説明

ジルコニウム酸化物がドープされた触媒担体、その生成方法、およびジルコニウム酸化物がドープされた触媒担体を含む触媒担体を含む触媒

本発明は、ZrO2が材料中に分散されて含まれている天然層状ケイ酸塩材料を有する、多孔質触媒担体に関する。本発明は、本発明の触媒担体を含むシェル触媒による触媒担体の生成方法にも関する。および、酢酸ビニルモノマー(VAM)の生成のための本発明の触媒の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然層状ケイ酸塩材料を含む多孔質触媒担体に関する。
【0002】
VAMは、プラスティックポリマーの生成における重要なモノマー構成単位である。
VAMを使用する主な分野は、特に、ポリビニル酢酸(polyvinyl acetate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、およびポリビニルアセタール(polyvinyl acetal)および、例えば、以下のような、エチレン、塩化ビニル、アクリレート、マレイネート(maleinate)、フマラート(fumarate)、ビニルラウレート(vinyl lAurate)などの他のモノマーとのこれらの共重合および三元重合体(co− and terpolymerization)の生成分野である。
【0003】
VAMは、主に、ガス雰囲気下で、酢酸とエチレンの酸化反応から生成される。
この生成のためには触媒が使用されるが、この触媒は、触媒活性金属として、およびプロモータとしてのアルカリ金属成分として、Pd(パラジウム)とAu(金)を、好ましくは酢酸塩の形のカリウムを含んでいることが好ましい。この触媒活性金属のPdとAuは、おそらくそれぞれ純金属粒子の形ではなく、異なる組成のPd/Au合金粒子の形であると推測されるが、非合金粒子を除外することはできない。
Auの代替としては、例えばCo(コバルト)やBa(バリウム)が二次的な活性金属化合物として使用し得る。
【0004】
現在、VAMは主にいわゆるシェル触媒(殻触媒)を使用して生成されているが、そのシェル触媒中の触媒活性金属は、成形体(shaped body)として形成された触媒担体に完全には浸透しておらず、むしろ、大なり小なりの外側のエリア(シェル)にのみ含まれている。(EP565952A1、EP634214A1、EP634209 A1およびEP634208A1を参照のこと)。
担体が存在する領域よりもさらに奥の領域には、ほとんど貴金属が存在しない。
シェル触媒の助けによって、触媒活性金属がコア中に含浸されている(impregnated through)担体をもつ触媒よりも、多くの場合より選択的な反応制御が可能となる。
【0005】
VAMの生成方法の先行技術から知られているシェル触媒は、例えば、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化物、またはジルコニウム酸化物をベースとする触媒担体を持つものがある(EP 839793A1、WO1998/018553A1、WO 2000/058008A1およびWO2005/061107A1を参照のこと。)。
しかしながら、チタン酸化物、またはジルコニウム酸化物をベースとする触媒担体は、これらの触媒担体は長期間酢酸耐性がなく比較的高価であるため、近年はほとんど使用されない。
【0006】
VAMの生成に現在使用されているほとんどの触媒は、天然酸処理か焼ベントナイトの形に形成された天然層状ケイ酸塩をベースとする球体に形成された多孔アモルファスケイ酸塩担体(porous amorphous aluminosilicate support)上にPd/Auシェルを持つシェル触媒であり、それはプロモータとして、酢酸カリウムが全体に含浸されている。
【0007】
このようなVAMシェル触媒は、通常、化学的製法で生成されるが、その方法では触媒担体には、対応する金属前駆体化合物溶液が負荷あるいはスティーピングされる(steeped)、例えば、担体を溶液中に浸すことで、或いは、初期の湿式方法(細孔含浸プロセス(pore−filling process)によって、担体には担体の細孔容積(pore volume)に対応する量の溶液が浸漬によって含浸またはスティーピングされる。
触媒のPd/Auシェルは、例えば次のような方法で生成可能である。
第一スティーピング(steeping)によって、触媒担体が、第一ステップにおいて、触媒担体をNa2PdCl4溶液など、の中におかれ、さらに、続く第二ステップで、NaOH溶液でパラジウム化合物をPd水酸化化合物の形で触媒担体上へ固定する。
さらに続く独立した第三ステップで触媒担体はNaAuCl4溶液中へスティーピングされ、そして、Au化合物はNaOHを使用して同様に固定される。
触媒担体の外殻への貴金属化合物の固定化の後、負荷された触媒担体は、塩化物とナトリウムイオンがほぼない状態に洗浄され、乾燥されて、最後に、150℃のエチレンによって還元される。
形成されたPd/Auシェルは通常、約100μm〜500μmの厚みを有する。
【0008】
通常、貴金属が負荷された触媒担体は、固定及び/または還元ステップの後、酢酸カリウムが負荷され、そこで、貴金属が負荷された外殻においてのみ酢酸カリウムの負荷が生じ、触媒担体は完全にプロモータで含浸される。
自然的に生じる酸処理か焼ベントナイトをベースとし、約160m2/gのBET比表面積を持っているSud−Chemie AG社の「KA−160」といわれる球状の担体を、例えば触媒担体として使用しうる。
【0009】
先端技術において知られている活性金属としてPdおよびAuをベースとし、KA−160担体を触媒担体としているVAMシェル触媒を使用して得られたVAM選択性は、供給されたエチレンに対して約90モル%であり、そのうちの、残りの反応生成物の10モル%は、実質的にCO2から生成され、そのCO2は、有機抽出物/生成物の完全酸化によって形成されたものである。
【0010】
このようなシェル触媒の活性を高めるために、天然ケイ酸塩をベースとする活性金属フリーの触媒担体成形体は、貴金属の沈着の前に、最初にジルコニウム酸化物が表面ドープされる。
このため、例えば、完成されたベントナイトベースの成形体はジルコニウム酸化物前駆体化合物溶液によって含浸され、および前駆体化合物は成形体をか焼することで対応する酸化物へ変換される。
先端技術におけるPd/Auシェル触媒をもつ対応する触媒と比較しても、これらの触媒は、VAM生成の観点において活性の増加によって特徴づけられるが、限定的な程度にのみ活性は増加し、酸化段階0のPdとAu中のZrO2 コートポーラス(coats pores)もまた過剰沈着されうる。
担体がZrO2で過剰に担持された場合には、触媒活性の低下が見られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従って、比較的高VAM活性によって特徴づけられるVAM触媒が生成されるプロセスによって、触媒担体を提供することにある。
【0012】
ZrO2 が材料中に分散されて含まれている、天然層状ケイ酸塩を含む材料を備えた、第一多孔質触媒担体によって、この課題は達成される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、多孔質担体の母材(matrix)の天然層状ケイ酸塩を含む材料中へのZrO2 の組み込みによって、触媒担体が、比較的高いVAM活性によって特徴づけられるVAM触媒が生成されるプロセスによって、得られうる。
【0014】
加えて、比較的高VAM選択性によって特徴づけられる第一の触媒担体を使用することでVAM触媒は生成され、また、比較的長期間にわたってわずかに熱劣化する傾向にあることが判明した。
【0015】
本発明の第一の触媒担体は、また、VAM生成における比較的高い化学的耐性(chemical resistance)によっても特徴づけられる。
ZrO2 の層状ケイ酸塩材料への組み込みは大部分は酢酸耐性があるので、担体は従って、より高い長期維持性(long−term stability)を示し、また従って対応する触媒は高い長期間にわたる活性の維持を有する、
先端技術の担体では、表面に含浸されたZrO2が比較的速やかに酢酸ジルコニルへ変換され、それはVAM生成においてはプロモータとしては働かず、および洗い流される。
【0016】
加えて、本発明の触媒担体は特に、コスト的にも有益である。
本発明の触媒担体の生成は、例えば、一度のか焼ステップ、粉砕された層状ケイ酸塩と粉砕されたジルコニウム酸化物前駆体化合物の混合体のか焼のような、しか含んでいない、それは、例えば、粉砕された層状ケイ酸塩および粉砕されたジルコニウム酸化物前駆体化合物の混合物をか焼するようなステップである。
ジルコニウム酸化物前駆体化合物と共に続く2番目のか焼によってか焼された従来の担体表面のドーピングよりも、また、従来のか焼された担体の懸濁液としてのジルコニウム酸化物前駆体化合物の適用(WO2005065821)とそれらに続くか焼、そこではこの方法は、適切な触媒担体の強度を得るために、通常は酢酸ジルコニルである追加のバインダーを現実に要求するが、よりもコスト的により有利である。
【0017】
本発明の触媒担体を使用して生成されるVAM触媒は、好ましくは材料中に均質的に(homogeneously)、ZrO2 が均一に分散されて含まれている場合、特に高VAM活性および選択性で特徴つけられている。
【0018】
ZrO2 は材料中に、材料の骨格構造へ統合される個別のZrO2 ユニットの形で含まれうる。しかし、ZrO2 は粒子形状で存在することが好ましい。
ZrO2 の材料中へ堅固に組み込むことで 本発明の第一触媒担体を使用して生成された触媒のエイジングに対する高耐熱性が得られる。
ZrO2 粒子は好ましくは1nmから100μmの平均径をもち、好ましくは平均径0.5μm から20μmである。
【0019】
本発明の骨格の範囲で、「触媒担体成形体」「触媒担体」「成形体」および「担体」の語は同義語として使用される。
【0020】
さらに第二の多孔質触媒担体による本発明の課題は、外殻とともに成形体として形成され、触媒担体は少なくとも外殻の表面中にあり、触媒担体は天然層状ケイ酸塩からなる材料から形成され、特に、酸性処理か焼ベントナイトからなる母材から形成され、その中ではジルコニウム酸化物(ZrO2)は均一に含まれ、好ましくは均質的に分散されている。
【0021】
本発明の第二の触媒担体は第一の触媒担体と同様の優位性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
すべての第二触媒担体は母材から形成される。母材は天然層状ケイ酸塩であって、ジルコニウム酸化物粒子を均一に分散された状態で含むものである。
ZrO2 粒子は好ましくは1nmから100μmの平均径をもち、好ましくは平均径0.5μm から20μmである。
【0023】
さらに第三の多孔質触媒担体、それは天然層状ケイ酸塩を含むもの、についての本発明は、触媒担体は少なくとも3質量%のジルコニウム酸化物、好ましくは粒状で、ZrO2 粒子が、1nmから100μmの平均径をもち、好ましくは平均径0.5μm から20μmである。
【0024】
好ましい実施形態は、本発明の第一と第二および第三の本発明の触媒担体についても下記に言及する
【0025】
好ましくは、ジルコニウム酸化物粒子は触媒担体中に、触媒担体の質量に対して、濃度1−25質量%、好ましくは濃度3−20質量%、できれば濃度5から20質量%で、含まれる。
ジルコニウム酸化物が、触媒担体中に濃度1質量%未満で存在した場合、ジルコニウム酸化物の活性の増加率の特質は、わずかな効果のみを有する。
25質量%を超える濃度では、触媒の活性の増加は、あきらかなVAM選択性の減少を伴う。
【0026】
本発明の触媒担体の好ましい実施形態によれば、その酢酸中の溶解性は8重量%未満、好ましくは4重量%未満、特に好ましくは2重量%未満である。
