説明

スイッチ、筐体および電子装置

【課題】本発明は、電子装置の操作部に搭載されるスイッチと、そのスイッチと共に所定の機能を有するハードウェアが収納される筐体と、これらのスイッチおよびハードウェアを備えた電子装置とに関し、操作性が損なわれることなく、高密度実装の下で静電気の放電路を確保できることを目的とする。
【解決手段】外部から与えられる力に応じて開閉する接点と、弾性を有して前記接点に前記力を伝達する緩衝部材と、前記緩衝部材から隔たった所定の位置に支持され、かつ接地された放電部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の操作部に搭載されるスイッチと、そのスイッチと共に所定の機能を有するハードウェアが収納される筐体と、これらのスイッチおよびハードウェアを備えた電子装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPHSの端末装置の操作部には、暗がりにおいても操作を可能とするイルミネーション機能を有するスイッチが備えられている。
【0003】
このような端末装置の操作部は、例えば、図5および図6に示すように、以下の通りに構成される。なお、図5および図6では、上記操作部の構成については、構成を明確に図示するために下部に示す。
【0004】
端末装置の筐体50の側壁(外壁)の所定の箇所には、上記操作部の実装に供される開口部50Aが形成される。その筐体50の内部には、上記開口部50Aに平行に所定の距離に亘って隔たり、かつ樹脂材で形成されたフレーム部材50Fが配置される。フレーム部材50Fから上記開口部50Aの外部に至る空間には、以下の要素(1)〜(5)が順次重ねられて配置される。
【0005】
(1) 端末装置の内部に収納された回路(図示されない。)の回路アースに接続され(接地され)、かつ導電率が高い銅板等として形成されたESDプレート50EP
(2) 上記ESDプレート50EPと共に上記回路アースに接続されたステンレス板50SUS
【0006】
(3) 所定のプリント回路が形成された導通基板52
(4) 光を透過するシリコン等の樹脂性の略板状体として構成されたキーラバー53
(5) 上記操作部の主要な構成要素である複数の押しボタンスイッチの個々のキートップ54-1〜541-nが配置されたキーパッド55
【0007】
なお、キーパッド55は、上記キートップ54-1〜54-nの頂部が開口部50Aの外部に露出する状態で取り付けられる。
【0008】
または、キーラバー53は、以下の要素で構成される。
(1) キートップ54-1〜54-nのそれぞれのほぼ中央部に対応する箇所に形成され、かつ導通基板52の方向に個別に突出した突起状の押し子53P-1〜53P-n
【0009】
(2) キーラバー53の内層の内、キートップ54-1〜54-nの縁部の境界近傍に対向した領域に所定の幅で格子状に形成された金属製の補強板53R
【0010】
さらに、導通基板52には、以下の要素で構成される。
(1) 押し子53P-1〜53P-nのそれぞれの頂部に近接する箇所に配置され、かつキートップ54-1〜54-nから押し子53P-1〜53P-nを介してそれぞれ与えられる力に応じて開閉する電気的な接点として機能するメタルドーム52MD-1〜52MD-n
【0011】
(2) 「上記開口部50A側からの光学的な視界」が上記補強板53Rによって遮られる領域に取り付けられ、かつ発光ダイオード(図示されない。)を個別に含む電気部品52EP-1〜52EP-p
【0012】
このような構成の端末装置では、各部は、以下の通りに連係する。なお、以下では、キートップ54-1〜54-n、押し子53P-1〜53P-n、メタルドーム52MD-1〜52MD-n(発光ダイオード52LED-1〜52LED-p)にそれぞれ共通の事項については、符号「54」、「53P」、「52MD(52LED)」の添え番号「1」〜「n」を省略して記述する。
【0013】
メタルドーム52MDの内部では、図5および図6に点線の矢印で示すように、キートップ54からキーラバー53、押し子53Pを介して与えられる力に応じて接点が開閉する。筐体52内に収納された所定のハードウェア(図示されない。)は、このような接点の状態に応じて所定の動作を行う。
【0014】
