説明

スイッチキャビネット

本発明は、冷却用空気の閉回路と、電子モジュールユニットからの放熱を放散させるための熱交換器を内側領域に設置したスイッチキャビネットに関する。効率的な冷却のためと、熱交換器内で生成された復水がスイッチキャビネット外に排除されるのを避けるために、少なくともひとつの噴霧装置が設置され、復水をエアロゾルに変換する。復水エアロゾルは直ちに冷却用空気回路、好ましくは高温の乾燥した排気流に再供給され、同時に、スイッチキャビネット内の有利な大気湿度安定化が確実に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲請求項1によるスイッチキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はまた、冷却用空気流が循環的に導入され、冷却装置を利用して冷却される機器収納キャビネットとネットワークキャビネットにも適している。好ましい応用分野としては、サーバキャビネットがある。
【0003】
DE 20 2004 006 552.5は、機器収納キャビネットとネットワークキャビネットのための冷却システムを開示している。たとえばサーバ等の電子モジュールユニットは、密閉された内部領域に設置され、冷却用空気の閉回路は、電子モジュールユニットからの放熱を受ける排気を冷却するための空気−水熱交換器を有する。空気−水熱交換器はキャビネットの下部領域に配置され、空気誘導装置(エアガイダンス: air guidance)があり、この空気誘導装置には同じ長さの空気用通路があるため、個々のモジュールユニットに関する空気抵抗が等しく、各モジュールユニットにほぼ均一な外気温の冷たい外気が供給される。
【0004】
キャビネットの高出力プロセッサおよびサーバからの大量の放熱を放散させるため、また、一般的にこのようなキャビネットはひとつの部屋または領域内に比較的多数設置されるという事実を考慮し、空気−水熱交換器はビルの冷水供給源に接続される。その結果、キャビネットからの放熱全体をビルの冷水システムから放散させることができ、設置領域とキャビネットの間の熱移動を非常に低コストで回避できる。
【0005】
スイッチキャビネットは通常、気密構造となっているため、キャビネット内部と設置領域との間の熱移動が発生しない。熱交換器の内部では温度が露点以下へ局所下降する場合があり、設置領域内での12℃未満の冷却水の使用および/または高い大気湿度により、熱交換器内で復水が起こる。そのため、スイッチキャビネット内で絶対大気湿度が低下し、その結果、設置されたモジュールユニットやシステムが損傷を受ける。
【0006】
キャビネット内の大気湿度または冷却用空気の流れを、明確に限定された外気の供給によって安定化させることが提案されている(DE 10 2004 049 487.8)。周辺条件とキャビネット内の目標値に応じて、キャビネットハウジング内にリークまたは遮断(interruption)を形成し、それによってキャビネット内部、特にファン取込口側付近において明確に限定された外気の供給が確実に行われる。このような大気湿度安定化により、事前設定値以下での復水と除湿および、特にキャビネット内の機器やシステムへの損傷という不都合点を避けることが可能となる。しかしながら、発生した復水を除去するための装置が必要となる。
【0007】
DE 298 23 784 U1は、復水除去ユニットを有するスイッチキャビネット用冷却装置を開示している。復水は復水回収装置内に集められ、事前設定可能な充満水位に到達すると、フロートスイッチを備える検出器が作動する。復水タンク内の排水管と排水路を通じて、復水が冷却装置とスイッチキャビネットから除去される。
【0008】
WO 01/63713 A1は、蒸発器と復水器を有する冷却回路システムを備える空調装置付きのスイッチキャビネットを開示している。ファンを備える蒸発器が蒸発ユニットに統合されて、スイッチキャビネットの上に設置され、一方、ファンを備える復水器が復水ユニットに統合され、蒸発ユニットとスイッチキャビネットから間隔を空けて、特にスイッチキャビネット設置領域の外側に設置される。これは、スイッチキャビネット設置領域内の熱導入量と騒音レベルを低下させるためで、その一方で、キャビネット内部とその中に設置されたコンポーネントの冷却が改善される。蒸発ユニットは、復水回収器と復水蒸発装置を有し、蒸発器で生成した復水は蒸発し、ファンによって外部へと排除される。
【0009】
DE 198 17 247 A1に記載された冷却装置の場合、復水をスイッチキャビネット外へと導くための装置は不要となる。これは、冷却装置の下にある回収装置で回収された復水が、回収容器とその中にある加熱要素を利用して蒸発されるからである。
【0010】
これは、冷却用空気流の除湿を妨げる。しかしながら、これは熱エネルギー供給と関係しているため、空気−熱交換器の冷却能力を増大させることが必要となる。
【0011】
本発明の目的は、復水が環境へと排除されるのを防止する一方で、スイッチキャビネットにおいてきわめて効率的な冷却と大気湿度安定化を確実に行う熱交換器を有するスイッチキャビネットを提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載された特徴によって達成される。有利で適切な発展は、従属クレームと図面に関する説明において明らかとなる。
【0013】
本発明の基本的構想は、熱交換器の中で生成された復水を回収装置に回収し、スイッチキャビネットまたは熱交換器の中に配置された噴霧装置を利用して、これをエアロゾルに変換し、このエアロゾルが直ちにリサイクルされる冷却水へと再供給されるようにする、というものである。
【0014】
少なくとも所定の量だけ生成された復水は超微細な霧、詳しくは0.001mm未満のエアロゾルとして噴霧されるため、スイッチキャビネットの外に排除する必要がない。同時に、生成された復水が噴霧装置に供給され、復水エアロゾルとして噴霧され、直ちに冷却用空気流へと再供給されれば、スイッチキャビネット内の大気湿度は確実に、ほぼ安定したものとなる。