酢酸溶解性を決定するために、触媒担体の5gを粉状に引き、125m、l9%の酢酸(p.a.)で、還流条件下、1時間処理する。触媒担体はフィルターで分離される。
溶出は、固体残渣物の乾燥および質量m〔残渣物〕まで蒸発され、酢酸溶解度は下記のように計算される。
酢酸溶解度(acetic acid solubility) = (m(残渣物)/5g) * 100%
【0027】
本発明の触媒担体の低い溶解度数は、酸での後処理による触媒担体の処理で得られる。
従って、さらに好ましい実施形態は、触媒担体が酸で処理された担体であることである。
【0028】
さらに好ましくは、触媒担体の酸性度が1と150(val/gの間であり、好ましくは、5と130(val/gの間であり、極めて好ましくは10と100(val/gの間であり、特に好ましくは、10と60(val/gの間であることである。
【0029】
触媒担体の活性は、酢酸とエチレンからVAMを生成するガス相の間に、本発明の触媒の活性に有利に影響を及ぼしうる。
触媒の活性は以下のように決定される:
100mlの水(pHは空試験値(blank value))が、1gの細かく粉砕された触媒担体に加えられ、15分間攪拌しながら抽出が行われた。
少なくともpH7.0の0.01N NaOH溶液での滴定が続き、その滴定は以下のステージで実行される。1mlのNaOH溶液は最初に抽出液中に滴下され(1滴/秒)、続いて2分間待ち、pHが測定され、さらに1mlのNaOH溶液が滴下される。
水の空試験値(blank value)が決定され、酸性度の計算がそれに応じて修正される。
【0030】
滴定曲線(pHに対し0.01ml NaOH)はプロットされ、pH7における滴定曲線の交点(intersection point)が決定される。
NaOHの使用量から得られるpH7における定曲線の交点のためのモル当量は、10-6 equiv/g の担体中で計算される。
全酸: 10 * ml 0.01N NaOH ÷ 1担体 = μval/g
【0031】
加えて、好ましいのは触媒担体の平均孔径が8から30nm、好ましくは9から20nm、できれば10から15nmである。
【0032】
本発明の触媒担体の表面が小さくなれば本発明の触媒のVAM選択性が高くなることが判明した、触媒担体の「比表面」とは、本発明の構成の範囲内では、担体のBET比表面を意味し、それはDIN 66132に従う窒素吸着法によって決定される触媒担体のBET比表面を意味する。
【0033】
従って、触媒担体のBET比表面は、145m2/g以下、好ましくは142m2/g以下、好ましくは140m2/g以下、さらに好ましくは137m2/g以下、より好ましくは135m2/g以下、さらにもっと好ましくは133m2/g以下、特に好ましくは130m2/g以下であることが好ましい。
【0034】
本発明によればさらに好ましいのは、触媒担体のBET比表面が、60から145m2/g、好ましくは65と140m2/gの間、好ましくは70と135m2/gの間、さらに好ましくは70と120m2/gの間、より好ましくは70と110m2/gの間、最も好ましくは70と110m2/gの間であることである。
【0035】
触媒担体の硬度は20N以上、好ましくは25N以上、さらに好ましくは35N以上、もっとも好ましくは40N以上であることが好ましい。硬度(圧入硬度indentation hardness)は後述のように決定される。
【0036】
「天然層状ケイ酸塩」によって、文献中では「フィロケイ酸塩」という語も使用されているが、すべてのケイ酸塩ユニットの基本構造を形成するSiO4 四面体は一般式[Si252-の層中で互いに架橋され、未処理のまたは処理済の天然素材のケイ酸塩材料が、本発明の骨格の範囲で意味されている。
これらの4面体層は、その中には基本的にはAlおよびMgなどのカチオン、OHまたはOによって8面体で囲まれ、いわゆる8面体層と交互に生じる。
2層フィロケイ酸塩と3層フィロケイ酸塩との間で、例えば、区別される。
層状ケイ酸塩は好ましくは本発明の骨格内で粘土鉱物、特にカオリナイト、バイデライト(beidellite)、ヘクトライト(hectorite)、サポナイト(saponite)、ノントロナイト(nontronite)、マイカ、バーミキュライト、およびスメクタイト(smectites)などが挙げられ、中でも、スメクタイトおよび特にモンモリロナイトは特別に好ましい。
「層状ケイ酸塩」の定義は、例えば以下の文献中に見出せる。
「Lehrbuch der anorganischen Chemie」 Hollemann Wiberg, de Gruyter 102nd edition 、2007(ISBN 978−3−11−017770−1)
「Ro(oはウムラウト)ompp Lexikon Chemie」 10th edition Georg hieme Verlag under phyllosilicate」
担体材料を使う前に行われる天然層状ケイ酸塩に対する典型的な処理は、例えば、酸処理および/またはか焼による処理を含む 。
天然層状ケイ酸塩は、特に本発明の骨子の範囲内で、ベントナイトであることが好ましい。
確かに、ベントナイトは実際の天然層状ケイ酸塩ではないが、大部分が粘土鉱物層状ケイ酸塩を含んでいる。
このようにして天然層状ケイ酸塩がベントナイトである本件においては、天然層状ケイ酸塩がベントナイトの成分の形でも触媒担体中に存在することが理解された。
特に好ましいのは、酸処理およびか焼されたベントナイトである。
【0037】
触媒担体中の天然層状ケイ酸塩の濃度は、触媒担体の質量に対して、好ましくは、50質量%以、好ましくは60質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、もっとも好ましくは93質量%以上である。
【0038】
VAM触媒のVAM選択性は本発明の触媒担体の全細孔容積(integral pore volume)に依存する。
それは、従って、触媒担体のBJH全細孔容積が、0.25と0.7ml/gの間、好ましくは0.3と0.55ml/gの間、およびできれば0.35と0.5ml/gの間であることが好ましい。
【0039】
触媒担体の総細孔容積は窒素吸収法によるBJH法に従って決定される。
触媒担体の比表面積と、その全細孔容積は、BETまたはBJH法に従って決定される。 BET比表面積はDIN 66132によるBET法によって決定される。BTE法の公開は J.Am.Chem.Soc.60,309(1938)においても見られる。触媒担体または触媒の比表面積と総細孔容積を決定するために、サンプルは、例えば、ミクロメトリックス社のASAP2010タイプの自動窒素ポロジメーターで、吸着と脱着等温線が記録される方法によって測定される。
BET法に従った触媒担体または触媒の比表面積と空隙率を決定するために、データはDIN66131に従って評価される。
空隙率は、BJH法(E.P.Barret,L.G.Joiner,P.P.Haienda,J.Am.Chem.Soc.73(1951,373)を使用したデータの測定から決定される。
濃縮能力の影響はこの方法を使用した時の評価にも考慮される。特定の孔サイズの範囲での細孔容積は、BJHに従った吸着等温線の評価から得られた増加した細孔容積を合計することによって決定される。BJH法に従った全細孔容積は、径が1.7−300nmの孔に言及する。
【0040】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、できれば90%の触媒担体のBJHによる総細孔容積が、メソ細孔及びマクロ孔から形成されていることが好ましい。
これにより、本発明の触媒、特にかなりの厚みのPd/Auシェルをもつものの拡散限界による影響をうけた活性低下を妨げる。
ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ孔による、とは、この場合は、径が2nm未満のもの、2から50nmのもの、および50nmより大きいものをそれぞれ意味する。
【0041】
本発明の触媒は、好ましくは、0.3g/mlより大きいかさ密度、好ましくは0.35g/mlより大きい、特に好ましくは、0.35と0.6g/mlの間のかさ密度である。
【0042】
担体中に含まれている天然層状ケイ酸塩が少なくとも65質量%のSiO2を含む場合、好ましくは少なくとも80質量%、できれば少なくとも95から99.5質量%のSiO2を含む場合が好ましい。 その結果、適正な本発明の触媒担体の化学的耐性は確保される。
【0043】
酢酸及びエチレンからのVAM生成のガス相においては、か焼酸処理ベントナイト中のAl23 含有量はかなり低くなり、ほとんど不利益はないが、Al23の高含有は、圧入硬度における著しい減少を予想させる。
本発明の触媒の好ましい実施形態によれば、酸処理ベントナイトは従って、酸処理か焼ベントナイトの重量に対して10重量%未満のAl23を含み、好ましくは0.1から3重量%、さらに好ましくは0.3から1.0重量%のAl23を含む。
【0044】
本発明の触媒担体のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体は成形体から形成されていることが好ましく、たとえば球状、円筒状、好ましくは円筒状、三葉状(trilobe)リング状、星状またはらせん状、好ましくはうねりのあるらせん状(ribbed strand)またはらせん状に連なった星状(star strand)、好ましくは球状として、形成されていることが好ましい。
【0045】
加えて、触媒担体は径が2mmより大きい球状に形成されていることが好ましく、好ましくは3mmより大きく、できれば4mmより大きいことが好ましい。
【0046】
加えて、触媒担体の最大のサイズは25mmより小さいことが好ましく、10mmより小さいことが好ましい。
【0047】
VAM触媒の活性を増加するために、本発明の触媒担体は、少なくともHf,Ti,Nb,Ta,W,Mg,Re,YおよびFe,好ましくはHfO2またはFe23からなる群から選ばれる酸化金属でドープされていることが好ましい。
これに関連して、さらに好ましくは触媒担体中にドーピングされている酸化物の割合は、0と20質量%の間、好ましくは1.0と10質量%の間、できれば3と8質量%の間であることが好ましい。
ドーピングは、先端技術によって知られているように、例えば表面ドーピングによって生じ、または金属酸化物(metal oxide/metal oxides)は本発明の触媒担体のZrO2 のように、触媒担体の母材に組み込まれ得る。
【0048】
本発明の触媒担体中には、ジルコニウム酸化物粒子が結晶(microcrystallites)および/またはナノ結晶(nanocrystallites)の形で好ましくは存在し、そこでは、ジルコニウム酸化物が純ZrO2として存在している必要はなく、混合酸化物の形で存在しうる。
【0049】
ZrO2 粒子はそれ自体がY23 または HfO2とともにドープされうることが好ましい。
【0050】
さらに好ましい実施形態によれば、触媒担体の吸水性は、吸水による重量の増加によって計算される40から75%、好ましくは50から70%であることが好ましい。
吸水性は、10gの担体サンプルを脱イオン水に30分間、担体サンプルから気泡が出なくなるまで浸漬して決定される。余分な水はそこで別の容器へうつされ、そして浸漬サンプルはコットンのタオルでサンプルに負荷した水を吸い取られる。水分が導入された担体はそこで重さが測定され、以下の方法で吸水率が測定される。
{(取り出した総重量(g)− 入れた総重量(g)}×10=吸水率(%)
【0051】
本発明はまた、触媒担体、特に、本発明の触媒担体の生成方法にも関係する。
【0052】
本発明の触媒担体は、例えば、層状ケイ酸塩としての粉砕(未か焼の)酸処理ベントナイトと、粉砕ジルコニウム化合物と水を挽き、そして均一になるまで完全に混合し、得られた混合物を圧縮することで、当業者に知られた装置を使用して、成形体の形に形成し、そして固化されていない成形体を安定した成形体へとか焼する。
