特にエストロゲン置換療法および避妊は、この分野においてよく知られている。
更年期の女性において、不安、抑鬱、緊張および過敏性は閉経前の間に開始し、そして性ホルモンのレベル、例えば、エストロゲンのレベルの減少に相関する。疫学的研究において、更年期の女性のほぼ22〜33%は、性ホルモンのレベルが減少するとき、抑鬱症候群を患うことが示された。これらの症例の約10%において、症候群は重症となって臨床的に関係する抑鬱を示す。データが示唆するように、特にエストロゲン、またはそれらの相対的欠如は気分および行動の調節、ならびに女性の全生活環間における気分の病理生物学に関係付けられる。
【0002】
US 6,077,852によれば、エストロゲン置換療法が中枢神経系の障害、例えば、抑鬱および気分変動および閉経後の女性におけるアルツハイマー病の有望な治療であるという認識が文献において増大しつつある。しかしながら、エストロゲン置換療法のこれらの有望な使用は、生殖組織の癌の発生という危険に関連する長期間のエストロゲン療法の欠点により相殺される。
【0003】
現在処方されているホルモン置換療法 (HRT) において、エストロゲンの子宮刺激作用を制限し、これにより子宮内膜癌の危険を減少するためにエストロゲンと共投与されるプロゲスチンがしばしば使用される。また、エストロゲン単独を使用する治療も可能である。ほとんどの場合において、子宮を有する女性に事実エストロゲンおよびプロゲスチンを一緒にまたはより普通には周期的プロトコルで投与しなくてはならない。
【0004】
プロゲスチンの共投与はいくつかの望ましくない副作用を有する。これらの副作用に対して多数の女性は許容性がしばしば低い。このような副作用は、例えば、連続する月経期間、抑鬱、水腫、下腹部の痙攣、乳房圧痛、および月経前症候群のような症候群である。プロゲスチンの作用はエストロゲンの健康的な作用を無効にすることさえある。また、エストロゲンそれ自体はいくつかの副作用を有し、しばしば、例えば、水の保持、体重増加、高血圧症、およびその他を有する。例えば、US 6,326,366およびUS 5,814,329参照。
【0005】
避妊薬の分野において、経口避妊薬は最も顕著である。避妊薬の2つのタイプは、(a) エストロゲンとプロゲスチンとの組み合わせ、および (b) プロゲスチン単独である。組み合わせたタイプの避妊薬は、主として消極的フィードバックにより排卵を抑制して視床下部によるゴナドトロピン (LHおよびFSH) の放出を防止するが、生殖管における変更もまた不妊作用に寄与することがある。非常に少ない経口投与量 (「ミニピル」) のプロゲスチン単独は女性の生殖管における主要な変更に関係するように思われるが、排卵もまた抑制されることがある。
【0006】
経口避妊薬は高度に有効であるが、それらの使用もまた不快な副作用、例えば、悪心、抑鬱、体重増加、および頭痛、および重症の疾患、例えば、血栓塞栓症、発作、心筋梗塞、肝性腺腫、胆嚢疾患、および高血圧症の長期間の危険の増加に関連する。また、出血の不規則性、例えば、漏出性出血、スポッティング、および無月経が頻繁に起こる。プロゲスチンは、単独で投与するとき、月経パターンの変化の発生率を増加させ、月経出血の量および期間の顕著な増加を引き起こす。例えば、US 6,355,670参照。
【0007】
本発明において、HRTおよび/または避妊のためのエストロゲンおよびプロゲスチンジエノゲスト (化学名: 17-ヒドロキシ-3-オキソ-19-ノル-17a-プレグナ-4,9-ジエン-21-ナイトライト、または17アルファ-シアノメチル-17β-ヒドロキシ-4,9-エストラジエン-3-オン; 化学式: C20H25NO2) の共投与は、抑鬱の治療および/または予防において有効である。ジエノゲスト (dienogest) は次の通りである:
【0008】
エストロゲンおよびジエノゲストを使用すると、患者は下記の通常の利益を享受することができる: 避妊およびホルモン置換療法、例えば、不規則的出血、顔面潮紅、睡眠混乱、気分変動、膣の乾燥、膀胱の問題、例えば、失禁、骨喪失/骨粗しょう症、精神、記憶および認識機能の悪化、例えば、言語性および非言語性記憶機能の悪化、覚醒の悪化、注意の悪化、集中の悪化、心理学的安寧および生命・生活の質の悪化、皮膚または毛髪の問題、または体形の変化の治療および/または防止、ここでエストロゲンとプロゲスチンとの組み合わせによりしばしば引き起こされる副作用が同時に回避されるが、このような抑鬱が先存した場合、その治療。閉経後の女性における先存抑鬱に対するエストロゲンおよびジエノゲストの作用は、特に顕著である。閉経期特異性 (血管運動および体性症状、抑鬱気分、性的行動、記憶/集中の問題、魅力) および精神的健康に関係する生命・生活の質 (エネルギー/活力、社会的機能性、情動的問題のための役割制限、および精神的健康) に対する陽性作用が、また、エストロゲンと新規なプロゲスチンジエノゲストとの投与後に、観測された。
