説明

スイッチ用反転ばね、及びスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置

【課題】圧伝達部材をばね部材上に強い保持力で保持させることができるスイッチ用反転ばね、及びスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置の提供。
【解決手段】スイッチ用反転ばね6は、操作部7による押圧力を受けて反転し、押圧力が解かれることにより自己復元が可能なばね部材6aと、このばね部材6aに外部からの押圧力を伝達する圧伝達手段、すなわち突起体6bとを備え、ばね部材6aは、このばね部材6aと突起体6bとを一体的に連結保持する連結部6a4を有する構成にしてある。また、ばね部材6aは、接点部6a1,6a2,6a3を有する可動接点から成り、突起体6bは合成樹脂から成っている。この突起体6b内にばね部材6aの連結部6a4が埋め込み形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器のスイッチ構成部品として活用され、可動接点を固定接点に接離させる反転可能なばね部材と、外部からの押圧力をばね部材に伝達する圧伝達部材とを備えたスイッチ用反転ばね、及びスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示すものがある。この特許文献1には、押圧力を受けて反転し、押圧力が解かれることにより自己復元可能なドーム状の可動接点、すなわちばね部材と、このばね部材の頂部に対向するベースフィルム上の位置に配置され、ばね部材に外部からの押圧力を伝達する突起部材、すなわち圧伝達部材とを備えたスイッチ用反転ばねが開示されている。また、このようなスイッチ用反転ばねとともに、上述の可動接点を構成するばね部材が接離可能な固定接点が開示されている。スイッチ用反転ばね、及び固定接点等によりスイッチ装置が構成されている。スイッチ用反転ばねに含まれる上述の圧伝達部材は、樹脂から成るとともに、ベースフィルムに接着樹脂によって固着されている。
【0003】
このように構成される従来技術は、外部からの押圧力が圧伝達部材を介して可動接点を構成するばね部材に与えられることにより、このばね部材が反転して固定接点に接触し、スイッチオンとなるとともに、反転時のクリック感触が得られる。また、圧伝達部材に与えられる押圧力を解くことにより、ばね部材が自己復元して固定接点から離れ、スイッチオフとなる。また、圧伝達部材を備えていることから、この圧伝達部材に押圧力を付与する操作部と、可動接点を構成するばね部材とが、組立てに際して位置ずれを生じている場合でも、操作部から与えられた押圧力が圧伝達部材を介して、可動接点を構成するばね部材の頂部を含む中央部分に伝達され、この可動接点から成るばね部材の反転動作を確実に行なわせることができ、良好なスイッチオン・オフ性能、及びスイッチオン時の良好なクリック感触を確保することができる。
【特許文献1】特開2004−186020公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術は、圧伝達部材をベースフィルムに接着樹脂によって固着した構成であることから、この圧伝達部材の保持力が弱く、経時的に圧伝達部材に繰り返して押圧力が加えられた場合などに、ベースフィルムに対する圧伝達部材の固着部分が剥がれ、この圧伝達部材がベースフィルム上から脱落する虞があり、構造上の信頼性の点で問題がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、圧伝達部材をばね部材上に強い保持力で保持させることができるスイッチ用反転ばね、及びスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、押圧力を受けて反転し、押圧力が解かれることにより自己復元が可能なばね部材と、このばね部材に外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材とを備え、上記ばね部材の反転に伴ってスイッチの切り換えを行うためのスイッチ用反転ばねであって、上記ばね部材は、このばね部材と上記圧伝達部材とを一体的に連結保持する連結部を有することを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明に係るスイッチ用反転ばねは、押圧力が伝えられる圧伝達部材とばね部材とを、ばね部材の一部である連結部によって一体化してあるので、圧伝達部材とばね部材との間の密着性を高めることができる。これによって、圧伝達部材をばね部材上に強い保持力で保持させることができ、経時的に圧伝達部材に繰り返して押圧力が加えられた場合でも、この圧伝達部材のばね部材からの脱落を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明は、上記スイッチ用反転ばねにおいて、上記圧伝達部材は、成形材料から成り、この圧伝達部材内に上記ばね部材の上記連結部を埋め込み形成したことを特徴としている。このように構成した本発明に係るスイッチ用反転ばねは、圧伝達部材内にばね部材の連結部を埋め込むようにしたことによって、圧伝達部材とばね部材との間の密着性をさらに高めることができ、圧伝達部材に対するより強い保持力を確保することができる。
【0009】
また、本発明は、上記スイッチ用反転ばねにおいて、上記連結部は、上記ばね部材の一部を、上記押圧方向と交差する方向に起立させて成り、上記ばね部材からの上記圧伝達部材の抜け止め部材を形成することを特徴としている。このように構成した本発明に係るスイッチ用反転ばねは、ばね部材の連結部が圧伝達部材の抜け止め部材となっているので、圧伝達部材の脱落を確実に防ぐことができる。
【0010】
また、本発明は、上記スイッチ用反転ばねにおいて、上記連結部の根元から外側に向かう方向に位置する上記ばね部材の部分と、上記圧伝達部材との間に隙間を形成したことを特徴としている。このように構成した本発明に係るスイッチ用反転ばねは、上述の隙間によってばね部材の反転動作を圧伝達部材によって拘束されることなく行なわせることができ、優れた反転性能を確保できる。これにより、良好なスイッチオン・オフ性能が得られるとともに、ばね部材の長寿命化を実現できる。また、隙間の形成領域を適宜に変更することにより、すなわち、ばね部材に対向する圧伝達部材の部分の寸法を適宜に変更することにより、ばね部材の反転時における圧伝達部材とばね部材との接触面積を変えることができる。これに応じて、ばね部材の反転に要する押圧力、すなわち作動力を、このスイッチ用反転ばねが備えられるスイッチ装置のそれぞれに相応する望ましい大きさの作動力に変更させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記スイッチ用反転ばねにおいて、上記ばね部材は、上記固定接点に接離可能な接点部を有する可動接点から成ることを特徴としている。このように構成した本発明に係るスイッチ用反転ばねは、ばね部材が可動接点を兼ねるので、固定接点に接離する可動接点を別に設ける必要がなく、このスイッチ用反転ばねが備えられるスイッチ装置の部品数を少なくすることができる。