電気部品52EPに備えられた発光ダイオード52LEDは、キートップ54にイルミネーションが施されるべき状態で駆動され、所定の可視光を発する。このような可視光は、図5の右下部に点線の矢印で示すように、補強板53Rの最寄りの箇所を含む所定の箇所で反射された後、光学的な透過性を有するキーラバー53を介してキートップ54の内部に照射される。
【0015】
また、補強板53Rは、上記可視光の反射体としてだけではなく、キーラバー53の機械的な剛性を高め、かつ高く維持する部材としても機能する。
【0016】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1〜7がある。
(1) 「電子スイッチのケース外部の前記検出体が最初に近接する位置に形成された集電手段と、前記集電手段と電子スイッチの安定電位とを接続する放電路とを具備し、前記検出体の静電気を前記集電手段及び放電路を介して放電するように構成した」ことにより、「静電気の放電による誤動作を防止する」点に特徴がある電子スイッチ…特許文献1
【0017】
(2) 「電性材料からなる押釦と、該押釦の背面に所定間隔を設けて設置されたスイッチと、前記押釦の押圧操作と同時に静電気の帯電を放電する放電手段とを備える」ことにより、「押釦を押圧操作する際の放電ショックを安価且つ有効に防止することができる」点に特徴がある押釦スイッチ…特許文献2
【0018】
(3) 「通電性の物質からなるキートップ部分とそれに接着した非通電性の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物からなるスイッチ構造部分と導電性薄板からなる放電部分から基本的になる形成品であって、スイッチ構造部は押し圧部バネの役目をする薄肉のスカート部基盤部からなり、キートップ部分はその後部が押し圧部を貫通していてその最後部は平面の接触部となっており、キートップの指押しで接触部と金属薄板製の放電部分が接触する構造で、しかもキートップ部分を押し込む力(押し圧)が200gf以上で、全体の裏面に両面テープを貼り付けた」点に特徴がある静電気ショック防止スイッチ…特許文献3
【0019】
(4) 「表示部を載置したプリント基板が裏面に取り付けられ、前記表示部を臨ませる表示窓とキー貼付部とを有する非金属製の操作パネルと、制御動作を設定するために調理器の制御回路と接続するスイッチ接点電極を有し、前記操作パネルのキー貼付部に貼り付けられるメンブレンキーボードと、前記表示窓と前記メンブレンキーボードとを覆うように前記操作パネルに取り付けられ、前記表示窓に対向する部分を除いて形成された印刷層を有する化粧フィルムと、前記メンブレンキーボードの前記化粧フィルム側に設けられ、静電気で帯電した使用者の指が前記化粧フィルムを触ったとき前記制御回路のアースラインに放電させるための導電層と、を備えたものにおいて、前記化粧フィルムは、少なくとも前記表示窓の周囲に設けられ、一端を前記導電層と接触した、前記印刷層より導電性の高い第2印刷層を設けた」点に特徴がある調理器の操作パネル…特許文献4
【0020】
(5) 「孔部21bを有するダイヤル部材21と、ダイヤル部材21の一方の側に露出する押圧部41aと、孔部21bに挿入され、ダイヤル部材21に対して摺動可能な挿入部44と、ダイヤル部材21の他方の側にて、挿入部44の外周から突出する抜け止め部42bとを有するボタン22と、他方の側に設けられ、ボタン22への押圧操作により押圧される押圧スイッチ23と、を備え、抜け止め部42bの押圧部41a側には、挿入部44側から外周側へかけて突条部42dが形成された」ことにより、「設計の自由度が高く、押圧操作の際の静電気の放電による影響を軽減可能である」点に特徴があるボタン装置…特許文献5
【0021】
(6) 「静電気が蓄積される部材に接触させる金属部材と、この金属部材に対して直列に接続される、直流電源、スイッチ及び昇圧トランスの1次側巻線とを設ける。そして、この昇圧トランスの2次側巻線に放電電極を設ける。これにより、静電気を昇圧トランスの1次側に誘導し、これを2次側で空中放電可能な電圧に昇圧して放電させることができる。 次に、上記スイッチを定期的に投入・切断するタイマーを設ける」ことにより、「静電気を瞬時に強制的に放電させるとともに、接地回路が不要でしる」点に特徴がある…特許文献6
【0022】
