説明

スイッチドキャパシタ積分器

【課題】演算増幅器の充電にかかる負荷を抑え、低消費電力化を実現できるスイッチドキャパシタ積分器を提供する。
【解決手段】演算増幅器122を含む積分器102、演算増幅器122の入力端子122aに信号を入力するスイッチドキャパシタ回路101、演算増幅器122の出力端子122cと接続する出力端子443を有するスイッチドキャパシタ回路103を含み、積分器102及びスイッチドキャパシタ回路101がサンプリング動作と積分動作とを繰返し、スイッチドキャパシタ回路103は、キャパシタ133、キャパシタ133をサンプル、ホールド動作させるスイッチング素子131、132を含み、スイッチング素子131、132がキャパシタ133を、積分動作中にホールド動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低消費電流で動作可能なスイッチドキャパシタ回路を備えるスイッチドキャパシタ積分器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、一般的なスイッチドキャパシタを備える積分器(スイッチドキャパシタ積分器)を示す図である。スイッチドキャパシタ積分器は、スイッチドキャパシタ回路1と、積分器2とを含んでいる。スイッチドキャパシタ回路1は、スイッチング素子3〜6と、入力キャパシタ7とを含んでいる。積分器2は、演算増幅器9と、帰還キャパシタ8と、を含んでいる。スイッチドキャパシタ回路1には入力端子11があり、入力端子11に入力されるアナログ信号を入力信号Vinとする。積分器2には出力端子12があり、出力端子12から出力されるアナログ信号を出力信号Voutとする。
【0003】
スイッチドキャパシタ回路1のスイッチング素子3、6にはスイッチ制御信号S1が入力される。スイッチング素子4、5には、スイッチ制御信号S2が入力される。第1制御信号S1とスイッチ制御信号S2とは、位相が半サイクルずれている。
図7に示したスイッチドキャパシタ回路1では、入力キャパシタ7の一端7aはスイッチング素子3を介して入力端子11に接続される。また、一端7aは、スイッチング素子5を介して接地されている。また、入力キャパシタ7の他の一端7bは、スイッチング素子6を介して接地されると共に、スイッチング素子4を介して演算増幅器9の反転入力端子9aに接続されている。
【0004】
演算増幅器9では、非反転入力端子9bが接地され、出力端子9cが出力端子12に接続されている。出力端子9cは、さらに、帰還キャパシタ8を介して反転入力端子9aに接続されている。
次に、図7に示したスイッチドキャパシタ積分器の動作を説明する。図8は、図7に示したスイッチドキャパシタ積分器の動作を説明するための図である。図8(a)はスイッチ制御信号S1、図8(b)はスイッチ制御信号S2、図8(c)は出力信号Voutを示している。図8(a)〜(c)のいずれでも、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示している。
【0005】
スイッチ制御信号S1、S2は前述したように半サイクルずれている。このため、スイッチ制御信号S1とスイッチ制御信号S2とのオン、オフのタイミングは、互いに反対になっている。図8(c)において、出力信号Voutの波形が反転しているのは、信号の極性が反転していることを示す。
スイッチ制御信号S1は、スイッチング素子3、6に入力される。スイッチ制御信号S1は、スイッチング素子3、6をオンまたはオフさせる。スイッチ制御信号S1によってスイッチング素子3、6がオンするときのスイッチドキャパシタ回路1の動作を、サンプリング動作という。サンプリング動作が行われている期間(サンプリング動作区間)では、スイッチ制御信号S2により、スイッチング素子4、5はオフになっている。
【0006】
サンプリング動作区間では、入力信号Vinによって入力キャパシタ7が充電される。入力キャパシタ7に蓄えられる電荷は、実質的に入力信号Vinと入力キャパシタ7のキャパシタンスC1の積、Vin×C1で表される。
また、積分器2の帰還キャパシタ8では、先に入力された入力信号Voに依存して蓄積された電荷が保持されている。サンプリング時に出力端子12から出力される出力信号を出力信号Voutとし、帰還キャパシタ8のキャパシタンスをキャパシタンスC0とすると、帰還キャパシタ8に保持される電荷は、Vout×C0で表される。
【0007】
次に、スイッチ制御信号S2が、スイッチング素子4、5をオンにする。この動作を積分動作といい、積分動作が行われている期間(積分動作区間)にはスイッチ制御信号S1によってスイッチング素子3、6がオフされている。