【0009】
エストロゲンはこの分野においてよく知られている。任意のエストロゲンは本発明において有効である。これらのエストロゲンは次の通りであるが、これらに限定されない: エストリオール、エストロン、エストロン硫酸、エストラジオール-3,7β-ジプロピオネート、エチニルエストラジオール、17β-エストラジオールならびにそれらのエステル、例えば、エストラジオール-3-ベンゾエート、エストラジオール-17-バレレート、-シプリネート、-シプリネート、-ウンデシレート、-エナンテートおよび/または他のエステル (US-A-2,611,773、US-A-2,990,414、US-A-2,054,271、US-A-2,225,419およびUS-A-2,156,599) および共役エストロゲン。
【0010】
また、下記のエストロゲンを本発明に従い使用することができる: エストラジオール-、エチニルエストラジオール-およびエストロン-スルファメート、例えば、エストロン-N,N-ジメチルスルファメート、エストロン-N,N-ジエチルスルファメート、エチニルエストラジオール-3-N,N-ジメチルスルファメート、エチニルエストラジオール-3-N,N-ジエチルスルファメート、エチニルエストラジオール-3-N,N-テトラメチレンスルファメート、エストロンスルファメート、エストラジオール-3-スルファメート、エストラジオール-3-N,N-ジメチルスルファメート、エストラジオール-3-N,N-ジエチルスルファメート、およびエチニルエストラジオール-3-N,N-スルファメート、これらは対応する3-ヒドロキシ化合物のすべてのプロドラッグを生成する (W. Elger 他、J. Steroid Biochem. Molec. Biol. Vol. 55、No. 3/4、395-403、1995、DE 44 29 398 A1およびDE 44 29 397 A1) 、および14α,17α-エタノ-1,3,5(10)-エストラトリエン-3,17β-ジオール、14α,17α-エタノ-1,3,5(10)-エストラトリエン-3,16α,17β-トリオールまたはエストラジオールの15,15-ジアルキル誘導体、ならびにエストラン系列からの14α,17α-メチレンステロイドおよび対応する3-アミドスルホネート誘導体。
【0011】
また、下記のエストロゲンは有効である: エクイリン、エクイレニン、ジヒドロエクイレニン、17β-ジヒドロエクイレニン、メンストラノール、エクオールまたはエンテロラクトン、およびそれらの硫酸エステル、例えば、エストロン硫酸ナトリウム、エクイリン硫酸ナトリウム、17α-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム、17α-エストラジオール硫酸ナトリウム、セルタ8,9-デヒドロエストロン硫酸ナトリウム、エクイレニン硫酸ナトリウム、17β-ジヒドロエクイリン硫酸ナトリウム、17α-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム、17β-エストラジオール硫酸ナトリウム、17β-ジヒドロエクイレニン硫酸ナトリウム、エストロン3-硫酸ナトリウム、エクイリン3-硫酸ナトリウム、17α-ジヒドロエクイリン3-硫酸ナトリウム、3β-ヒドロキシ-エストラ-5(10),7-ジエン-17-オン3-硫酸ナトリウム、
【0012】
5α-プレグナン-3β-20R-ジオール20-硫酸ナトリウム、5α-プレグナン-3β,16α-ジオール,20-オン3-硫酸ナトリウム、デルタ(8,9)-デヒドロエストロン3-硫酸ナトリウム、エストラ-3β,17α-ジオール3-硫酸ナトリウム、3β-ヒドロキシ-エストル-5(10)-エン,17-オン3-硫酸ナトリウムまたは5α-プレグナン-3β,16α,20R-トリオール3-硫酸ナトリウム。下記のエストロゲンは好ましい: エストリオール、エストロン、エストロン硫酸、エストラジオール-3,17β-ジプロピオネート、エチニルエストラジオール、17β-エストラジオールならびにそれらのエステル、例えば、エストラジオール-3-ベンゾエート、エストラジオール-17-バレレート、-シプリネート、-ウンデシレート、-エナンテートおよび/または他のエステル (US-A-2,611,773、US-A-2,990,414、US-A-2,054,271、US-A-2,225,419およびUS-A-2,156,599) および共役エストロゲン。
