説明

ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤及び中間体の改良された製造方法

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤及び中間体の改良された製造方法に関するもので、本発明による製造方法は反応時に安価な試薬を用いることで製造費用を節減することができ、収率も向上するので大量生産に有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤及び中間体の改良された製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DPP−IVは、H−Xaa−Pro−Y(またはH−Xaa−Ala−Y、ここでXaaは親油性である任意のアミノ酸で、Proはプロリン、Alaはアラニン)の末端配列を有するペプチドのN−末端ジペプチドを切断する機能を有する酵素であり(非特許文献1)、DP−IV、DP−4またはDAP−IVと呼ばれたりする。DPP−IVが食後の血糖量調節に対するインスリン作用に強力な影響を及ぼすことが知られたグルカゴン様タンパク質−1(Glucagon-like protein-1、以下GLP−1という)を分解することが明らかにされた後(非特許文献2)、第2型糖尿病において非常に有力な治療剤としての可能性が提示され、以後、DPP−IV阻害剤開発のための研究が加速化され始めた。
【0003】
DPP−IV阻害剤に関する研究の中でメルク(Merck)社は、ベータアミノ酸構造を有するトリアゾロピペラジン化合物、シタグリプチン(sitagliptin)を開発した。前記化合物は、第2型糖尿病治療のための最初のDPP−IV阻害剤として、2006年に米国FDAの新薬承認を得て現在世界各国でJanuviaTMという商標で市販されている。これに対して、特許文献1では、シタグリプチンのトリアゾロピペラジン部分を、ヘテロ原子を含んだピペラジノンに置換した場合、優れたDPP−IV阻害活性を有するのみならず従来のDPP−IV阻害剤に比べて顕著に改善した生体利用率を有し得ることを発見して、下記の化学式1で表わされる新規なベータアミノ基を含んだヘテロ環化合物またはその薬学的に許容可能な塩、その製造方法及びそれを有効成分として含む糖尿または肥満予防及び治療用薬学的組成物を提供したことがある。
【0004】
【化1】

【0005】
前記特許文献1では下記のスキームAで表わされるように、I)化学式2のベータイミノ基を有する化合物と化学式3の置換されたヘテロ環化合物を1−ハイドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及び3級アミンを用いて反応させてペプチド結合で連結された化学式4の化合物を製造する工程、II)前記化学式4の化合物を酸条件下で反応させる工程を含むベータアミノ基を有する化学式1のヘテロ環化合物の製造方法を開示している。
【0006】
【化2】

【0007】
(前記式において、PGは保護基である。)
【0008】
ここで、前記スキームAの化学式2のベータアミノ基を有する化合物は、前記化学式1で表わされるDPP−IV阻害剤の製造以外にも特許文献2〜12などに記載された多様なDPP−IV阻害剤の製造のために用いることができ、多様な方法を通じて製造され得る。
【0009】
一例として、前記化学式2の化合物は、下記のスキームに示したように非特許文献3および非特許文献4に記載された公知の方法で製造することができる。
【0010】
【化3】

【0011】
具体的に、(2S)−(+)−2,5−ジハイドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジンを2,4,5−トリフルオロベンジルブロミドと反応させて酸処理した後、アミン保護反応を通じてエステル化合物を得る。エステル化合物は、再び加水分解して3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−2−アミノプロピオン酸を得た後、イソブチルクロロホルマートとトリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンのような3級アミン及びジアゾメタンを用いてジアゾケトンを形成した後、銀ベンゾエートと反応させて製造することができる。しかし、この反応は、低温(−78℃)で行なわなければならないし、高価なアルファアミノ酸を購入して使用しなければならず、危険性が大きなジアゾメタンなどを使用しなければならないという問題点を有している。
【0012】
前記化学式2の化合物を製造する異なる方法が、下記のスキームに示したように非特許文献5に開示され、非特許文献6にも同様に開示されている。
【0013】
【化4】

【0014】
すなわち、2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸を1,1’−カルボニルジイミダゾールを用いて活性化させた後、マロン酸モノメチルカリウムと反応させてベータケトエステル化合物を製造する。これをアンモニウムアセテートとアンモニウム水溶液を用いてエナミンエステルを製造して、このエステル化合物をクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体とキラルフェロセニルリガンドIを用いて高圧の水素反応を通じてキラル1次アミンを有するベータアミノエステルである化合物を製造した後、それを加水分解して化学式2の化合物を製造することができる。しかし、高価な金属触媒を用いて高圧の水素化反応を遂行しなければならないという問題点を有している。
【0015】
また、前記化学式2の化合物を製造する方法は、特許文献13にも開示されている。
【0016】
【化5】

