説明

スイッチ装置

【課題】 簡単な構成でクリック感を創出でき、安価で操作性の良い2段スイッチ構造を有するスイッチ装置を提供する。
【解決手段】 共通固定接点2及び個別固定接点3は一部の平板面及び側端面が基台1の底面から段差を持って突出した状態で配設され、スライド部材4のスライド方向と交差する方向に共通固定接点2と個別固定接点3とを互いの側端面を対向させて配置すると共に、スライド部材4のスライド方向に個別固定接点3を対向させて配置し、スライド部材4の移動に伴って球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面間に当接して1段目の信号が出力され、さらなるスライド部材の移動に伴って球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの平板面上に乗り上げて第2の個別固定接点3bと接触することによりクリック感を伴って2段目の信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作用スイッチとして使用される2段スイッチ構造を有するスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2段スイッチ構造のスイッチ装置としては、複数の固定接点が配設された絶縁板と、これら固定接点と摺接する可動接片と、この可動接点を保持し摺動させる操作子と、これらを覆うカバー及びケースとによって構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9〜図11は、該スイッチ装置の平面図を示したものであり、図9は可動接片が中立位置Nの状態、図10は可動接片が第1位置MDの状態、図11は可動接点が第2位置ADの状態を示す。図では操作子、カバー及びケースの図示を省略している。図において、絶縁板31はその上面に共通固定接点11、第1固定接点12,13及び第2固定接点14,15を設けている。
【0004】
そして、絶縁板31には図示しないノブの操作位置に対応した中立位置N、第1位置MU,MD及び第2位置AU,ADと、可動接片32の移動範囲に対応した第1領域Z1及び第2領域Z2とを設定している。詳述すると、中立位置Nとはノブの位置が中立位置である際の可動接片32の位置であり、第1位置MU,MDとはノブの操作位置が1段目の操作位置である際の可動接片32の位置であり、第2位置AU,ADとはノブの操作位置が1段目からさらに操作された2段目の操作位置である際の可動接片2の位置である。また第1領域Z1とは共通固定接点11と第1固定接点12,13とが並んだ領域であり、第2領域Z2とは共通固定接点11と第2固定接点14,15とが並んだ領域である。
【0005】
可動接片32は、前記絶縁板31に設定した中立位置N、第1位置MU,MD及び第2位置AU,AD間において移動自在であり、かつ前記絶縁板31の第1領域Z1を摺動する第1接片21と、第2領域Z2を摺動する第2接片22とを有している。
【0006】
次に、上記したものの作動を説明する。まず、図9はノブを操作しない状態であり、可動接片32の移動位置が中立位置Nに有る状態を示している。この状態では、可動接片32はいずれの固定接点11〜15にも接触していないので、2段スイッチ装置は信号を出力しない。
【0007】
また、図10はノブを1段目の操作位置に操作した状態であり、可動接片32が中立位置Nから第1位置MDに移動した状態を示している。この状態では、可動接片32が共通固定接点11と第1固定接点12との両方に接触し、両固定接点11,12間を橋絡する。これにより、2段スイッチ装置は1段目の信号を入力するものとなる。
【0008】
また、図11はノブを2段目の操作位置に操作した状態であり、可動接片32が中立位置Nから第2位置ADに移動した状態を示している。この状態では、可動接片32が共通固定接点11と第2固定接点14との両方に接触し、両固定接点11,14間を橋絡する。これにより、2段スイッチ装置は2段目の信号を入力するものとなる。
【0009】
【特許文献1】特許第3628423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来のスイッチ装置においては、可動接片が自身の撓みによる弾圧力によって、それぞれの固定接点との摺動時の接点圧を発生させるため、1段目と2段目の操作感触を異ならせることができず、操作性が悪く、また、クリックばねなどの別部品を追加すると部品点数が増え、安価にできないという問題があった。
【0011】
従って、本発明は上記した問題点を解決し、簡単な構成でクリック感を創出でき、安価で操作性の良い2段スイッチ構造を有するスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明では第1の解決手段として、共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点が配設された基台と、この基台にスライド移動可能に収容されたスライド部材と、このスライド部材を一方向へ付勢する弾性部材と、前記スライド部材の移動に伴い前記共通固定接点及び前記第1と第2の個別固定接点と接触する球状可動接点とを備え、前記共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点は一部の平板面及び側端面が前記基台の底面から段差を持って突出した状態で配設され、前記スライド部材のスライド方向と交差する方向に所定間隔を開けて前記共通固定接点と第1、第2の個別固定接点とを互いの側端面を対向させて配置すると共に、前記スライド部材のスライド方向に前記第1の個別固定接点と第2の個別固定接点とを所定間隔を開けて対向させて配置し、前記スライド部材の移動に伴って前記球状可動接点が前記共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面間に当接して1段目の信号が出力され、さらなる前記スライド部材の移動に伴って前記球状可動接点が前記共通固定接点と第1の個別固定接点の平板面上に乗り上げて前記第2の個別固定接点と接触することによりクリック感を伴って2段目の信号を出力する構成とした。
【0013】
