ジヒドロイミダゾピラジン誘導体を含む鎮痛性組合せ物
この発明は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミンを、モルヒネ、類似物又はモルヒネ誘導体、ナトリウムチャンネルインヒビター、非ステロイド性抗炎症剤(AINS)、グルタメート作動系インヒビター、三環系抗鬱薬及びgaba作動性誘導体から選択する鎮痛剤と組合わせて含む、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロイミダゾピラジン誘導体即ち(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種のを含む鎮痛性組合せ物に関係する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
今日、疼痛は、軽減又は治癒するのが困難な病状のままでいる。疼痛を満足に低減させることのできる現在利用可能な化合物の利用は、しばしば、望ましくない副作用(鎮静、習慣性、痛覚過敏、潰瘍の危険)を伴う。これらの副作用の危険を低減させるために、異なる作用機構を有する幾つかの鎮痛剤が、しばしば、組み合わせて用いられる。これは、各薬剤の減じた投与量を用いることによって、望ましくない副作用の危険を低減させつつ、改善された疼痛治療を可能にする。
【0003】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミンは、出願人により、抗癌剤として記載された。
【0004】
モルヒネ自体は、今日、その鎮痛効果について周知であるが、アヘン(モルヒネは、その主成分である)から、19世紀の非常に初期に、ドイツの薬剤師フレデリック ゼルテュルナーにより単離された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人は、今や、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミンとモルヒネ又はモルヒネ類似体若しくは誘導体との組合せが、疼痛の治療において、患者に投与されるモルヒネ又はモルヒネ類似体若しくは誘導体の投与量を、同等の鎮痛効果を維持したまま、相当に低減させるほどに強力な共同効果を有するということを発見した。事実、活性投与量より少ない投与量(即ち、それら自体によっては、治療効果を生じえない投与量)の組合せにて投与されたこれらの2種の活性成分は、組み合わされた場合には、高度に有意の治療効果を生じる。
【0006】
本発明は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩例えばモルヒネ又はモルヒネ誘導体、ナトリウムチャンネルインヒビター、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルタメート作動性システムのインヒビター、三環系抗鬱薬、アルファ2アドレナリン作動性アゴニスト、カンナビノイド及びGABA作動性誘導体より選択する鎮痛剤と組合わせて含む、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品に関係する。
【0007】
製薬上許容しうる塩とは、特に、無機酸例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、燐酸、二燐酸、及び硝酸、又は有機酸例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、パモ酸、シュウ酸及びステアリン酸による付加塩を意味する。塩基例えば水酸化ナトリウム又はカリウムから形成された塩も又、それらが使用しうる場合には、本発明の範囲内に入る。製薬上許容しうる塩の他の例については、「Salt selection for basic drugs」, Int.J.Pharm. (1986), 33, 201-217を参照することができる。
【0008】
同時の治療用途とは、本願においては、幾つかの活性な成分の、同じ経路による、同時の投与を意味する。別々の用途とは、特に、幾つかの活性成分の、異なる経路によるほぼ同時の投与を意味する。経時的な治療用投与とは、幾つかの活性成分の、異なる時点での投与、特に、活性成分の一つの完全な投与がその投与方法によって、他の投与の前または他の投与の開始前に完了する投与方法を意味する。この方法において、活性成分の一つを、他の活性成分の投与の数カ月前に投与することは可能である。この場合、同時の投与は、生じない。
【0009】
オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩とは、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、フェンタニル、アフェンタニル、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホン、ペチジン、レミフェンタニル、スフェンタニル、デキストロプロポキシフェン、トラマドール、ブプレノルフィン、ナルブフィン、モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸ヒドロモルホン及び被覆された硫酸モルヒネ、並びにモルヒネ誘導体から選択する物質を意味する。
【0010】
「ナトリウムチャンネルインヒビター」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇カルバマゼピン;
◇リドカイン;
◇テトラカイン;
◇ブピバカイン;
◇プロカイン;
◇メピバカイン;
◇ジブカイン;
◇ラモトリジン;
◇メキシレチン;
◇リルゾール;又は
◇ブチル2−(4−[1.1’−ビフェニル]−4−イル−1H−イミダゾール−2−イル)エチルカルバメート(ICS化合物)。
【0011】
「非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇アセチルサリチル酸及びその誘導体;
◇インドールNSAID及び誘導体例えばインドメタシン及びスリンダク;
◇アリールカルボン酸NSAID例えばチアプロフェン酸、アルミノプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン又はナプロキセン;
◇NSAIDオキシカム誘導体例えばメロキシカム、ピロキシカム又はテノキシカム;
◇モルニフルメート;
◇ブタゾリジン;
◇シクロキシゲナーゼ−2(COX−2)の選択的インヒビター例えばセレコキシブ又はロフェコキシブ、ルミラコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ及びミネスリド;又は
◇アセトアミノフェン(パラセタモール)及びジピロン。
【0012】
「グルタメート作動性系のインヒビター」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇ケタミン;
◇アマンタジン;
◇メマンチン;又は
◇デキストロメトロファン。
【0013】
「三環系抗鬱薬」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇クロミプラミン;
◇アモキサピン;
◇アミトリプチリン;
◇デシプラミン;
◇ドチエピン塩酸塩;
◇ドキセピン;
◇イミプラミン;
◇ノルトリプチリン;
◇プロトリプチリン;
◇トリミプラミン;
◇ミルタゼピン;
◇デュロキセチン;又は
◇ミルナシプラン。
【0014】
「アルファ−2アドレナリン作動性アゴニスト」とは、特に、下記の化合物(適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇クロニジン;
◇デクスメデトミジン;
◇ミバゼロール;
◇ロフェキシジン;
◇グアンファシン;又は
◇グアナベンズアセテート。
【0015】
「カンナビノイド」とは、特に、下記を意味するが、これらに限られない、