【0017】
具体的に、2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸を酸活性化試薬であるオキサリルクロライドと2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオンと反応させた後、生成された物質をメタノールで還流させてそれに相応する化合物を製造する。これをエナンチオ選択性を有した還元試薬(S)−BINAP−RuClと水素反応を通じて(S)−配位を有する化合物を製造して、これを再び加水分解した後、O−ベンジルヒドロキシルアミンとカップリング反応をさせて中間体を製造する。このように生成された中間体をトリフェニルホスフィンとジイソプロピルアゾジカルボキシラートの存在下で環縮合反応をさせて、水酸化リチウム水溶液で処理して、(R)−配位を有しながらO−ベンジルでアミン基が保護された化学式2の化合物を製造することができる。しかし、前記方法は全体的に長い工程を経て製造しなければならないので反応収率が低く、反応を長時間遂行しなければならないという問題点がある。
【0018】
このように、前記化学式2の化合物を製造する既存の公知の方法は、高価な試薬を使用したり、合成時間が長くて収率も低い方法であったりするため、商業的大量生産には相応しくない短所を有する。
【0019】
また、化学式3で表わされる化合物は、特許文献1に記載されたように、下記のスキームの方法で製造することができる。
【0020】
【化6】

【0021】
具体的に、出発物質D−セリンメチルエステル化合物は、トリチルクロライドで置換した後、再びヒドロキシ基をメシル基に置換して還流するとアジリジン化合物に変換される。
【0022】
アジリジン化合物は、トリフルオロ酢酸を用いてトリチル基を除去した後、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)で保護させた後、t−ブタノールで反応させてCbzを脱保護化することでメチル 2−アミノ−3−置換されたカーボネートで得られる。中間体は、還元試薬(ナトリウムシアノボロハイドライド、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド、ナトリウムボロハイドライドなど)を用いて、N−ブチルオキシカルボニル−2−アミノアセトアルデヒドと反応させた化合物に2次アミンをベンジルオキシカルボニル(Cbz)で保護させた化合物に製造して、ブチルオキシカルボニル(Boc)を脱保護化した化合物に製造することができる。このように生成された化合物をトリメチルアルミニウム(またはジイソプロピルエチルアミン/エチルアルコール、炭酸水素ナトリウム/メタノールなど)で環化反応させて、Cbzを脱保護化することで化学式3の化合物を得ることができる。
【0023】
しかし、この方法も高価な試薬を用いて、合成時間が長く、収率も低い方法であり、商業的大量生産には相応しくない短所を有する。
【0024】
さらに、従来の化学式1の製造時に使用された1−ハイドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)も高価な試薬であり、反応時の費用が多くかかるので、商業的大量生産には相応しくない問題点がある。
【0025】
そこで、本発明者等は、安価な試薬を用いて経済的で、収率も向上して、商業的大量生産に相応しい製造方法を研究している間に、化学式2及び化学式3の化合物の新しい製造方法を用いて、経済的かつ高収率で化学式1の化合物を製造することができ、大量生産に適用することができることを確認し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】韓国特許公開番号第2008−0094604号
【特許文献2】国際公開公報WO03/000181
【特許文献3】国際公開公報WO03/004498
【特許文献4】国際公開公報WO03/082817
【特許文献5】国際公開公報WO04/007468
【特許文献6】国際公開公報WO04/032836
【特許文献7】国際公開公報WO05/011581
【特許文献8】国際公開公報WO06/097175
【特許文献9】国際公開公報WO07/077508
【特許文献10】国際公開公報WO07/063928
【特許文献11】国際公開公報WO08/028662
【特許文献12】国際公開公報WO08/087560
【特許文献13】国際公開公報WO04/87650
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Heins J等,Biophys Acta,1988年,p.161
【非特許文献2】Mentlein R等,Eur J Biochem,1993年,p.829-35
【非特許文献3】J.Med.Chem.2005年,p.141
【非特許文献4】Synthesis,1997年,p.873
【非特許文献5】Tetrahedron:Asymmetry,2006年,p.205
【非特許文献6】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2007年,p.2622
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の製造において中間体として有用な化合物を製造する方法を提供することにある。
【0029】
本発明のまた別の目的は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改善した製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記目的を達成するために、本発明はジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の中間体の新しい製造方法を提供する。
【0031】
また、本発明はジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改善した製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明による製造方法は、反応時に安価な試薬を使用することで製造費用を節減することができ、収率も向上するので大量生産に有用に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明は、下記のスキーム1に示したように、化学式5の化合物にグリニャール(Grignard)試薬を用いてエポキシ環を開環して化学式6の化合物を製造する工程(工程a)、前記化学式6の化合物にアジ化ナトリウムを反応させて化学式7の化合物を製造する工程(工程b)、前記化学式7の化合物にトリフェニルホスフィンを反応させて化学式8の化合物を製造する工程(工程c)、前記化学式8の化合物を、シアン系列試薬を用いて、アジリジン環を開環して化学式9の化合物を製造する工程(工程d)、及び前記化学式9の化合物を塩基を用いて加水分解して化学式2の化合物を製造する工程(工程e)を含む化学式2で表わされるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤中間体の新しい製造方法を提供する。
【0035】
【化7】