【0012】
また、本発明は、上記スイッチ用反転ばねにおいて、上記ばね部材は、粘着シートに保持されることを特徴としている。このように構成した本発明に係るスイッチ用反転ばねは、スイッチ装置の製作に際して、このスイッチ用反転ばねをスイッチ基板に組み込む際に、ばね部材を保持した状態の粘着シートをスイッチ基板に接着すればよいので、スイッチ基板への組み込みが容易である。
【0013】
また、本発明のスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置は、固定接点、及びこの固定接点に接離可能な可動接点と、押圧力を受けて反転して上記可動接点を上記固定接点に接触させてスイッチオンとし、押圧力が解かれることにより自己復元し、これによって上記可動接点を上記固定接点から離隔させてスイッチオフとするばね部材、及びこのばね部材に外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材を含むスイッチ用反転ばねとを備えたスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置において、上記スイッチ用反転ばねの上記ばね部材は、このばね部材と上記圧伝達部材とを一体的に連結保持する連結部を有することを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明に係るスイッチ装置は、外部からの押圧力が圧伝達部材を介してばね部材に与えられることにより、ばね部材が反転し、この反転動作に応じて可動接点が固定接点に接触してスイッチオンとなるとともに、反転時のクリック感触が得られる。また、圧伝達部材に与えられる押圧力を解くことにより、ばね部材が自己復元し、この復元動作に応じて可動接点が固定接点から離れ、スイッチオフとなる。また、押圧力が伝えられるスイッチ用反転ばねを構成する圧伝達部材とばね部材とを、ばね部材の一部である連結部によって一体化してあるので、圧伝達部材とばね部材との間の密着性を高めることができる。これによって、圧力伝達部材をばね部材上に強い保持力で保持させることができ、経時的に圧伝達部材に繰り返して押圧力が加えられた場合でも、この圧伝達部材のばね部材からの脱落を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明は、上記スイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置において、上記スイッチ用反転ばねの上記ばね部材は、上記可動接点を兼ねることを特徴としている。このように構成した本発明に係るスイッチ装置は、外部からの押圧力が圧伝達部材を介してばね部材に与えられた際に、このばね部材が固定接点に接触してスイッチオンとなる。また、圧伝達部材に与えられる押圧力を解くことにより、ばね部材が自己復元し、固定接点から離れてスイッチオフとなる。さらに、スイッチ用反転ばねのばね部材が可動接点を兼ねるので、固定接点に接離する可動接点を別に設ける必要がなく、このスイッチ装置の部品数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスイッチ用反転ばね、及びスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置は、スイッチ用反転ばねを構成するばね部材が、このばね部材に外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材と、当該ばね部材とを一体的に連結保持する連結部を有することから、この連結部によって圧伝達部材とばね部材との密着性を高めることができる。これによって、圧伝達部材をばね部材上に強い保持力で保持させることができる。したがって、経時的に圧伝達部材に繰り返し押圧力が加えられるような場合でも、従来技術で懸念されていたような圧伝達部材の脱落を防ぐことができ、従来技術に比べて優れた耐久性が得られ、構造上の高い信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明に係るスイッチ用反転ばね、及びスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0018】
[スイッチ装置の一実施形態の構成]
図1は本発明に係るスイッチ用反転ばねの第1実施形態を有するスイッチ装置の一実施形態を示す側断面図、図2は図1に示すスイッチ装置の一実施形態に備えられるスイッチ基板と、このスイッチ基板に接着され、スイッチ用反転ばねの第1実施形態を保持する粘着シートとを分解して示す斜視図である。
【0019】
本発明に係るスイッチ装置の一実施形態は、図1に示すように、ハウジング1内に収納されるスイッチ基板2を備え、このスイッチ基板2上には図2にも示すように、円形状の中央固定接点3と、この中央固定接点3を囲む円環状の周辺固定接点4との組み合わせを複数組設けてある。スイッチ基板2上には、図1,2に示すように、本発明に係る後述のスイッチ用反転ばね6を複数保持する粘着シート5を接着させてある。スイッチ用反転ばね6に対応する粘着シート5の部分のそれぞれには、凸部5aが形成されており、図1に示すように、それぞれの凸部5aに対向するように、ハウジング1内を昇降可能な操作部7を複数設けてある。
【0020】
[スイッチ用反転ばねの第1実施形態の構成]
図3は図1に示すスイッチ装置の一実施形態を構成するスイッチ用反転ばねの第1実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【0021】
スイッチ用反転ばねの第1実施形態を構成するスイッチ用反転ばね6は、図1,3に示すように、例えばばね性に富んだ金属板を板厚方向の一方に向けてドーム状に膨出成形して成るばね部材6aと、このばね部材6aに外部からの押圧力、すなわち上述の操作部7の押圧操作による押圧力を伝達する圧伝達部材、すなわち突起体6bとを備えている。この突起体6bは、例えば合成樹脂などの金属での成形加工が可能な材料より成り、上方に向かうに従って径寸法が次第に小さくなり、縦断面が台形を呈する頭部が切断された円錐形状から成っている。
【0022】