- CP55940: ((−)−シス−3−[2−ヒドロキシ−4−(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]−トランス−4(3−ヒドロキシプロピル)シクロヘキサノール)、
- AM1241: (3−(2−ヨード−5−ニトロベンゾイル)−1−(1−メチル−2−ピペリジニルメチル)−1H−インドール、
- WIN55212−2: (R)−(+)−[2,3−ジヒドロ−5−メチル−3[(モルホリニル)−メチル]ピロロール[1,2,3−de]−1,4−ベンゾキサジニル]−(1−ナフタレニル)メタドンメシレート又は((R)−(+)−[2,3−ジヒドロ−5−メチル−3−(4−モルホリニルメチル)ピロロ[1,2,3−de]−1,4−ベンゾキサジン−6−イル]−1−ナフタレニルメタドン)、
- JWH−133: 3−(1’1’−ジメチルブチル)−1−デオキシ−Δ8−テトラヒドロカンナビノール;3−(1’,1’−ジメチルブチル)−1−デオキシ−Δ8−THC、
- JWH−051: (2−メチル−1−プロピル−1H−インドール−3−イル)−1−ナフタレニルメタノン、又は
- ドロナビノール。
【0016】
「GABA作動性誘導体」とは、特に、下記の化合物(適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇ガバペンチン;
◇バクロフェン;又は
◇プレガバリン。
【0017】
「疼痛」とは、この出願においては、「存在する又は潜在的な組織ダメージと関連するか又は患者によりかかる用語で述べられる任意の不快な感情及び知覚経験」を意味する。
【0018】
この発明の好適変形物は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、モルヒネ又はモルヒネ類似体若しくは誘導体と共に含む、疼痛の治療又は防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品に関係する。
【0019】
特に、この発明の主題は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、モルヒネと共に含む、疼痛の治療又は防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品である。
【0020】
この発明の他の変形物によれば
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、疼痛の治療または防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のために、ナロキソン又はナルトレキソンと組み合わせる。
【0021】
この発明は又、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、ナトリウムチャンネルインヒビター、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルタメート作動性系のインヒビター、三環系抗鬱薬及びGABA作動性誘導体から選択する鎮痛剤と組み合わせて含む、疼痛の治療または防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品にも関係する。
【0022】
この発明の製品により治療することのできる疼痛の種類のうちで、下記を特に挙げることができる:
◇癌と関連する疼痛 ((1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミンは、抗癌剤でもあるので、特に好適);
◇癌以外の慢性疾患と関連した疼痛例えばウイルス性又はレトロウイルス性疾患と関連した疼痛(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)と関連した若しくは該症候群後に生じる疼痛又は帯状疱疹と関連した疼痛)又は糖尿病性神経障害;
◇神経障害性疼痛例えば三叉神経痛、舌咽神経痛、神経根障害、糖尿病性神経障害又は抗癌剤と関連した疼痛、炎症性疼痛及び転移浸潤による二次的神経障害と関連した疼痛;
◇疼痛性肥胖症;
◇火傷と関連した疼痛;
◇片頭痛;
◇手術前後の疼痛;
◇慢性炎症の疼痛;
◇座骨神経痛;
◇ヘルペス後神経痛;
◇慢性痛、結合組織炎、疼痛性神経ジストロフィー(algoneurodystrophy)又は複合局所疼痛症候群。
◇血管脳偶発症候、視床障害又は多発性硬化症後の中枢痛症候群;
◇外傷、切断などの肉体的疼痛;
◇又は、中毒と関連した疼痛。
【0023】
この発明による医薬の投与は、局所的経路、経口経路、非経口経路により、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射などにより、又はこれらの経路の組合せによって行なうことができる。
【0024】
上記の疾患又は障害の治療に対して構想される本発明の化合物の投与量は、投与方法、治療される患者の年齢及び体重並びにその患者の状態によって変化し、それは、所属外科医師又は獣医師によって最終的に決定される。かかる所属外科医又は獣医師により決定された量を、ここでは、「有効な治療的量」と呼ぶ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
別途規定しない限り、ここで用いるすべての技術的及び科学的用語は、この発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。同様に、ここで言及されたすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献を、参考として援用する。
【0026】
図1は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、化合物(1)の、静脈経路による注射後の効果を示している。
図2は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、モルヒネの、腹腔内経路による注射後の効果を示している。
図3及び4は、静脈経路による化合物(1)と腹腔内経路によるモルヒネとの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける効果を示している。
図5は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるフェンタニルの、単独の及び、静脈経路による化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図6は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるリドカイン単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図7は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるナトリウムチャンネルインヒビター(ICS化合物)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図8は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるイブプロフェンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図9は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるケタミンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図10は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるカンナビノイドレセプター(CP55940)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図11は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるオピエートレセプターのリガンド単独(ナロキソン)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
【0027】
下記の実施例は、上記の手順を説明するために与えるものであり、如何なる状況においても、この発明の範囲を制限するものと考えてはならない。
【0028】
この発明の製品の薬理学的研究
この発明の化合物の活性を、ラットの肢にカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、イン・ビボで評価した。
【0029】
実験の日に体重180〜240gの雄のSprague Dawley (Charles River)ラットを、動物室条件下に5〜8日間閉じ込めて、実験前及び実験中、18時間にわたってグリッド上で絶食させた。これらのグループは、少なくとも6匹の動物により構成されている。これらの製品を、カラゲーニンの注射の2時間30分後に、腹腔内(i.p.2ml/kg)又は静脈内経路(i.v.1ml/kg)により投与した。2%のカラゲーニンを、ラットの右後肢の足底経路により注射した。痛みの閾値を、無痛覚計を用いて加えられる機械的刺激によりラットが肢を引っ込めるのを測定すること(Randall-Selitto試験)により評価した。これらの測定を、カラゲーニンの注射(t=−2時間30分)の直前に行ない、その後、試験すべき製品の注射(t=0で実施)の後、30分、2時間30分及び4時間の時点で行なった。これらの製品の効力を、それらの、カラゲーニン痛覚過敏症を有意に低減させる能力により評価する。この効力は、分散分析試験(1経路)及び/又はDunnett試験(2経路)により統計的に決定される。
【0030】
以後、実施例においては、「化合物1」は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン(へテロ三量体Gタンパク質により媒介されるシグナルのインヒビター)を指す。
【実施例】
【0031】
実施例1:化合物1の、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1の種々の投与量を用いて得られた結果を、図1に示した。
【0032】
化合物1の鎮痛活性が、このカラゲーニン誘導された痛覚過敏症試験において示されている。1mg/kg(i.v.)の投与量から始めて、ラットの肢に加えられた機械的刺激に従う疼痛閾値は、有意に減少している。
【0033】
実施例2:モルヒネの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、モルヒネの種々の投与量を用いて得られた結果を、図2に示した。
【0034】
モルヒネの鎮痛活性が、このカラゲーニン誘導された痛覚過敏症試験において示されている。1mg/kg(i.p.)の投与量から始めて、ラットの肢に加えられた機械的刺激に従う疼痛閾値は、有意に減少している。
【0035】
実施例3:化合物1及びモルヒネの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1とモルヒネの種々の組合せを用いて得られた結果を、図3及び4に示した。
【0036】
化合物1+モルヒネの組合せの鎮痛活性が、前と同じモデルにおいて示されている。この組合せの鎮痛効果は、これらの化合物をそれぞれ単独で用いた場合の効果より一層強力で且つ一層持続性である(換言すれば、協同効果が認められる)。かかる組合せのコンテキストにおいて、0.015mg/kg(i.p.)のモルヒネの投与量が、この場合には、有効であることが見出される。
【0037】
それ故、実施例1及び2の結果と比べて、化合物1及びモルヒネの投与が、組合わせた場合には、協同的鎮痛効果を有するということが注意される(図4)。事実、化合物1の利用は、同等の効果を得るために必要なモルヒネの投与量を少なくとも30〜50倍減らすことを可能にする。
【0038】
実施例4:化合物1及びフェンタニルの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1とフェンタニルの種々の組合せを用いて得られた結果を、図5に示した。
【0039】
フェンタニルを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が注意される。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約250〜300g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、600g/mm2である。
【0040】
実施例5:化合物1及びリドカインの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びリドカインの種々の組合せにより得られた結果を、図6に示した。
【0041】
リドカインを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約280〜320g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、430g/mm2である。
【0042】
実施例6:化合物1及びナトリウムチャンネルインヒビター(ICS化合物)の組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びナトリウムチャンネルインヒビターの種々の組合せにより得られた結果を、図7に示した。
【0043】
用いたナトリウムチャンネルインヒビターは、ブチル2−[4−(1.1’−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾール−2−イル]エチルカルバメート(ICS化合物と呼ばれる)である。
【0044】
ブチル2−[4−(1.1’−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾール−2−イル]エチルカルバメートを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約250g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、450g/mm2である。
【0045】
実施例7:化合物1及びイブプロフェンの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びイブプロフェンの種々の組合せにより得られた結果を、図8に示した。
【0046】
イブプロフェンを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約260〜320g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、500g/mm2である。
【0047】
実施例8:化合物1及びケタミンの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びケタミンの種々の組合せにより得られた結果を、図9に示した。
【0048】
ケタミンを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約260〜290g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、480g/mm2である。
【0049】
実施例9:化合物1及びカンナビノイドレセプターアゴニスト(CP55940)の組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びカンナビノイドレセプターアゴニストの種々の組合せにより得られた結果を、図10に示した。
【0050】