積分動作区間では、演算増幅器9のセトリング時間が経過した後、演算増幅器9の反転入力端子9aは、実質的に非反転入力端子9bと同電位、すなわち、仮想接地状態となる。このため、入力キャパシタ7に保持されている電荷は、完全に帰還キャパシタ8に移動される。前記したように、入力キャパシタ7に保持されている電荷はVin×C1で表され、この電荷を帰還キャパシタ8のキャパシタンスC0で除算した電荷Vin×C1/C0が、サンプリング動作時の出力信号Voutに加算される。このため、積分動作区間では、出力端子12から、サンプリング動作区間のVout(以下、Vout_sと記す)+Vin×C1/C0が、積分動作期間の出力信号Vout(以下、出力信号Vout_iと記す)として出力される。
【0008】
ここで、積分動作区間におけるスイッチドキャパシタ積分器の動作を詳細に説明する。
積分動作区間の開始直後、演算増幅器9では、スイッチング素子4、5がオンになった瞬間に適正な応答信号を出力することができない。このため、出力端子12から出力される信号は、入力信号Vinから信号グランドへの変化に対し、サンプリングキャパシタC1及び帰還キャパシタC0を介したステップ応答を示す。
【0009】
具体的には、出力端子12から出力される出力信号Vout_iは、出力端子12から出力される最終値(スイッチドキャパシタ積分器から最終的に出力される出力値)とはいったん逆方向に振れてVout−Vinとなる(図8のタイミングt1、t2)。その後、出力信号Vout_iは、演算増幅器9の応答によって最終値Vout_s+Vin×C1/C0に向かってセトリングしていく。このような動作を、図9に示す。
【0010】
図9は、図8に示したタイミングt1における出力信号Vout_iを拡大して示した図である。図9の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示している。図9に示したように、図7に示したスイッチドキャパシタ積分器では、出力信号Vout_iはいったん低下してからセトリング応答を示す。
次の信号サンプリング動作時になると、スイッチ制御信号S2により、スイッチング素子4、5がオフされている。このため、積分器2には、前の積分動作時に出力端子12から出力されたVout_s+Vin×C1/C0が保持されている。このようなサンプリング/積分サイクルを繰り返すことにより、図7に示した回路は、スイッチドキャパシタ積分器として動作する。
このようなスイッチドキャパシタ積分器は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−65091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記したスイッチドキャパシタ積分器では、積分動作時、セトリングが完了するまでに電荷を充電するため、演算増幅器9から帰還キャパシタに電荷を供給する必要がある。
帰還キャパシタ8への電荷の充電が積分動作区間内に十分に行われないと、出力信号Voutに誤差成分が生まれる。誤差は、スイッチドキャパシタ積分器の精度を低下させる。精度と演算増幅器の低消費電流化とはトレードオフの関係になるため、従来のスイッチドキャパシタ積分器には、演算増幅器9における消費電流が多いという課題が生じる。
【0013】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、帰還キャパシタの充電を補助することによって演算増幅器の充電にかかる負荷を抑え、低消費電力化を実現できるスイッチドキャパシタ積分器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するため、本発明の一態様のスイッチドキャパシタ積分器は、演算増幅器(例えば図2、4に示した演算増幅器122)を含む積分回路(例えば図2、4に示した積分器102)と、前記演算増幅器の入力端子に信号を入力する第1スイッチドキャパシタ回路(例えば図2、4に示したスイッチドキャパシタ回路101)と、前記演算増幅器の出力端子と接続する出力端子を有する第2スイッチドキャパシタ回路(例えば図2に示したスイッチドキャパシタ回路103、図4に示したスイッチドキャパシタ回路403)と、を含み、前記積分回路及び前記第1スイッチドキャパシタ回路は、入力信号(例えば図2、4に示した入力信号Vin1)をサンプリングするサンプリング動作と、サンプリングされた電荷を積分する積分動作とを繰返し、前記第2スイッチドキャパシタ回路は、前記積分回路の積分動作中に出力信号を出力し、該出力信号が、前記積分回路から積分動作中に出力される信号に加算されることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様のスイッチドキャパシタ積分器は、演算増幅器(例えば図2、4に示した演算増幅器122)を含む積分回路(例えば図2、4に示した積分器102)と、前記演算増幅器の入力端子に信号を入力する第1スイッチドキャパシタ回路(例えば図2、4に示したスイッチドキャパシタ回路101)と、前記演算増幅器の出力端子と接続する出力端子を有する第2スイッチドキャパシタ回路(例えば図2に示したスイッチドキャパシタ回路103、図4に示したスイッチドキャパシタ回路403)と、を含み、前記積分回路及び前記第1スイッチドキャパシタ回路は、入力信号をサンプリングするサンプリング動作と、サンプリングされた電荷を積分する積分動作とを繰返し、前記第2スイッチドキャパシタ回路は、キャパシタ(例えば図2に示したキャパシタ133、例えば図4に示したキャパシタ432)と、該キャパシタをサンプル、ホールド動作させるスイッチング素子(例えば図2に示したスイッチング素子131、132、例えば図4に示したスイッチング素子431、433)と、を含み、前記スイッチング素子は、前記キャパシタを、前記積分動作中にホールド動作させることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様のスイッチドキャパシタ積分器は、前記第2スイッチドキャパシタ回路の前記スイッチング素子が、前記積分回路及び前記第1スイッチドキャパシタ回路のサンプリング動作区間終了後に前記ホールド動作が開始され、積分動作が終了する以前に終了するように前記キャパシタを動作させることが望ましい。
【0017】
本発明の一態様のスイッチドキャパシタ積分器は、前記積分回路が、前記演算増幅器と、該演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続される帰還キャパシタ(例えば図2、図4に示した帰還キャパシタ121)と、を含み、前記第1スイッチドキャパシタ回路は、第1入力信号の入力端子と接続される第1スイッチング素子(例えば図2、図4に示したスイッチング素子111)と、前記第1スイッチング素子と直列に接続される第1入力キャパシタ(例えば図2、図4に示した入力キャパシタ115)と、前記第1入力キャパシタと、前記反転入力端子との間に接続される第2スイッチング素子(例えば図2、図4に示したスイッチング素子112)と、前記第1スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第3スイッチング素子(例えば図2、図4に示したスイッチング素子113)と、前記第2スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第4スイッチング素子(例えば図2、図4に示したスイッチング素子114)と、を含み、前記第2スイッチドキャパシタ回路は、第2入力信号の入力端子と接続される第5スイッチング素子(例えば図2に示したスイッチング素子131)と、前記第5スイッチング素子と直列に接続される第2入力キャパシタ(例えば図2に示した入力キャパシタ133)と、前記第5スイッチング素子、前記第2入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第6スイッチング素子(例えば図2に示したスイッチング素子132)と、を含み、前記第2入力キャパシタの出力信号は、前記演算増幅器の前記出力端子に出力されることが望ましい。
【0018】
本発明の一態様のスイッチドキャパシタ積分器は、前記積分回路は、前記演算増幅器と、該演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続される帰還キャパシタと、を含み、前記第1スイッチドキャパシタ回路は、第1入力信号の入力端子と接続される第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と直列に接続される第1入力キャパシタと、前記第1入力キャパシタと、前記反転入力端子との間に接続される第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第3スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第4スイッチング素子と、を含み、前記第2スイッチドキャパシタ回路は、第2入力信号の入力端子と接続される第7スイッチング素子(例えば図4に示したスイッチング素子431)と、前記第7スイッチング素子と直列に接続される第8スイッチング素子(例えば図4に示したスイッチング素子433)と、前記第7スイッチング素子、前記第8スイッチング素子間と、グランドとの間に設けられる第3入力キャパシタ(例えば図4に示した入力キャパシタ432)と、を含み、前記第8スイッチング素子は、前記第3入力キャパシタと前記演算増幅器の前記出力端子との間を離接することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスイッチドキャパシタ回路によれば、演算増幅器からの電荷の移動を減らすことができるため、従来法よりもスルーレートやユニティゲイン帯域の狭い演算増幅器でも十分なセトリングが期待でき、演算増幅器の消費電流を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器の回路構成を説明するための図である。
【図2】図1に示したスイッチドキャパシタ積分器をより具体的に示した図である。
【図3】第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器の動作を説明するための図である。
