説明

ジョグダイヤル制御方法

【課題】構造が簡単で低コストで実現でき、ジョグダイヤルの回転方向を確実に判定が可能なジョグダイヤル装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】ジョグダイヤル装置(R)は、ジョグダイヤル(1)と、ジョグダイヤルの突起部(1a)により揺動される可動部(2a)の位置変化に応じてパルス信号を生成可能なスイッチ手段(2)と、ジョグダイヤルの回転時に、スイッチ手段にて生成されるパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのいずれか一方を検出してカウントし、そのカウント値に基づいてジョグダイヤルの回転方向及び回転量を判定する判定手段(6)とを備える。判定手段(6)は、各パルス信号のパルス幅を検出し、検出したパルス幅を閾値と比較し、検出したパルス幅が閾値以上のときに、パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのカウントを行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の動作状態を設定入力する、リモートコントローラ等に用いられるジョグダイヤル装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器に対するリモコンにおいて、操作性を向上すべくジョグダイヤルを搭載したものが多々ある。ジョグダイヤルに関する技術として、例えば、特許文献1に開示されているようなスイッチを2個備えたジョグダイヤル装置や、特許文献2に開示されているようなロータリーエンコーダを備えたジョグダイヤル装置がある。しかしながら、特許文献1および2に記載されているジョグダイヤル装置は構造が複雑であり、コストアップを招くという問題があった。
【0003】
これに対して、構造が簡単なジョグダイヤル装置の他の形態として、図8に示すような、シーソー式の可動部2aを有するシーソースイッチ2が備えられたジョグダイヤル装置が知られている。
【0004】
図8に示す従来のジョグダイヤル装置は、ジョグダイヤル1を所定方向へ回転させることにより、ジョグダイヤル1の外周部に放射状に形成された複数の突起部1aとシーソースイッチ2の可動部2aとの当接および当接解除時に出力されるパルス信号が例えば、マイコン等からなる制御部60に入力される。制御部60は、入力したパルス信号の終端の立ち上がりを検出してカウントし、そのカウント値に基づきジョグダイヤル1の回転方向及び回転量を判定する。
【0005】
ここで、制御部60に入力されるパルス信号の波形について詳細に説明する。まず、図9を参照して、シーソースイッチ2の可動部2aの状態と各接点の導通状態の関係を説明する。シーソースイッチ2は可動部2aと、可動部2aの位置と連動して互いに導通/非導通状態になる3つの接点を有する。可動部2aは外力を受けない場合は図9(a)に示す中立位置(水平位置)に位置するように付勢されている。図9(a)に示すように、シーソースイッチ2の可動部2aが中立位置にある場合、接点1、接点2および接点3は互いに電気的に遮断された状態(非導通状態)になる。図9(b)に示すように、シーソースイッチ2の可動部2aが上方に傾いている場合、接点2と接点3が電気的に接続され(導通状態)、接点1は電気的に遮断された状態になる。図9(c)に示すように、シーソースイッチ2の可動部2aが下方に傾いている場合、接点1と接点2が電気的に接続され、接点3は電気的に遮断された状態になる。
【0006】
最初に、図8(a)に示すように、シーソースイッチ2の可動部2aが中立位置(水平位置)にある場合を考える。このとき、接点1、接点2および接点3は非導通の状態である。
【0007】
次に、ジョグダイヤル1を図8(a)の位置から図8(c)の位置まで時計方向に回転させる場合を説明する。ジョグダイヤル1の回転にともない突起部1aは、シーソースイッチ2の可動部2aと当接して可動部2aを上側に跳ね上げ、その後、可動部2a上を通過する。このとき、可動部2aは、ジョグダイヤル1の突起部1aとの当接により、中立状態から上側に倒れた後(図8(b)参照)、再び中立状態に戻る(図8(c)参照)。この時の制御部60に入力されるパルス信号は、図3(b)に示す波形となる。パルス信号の立ち上がりは、ジョグダイヤル1の回転にともないジョグダイヤル1の突起部1aがシーソースイッチ2の可動部2aを跳ね上げながら通過したことを示す。そこで、制御部60は接点3の波形における立ち上がりをカウントする。