ばね部材6aは、押圧力を受けて反転し、押圧力が解かれることにより自己復元が可能であって、突起体6bが配置されていない下面側が銀めっきなどの接点材料が被覆されており、接点が一体形成された可動接点を構成している。そして、ばね部材6aは、スイッチ基板2上の周辺固定接点4に常時接触する裾部を有し、膨出した頂部部分が中央固定接点3に接離可能に配置してある。このばね部材6aは、頂部部分の下面側に小突起を突出させて形成した中央固定接点3に接離する接点部、例えば3つの接点部6a1,6a2,6a3をそれぞれ有するとともに、図3の(a)(c)図に示すように、平面視で3つの接点部6a1,6a2,6a3にほぼ囲まれる領域内に配置され、当該ばね部材6aと突起体6bとを一体的に連結保持する連結部6a4を有している。
【0023】
この連結部6a4は、操作部7の昇降方向に沿う押圧方向と交差する方向に起立させるように、ばね部材6aの一部を切り起こし、先端を折り曲げ形成されたものから成っている。すなわち、この連結部6a4は、同図3の(b)図に示すように、根元を押圧方向に沿うように上方に向けて起立させ、続いて押圧方向に対して傾斜させ、さらに続いて押圧方向と直交する形態を保つように、片持ち形状に形成してある。また、この連結部6a4は、突起体6b内に埋め込み形成されてばね部材6aと突起体6bとが他の部材を介さずに直接一体化されている。なお、上述した接点部6a1,6a2,6a3のそれぞれは、下方に向かうに従って次第に先細となる例えば半球に近似した形状に形成してある。
【0024】
さらに、図3の(b)図に示すように、連結部6a4の根元から外側に向かう方向に位置するばね部材6aの上面部分と、突起体6bの下端面との間には、隙間9を形成してある。この隙間9の形成領域は、突起体6bの下端面の径寸法、すなわち突起体6bが操作部7からの押圧力を受けた際に、ばね部材6aと接触する接触領域6b1の大きさに依存している。
【0025】
上述した粘着シート5には、スイッチ用反転ばね6のばね部材6aの上面と、このばね部材6aの連結部6a4を介してばね部材6aに一体的に設けた突起体6bの上面とが接着されている。また、図1に示すように、上述した粘着シート5に予めエンボス加工などによって形成した凸部5a内に突起体6bが配置されている。この凸部5aを設けることによって突起体6bを収容することができるので、脱落を確実に防止することができる。
【0026】
[スイッチ用反転ばねの第1実施形態の製造方法の一実施形態]
図4は図3に示すスイッチ用反転ばねの第1実施形態を製造する製造方法の一実施形態を示す図で、(a)図はインサート成形に際してスイッチ用反転ばねの第1実施形態に備えられるばね部材を金型に装着する前の状態を示す側断面図、(b)図はインサート成形に際してスイッチ用反転ばねに備えられるばね部材を金型に装着したときの状態を示す側断面図、(c)図はインサート成形終了後、製造されたスイッチ用反転ばねの第1実施形態を金型から取り出した状態を示す側断面図、(d)図は(c)図のA部拡大図である。図5は図3に示すスイッチ用反転ばねの第1実施形態を製造する製造方法の一実施形態において、スイッチ用反転ばねの第1実施形態が連続的に成形される状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は側断面図である。
【0027】
上述したスイッチ用反転ばね6の製造に際して、例えば図4の(a)図に示す金型8が用いられる。この金型8は、固定側キャビティ8aと、この固定側キャビティ8aに対向する可動コア8bとから成っている。
【0028】
固定側キャビティ8aは、ばね部材6aの連結部6a4を含む部分が収容される収容部8a1と、この収容部8a1に連通し、射出成形機のノズルから収容部8a1へ溶融樹脂が導かれるゲート8a2とを備えている。可動コア8bは、固定側キャビティ8aに対向する下端部に、ばね部材6aの連結部6a4に当接可能な突出部8b1を有している。この突出部8b1の近傍を含む下端部は、固定側キャビティ8aの上面を形成する平坦面に対向する平坦面8b2に形成されている。また、可動コア8bには、インサート成形された後に、可動コア8bに貼り付いたスイッチ用反転ばね6を可動コア8bから分離させるイジェクトピン8b3を、可動コア8bの平坦面8b2から下方へ突出可能に設けてある。
【0029】
例えばプレス加工によって、接点部6a1,6a2,6a3とともに、連結部6a4が同時に形成された縦断面が弓形状に湾曲して成るばね部材6aに対して、インサート成形によって突起体6bを設けてスイッチ用反転ばね6を製造する場合、はじめに図4の(a)図に示すように、固定側キャビティ8aと可動コア8bとの間に、連結部6a4が固定側キャビティ8aの収容部8a1に対向するようにばね部材6aが配置される。
【0030】
この状態から、図4の(b)図に示すように、ばね部材6aの連結部6a4を固定側キャビティ8aの収容部8a1内に収容させ、可動コア8bの突出部8b1を収容部8a1内の連結部6a4に当接させるようにして、また、可動コア8bの下端部を形成する平坦面8b2で湾曲していたばね部材6aの全体を平らに延ばすようにして、可動コア8bを固定側キャビティ8aに対して押圧させる。この状態において、固定側キャビティ8aのゲート8a2から溶融樹脂を注入し、収容部8a1にこの溶融樹脂を充填して固化させると、図4の(c)図に示すように、ばね部材6aの連結部6a4に合成樹脂より成る突起体6bが連結保持されたスイッチ用反転ばね6が出来上がる。
【0031】
この成形時に可動コア8bの突出部8b1が連結部6a4に当接していることで、金型内に充填される樹脂流動に抗して連結部6a4を支えることができるので、収容部8a1内で連結部6a4の上下面と側面とに樹脂を行き渡らせることが可能となり、上下面および側面が樹脂で覆われるように埋め込むことができ、強固に保持させることができる。
【0032】
また、図4の(b)図に示すように、突出部8b1の周囲は平坦面8b2よりも一段高く形成されて、ばね部材6aの連結部6a4を切り起こした開口部分に挿通されることで、成形時にこの開口部分を塞ぐようになっており、接点部6a1,6a2,6a3側に向けて樹脂がはみだすことがなく、固定接点との接触不良を防止することができる。
【0033】
なお、可動コア8bの下端部を形成する平坦面8b2に貼り付いたスイッチ用反転ばね6は、同図4の(c)図に示すように、イジュクトピン8b3の先端を可動コア8bの平坦面8b2から突出させることにより、可動コア8bから分離することができる。このときのばね部材6aの、縦断面弓形状への復元力によって、連結部6a4の根元から外側に向かう方向に位置するばね部材6aの部分が、突起体6bから分離され、同図4の(d)図に示すように、連結部6aの根元から外側に向かう方向に位置するばね部材6aの部分と、突起体6bとの間に上述した隙間9が形成される。
【0034】
上述したスイッチ用反転ばね6は、例えば図5に示すように連続的に製造される。すなわち、ばね部材6aが複数形成されたフープ材10を矢印10a方向に移動させ、図4に示した固定側キャビティ8aと可動コア8bとから成る金型8を用いて、スイッチ用反転ばね6の製造が連続的に実施されるようになっている。