か焼は、固体構造が得られ選択的にジルコニウム化合物がジルコニウム酸化物ZrO2へ変換される温度で実行される。
触媒担体の比表面積(BET)のサイズは特に使用されるベントナイト(未か焼)の質、使用されるベントナイトの酸処理方法、すなわち、例えば天然および多量のベントナイトに関して、使用される無機酸の濃度、酸処理時間と温度、成形圧力およびか焼時間と温度、およびか焼雰囲気などに依存する。
【0053】
酸処理ベントナイトは得ることができる、ベントナイトを硫酸、リン酸、塩酸などの強酸で処理することで得ることができる。
「Ro(oはウムラウト)mpp,Lexikon Chemie」、10th edition、Georg Thieme Verlag中で与えられたベントナイトという語の本発明の骨子の範囲における定義も有効である。
ベントナイト粒子は、本発明の骨子の範囲においては、天然アルミニウムを含む層状ケイ酸塩(スメクタイトとして)でありモンモリロナイトを主成分としてものが好ましい。
酸処理の後、ベントナイトは原則、水洗され、乾燥され粉状に粉砕される。
【0054】
触媒担体、特に本発明の触媒担体の、生成のための本発明のプロセスは、以下のステップを含む。
a) 粉砕(pulverant)天然層状ケイ酸塩を粉砕ジルコニウム金属または粉砕ジルコニウム化合物を混合する。
b) 得られた混合物をか焼する。
【0055】
本発明のプロセスによる触媒担体の生成は、一回のか焼ステップしか含まないため、従来のか焼された担体のジルコニウム酸化物前駆体化合物を続く2回目のか焼で表面ドーピングする方法よりも、あるいは、ジルコニウム酸化物かジルコニウム酸化物前駆体化合物を懸濁液として従来のか焼担体(WO2005065821)に適応し、触媒担体の適切な強度を得るために続いてか焼し、そこでは追加のバインダー、通常は酢酸ジルコニルを要求する、する方法よりも、コスト的に有利である。
【0056】
か焼は400℃から800℃、好ましくは500℃から700℃で行われることが好ましい。
【0057】
本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、さらなるステップを含む。
ステップb)が行われる前に得られた混合物から成形体を形成するステップ。
【0058】
まだジルコニウム酸化物ではない状態で供給されたジルコニウム化合物は好ましくはか焼の間に酸化物に変換される。
【0059】
前記プロセスは、層状ケイ酸塩とジルコニウム酸化物粒子の固体構造であって、ジルコニウム酸化物粒子が粒子の骨格構造中に均一に分散されている固体構造を有する触媒担体を生じる。
【0060】
上記プロセスにおいては、ジルコニウム二酸化物、ジルコニウム水酸化物、酢酸ジルコニルまたは他のジルコニルカルボキシレート、炭酸ジルコニウムまたはジルコニウムオキシカルボネート、亜硝酸ジルコニル、ジルコニウム ナフタネートまたはアンモニウム ジルコニウムカルボネート、好ましくはジルコニウム水酸化物が粉砕ジルコニウム化合物として使用されている。
ZrO2 が使用されている場合には、Y23 および/または HfO2で安定化されうる。
層状ケイ酸塩、選択的にジルコニウム酸化物粒子の構造の安定のために、触媒担体成形体の母材の構成成分のか焼はこれによって保障される。
【0061】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態によれば、方法はさらに下記のステップを含む。
酸によってか焼された混合物を処理する。VAM生成はこれによってなされた場合、担体は低酸溶解度を示す。
【0062】
粉砕可能なジルコニウム化合物に代えて、溶液中のコロイダルZrO2または対応するゾルが使用し得る。
【0063】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態によれば、ジルコニウム化合物はか焼において酸化物へ変換される。
【0064】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態によれば、ジルコニウム酸化物およびまたはジルコニウム水酸化物がジルコニウム化合物として使用し得る。
【0065】
ステップa)においてY23およびまたはHfO2はさらに好ましく使用し得る。
【0066】
本発明はまた本発明のプロセスで得られる触媒担体にも言及する。
【0067】
本発明はさらに、本発明の触媒、特にシェル触媒の生成における本発明の第一、第二および第三触媒担体にも言及する。
【0068】
本発明の好ましい実施形態によれば、シェル触媒は酢酸ビニルモノマーのためのシェル触媒であって、特に、そのシェルには金属PdおよびAuが含まれている。
【0069】
本発明はさらに本発明の第一,第二および第三触媒担体を含むVAMの生成のためのシェル触媒についても言及し、そのシェルには金属PdおよびAuが含まれている。
【0070】
従って、本発明は、とりわけVAM生成のための多孔質担体触媒成形体に金属PdおよびAuが含まれている外殻をもつシェル触媒であって、そこで、触媒担体は、少なくとも外殻のエリアにおいて、層状ケイ酸塩からなる母材から形成されており、特に母材が、酸処理か焼ベントナイト、ジルコニウム酸化物粒子を均一に、好ましくは均質的に分散されて含まれているものである。
【0071】
本発明のシェル触媒の活性と選択性の増加のような優位性は、シェル触媒の外殻が、その中に貴金属PdおよびAuが沈着されており、内部にジルコニウム酸化物(ZrO2) 粒子が均一に分散されて含まれている場合に得られることが確立されている。
【0072】
しかしながら、好ましい本発明は、もし本発明の触媒の全触媒担体が、ジルコニウム酸化物粒子が均一に分散されて含まれている天然層状ケイ酸塩からなる母材から形成されている場合である。
【0073】
本発明の触媒の好ましい実施形態によれば、ジルコニウム酸化物粒子は触媒担体中に、触媒担体の質量に対して濃度1から25質量%、好ましくは濃度3から20質量%で、およびできれば濃度5から20質量%で含まれている。
【0074】
本発明の触媒の好ましい実施形態によれば、触媒担体の酸性度が1と150(val/gの間であり、好ましくは、5と130(val/gの間であり、極めて好ましくは10と100(val/gの間であり、特に好ましくは、10と60(val/gの間であることである。
【0075】
本発明の触媒の好ましい実施形態によれば、触媒担体は平均孔径8から30nm、好ましくは9から20nmできれば10から15nmであることが好ましい。
【0076】
本発明の触媒担体の好ましい実施形態によれば、触媒担体の表面は145m2/g以下、、好ましくは142m2/g以下、好ましくは140m2/g以下、好ましくは137m2以下、好ましくは135m2/g以下、さらに好ましくは133m2/g以下、および特に好ましくは130m2/g以下である。
【0077】
本発明の触媒担体の好ましい実施形態によれば、触媒担体の表面は好ましくは60 m2/g から 145 m2/gの間、好ましくは65 m2/g から 140 m2/gの間、できれば70 m2/g から 130 m2/gの間、さらに好ましくは70 m2/g から 120 m2/gの間、より好ましくは70 m2/g から110 m2/gの間、およびもっとも好ましくは70 m2/g から110 m2/gの間である。
【0078】
特に、本発明の触媒の磨耗性を維持するために、もっともな制限の範囲で、触媒の硬度は20N以上、好ましくは25N、さらに好ましくは35N、さらに好ましくは35N、もっとも好ましくは40N以上である。
この硬度は、本件では8M 錠剤硬度計(8M tablet−hardness testing machine、 Dr. Schleuniger Pharmatron AG 社製)を用いることによって、触媒を130℃、2時間で乾燥後、以下のような装置内へセットすることで、99個のシェル触媒の平均を決めることで、確認されている。
硬度: N
成形体からの距離: 5.00 mm
遅延時間: 0.80 s
フィード タイプ: 6 D
速度: 0.60 mm/s
【0079】
触媒担体の硬度は、たとえば、その生成の間のプロセスパラメタの変動によって影 響されうる。そのパラメタは、例えば、天然層状ケイ酸塩の選択、対応する担体混合 物から形成される未処理の成形体のか焼時間及び/またはか焼温度、または、個別の 任意の導入材料、例えば、メチルセルロースまたはステアリン酸マグネシウムのよう な個別の任意の負荷材料などである
【0080】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、天然層状ケイ酸塩、特に酸処理か焼ベントナイトの触媒担体中の濃度は、に触媒担体の質量に対して50質量%以上、好ましくは60質量%以上、好ましくは70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、およびもっとも好ましくは93質量%以上である。
【0081】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体のBJHによる総細孔容積が0.25から0.7ml/gの間である場合、好ましくは0.3から0.55ml/gの間、きわめて好ましくは0.35から0.5ml/gの間である。
【0082】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、できれば90%の触媒担体のBJHによる総細孔容積が、メソ細孔及びマクロ孔から形成されていることが好ましい。
【0083】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体のかさ密度は、好ましくは、0.3g/ml、より好ましくは0.35g/ml、特に好ましくは、0.35と0.6g/mlの間である。
【0084】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、担体中の層状ケイ酸塩はSiO2を、少なくとも65重量%、好ましくは80重量%、さらに好ましくは95から99.5重量%含んでいる。
【0085】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、担体中の層状ケイ酸塩が、10重量%より少ないAl23を含み、好ましくは0.1から3重量%、さらに好ましくは0.3から1.0重量%のAl23を含む。
【0086】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体は成形体として、球状、円筒状、開口を有する円筒状、三葉状(trilobe)、リング状、星状、または車輪状に形成されており、好ましくは、うねりのあるらせん状(ribbed strand)またはらせん状に連なった星状(star strand)、好ましくは球状に形成されている。
【0087】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体は径が2mmより大きい形状に形成されており、好ましくは3mmより大きく、およびできれば4mmより大きい径である。
【0088】
加えて、触媒担体の最大サイズは25mm未満であることが好ましく、好ましくは10mm未満であることである。
【0089】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体が、少なくともHf、Ti、Nb、Ta、W、Mg、Re、YおよびFeからなるグループから選択される1の金属の酸化物、好ましくはHfO2 またはFe23でドープ(doped)されている。
【0090】
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体中のドープされている酸化物の濃度は0と20質量%の間であり、このましくは1.0と10質量%の間でありおよびできれば3と8質量%の間である。