CP55940を化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約260g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、730g/mm2である。
【0051】
実施例10:化合物1及びオピエートレセプターのリガンドの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びオピエートレセプターのリガンドの種々の組合せにより得られた結果を、図11に示した。
【0052】
用いたオピエートレセプターのリガンドは、ナロキソンである。
【0053】
ナロキソンを化合物(1)と組合わせた場合には、ポテンシャル化が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照については220g/mm2であり、化合物(1)単独の場合には430g/mm2(3mg/kg i.v.)であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、500g/mm2である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、化合物(1)の、静脈経路による注射後の効果を示している図である。
【図2】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、モルヒネの、腹腔内経路による注射後の効果を示している図である。
【図3】静脈経路による化合物(1)と腹腔内経路によるモルヒネとの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける効果を示している図である。
【図4】静脈経路による化合物(1)と腹腔内経路によるモルヒネとの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける効果を示している図である。
【図5】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるフェンタニルの、単独の及び、静脈経路による化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図6】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるリドカイン単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図7】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるナトリウムチャンネルインヒビター(ICS化合物)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図8】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるイブプロフェンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図9】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるケタミンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図10】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるカンナビノイドレセプター(CP55940)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図11】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるオピエートレセプターのリガンド単独(ナロキソン)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロイミダゾピラジン誘導体即ち(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種のを含む鎮痛性組合せ物に関係する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
今日、疼痛は、軽減又は治癒するのが困難な病状のままでいる。疼痛を満足に低減させることのできる現在利用可能な化合物の利用は、しばしば、望ましくない副作用(鎮静、習慣性、痛覚過敏、潰瘍の危険)を伴う。これらの副作用の危険を低減させるために、異なる作用機構を有する幾つかの鎮痛剤が、しばしば、組み合わせて用いられる。これは、各薬剤の減じた投与量を用いることによって、望ましくない副作用の危険を低減させつつ、改善された疼痛治療を可能にする。
【0003】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミンは、出願人により、抗癌剤として記載された。
【0004】
モルヒネ自体は、今日、その鎮痛効果について周知であるが、アヘン(モルヒネは、その主成分である)から、19世紀の非常に初期に、ドイツの薬剤師フレデリック ゼルテュルナーにより単離された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人は、今や、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミンとモルヒネ又はモルヒネ類似体若しくは誘導体との組合せが、疼痛の治療において、患者に投与されるモルヒネ又はモルヒネ類似体若しくは誘導体の投与量を、同等の鎮痛効果を維持したまま、相当に低減させるほどに強力な共同効果を有するということを発見した。事実、活性投与量より少ない投与量(即ち、それら自体によっては、治療効果を生じえない投与量)の組合せにて投与されたこれらの2種の活性成分は、組み合わされた場合には、高度に有意の治療効果を生じる。
【0006】
本発明は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩例えばモルヒネ又はモルヒネ誘導体、ナトリウムチャンネルインヒビター、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルタメート作動性システムのインヒビター、三環系抗鬱薬、アルファ2アドレナリン作動性アゴニスト、カンナビノイド及びGABA作動性誘導体より選択する鎮痛剤と組合わせて含む、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品に関係する。
【0007】
製薬上許容しうる塩とは、特に、無機酸例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、燐酸、二燐酸、及び硝酸、又は有機酸例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、パモ酸、シュウ酸及びステアリン酸による付加塩を意味する。塩基例えば水酸化ナトリウム又はカリウムから形成された塩も又、それらが使用しうる場合には、本発明の範囲内に入る。製薬上許容しうる塩の他の例については、「Salt selection for basic drugs」, Int.J.Pharm. (1986), 33, 201-217を参照することができる。
【0008】
同時の治療用途とは、本願においては、幾つかの活性な成分の、同じ経路による、同時の投与を意味する。別々の用途とは、特に、幾つかの活性成分の、異なる経路によるほぼ同時の投与を意味する。経時的な治療用投与とは、幾つかの活性成分の、異なる時点での投与、特に、活性成分の一つの完全な投与がその投与方法によって、他の投与の前または他の投与の開始前に完了する投与方法を意味する。この方法において、活性成分の一つを、他の活性成分の投与の数カ月前に投与することは可能である。この場合、同時の投与は、生じない。