【0036】
(前記スキーム1で、Xはハロゲンで、PGは保護基である)。
【0037】
具体的に、前記工程aにおいて、化学式5のエポキシド化合物をヨウ化銅(I)触媒存在下で2,4,5−トリフルオロフェニルマグネシウムブロマイド試薬と反応させてエポキシドを開環した化学式6の化合物を製造する。次に前記工程bでは、前記化学式6の化合物をヨウ化銅(I)触媒存在下でアジ化ナトリウムと反応させて化学式7のアジド化合物を製造する。次に、工程cにおいて、前記化学式7の化合物をトリフェニルホスフィンを用いてアジリジン環化合物を製造した後、アミン保護基を導入して化学式8の化合物を製造する。ここで、前記アミン保護基はブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、アセチル、ベンゾイルまたはトシルを使用することができる。次に工程dでは、前記化学式8の化合物を18−クラウン−6及び塩化アンモニウム下でシアノナトリウム、シアノカリウムなどのシアン系列試薬と反応させて化学式9の化合物を製造する。最後に前記工程eでは、前記化学式9の化合物を塩基で加水分解させて化学式2の化合物を製造し、ここで、好ましい塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを用いることができる。
【0038】
また、本発明は、前記化学式2の化合物製造時の中間体として生成される下記の化学式8または化学式9で表わされる化合物を提供する。
【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
(前記化学式8及び9において、PGは保護基である)。
【0042】
さらに、本発明は下記のスキーム2に示したように、化学式10の化合物のヒドロキシ基にt−ブトキシ基を導入して化学式11の化合物を製造する工程(工程a’)、及び前記化学式11の化合物をエチレンジアミンと反応させて環化反応を誘導して化学式3の化合物を製造する工程(工程b’)を含む、化学式3で表わされるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤中間体の新しい製造方法を提供する。
【0043】
【化10】

【0044】
具体的に、前記工程a’では、化学式10の化合物を酸触媒下でイソブチレンガスと反応させてヒドロキシ基にt−ブチル基が置換された化学式11の化合物を製造する。ここで、前記化学式10の化合物は商業的に購入可能かまたは発明が属する技術分野で公知の方法で製造することができ、例えば、Tetrahedron Letter:Asymmetry,1994年,p.2517に記載された方法で、L−セリンから亜硝酸ナトリウムとブロム化カリウムを用いてアミン基をブロム基に代替した後、これをチオニルクロライドのような酸触媒下でメタノールと反応させて得ることができる。次に前記工程b’では、前記化学式11の化合物を塩基存在下でエチレンジアミンと反応させて環化を誘導して化学式3の化合物を製造し、ここで、好ましい塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピリジン、トリエチルアミンなどを用いることができる。
【0045】
また、本発明は下記のスキーム3に示したように、反応溶媒下で化学式2の化合物と化学式3の化合物をトリフェニルホスフィン、ビス(2,2’−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド及び塩基を用いて反応させてペプチド結合で連結された化学式4の化合物を製造する工程(工程1)、及び
前記工程1で製造した化学式4の化合物のアミン保護基を除去して化学式1の化合物を製造する工程(工程2)を含む、化学式1で表わされるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法を提供する。
【0046】
【化11】