【図4】第2実施形態のスイッチドキャパシタ積分器を説明するための図である。
【図5】第2実施形態のスイッチドキャパシタ回路の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第1実施形態、第2実施形態の効果を説明するための図である。
【図7】一般的なスイッチドキャパシタを備える積分器を示した図である。
【図8】図7に示したスイッチドキャパシタ積分器の動作を説明するための図である。
【図9】図8に示したタイミングt1における出力信号Voutを拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のスイッチドキャパシタ積分器の第1実施形態、第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態、第2実施形態では、いずれもシングルエンドの構成例を示しているが、本発明は全差動回路でも実現することが可能である。
(第1実施形態)
・回路構成
図1は、本発明の第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器の回路構成を説明するための図である。第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器は、スイッチドキャパシタ回路101、積分器102、スイッチドキャパシタ回路103を備えている。図中に破線で示した範囲にある構成は、先に説明した従来のスイッチドキャパシタ積分器と同様の構成である。
【0022】
図2は、図1に示したスイッチドキャパシタ積分器をより具体的に示した図である。スイッチドキャパシタ回路101は、スイッチング素子111、112、113、114と、入力キャパシタ115(キャパシタンスC1)を含んでいる。スイッチング素子111の一端は、入力端子141と接続されている。入力端子141に入力される信号を、入力信号Vin1と記す。
【0023】
スイッチング素子111、入力キャパシタ115、スイッチング素子112は直列に接続されている。入力キャパシタ115の一端115aとスイッチング素子111との間にはスイッチング素子113が接続され、スイッチング素子113は接地されている。また、入力キャパシタ115の他の一端115bとスイッチング素子112との間にはスイッチング素子114が接続され、スイッチング素子114は接地されている。
【0024】
スイッチドキャパシタ回路103は、スイッチング素子131、132と、入力キャパシタ133(キャパシタンスC2)と、を含んでいる。スイッチング素子131の一端は、入力端子142と接続されている。入力端子142に入力される信号を、入力信号Vin2と記す。
スイッチング素子131、入力キャパシタ133は直列に接続されている。入力キャパシタ133の一端133aとスイッチング素子131との間にはスイッチング素子132が接続され、スイッチング素子132は接地されている。
【0025】
積分器102は、演算増幅器122と、帰還キャパシタ121(キャパシタンスC0)と、を含んでいる。演算増幅器122は、反転入力端子122a、非反転入力端子122b、出力端子122cを備えている。帰還キャパシタ121は、演算増幅器122の出力端子122cと反転入力端子122aとの間に設けられている。演算増幅器122の出力端子122cは、スイッチドキャパシタ積分器の出力端子143と、入力キャパシタ133の一端133bに接続されている。
【0026】
一端133bはスイッチドキャパシタ回路103の出力端子145に接続されていて、出力端子145は、積分器102の出力端子143に出力されている。このような構成により、第1実施形態では、積分器102の出力信号にスイッチドキャパシタ回路103の出力信号が加算され、出力信号Voutとなる。
以上の構成において、スイッチング素子111、114、131にはスイッチ制御信号S1が入力される。また、スイッチング素子112、113、132にはスイッチ制御信号S2が入力される。スイッチ制御信号S1、スイッチ制御信号S2は、それぞれ一定の周期で変化する信号であり、入力したスイッチング素子をその周期でオン、オフさせる。スイッチ制御信号S1とスイッチ制御信号S2とは、その位相が互いに半サイクルずれている。
【0027】
・動作
次に、第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器の動作を説明する。
図3は、第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器の動作を説明するための図である。図3(a)はスイッチ制御信号S1、図3(b)はスイッチ制御信号S2、図3(c)は出力信号Voutを示している。図3(a)〜(c)のいずれでも、縦軸は電圧Vを示し、横軸は時間tを示している。スイッチ制御信号S1、S2の位相は前述したように半サイクルずれている。このため、スイッチ制御信号S1とスイッチ制御信号S2とのオン、オフのタイミングは、互いに反対になっている。