【0009】
オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩とは、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、フェンタニル、アフェンタニル、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホン、ペチジン、レミフェンタニル、スフェンタニル、デキストロプロポキシフェン、トラマドール、ブプレノルフィン、ナルブフィン、モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸ヒドロモルホン及び被覆された硫酸モルヒネ、並びにモルヒネ誘導体から選択する物質を意味する。
【0010】
「ナトリウムチャンネルインヒビター」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇カルバマゼピン;
◇リドカイン;
◇テトラカイン;
◇ブピバカイン;
◇プロカイン;
◇メピバカイン;
◇ジブカイン;
◇ラモトリジン;
◇メキシレチン;
◇リルゾール;又は
◇ブチル2−(4−[1.1’−ビフェニル]−4−イル−1H−イミダゾール−2−イル)エチルカルバメート(ICS化合物)。
【0011】
「非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇アセチルサリチル酸及びその誘導体;
◇インドールNSAID及び誘導体例えばインドメタシン及びスリンダク;
◇アリールカルボン酸NSAID例えばチアプロフェン酸、アルミノプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン又はナプロキセン;
◇NSAIDオキシカム誘導体例えばメロキシカム、ピロキシカム又はテノキシカム;
◇モルニフルメート;
◇ブタゾリジン;
◇シクロキシゲナーゼ−2(COX−2)の選択的インヒビター例えばセレコキシブ又はロフェコキシブ、ルミラコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ及びミネスリド;又は
◇アセトアミノフェン(パラセタモール)及びジピロン。
【0012】
「グルタメート作動性系のインヒビター」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇ケタミン;
◇アマンタジン;
◇メマンチン;又は
◇デキストロメトロファン。
【0013】
「三環系抗鬱薬」とは、特に、下記の化合物 (適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇クロミプラミン;
◇アモキサピン;
◇アミトリプチリン;
◇デシプラミン;
◇ドチエピン塩酸塩;
◇ドキセピン;
◇イミプラミン;
◇ノルトリプチリン;
◇プロトリプチリン;
◇トリミプラミン;
◇ミルタゼピン;
◇デュロキセチン;又は
◇ミルナシプラン。
【0014】
「アルファ−2アドレナリン作動性アゴニスト」とは、特に、下記の化合物(適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇クロニジン;
◇デクスメデトミジン;
◇ミバゼロール;
◇ロフェキシジン;
◇グアンファシン;又は
◇グアナベンズアセテート。
【0015】
「カンナビノイド」とは、特に、下記を意味するが、これらに限られない、
- CP55940: ((−)−シス−3−[2−ヒドロキシ−4−(1,1−ジメチルヘプチル)フェニル]−トランス−4(3−ヒドロキシプロピル)シクロヘキサノール)、
- AM1241: (3−(2−ヨード−5−ニトロベンゾイル)−1−(1−メチル−2−ピペリジニルメチル)−1H−インドール、
- WIN55212−2: (R)−(+)−[2,3−ジヒドロ−5−メチル−3[(モルホリニル)−メチル]ピロロール[1,2,3−de]−1,4−ベンゾキサジニル]−(1−ナフタレニル)メタドンメシレート又は((R)−(+)−[2,3−ジヒドロ−5−メチル−3−(4−モルホリニルメチル)ピロロ[1,2,3−de]−1,4−ベンゾキサジン−6−イル]−1−ナフタレニルメタドン)、
- JWH−133: 3−(1’1’−ジメチルブチル)−1−デオキシ−Δ8−テトラヒドロカンナビノール;3−(1’,1’−ジメチルブチル)−1−デオキシ−Δ8−THC、
- JWH−051: (2−メチル−1−プロピル−1H−インドール−3−イル)−1−ナフタレニルメタノン、又は
- ドロナビノール。
【0016】
「GABA作動性誘導体」とは、特に、下記の化合物(適宜、製薬上許容しうる塩の形態)を意味する:
◇ガバペンチン;
◇バクロフェン;又は
◇プレガバリン。
【0017】
「疼痛」とは、この出願においては、「存在する又は潜在的な組織ダメージと関連するか又は患者によりかかる用語で述べられる任意の不快な感情及び知覚経験」を意味する。
【0018】
この発明の好適変形物は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、モルヒネ又はモルヒネ類似体若しくは誘導体と共に含む、疼痛の治療又は防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品に関係する。
【0019】
特に、この発明の主題は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、モルヒネと共に含む、疼痛の治療又は防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品である。
【0020】
この発明の他の変形物によれば
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、疼痛の治療または防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のために、ナロキソン又はナルトレキソンと組み合わせる。
【0021】
この発明は又、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、ナトリウムチャンネルインヒビター、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルタメート作動性系のインヒビター、三環系抗鬱薬及びGABA作動性誘導体から選択する鎮痛剤と組み合わせて含む、疼痛の治療または防止のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品にも関係する。
【0022】
この発明の製品により治療することのできる疼痛の種類のうちで、下記を特に挙げることができる:
◇癌と関連する疼痛 ((1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミンは、抗癌剤でもあるので、特に好適);
◇癌以外の慢性疾患と関連した疼痛例えばウイルス性又はレトロウイルス性疾患と関連した疼痛(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)と関連した若しくは該症候群後に生じる疼痛又は帯状疱疹と関連した疼痛)又は糖尿病性神経障害;
◇神経障害性疼痛例えば三叉神経痛、舌咽神経痛、神経根障害、糖尿病性神経障害又は抗癌剤と関連した疼痛、炎症性疼痛及び転移浸潤による二次的神経障害と関連した疼痛;
◇疼痛性肥胖症;
◇火傷と関連した疼痛;
◇片頭痛;
◇手術前後の疼痛;
◇慢性炎症の疼痛;
◇座骨神経痛;
◇ヘルペス後神経痛;
◇慢性痛、結合組織炎、疼痛性神経ジストロフィー(algoneurodystrophy)又は複合局所疼痛症候群。
◇血管脳偶発症候、視床障害又は多発性硬化症後の中枢痛症候群;
◇外傷、切断などの肉体的疼痛;
◇又は、中毒と関連した疼痛。
【0023】