【0091】
通常、触媒のPd/Auシェルの厚みが小さくなるにしたがって、本発明の触媒のVAM選択性は高くなる。さらに好ましい本発明の触媒の実施形態は、触媒のシェルは、従って、300μm以下の厚みを有していることが好ましく、好ましくは200μm以下の厚みであり、好ましくは150μm以下の厚みであり、さらに好ましくは100μm以下の厚みであり、さらにもっと好ましくは80μm以下の厚みである。
【0092】
シェルの厚みはマイクロスコープを使用することで視覚的に測定可能である。貴金属Pd/Auのエリアは、黒く蒸着され、貴金属のないエリアは白くみえる。原則として、貴金属のエリアと貴金属のないエリアの境界は、きわめて鮮明で、視覚的にはっきり認めることができる。
もし前記境界が、はっきり認められないために視覚的にはっきり認識できない場合には、対応するシェルの厚みは、触媒担体のアウター表面から測定された担体上に蒸着された95%の貴金属を含むものである。
【0093】
しかしながら、本発明の触媒の場合と同様に、特に表面のアームにおいて、Pd/Auシェルは、本発明の触媒のVAM選択性の顕著な低下を生じることなく、触媒の高活性をもたらす比較的大きい厚みに形成されうることが見出された。
本発明の触媒の好ましい他の実施形態によれば、触媒のシェルの厚みは、従って、200μmから2000μmの範囲であり、好ましくは250μmから1800μmの範囲であり、特にきわめて好ましくは、300μmから1500μmの範囲であり、さらに好ましくは400μmから1200μmの範囲である。
【0094】
本発明の触媒の適切な触媒活性を確保するために、触媒中のPdの割合は貴金属が担持された触媒担体の重量に対して、0.5から2.5重量%であり、好ましくは、0.6から2.3重量%であり、好ましくは0.7から2.0重量%である。
【0095】
本発明の触媒が、1から20g/l、好ましくは2から15g/l、また好ましくは3から10g/lのPdを含んでいる場合もまた好ましい。
【0096】
同様に、本発明の触媒の適切な活性および選択性を確保するために、Pd/Auの原子比率は、0と1.2の間であることが好ましく、好ましくは0.1 と 1の間であり、好ましくは0.3と0.9の間であり、また好ましくは0.4と0.8の間である。
【0097】
本発明の触媒が、2から20g/l、好ましくは1.5から15g/l、また、好ましくは2から10g/lのAuを含んでいる場合もまた好ましい。
【0098】
Pd/Auシェルの厚みにわたる本発明の触媒のほとんど均一な活性を確保するために、貴金属の濃度はシェル厚みにわたってはほとんど変化しない。
従って、好ましくは、シェル厚みの90%にわたるエリアにおいて、このエリアは、シェルの厚みにおいて内側と外側の境界からそれぞれ5%の位置からに存在するが、貴金属濃度のプロファイルは、このエリアの平均の貴金属濃度から最大±20%、好ましくは最大±15%、また好ましくは最大±10%変動する。
このようなプロファイルは後述のような流動床上の担体にスプレーすることで得られる。
【0099】
塩化物は本発明の触媒へ害を及ぼし、同様に非活性化をもたらす。
さらに好ましい本発明の触媒の実施形態によれば、その塩化物の含有量は、従って、250ppm以下、好ましくは150ppm以下である。
【0100】
本発明の触媒が好ましく含有するのは、ジルコニウム酸化物に加えて、さらなるプロモータとして、少なくとも1つのアルカリ金属化合物、好ましくは、カリウム、ナトリウム、セシウムまたはルビジウム化合物で、好ましくはカリウム化合物を含む。
ふさわしくは及び好ましくは、以下のものを含むカリウム化合物である。
酢酸カリウム(KOAc)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)及び、水酸化カリウム(KOH)、そして、VAM生成の各反応条件下で酢酸カリウムになるすべてのカリウム化合物。
カリウム化合物は、金属化合物のPd及びAu金属への還元の前後両方において触媒担体上に沈着されうる。
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、触媒は酢酸アルカリ金属、好ましくは酢酸カリウムを含むことが好ましい。
特に、確実に適切なプロモータ活性を得るために、触媒中のアルカリ金属酢酸塩含有量は、特に好ましくは、0.1から0.7mol/l、好ましくは0.3から0.5mol/lの場合であり、本発明の触媒のカリウム酢酸塩含有量は、好ましくは約40g/lである。
【0101】
さらに好ましい本発明の触媒の実施形態によれば、アルカリ金属のPd原子比率は、1と12の間、好ましくは、2と10の間、特に好ましくは4と9の間である。
好ましくは、触媒担体の比表面積が小さくなるほどアルカリ金属のPd原子比率は低くなる。
【0102】
本発明は、シェル触媒、特にシェル触媒を生成する第一のプロセスであって、次のステップを備える。
(a) 本発明の第一、第二および第三の触媒担体を生成するステップ、
(b) 触媒担体の上にPd前駆体化合物溶液を沈着させるステップ、
(c) 触媒担体の上にAu前駆体化合物溶液を沈着させるステップ、
(d) 前記Pd前駆体化合物を金属へ変換するステップ、および、
(e) 前記Au溶液前駆体化合物を金属へ変換するステップ。
【0103】
本発明の触媒担体のZrO2がドープされた外殻の厚みは、少なくとも貴金属シェルが沈着されうる厚みに対応して、例えば500μmの厚みを有する。
【0104】
基本的に、到達可能な高い分散度によるすべてのPdまたはAu化合物は、PdおよびAu前駆体化合物として使用可能である。
「分散度」とは、金属/合金粒子の全金属原子数の総量に対する金属触媒に担持された全表面金属/合金粒子の数の比率を意味する。
一般的に、分散度が比較的高い数値に対応する場合が好ましく、すなわち、この場合には多くの金属原子が触媒反応のために自由に利用可能であるからである。
このことは、担持された金属触媒に比較的高い分散度が与えられると、比較的少ない量の金属の使用でも同等の特定の触媒活性に到達しうることを意味する。
本発明の触媒のさらに好ましい実施形態によれば、金属粒子の分散度は1から30%である。
分散度の値はDIN基準に従ったCO吸収法によって決定される。
【0105】
PdおよびAu前駆体化合物は以下のものから選択することが好ましい。
ハロゲン、特に、塩化物、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化物、炭酸水素塩、アミノ化合物またはたとえば、トリフェニルリン酸化合物、またはアセチルアセトン化合物などの有機化合物、およびそれらの金属塩など。
【0106】
特に好ましいPd前駆体化合物の例は水溶性Pd塩である。
本発明の好ましい方法の実施形態によれば、Pd前駆体化合物は以下のものからなるグループから選択される。
Pd(NH34(OAc)2、H2PdCl4、Pd(NH34(HCO32、Pd(NH34(HPO4)、Pd(NH34Cl2、Pd(NH34 オキサレート、Pdオキサレート、Pd(NO32 、Pd(NH34(NO32、K2Pd(OAc)2(OH)2、Na2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH32(NO22、K2Pd(NO24、 Na2Pd(NO24、Pd(OAc)2、K2PdCl4、(NH42PdCl4、PdCl2 およびNa2PdCl4
NH3に対応する塩化物の替わりとして、エチレンジアミンまたはエタノールアミンがリガンドとして使用しうる。
Pd(OAc)2 に加えて他のパラジウムカルボキシレート好ましくは炭素数3から5の脂肪族モノカルボン酸塩、例えば、プロピオン酸塩または酪酸塩、が使用しうる。
【0107】
本発明の方法の特に好ましい実施形態によれば、亜硝酸Pd前駆体化合物も好ましい。好ましい亜硝酸Pd 前駆体化合物は、Pd(OAc)2 をNaNO2 溶液中に溶解させて得られるものなどである。
【0108】
好ましいAu前駆体化合物の例としては、水溶性Au塩である。
本発明の方法の特に好ましい実施形態によれば、Au前駆体化合物は以下のものからなるグループから選択される。
KAuO2、HAuCl4、KAu(NO24、AuCl3、KAuCl4、NaAuCl4、KAuCl4、KAu(OAc)3(OH)、HAu(NO34、NaAuO2、NMe4AuO2、RbAuO2、CsAuO2、NaAu(OAc)3(OH)、RbAu(OAc)3OH、CsAu(OAc)3OH、NMe4Au(OAc)3OHおよびAu(OAc)3
Au(OAc)3またはKAuO2は、水酸化金(III)溶液から酸化物/水酸化物を
沈殿させ、洗浄し沈殿物を分離し、酢酸またはKOH中で取り上げることによって、フレッシュなものを適切なところで生成することが推奨される。
【0109】
すべての選択された前駆体化合物中の純溶媒または混合溶媒は可溶であり、そしてそれらは、触媒担体上に沈着した後には、前駆体化合物の溶媒として、適した乾燥法により簡単に再度除去することが可能である。
前駆体化合物としての金属酢酸塩のための好ましい溶媒の例は、例えば、アセトンあるいは非置換のカルボン酸であり、特に酢酸および金属塩化物は金属の酢酸塩であり、特に置換基のないカルボン酸、特に好ましくは酢酸であり、および金属の塩化物、特に好ましくは水性あるいは希塩酸である。
【0110】
前駆体化合物がアセトン、酢酸、水性または希塩酸あるいはこれらの混合物などの純溶媒に十分に溶解されない場合には、他の溶媒あるいは溶媒添加物は代替としてあるいは前記溶媒に追加することで使用されうる。
他の溶媒としてこの場合に好ましく考慮されるものは、不活性および酢酸または水に溶解可能なものである。
例えば、アセトンまたはアセチルアセトンなどのケトンや、さらに他の例としては、例えば、テトラヒドロフラン、またがジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、および、ハイドロカーボンをベースとする溶剤、例えばベンゼンは好ましい溶媒としてあげられ、酢酸に追加するのに適切である。
【0111】
例えばアセトンまたはアルコールなどのケトン、例えばエタノール、イソプロパノール、メトキシエタノールなどのアルコール、KOHまたはNaOHなどの苛性アルカリ水溶液、または酢酸、ギ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコキシリル酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、または乳酸などの有機酸が水に追加される好ましい溶媒として挙げられる。
【0112】
塩化化合物が前駆体化合物として使用される場合、本発明のプロセスによって触媒生成する際に、使用する前に塩素イオンは許容される残留量にまで減少させなければならない。すなわち、塩素イオンは阻害剤となるためである。
このため、触媒担体は、原則として、触媒担体上にPdまたはAu化合物が固定化されたあと大量の水で洗浄される。
一般的には、これは、苛性アルカリによるPdおよびAuの水酸化物の沈殿による固定化の直後、あるいは、各金属/合金に対する貴金属化合物の還元の直後におきる。
【0113】
しかしながら、本発明の方法の好ましい実施形態によれば、塩素イオンフリーのPdおよびAu前駆体化合物は、塩素イオンフリーの溶媒と同様に、触媒中の塩素含有量をできるだけ低く抑えるため、および面倒な塩素イオンフリー洗浄を避けるために使用される。対応するアセテート、水酸化物、または亜硝酸化合物は前駆体化合物として好ましく使用される。すなわち、それらは触媒担体を塩化物で汚染する度合が極めて少ないためである。
【0114】
PdおよびAu前駆体化合物の触媒担体の外殻のエリアにおける触媒担体上への沈着は、公知の方法に従って成しえる。