(7) 「電子機器である投写型映像表示装置は、筐体と、筐体に収容されるプリント配線板とを備え、プリント配線板は、基板と、基板に設けられたグランド層と、露出する静電気対策用の放電用導電部と、基板に設けられたビアとを備えている。そして、放電用導電部とグランド層を電気的に接続するためのビアが複数設けられ、少なくとも2つ以上のビアを介して放電用導電部とグランド層とが電気的に接続される」ことにより、「静電気対策の信頼性を向上させることができる」点に特徴がある…特許文献7
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平6−295648号公報
【特許文献2】特開平10−27529号公報
【特許文献3】特許第3562206号公報
【特許文献4】特許第3702154号公報
【特許文献5】特開2006−100017号公報
【特許文献6】特開2007−123063号公報
【特許文献7】特開2010−135230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ところで、上述した従来例では、キーラバー53(押し子53Pを含む。)は、キートップ54によって与えられ、かつメタルドーム52MDに伝達されるべき力に応じて静電気を発生する。
【0025】
このような静電気は、筐体50内に配置された回路や電気部品の静電破壊や誤動作の原因となり得る。
【0026】
特に、既述の電気部品52EPは、静電気が帯電したキーラバー53の各部に電気的に密結合する補強板53Rの至近点に位置するため、上記静電破壊や誤動作が生じる可能性が高かった。さらに、補強板53Rと電気部品52EPと間の隙間は、キーラバー53に帯電し得る最大の電荷がその電気部品52EPに放電しない程度には必ずしも大きくはなく、かつ精度も十分には確保できないため、このような電荷の放電を電気部品52EPを含まない放電路を介して実現できる技術が要望されていた。
【0027】
なお、このような静電気の放電は、例えば、導体基板52上に「アースばね」が配置されることによって実現可能である。
【0028】
しかし、このよう「アースばね」は、以下に列記する要因により、実際には適用され難かった。
(1) 他の電子部品と共に導体基板52上に配置されなければならないため、特に、軽量小型化が厳しく要求される端末装置では、高密度実装が妨げられ、あるいはスペースファクターが低下する可能性が高い。
【0029】
(2) ばね構造であるために、キーラバー53やキートップ54との間になるべく高い面積率で定常的に維持されなければならず、このような接触のために加えられる力によって「ばねのへたり」等の経年変化が生じ、かつ導通基板52との接触点に電蝕が発生する可能性が高い。
【0030】
(3) 上記力(「アースばね」の弾性力を含む。)がキートップ54に常時加えられることにより、個々のキートップの押下に要する力が増加し、操作性が損なわれる可能性が高い。
【0031】
また、上記静電気は、例えば、一端がキーラバー53または補強板53Rに直接結線されたワイヤ等の放電路を介して放電を図ることも可能である。
【0032】
しかし、このような放電路は、キートップ54が度々可動し、これに連動してキーラバー53も変形するために、機械的な強度が十分には確保されないために、安定に維持することが困難であった。
【0033】
さらに、上記静電気の発生は、例えば、キーラバー53が「静電気を帯び難い素材」で構成されることによって、軽減され、あるいは回避され得る。
【0034】
しかし、このようなキーラバー53を構成する素材は、既述の間接照明の実現を目的として、光の反射体である補強板53Rが内蔵され、かつキートップ54を介して操作者によって与えられる力をメタルドーム52MDに伝達するために適した厚みで所望の弾性を有し、しかも、光が透過しなければならないために、実際には見出すことが困難であった。
【0035】
本発明は、操作性が損なわれることなく、高密度実装の下で静電気の放電路を確保できるスイッチ、筐体および電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
請求項1に記載の発明では、接点は、外部から与えられ、かつ弾性を有する緩衝部材によって伝達された力に応じて開閉する。放電部材は、前記緩衝部材から隔たった所定の位置に支持され、かつ接地される。
【0037】
すなわち、外部から与えられる力は、緩衝部材の弾性によってその一部が吸収されつつ接点の開閉に供される。このような力は緩衝部材が変形しあるいは変位することによって静電気が発生する要因となるが、その静電気は、緩衝部材から隔たった位置に支持された放電部材を介して放電する。