【0028】
スイッチドキャパシタ積分器の動作には、スイッチ制御信号S1によってスイッチング素子111、114、131がオンする期間と、スイッチ制御信号S2によってスイッチング素子112、113、132がオンする期間とがある。スイッチング素子111、114、131がオンする動作を「サンプリング動作」といい、サンプリング動作が行われている期間を「サンプリング動作区間」という。
【0029】
また、スイッチング素子112、113、132がオンする動作を「積分動作」といい、積分動作が行われている期間を「積分動作区間」という。サンプリング動作区間では、スイッチング素子112、113、132はオフ状態になっている。また、積分動作区間では、スイッチング素子111、114、131はオフ状態になっている。第1実施形態では、サンプリング動作区間の出力信号Vout_sとし、積分動作区間の出力信号Vout_iとする。なお、図3(c)のVoutは、サンプリング動作区間の出力信号Vout_sと、積分動作区間の出力信号Vout_iの両方を示している。
【0030】
サンプリング動作区間では、入力端子141に入力されるアナログの入力信号Vin1によって入力キャパシタ115が充電される。入力キャパシタ115に蓄えられた電荷は、実質的に入力信号Vin1と入力キャパシタ115のキャパシタンスC1の積、Vin1×C1で表される。
また、サンプリング動作区間では、入力端子142に入力されるアナログ信号Vin2によって入力キャパシタ133が充電される。入力キャパシタ133に蓄えられた電荷は、実質的に入力信号Vin2と入力キャパシタ133のキャパシタンスC2の積、Vin2×C2で表される。このとき、積分器102は先に入力された信号に依存した電荷を帰還キャパシタ121に保持し、出力端子143から出力信号Vout_sを出力する。帰還キャパシタ121に保持される電荷は、Vout_s×C0となる。
【0031】
積分動作区間では、スイッチング素子112、113、132がオンになる。演算増幅器122の反転入力端子122aは実質的に非反転入力端子122bと同電位、すなわち仮想接地状態となる。入力キャパシタ115に保持される電荷は、完全に帰還キャパシタ121に移動する。このような動作により、積分動作区間では、入力キャパシタ115に蓄えられた電荷Vin1×C1を帰還キャパシタ121のキャパシタンスC0で除算したVin1×C1/C0が、サンプリング動作区間の出力信号Vout_sに加算される。このため、積分動作区間では、出力端子143から出力信号Vout_s+Vin1×C1/C0が出力信号Vout_iとして出力される。
【0032】
なお、このとき、スイッチドキャパシタ回路103の入力キャパシタ133に蓄えられている電荷Vin2×C2は、出力信号Vout_iに影響を与えることがない。
ここで、積分動作区間のスイッチドキャパシタ回路103の動作を説明する。積分動作の開始時、スイッチング素子112及びスイッチング素子113と同時に、スイッチング素子132もオンになる。スイッチドキャパシタ回路101から積分器102に入力する入力信号は、Vin1からグランド電圧(信号グランド)へ変化する。また、スイッチドキャパシタ回路103においては、入力キャパシタ133に電荷を蓄積する電圧は、入力信号Vin2から信号グランドへ変化する。このとき、入力キャパシタ133は、ホールド状態になる。
【0033】
このような変化に応じて、出力端子143から出力される出力信号Vout_iは、入力キャパシタ115と帰還キャパシタ121とを介したステップ応答と、入力信号Vin2から信号グランドへの変化に対応する入力キャパシタ133を介したステップ応答とを加算したものになる。
以上の動作において、入力キャパシタ115、133、帰還キャパシタ121のキャパシタンスを適正に設定することにより、積分器102の消費電力を削減することができる。
【0034】
すなわち、第1実施形態では、入力キャパシタ115のキャパシタンスC1、入力キャパシタ133のキャパシタンスC2、帰還キャパシタ121のキャパシタンスC0を以下のように設定する。
C2=C0×C1/(C0−C1)
また、第1実施形態では、スイッチドキャパシタ回路101の入力信号Vin1と、スイッチドキャパシタ回路103の入力信号Vin2とを、以下のように設定する。
Vin2=−Vin1
【0035】
以上の条件を満たすことにより、スイッチドキャパシタ積分器の積分動作時の出力信号Vout_iは、Vout_s+Vin1×C1/C0となる。この出力信号は、先に背景技術で説明した、スイッチドキャパシタ積分器の最終的な出力信号に一致する。このような第1実施形態では、演算増幅器122の出力信号が帰還キャパシタ121の充電に消費されることがない。このため、図3(c)のように、第1実施形態では、サンプリング動作区間の立下りと積分動作区間の立上りの境界において、出力信号の極性が反対方向に振れることがない。