【0047】
(前記式において、PGは保護基である)。
【0048】
まず、工程1は、反応溶媒下で化学式2の化合物と化学式3の化合物をトリフェニルホスフィン、ビス(2,2’−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド及び塩基を用いて反応させてペプチド結合で連結された化学式4の化合物を製造する工程である。
【0049】
本発明において、前記反応液にトルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどを用いることができる。
【0050】
本発明において、前記塩基は、N−メチルモルホリン、イソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの3級アミンから選択される1種以上を用いることができる。
【0051】
本発明において、前記化学式2または3の化合物は、市販のものを用いるか、公知の方法または前記スキーム1または2に示された方法を用いて製造することができる。
【0052】
本発明において、前記工程1の反応は、−20〜80℃で遂行することが好ましく、前記温度範囲を逸脱する場合には、反応の進行が難しくて収率が低下する問題がある。
【0053】
次に、工程2は前記工程1で製造した化学式4の化合物のアミン保護基を除去して化学式1の化合物を製造する工程である。
【0054】
前記工程2の保護基除去は、酸条件または水素反応を通じて行われ得る。具体的に、アミン保護基がブトキシカルボニル(Boc)の場合、トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン、エチルアセテート/塩化水素、ジエチルエーテル/塩化水素、塩化水素/ジクロロメタンまたはメタノール/塩化水素などの酸条件で反応させて保護基を除去することができ、アミン保護基がベンジルオキシカルボニル(Cbz)の場合はパラジウム/カーボン存在下で水素反応を通じて保護基を除去することができる。
【0055】
前記化学式1で表わされる本発明のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤は、薬学的に許容可能な塩の形態で用いることができ、塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。遊離酸としては、無機酸と有機酸を用いることができ、無機酸としては塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸などを用いることができ、有機酸としては、クエン酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、4−トルエンスルホン酸、ガラクツロン酸、エンボン酸、グルタミン酸またはアスパラギン酸などを用いることができる。好ましくは、無機酸では塩酸、有機酸では酒石酸を用いることができる。
【0056】
本発明による付加塩は、通常の方法で製造することができ、例えば化学式1の化合物を水混和性有機溶媒、例えばアセトン、メタノール、エチルアルコール、またはアセトニトリルなどに溶解して過量の有機酸を加えるか無機酸の酸水溶液を加えた後に沈澱させるか結晶化させて製造することができる。続いてこの混合物から溶媒や過量の酸を蒸発させた後、乾燥させて付加塩を得るかまたは析出した塩を吸引ろ過して製造することができる。
【0057】
本発明によって製造された化学式1〜3の化合物または中間体は、製造後、赤外線分光法、核磁気共鳴スペクトル、質量分光法、液体クロマトグラフィー法、X線構造決定法、旋光度測定法及び代表的な化合物の元素分析計算値と実測値の比較によって分子構造を確認することができる。
【0058】
このように、本発明による製造方法は、安価なビス(2,2’−ベンゾチアゾリル)ジスルフィドを用いることで、化学式1の化合物を製造するのに所要される費用を節減することができ、収率も向上することができて大量生産に有用に使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためだけのものであって、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイック酸(化学式2)の製造
工程a:(S)−1−クロロ−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール(化学式6)の製造
250mlのフラスコに、1−ブロモ−2,4,5−トリフルオロベンゼン84.4gとテトラヒドロフラン42.1mlを入れて反応液を−15〜20℃に冷却した。窒素雰囲気下で反応液にイソプロピルマグネシウムクロライド[2.0Mテトラヒドロフラン溶液]20mlを滴下して、0〜5℃で2時間撹拌してグリニャール試薬を製造した。また異なる250mlのフラスコに、(S)−エピクロロヒドリン31.6mlとテトラヒドロフラン42.1mlを入れて反応液を−15〜−20℃に冷却した後、ヨウ化銅7.6gを投入した。窒素雰囲気下で製造したグリニャール試薬42.1mlを滴下して、反応温度を−15〜−20℃に維持しながら3時間撹拌した。反応液に0〜5℃に冷却した2N塩酸水溶液297mlを滴下してイソプロピルエーテル297mlで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水乾燥した後、減圧濃縮して標題の化合物89.8gを得た。
【0061】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.14(m, 1H), 6.92(m, 1H), 4.17(m, 1H), 3.72~3.43(m, 2H), 2.95~2.74(m, 2H), 2.66(m, 1H)
【0062】
工程b:(S)−1−アジド−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール(化学式7)の製造
2lのフラスコに前記工程aで製造した(S)−1−クロロ−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール89.9gを入れてジメチルホルムアルデヒド898mlに溶解した後、ヨウ化ナトリウム6.0g、アジ化ナトリウム52.0gを加えて反応液を70℃に昇温させた後、16時間の間撹拌した。反応完了後、反応液を室温に冷却した後、イソプロピルエーテル898mlと水898mlを投入して10分間撹拌した。有機層を分離して1N塩酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で順番に洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水乾燥した後、減圧濃縮して標題の化合物75.4gを得た。
【0063】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.14(m, 1H), 6.92(m, 1H), 4.17(m, 1H), 3.72~3.43(m, 2H), 2.95~2.74(m, 2H), 2.66(m, 1H)
【0064】
工程c:(R)−N−アミン保護基2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン(化学式8)の製造
<工程c−1>(R)−t−ブチル 2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン−1−カルボキシラート(化学式8)の製造
1lのフラスコに前記工程bで製造した(S)−1−アジド−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール18.9gをアセトニトリル188mlに溶解した後、トリフェニルホスフィン21.4gを投入した。常温で1.5時間さらに撹拌した後、70℃に昇温して12時間の間撹拌した。反応液を室温に冷却し、4−ジメチルアミノピリジン1.0gとジ−t−ブチルジカーボネート17.8gを投入して2時間の間撹拌した。反応完了後、過酸化水素0.91gを投入して1時間撹拌した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にn−ヘキサン180mlを投入して1時間の間撹拌した。生成された固体をろ過して除去し、ろ過液を減圧濃縮して標題の化合物20.0gを得た。