【0038】
請求項2に記載の発明では、外部から与えられ、かつ弾性を有する緩衝部材によって伝達された力に応じて開閉する。放電部材は、接地されて前記緩衝部材から隔たった所定の位置に支持されるべき放電部材が遊挿し、かつ前記接点および前記緩衝部材が収納される。
【0039】
すなわち、外部から与えられる力は、緩衝部材の弾性によってその一部が吸収されつつ接点の開閉に供される。このような力は緩衝部材が変形しあるいは変位することによって静電気が発生する要因となるが、その静電気は、緩衝部材から隔たった位置に支持可能な放電部材を介して放電する。
【0040】
請求項3に記載の発明では、外部から与えられ、かつ弾性を有する緩衝部材によって伝達された力に応じて開閉する。放電部材は、前記緩衝部材の所定の部位に突設され、かつ接地された接地部材に先端部が近接する。前記緩衝部材および前記放電部材は、前記力に応じて前記放電部材に接近する。
【0041】
すなわち、外部から与えられる力は、緩衝部材の弾性によってその一部が吸収されつつ接点の開閉に供される。このような力は緩衝部材が変形しあるいは変位することによって静電気が発生する要因となるが、その静電気は、緩衝部材の所定の部位に突設され、かつ接地された放電部材を介して放電する。
【0042】
請求項4に記載の発明に係る筐体には、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスイッチと、前記スイッチに備えられた接点に接続される電子デバイスまたは電子回路とが収納される。
【0043】
すなわち、本発明に係る筐体に収納された電子デバイスまたは電子回路は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスイッチが筐体に直接実装された場合であっても、そのスイッチによって実現される静電対策の下で、誤動作や障害が発生することなく作動することができる。
【0044】
請求項5に記載の発明に係る電子装置には、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスイッチと、前記スイッチに備えられた接点に接続される電子デバイスまたは電子回路とが備えられる。
【0045】
すなわち、本発明に係る電子装置は、上記電子デバイスまたは電子回路と、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスイッチとの実装の形態の如何にかかわらず、そのスイッチによって実現される静電対策の下で、誤動作や障害が発生することなく作動することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、静電気の放電路は放電部材が緩衝部材に直接接触することなく形成されることにより、接点の開閉に必要な力が増加することなく、静電気に起因する障害の回避が実現される。
また、本発明は、多様な電子機器やシステムに対する柔軟な適用が可能となる。
さらに、電子デバイスあるいは電子回路と本発明に係るスイッチとの組み合わせや実装が無用に制約されることなく、多様な電子機器やシステムに対する本発明の適用が可能となる。
したがって、本発明が適用された電子装置やシステムは、従来例に比べて、操作性、機能および性能の何れもが損なわれることなく、総合的な信頼性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態の断面図である。
【図3】本実施形態におけるESDピンの実装を説明する図(1) である。
【図4】本実施形態におけるESDピンの実装を説明する図(2) である。
【図5】従来のPHS端末における押しボタンスイッチ周辺の構成を示す図である。
【図6】従来のPHS端末における押しボタンスイッチ周辺の構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図2は、本実施形態の断面図である。
【0049】
図1および図2において、図5および図6に示す従来例と機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0050】
本実施形態と図5および図6に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) キーラバー53の面の内、導通基板52の面に対向し、かつ補強板53Rの所定の部位が位置する領域に、その補強板53Rの表面(またはその近傍)に至る窪み11が形成される。