【0008】
一方、ジョグダイヤル1を図8(a)の位置から反時計方向に回転させた場合、ジョグダイヤル1の回転にともない突起部1aは、シーソースイッチ2の可動部2aと当接して可動部2aを下側に跳ね上げ、その後、可動部2a上を通過する。このとき、シーソースイッチ2の可動部2aは、中立状態から下側に倒れた後、再び中立状態に戻る(図8(a)参照)。この時、制御部60に入力されるパルス信号は、図3(a)に示す波形となる。制御部60は接点1の波形における立ち上がりをカウントする。
【0009】
【特許文献1】特開2000−298895号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2007−42489号公報(第1−9頁、(請求項7)、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、リモコンに対して機能性や操作性のみならず、操作上のフィーリングも要求されている。上述のシーソースイッチを備えたリモコンにおいて、例えば、ジョグダイヤルの回転操作に必要な力(負荷)を大きくすることで重厚感が得られ、高級感を実現できる。
【0011】
しかしながら、シーソースイッチを備えた従来のジョグダイヤル装置において、高級感を得るために、ジョグダイヤルの回転操作に必要な力を大きくすることには、次のような問題がある。
【0012】
すなわち、ジョグダイヤル1を図8(a)の位置から図8(b)の位置を経由して図8(c)の位置まで時計方向に回転させた場合、シーソースイッチ2の可動部2aは、中立位置→上側に傾いた状態→中立位置と変化する。
【0013】
一方、図8(a)の状態からジョグダイヤル1を時計方向に回転させて、シーソースイッチ2の可動部2aを上側に倒して停止した状態(図8(b)の状態)で、ジョグダイヤル1を反時計方向に少し戻した場合(図8(d)の状態)も、シーソースイッチ2の可動部2aは、中立位置→上側に傾いた状態→中立位置と変化する。
【0014】
このように、ジョグダイヤル1を、図8(a)の位置から図8(b)の位置を経由して図8(c)の位置まで時計方向に回転させた場合と、図8(a)の状態から時計方向に回転させて、シーソースイッチ2の可動部2aを上側に倒して停止した状態(図8(b)の状態)でジョグダイヤル1を反時計方向に少し戻した場合とで、シーソースイッチ2の可動部2aは同様に変化する。このことは、制御部60に入力されるパルス信号の波形が同じ波形となることを意味する。
【0015】
このため、最終的に、ジョグダイヤル1を時計方向あるいは反時計方向のいずれかに回転させたのかが不明になり、ジョグダイヤル1の回転方向を誤判定してしまうという問題があった。
【0016】
ジョグダイヤル1の回転操作に必要な力(負荷)を大きくした場合、使用者がジョグダイヤルの操作を停止したときにシーソースイッチ2の可動部2aが図8(b)に示すように上側(または下側)に倒れた状態のまま停止することがある。よって、高級感を得るために、ジョグダイヤルの回転操作に必要な力(負荷)を大きくすることは、前述の誤判定の問題を招きやすくなる。
【0017】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シーソースイッチを備えたジョグダイヤル装置において、簡単な構造で、かつ、ジョグダイヤルの回転方向を確実に判定することのできるジョグダイヤル装置およびそのようなジョグダイヤル装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るジョグダイヤル装置は、突起部を有し、回転可能なジョグダイヤルと、ジョグダイヤルの突起部により揺動される可動部を有し、可動部の位置の変化に応じてパルス信号を生成可能なスイッチ手段と、ジョグダイヤルの回転時に、スイッチ手段にて生成されるパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのいずれか一方を検出してカウントし、そのカウント値に基づいてジョグダイヤルの回転方向及び回転量を判定する判定手段とを備える。判定手段は、各パルス信号のパルス幅を検出し、検出したパルス幅を閾値と比較し、検出したパルス幅が閾値以上のときには、上記のパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのカウントを行わない。