【0035】
[スイッチ用反転ばねの第1実施形態を含むスイッチ装置の一実施形態の動作]
上述のように構成した図1に示すスイッチ装置において、操作部7が押圧操作されない初期状態では、スイッチ基板2の中央固定接点3と、可動接点を構成するスイッチ用反転ばね6のばね部材6の接点部6a1,6a2,6a3とが離れた状態に保持されるので、中央固定接点3と周辺固定接点4との間が電気的に遮断され、スイッチオフとなっている。
【0036】
この状態から、操作部7を押圧操作して下降させると、操作部7による押圧力が粘着シート5の凸部5aを介してスイッチ用反転ばね6の突起体6bに伝えられ、その押圧力によって突起体6bの下端面が隙間9を無くすように可動接点を構成するばね部材6aの上面に当接し、引き続いてばね部材6aが反転して、このばね部材6aの接点部6a1,6a2,6a3が中央固定接点3に接触する。これによって、中央固定接点3と周辺固定接点4とがばね部材6aを介して導通し、スイッチオンとなる。また、上述したばね部材6aの反転時に、クリック感触が得られる。
【0037】
また、このような状態から、操作部7の押圧力を解くと、スイッチ用反転ばね6のばね部材6aの保有する弾性、すなわち復元力により、ばね部材6aが復元し、ばね部材6aと突起体6bとの間に隙間9が形成されるとともに、このばね部材6aの接点部6a1,6a2,6a3が中央固定接点3から離れる。したがって、中央固定接点3と周辺固定接点4との間が電気的に遮断され、再びスイッチオフとなる。
【0038】
[スイッチ用反転ばねの第1実施形態を含むスイッチ装置の一実施形態の効果]
以上のように構成したスイッチ装置の一実施形態によれば、操作部7による押圧力が伝えられるスイッチ用反転ばね6の突起体6bとばね部材6aとを、ばね部材6aの一部である連結部6a4によって一体化してあるので、スイッチ用反転ばね6の突起体6bとばね部材6aとの間の密着性を高めることができる。これによって、突起体6bをばね部材6aの上に強い保持強度で保持させることができる。したがって、経時的に突起体6bに繰り返して押圧力が与えられるような場合でも、ばね部材6aからの突起体6bの脱落を防ぐことができ、優れた耐久性が得られ、構造上の高い信頼性を確保することができる。
【0039】
また、スイッチ用反転ばね6の合成樹脂より成る突起体6b内に、ばね部材6aの連結部6a4を埋め込むようにしたことから、突起体6bとばね部材6aとの間の密着性をさらに高めることができ、突起体6bに対するより強い保持力の確保に貢献する。
【0040】
また、スイッチ用反転ばね6の連結部6a4は、ばね部材6aの一部を、操作部7の押圧方向と交差する方向に起立させて成り、ばね部材6aからの突起体6bの抜け止め部材を形成することから、突起体6bの脱落を確実に防ぐことができる。
【0041】
また、スイッチ用反転ばね6の連結部6a4の根元から外側に向かう方向に位置するばね部材6aの部分と、突起体6bとの間に隙間9を形成してあることから、この隙間9によって湾曲したばね部材6aの反転動作を突起体6bによって拘束されることなく行なわせることができ、優れた反転性能を確保できる。これにより、良好なスイッチオン・オフ性能が得られるとともに、ばね部材6aの長寿命化を実現できる。また、隙間9の形成領域を適宜に変更することにより、すなわち、ばね部材6aに対向する突起体6bの部分の寸法を適宜に変更することにより、ばね部材6aの反転時における突起体6bとばね部材6aとの接触面積を変えることができる。これに応じて、ばね部材6aの反転に要する押圧力、すなわち、このスイッチ用反転ばね6の作動力を、このスイッチ用反転ばね6が備えられるスイッチ装置のそれぞれに相応する望ましい大きさの作動力に変更させることができ、それぞれのスイッチ装置に好適な優れた操作性を確保できる。
【0042】
また、スイッチ用反転ばね6のばね部材6aは、接点部6a1,6a2,6a3を有する可動接点を兼ねるので、中央固定接点3に接離する可動接点を別に設ける必要がなく、このスイッチ用反転ばね6が備えられるスイッチ装置の部品数を少なくすることができる。
【0043】
また、スイッチ用反転ばね6のばね部材6aが、粘着シート5によって保持されるようになっているので、スイッチ装置の製作に際して、複数のスイッチ用反転ばね6をスイッチ基板2に組み込む際には、複数のスイッチ用反転ばね6を保持した状態の粘着シート5をスイッチ基板2に接着すればよいので、スイッチ基板2へのスイッチ用反転ばね6の組み込みが容易である。
【0044】
[スイッチ用反転ばねの製造方法の一実施形態の効果]
また、図4,5に示す製造方法の一実施形態によれば、固定キャビティ8aと可動コア8bを有する金型8を用い、固定キャビティ8aの収容部8a1内にばね部材6aの連結部6a4を収容し、固定側キャビティ8aと可動コア8bとによってばね部材6aを挟圧し、この状態で固定側キャビティ8aの収容部8a1内に溶融樹脂を充填して、圧伝達部材を構成する突起体6bを形成するようにしてあることから、ばね部材6の連結部6a4を突起体6bに埋め込んで成るスイッチ用反転ばね6を容易に、連続的に、能率よく製造することができる。
【0045】
また、図4の(b)図に示すように、スイッチ用反転ばね6のばね部材6aを、金型8の固定側キャビティ8aの上面と、可動コア8bの下端部を形成する平坦面8bとによって平らに延ばした状態でインサート成形し、連結部6aが埋め込まれた突起体6bの形成後、製造されたスイッチ用反転ばね6の金型8からの取り出し時に、ばね部材6aの復元力によってこのばね部材6aが復元し、これによってばね部材6aと突起体6bとの間に隙間9が形成される。すなわち、この隙間9の形成を、スイッチ用反転ばね6の製造過程の中で、容易に形成することができる。このようなばね部材6aと突起体6bとの間に形成される隙間9によって、上述のように、ばね部材6aの反転動作を突起体6bによって拘束されることなく行なわせることができ、優れた反転性能を確保でき、良好なスイッチオン・オフ性能が得られるとともに、ばね部材6aの長寿命化を実現できる。また、ばね部材6aに対向する突起体6bの部分の寸法を適宜に変更することにより、ばね部材6aの反転に要する押圧力、すなわちスイッチ用反転ばね6の作動力を、このスイッチ用反転ばね6が備えられるスイッチ装置のそれぞれに相応する大きさの作動力に変更させることができ、それぞれのスイッチ装置に好適な優れた操作性を確保できる。
【0046】
[スイッチ用反転ばねの第2実施形態]
図6は本発明に係るスイッチ用反転ばねの第2実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【0047】