【0051】
(2) この窪み11に対向する導通基板52の領域には、その導通基板52、ステンレス板50SUSおよびESDプレート50EPを連通する連通孔12が形成される。
(3) 後述する構成のESDピン20が備えられる。
【0052】
ESDピン20は、以下の通りに構成される。
(1) 断面形状が略「ζ」字状である導電性のアングル部材として形成される。
(2) その「ζ」字の下部に相当する屈曲部から先端部に至る区間に形成され、かつ先端部が先鋭である避雷針ベロ20Lを有する。
【0053】
(3) 図3および図4に示すように、筐体50の内壁にある既存のフロントインナーパネル50FIPに嵌合することにより、上記避雷針ベロ20Lの先端が連通孔12を介して上記窪み11の開口部近傍に位置する状態で支持される。
【0054】
以下、図1〜図4を参照して、本実施形態の作用を説明する。
ESDピン20は、既述の通りに支持された状態では、ステンレス板50SUSを介して、あるいは直接ESDプレート50EPに接触することにより、接地される。
【0055】
操作者によってキートップ54が押下されていない状態では、避雷針ベロ20Lの先端は、図2の左下部に示すように、補強板53Rに接触することなく支持される。
したがって、このような状態では、避雷針ベロ20Lはキートップ54が押下される力を抗することがないので、操作者は、従来例と同じ程度の力によりキートップ54を押下することができる。
【0056】
また、避雷針ベロ20Lの先端部は、補強板53Rの近傍に位置するため、例えば、両者間の距離によって定まる閾値以上の電荷がキーラバー53に(例えば、先行して押下されたキートップ54の操作に応じて)帯電している場合には、補強板53R、避雷針ベロ20L(ESDピン20)(およびステンレス板50SUS)を介してESDプレート50EPに至る放電路を介して放電される。
【0057】
さらに、このようにして放電が行われた後におけるキーラバー53上の電荷は、補強板53Rが導電体により構成され、そのキーラバー53の内層に略格子状に配置されているため、ほぼ一様となる。
【0058】
一方、操作者によってキートップ54が押下される過程では、避雷針ベロ20Lと補強板53Rとの距離が縮まるため、キーラバー53に帯電した電荷が上記閾値未満であっても、その避雷針ベロ20L(ESDピン20)(、ステンレス板50SUS)およびESDプレート50EPを介して同様に放電される。
【0059】
すなわち、本実施形態によれば、操作部の機械的な構成、配置および寸法が大幅に変更されることなくキートップ54の間接照明によるイルミネーションが従来例と同様に実現され、かつキートップ54の押下に要する力が増加することなく、キーラバー53に帯電した静電気の放電路が確保され、しかも、既述の電蝕も回避される。
【0060】
したがって、本実施形態にかかわる端末装置は、小型化および軽量化が損なわれることなく、信頼性および性能が安価に高められる。
【0061】
なお、本実施形態では、ESDピン20は、筐体50(フロントインナーパネルFIP50)に嵌合することによって支持され、かつキーラバー53とは別体に構成された(ステンレス板50SUSおよび)ESDプレート50EPを介して接地されている。
【0062】
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、操作者によるキートップ54の押下に抗する力が作用することなく「キーラバー53に帯電して電荷」の放電路が確保されるならば、以下の何れの態様で構成されてもよい。
【0063】
(1) 窪み11に最寄りの補強板53Rの部位に突設され、かつキートップ54が押下されていない状態において、先端部が「ステンレス板50SUS、ESDプレート50EPその他の接地された部材」との間に所定の距離隔たった位置する形状および寸法として構成された「避雷針」により、ESDピン20が代替される。
【0064】
(2) ESDピン20が備えられず、かつ導通基板52に形成され、かつ接地されたプリント回路上に突設された突起状の導体部材によって既述の避雷針ベロ20Lが代替される。
【0065】
また、本実施形態では、既述の放電路は、避雷針ベロ20L、ステンレス板50SUSおよびESDプレート50EPによって構成されている。