【0013】
避妊およびホルモン置換療法の投与量および投与モードは、これらのエストロゲンおよびプロゲスチンの分野において通例のモードおよび投与量である。
ホルモン置換療法において、エストロゲンおよびジエノゲストの適当な投与量は、各々独立して、0.5〜5 mg/日、好ましくは1〜4 mg/日、特に好ましくは約2〜3 mg/日であることができる。1つの特に好ましいHRT態様において、2 mg/日のエストロゲンを2 mg/日のジエノゲストと共投与する。
【0014】
他の好ましい態様において、2 mg/日のエストロゲンを3 mg/日のジエノゲストと共投与する。これらの好ましい態様におけるエストロゲンはエストラジオールバレレートであるが、それに限定されない。もちろん、特に慣用のエストロゲン、例えば、エチニルエストラジオールの場合において、より少ないまたはより多い投与量を使用することができ、ここでエチニルエストラジオールは、例えば、10 μg、30 μg、およびその他程度に少ない投与量で使用されることが知られている。
【0015】
適当な投与モードは、腸内、非経口的または経口的投与、好ましくは経口的投与であるが、これらに限定されない。投与は、順次または同時であり、例えば、単一投与形態で組み合わせて、好ましくは組み合わせて実施することができるが、これらに限定されない。
ジエノゲストは、ホルモン置換療法においておよび/または避妊薬として使用するとき、他のプロゲスチンに通常の抗エストロゲン作用を生成しない。また、ジエノゲストは、抗エストロゲン作用およびアンドロゲン作用を欠如し、そして抗アンドロゲン作用を有する。
【0016】
これにより、ジエノゲストは生理学的機能性に関してエストロゲンの陽性作用に対して反作用するように見えない。プロゲスチンについての一般的仮定と反対に、ジエノゲストはエストロゲンの陽性の神経生理学的作用、例えば、覚醒促進効果を減少させる代わりに増加させるように思われる(Saletu、Veranderungen von vigilanz, kognitiver infromationsverarbeitung und schlafqualitat unter Climodien、Gyne Sept. 2001; Saletu 他) 。
【0017】
本発明の利点はエストロゲンとプロゲスチンとの連続的組み合わせであり、これは気分変更の1つの危険因子である性ホルモンにおける周期的変化を抑制する、
本発明の好ましい面は次の通りである:
避妊またはホルモン置換療法を行っている女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性における抑鬱を治療および/または予防する方法;
【0018】
避妊またはホルモン置換療法を行っている女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなり、前記女性が抑鬱の症状を有する、前記女性における抑鬱を治療する方法;
ホルモン置換療法を行っている更年期の女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性における抑鬱を治療する方法;
【0019】
ホルモン置換療法を行っている更年期の女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなり、前記女性が抑鬱の症状を有する、前記女性における抑鬱を治療する方法;
ホルモン置換療法を行っている閉経後の女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性における抑鬱を治療する方法;
ホルモン置換療法を行っている閉経後の女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなり、前記女性が抑鬱の症状を有する、前記女性における抑鬱を治療する方法;
【0020】
抑鬱の症状を有する女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性において避妊および/またはホルモン置換療法を行う方法;
抑鬱の症状を有する女性にジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性において避妊および/またはホルモン置換療法を行う方法;
【0021】