【0019】
本発明に係るジョグダイヤル装置の制御方法は、突起部を有し、回転可能なジョグダイヤルと、前記ジョグダイヤルの突起部により揺動される可動部を有し、可動部の位置の変化に応じてパルス信号を生成可能なスイッチ手段と、ジョグダイヤルの回転時に、スイッチ手段にて生成されるパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのいずれか一方を検出してカウントし、そのカウント値に基づいて当該ジョグダイヤルの回転方向及び回転量を判定する判定手段とを備えたジョグダイヤル装置の制御方法である。その制御方法において、各パルス信号のパルス幅を検出し、検出したパルス幅を閾値と比較し、検出したパルス幅が閾値以上のときには、上記のパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのカウントを行わない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ジョグダイヤルとスイッチ手段とを組み合わせてなる簡易な構造のジョグダイヤル装置におけるジョグダイヤルの回転方向及び回転量の判定時に、閾値以上のパルス幅を有するパルス信号のカウントを行わないようにする。これにより、ジョグダイヤルを所定方向へ回転させた後、ジョグダイヤルを反対方向へ少し戻した場合や、シーソースイッチが電気的に接続した状態でジョグダイヤルを停止させた場合であっても、ジョグダイヤルの回転方向の誤判定を防止することができる。よって、回転方向を確実に判定することが可能となるジョグダイヤル装置を簡易な構成で実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るジョグダイヤル装置を添付図面に従って説明する。
【0022】
1.ジョグダイヤル装置の構成
図1は、本発明の実施の形態に係るジョグダイヤル装置Rの概略平面図、図2は、ジョグダイヤル装置Rの概略構成を示すブロック図である。以下に説明するジョグダイヤル装置は、電気機器の動作を無線または有線で制御を行うためのリモートコントローラである。
【0023】
図1および図2に示すように、ジョグダイヤル装置Rは、大略、少なくとも、基台(図示せず)とその基台上に回転自在に取り付けられているジョグダイヤル1と、ジョグダイヤル1の近傍に設けられたシーソースイッチ2と、スイッチ群3と、外部の電気機器に制御信号を送信する送信部4と、電源キー5と、ジョグダイヤル装置R全体の制御を司る制御部6と、ケース体としての本体ケース7とから構成されている。
【0024】
ジョグダイヤル1およびシーソースイッチ2の構成、動作については、基本的には前述の背景技術で説明したものと同一であるので、以下では異なる点のみを説明する。
【0025】
図3は、ジョグダイヤル1を時計方向または反時計方向に回転させたときのパルス信号の波形図である。図3に示すように、ジョグダイヤル1を反時計方向へ1クリックだけ回転させると、制御部6に入力されるパルス信号の波形は図3(a)に示すような波形となり、ジョグダイヤル1を時計方向へ1クリック回転させると、制御部6に入力されるパルス信号の波形は図3(b)に示すような波形となる。例えば、ジョグダイヤル1を時計方向へ連続的に一定の速度で回転させると、制御部6には図6(a)に示すように連続的な波形のパルス信号が入力される。
【0026】
スイッチ群3は、各種電気部品にて構成される制御回路を搭載した基板(図示せず)に電気的に接続されている。また、送信部4は、制御部6と電気的に接続されており、押下されたスイッチ群3やジョグダイヤル1の操作状況に応じた制御信号を、例えば赤外線等の無線通信手段やケーブル等の有線の通信手段を介して出力する。
【0027】
制御部6は、例えば、CPU、ROM、RAM等から構成される。制御部6はジョグダイヤル装置R全体の動作を制御するが、以下では、特に制御部6におけるジョグダイヤル1の回転方向及び回転量の判定に関連する構成・動作について説明する。
【0028】