このような前駆体溶液は、スティーピングによって、担体を前駆体溶液中に浸漬することによって、あるいは、それを初期の湿式プロセスに従ってスティーピングすることによって、沈着されうる。
例えば、苛性ソーダ溶液または苛性カリウムなどのベースは、触媒担体上に沈着されるが、それによって貴金属化合物は担体上に水酸化物の形で沈殿する。
また、例えば、まず担体を苛性液中にスティープし、それから前駆体化合物をこの前処理された担体に適用することも可能である。
【0115】
さらに好ましい本発明の方法の実施形態によれば、PdおよびAu前駆体化合物は、触媒担体のPd前駆体化合物の溶液中、Au前駆体化合物の溶液中、または、PdおよびAu前駆体化合物両方を含む溶液中へのスティーピングによって触媒担体上に沈着されることとなる。
【0116】
先端技術によれば、担体のシェルのエリアにおける塩化物から出発される活性金属PdおよびAuは、スティーピングによる方法と同様に適用される。
しかし、この技術は、最小のシェルの厚みおよび最大のAu担持に関してその限界に到達した。
VAM触媒として知られているシェル厚みは、最大およそ100μmであり、スティーピングによって得られるこれより薄いシェルは予想できない。
加えて、スティーピングで必要とされるシェルの範囲のより高いAu担持はかろうじて実現可能である。
Au前駆体化合物は、シェルから触媒担体成形体の内部へ拡散する傾向にあるため、結果としてほとんどPdを含まないエリアが広いAuシェルとなる。
【0117】
活性金属は、またはそれらの前駆体化合物も、他の方法において、例えば、いわゆる物理的プロセスによって担体上に沈着しうる。
このために、本発明の担体は、例えば前駆体化合物の溶液がスプレーされることが好ましく、そこで、触媒担体はコーティングドラムの中へ移送され、ホットエアが吹きつけられ、その結果、溶剤は素早く蒸発する。
【0118】
しかし、本発明の方法のさらに好ましい実施形態によれば、Pd前駆体化合物の溶液およびAu前駆体化合物の溶液が、触媒担体の流動層(fluid bed)、あるいは流動床(fluidized bed)の上に溶液をスプレーすること、好ましくは、溶液のエアゾル法によって、触媒担体上に沈着される。
シェルの厚みは、それによって、例えば、2mm厚さになるまで、継続的に調整され、および最適化されうる。
しかし、厚み100μmよりも薄い厚みの極めて薄いシェルでさえ、このように実現可能である。
【0119】
成形体は流動層において楕円にまたはトロイダルに循環されることが好ましい。
このような流動層において成形体を動かすアイディアとしては、触媒担体成形体を流動床中の、主軸あるいは第二の軸のサイズが変化している楕円パスにおける鉛直面で移動する「楕円循環(elliptical circulation)」の場合が挙げられるだろう。
「トロイダル循環(toroidal circulation)」の場合、触媒担体成形体は流動床中の、主軸あるいは第二の軸のサイズが変化している楕円パスにおける鉛直面において移動し、そして軌道中の水平面では半径が変化する。
平均すると、成形体は「楕円循環」の場合の楕円パスの鉛直面における「楕円循環」を移動し、トロイダルパスの「トロイダル循環」を移動し、すなわち成形体は円環らせん(torus helically)表面を鉛直楕円セクション(vertical elliptical section)でカバーする。
【0120】
上記本発明の方法の実施形態は、好ましくは流動床ユニットの流動床を使用して実施可能である。
特に好ましいのは、ユニットがいわゆる制御されたエアグライド層が含まれている場合である。
ひとつには、触媒担体成形体は制御されたエアグライド層によって完全に混合され、そこで、それらは同時にそれ自身の軸について回転され、そこで、プロセスエアによってむらなく乾燥される。
他には、成形体の続く軌道運動のために、制御されたエアグライド層の影響によって、触媒担体成形体は実質的に、一定の頻度でスプレー処理(前駆体化合物のアプリケーション)を通過する。
成形体のバッチ式処理のほぼ均一なシェル厚みは、これによって獲得される。
すなわち、このような貴金属濃度は、シェル厚みの大きいエリアを超えて、矩形関数を示す。
ここで、結果として生じる触媒のほとんど均一な活性はPd/Auシェルの厚みにわたって確実にされる。
【0121】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、本発明の方法を実施するために適しているコーティングドラム、流動層ユニットおよび流動床は最先端の技術分野において知られており、また例えば、以下によって販売されているものがある。
Heinrich Brucks GmbH(Alfeld, ドイツ)、
RWEK GmbH (Heusenstamm,ドイツ)、
Stechel(ドイツ)、
DRIAM AnlagenbAu GmbH (Eriskirch,ドイツ)、
Glatt GmbH(Binzen,ドイツ)、
G.S.Divisione Verniciatura(Osteria,イタリア)、
HOFER−Pharma Maschinen GmbH(Weil am Rhein, ドイツ)、
L.B. Bohle MaschinenおよびVerfahren GmbH (Enningerloh,ドイツ)、
Lodige(oはウムラウト) MaschinenbAu GmbH(Paderborn,ドイツ)、
Manesty(Merseyside,イギリス)、
Vector Corporation(Marion,IA,米国)、
Aeromatic−Fielder AG(Bubendorf,スイス)、
GEA Process Engineering (Hampshire,イギリス)、
Fluid Air Inc.(Aurora, Illinois, USA)、
Heinen Systems GmbH(Varel, Germany)、
Huttlin(uはウムラウト)GmbH(Steinen, Germany)、
Umang Pharmatech Pct Ltd.(Marharashtra, India)およびInnojet Technologies(Lorrach(oはウムラウト)、 Germany)。
特に好ましい流動床装置は次の名称で販売されているものである。
「Innojet (登録商標)Aircoater」または「Innojet(登録商標)Ventilus」 by Innojet Technologies。
【0122】
本発明の方法のさらなる好ましい実施形態によれば、触媒担体は溶液の沈着の間、例えば加熱されたプロセスエアによって加熱される。
沈着された貴金属前駆体化合物の溶液のドライオフスピードは、触媒担体の加熱の程度(degree of heating)を通じて決定される。
比較的低温でのドライオフスピードは、例えば比較的遅く、その結果、溶媒の存在によって引き起こされる前駆体化合物の高い分散のために、対応する量の沈着とともに、大きいシェル厚みが形成される。
比較的高温でのドライオフスピードは、例えば比較的速く、その結果前駆体化合物の溶液は成形体と接触するとすぐに乾燥するが、それは、触媒担体上に沈着された溶液が深い個所に浸透しないためである。
比較的高温において、このような比較的薄いシェル厚みは、高い貴金属担持によって得ることができる。例えば、触媒担体は温度40℃から80℃で加熱され得る。
【0123】
PdおよびAuをベースとするVAMシェル触媒の生成についての先端技術に記載されるプロセスにおいては、商業的に利用可能な前駆体化合物の溶液、例えばNa2PdCl4,NaAuCl4 またはHAuCl4溶液が使用される。
最近の文献中には、すでに以前に述べられているように、塩素フリーPdまたはAu前駆体化合物、例えばPd(NH34(OH)2, Pd(NH32(NO22 および KAuO2なども使用される。
これらの前駆体化合物は塩基性溶液中で反応し、標準的な塩化物、硝酸塩、およびアセテート前駆体化合物は溶液中の酸に反応を起こさせる。
【0124】
触媒担体上への前駆体化合物の沈着のためには好ましくはNa2PdCl4 および NaAuCl3 水溶液が通常使用される。
これらの金属塩溶液は通常、室温にて担体に適用される、そして金属化合物はNaOHで不溶性のPd またはAu水酸化物として固定される。
そこで、担持された担体は通常、水で塩素フリーに洗浄される。
特にAuの固定は、安定したAu四塩化物化合物の沈殿を導入するための塩基の長い反応時間および付随する不適切なAuの反応などの不利益を有する。
【0125】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態によれば、プロセスは下記のステップを有する。
a)Pd および/またはAu前駆体化合物の第一溶液が供給されるステップ、
b)Pd および/またはAu前駆体化合物の第二溶液が供給され、その中では
第一溶液が逆に第二溶液の前駆体化合物の貴金属化合物の沈殿に影響を及ぼす ステップ、
c)第一溶液と第二溶液は触媒担体上に沈着されるステップ。
【0126】
この本発明の実施形態では二つの異なる前駆体溶液を使用したが、これは例えば、ひとつがPdを、もう一つがAu前駆体化合物を含む。
一般的に、溶液のひとつは塩基性を有し、またもう一つは酸性のpHを有することが好ましい。
一般的に、まず担体への最初の第一液の含浸によって、そして続くステップでの上述したような第二液のスティーピングによって、溶液は触媒担体上に沈着される。
第二液の沈着において、二つの溶液は担体上で結合され、それによって溶液のpHは変化し、それぞれの前駆体化合物のPdまたはAu化合物は担体上に沈殿されるが、これは担体へ適用されることが必要な通常の先端技術におけるNaOHまたはKOHのような補助的な塩基なしに行われる。
【0127】
上記本発明の方法の実施形態は、このような触媒担体のPdおよび/またはAu前駆体化合物の第一溶液およびPdおよび/またはAu前駆体化合物の第二溶液の含浸を基本としているが、そこでは二つの溶液が互いに相容れず、つまり、第一溶液は逆に、第二液の前駆体化合物の貴金属の沈殿に作用し、その結果二つの溶液の接触する領域において、予備的含浸されたPd/Au化合物と事後的含浸されたPd/Au化合物がほとんど同時に沈殿し、Pd/Auの混合を通じて密な混合に導かれる。
乾燥は二つの含浸ステップの間に選択的に行われうる。
【0128】
不相溶な溶液とともに含浸するためのPd前駆体化合物の適切な水溶液は表1に例示される。
【0129】
【表1】

【0130】
もし、早期のAuの還元(premature au reduction)について、NH3 が還元作用には強すぎた場合、パラジウムアミン化合物のかわりに、リガンドとしてのエチレンジアミンとともに、またはリガンドとしてのエタノールアミンとともに、対応するジアミン化合物も使用しうる。
【0131】
不相溶な溶液とともに含浸するためのAu前駆体化合物の適切な水溶液は表2に例示される。
【0132】
【表2】

【0133】
貴金属化合物の塩基フリーの沈殿のための適切な不相溶な溶液の組み合わせは、例えば、PdCl2 および KAuO2 溶液、Pd(NO32 および KAuO2 溶液、Pd(NH34(OH)2 および AuCl3またはHAuCl4溶液である。
【0134】
本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、Pdは不相溶なPd溶液および類似物と、Auは不相溶なAuと、共に沈殿しうる。
すなわち、PdCl2 溶液をPd(NH34(OH)2 溶液に接触させ、またはHAuCl4 を KAuO2 溶液に接触させることによる。
このような方法で高濃度Pdおよび/またはAu成分が、高濃度溶液を使用する必要なくシェルに沈殿する。
【0135】
本発明の方法のさらなる実施形態によれば、他の液と相溶性のある混合された溶液は、混合された溶液と不相溶な溶液と接触させられ、貴金属の沈殿のために用いられる。