しかし、このような放電路は、避雷針ベロ20Lが確実に接地されるならば、筐体50内における実装や部品配置に適した如何なる導電路として構成されてもよい。
【0066】
さらに、本発明は、キートップ54-1〜54-nおよびメタルドーム52MD-1〜52MD-nの数n(≠0)、配置および構成の如何にかかわらず、適用可能である。
【0067】
また、本実施形態では、キーラバー53は、キートップ54のイルミネーションに供される光が透過し、そのキートップ54に与えられた力をメタルドーム52MDに伝達することが可能であるならば、如何なる形状や寸法で形成されてもよい。
【0068】
さらに、本実施形態では、ESDピン20(避雷針ベロ20L)については、既述の放電路を構成することができるならば、形状および寸法だけではなく、筐体50等に対する支持を可能とする構造や機構が如何なるものであってもよい。
【0069】
また、本実施形態では、窪み11は、ESDピン20(避雷針ベロ20L)を介する放電路の形成に相応しいならば、キーラバー53の部位の内、特定の1つのみのキートップのみに対応する部位に限定されず、そのキーラバー53の何れの部位に形成されてもよく、あるいはキートップ54-1〜54-nのそれぞれに対応する部位の全てに予め形成されてもよい。
【0070】
さらに、本実施形態では、避雷針ベロ20Lの先端部が先鋭に形成されている。
しかし、このような避雷針ベロ20Lの先端部の形状は、所望の放電路が確保されるならば、如何なるものであってもよい。
【0071】
また、本実施形態では、キーラバー53は、キートップ54の押下に応じた変形や変位によって補強板53Rと避雷針ベロ20Lとの距離が縮まることにより、そのキーラバー53に帯電した静電気の放電を促進する役目をはたしている。
【0072】
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、キーラバー53に帯電した静電気の放電路が確保されるならば、例えば、補強板53Rの部位の内、避雷針ベロ20Lの先端部に最寄りの部位は、キートップ54課押下されたときに変位しなくてもよい。
【0073】
さらに、本実施形態では、ESDピン20(避雷針ベロ20L)が導体により構成されている。
【0074】
しかし、このようなESDピン20(避雷針ベロ20L)は、上記放電路が確保されるならば、必ずしも導体として構成されなくてもよく、例えば、導電率と形状と寸法との全てまたは一部が予め好適な値に設定された部材として構成されてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、補強板53Rは、キートップ54のイルミネーションを間接照明として実現するために、そのイルミネーションに供される光の反射体としても構成されている。
しかし、このような反射体は、補強板53R以外の部材で代替されてもよい。
【0076】
さらに、本実施形態では、補強板53Rは、キーラバー53の剛性を補強するために、そのキーラバー53の内層に設けられている。
しかし、このような補強板53Rは、上記剛性の補強が必要ない場合には、例えば、キーラバー53の表面の所定の箇所に形成された導電性の膜として構成されてもよい。
【0077】
また、本実施形態は、本発明に係るスイッチが操作部に適用されたPHSの端末として構成されている。
【0078】
しかし、本発明は、このような端末に限定されず、例えば、本発明に係るスイッチの構成要素が直接備えられ、かつ所望の装置の本体が収納されるべき筐体として構成されてもよい。
【0079】
さらに、本発明は、既述の携帯電話やPHSの端末に限定されず、本発明に係るスイッチが操作部に備えられるならば、如何なる装置やシステムにも同様に適用可能である。
【0080】
また、本実施形態では、キーラバー53は、キートップ54のイルミネーションが本発明の構成要素以外によって別途実現される場合には、そのイルミネーションに供される光が透過する素材で構成されなくてもよい。
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0081】
以下、本願に開示された発明の構成の態様の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった構成と、これらの構成毎の作用とを「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0082】