抑鬱の症状を有する女性、例えば、閉経後である女性に、ジエノゲストおよびエストロゲンを含んでなる組成物を投与することを含んでなり、ここで前記女性は任意に抑鬱を有すると診断され、例えば、閉経後症候群の関係において抑鬱であると診断され、前記女性においてホルモン置換療法をする方法;
【0022】
抑鬱の症状または抑鬱気分 (単なる気分変動ではない) を有する女性に、ジエノゲストおよびエストロゲンを含んでなる組成物、またはエストロゲンを含まず、ジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性においてホルモン置換療法をする方法、ここでホルモン置換療法の結果として、不規則的出血、顔面潮紅、睡眠混乱、気分変動、膣の乾燥、膀胱の問題、骨喪失/骨粗しょう症、認識機能の悪化、覚醒の悪化、注意の悪化、または集中の悪化、皮膚または毛髪の問題、または体形の変化が治療および/または防止および/または抑制される;
【0023】
ホルモン置換療法を行っている女性が抑鬱であると診断された閉経後の女性、例えば、閉経後症候群に関係する抑鬱であると診断された閉経後の女性である方法;
ホルモン置換療法を行っているか、あるいは抑鬱について治療されている女性が公定分類系、例えば、疾患および関係する健康の問題の国際的統計的分類 (the International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems) 第10改定版 (ICD-10) または精神障害の診断および統計的マニュアル (the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders) 第4版 (DSM-IV) に従い抑鬱であると診断され、単に閉経後症候群を患っていない方法;
【0024】
人生の生殖期における女性に、エストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性のエストロゲン依存的抑鬱障害に対する陽性の病歴、例えば、月経前症候群 (PMS) および/または出生後抑鬱 (PND) を治療および/または予防する方法;
PMSおよび/またはPNDを有する女性に、エストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性における抑鬱を治療および/または予防する方法;
【0025】
エストロゲンおよびジエノゲストの投与量が、各々独立して、0.5〜5.0 mg/日である方法;
エストロゲンおよびジエノゲストの各々の投与量が約2 mg/日である方法;
エストロゲンがエストラジオールバレレートである方法。
【0026】
本発明は、また、下記に関する:
薬剤の製造における前記方法に従うエストロゲンおよびジエノゲストの使用;
下記の薬剤の製造におけるエストロゲンおよびジエノゲスト使用: 避妊またはホルモン置換療法を行っている女性における、抑鬱または抑鬱気分 (単に気分変動ではない) の治療および/または予防; 避妊またはホルモン置換療法を行っている女性における抑鬱の治療、前記女性は抑鬱の症状を有する; ホルモン置換療法を行っている更年期の女性に、エストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる前記女性おける抑鬱の治療; ホルモン置換療法を行っている更年期の女性における抑鬱の治療、ここで前記女性は抑鬱の症状を有する;
【0027】
ホルモン置換療法を行っている閉経後の女性における抑鬱の治療; ホルモン置換療法を行っている閉経後の女性における抑鬱の治療、前記女性は抑鬱の症状を有する; 女性における避妊および/またはホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有する; 女性における避妊および/またはホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有する; 女性、例えば、閉経後である女性におけるホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有し、ここで女性は任意に抑鬱、例えば、閉経後症候群に関係する抑鬱であると診断されている; 女性におけるホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有し、不規則的出血、顔面潮紅、睡眠混乱、気分変動、膣の乾燥、膀胱の問題、骨喪失/骨粗しょう症、認識機能の悪化、覚醒の悪化、注意の悪化、または集中の悪化、皮膚または毛髪の問題、または体形の変化の治療、防止または抑制;
【0028】