混合液の例としては、PdCl2 とAuCl3含有液であってその貴金属成分KAuO2 溶液で沈殿されうるもの、または、Pd(NH34(OH)2とKAuO2含含有溶液であって、その貴金属成分が、PdCl2およびHAuCl4含有溶液で沈殿されうるものがある。さらなる混合溶液の例はHAuCl4 とKAuO2 の組み合わせである。
【0136】
不相溶な溶液との含浸は、好ましくは、スティーピングあるいはスプレー含浸によって行われ、そこでは、不相溶な溶液は、例えば、一また二以上のダブルノズルで同時にスプレーされ、または、二つのまたはノズル群または一またはそれ以上のノズルによって連続的にスプレーされる。
【0137】
すばやい前駆体化合物の金属成分のシェルへの不動化(固定)と、および同時に起こる短縮したPdとAuの分散のため、不相溶液の含浸は慣習的な相溶液の使用よりも、シェルを薄くさせることができる。
不相溶液の使用によって、薄いシェル中の貴金属の高い含有、改善された金属維持力、より早くより完全な貴金属の沈殿、担体の分解性の残留Na成分の減少、ひとつの固定ステップにおけるPdとAuの同時の固定、NaOHコストの不要およびNaOH処理および担体の余分なNaOHとの接触を通じた機械的疲労の回避などが実現されうる。
【0138】
不相溶液との含浸によって、二つの不相溶な溶液の沈着からなる単一の固定化ステップを通じてより多くの貴金属含有が触媒担体上に沈殿され、それは標準的な塩基(NaOH)固定化による場合よりも大きい。
特に、Au/Pd原子比率0.6以上の高いAuの含有は、VAM選択性に関しては極めて望ましいが、不相溶液の原則的な使用によって容易に成しえる。
【0139】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態によれば、一旦、PdおよびAu前駆体化合物が触媒担体上に前駆体化合物の貴金属化合物の固定のために沈着され、触媒担体は固定化ステップに付される。
固定化ステップは、苛性または酸による担体の処理を含み、それは前駆体化合物が酸か塩基かによるが、または貴金属成分の水酸化物または酸化物へ変換するための担体のか焼がなされる。
固定化ステップは省略可能である。そして、貴金属成分は、たとえばエチレンなどのガス相における20℃から200℃の加熱条件下での還元反応処理によって、直接還元されうる。
【0140】
本発明の触媒の生成は、粉砕多孔質担体材料、天然ケイ酸塩、特に酸処理された(か焼のまたは未か焼)ベントナイトと、ジルコニウム酸化物(ZrO2)粒子の混合物、からなる材料、によってまた可能である。
そこでは、担体材料にPdおよびAu前駆体化合物またはPdおよびAuが担持される。
予備的処理がなされた担体材料は二次的担体としての担体上にコートされうるが、それはウォッシュコートの形で適正な成形体、例えば、球状のステアタイト、またはKA−160担体(SUD−Chemie(Uはウムラウト) AG社)など、の上にコートされ、そして、さらに触媒の中にか焼と還元によって処理される。
【0141】
シェル触媒、特に本発明のシェル触媒、の生成プロセスのさらなる発明によれば、以下のステップを含む。
(a) 特に酸処理されたか焼ベントナイトなどの天然層状ケイ酸塩粒子と、ジルコニウム酸化物(ZrO2)粒子の混合物からなる粉砕(pulverant)多孔質担体材料を準備し、そこで担体材料はPdおよびAu前駆体化合物で、またはPdおよびAu粒子で担持されるステップ。
(b) ステップ(a)で得られた担体材料がシェルの形の予備的な担体構造上に体積されるステップ。
(c) ステップ(b)で得られた担持された担体構造をか焼するステップ。および
(d) 選択的に、前記PdおよびAu前駆体化合物の前記PdおよびAu化合物を金属の形に変換するステップ。
【0142】
また、そのかわりに、上記プロセスは、成形体の上に貴金属によって担持されていない粉状の触媒担体の第一の沈着によって実行され、その後にのみ貴金属を適応する。
【0143】
前駆体化合物の担持後、あるいは、貴金属化合物の固定後、担体は対応する酸化物への変換のためにか焼されうる。
か焼は、好ましくは700℃より低温で行われる。特に好ましいのは、エアの追加と同時に300から450℃の間で行うことである。
か焼時間はか焼温度により、好ましくは、0.5から6時間の間である。約400℃のか焼温度においては、か焼時間は好ましくは1から2時間である。約300℃のか焼温度においては、か焼時間は6時間までが好ましい。
【0144】
貴金属化合物は典型的には触媒の使用前にさらに還元され、そこでは、還元はもとの位置(in situ)、すなわち、プロセス反応装置や、または実験設備内(ex situ)において、特に還元反応装置においてなどで行われる。
元の位置における還元は、エチレン(5体積%)とともに窒素の中で150℃で例えば5時間以上で行われることが好ましい。
実験設備での還元は、窒素中の5体積%の水素とともに、例えば、混合ガスをしようして、好ましくは150から500℃の範囲の温度において、5時間を越える時間、実行されうる。
【0145】
ガス状の、または、揮発可能な、還元剤としては、例えば、CO、NH3、ホルムアルデヒド、メタノール、および 炭化水素類が同様に使用しうる。そこでは、ガス状の還元剤が、例えば、二酸化炭素、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで希釈されうる。
不活性ガスで希釈された還元剤が使用されることが好ましい。水素と窒素またはアルゴンの混合は。好ましくは、水素の含有量が、1体積%と15体積%の間であることが適切である。
【0146】
貴金属の還元は、液相中でも行われ、好ましくは、還元剤の、ヒドラジン、ギ酸K、H22または、次亜リン酸Na、次亜リン酸K、次亜リン酸を使用して行われることが好ましい。
【0147】
還元剤の量は、処理時間の間に貴金属化合物の完全な還元が触媒上を通過するのに必要な量に等しいような量が選択される。
好ましくは、しかし、余剰な還元剤は、迅速なおよび完全な還元を保障するために、触媒表面を通過する。
【0148】
還元は好ましくは常圧、すなわち絶対圧力約1バールで行われることが好ましい。
産業的な生成のためには、本発明の触媒の量は、ロータリーチューブオーブンまたは流動床反応装置が使われることが、触媒の還元を確実にするために好ましい。
【0149】
本発明は本発明の触媒の使用について言及する。
その触媒の使用とは、酸化触媒として、水酸化/脱水素化触媒として、水酸化脱硫化触媒(hydrogenating desulphurization)として、水酸化脱窒化触媒(hydrodenitrification)として、水酸化脱酸化触媒(hydrodeoxidation)またはアルケニルアルカノーテス(alkenylalkanoates)の生成における触媒として、特に、酢酸ビニルモノマー(VAM)生成、特に、ガス相におけるエチレンおよび酢酸を酢酸ビニルモノマーへ形成する、ための触媒としての使用である。
【0150】
本発明の触媒は好ましくはVAM生成に使用される。通常これは、酢酸、エチレンおよび酸素または酸素を含むガスを、本発明の触媒に、100から200℃、好ましくは120から200℃の温度にて、および1から25バール、好ましくは1から20バールの圧力で通すことで実施されるが、そこでの未反応の抽出物はリサイクル可能である。
便宜上には、酸素濃度は10体積%より低く維持される。特定の状況下で、しかしながら、窒素または二酸化炭素のような不活性ガスによる希釈は有利にもなる。二酸化炭素はVAM生成の過程において、少量で形成されるため特に希釈に適している。酢酸ビニルの形成は、例えば、US5066365中に記載されている適切な方法の補助によって分離される。
【実施例】
【0151】
下記の実施例は本発明の説明を補足するが、これらに限定されるべきではない。
【0152】
実施例1:
500gの異なる酸処理された乾燥済み粉状ベントナイト混合物、主成分としてモンモリロナイトを含む天然ベントナイトをベースとした層状ケイ酸塩化合物を、50gまでのZrO2および12gの通常取引されているメチルセルロースとともに、ボールミルを使用してよく完全に混合されたものになるように粉砕した。
【0153】
結果の混合物は、水に溶解され、練られたものへ混合される処理を施され、その状態から、タブレットプレスを使用して球状体が形成された。硬化のため、球状体は600℃の温度で5時間を越える時間か焼された。このようにして得られた成形体は表3の特性を持っている。
【0154】
【表3】

【0155】
通常流通されている流動床装置、Innojet(登録商標) Aircoater (Innojet Technologies 社製 Lorrach(oはウムラウト), Germany)に、上記のように形成された球状体、比表面積が122 m2/gの球状体を225g充填し変換した。そこでは、球状体は圧縮エア温度調整が80℃(6バール)で流動床ステートにおかれ、トロイダルに成形体は循環される。すなわち、鉛直方向に楕円軌道に沿って移送され、これと垂直にまじわる水平パスに循環される。
【0156】
一旦、成形体は約75℃で温度制御されて、300mlの貴金属水溶液は7.5gの通常取引されているNa2PdCl4 (テトラクロロパラデイトナトリウム)および、4.6gの通常取引されているNaAuCl4 (テトラクロロアウレイトナトリウム)を混合し、成形体の流動床の上に40分を超える時間スプレーされる。
【0157】
触媒担体の貴金属混合溶液への含浸の後、担体球体は0.05モル濃度のNaOH溶液が流動床ステートで上記条件で30分を超える時間スプレーされる。NaOHは成形体上で16時間作用させられる。
【0158】
NaOHが作用されたあと、担体は流動床装置内で多量の水でおおかたのアルカリ金属と、貴金属化合物とNaOHを介して担体上に導入された塩化物を除去するために洗浄する。
【0159】
洗浄後、成形体は90から110℃の温度で、流動床装置内で乾燥される。
【0160】
成形体が乾燥された後、それらは、エチレン(5体積%)混合ガスと共に窒素中で約150℃の温度の流動床装置内でPd/Auシェル触媒へ還元される。
【0161】
その結果、シェル触媒は1.2質量%のPdを含有し、約0.5のAu/Pd 原子比率(ICP法:inductively coupled plasmaによって決定される)を有し、約180μmのシェル厚みと33Nの硬度を有する。
【0162】
このようにして得られたPd/Auシェル触媒の貴金属濃度は、シェル厚みの90%のエリアにわたって、このエリアの平均貴金属濃度から最大+/−10%まで変化し、このエリアはアウターと内殻の境界から5%の距離にある。
貴金属の分散は、エネルギー分散解析分光器を備えたLEO 430VP スキャニング エレクトロン マイクロスコープ(Bruker AXS社製)で決定される。
シェル厚みにわたる貴金属濃度を測定するために、触媒球体は半分にカットされ、アルミニウムのサンプルホルダーにセットされ、そこでカーボンが蒸着される。
窒素フリー シリコンドリフト検出器(XFlash(登録商標) 410)を、マンガン K alpha ライン 125eVの分解能エネルギーで検出に使用した。
【0163】
実施例2
実施例1にしたがって準備して、酸処理をした65gの担体を表4にその特性を示す。
【0164】
【表4】

【0165】
実施例1に従い準備して、下向流で酸処理をした65gの担体を表4にその特性を示す。この担体を細孔充填法(ore−filling method:incipient wetness method)を使用して担体をその空隙体積に対応した量、1.56gのNa2PdCl4と0.357gのHAuCl4を含んだ水溶液38.6mlにの溶液に浸漬して含浸する。
含浸後、0.35 molのNaOH 溶液89.14 gを触媒担体に適用し、21時間室温で一晩放置する。
固定溶液を移したあと、このような処理をした触媒前駆体は73.65 g の 10% NaH2PO2 溶液で二時間還元される。h.