[請求項6] 請求項1または請求項2に記載のスイッチにおいて、
前記放電部材は、
前記緩衝部材に最も近接する部位が先鋭に形成された
ことを特徴とするスイッチ。
【0083】
このような構成のスイッチでは、請求項1または請求項2に記載のスイッチにおいて、前記放電部材は、前記緩衝部材に最も近接する部位が先鋭に形成される。
【0084】
すなわち、緩衝部材に帯電した静電気の放電は、上記放電部材の部位が先鋭に形成されることによって容易に発生する空中放電により確度高く開始される。
したがって、コストが大幅に増加することなく、静電気に起因する障害の回避がより円滑に、かつ効率的に図られる。
【0085】
[請求項7] 請求項1または請求項2に記載のスイッチにおいて、
前記緩衝部材は、
前記力が大きいほど前記放電部材に接近する
ことを特徴とするスイッチ。
【0086】
このような構成のスイッチでは、請求項1または請求項2に記載のスイッチにおいて、前記緩衝部材は、前記力が大きいほど前記放電部材に接近する。
【0087】
すなわち、緩衝部材に帯電した静電気の放電が開始されるきっかけは、その緩衝部材と放電部材との距離が上記力の如何にかかわらず一定である場合に比べて、増加する。
したがって、静電気に起因する障害の回避がより円滑に、かつ効率的に図られる。
【0088】
[請求項8] 請求項3に記載のスイッチにおいて、
前記放電部材は、
前記接地部材に最も近接する部位が先鋭に形成された
ことを特徴とするスイッチ。
【0089】
このような構成のスイッチでは、請求項3に記載のスイッチにおいて、前記放電部材は、前記接地部材に最も近接する部位が先鋭に形成される。
【0090】
すなわち、緩衝部材に帯電した静電気の放電は、放電部材の部位が先鋭に形成されることによって容易に発生する空中放電により確度高く開始される。
したがって、コストが大幅に増加することなく、静電気に起因する障害の回避がより円滑に、かつ効率的に図られる。
【0091】
[請求項9] 請求項1、2、3、6、7、8の何れか1項に記載のスイッチにおいて、
前記放電部材は、
前記緩衝部材より導電率が高く構成された
ことを特徴とするスイッチ。
【0092】
このような構成のスイッチでは、請求項1、2、3、6、7、8の何れか1項に記載のスイッチにおいて、前記放電部材は、前記緩衝部材より導電率が高く構成される。
【0093】
すなわち、緩衝部材に帯電した静電気の放電は、放電部材の導電率が高いほど速やかに、かつ効率的に実現される。
したがって、コストが大幅に増加することなく、静電気に起因する障害の回避がより円滑に、かつ効率的に図られる。
【0094】
[請求項10] 請求項1、2、3、6、7、8、9の何れか1項に記載のスイッチにおいて、
前記接点は、
複数のキートップから個別に与えられる力に応じてそれぞれ開閉する複数の接点として構成され、
前記緩衝部材は、
前記複数の接点に共用され、かつ表面または内層に膜またはパターンとして形成された導電体を有する
ことを特徴とするスイッチ。
【0095】
このような構成のスイッチでは、請求項1、2、3、6、7、8、9の何れか1項に記載のスイッチにおいて、前記接点は、複数のキートップから個別に与えられる力に応じてそれぞれ開閉する複数の接点として構成される。前記緩衝部材は、前記複数の接点に共用され、かつ表面または内層に膜またはパターンとして形成された導電体を有する
【0096】
すなわち、緩衝部材は、複数の接点に共用されるために表面積が大きくなった場合であっても、上記導電体によって剛性が高く維持される。
したがって、接点の多様な数および配置に柔軟に適応して、緩衝部材に帯電して面的に分布する静電気の放電路が精度よく安定に確保される。
【0097】
[請求項11] 請求項10に記載のスイッチにおいて、
前記緩衝部材は、
前記力を与えるキートップのイルミネーションに供される光を透過する素材で形成され、
前記導電体は、
前記イルミネーションに供される光源が発する光を反射することにより前記イルミネーションを間接照明として行う
ことを特徴とするスイッチ。
【0098】
このような構成のスイッチでは、請求項10に記載のスイッチにおいて、前記緩衝部材は、前記力を与えるキートップのイルミネーションに供される光を透過する素材で形成される。前記導電体は、前記イルミネーションに供される光源が発する光を反射することにより前記イルミネーションを間接照明として行う。
【0099】