この発明による医薬の投与は、局所的経路、経口経路、非経口経路により、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射などにより、又はこれらの経路の組合せによって行なうことができる。
【0024】
上記の疾患又は障害の治療に対して構想される本発明の化合物の投与量は、投与方法、治療される患者の年齢及び体重並びにその患者の状態によって変化し、それは、所属外科医師又は獣医師によって最終的に決定される。かかる所属外科医又は獣医師により決定された量を、ここでは、「有効な治療的量」と呼ぶ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
別途規定しない限り、ここで用いるすべての技術的及び科学的用語は、この発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。同様に、ここで言及されたすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献を、参考として援用する。
【0026】
図1は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、化合物(1)の、静脈経路による注射後の効果を示している。
図2は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、モルヒネの、腹腔内経路による注射後の効果を示している。
図3及び4は、静脈経路による化合物(1)と腹腔内経路によるモルヒネとの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける効果を示している。
図5は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるフェンタニルの、単独の及び、静脈経路による化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図6は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるリドカイン単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図7は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるナトリウムチャンネルインヒビター(ICS化合物)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図8は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるイブプロフェンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図9は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるケタミンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図10は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるカンナビノイドレセプター(CP55940)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
図11は、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるオピエートレセプターのリガンド単独(ナロキソン)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している。
【0027】
下記の実施例は、上記の手順を説明するために与えるものであり、如何なる状況においても、この発明の範囲を制限するものと考えてはならない。
【0028】
この発明の製品の薬理学的研究
この発明の化合物の活性を、ラットの肢にカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、イン・ビボで評価した。
【0029】
実験の日に体重180〜240gの雄のSprague Dawley (Charles River)ラットを、動物室条件下に5〜8日間閉じ込めて、実験前及び実験中、18時間にわたってグリッド上で絶食させた。これらのグループは、少なくとも6匹の動物により構成されている。これらの製品を、カラゲーニンの注射の2時間30分後に、腹腔内(i.p.2ml/kg)又は静脈内経路(i.v.1ml/kg)により投与した。2%のカラゲーニンを、ラットの右後肢の足底経路により注射した。痛みの閾値を、無痛覚計を用いて加えられる機械的刺激によりラットが肢を引っ込めるのを測定すること(Randall-Selitto試験)により評価した。これらの測定を、カラゲーニンの注射(t=−2時間30分)の直前に行ない、その後、試験すべき製品の注射(t=0で実施)の後、30分、2時間30分及び4時間の時点で行なった。これらの製品の効力を、それらの、カラゲーニン痛覚過敏症を有意に低減させる能力により評価する。この効力は、分散分析試験(1経路)及び/又はDunnett試験(2経路)により統計的に決定される。
【0030】
以後、実施例においては、「化合物1」は、(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン(へテロ三量体Gタンパク質により媒介されるシグナルのインヒビター)を指す。
【実施例】
【0031】
実施例1:化合物1の、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1の種々の投与量を用いて得られた結果を、図1に示した。
【0032】
化合物1の鎮痛活性が、このカラゲーニン誘導された痛覚過敏症試験において示されている。1mg/kg(i.v.)の投与量から始めて、ラットの肢に加えられた機械的刺激に従う疼痛閾値は、有意に減少している。
【0033】
実施例2:モルヒネの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、モルヒネの種々の投与量を用いて得られた結果を、図2に示した。
【0034】
モルヒネの鎮痛活性が、このカラゲーニン誘導された痛覚過敏症試験において示されている。1mg/kg(i.p.)の投与量から始めて、ラットの肢に加えられた機械的刺激に従う疼痛閾値は、有意に減少している。
【0035】
実施例3:化合物1及びモルヒネの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1とモルヒネの種々の組合せを用いて得られた結果を、図3及び4に示した。
【0036】
化合物1+モルヒネの組合せの鎮痛活性が、前と同じモデルにおいて示されている。この組合せの鎮痛効果は、これらの化合物をそれぞれ単独で用いた場合の効果より一層強力で且つ一層持続性である(換言すれば、協同効果が認められる)。かかる組合せのコンテキストにおいて、0.015mg/kg(i.p.)のモルヒネの投与量が、この場合には、有効であることが見出される。
【0037】
それ故、実施例1及び2の結果と比べて、化合物1及びモルヒネの投与が、組合わせた場合には、協同的鎮痛効果を有するということが注意される(図4)。事実、化合物1の利用は、同等の効果を得るために必要なモルヒネの投与量を少なくとも30〜50倍減らすことを可能にする。
【0038】
実施例4:化合物1及びフェンタニルの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1とフェンタニルの種々の組合せを用いて得られた結果を、図5に示した。
【0039】
フェンタニルを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が注意される。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約250〜300g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、600g/mm2である。