還元溶液を排出したあと、触媒は蒸留水で8時間、室温で洗浄される。
水はCl残渣を除去するために常に入れ替える(流速(throughflow)=140rpm)。
最終の洗浄溶液の伝導度は1.4μSであった。
【0166】
触媒は流動層で90℃、70分間乾燥される。乾燥された球体は、2molのKOAc溶液、27.30gと、13.59gの水を混合したものを担持させて室温で一時間放置する。そのあと、流動層で90℃ 70分の乾燥が行われた。
【0167】
論理上は、Pd担持は0.8重量%、Au担持は0.3重量%であり、実験担持量はPd担持は0.78重量%、Au担持は0.27重量%であった(ICPによる決定)。
【0168】
シェルの厚みは239 μm であった(統計平均)。
【0169】
実施例2の担体を6mlの量とったものを流動床チューブ型反応機にいれ、150℃、10バールで550Nml/minで15% のHOAc、6%のO2、窒素中の39% のC24 からなるフィードガスを流し、その後反応機からとりだしたものをガスクロマトグラフィーで測定した。
【0170】
VAMに対するエチレンの選択性は、
式:S(C24) = mole VAM / (mole VAM + mole CO2/2)
によって計算される。
空間回収率(the space−time yield (STY))は
式:VAM kg/触媒の量(リットル)/時間)
で与えられる。
酸素置換率は、
式:(入った モルO2 ― 出てきた モルO2) ÷ 入った 、モルO2
に従って計算される。
【0171】
本発明の触媒担体によって生成された実施例2の触媒は、S(C24) of 92.4%のS(C24) 選択性を示し、空間回収率(STY)は840gVAM / l 触媒 /一時間、酸素変換率49.5%において、であった。
【0172】
比較例
100gのベントナイト含有担体(Sud−Chemie AG社(Munich, Germany) KA−160)の特性を表5に示した。
それらは、62ml、9.1%(Zrについて)亜硝酸ジルコニウム水溶液に浸漬され、細孔充填法(incipient wetness method)にしたがって62ml、9.1%(Zrについて)亜硝酸ジルコニウム水溶液に浸漬された。
担体は120℃、5時間以上か焼された。この方法で、KA 160 担体は5.2重量%のZrO2が表面にドープされた。
【0173】
【表5】

【0174】
この表面にドープされたKA 160 担体を使用して、触媒が実施例2と同様に準備された。
【0175】
最終的な担体のPdの担持量は、0.77重量%、Au担持量は0.27重量%であった(ICPによる決定)。
【0176】
シェルの厚みは260μm であった(統計平均)。
【0177】
比較例の触媒の評価は、実施例2にくらべて決定され、S(C24) of 92.1%のS(C24) 選択性を示し、および空間回収率(STY)は410gVAM / l 触媒 /一時間、酸素変換率24.5%において、であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZrO2 が分散されて含まれている天然層状ケイ酸塩を含む材料からなる多孔質触媒担体。
【請求項2】
触媒担体であって、ZrO2が不均一に材料中に分散されていることを特徴とする請求項1に記載の触媒担体。
【請求項3】
触媒担体であって、ZrO2が粒子形状で材料中に存在することを特徴とする請求項1または2に記載の触媒担体。
【請求項4】
外殻を有する成形体として形成され、その中では、触媒担体が、少なくとも外殻のエリアにおいて、天然層状ケイ酸塩を含む母材(matrix)から形成されており、特に母材は、ジルコニウム酸化物(ZrO2)粒子が均一に含まれ、好ましくは、均一的に分散されている酸処理か焼ベントナイトを含む多孔質触媒担体。
【請求項5】
触媒担体であって、ジルコニウム酸化物粒子が触媒担体の質量に対して1から25質量%の割合で、好ましくは3から20質量%の割合で、できれば5から20質量%の割合で触媒担体中に含まれていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の触媒担体。
【請求項6】
触媒担体であって、触媒担体の酢酸に対する溶解度が、8重量%未満、好ましくは4重量%未満、特に好ましくは2重量%未満であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項7】
触媒担体であって、天然層状ケイ酸塩が、酸処理か焼ベントナイトを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項8】
触媒担体であって、触媒担体が1と150μval/gの間の酸性度を有し、好ましくは5と130μval/gの間の酸性度を有し、できれば、10と100μval/gの間、特に好ましくは10と60μval/gの間の酸性度を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項9】
触媒担体であって、平均孔径が8から30nm、好ましくは9から20nm、できれば10から15nmであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項10】
触媒担体であって、比表面積が、145m2/g以下であり、好ましくは142m2/g未満、できれば140m2/g未満、さらに好ましくは137m2/g未満、より好ましくは135m2/g未満、さらに一層好ましくは133m2/g未満、および特に好ましくは130m2/g未満であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項11】
触媒担体であって、比表面積が、145から60m2/gであり、好ましくは140と65m2/gの間であり、できれば135と70m2/gの間であり、さらに好ましくは120と70m2/gの間であり、より好ましくは110と70m2/gの間であり、および最も好ましくは100と70m2/gの間であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項12】
触媒担体であって、硬度が20N以上であり、好ましくが25N以上であり、さらに好ましくは35N以上であり、および最も好ましくは40N以上である請求項1から11のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項13】
触媒担体であって、触媒担体中の天然層状ケイ酸塩、特に、酸処理か焼ベントナイト、の割合が、触媒担体の質量に対して、50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、できれば70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、および最も好ましくは93質量%以上であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項14】
触媒担体であって、触媒担体のBJH全細孔容積が、0.25と0.7ml/gの間であり、好ましくは0.3と0.55ml/gの間であり、およびできれば0.35と0.5ml/gの間であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項15】
触媒担体であって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、およびできれば少なくとも90%の触媒担体のBJH全細孔容積が、メソ細孔およびマクロ孔から形成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項16】
触媒担体であって、触媒担体のかさ密度が、0.3g/mlより大きく、好ましくは0.35/mlより大きく、特に好ましいかさ密度は0.35と0.6g/mlの間であることを特徴とする請求項1から15のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項17】
触媒担体であって、担体中の天然層状ケイ酸塩がSiO2 を、少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、できれば、95から99.5質量%有することを特徴とする請求項1から16のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項18】
触媒担体であって、担体中の天然層状ケイ酸塩が、10質量%未満のAl23を含み、好ましくは0.1から3質量%およびできれば0.3から1.0質量%のAl23を含むことを特徴とする請求項1から17のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項19】
触媒担体であって、触媒担体が成形体として形成されており、例えば、球状、円筒状、開口を有する円筒状、トリローブ(trilobe)、リング状、星状、またはらせん状として、好ましくはうねりのあるらせん状(ribbed strand)またはらせん状に連なった星状(star strand)として形成されており、好ましくは球状であることを特徴とする請求項1から18のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項20】
触媒担体であって、触媒担体が球状に形成されており、直径が2mmよりも大きい、好ましくは3mmよりも大きいおよびできれば4mmよりも大きい直径であることを特徴とする請求項1から19のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項21】
触媒担体であって、触媒担体が、少なくとも、
Hf、Ti、Nb、Ta、W、Mg、Re、YおよびFeからなるグループから選択される1の金属の酸化物、好ましくはHfO2 またはFe23でドープ(doped)されていることを特徴とする請求項1から20のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項22】
触媒担体であって、触媒担体中にドープされた酸化物の割合が、0と20質量%の間、好ましくは1.0と10質量%の間、できれば3と8質量%の間であることを特徴とする請求項1から21のいずれか一に記載の触媒担体。
【請求項23】
触媒担体の生成プロセスであって、以下のステップからなる、特に請求項1から22のいずれか一に記載の触媒担体の生成プロセス。
a) 粉砕(pulverant)天然層状ケイ酸塩を粉砕ジルコニウム金属または可能なジルコニウム化合物を混合するステップ、
b) 得られた混合物をか焼するステップ。
【請求項24】
さらに下記のステップを有する請求項23に記載のプロセス。
好ましくはステップb)が実行される前に、得られた混合物から成形体を形成するステップ。
【請求項25】
ジルコニウム二酸化物、ジルコニウム水酸化物、酢酸ジルコニルまたは他のジルコニルカルボキシレート、炭酸ジルコニウムまたはジルコニウムオキシカルボネート、亜硝酸ジルコニル、ジルコニウム ナフタネートまたはアンモニウム ジルコニウム カルノネートが粉砕ジルコニウム化合物として使用されていることを特徴とする請求項23または24に記載のプロセス。
【請求項26】
下記のステップも含むことを特徴とする請求項23から25のいずれか一に記載のプロセス。
酸によって、か焼された混合物を処理するステップ。
【請求項27】
ジルコニウム化合物をか焼において酸化物に変換することを特徴とする請求項23から26のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項28】
ジルコニウム酸化物またはジルコニウム水酸化物がジルコニウム化合物として使用されていることを特徴とする請求項23から27のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項29】
ステップa)においてY23および/またはHfO2がさらに使用されていることを特徴とする請求項23から28のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項30】
請求項1から22のいずれかに記載されている触媒担体の使用であって、触媒の生成における、特にシェル触媒の生成における使用。
【請求項31】
シェル触媒は酢酸ビニルモノマーの生成に使用するシェル触媒であって、そのシェルが、特に金属PdおよびAuを含むことを特徴とする請求項30に記載の使用。
【請求項32】
請求項1から22に記載の触媒担体を含み、その外殻が金属PdおよびAuを含む酢酸ビニルモノマー(VAM)の生成に使用するシェル触媒。
【請求項33】
多孔質触媒担体成形体、金属PdおよびAuを含む外殻を含み、そこで触媒担体成形体は、少なくとも、外殻のエリアにおいて、天然層状ケイ酸塩を含む母材(matrix)から形成されており、特に母材は、ジルコニウム酸化物(ZrO2)粒子が均一に含まれ、好ましくは、均一的に分散されている酸処理か焼ベントナイトを含む酢酸ビニルモノマー(VAM)の生成に使用するシェル触媒。
【請求項34】