【0065】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.38(m, 1H), 6.89(m, 1H), 2.94(dd, 1H), 2.65(dd, 2H), 2.60(m, 1H), 2.37(d, 1H), 2.01(d, 1H), 1.42(s, 9H)
【0066】
<工程c−2>(R)−ベンジル 2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン−1−カルボキシラート(化学式8)の製造
500mlのフラスコに前記工程bで製造した(S)−1−アジド−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール12.83gをアセトニトリル130mlに溶解した後、トリフェニルホスフィン14.56gを投入した。常温で1.5時間さらに撹拌した後、70℃に昇温して21時間の間撹拌した。反応液を0〜5℃に冷却し、トリエチルアミン6.74gとベンジルオキシクロロホルマート9.47gを投入して1時間の間撹拌した。反応完了後、過酸化水素0.63gを投入して1時間撹拌した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にイソプロピルエーテル130mlを投入して1時間の間撹拌した。生成された固体をろ過して除去し、ろ過液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して標題の化合物15.78gを得た。
【0067】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.41~7.15(m, 6H), 6.90(m, 1H), 5.15(s, 2H), 2.90(m, 1H), 2.69(m, 2H), 2.40(d, 1H), 2.08(d, 1H)
【0068】
<工程c−3>1−((R)−2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン−1−イル)エタノン(化学式8)の製造
500mlのフラスコに前記工程bで製造した(S)−1−アジド−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール7.97gをアセトニトリル80mlに溶解した後、トリフェニルホスフィン9.05gを投入した。常温で1.5時間さらに撹拌した後、70℃に昇温して20時間の間撹拌した。反応液を室温に冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン5.35gと4−ジメチルアミノピリジン0.43g、アセチルクロライド3.0gを投入して2時間の間撹拌した。反応完了後、過酸化水素0.4gを投入して1時間撹拌した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にn−ヘキサン40mlを投入して1時間の間撹拌した。生成された固体をろ過して除去し、ろ過液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して標題の化合物4.74gを得た。
【0069】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.16(m, 1H), 6.95(m, 1H), 2.92(dd, 1H), 2.76(dd, 1H), 2.66(m, 1H), 2.39(d, 1H), 2.05(d, 1H), 2.04(s, 3H)
【0070】
<工程c−4>(R)−2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン−1−イル)フェニルメタノン(化学式8)の製造
500mlのフラスコに前記工程bで製造した(S)−1−アジド−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール7.97gをアセトニトリル80mlに溶解した後、トリフェニルホスフィン9.05gを投入した。常温で1.5時間さらに撹拌した後、70℃に昇温して21時間の間撹拌した。反応液を室温に冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン5.35gと4−ジメチルアミノピリジン0.43g、ベンゾイルクロライド5.34gを投入して2時間の間撹拌した。反応完了後、過酸化水素0.4gを投入して1時間撹拌した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にn−ヘキサン40mlを投入して1時間の間撹拌した。生成された固体をろ過して除去し、ろ過液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して標題の化合物7.03gを得た。
【0071】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 8.0(m, 2H), 7.55(m, 1H), 7.45(m, 2H), 7.21(m, 1H), 6.95(m, 1H), 3.05(dd, 1H), 2.90(dd, 1H), 2.82(m, 1H), 2.53(d, 1H), 2.28(d, 1H)
【0072】
<工程c−5>(R)−(9H−フルオレン−9イル)メチル 2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン−1−カルボキシラート(化学式8)の製造
500mlのフラスコに前記工程bで製造した(S)−1−アジド−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール7.97gをアセトニトリル80mlに溶解した後、トリフェニルホスフィン9.05gを投入した。常温で1.5時間さらに撹拌した後、70℃に昇温して20時間の間撹拌した。反応液を室温に冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン5.35gと4−ジメチルアミノピリジン0.43g、9−フルオレンイルメトキシカルボニルクロライド12.81gを投入して2時間の間撹拌した。反応完了後、過酸化水素0.4gを投入して1時間撹拌した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にn−ヘキサン40mlを投入して1時間の間撹拌した。生成された固体をろ過して除去し、ろ過液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して標題の化合物10.03gを得た。
【0073】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.67(d, 2H), 7.54(dd, 2H), 7.43(t, 2H), 7.32(t, 2H), 7.21(m, 1H), 6.93(m, 1H), 4.46(d, 2H), 4.20(t, 1H), 2.85(dd, 1H), 2.68(dd, 1H), 2.54(m, 1H), 2.30(d, 1H), 2.06(d, 1H)
【0074】
<工程c−6>(R)−2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)−1−トシルアジリジン(化学式8)の製造
500mlのフラスコに前記工程bで製造した(S)−1−アジド−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−オール7.97gをアセトニトリル80mlに溶解した後、トリフェニルホスフィン9.05gを投入した。常温で1.5時間さらに撹拌した後、70℃に昇温して20時間の間撹拌した。反応液を0〜5℃に冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン5.35gとトシルクロライド7.24gを投入して2時間の間撹拌した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にイソプロピルエーテル40mlを投入して1時間の間撹拌した。生成された固体をろ過して除去し、ろ過液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して標題の化合物7.07gを得た。