前述のようにジョグダイヤル1が時計方向あるいは反時計方向へ回転すると、ジョグダイヤル1の突起部1aとシーソースイッチ2の可動部2aとの当接および当接の解除に応じたパルス信号が生成され、シーソースイッチ2の接点1及び接点3を介して制御部6に出力される。制御部6はこのパルス信号の立ち上がり(LowからHighへの変化)を検出する。図3(a)、(b)はそれぞれジョグダイヤル1が反時計方向、時計方向に回転したときの接点1及び3の波形を示す。図3(a)に示すように接点1の波形におけるパルスの立ち上がりを検出することで反時計方向の回転(左回転)を検出でき、図3(b)に示すように接点3の波形におけるパルスの立ち上がりを検出することで、時計方向の回転(右回転)を検出できる。制御部6は、接点1及び3のパルスの立ち上がりをカウントし、それぞれのカウント値に基づいてジョグダイヤル1の回転方向及び回転量を判定する。このため、制御部6は、左回転時の突起部1aの通過数をカウントするカウンタ(以下「左回転用カウンタ」という。)と、右回転時の突起部1aの通過数をカウントするカウンタ(以下「右回転用カウンタ」という。)を備えている。
【0029】
特に、制御部6は、連続するパルス信号の期間(パルス幅)を検出し、検出した期間が閾値tx以上の場合には、そのパルスの立ち上がりのカウントを行わないようにする。すなわち、例えば図6(a)のようにシーソースイッチ2から連続してパルス信号を入力する場合、制御部6は、各パルス信号Pnのパルス幅tnを閾値txと比較し、tn≧txとなる場合、そのパルス信号のカウントを停止し、一方、tn<txとなる場合、そのパルス信号のカウント動作を行うようにする。
【0030】
このように、パルス幅が比較的長いパルスの立ち上がりをカウントしないようにすることで回転方向の誤検出を防止する。つまり、パルス信号の期間(パルス幅)が閾値tx(所定時間)以上あるときは、ジョグダイヤル1の突起部1aがシーソースイッチ2の可動部2aを上側に傾けた状態(図8(b))または下側に傾けた状態のまま停止していると考えられる。このため、このような場合に、シーソースイッチ2からの信号を無視することでジョグダイヤル1の回転方向の誤検出を防止できる。
【0031】
閾値txは所定時間(固定時間)に設定される。例えば、閾値txが200msに設定された場合、パルス信号Pnのパルス幅が300msであったときは、パルス信号Pnのカウント動作が行われず、パルス信号Pnのパルス幅が100msであったときは、そのパルス信号Pnのカウント動作が行われる。
【0032】
以上のように、閾値以上のパルス幅を有するパルス信号のカウントを行わないようにすることにより、例えば、ジョグダイヤル1を所定方向へ回転させた後、ジョグダイヤル1を反対方向へ少し戻した場合や、シーソースイッチ2が電気的に接続した状態でジョグダイヤル1を停止させた場合であっても、それらをエラーとして処理できるのでジョグダイヤル1の回転方向の誤判定を防止することができる。
【0033】
2.ジョグダイヤル装置の動作
図4に示すフローチャートを参照し、ジョグダイヤル装置Rの全体動作について説明する。以下の処理は主として制御部6で実行される。
【0034】
先ず、電源キー5により電源が投入されると、最初に「パワーオンリセット処理」(ステップS11)が実行され、初期設定がなされ、「スタンバイモード処理」(ステップS12)に移行する。その後、「ソフトタイマ処理」(ステップS13)としてリモコンのスイッチやキー操作に対するタイマ処理を実行する。例えば、スイッチやキー等が2分以上押された状態になっていないかがチェックされ、2分以上押されていなければ次のステップS14に進む。スイッチやキー等が2分以上押された状態の場合は当該操作が無効であるものとして処理される。
【0035】
ステップS14の「JOGの読み取り処理」において、ジョグダイヤル1の操作情報が読み取られる。具体的には、ジョグダイヤル1の回転によって出力されるパルス信号の立ち上がりを検出してカウントする。その際、入力したパルス信号のパルス幅(Lowの期間)に基づきカウント動作を許可するか禁止するかの判定を実施するとともに、当該判定結果に応じた処理を行う。なお、このステップS14の「JOGの読み取り処理」の詳細については後述する。
【0036】
次に、「キースキャン処理」(ステップS15)において、操作されたスイッチやキー等のスキャン処理が実施される。そして、「モード制御・コード作成処理」(ステップS16)において、操作されたスイッチやキー等に応じた所定のコードが選択、決定される。例えば、ジョグダイヤル1が操作された場合、ステップS14にてカウント処理されたカウント値に応じた所定のコードが選択、決定される。このとき、右回転用カウンタの値と左回転用カウンタの値の差分が計算され、その差分値に基づいた所定のコードが選択、決定される。その後、「コード送信処理」(ステップS17)に進む。