以上のことから、第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器では、演算増幅器122に必要とされるスルーレートやユニティゲイン周波数などを大きく緩和できるため、演算増幅器122の低消費電流化が可能となる。
【0036】
なお、本発明の第1実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。すなわち、第1実施形態は、スイッチドキャパシタ回路101のステップ応答を補うことができれば本発明の効果を得ることができる。このため、スイッチドキャパシタ回路のサンプリング方式は、クロール型、バタフライ型と呼ばれるサンプリング形式でもよい。また、スイッチドキャパシタ回路103の入力信号Vin2は、−Vin1ではなく、Vin1、−Vin1をスケーリングしたα×Vin1、またはVin1、−Vin1を離散値化した値であってもよい。
【0037】
(第2実施形態)
・回路構成
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態のスイッチドキャパシタ積分器は、図1に示したスイッチドキャパシタ回路103と異なる構成のスイッチドキャパシタ回路403を備える点で第1実施形態のスイッチドキャパシタ積分器と相違する。このため、図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
【0038】
図4は、第2実施形態のスイッチドキャパシタ積分器を説明するための図である。第2実施形態のスイッチドキャパシタ積分器は、スイッチドキャパシタ回路101、積分器102、スイッチドキャパシタ回路403を備えている。スイッチング素子431にはスイッチ制御信号S1が入力されていて、スイッチング素子433にはスイッチ制御信号S3が入力されている。スイッチング素子は、各々入力されるスイッチ制御信号がオンのときにオンし、オフのときにオフするものとする。
【0039】
第2実施形態のスイッチドキャパシタ積分器にあっても、スイッチドキャパシタ回路101の入力端子141から入力信号Vin1が入力される。また、積分器102には出力端子143が設けてあって、出力端子143からは出力信号Voutが出力される。
スイッチドキャパシタ回路403は、スイッチング素子431、433と、入力キャパシタ432(キャパシタンスC2)と、を含んでいる。
【0040】
スイッチング素子431とスイッチング素子433は、直列に接続されていて、スイッチング素子431、433間に入力キャパシタ432が接続されている。入力キャパシタ432の他の一端は接地されている。スイッチング素子431の一端には入力端子442が接続されている。
スイッチドキャパシタ回路403においては、入力端子442から入力信号Vin2が入力される。スイッチドキャパシタ回路403の出力端子443は、積分器102の出力端子143に接続されている。このような動作により、第2実施形態では、出力端子122cから出力される出力信号に、出力端子443から出力される出力信号が加算され、出力信号Vout_iとして出力される。
【0041】
・動作
図5(a)〜(d)は、第2実施形態のスイッチドキャパシタ回路の動作を説明するための図である。図5(a)はスイッチ制御信号S1、図5(b)はスイッチ制御信号S2、図5(c)はスイッチ制御信号S3、図5(d)は出力信号Vout_s、Vout_iを示している。図5(a)〜(d)のいずれでも、縦軸は電圧Vを示し、横軸は時間tを示している。スイッチ制御信号S1、S2は前述したように半サイクルずれている。このため、スイッチ制御信号S1とスイッチ制御信号S2とのオン、オフのタイミングは、互いに反対になっている。スイッチ制御信号S3は、スイッチ制御信号S2と共に立上り、スイッチ制御信号S2よりも早く立下がる。
【0042】
サンプリング動作区間では、入力端子141に入力される入力信号Vin1により、入力キャパシタ115が充電される。このとき、入力端子442に入力される入力信号Vin2によって、入力キャパシタ432が充電される。入力キャパシタ115に蓄えられた電荷は、実質的に入力信号Vin1と入力キャパシタ115のキャパシタンスC1との積、Vin1×C1によって表される。
【0043】
入力キャパシタ432に蓄えられた電荷は、実質的に入力信号Vin2と入力キャパシタ432のキャパシタンスC2の積、Vin2×C2によって表される。このとき、積分器102では、先に入力されていた入力信号に依存した電荷、Vout×C0を、キャパシタンスC0を有する帰還キャパシタ121が保持している。この結果、出力端子143からは、出力信号Vout_sが出力される。
【0044】
積分動作区間では、スイッチドキャパシタ回路403において、スイッチ制御信号S3がスイッチング素子433をオンにして、入力キャパシタ432のホールド動作が実行される。このとき、スイッチング素子431は、スイッチ制御信号S1によってオフされている。積分動作区間では、スイッチドキャパシタ回路101においては、スイッチ制御信号S1により、スイッチング素子111,114がオフ状態になっている。