また、第2の解決手段として、前記基台には、底面から上方に拡開した傾斜面を有する案内溝が設けられ、この案内溝の底面から一段高い位置の対向する内側面に前記共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点を突出させ、前記共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面で1段目の接点部を形成し、前記共通固定接点と第2の個別固定接点の平板面で2段目の接点部を形成した構成とした。
また、第3の解決手段として、前記球状可動接点と当接する前記共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面に、前記第2の個別固定接点が配設された方向に向かって漸次対向する間隔が狭まるような傾斜部を形成した構成とした。
また、第4の解決手段として、前記共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点は、前記球状可動接点が乗り上げる平板面側を打ち抜き加工時の抜き表面とした構成とした。
また、第5の解決手段として、前記スライド部材に、前記弾性部材の一端側と当接し該弾性部材の付勢方向に移動可能な駆動板を設けると共に、前記球状可動接点を前記スライド部材と前記駆動板との間に挟持して前記スライド部材に従動可能に保持し、前記弾性部材の弾圧力によって前記球状可動接点を前記基台の底面方向に付勢する構成とした。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明のスイッチ装置は、共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点が配設された基台と、基台にスライド移動可能に収容されたスライド部材と、スライド部材を一方向へ付勢する弾性部材と、スライド部材の移動に伴い共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点と接触する球状可動接点とを備え、共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点は一部の平板面及び側端面が基台の底面から段差を持って突出した状態で配設され、スライド部材のスライド方向と交差する方向に所定間隔を開けて共通固定接点と第1、第2の個別固定接点とを互いの側端面を対向させて配置すると共に、スライド部材のスライド方向に第1の個別固定接点と第2の個別固定接点とを所定間隔を開けて対向させて配置し、スライド部材の移動に伴って球状可動接点が共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面間に当接して1段目の信号が出力され、さらなるスライド部材の移動に伴って球状可動接点が共通固定接点と第1の個別固定接点の平板面上に乗り上げて第2の個別固定接点と接触することによりクリック感を伴って2段目の信号を出力することから、共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点の平板面及び側端面を基台の底面から段差を持って突出した状態で形成したので、1段目と2段目の接点部の切り換え時に接点段差を簡単に形成でき、クリック感を伴った2段スイッチを容易に形成できる。
【0015】
また、基台には、底面から上方に拡開した傾斜面を有する案内溝が設けられ、案内溝の底面から一段高い位置の対向する内側面に共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点を突出させ、共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面で1段目の接点部を形成し、共通固定接点と第2の個別固定接点の平板面で2段目の接点部を形成したことから、固定接点を構成する金属板の側端面と平板面とで、1段目と2段目の接点部を形成すると共に、クリック用の段差部を形成したので、クリック用として接点用の金属板を複雑に折り曲げる必要がなく、構造が簡易となり簡単に加工ができる。
また、球状可動接点と当接する共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面に、第2の個別固定接点が配設された方向に向かって漸次対向する間隔が狭まるような傾斜部を形成したことから、球状可動接点が傾斜部に沿って平板面上に乗り上がる方向に摺接するので、共通固定接点及び第1の個別固定接点と球状可動接点との接触を確実に行える。
また、共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点は、球状可動接点が乗り上げる平板面側を打ち抜き加工時の抜き表面としたことから、剪断面の返り(バリ)の影響を受けないので滑らかな摺動面が得られる。
また、スライド部材に、弾性部材の一端側と当接し弾性部材の付勢方向に移動可能な駆動板を設けると共に、球状可動接点をスライド部材と駆動板との間に挟持してスライド部材に従動可能に保持し、弾性部材の弾圧力によって球状可動接点を基台の底面方向に付勢することから、小型の球状可動接点でも接点圧を増加させることができ、1段目と2段目の接点切り換えを確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図8に示す。図1は本発明のスイッチ装置を示す全体斜視図、図2は本発明のスイッチ装置を示す分解斜視図、図3は本発明のスイッチ装置のカバーを外した状態を示す平面図、図4は本発明のスイッチ装置を示す断面図、図5は本発明のスイッチ装置の基台部分を示す斜視図、図6は本発明のスイッチ装置の接点部の配置関係を示す平面図、図7は本発明のスイッチ装置の1段目オン状態を示す断面図、図8は本発明のスイッチ装置の2段目オン状態を示す断面図である。
【0017】
図1及び図2において、本発明のスイッチ装置は、複数の固定接点が配設された基台1と、固定接点上を摺接する球状可動接点6と、球状可動接点6を保持し弾性部材7により一方向へ付勢され、基台1にスライド移動可能に収容されたスライド部材4及び駆動板5と、基台1の開口部の上面側を覆うカバー8とから主に構成されている。
【0018】
図2及び図5に示すように、基台1は、合成樹脂等の絶縁材で形成され、上面及び一側面が開口されて内部に収納部1a、側面に開口部1bを有する略矩形状の箱型に形成されている。この基台1の開口部1bが設けられた一側面には、開口部1bを挟んで両側に、カバー8と係合する係合突起1cが設けられている。また、開口部1bが設けられた側面とは交差する方向に対向する側面にも、同じくカバー8と係合する係合突起1dが設けられている。