【0040】
実施例5:化合物1及びリドカインの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びリドカインの種々の組合せにより得られた結果を、図6に示した。
【0041】
リドカインを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約280〜320g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、430g/mm2である。
【0042】
実施例6:化合物1及びナトリウムチャンネルインヒビター(ICS化合物)の組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びナトリウムチャンネルインヒビターの種々の組合せにより得られた結果を、図7に示した。
【0043】
用いたナトリウムチャンネルインヒビターは、ブチル2−[4−(1.1’−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾール−2−イル]エチルカルバメート(ICS化合物と呼ばれる)である。
【0044】
ブチル2−[4−(1.1’−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾール−2−イル]エチルカルバメートを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約250g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、450g/mm2である。
【0045】
実施例7:化合物1及びイブプロフェンの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びイブプロフェンの種々の組合せにより得られた結果を、図8に示した。
【0046】
イブプロフェンを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約260〜320g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、500g/mm2である。
【0047】
実施例8:化合物1及びケタミンの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びケタミンの種々の組合せにより得られた結果を、図9に示した。
【0048】
ケタミンを化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約260〜290g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、480g/mm2である。
【0049】
実施例9:化合物1及びカンナビノイドレセプターアゴニスト(CP55940)の組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びカンナビノイドレセプターアゴニストの種々の組合せにより得られた結果を、図10に示した。
【0050】
CP55940を化合物(1)と組合わせた場合には、協同効果が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照又は化合物(1)単独の場合に約260g/mm2であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、730g/mm2である。
【0051】
実施例10:化合物1及びオピエートレセプターのリガンドの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症に対する効果:
上記のラットの肢におけるカラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおいて、化合物1及びオピエートレセプターのリガンドの種々の組合せにより得られた結果を、図11に示した。
【0052】
用いたオピエートレセプターのリガンドは、ナロキソンである。
【0053】
ナロキソンを化合物(1)と組合わせた場合には、ポテンシャル化が認められる。事実、0.5時間の時点において、この組合せは、増大する圧力を加えたときにラットがその炎症を生じた肢において許容する疼痛閾値を増大させる。対照については220g/mm2であり、化合物(1)単独の場合には430g/mm2(3mg/kg i.v.)であった疼痛閾値は、組合わせた場合の効果においては、500g/mm2である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、化合物(1)の、静脈経路による注射後の効果を示している図である。
【図2】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、モルヒネの、腹腔内経路による注射後の効果を示している図である。
【図3】静脈経路による化合物(1)と腹腔内経路によるモルヒネとの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける効果を示している図である。
【図4】静脈経路による化合物(1)と腹腔内経路によるモルヒネとの組合せの、カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける効果を示している図である。
【図5】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるフェンタニルの、単独の及び、静脈経路による化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図6】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるリドカイン単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図7】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるナトリウムチャンネルインヒビター(ICS化合物)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図8】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるイブプロフェンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図9】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるケタミンの、単独の、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図10】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるカンナビノイドレセプター(CP55940)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【図11】カラゲーニン誘導された痛覚過敏症モデルにおける、腹腔内経路によるオピエートレセプターのリガンド単独(ナロキソン)の効果、及び静脈経路により注射された化合物(1)との組合せによる効果を示している図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩例えばモルヒネ若しくはモルヒネ誘導体、ナトリウムチャンネルインヒビター、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルタメート作動性系インヒビター、三環系抗鬱薬及びGABA作動性誘導体から選択する鎮痛剤と組み合わせて含む、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品。