ジルコニウム酸化物粒子が触媒担体中に触媒担体の質量に対して、1から25質量%の割合で、好ましくは3から20質量%の割合でおよびできれば5から20質量%の割合で含まれていることを特徴とする請求項32または33に記載の触媒。
【請求項35】
触媒担体が1と150μval/gの間の酸性度を有し、好ましくは5と130μval/gの間の酸性度を有し、できれば、10と100μval/gの間、特に好ましくは10と60μval/gの間の酸性度を有することを特徴とする請求項32から34に記載の触媒。
【請求項36】
触媒担体の平均孔径が8から30nm、好ましくは9から20nm、できれば10から15nmであることを特徴とする請求項32から35に記載の触媒。
【請求項37】
触媒担体の比表面積が、145m2/g以下であり、好ましくは142m2/g未満、できれば140m2/g未満、さらに好ましくは137m2/g未満、より好ましくは135m2/g未満、さらに一層好ましくは133m2/g未満、および特に好ましくは130m2/g未満であることを特徴とする請求項32から36に記載された触媒。
【請求項38】
触媒担体の比表面積が、60m2/gから145m2/gであり、好ましくは65と140m2/gの間であり、さらに好ましくは70と130m2/gの間であり、さらに好ましくは70と120m2/gの間であり、よりいっそう好ましくは70と110m2/gの間であり、および最も好ましくは70と100m2/gの間であることを特徴とする請求項32から37に記載された触媒。
【請求項39】
硬度が20N以上であり、好ましくが25N以上であり、さらに好ましくは35N以上であり、および最も好ましくは40N以上である請求項32から38に記載の触媒。
【請求項40】
触媒担体中の天然層状ケイ酸塩、特に、酸処理か焼ベントナイト、の割合が、触媒担体の質量に対して、50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、できれば70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、および最も好ましくは93質量%以上であることを特徴とする請求項32から39に記載の触媒。
【請求項41】
触媒担体のBJH全細孔容積が、0.25と0.7ml/gの間であり、好ましくは0.3と0.55ml/gの間であり、およびできれば0.35と0.5ml/gの間であることを特徴とする請求項32から40に記載の触媒。
【請求項42】
少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、およびできれば少なくとも90%の触媒担体のBJH全細孔容積が、メソ細孔およびマクロ孔から形成されていることを特徴とする請求項32から41のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項43】
触媒中の触媒担体のかさ密度が、0.3g/mlより大きく、好ましくは0.35/mlより大きく、特に好ましいかさ密度は0.35と0.6g/mlの間であることを特徴とする請求項32から42のいずれか一に記載の触媒。
【請求項44】
触媒中に天然層状ケイ酸塩がSiO2 を、少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも80質量%、できれば、95から99.5質量%有することを特徴とする請求項32から43のいずれか一に記載の触媒。
【請求項45】
触媒中の天然層状ケイ酸塩が、10質量%未満のAl23を含み、好ましくは0.1から3質量%およびできれば0.3から1.0質量%のAl23を含むことを特徴とする請求項32から44のいずれか一に記載の触媒。
【請求項46】
触媒中の触媒担体が成形体として形成されており、例えば、球状、円筒状、開口を有する円筒状、三葉状(trilobe)、リング状、星状、またはらせん状として、好ましくはうねりのあるらせん状(ribbed strand)またはらせん状に連なった星状(star strand)として形成されており、好ましくは球状であることを特徴とする請求項32から45のいずれか一に記載の触媒。
【請求項47】
触媒中の触媒担体が球状に形成されており、直径が2mmよりも大きい、好ましくは3mmよりも大きいおよびできれば4mmよりも大きい直径であることを特徴とする請求項32から46のいずれか一に記載の触媒。
【請求項48】
触媒中の触媒担体が、少なくともHf、Ti、Nb、Ta、W、Mg、Re、YおよびFeからなるグループから選択される1の金属の酸化物、好ましくはHfO2 またはFe23でドープ(doped)されていることを特徴とする請求項32から47のいずれか一に記載の触媒。
【請求項49】
触媒中の触媒担体中にドープされた酸化物の割合が、0と20質量%の間、好ましくは1.0と10質量%の間、できれば3と8質量%の間であることを特徴とする 請求項48に記載の触媒。
【請求項50】
触媒シェルの厚みが、300μm未満、好ましくは200μm未満、できれば150μm未満、さらに好ましくは100μm未満、およびもっと好ましくは80μm未満であることを特徴とする請求項32から49のいずれか一に記載の触媒。
【請求項51】
触媒シェルの厚みが、200と2000μmの間、好ましくは250と1800μmの間、できれば300と1500μmの間、および特に好ましくは400と1200μmの間であることを特徴とする請求項32から49のいずれか一に記載の触媒。
【請求項52】
貴金属が担持された触媒担体の質量に対する触媒中のPdの割合が0.5から2.5質量%、好ましくは0.6から2.3質量%、およびできれば0.7から2質量%であることを特徴とする請求項32から51のいずれか一に記載の触媒。
【請求項53】
触媒のAu/Pdの原子比率が0と1.2の間、好ましくは0.1と1の間、できれば0.3と0.9の間、および特に好ましくは0.4と0.8の間であることを特徴とする請求項32から52のいずれか一に記載の触媒。
【請求項54】
触媒の貴金属濃度が、外殻と内殻の境界からそれぞれシェルの厚みの5%の距離にある前記シェルの厚みの90%にわたる領域において、この領域の平均貴金属濃度から最大±20%、好ましくは最大±15%、およびできれば+/−10%変化することを特徴とする請求項32から53のいずれか一に記載の触媒。
【請求項55】
触媒の塩化物を250ppm未満、好ましくは150ppm未満含んでいることを特徴とする請求項32から54のいずれか一に記載の触媒。
【請求項56】
触媒がアルカリ金属酢酸塩、好ましくは酢酸カリウムを含有することを特徴とする請求項32から55のいずれか一に記載シェル触媒。
【請求項57】
アルカリ金属酢酸塩の含有量が、0.1から0.7モル/リットル、このましくは0.3から0.5モル/リットルであることを特徴としている請求項56に記載の触媒。
【請求項58】
アルカリ金属/Pdの原子比率が、1から12の間、好ましくは2と10の間、およびできれば4と9の間であることを特徴とする請求項56または請求項57に記載の触媒。
【請求項59】
シェル触媒、特に請求項32から58のいずれか一に記載のシェル触媒、の生成プロセスであって、下記のステップを備えるシェル触媒の生成プロセス。
(a) 請求項1から22のいずれか一に記載の触媒担体を製造するステップ、
(b) 触媒担体の上にPd前駆体化合物溶液を堆積させるステップ、
(c) 触媒担体の上にAu前駆体化合物溶液を堆積させるステップ、
(d) 前記Pd前駆体化合物を金属へ変換するステップ、および、
(e) 前記Au溶液前駆体化合物を金属へ変換するステップ。
【請求項60】
PdおよびAu前駆体化合物が、特に、塩化物などのハロゲン化合物、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、蟻酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化化合物、炭酸水素塩、アミノ錯体またはトリフェニルリン酸錯体またはアセチルアセトネート錯体有機錯体などの有機錯体、およびこれらの金属から選択されることを特徴とする請求項59に記載のプロセス。
【請求項61】
Pd前駆体化合物が、Pd(NH34(OH)2、Pd(NH34(OAc)2、H2PdCl4、Pd(NH34(HCO32、Pd(NH34(HPO4)、Pd(NH34Cl2、Pd(NH34 オキサレート、Pd(NO32、Pd(NH34(NO32、K2Pd(OAc)2(OH)2、 Na2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH32(NO22、K2Pd(NO24、Na2Pd(NO24、Pd(OAc)2、PdCl2およびNa2PdCl4からなる群から選択される一種を含むことを特徴とする請求項59から60に記載のプロセス。
【請求項62】
Au前駆体化合物が、KAuO2、HAuCl4、KAu(NO24、AuCl3、NaAuCl4、KAuCl4、KAu(OAc)3(OH)、HAu(NO34、NaAuO2、NMe4AuO2、 RbAuO2、CsAuO2、NaAu(OAc)3(OH)、RbAu(OAc)3OH、 CsAu(OAc)3OH、NMe4Au(OAc)3OHおよびAu(OAc)3からなる群から選択される一種を含むことを特徴とする請求項59または61のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項63】
Pd前駆体化合物およびAu前駆体化合物が、触媒担体をPd前駆体化合物溶液およびAu前駆体化合物溶液にまたはPd前駆体化合物とAu前駆体化合物を両方含む溶液中にスティーピング(steeping)することによって、記触媒担体上に堆積されていることを特徴とする 請求項59から62のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項64】
Pd前駆体化合物およびAu前駆体化合物が、触媒担体の流動床(fluid bed)、または流動層(fluidized bed)、好ましくは、溶液のエアロゾル手段、の上にスプレーすることによって、触媒担体上に積層されていることを特徴とする請求項59から62のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項65】
触媒担体が、前駆体化合物水溶液の堆積の間で加熱されることを特徴とする請求項59から64のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項66】
下記のステップを備えることを特徴とする請求項59から65のいずれか一に記載のプロセス。
(a) Pd及び/又はAu前駆体化合物を含む第一溶液を準備するステップ、
(b) Pd及び/又はAu前駆体化合物を含む第二溶液を準備するステップにおいて、前記第一溶液が第二溶液中の前駆体化合物の貴金属の堆積に影響を与え、且つ逆も同様であるステップ、
(c)前記第一溶液および第二溶液が前記触媒担体上に堆積されるステップ。
【請求項67】
第一溶液の前駆体化合物が酸であり、第二溶液の前駆体化合物が塩基であることを特徴とする前記請求項66に記載のプロセス。
【請求項68】
前記触媒担体が、前記触媒担体上に堆積されたPd及び/又はAu前駆体化合物を一旦固定するステップに供されることを特徴とする請求項59から67のいずれか一に記載のプロセス。
【請求項69】
であって、下記のステップを備えることを特徴とするシェル触媒、特に請求項32から58のいずれか一に記載のシェル触媒の生成プロセス。
(a) 特に酸処理されたか焼ベントナイトなどの天然層状ケイ酸塩粒子と、ジルコニ ウム酸化物(ZrO2)粒子の混合物からなる粉砕(pulverant)多孔担体材料を準備し、そこで担体材料はPdおよびAu前駆体化合物で、またはPdおよびAu粒子で担持されるステップ、
(b) シェルの形での担体構造上に担体材料が堆積されるステップ、
(c) ステップ(b)で得られた担持された担体構造をか焼するステップ、および
(d) 前記PdおよびAu前駆体化合物の前記Pd及ぶAu化合物を金属の形に変
換するステップ。
【請求項70】
水酸化/脱水素化触媒として、水酸化脱硫化触媒(hydrogenating desulphurization)として、水酸化脱窒化触媒(hydrodenitrification)として、水酸化脱酸化触媒(hydrodeoxidation)またはアルケニルアルカノーテス(alkenylalkanoates)の生成における触媒として、特に、酢酸ビニルモノマー生成(VAM)、特に、ガス相におけるエチレンおよび酢酸を酢酸ビニルモノマーへ形成するための触媒の使用であって請求項32から58のいずれか一に記載の触媒の使用。


【公表番号】特表2010−527780(P2010−527780A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509744(P2010−509744)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004335
【国際公開番号】WO2008/145394
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】