【0045】
演算増幅器122の反転入力端子122aは、実質的に非反転入力端子122bと同電位、すなわち仮想接地状態となる。このため、スイッチドキャパシタ回路101の入力キャパシタ115に保持されていた電荷は、完全に帰還キャパシタ121に移動する。積分動作区間では、この電荷を帰還キャパシタ121のキャパシタンスC0で除算したVin1×C1/C0が、サンプリング動作区間の出力信号Vout_sに加算される。このため、出力端子143からは、Vout_s+Vin1×C1/C0の出力信号が出力される。
【0046】
このとき、入力キャパシタ432に蓄えられていた電荷、Vin2×C2は、出力信号に影響を与えない。
積分動作開始時、スイッチドキャパシタ回路101において、スイッチング素子112、113がオンになった瞬間、同時にスイッチング素子433もオンになる。このとき、入力信号Vin1から信号グランドへの変化に対応する入力キャパシタ115の応答と、帰還キャパシタ121を介したステップ応答とが出力端子143から出力される。また、スイッチドキャパシタ回路403からは、入力信号Vin2から信号グランドへの変化に対して出力される、入力キャパシタ432のステップ応答が出力端子122cに出力される。
【0047】
このため、出力端子143からは、入力キャパシタ115の応答と、帰還キャパシタ121を介したステップ応答と、入力キャパシタ432のステップ応答とを足し合わせた信号が出力される。このような第2実施形態では、図5(d)のように、積分動作区間の開始直後に出力信号Vout_iが極性の反対の方向に振れることがない。
また、以上の動作において、第2実施形態では、入力キャパシタ115のキャパシタンスC1、入力キャパシタ432のキャパシタンスC2、帰還キャパシタ121のキャパシタンスC0を、以下のように設定する。
C2=C0×C1/(C0−C1)
【0048】
また、第2実施形態では、スイッチドキャパシタ回路101の入力信号Vin1と、スイッチドキャパシタ回路403の入力信号Vin2とを、以下のように設定する。
Vin2=−Vin1
以上のようにすることにより、第2実施形態のスイッチドキャパシタ積分器からは、積分動作区間において、以下の出力信号が出力される。
α×Vout_s+Vin1×C1/C0
ただし、α=(C0/C1)/{(C0/C1)+C2}
【0049】
上記したα×Vout_s+Vin1×C1/C0と、スイッチドキャパシタ積分器から最終的に出力される最終値(Vout_s+Vin×C1/C0:Vin=Vin1とする)とは、差分(1−α)×Vout_sがある。ただし、第2実施形態の出力信号は、積分動作区間内に演算増幅器122の出力から帰還キャパシタ121に電荷を充電し、セトリングすることによって、出力信号V_outが最終値Vout_s+Vin×C1/C0に一致する。第2実施形態では、スイッチング素子433をスイッチ制御信号S3によってオフさせることにより、積分動作区間内で入力キャパシタ432が演算増幅器122の容量性負荷とならない。このため、第2実施形態では、セトリングを速やかに行って、出力信号を最終値に速やかに一致させることができる。
【0050】
・効果
図6は、本発明の第1実施形態、第2実施形態の効果を説明するための図である。図6の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示している。図6に示したように、図1、図4に示したスイッチドキャパシタ積分器では、積分動作区間の開始直後から出力信号Voutがほとんど低下せず、そのままセトリング応答に移行している。このため、本発明の第1実施形態、第2実施形態のスイッチドキャパシタ回路によれば、演算増幅器からの電荷の移動を減らすことができるため、背景技術で説明したスイッチドキャパシタ回路よりもスルーレートやユニティゲイン帯域の狭い演算増幅器でも十分なセトリングが期待でき、演算増幅器の消費電流を削減することが可能となる。
【0051】
なお、以上説明した本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、スイッチドキャパシタ積分器全般に使用することが可能である。特に、演算増幅器の電力を削減することが必要なスイッチドキャパシタ積分器に有効である。
【符号の説明】
【0053】
101、103、403 スイッチドキャパシタ回路
102 積分器
111、112、113、114、131、132、431、433 スイッチング素子
115、133、432 入力キャパシタ
121 帰還キャパシタ
122 演算増幅器
122a 反転入力端子
122b 非反転入力端子
122c 出力端子
141、142、442 入力端子
143、443 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算増幅器を含む積分回路と、