【0075】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.71~7.58(m, 2H), 7.25~7.18(m, 2H), 6.80(m, 1H), 6.05(m, 1H), 3.07(m, 1H), 2.80(m, 1H), 2.43(m, 4H), 2.11(d, 1H), 1.42(s, 3H)
【0076】
工程d:(R)−N−アミン保護基 2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン(化学式9)の製造
<工程d−1>(R)−t−ブチル 1−シアノ−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−イルカルバメート(化学式9)の製造
250mlのフラスコに前記工程c−1で製造した(R)−t−ブチル 2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン−1−カルボキシラート6.7gをジメチルスルホキシド67mlに溶解させた後、カリウムシアニド3.0g、塩化アンモニウム1.4g、18−クラウン−6 6.8gを順番に投入した後、80℃で2時間の間撹拌した。反応完了後、反応液にトルエン100mlと水100mlを投入して10分間撹拌した。有機層を分離して1N塩酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で順番に洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水乾燥した後、減圧濃縮して標題の化合物75.4gを得た。水層を分離して硫酸ナトリウムで脱水乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にn−ヘキサン100mlを投入して常温で1時間の間撹拌した。生成された固体を減圧ろ過して、真空乾燥して標題の化合物4.0gを得た。
【0077】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.08(m, 1H), 6.94(m, 1H), 4.80(m, 1H), 4.06(m, 1H), 2.88(m, 2H), 2.80~2.50(m, 2H), 1.39(s, 9H)
【0078】
<工程d−2>(R)−ベンジル 1−シアノ−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−イルカルバメート(化学式9)の製造
250mlのフラスコに前記工程c−2で製造した(R)−ベンジル 2−(2,4,5−トリフルオロベンジル)アジリジン−1−カルボキシラート15.78gをジメチルスルホキシド63.2ml、水15.8mlに溶解させた後、シリカゲル7.89gを加えた。反応液にカリウムシアニド6.40gをゆっくり加えた後、50℃で24時間の間撹拌した。反応液を常温に冷却し、ジクロロメタン160mlと水800mlを順番に加えた。有機層を分離して水80mlで2回洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にジイソプロピルエーテル80mlを投入して常温で1時間の間撹拌した。生成された固体を減圧ろ過して、真空乾燥して標題の化合物14.66gを得た。
【0079】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.40~7.10(m, 5H), 7.91 (m, 1H), 6.77(m, 1H), 5.00(s, 2H), 4.95(m, 1H), 4.08(m, 1H), 2.89(m, 2H), 2.72(dd, 1H), 2.53(dd, 1H)
【0080】
工程e:(R)−3−アミン保護基−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイック酸(化学式2)の製造
<工程e−1>(R)−3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイック酸(化学式2)の製造
250mlのフラスコに前記工程d−1で製造した(R)−t−ブチル 1−シアノ−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−イルカルバメート2.0gをエチルアルコール:水=1:1の混合溶液20mlに溶解させた後、85%の水酸化カリウム3.4gを加えた後、80℃で12時間の間撹拌した。反応液を常温に冷却した後、シュウ酸二水和物8.0gをゆっくり加えた。反応完了後、エチルアセテート40mlと水20mlを投入して20分間撹拌した。有機層を分離して硫酸マグネシウムで脱水乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)で分離した後、減圧濃縮して標題の化合物1.10gを得た。
【0081】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.04(m, 1H), 6.89(m, 1H), 6.08(br, 1H), 5.04(br, 1H), 4.13(br, 1H), 2.88(br, 2H), 2.62(m, 2H), 1.36(s, 18H)
Mass (M+Na):356
【0082】
<工程e−2>(R)−3−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイック酸(化学式2)の製造
1lのフラスコに前記工程d−2で製造した(R)−ベンジル 1−シアノ−3−(2,4,5−トリフルオロフェニル)プロパン−2−イルカルバメート40gに塩酸80mlを加えて110℃に昇温した後、4時間撹拌した。反応液を常温に冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500mlをゆっくり滴下した。滴下完了後、反応液を減圧濃縮して濃縮残渣にメタノール400ml、炭酸水素ナトリウム10.7g、N−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド63.5gを順番どおり加えた。反応液を12時間撹拌した後、減圧濃縮した。濃縮残渣をエチルアセテート200mlで希釈した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液200mlをゆっくり加えて10分間撹拌した。層分離後、水層にクエン酸を加えて反応液のpHを4〜5に調節した。エチルアセテート200mlを加えて10分間撹拌した後、有機層を分離して硫酸ナトリウムで脱水乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)で分離した後、減圧濃縮して標題の化合物30.4gを得た。
【0083】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 7.45~7.18(m, 5H), 7.05(m, 1H), 6.83(m, 1H), 5.37(d, 1H), 5.10(s, 2H), 4.52~4.16(m, 1H), 3.01~2.85(m, 2H), 2.78~2.42(m, 2H)
Mass (M+1):368
【0084】
<実施例2>(R)−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式3)の製造
工程a’:(S)−メチル 2−ブロモ−3−t−ブトキシプロパノエート(化学式11)の製造