抑鬱、例えば、閉経後症候群に関係する抑鬱であると診断された閉経後の女性におけるホルモン置換療法; 公定分類系、例えば、疾患および関係する健康の問題の国際的統計的分類、第10改定版 (ICD-10) または精神障害の診断および統計的マニュアル、第4版 (DSM-IV)に従い抑鬱であり、単に閉経後症候群を患っていないと診断された女性におけるホルモン置換療法および/または避妊または抑鬱の治療; 寿命の生殖期の女性におけるエストロゲン依存的抑鬱障害、例えば、月経前症候群 (PMS) および/または出生後抑鬱 (PND) に対する陽性の病歴の治療および/または予防; PMSおよび/またはPNDを有する女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる前記女性における抑鬱の治療および/または予防;
【0029】
前記使用のいずれかに従う使用: ここでエストロゲンおよびジエノゲストの投与量が各々独立して0.5〜5.0 mg/日である; エストロゲンおよびジエノゲストの各々の投与量が約2 mg/日である; そしてエストロゲンがエストラジオールバレレートである;
エストロゲンおよびジエノゲストが腸内、非経口的または経口的投与のための医薬製剤の形態である使用; および
エストロゲンおよびジエノゲストが腸内、非経口的または経口的投与のための製剤の形態である使用。
【0030】
明細書および添付された特許請求の範囲をさらに研究すると、本発明のそれ以上の目的および利点は当業者にとって明らかであろう。
それ以上詳しく説明しないで、当業者は前述の説明を使用して本発明をその完全な程度に利用することができると考えられる。したがって、下記の好ましい特定の態様は単に例示であり、そしてこの開示の残部をいかなる方法においても限定するものと解釈すべきではない。
前述の説明および下記の実施例において、特記しない限り、すべての温度は未補正のセ氏であり、すべての部および百分率は重量による。
【実施例】
【0031】
実施例1.
24週の研究にわたるこのマルチセンターランダム化二重盲式プラシーボ対照2アート試行の主目的は、2 mgのエストラジオールバレレート (EV) および2 mgのジエノゲスト (DNG) (Climodien (クリモジエン) として識別されている製品) を使用する連続的-組み合わせHRTの閉経後の女性における生理学的安寧、例えば、閉経後の抑鬱に対する作用を研究することであった。女性は国際的に認められている分類系に従い閉経後の抑鬱を有すると診断された。女性は単に抑鬱気分ではなく、そして下記の確立された有益な作用は単に数週では示されず、非常に長期間後に示された。
【0032】
主要な効能の変数は、24週の治療後にハミルトン抑鬱等級目盛り (Hamilton Depression Rating Scale) (HAMD) により測定した、抑鬱重症度であった。研究の終わりにおけるクリモジエンとプラシーボとの間の4ポイント差は、臨床的に関係すると考慮した。
129人の抑鬱の患者を下記に従い選択した: a) ICD-10: F32.0、F32.1 (軽度〜中程度の抑鬱エピソード) 、閉経後症候群の関係において (ICD-10: N95.1); およびb) ≧16の基線HAMDスコア。(ICD=疾患の国際分類) 。
【0033】
FAS (完全な分析の組) 集団において、クリモジエンを使用する24数週の治療は、プラシーボ (12.8±8.5) と比較してHAMDスコアの有意な長期間の減少 (8.9±6.4; p = 0.0167) に導いた (下記参照) 。特に、治療間の4ポイント差の目標 (臨床的に関係する差として説明した) は、最後の訪問で達成された (クリモジエンについて約9の絶対ポイント/プラシーボについて約13、すなわち、約4ポイントの差) 。また、クリモジエンを使用する24週の治療はHAMDスコアの50%の平均減少を達成した (18.9±3.1から8.9±6.4に) 。これはプラシーボグループにおいて達成されなかった (18.8±3.9から12.8±8.5) 。臨床的診療において、HAMDスコアの50%の減少は臨床的に関係すると考えられる;また、≦8ポイントのスコアは抑鬱の寛解のサインであると考えられる。事実、≦10の合計スコアは非抑鬱患者の特徴を示すと考えられる。
【0034】
【表1】

【0035】
顕著には、クリモジエングループ内の変化は12週後 (-8.6ポイント) および24週後 (-9.7ポイント) の両方において有意であった (基線に対して比較してp < 0.0001); しかしながら、両方の時点において強い、有意なプラシーボ作用もまた存在した (12週後-6.0ポイントおよび24週後-6.4ポイント) (基線に対して比較してp < 0.0001) 。