【0015】
噴霧装置が、冷却用空気流の方向に関して、熱交換器の上流に配置されると、特に有利である。すると、復水エアロゾルは電子モジュールユニットからの放熱を受ける高温の乾燥した排気流に入る。高比表面積の結果、復水エアロゾルは直ちにこの高温の乾燥した排気流に吸着され、蒸発する。蒸発により、空気流の断熱冷却が起こる。そのため、熱交換器における排気流のその後の冷却に必要なエネルギーが少なくてすむ。
【0016】
噴霧装置としては、発熱せず、限定されたサイズ、無加圧噴霧および低いエネルギー需要を特徴とするひとつまたは複数の超音波振動子または超音波噴霧器を設置すると有利である。
【0017】
噴霧能力変更可能な超音波振動子を使用し、スイッチキャビネット内の大気湿度を事前設定可能な数値にすることができれば特に有利である。
【0018】
適当な方法としては、超音波振動子を振動タンク内に設置し、より詳しくはこのタンクの底部に固定する。その底部からの事前設定可能な水位を保持するために、フロートスイッチ等のセンサを設けることができる。
【0019】
復水の回収装置から振動タンクへの供給は、ポンプを使った復水ラインによって実現される。また、振動タンクの方向に傾斜面を有する回収装置を設け、振動タンクにこれに対応する供給用開口部を設けることが可能である。
【0020】
超音波振動子は、たとえば、20,000Hzを超える周波数の圧電セラミック振動子または最高200Hzの周波数の磁歪振動子とすることができる。また、圧電素子と、発生する機械的振動のための増幅器と、限定された厚さの復水フィルムが励起され、表面張力波を発生させ、極小の小滴が相応の軌跡において遠心分離される噴霧板(アトマイザプレート: atomizer plate)を備える市販の超音波噴霧器を使用してもよい。無加圧状態で供給される復水によって液膜が形成される点が有利である。
【0021】
あるいは、詳しくは50バールより高い圧力の高圧ポンプを設置し、生成された復水を少なくともひとつの高圧ノズルに供給して、復水が微細な霧として噴霧されるようにすることもできる。少なくともその高圧ノズルは、ここでも、熱交換器の上流領域に配置し、微細な復水の霧が即座に乾燥した高温の排気に吸着され、急速に蒸発するようにする。高圧ノズルとしては、たとえば、空気加湿に関連して知られているタイプのものを使用できる。特に小さく、急速に蒸発する復水エアロゾルは、復水流を有利に振動させることによって形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を添付の図面に関して詳細に説明する。
【0023】
図2による機器収納キャビネット2の内部領域3には、垂直に重ねられた電子モジュールユニット4がある。この例において、電子モジュールユニット4はサーバであり、これらはそれぞれ、図示されていない空気取入口と排出口およびファン13を備えるハウジングの中に収容される。
【0024】
機器収納キャビネット2は、ほぼ気密性の構造物であり、電子モジュールユニット4からの放熱は、熱交換器5を用いて放散され、熱交換器は冷却水をビルの冷水供給源に接続された空気−水熱交換器として有利に構成されている。
【0025】
熱交換器5の底部は、スイッチキャビネット2の中に設置され、その中で冷却された供給空気12は前面ドア23の近くの給気ダクト26を使って、各モジュールユニット4に供給される。各電子モジュールユニットの排気流は、第一の排気ダクト14の中で上方に向かう排気流15の中に入り、裏面ドア22の付近に設置された少なくともひとつのファン21を使って、第二の排気ダクト16へと偏向される。下向きの排気流17は熱交換器5に供給される。
【0026】
熱交換器5の下には復水回収タンク8が配置され、これは、図1による実施形態において、復水ライン19によって振動タンク7に連結されている。
【0027】
冷却用空気の閉回路に関して、振動タンク7は熱交換器5の上流に、たとえば、復水回収タンク8とほぼ同じ高さに配置され、噴霧装置として少なくともひとつの超音波振動子10を備える。超音波振動子10は高周波発生器9を有し、これはキャビネット基底部18の領域へと延びる。
【0028】
振動タンク7の底部に配置された圧電セラミック超音波振動子10を用いた場合、その上の復水は、高周波数の交流電圧によって振動され、伝播する超音波が復水を噴霧し、つまり、極小の液体の小滴または復水エアロゾルが発散される。
【0029】
超音波振動タンク7を備える噴霧装置10を、熱交換器5に高温の乾燥した排気流17を供給する部分の近くに設置することにより、復水エアロゾルは断熱的に吸着され、蒸発する。これに関連して、冷却が起こり、熱交換器5の必要な冷却能力に有利に作用する。同時に、復水噴霧の結果、スイッチキャビネット2の中の空気流の必要な大気湿度が確保され、設置されたモジュールユニットへの除湿による損傷を回避できる。
【0030】
図2は、別の噴霧装置20を示し、これもまた、熱交換器5に供給される高温の乾燥した排気流17の付近に設置される。スイッチキャビネット2のその他の特徴は同じであるため、同じ参照番号が付されている。
【0031】
復水回収タンク8の中に回収された復水のための噴霧装置20として、高圧ノズル20が設けられている。回収タンク8からの復水は、高圧ポンプ25を利用して高圧ノズル20に供給される。
【0032】
複数の高圧ノズル20を提供することも本発明の範囲内である。
【0033】
さらに、本発明は熱交換機を底部に備えるスイッチキャビネット、機器収納キャビネットまたはネットワークキャビネットに限定されず、その位置に関係なく、復水を生成する別の冷却装置も本発明に含まれる。たとえば、蒸発器、復水器、圧縮器を備える冷却回路を有する冷却装置を、本発明による噴霧装置とともに提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】噴霧装置として超音波振動子を添えるスイッチキャビネットの概略図である。
【図2】噴霧装置として高圧ノズルを備えるスイッチキャビネットの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子モジュールユニット(4)を収容する内部領域(3)と、