すなわち、キートップのイルミネーションは、緩衝部材を構成する素材の選定と、上記導電体の光学的な反射体としての兼用の下で実現される。
したがって、コストの増加と、構成の大幅な複雑化とを伴うことなく、キートップの操作性が高められ、かつ安定に維持される。
【0100】
[請求項12] 請求項10に記載のスイッチにおいて、
前記導電体は、
前記緩衝部材に帯電した静電気を前記放電部材、または前記放電部材の近傍に導く導電路として形成された
ことを特徴とするスイッチ。
【0101】
このような構成のスイッチでは、請求項10に記載のスイッチにおいて、前記導電体は、前記緩衝部材に帯電した静電気を前記放電部材、または前記放電部材の近傍に導く導電路として形成される。
【0102】
すなわち、緩衝部材が複数の接点に共用される場合であっても、その緩衝部材に帯電して面的に分布する静電気は、上記導電体によって集約されることによって、放電部材を介して放電される。
したがって、接点の多様な数および配置に柔軟に適応して、静電気に起因する障害の回避が円滑に、かつ効率的に図ることが可能となる。
【0103】
[請求項13] 請求項1、2、3、6、7、8、9、10、11、12の何れか1項に記載のスイッチにおいて、
前記緩衝部材と前記接点とで挟まれた領域の内、前記導電体に対向する位置に電子デバイスまたは電子回路が配置された
ことを特徴とするスイッチ。
【0104】
このような構成のスイッチでは、請求項1、2、3、6、7、8、9、10、11、12の何れか1項に記載のスイッチにおいて、前記緩衝部材と前記接点とで挟まれた領域の内、前記導電体に対向する位置に電子デバイスまたは電子回路が配置される。
【0105】
このような電子デバイスや電子回路は、本発明に係るスイッチが実装される空間内に配置される。
したがって、例えば、請求項11に記載される「キートップのイルミネーションに供される光」を発する発光素子だけではなく、多様な電子デバイスや電子回路の高密度実装が図られる。
【符号の説明】
【0106】
11 窪み
12 連通孔
20 ESDピン
20L 避雷針ベロ
50 筐体
50A 開口部
50EP ESDプレート
50F フレーム部材
50FIP フロントインナーパネル
50SUS ステンレス板
52 導通基板
52EP 電気部品
52MD メタルドーム
53 キーラバー
53P 押し子
53R 補強板
54 キートップ
55 キーパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から与えられる力に応じて開閉する接点と、
弾性を有して前記接点に前記力を伝達する緩衝部材と、
前記緩衝部材から隔たった所定の位置に支持され、かつ接地された放電部材と
を備えたことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
外部から与えられる力に応じて開閉する接点と、
弾性を有して前記接点に前記力を伝達する緩衝部材と、
接地されて前記緩衝部材から隔たった所定の位置に支持されるべき放電部材が遊挿し、かつ前記接点および前記緩衝部材が収納されるケースと
を備えたことを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
外部から与えられる力に応じて開閉する接点と、
弾性を有して前記接点に前記力を伝達する緩衝部材と、
前記緩衝部材の所定の部位に突設され、かつ接地された接地部材に先端部が近接する放電部材とを備え、
前記緩衝部材および前記放電部材は、
前記力に応じて前記放電部材に接近する
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスイッチと、前記スイッチに備えられた接点に接続される電子デバイスまたは電子回路とが収納される筐体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のスイッチと、
前記スイッチに備えられた接点に接続される電子デバイスまたは電子回路と
を備えたことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−38517(P2012−38517A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176510(P2010−176510)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】