この図6に示すスイッチ用反転ばねの第2実施形態を構成するスイッチ用反転ばね11も、上述した第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様に、例えば可動接点から成り、ドーム状に膨出した導電性金属板から成るばね部材11aと、このばね部材11aに外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材、すなわち突起体11bを備えている。この突起体11bは、例えば合成樹脂より成り、上方に向かうに従って径寸法が次第に小さくなり、縦断面が台形を呈する頭部が切断された円錐形状から成っている。ばね部材11aは、押圧力を受けると反転し、押圧力が解かれることにより自己復元可能となっている。
【0048】
このばね部材11aは、頂部部分の下面側に固定接点に接離する接点部、例えば3つの接点部11a1,11a2,11a3をそれぞれ有するとともに、同図6の(a)(c)に示すように、平面視で3つの接点部6a1,6a2,6a3にほぼ囲まれる領域内に配置され、当該ばね部材11aと突起体11bとを一体的に連結保持する連結部11a4を有している。この連結部11a4は、突起体11bに与えられる押圧力の方向と交差する方向に起立させるように、ばね部材11aの一部を、例えばバーリング加工によって、先細の中空管状に形成してある。すなわち、この連結部11a4を同図6の(b)図に示すように、縦断面の形状が、根元を押圧方向に沿うように上方に向けて起立させ、続いて押圧方向に対して傾斜する形状となる筒形状に形成してある。このように先細バーリングに形成した連結部11a4は、ばね部材11aからの突起体11bの抜け止め部材を形成している。接点部11a1,11a2,11a3のそれぞれは、下方に向かうに従って次第に先細となる例えば半球に近似した形状に形成してある。また、この連結部11a4は、突起体11b内にインサート成形によって埋め込まれている。この第2実施形態に係るスイッチ用反転ばね11においては、連結部11a4を中空管状に形成したので、連結部11a4の全周の内側と外側に樹脂を充填することができ、強固に保持させることができる。
【0049】
さらに、同図6の(b)図に示すように、連結部11a4の根元から外側に向かう方向に位置するばね部材11aの上面部分と、突起体11bの下端面との間には、隙間12を形成してある。この隙間12の形成領域は、突起体11bの下端面の径寸法、すなわち突起体11bが押圧力を受けた際に、ばね部材11aと接触する接触領域11b1の大きさに依存している。この接触領域11b1は、上述した図3の(b)図に示すスイッチ用反転ばね6aと一体化された突起体6bにおける接触領域6b1とほぼ同等に設定してある。すなわち、第2実施形態に係るスイッチ用反転ばね11の突起体11bの大きさを、上述した第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6の突起体6bとほぼ同等に設定してある。
【0050】
このように構成される第2実施形態に係るスイッチ用反転ばね11も、上述した図1に示す中央固定接点3及び周辺固定接点4が形成されたスイッチ基板2を備えたスイッチ装置の可動接点として設けることができる。また、図4,5に示した製造方法の一実施形態によって製造することもできる。
【0051】
この第2実施形態に係るスイッチ用反転ばね11も、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様に、突起体11bをばね部材11aに一体的に連結保持させる連結部11a4をばね部材11aに備えるとともに、連結部11a4が、ばね部材11aからの突起体11bの脱落を防ぐ抜け止め部材を形成することから、また、ばね部材11aと突起体11bとの間に隙間12を形成してあることから、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様の作用効果を得ることができる。なお、この第2実施形態に係るスイッチ用反転ばね11の突起体11bの大きさを、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6の突起体6bとほぼ同等に設定してあることから、この第2実施形態に係るスイッチ用反転ばね11を反転させる押圧力、すなわちスイッチ用反転ばね11の作動力を、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6の作動力とほぼ同等にすることができる。
【0052】
[スイッチ用反転ばねの第3実施形態]
図7は本発明に係るスイッチ用反転ばねの第3実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のC−C線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【0053】
この図7に示すスイッチ用反転ばねの第3実施形態を構成するスイッチ用反転ばね13も、上述した第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様に、例えば可動接点から成り、ドーム状に膨出した導電性金属板から成るばね部材13aと、このばね部材13aに外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材、すなわち突起体13bとを備えている。この突起体13bは、例えば合成樹脂より成り、上方に向かうに従って径寸法が次第に小さくなり、縦断面が台形を呈する頭部が切断された円錐形状から成っている。ばね部材13aは、押圧力を受けると反転し、押圧力が解かれることにより自己復元可能となっている。
【0054】
このばね部材13aは、頂部部分の下面側に固定接点に接離する接点部、例えば3つの接点部13a1,13a2,13a3をそれぞれ有するとともに、同図7の(a)(c)図に示すように、平面視で3つの接点部13a1,13a2,13a3にほぼ囲まれる領域内に配置され、当該ばね部材13aと突起体13bとを一体的に連結保持する連結部13a4を有している。この連結部13a4は、突起体13bに与えられる押圧力の方向と交差する方向に起立させるように、ばね部材13aの一部を、例えばバーリング加工によって先細の中空管状に形成してある。すなわち、この連結部13a4を同図7の(b)図に示すように、縦断面の形状が、根元を押圧方向に沿うように起立させ、続いて押圧方向に対して傾斜する形状となる筒形状に形成してある。このように先細バーリングに形成した連結部13a4は、ばね部材13aからの突起体13bの抜け止め部材を形成している。接点部13a1,13a2,13a3のそれぞれは、下方に向かうに従って次第に先細となる例えば半球に近似した形状に形成してある。また、この連結部13a4は、突起体13b内にインサート成形によって埋め込まれている。
【0055】