前記演算増幅器の入力端子に信号を入力する第1スイッチドキャパシタ回路と、
前記演算増幅器の出力端子と接続する出力端子を有する第2スイッチドキャパシタ回路と、
を含み、
前記積分回路及び前記第1スイッチドキャパシタ回路は、入力信号をサンプリングするサンプリング動作と、サンプリングされた電荷を積分する積分動作とを繰返し、
前記第2スイッチドキャパシタ回路は、前記積分回路の積分動作中に出力信号を出力し、該出力信号が、前記積分回路から積分動作中に出力される信号に加算されることを特徴とするスイッチドキャパシタ積分器。
【請求項2】
演算増幅器を含む積分回路と、
前記演算増幅器の入力端子に信号を入力する第1スイッチドキャパシタ回路と、
前記演算増幅器の出力端子と接続する出力端子を有する第2スイッチドキャパシタ回路と、
を含み、
前記積分回路及び前記第1スイッチドキャパシタ回路は、入力信号をサンプリングするサンプリング動作と、サンプリングされた電荷を積分する積分動作とを繰返し、
前記第2スイッチドキャパシタ回路は、キャパシタと、該キャパシタをサンプル、ホールド動作させるスイッチング素子と、を含み、
前記スイッチング素子は、前記キャパシタを、前記積分動作中にホールド動作させることを特徴とするスイッチドキャパシタ積分器。
【請求項3】
前記第2スイッチドキャパシタ回路の前記スイッチング素子は、
前記積分回路及び前記第1スイッチドキャパシタ回路のサンプリング動作区間終了後に前記ホールド動作が開始され、積分動作が終了する以前に終了するように前記キャパシタを動作させることを特徴とする請求項2に記載のスイッチドキャパシタ積分器。
【請求項4】
前記積分回路は、
前記演算増幅器と、該演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続される帰還キャパシタと、を含み、
前記第1スイッチドキャパシタ回路は、
第1入力信号の入力端子と接続される第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と直列に接続される第1入力キャパシタと、
前記第1入力キャパシタと、前記反転入力端子との間に接続される第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第3スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第4スイッチング素子と、を含み、
前記第2スイッチドキャパシタ回路は、
第2入力信号の入力端子と接続される第5スイッチング素子と、
前記第5スイッチング素子と直列に接続される第2入力キャパシタと、
前記第5スイッチング素子、前記第2入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第6スイッチング素子と、を含み、
前記第2入力キャパシタの出力信号は、前記演算増幅器の前記出力端子に出力されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチドキャパシタ積分器。
【請求項5】
前記積分回路は、
前記演算増幅器と、該演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に接続される帰還キャパシタと、を含み、
前記第1スイッチドキャパシタ回路は、
第1入力信号の入力端子と接続される第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と直列に接続される第1入力キャパシタと、
前記第1入力キャパシタと、前記反転入力端子との間に接続される第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第3スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子、前記第1入力キャパシタ間と、グランドとを接続する第4スイッチング素子と、を含み、
前記第2スイッチドキャパシタ回路は、
第2入力信号の入力端子と接続される第7スイッチング素子と、
前記第7スイッチング素子と直列に接続される第8スイッチング素子と、
前記第7スイッチング素子、前記第8スイッチング素子間と、グランドとの間に設けられる第3入力キャパシタと、を含み、
前記第8スイッチング素子は、前記第3入力キャパシタと前記演算増幅器の前記出力端子との間を離接することを特徴とする請求項2または3に記載のスイッチドキャパシタ積分器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−101494(P2013−101494A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244807(P2011−244807)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】