それらの大きさにかかわらず、12週後およびより有意には24週後においてクリモジエンの作用はプラシーボの作用を明らかに超えた (p = 0.0167) 。次いで、帰無仮説を拒絶し、別の仮説 (クリモジエンの優秀性) が認められた。このデータが示すように、クリモジエンは短期間および長期間の両方において抑鬱に対して作用を有する。
【0036】
また、クリモジエンの作用は血管運動症状および催眠混乱における改善に対して独立であるように思われ、こうして直接的気分増強作用を示す。データは血管運動症状および催眠混乱における変化からの抑鬱重症度に対する治療効果の部分的依存性を支持するが、クリモジエンの有意な治療効果がなお残留する。
【0037】
上記表のnの数から明らかなように、プラシーボグループはドロップアウトのいくつかの症例により特徴づけられる (主として効能の欠如のためである) 。2つの治療グループにおける示差的ドロップアウト率の影響を推定するために、最後の観測推進 (the last-observation-carry-forward) (LOCF) 技術、すなわち、欠けているデータを置換する普通の方法を使用して、解析を反復した。最終の訪問におけるクリモジエンとプラシーボとの間の有意差はこの解析において確証された (p = 0.0016) 。
【0038】
【表2】

【0039】
抑鬱重症度に対するt検定データ (クリモジエン/プラシーボ) は既に12週後において有意であった (t = -3.14、p = 0.002) 。さらに、抑鬱重症度のそれ以上の減少は、12週と比較して、24週後にクリモジエン治療グループにおいてのみ明らかであった (t = -2.16、p = 0.03) 。
【0040】
クリモジエングループの女性の大部分は治療に対して十分に応答した。クリモジエン治療グループにおけるHAMD≦8ポイントの最終スコア (≧50%の改善に対応する) の意味において、抑鬱寛解のサインを有する女性の数は非常に高かった。他方において、プラシーボで治療した被検体の大部分は治療に対してまったく応答しないか、あるいは主として効能の欠如のために治療を早期に中断した。
【0041】
【表3】

【0042】
また、臨床的包括的印象CGIの結果はこれらの発見と一致した。
病気の(CGI)/重症度: 週6、12、および24 (最後の訪問) において、より高い重症度のスコアからより低い重症度のスコアへの明瞭なシフトが存在した。明瞭なプラシーボの作用は治療期間を通じて認識できたが、週12および24において症状をもたないか、あるいは軽度の症状のみを有する患者の頻度はクリモジエングループにおいて明瞭により高かった。
【0043】
CGI/包括的改善: 強いプラシーボの作用は研究を通じて明瞭に認識できたが、これらは経時的に減少する傾向があった; 対照的に、クリモジエングループにおいて観測された作用は時間を通じて非常に一定に止まり、プラシーボグループにおけるよりも強かった。
CGI/治療効果: クリモジエンの陽性作用は非常に明瞭であった。効能のカテゴリー (顕著、中程度、および最小) はクリモジエングループにおいて明瞭に優勢であったが、プラシーボグループにおいて未変化であるか、あるいは悪いカテゴリーが優勢を占めた。
【0044】
CGI/副作用: 顕著には、CGIの前のカテゴリーと異なり、カテゴリー「副作用」はクリモジエングループとプラシーボグループとの間の差をほとんど表示せず、クリモジエンの非常にすぐれた許容可能性を示した。
下記表において、最終訪問における治療効果 (CGIの効能指数) の結果を要約する。クリモジエン (Climodien(商標)) で治療した女性の大部分は中程度〜顕著な改善、すなわち、症状の完全なまたはほぼ完全な寛解を有し、プラシーボで治療した女性の大部分は未変化または悪い結果を有した。
【0045】
【表4】

【0046】
前述の結果、すなわち、抑鬱に対するクリモジエンの作用は、また、女性の健康質問表 (Women’s Health Questionnaire) (WHQ) および精神的健康に関係するショートフォーム健康調査 (Short Form Health Survey) (SF-36) 生命・生活の質 (QoL) の評価により十分に支持された。
要約すると、24数週のクリモジエンを使用する連続的-組み合わせHRTは、プラシーボ (p = 0.0167) と比較して、強いプラシーボ作用にかかわらず、閉経後の抑鬱の有意な改善を示した。
【0047】
実施例2.