【請求項2】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、モルヒネ又はその類似体若しくは誘導体の一種と組み合わせた、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩を、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、フェンタニル、アフェンタニル、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホン、ペチジン、レミフェンタニル、スフェンタニル、デキストロプロポキシフェン、トラマドール、ブプレノルフィン、ナルブフィン、モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸ヒドロモルホン及び被覆された硫酸モルヒネ、並びにモルヒネ誘導体を含む群から選択する、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、ナロキソン又はナルトレキソンと組み合わせた、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種のモルヒネとの組合せ物よりなる、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための、請求項2に記載の製品。
【請求項6】
同時の用途を意図した、請求項1〜5の一つに記載の製品。
【請求項7】
別々の用途を意図した、請求項1〜5の一つに記載の製品。
【請求項8】
経時的な用途を意図した、請求項1〜5の一つに記載の製品。
【請求項9】
治療すべき疼痛を、癌と関連する疼痛、癌以外の慢性疾患と関連した疼痛、神経障害性疼痛、神経根障害、糖尿病性神経障害と関連した疼痛又はAIDSと関連した若しくはAIDS後に生じる疼痛と関連する疼痛、又は抗癌剤と関連した疼痛、炎症性疼痛、疼痛性肥胖症、火傷と関連した疼痛、片頭痛、手術前後の疼痛、慢性炎症の疼痛、座骨神経痛、ヘルペス後神経痛、結合組織炎、疼痛性神経ジストロフィー又は複合局所疼痛症候群及び脳血管偶発症候、視床障害若しくは多発性硬化症後の中枢痛症候群又は外傷、切断などの肉体的疼痛、又は中毒と関連した疼痛の型から選択する、請求項1〜8の一つに記載の製品。
【請求項10】
治療することを意図した疼痛が、癌と関連している、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
治療することを意図した疼痛が、癌以外の慢性疾患と関連している、請求項9に記載の製品。
【請求項1】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩例えばモルヒネ若しくはモルヒネ誘導体、ナトリウムチャンネルインヒビター、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、グルタメート作動性系インヒビター、三環系抗鬱薬及びGABA作動性誘導体から選択する鎮痛剤と組み合わせて含む、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための製品。
【請求項2】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、モルヒネ又はその類似体若しくは誘導体の一種と組み合わせた、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
オピエートレセプターのリガンド又はそれらの塩を、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、フェンタニル、アフェンタニル、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、ヒドロモルホン、ペチジン、レミフェンタニル、スフェンタニル、デキストロプロポキシフェン、トラマドール、ブプレノルフィン、ナルブフィン、モルヒネ、硫酸モルヒネ、塩酸ヒドロモルホン及び被覆された硫酸モルヒネ、並びにモルヒネ誘導体を含む群から選択する、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種を、ナロキソン又はナルトレキソンと組み合わせた、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
(1R)−1−[({(2R)−2−アミノ−3−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−3−オキソプロピル}ジチオ)メチル]−2−[(8S)−8−(シクロヘキシルメチル)−2−フェニル−5,6−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−7(8H)−イル]−2−オキソエチルアミン又はその製薬上許容しうる塩の一種のモルヒネとの組合せ物よりなる、疼痛の治療又は予防のための、同時の、別々の又は経時的な治療用途のための、請求項2に記載の製品。
【請求項6】
同時の用途を意図した、請求項1〜5の一つに記載の製品。
【請求項7】
別々の用途を意図した、請求項1〜5の一つに記載の製品。
【請求項8】
経時的な用途を意図した、請求項1〜5の一つに記載の製品。
【請求項9】
治療すべき疼痛を、癌と関連する疼痛、癌以外の慢性疾患と関連した疼痛、神経障害性疼痛、神経根障害、糖尿病性神経障害と関連した疼痛又はAIDSと関連した若しくはAIDS後に生じる疼痛と関連する疼痛、又は抗癌剤と関連した疼痛、炎症性疼痛、疼痛性肥胖症、火傷と関連した疼痛、片頭痛、手術前後の疼痛、慢性炎症の疼痛、座骨神経痛、ヘルペス後神経痛、結合組織炎、疼痛性神経ジストロフィー又は複合局所疼痛症候群及び脳血管偶発症候、視床障害若しくは多発性硬化症後の中枢痛症候群又は外傷、切断などの肉体的疼痛、又は中毒と関連した疼痛の型から選択する、請求項1〜8の一つに記載の製品。
【請求項10】
治療することを意図した疼痛が、癌と関連している、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
治療することを意図した疼痛が、癌以外の慢性疾患と関連している、請求項9に記載の製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−524176(P2008−524176A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546122(P2007−546122)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003162
【国際公開番号】WO2006/067312
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(505474717)ソシエテ ド コンセイユ ド ルシェルシェ エ ダアップリカーション シャンティフィック(エス.セー.エール.アー.エス.) (41)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003162
【国際公開番号】WO2006/067312
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(505474717)ソシエテ ド コンセイユ ド ルシェルシェ エ ダアップリカーション シャンティフィック(エス.セー.エール.アー.エス.) (41)
【Fターム(参考)】
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