さらに、同図7の(b)図に示すように、連結部13a4の根元から外側に向かう方向に位置するばね部材13aの上面部分と、突起体13bの下端面との間には、わずかながら隙間を形成してある。この隙間の形成領域は、突起体13bの下端面の径寸法、すなわち突起体13bが押圧力を受けた際に、ばね部材13aと接触する接触領域13b1の大きさに依存している。この接触領域13b1は、上述した図3の(b)図に示す第1実施形態に係るばね部材6aと一体化された突起体6bにおける接触領域6b1よりも小さく設定してある。すなわち、この第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね13の突起体13bの大きさは、上述した第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6の突起体6bに比べて小さく形成してある。
【0056】
このように構成される第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね13も、上述した図1に示す中央固定接点3及び周辺固定接点4が形成されたスイッチ基板2を備えたスイッチ装置の可動接点として設けることができる。また、図4,5に示した製造方法の一実施形態によって製造することもできる。
【0057】
この第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね13も、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様に、突起体13bをばね部材13aに一体的に連結保持させる連結部13a4をばね部材13aに備えるとともに、連結部13a4が、ばね部材13aからの突起体13bの脱落を防ぐ抜け止め部材を形成することから、また、ばね部材13aと突起体13bとの間に隙間を形成してあることから、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様の作用効果を得ることができる。なお、この第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね13の突起体13bの大きさを、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6の突起体6bに比べて小さくしてあることから、この第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね13を反転させる押圧力、すなわちスイッチ用反転ばね13の作動力を、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6の作動力に比べて小さくすることができる。
【0058】
[スイッチ用反転ばねの第4実施形態]
図8は本発明に係るスイッチ用反転ばねの第4実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のD−D線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【0059】
この図8に示すスイッチ用反転ばねの第4実施形態を構成するスイッチ用反転ばね14も、上述した第1実施形態におけるスイッチ用反転ばね6と同様に、例えば可動接点から成り、ドーム状に膨出した導電性金属板から成るばね部材14aと、このばね部材14aに外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材、すなわち突起体14bを備えている。この突起体14bは、例えば合成樹脂より成り、上方に向かうに従って径寸法が次第に小さくなり、縦断面が台形を呈する切断された円錐形状から成っている。ばね部材14aは、押圧力を受けると反転し、押圧力が解かれることにより自己復元可能となっている。
【0060】
このばね部材14aは、頂部部分の下面側に固定接点に接離する接点部、例えば3つの接点部14a1,14a2,14a3をそれぞれ有するとともに、図8の(a)(c)図に示すように、平面視で3つの接点部14a1,14a2,14a3にほぼ囲まれる領域内に配置され、当該ばね部材14aと突起体14bとを一体的に連結保持する連結部14a4を有している。この連結部14a4は、突起体14bに与えられる押圧力の方向と交差する方向に起立させるように、ばね部材14aの一部を、例えばバーリング加工によって先細に形成してある。すなわち、この連結部14a4を同図8の(b)図に示すように、縦断面が、押圧方向に対して傾斜する形状となる中空管状に形成してある。連結部14a4の外周面と、突起体14bの外周面とが連続的な面を形成するように、これらの連結部14a4と突起体14bとを形成してある。このように先細バーリングに形成した連結部14a4は、ばね部材14aからの突起体14bの抜け止め部材を形成している。接点部14a1,14a2,14a3のそれぞれは、下方に向かうに従って次第に先細となる例えば半球に近似した形状に形成してある。また、この連結部14a4は、突起体14b内にインサート成形によって埋め込まれている。
【0061】
この第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14の突起体14bの大きさは、上述した第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね13の突起体13bに比べてさらに小さく形成してある。この第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14は、スイッチ用反転ばね14の反転動作時の押圧力、すなわち反転動作をさせるスイッチ用反転ばね14の作動力が、ばね部材14aの連結部14a4の根元の径寸法等に依存している。
【0062】
このように構成される第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14も、上述した図1に示す中央固定接点3及び周辺固定接点4が形成されたスイッチ基板2を備えたスイッチ装置の可動接点として設けることができる。また、図4,5に示した製造方法の一実施形態によって製造することもできる。
【0063】