この研究の主目的は、寿命の生殖期におけるエストロゲン依存的抑鬱障害 (PMSおよび/またはPND) について陽性病歴に対する抑鬱強度 (HAMD) に基づく治療効果の依存性の評価であった。
この臨床的研究の関係において、月経前症候群 (PMS) および出生後抑鬱 (PND) の存在を患者のファイル、医師による検査、およびその他に含めた。次いで、障害の少なくとも1つをそれから検出できた場合、病歴は陽性であると考えた。PNDはPMSと一緒にのみ病歴により起こった。
【0048】
PMSおよび/またはPNDについて陽性の病歴の抑鬱強度に対するクリモジエン (Climodien(商標)) 作用の依存性を、反復測定を伴う簡単な分散解析 (ANOVA) により概観した。モデルはPMSおよび/またはPND (存在/非存在) および時間 (基線、12および24週) のファクターを含んだ。抑鬱強度 (HAMD) は依存的変数であった。
基線における抑鬱強度 (HAMD) においてPMS/PNDをもつか、あるいはもたない女性間の有意差を観測した。この場合において、PMS/PNDをもつ女性は有意にいっそう抑鬱であった。治療すると、抑鬱強度は両方のグループにおいて有意に改善された。PMS/PNDをもたない女性でさえクリモジエン (Climodien(商標)) を使用する治療に対して十分に応答するように思われた。
【0049】
【表5】

【0050】
本明細書中に引用されたすべての出願、特許および刊行物の全開示は、US 60/482,154、2003年6月25日提出、およびUS 60/488,439、2003年7月21日提出を含めて、引用することによって本明細書の一部分とされる。
本発明の一般的または特定的に記載した反応物および/または操作条件を先行する実施例において使用したものと置換することによって、先行する実施例を同様に首尾よく反復することができる。
以上の説明から、当業者は本発明の必須の特性を容易に確認することができ、そして、本発明の趣旨および範囲から逸脱しないで種々の変化および変更を行ってそれを種々の使用法および条件に適合させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
避妊またはホルモン置換療法を行っている女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性における抑鬱を治療および/または予防する方法。
【請求項2】
前記女性が抑鬱の症状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記女性が更年期の女性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記女性が抑鬱の症状を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記女性がホルモン置換療法を行っている閉経後の女性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記女性が抑鬱の症状を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抑鬱の症状を有する女性にジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性において避妊および/またはホルモン置換療法を行う方法。
【請求項8】
組成物がエストロゲンをさらに含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
女性が抑鬱を任意に有すると診断され、閉経後症候群の関係において任意に抑鬱であり、任意に閉経後である女性に、ジエノゲストおよび必要に応じてエストロゲンを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性においてホルモン置換療法を行う方法。
【請求項10】
前記女性が抑鬱の症状を有するか、あるいは単なる気分変動ではない抑鬱気分を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ホルモン置換療法の結果として、不規則的出血、顔面潮紅、睡眠混乱、気分変動、膣の乾燥、膀胱の問題、骨喪失/骨粗しょう症、認識機能の悪化、覚醒の悪化、注意の悪化、または集中の悪化、皮膚または毛髪の問題、または体形の変化が治療および/または防止および/または抑制される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ホルモン置換療法を行っている女性が抑鬱であると診断された閉経後の女性である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
抑鬱が閉経後症候群に関係する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
女性が公定分類系に従い抑鬱である診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
女性が公定分類系に従い抑鬱である診断されている、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
女性が公定分類系に従い抑鬱である診断されており、そして単に閉経後症候群を患っていない、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