前記電子モジュールユニット(4)からの放熱を放散させる熱交換器(5)を有する冷却用空気閉回路と、
前記熱交換器(5)の内部に生成される復水のための回収装置(8)と、
を備えるスイッチキャビネットであって、
前記復水をエアロゾル(9)に変換する、前記復水のための噴霧装置(10,20)が設置され、前記噴霧装置が、前記スイッチキャビネット(2)における大気湿度を安定化させるために復水エアロゾル(9)を前記冷却用空気回路に供給することができるように配置されることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチキャビネットであって、
噴霧装置として、少なくともひとつの超音波振動子(10)が設置されていることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチキャビネットであって、
噴霧装置として、少なくともひとつの高圧ノズル(20)が設置されていることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項4】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
前記噴霧装置(10,20)は、前記冷却用空気回路の流れ方向に関して前記熱交換器(5)の上流に配置されることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項5】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
前記噴霧装置(10,20)は、前記復水エアロゾル(9)が、前記電子モジュールユニット(4)からの放熱を受ける高温の乾燥した排気流(17)によって受け取られ、水蒸気に変換され、これに伴って前記排気流(17)の断熱冷却が行われるように配置されていることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項6】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
前記復水のための回収装置(8)として、復水回収タンクが前記熱交換器(5)の下に設置され、前記噴霧装置(10,20)に事前設定可能な量の復水を供給するポンプ(11)と復水ライン(9)が提供されることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項7】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
前記超音波振動子(10)のための振動タンク(7)が設置され、そこに回収装置(8)からの前記復水が供給されることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項8】
請求項7に記載のスイッチキャビネットであって、
前記復水は、たとえば前記回収装置(8)の傾斜した底面等、傾斜面を利用して前記振動タンク(7)に供給できることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項9】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
噴霧装置(10)として、20,000Hzを超える周波数の圧電セラミック超音波振動子または最高200Hzの周波数の磁歪超音波振動子が用いられることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項10】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
50バールを超える圧力で復水を前記高圧ノズル(20)に供給する高圧ポンプ(25)が設置されることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項11】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
前記噴霧装置(10)は、給気流(12)における大気湿度に応じて調整されることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項12】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
前記回収装置(8)の内部にオーバーフロー装置が設置されていることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項13】
上記の請求項のうちのいずれかによるスイッチキャビネットであって、
熱交換器(5)として、スイッチキャビネット(2)の底部に空気−水熱交換器が設置されていることを特徴とするスイッチキャビネット。
【請求項14】
生成された前記復水のための回収装置(8)を備え、特に冷却用空気の閉回路を有するスイッチキャビネットのための冷却装置であって、
復水のための噴霧装置(10,20)が設置され、生成された復水エアロゾルを、前記スイッチキャビネット内の大気湿度を安定させるために前記冷却用空気回路に再供給できるように配置されていることを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−530484(P2008−530484A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553487(P2007−553487)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000063
【国際公開番号】WO2006/081909
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(593227811)クニュール アーゲー (9)
【Fターム(参考)】