【0037】
「コード送信処理」(ステップS17)において、「モード制御・コード作成処理」(ステップS16)で決定された所定のコードが例えば、108ms毎に送信部4に送信され、それと同期して制御部6内のカウンタがリセットされる。送信部4は例えば108ms毎にコードを外部に出力する。カウンタがリセットされると、ステップS12に戻り、上述の処理(ステップS12〜17)が繰り返される。
【0038】
図5に示すフローチャートを参照し、上記の「JOG読み取り処理」(ステップS14)の詳細を説明する。
【0039】
先ず、制御部6に入力されたパルスのパルス幅(ここでは、Low期間の幅)、すなわち、パルス信号Pnのパルス幅tnが計測される(ステップS141)。そして、ステップS141にて計測されたパルス信号Pnのパルス幅tnが有効なパルス幅の範囲内にあるか否かを判断する(ステップS142)。例えば、計測されたパルス幅tnが2ms≦tn≦3secの関係にあるか否かが判定される。判定結果がYESであれば、次のステップS143に進む。一方、判定結果がNOであれば、当該データは無効であるとして、本処理を終了する。すなわち、この場合、クリック数はカウントされない。
【0040】
ステップS142において、パルス信号Pnのパルス幅tnの有効性を判定する理由は次のとおりである。当該パルス信号Pnのパルス幅tnが比較的短い場合(例えば、2ms未満の場合)はノイズである蓋然性が高く、また、比較的長い場合(例えば、3secより大きい場合)は、シーソースイッチ2と電気的に導通した状態でジョグダイヤル1が停止している蓋然性が高いと考えられ、いずれの場合もパルス信号Pnを利用することが適切でないと考えられるからである。
【0041】
ステップS142で有効であると判定された場合、ジョグダイヤル1の操作が初回の操作か、2回目以降の操作かが判定される(ステップS143)。ジョグダイヤル1の操作が初回であれば、ステップS145に進む。
【0042】
ステップS143において、ジョグダイヤル1の操作が2回目以降の操作であると判定された場合、計測したパルス信号のパルス幅(tn)が閾値(tx)以上か否かが判定される(ステップS144)。
【0043】
計測したパルス幅tnが閾値tx以上の場合、当該データは無効であるとして、本処理を終了する。すなわち、この場合、クリック数はカウントアップされない。一方、計測したパルス幅tnが閾値txより小さい場合、当該データが有効データであるとして次のステップS145に進む。
【0044】
ステップS145においてジョグダイヤル1の回転方向が検出される。回転方向は接点1または接点3の信号波形(図3参照)の変化を見れば検出できる。そして、左回転の場合、左回転用カウンタがカウントアップされ(ステップS146)、右回転の場合、右回転用カウンタがカウントアップされる(ステップS151)。
【0045】
以上のようにしてジョグダイヤル1の回転時のクリック数が検出される。
【0046】
3.カウント要否判定の閾値(tx)の他の例
上述の例では、パルス信号のカウントの要否判定に使用する閾値txを所定の値(固定値)に設定したが、閾値txはこれに限定されない。例えば、以下のように閾値txを規定してもよい。
【0047】
(1)閾値の他の例1
第n番目のパルス信号Pnに対する閾値txを、その直前のパルス信号Pn−1のパルス幅tn−1の値に所定の値tαを加算して算出する。
tx = tn−1 + tα
このように、直前のパルス幅を考慮して閾値を決定することで、図6(b)に示すように、パルス信号P1、P2、P3・・・のパルス幅t1、t2、t3・・・が変化する場合に、カウントしない頻度を低減できるという効果がある。
【0048】
(2)閾値の他の例2
第n番目のパルス信号Pnに対する閾値txを、最初のパルス信号P1のパルス幅t1の値に所定の値tαを加算して算出する。
tx = t1 + tα
このように、最初のパルス幅t1を考慮して閾値を決定する場合でも、図6(b)に示すように、パルス信号P1、P2、P3・・・のパルス幅t1、t2、t3・・・が変化する場合に、カウントしない頻度を低減できるという効果がある。
【0049】
(3)閾値の他の例3
第n番目のパルス信号Pnに対する閾値txを、以前のm回平均、すなわち、Pn−m、・・・、Pn−2、Pn−1のパルス幅tn−m、・・・、tn−2、tn−1の平均値tavgに基づき算出する。具体的には次式で求める。