公定分類系が疾患および関係する健康の問題の国際的統計的分類 (the International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems) 第10改定版 (ICD-10) または精神障害の診断および統計的マニュアル (the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders) 第4版 (DSM-IV) である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
人生の生殖期における女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性のエストロゲン依存的抑鬱障害に対する陽性の病歴を治療および/または予防する方法。
【請求項19】
エストロゲン依存的抑鬱障害に対する陽性の病歴が月経前症候群および/または出生後抑鬱である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
月経前症候群および/または出生後抑鬱を有する女性に、エストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる、前記女性における抑鬱を治療および/または予防する方法。
【請求項21】
エストロゲンの投与量が10 μg/日〜5.0 mg/日であり、そしてジエノゲストの投与量が0.5〜5.0 mg/日である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
エストロゲンおよびジエノゲストの投与量が約2 mg/日である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
エストロゲンがエストラジオールバレレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
薬剤の製造における請求項1〜25のいずれかに記載の方法に従うエストロゲンおよびジエノゲストの使用。
【請求項25】
下記の薬剤の製造におけるエストロゲンおよびジエノゲスト使用: 避妊またはホルモン置換療法を行っている女性における、抑鬱または抑鬱気分 (単に気分変動ではない) の治療および/または予防; 避妊またはホルモン置換療法を行っている女性における抑鬱の治療、前記女性は抑鬱の症状を有する; ホルモン置換療法を行っている更年期の女性に、エストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる前記女性おける抑鬱の治療; ホルモン置換療法を行っている更年期の女性における抑鬱の治療、ここで前記女性は抑鬱の症状を有する; ホルモン置換療法を行っている閉経後の女性における抑鬱の治療; ホルモン置換療法を行っている閉経後の女性における抑鬱の治療、前記女性は抑鬱の症状を有する; 女性における避妊および/またはホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有する; 女性における避妊および/またはホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有する; 女性、例えば、閉経後である女性におけるホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有し、ここで女性は任意に抑鬱、例えば、閉経後症候群に関係する抑鬱であると診断されている; 女性におけるホルモン置換療法、前記女性は抑鬱の症状を有し、 不規則的出血、顔面潮紅、睡眠混乱、気分変動、膣の乾燥、膀胱の問題、骨喪失/骨粗しょう症、認識機能の悪化、覚醒の悪化、注意の悪化、または集中の悪化、皮膚または毛髪の問題、または体形の変化の治療、防止または抑制; 抑鬱、例えば、閉経後症候群に関係する抑鬱であると診断された閉経後の女性におけるホルモン置換療法; 公定分類系、例えば、疾患および関係する健康の問題の国際的統計的分類、第10改定版 (ICD-10) または精神障害の診断および統計的マニュアル、第4版 (DSM-IV)に従い抑鬱であり、単に閉経後症候群を患っていないと診断された女性におけるホルモン置換療法および/または避妊または抑鬱の治療; 寿命の生殖期の女性におけるエストロゲン依存的抑鬱障害、例えば、月経前症候群 (PMS) および/または出生後抑鬱 (PND) に対する陽性の病歴の治療および/または予防; PMSおよび/またはPNDを有する女性にエストロゲンおよびジエノゲストを含んでなる組成物を投与することを含んでなる前記女性における抑鬱の治療および/または予防。
【請求項26】
エストロゲンの投与量が10 μg/日〜5.0 mg/日であり、そしてジエノゲストの投与量が0.5〜5.0 mg/日であり、そしてエストロゲンおよびジエノゲストの各々の投与量が約2 mg/日である、請求項24および25に記載の使用。
【請求項27】
エストロゲンがエストラジオールバレレートである、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
エストロゲンおよびジエノゲストが腸内、非経口的または経口的投与のための医薬製剤の形態である、請求項24〜27のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2007−528358(P2007−528358A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516611(P2006−516611)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002535
【国際公開番号】WO2004/112797
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】