この第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14も、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様に、突起体14bをばね部材14aに一体的に連結保持させる連結部14a4をばね部材14aに備えるとともに、ばね部材14aが突起体14bの抜け止め部材を形成する連結部14a4を備えていることから、突起体14bとばね部材14aとの間の密着性を高め、突起体14bをばね部材14aの上に強い保持力で保持させることができる。なお、この第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14の突起体14bの大きさを、第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね13の突起体13bに比べて小さくしてあり、ばね部材14aの反転動作時に、突起体14bの下端部がばね部材14bに接触することがなく、ばね部材14aの反転動作が連結部14a4の根元の径寸法等に依存することから、この第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14を反転させる押圧力、すなわちスイッチ用反転ばね14の作動力を、第3実施形態に係るスイッチ用反転ばね6の作動力よりもさらに小さくすることができる。
【0064】
[スイッチ用反転ばねの第5実施形態]
図9は本発明に係るスイッチ用反転ばねの第5実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のE−E線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【0065】
この図9に示すスイッチ用反転ばねの第5実施形態であるスイッチ用反転ばね15も、上述した第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様に、例えば可動接点から成り、ドーム状に膨出した導電性金属板から成るばね部材15aと、このばね部材15aに外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材、すなわち突起体15bを備えている。この突起体15bは、例えば合成樹脂より成り、上方に向かうに従って径寸法が次第に小さくなる縦断面が台形を頭部が切断された円錐形状から成っている。ばね部材15aは、押圧力を受けると反転し、押圧力が解かれることにより自己復元可能となっている。
【0066】
このばね部材15aは、頂部部分の下面側に固定接点に接離する接点部、例えば3つの接点部15a1,15a2,15a3をそれぞれ有するとともに、図9の(a)(c)図に示すように、平面視で3つの接点部6a1,6a2,6a3にほぼ囲まれる領域内に配置され、当該ばね部材15aと突起体15bとを一体的に連結保持する連結部15a4を有している。この連結部15a4は、突起体15bに与えられる押圧力の方向と交差する方向に上方に向けて起立させるように、ばね部材15aの一部を、先細バーリングに形成してある。すなわち、この連結部15a4を同図9の(b)図に示すように、縦断面が、押圧方向に対して傾斜する形状の中空管状に形成してある。接点部15a1,15a2,15a3のそれぞれは、下方に向かうに従って次第に先細となる例えば半球に近似した形状に形成してある。また、連結部15a4及び突起体15bの径方向にあっては、連結部15a4内に突起体15bが位置するように、突起体15bを連結部15a4に埋め込み形成してある。
【0067】
この第5実施形態に係るスイッチ用反転ばね15の突起体15bの大きさを、上述した第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14の突起体14bに比べてさらに小さく形成してある。この第4実施形態も、スイッチ用反転ばね15の反転動作時の押圧力、すなわち反転動作をさせるスイッチ用反転ばね15の作動力が、ばね部材15aの連結部15a4の根元の径寸法等に依存している。
【0068】
このように構成される第5実施形態に係るスイッチ用反転ばね15も、上述した図1に示す中央固定接点3及び周辺固定接点4が形成されたスイッチ基板2を備えたスイッチ装置の可動接点として設けることができる。また、図4,5に示した製造方法の一実施形態によって製造することもできる。
【0069】
この第5実施形態に係るスイッチ用反転ばね15も、第1実施形態に係るスイッチ用反転ばね6と同様に、突起体15bをばね部材15aに一体的に連結保持させる連結部15a4をばね部材15aに備えていることから、突起体15bとばね部材15aとの間の密着性を高め、突起体15bをばね部材15aの上に強い保持力で保持させることができる。なお、この第5実施形態に係るスイッチ用反転ばね15も、ばね部材15aの反転動作時に、突起体15bの下端部がばね部材15bに接触することがなく、ばね部材15aの反転動作が連結部15a4の根元の径寸法等に依存することから、この第5実施形態に係るスイッチ用反転ばね15を反転させる押圧力、すなわちスイッチ用反転ばね15の作動力を、第4実施形態に係るスイッチ用反転ばね14の作動力と同等に小さくすることができる。
【0070】
[他の実施形態]
上記各実施形態に係るスイッチ用反転ばね6等は、ばね部材6a等に設けられる連結部6a4等の該当するものによって保持される突起体6b等が、合成樹脂から成っているが、これらの突起体6b等を、例えば工業用ゴムのような成形後も可撓性を有する材料から成る構成にしてもよい。また、突起体6b等に埋め込まれる連結部6a4等は上方に向けて起立させて形成してあるが、このように埋め込み形成したものに代えて、下方に向けて接点部と干渉しないように形成するようにしてもよい。
【0071】
また、上記第4,第5実施形態に係るスイッチ用反転ばね14,15は、連結部14a4,15a4を合成樹脂から成る合成樹脂に埋め込み形成してあるが、このように埋め込み形成したものとせずに、連結部14a,15aのそれぞれに、合成樹脂を圧入して突起体14b,15bを形成するようにしてもよい。
【0072】
また、各実施形態に係るスイッチ用反転ばね6等の突起体6b等を工業用ゴムなどの可撓性を有する材料によって形成するとともに、このゴム内にばね部材6a等の連結部6a4等を埋め込むようにしてもよい。また、第4,第5実施形態に係るスイッチ用反転ばね14,15の突起体14b,15bを、連結部14b,15b内に圧入させた工業用ゴムなどの可撓性を有する材料によって形成するようにしてもよい。
【0073】
また、上記各実施形態に係るスイッチ用反転ばね6等は、可動接点を構成するばね部材6a等にそれぞれ3つの先細状の接点部6a1,6a2,6a3等を設けてあるが、このような先細状の接点部6a1,6a2,6a3等に代えて、連結部6a4等の一部を露出させ、その露出部分が中央固定接点3に接離可能となる形状に連結部6a4等を形成し、これらの連結部6a4等の上述した露出部分を接点部とする構成にしてもよい。また、連結部6a4等に突起を形成し、これらの連結部6a4等の突起が中央固定接点3に複数箇所で接離可能な形状にこれらの連結部6a4等を形成し、これらの突起を接点部とする多点接触構造にしてもよい。
【0074】