tx = tavg + tα
tavg = (tn−m + ・・・ +tn−2 + tn−1)/m
【0050】
(4)閾値の他の例4
第n番目のパルス信号Pnに対する閾値txを、ジョグダイヤル1の回転速度(加速度)に基づいて算出する。具体的には、以前のパルス信号Pn−2、Pn−1における各パルス幅tn−2、tn−1に基づいて、次にカウントされるべきパルス信号のパルス幅を予測し、予測されたパルス信号のパルス幅tfに所定の値tαを加算した「tf+tα」を用いてもよい。
【0051】
図7に具体例を示す。図7において、第5番目のパルス信号P5のパルス幅(Low期間)tfとしてのt5を、以前のパルス信号P3、P4における各パルス幅t3、t4に基づいて予測する。そして、この予測したパルス信号P5のパルス幅(Low期間)tfに所定の値tαを加算することで、第5番目のパルス信号P5に対する閾値txを算出する。具体的には次式で求める。
tx = tf+tα
tf = (tn−1 − tn−2) + tn−1
【0052】
以上(1)〜(4)に示したように、ジョグダイヤル1の回転速度または加速度に応じて閾値txを変化させることで、ジョグダイヤル1の操作状態に応じてジョグダイヤル1の回転方向の判定をより精度よく行うことが可能となる。
【0053】
4.変形例
上述した各閾値をジョグダイヤル1の操作状態に応じて選択的に用いてもよい。例えば、図6(a)に示すようにパルス幅が略一定の場合は閾値txを所定値(固定値)にしておき、図6(b)に示すようにパルス幅が変化する場合、例1〜4に示したように過去のパルス幅に基づき動的に求めた値を閾値txに設定してもよい。
【0054】
また、上述した本発明に係るジョグダイヤル装置にあっては、ユーザから所定の入力操作が実施されることによって動作設定させる電気機器として、AV機器や、例えば、車載用のナビゲーション装置等、各種電気機器に適用することが可能である。
【0055】
上記の実施の形態では、ジョグダイヤル1の突起部1aがシーソースイッチ2の可動部2aを通過したときに、Lowとなる信号が生成されるようにシーソースイッチ2の各接点の電位が制御されていた。しかし、シーソースイッチ2の可動部2aを通過したときに、Highとなる信号が生成されるようにシーソースイッチ2の各接点の電位が制御されてもよい。この場合、パルス信号の立ち下がりを検出してカウントすればよい。また、上記の実施の形態では、ジョグダイヤル1の突起部1aはジョグダイヤル1の外周部に放射状に形成されているが、ジョグダイヤル1の裏面側に放射状に形成されていてもよい。
【0056】
今回、開示した実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は、上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係るジョグダイヤル装置を示す概略平面図である。
【図2】前記ジョグダイヤル装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】ジョグダイヤル手段を時計方向または反時計方向に回転させたときのパルス信号の波形図である。
【図4】ジョグダイヤル装置のメイン処理を示すフローチャートである。
【図5】ジョグダイヤル装置による制御方法を示すフローチャートである。
【図6】ジョグダイヤル装置による制御方法を示すパルス信号の波形図である。
【図7】ジョグダイヤル装置による制御方法の変形例を示すパルス信号の波形図である。
【図8】従来のジョグダイヤル装置の動作を説明する概略図である。
【図9】シーソースイッチの動作を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ジョグダイヤル、1a 突起部、2 シーソースイッチ、2a 可動部、3 スイッチ群、4 送信部、5 電源キー、6 制御部(判定手段)、7 本体ケース、P1〜Pn パルス信号、R ジョグダイヤル装置、t1〜tn パルス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起部を有し、回転可能なジョグダイヤルと、
前記ジョグダイヤルの突起部により揺動される可動部を有し、前記可動部の位置の変化に応じてパルス信号を生成可能なスイッチ手段と、