反応基に塩化メチレン686.0lを入れて(S)−メチル 2−ブロモ−3−ヒドロキシプロパノエート85.0kgを投入した後、30分間撹拌した。硫酸1.3kgを反応液にゆっくり加えた後、イソブチレンガスを反応温度20〜35℃を維持して43時間バブリングさせた。反応完了後、炭酸水素ナトリウム20kgを水400Lに溶解した水溶液をゆっくり投入した後、30分撹拌した。有機層を分離して硫酸ナトリウム50kgを加えた後、30分さらに撹拌してろ過した。ろ過液を減圧濃縮して標題の化合物98.7kgを得た。
【0085】
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 4.21(m, 1H), 3.83(m, 1H), 3.77(s, 3H), 3.64(m, 1H), 1.17(H, 9H)
工程b’:(R)−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式3)の製造
反応器に1,4−ジオキサン691.0lを入れて前記工程a’で製造した(S)−メチル 2−ブロモ−3−t−ブトキシプロパノエート98.7kgを投入して溶解した後、炭酸水素ナトリウム121.4kgとエチレンジアミン55.1lを順番に投入した。内部温度45〜50℃を維持しながら24時間の間撹拌した。反応完了後、常温に冷却し生成した固体をろ過した。1,4−ジオキサン100lで洗浄した後、ろ過液に酢酸20.0kgを投入して1時間の間撹拌した。反応液をろ過(メタノール100lで洗浄)した後、減圧濃縮した。濃縮残渣にイソプロピルエーテル80lと水80lを入れて2回にわたって水層を分離した。水層に塩化メチレン/イソプロパノール(塩化メチレン:イソプロパノール=5:1)混合溶液126lを加えて撹拌した後、有機層を分離した(5回実施)。有機層に硫酸ナトリウム50kgを加えた後、30分間撹拌してろ過した。ろ過液を減圧濃縮して標題の化合物45.2kgを得た。
【0086】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.41(brs, 1H), 3.76(m, 3H), 3.63 (m, 1H), 3.52(m, 1H), 3.42(m, 1H), 3.28(m, 1H), 3.16(m, 1H), 2.95(m, 1H), 2.45(brs, 1H), 1.17(s, 9H)
【0087】
<実施例3>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式1)塩酸塩の製造
工程1:t−ブチル(R)−4−[(R)−2−(t−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−4−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン −2−イルカルバメート(化学式4)の製造
2lのフラスコに前記実施例1で製造した(R)−3−t−ブトキシカルボニルアミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイック酸(化学式2)10.0gをトルエン450mlに溶解した後、ビス(2,2’−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド13.0g、トリフェニルホスフィン10.2gを加えた後、反応液を0℃に冷却した。反応液を撹拌しながらトリエチルアミン0.8mlをトルエン20mlに溶解した溶液を加えて常温で5時間の間撹拌した。反応液を0℃に冷却した後、前記実施例2で製造した(R)−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式3)5.6gにトルエン40mlに溶解した溶液とピリジン2.4mlをゆっくり加えた。30分後、反応液を常温に昇温させて1時間さらに撹拌した。飽和クエン酸水溶液でpHを2.5になるようにした後、エチルアセテート400mlで希釈した。塩水で2回洗浄して有機層を硫酸マグネシウムで脱水及び濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して標題の化合物838mgを得た。
【0088】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.03(m, 1H), 6.88(m, 1H), 5.97(m, 1H), 5.48(m, 1H), 4.16~4.07(m, 1H), 4.02~3.91(m, 1H), 3.74(m, 2H) 3.37(m, 2H), 3.24(m, 1H), 2.92(m, 2H), 2.80(m, 1H), 2.59(m, 2H), 1.34(d, 9H), 1.13(s, 9H)
【0089】
工程2:(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式1)塩酸塩の製造
前記工程1で製造したt−ブチル(R)−4−[(R)−2−(t−ブトキシメチル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−4−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−イルカルバメート97mgをメタノール3mlに溶解した後、2N−塩酸/ジエチルエーテル2mlを加えて常温で3時間の間撹拌した。反応液を濃縮及び減圧乾燥して泡沫状固体の標題化合物64mgを得た。
【0090】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.37(m, 1H), 7.23(m, 1H), 4.80(m, 1H), 4.59~ 4.40(m, 1H), 3.93(m, 1H), 3.90~3.83(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.38(m, 2H), 3.27(m, 1H), 3.07(m, 2H), 2.89~ 2.66(m, 2H), 1.18(s, 3H), 1.11(s, 6H)
Mass (M+1):402
【0091】
<実施例4>(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式1)酒石酸塩の製造
工程1:(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式1)の製造
前記実施例3で得た化学式1の塩酸塩化合物60mgに5%炭酸水素ナトリウム水溶液10mlを加えてジクロロメタン/2−プロパノール(4/1(v/v))混合溶液10mlを加えて2回抽出して有機層を減圧乾燥して固体の標題化合物55mgを得た。
【0092】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.27 (m, 1H), 7.14(m, 1H), 4.56~4.39(m, 1H), 3.96~3.81(m, 3H), 3.70(m, 1H), 3.46(m, 1H), 3.43~3.32(m, 1H), 2.83~ 2.65(m, 3H), 2.58~2.40(m, 2H), 1.16(s, 3H), 1.11(s, 6H)
Mass (M+1):402
【0093】
工程2:(R)−4−[(R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3−(t−ブトキシメチル)ピペラジン−2−オン(化学式1)酒石酸塩の製造
前記工程1の化合物55mgをアセトン0.56mlに溶解した後、L−酒石酸26mgをエチルアルコール/水(9/1(v/v))0.35mlに溶解した溶液をゆっくり加えて30分間撹拌させた。そこに2−プロパノール0.56mlを再び加えて10分間撹拌した後、ろ過して固体の標題化合物77mgを得た。
【0094】
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.38(m, 1H), 7.22(m, 1H), 4.80(m, 1H), 4.59~ 4.40(m, 1H), 4.40(s, 2H), 3.93(m, 1H), 3.90~3.83(m, 2H), 3.70(m, 1H), 3.38(m, 2H), 3.27(m, 1H), 3.07(m, 2H), 2.89~ 2.66(m, 2H), 1.15(s, 3H), 1.11(s, 6H)
Mass (M+1):402