また、上記各実施形態に係るスイッチ用反転ばね6等のばね部材6a等は、可動接点を兼ねたものから成っているが、これらのばね部材6a等を、可動接点を兼ねないばね部材とし、これらのばね部材6a等の反転、復元に応じて中央固定接点3と接離する可動接点を、ばね部材6a等とは別に設けた構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るスイッチ用反転ばねの第1実施形態を有するスイッチ装置の一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1に示すスイッチ装置の一実施形態に備えられるスイッチ基板と、このスイッチ基板に接着され、スイッチ用反転ばねの第1実施形態を保持する粘着シートとを分解して示す斜視図である。
【図3】図1に示すスイッチ装置の一実施形態を構成するスイッチ用反転ばねの第1実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【図4】図3に示すスイッチ用反転ばねの第1実施形態を製造する製造方法の一実施形態を示す図で、(a)図はインサート成形に際してスイッチ用反転ばねの第1実施形態に備えられるばね部材を金型に装着する前の状態を示す側断面図、(b)図はインサート成形に際してスイッチ用反転ばねに備えられるばね部材を金型に装着したときの状態を示す側断面図、(c)図はインサート成形終了後、製造されたスイッチ用反転ばねの第1実施形態を金型から取り出した状態を示す側断面図、(d)図は(c)図のA部拡大図である。
【図5】図3に示すスイッチ用反転ばねの第1実施形態を製造する製造方法の一実施形態において、スイッチ用反転ばねの第1実施形態が連続的に成形される状態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は側断面図である。
【図6】本発明に係るスイッチ用反転ばねの第2実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【図7】本発明に係るスイッチ用反転ばねの第3実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のC−C線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【図8】本発明に係るスイッチ用反転ばねの第4実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のD−D線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【図9】本発明に係るスイッチ用反転ばねの第5実施形態を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のE−E線に沿って切断した側断面図、(c)図は裏面図である。
【符号の説明】
【0076】
2 スイッチ基板
3 中央固定接点
4 周辺固定接点
5 粘着シート
6 スイッチ用反転ばね
6a ばね部材
6a1 接点部
6a2 接点部
6a3 接点部
6a4 連結部
6b 突起体(圧伝達部材)
9 隙間
11 スイッチ用反転ばね
11a ばね部材
11a1 接点部
11a2 接点部
11a3 接点部
11a4 連結部
11b 突起体(圧伝達部材)
12 隙間
13 スイッチ用反転ばね
13a ばね部材
13a1 接点部
13a2 接点部
13a3 接点部
13a4 連結部
13b 突起体(圧伝達部材)
14 スイッチ用反転ばね
14a ばね部材
14a1 接点部
14a2 接点部
14a3 接点部
14a4 連結部
14b 突起体(圧伝達部材)
15 スイッチ用反転ばね
15a ばね部材
15a1 接点部
15a2 接点部
15a3 接点部
15a4 連結部
15b 突起体(圧伝達部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧力を受けて反転し、押圧力が解かれることにより自己復元が可能なばね部材と、このばね部材に外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材とを備え、上記ばね部材の反転に伴ってスイッチの切り換えを行うためのスイッチ用反転ばねであって、上記ばね部材は、このばね部材と上記圧伝達部材とを一体的に連結保持する連結部を有することを特徴とするスイッチ用反転ばね。
【請求項2】
上記請求項1記載のスイッチ用反転ばねにおいて、
上記圧伝達部材は、成形材料から成り、この圧伝達部材内に上記ばね部材の上記連結部を埋め込み形成したことを特徴とするスイッチ用反転ばね。
【請求項3】
上記請求項1記載のスイッチ用反転ばねにおいて、
上記連結部は、上記ばね部材の一部を、上記押圧方向と交差する方向に起立させて成り、上記ばね部材からの上記圧伝達部材の抜け止め部材を形成することを特徴とするスイッチ用反転ばね。
【請求項4】
上記請求項1記載のスイッチ用反転ばねにおいて、
上記連結部の根元から外側に向かう方向に位置する上記ばね部材の部分と、上記圧伝達部材との間に隙間を形成したことを特徴とするスイッチ用反転ばね。
【請求項5】
上記請求項1記載のスイッチ用反転ばねにおいて、
上記ばね部材は、上記固定接点に接離可能な接点部を有する可動接点から成ることを特徴とするスイッチ用反転ばね。
【請求項6】
上記請求項1記載のスイッチ用反転ばねにおいて、
上記ばね部材は、粘着シートに保持されることを特徴とするスイッチ用反転ばね。
【請求項7】
固定接点、及びこの固定接点に接離可能な可動接点と、
押圧力を受けて反転して上記可動接点を上記固定接点に接触させてスイッチオンとし、押圧力が解かれることにより自己復元し、これによって上記可動接点を上記固定接点から離隔させてスイッチオフとするばね部材、及びこのばね部材に外部からの押圧力を伝達する圧伝達部材を含むスイッチ用反転ばねとを備えたスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置において、
上記スイッチ用反転ばねの上記ばね部材は、このばね部材と上記圧伝達部材とを一体的に連結保持する連結部を有することを特徴とするスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置。
【請求項8】
上記請求項7記載のスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置において、
上記スイッチ用反転ばねの上記ばね部材は、上記可動接点を兼ねることを特徴とするスイッチ用反転ばねを有するスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−152119(P2009−152119A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330306(P2007−330306)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】