前記ジョグダイヤルの回転時に、前記スイッチ手段にて生成されるパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのいずれか一方を検出してカウントし、そのカウント値に基づいて当該ジョグダイヤルの回転方向及び回転量を判定する判定手段とを備え、
前記判定手段は、各パルス信号のパルス幅を検出し、前記検出したパルス幅を閾値と比較し、前記検出したパルス幅が前記閾値以上のときに、前記パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのカウントを行わない
ことを特徴とするジョグダイヤル装置。
【請求項2】
前記閾値は、所定時間であることを特徴とする請求項1に記載のジョグダイヤル装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記パルス幅が検出されたパルス信号より前に入力したパルス信号のパルス幅に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載のジョグダイヤル装置。
【請求項4】
前記閾値は、パルス幅が検出されたパルス信号の直前に入力したパルス信号のパルス幅に所定時間を加算した値に設定されることを特徴とする請求項3に記載のジョグダイヤル装置。
【請求項5】
前記閾値は、カウント値のリセット後に最初に入力したパルス信号のパルス幅に基づいて設定されることを特徴とする請求項3に記載のジョグダイヤル装置。
【請求項6】
前記閾値は、前記パルス幅が検出されたパルス信号の前にカウントされた所定数のパルス信号におけるパルス幅の平均値に基づいて設定されることを特徴とする請求項3に記載のジョグダイヤル装置。
【請求項7】
前記閾値は、前記パルス幅が検出されたパルス信号の前の複数のパルス信号におけるパルス幅の変化量に基づいて予測されたパルス幅に基づいて設定されることを特徴とする請求項3に記載のジョグダイヤル装置。
【請求項8】
突起部を有し、回転可能なジョグダイヤルと、
前記ジョグダイヤルの突起部により揺動される可動部を有し、前記可動部の位置の変化に応じてパルス信号を生成可能なスイッチ手段と、
前記ジョグダイヤルの回転時に、前記スイッチ手段にて生成されるパルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのいずれか一方を検出してカウントし、そのカウント値に基づいて当該ジョグダイヤルの回転方向及び回転量を判定する判定手段とを備えたジョグダイヤル装置の制御方法であって、
各パルス信号のパルス幅を検出し、
前記検出したパルス幅を閾値と比較し、
前記検出したパルス幅が前記閾値以上のときに、前記パルス信号の立ち上がり又は立ち下がりのカウントを行わない
ことを特徴とするジョグダイヤル装置の制御方法。
【請求項9】
前記閾値は、所定時間であることを特徴とする請求項8に記載のジョグダイヤル装置の制御方法。
【請求項10】
前記閾値は、前記パルス幅が検出されたパルス信号より前に入力したパルス信号のパルス幅に基づいて設定されることを特徴とする請求項8に記載のジョグダイヤル装置の制御方法。
【請求項11】
前記閾値は、パルス幅が検出された前記パルス信号の直前に入力したパルス信号のパルス幅に所定時間を加算した値に設定されることを特徴とする請求項10に記載のジョグダイヤル装置の制御方法。
【請求項12】
前記閾値は、カウント値のリセット後に最初に入力したパルス信号のパルス幅に基づいて設定されることを特徴とする請求項10に記載のジョグダイヤル装置の制御方法。
【請求項13】
前記閾値は、パルス幅が検出された前記パルス信号の前にカウントされた所定数のパルス信号におけるパルス幅の平均値に基づいて設定されることを特徴とする請求項10に記載のジョグダイヤル装置の制御方法。
【請求項14】
前記閾値は、パルス幅が検出された前記パルス信号の前の複数のパルス信号におけるパルス幅の変化量に基づいて予測されたパルス幅に基づいて設定されることを特徴とする請求項10に記載のジョグダイヤル装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−92410(P2010−92410A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264015(P2008−264015)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】