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のスキーム1に示したとおり、
化学式5の化合物にグリニャール(Grignard)試薬を用いてエポキシ環を開環して化学式6の化合物を製造する工程(工程a)と、
前記化学式6の化合物にアジ化ナトリウムを反応させて化学式7の化合物を製造する工程(工程b)と、
前記化学式7の化合物にトリフェニルホスフィンを反応させて化学式8の化合物を製造する工程(工程c)と、
前記化学式8の化合物を、シアン系列試薬を用いて、アジリジン環を開環して化学式9の化合物を製造する工程(工程d)、及び
前記化学式9の化合物を塩基を用いて加水分解して化学式2の化合物を製造する工程(工程e)とを含む方法で製造されることを特徴とする化学式2で表わされるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤中間体の製造方法:
【化1】

(前記スキーム1において、Xはハロゲンで、PGは保護基である)。
【請求項2】
前記アミン保護基が、ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、アセチル、ベンゾイル及びトシルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤中間体の製造方法。
【請求項3】
下記の化学式8で表わされる、請求項1に記載の化学式2の化合物製造時に生成される誘導体:
【化2】

(前記化学式8において、PGは保護基である)。
【請求項4】
下記の化学式9で表わされる、請求項1に記載の化学式2の化合物製造時に生成される誘導体:
【化3】

(前記化学式9において、PGは保護基である)。
【請求項5】
下記のスキーム2に示したとおり、
化学式10の化合物のヒドロキシ基にt−ブトキシ基を導入して化学式11の化合物を製造する工程(工程a’)、及び
前記化学式11の化合物をエチレンジアミンと反応させて環化反応を誘導して化学式3の化合物を製造する工程(工程b’)を含む化学式3で表わされるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤中間体の製造方法:
【化4】

【請求項6】
下記のスキーム3に示したとおり、
反応溶媒下で化学式2の化合物と化学式3の化合物をトリフェニルホスフィン、ビス(2,2’−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド及び塩基を用いて反応させてペプチド結合で連結された化学式4の化合物を製造する工程(工程1)、及び
前記工程1で製造した化学式4の化合物のアミン保護基を除去して化学式1の化合物を製造する工程(工程2)を含む化学式1で表わされるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法:
【化5】

(前記スキーム3において、PGは保護基である)。
【請求項7】
前記反応溶媒が、トルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトニトリル及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法。
【請求項8】
前記塩基が、N−メチルモルホリン、イソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びピリジンからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項6に記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法。
【請求項9】
前記工程1の反応が、−20〜80℃で遂行されることを特徴とする、請求項6に記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法。
【請求項10】
前記アミン保護基が、ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、アセチル、ベンゾイル及びトシルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法。
【請求項11】
前記工程2は、アミン保護基がブトキシカルボニル(Boc)の場合、前記化学式4の化合物をトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン、エチルアセテート/塩化水素、ジエチルエーテル/塩化水素、塩化水素/ジクロロメタンまたはメタノール/塩化水素と反応させて保護基を除去することを特徴とする、請求項6に記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法。
【請求項12】
前記工程2は、アミン保護基がベンジルオキシカルボニル(Cbz)の場合、前記化学式4の化合物をパラジウム/カーボン存在下で水素と反応させることで保護基を除去することを特徴とする、請求項6に記載のジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤の改良された製造方法。

【公表番号】特表2012−522044(P2012−522044A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503324(P2012−503324)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001947
【国際公開番号】WO2010/114291
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(501438290)ドン ア ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】