【0019】
また、収納部1aの内底面両側には、スライド部材4のスライド移動方向に沿って延びる一対の凹溝部1e、1eが設けられている。この一対の凹溝部1e、1eに、弾性部材7が収容されて、この弾性部材7の一端側が駆動板5に当接され、他端側が収納部1aの内側面に当接されて配設されている。また、収納部1aの内底面中央には、スライド部材4のスライド移動方向に沿って延びる凹状で細溝状の案内溝1fが設けられており、この案内溝1fの両側には、一対の傾斜面1g、1gが設けられている。また、この一対の傾斜面1g、1gは、案内溝1fの底面から上方に向かって、互いに拡開する方向に弧面状または斜面状に形成されている(本実施例では弧面状)。
【0020】
また、基部1の開口部1bとは反対側に位置する案内溝1fの底面から一段高い位置の対向する内側面には、導電性の金属板からなる共通固定接点2、第1の固定接点3a、第2の固定接点3bがそれぞれ配設されている。これら共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bは、一部の平板面及び側端面が案内溝1fの底面及び内側面から表出して、基台1の底面(案内溝1fの底面)から段差を持って突出した状態で埋設されている。
【0021】
また、スライド部材4のスライド方向と交差する方向に、所定の間隔を開けて、共通固定接点2と第1、第2の個別固定接点3a、3bとが互いの側端面を対向させて配置されており、また、スライド部材4のスライド方向に、第1の個別固定接点3aと第2の個別固定接点3bとが所定の間隔を開けて対向して配置されている。また、共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bの他端側は、それぞれ基台1の側面の外方に導出されて、それぞれ接続端子2b、3d、3eが設けられている。
【0022】
そして、共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面で1段目の接点部を形成し、共通固定接点2と第2の個別固定接点3bの平板面で2段目の接点部を形成している。そして、スイッチ装置の操作時に、スライド部材4の移動に伴って、球状可動接点6が案内溝1fの傾斜面1g、1g間に案内されて従動され、共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面間に当接して、1段目の信号が出力され1段目スイッチがオン状態となる。そして、この状態から、さらに押圧されてスライド部材4が移動するのに伴って、球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面間から共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの平板面上に乗り上げて、第2の個別固定接点3bと接触することにより、2段目の信号が出力され2段目スイッチがオン状態となる。
【0023】
この時、球状可動接点6が、共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面間に当接してから、共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの平板面上に乗り上げて第2の個別固定接点3bと接触する過程において、球状可動接点6が案内溝1fの底面から一段高い位置にある共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの平板面上に乗り上げることにより、スライド部材4のスライド操作時にクリック感触を付与でき、良好な操作感触が得られるものとなっている。
【0024】
このように、案内溝1fの底面から一段高い位置の対向する内側面に共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bを突出させて、共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面で1段目の接点部を形成し、共通固定接点2と第2の個別固定接点3bの平板面で2段目の接点部を形成するようにしているので、固定接点を構成する金属板の側端面と平板面とで、1段目と2段目の接点部が形成できると共に、クリック用の段差部が形成できるので、別途、クリック用の段差部を得るために接点用の金属板を複雑に折り曲げる必要がなく、平板状の金属板をそのまま使用することができ、構造が簡易で簡単に加工が行える。
【0025】
また、球状可動接点6と当接する共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面には、スライド部材4のスライド方向で第2の個別固定接点3bが配設された方向に向かって漸次対向する間隔が狭まるような傾斜部2a及び3cが形成されている。そして、この傾斜部2a、3cを、共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面に形成することにより、球状可動接点6がこの傾斜部2a、3cに沿って側端面から平板面上に乗り上がる方向に摺接するようになるので、共通固定接点2及び第1の個別固定接点3aと球状可動接点6との接触を確実に行えるものとなる。
【0026】
また、本実施例においては、共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bは、金属板を打ち抜き加工して形成する過程において、球状可動接点6が乗り上げる平板面側が打ち抜き加工時の抜き表面となるように形成されている。そして、このために、球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面に形成された傾斜部2a、3cに沿って、側端面から平板面上に乗り上がる方向に摺接する時に、剪断面の返り(バリ)の影響を受けないので滑らかな摺動面が得られるものとなっている。
【0027】
スライド部材4は、同じく合成樹脂等の絶縁材で形成され、基台1の収納部1aにスライド移動可能に収容された駆動部4aと、この駆動部4aの前方に設けられ、基台1の開口部1bから突出された矩形状の操作部4bとを有している。また、駆動部4aは、両側面に設けられ、駆動板5の両翼部5bと係合する一対の摺動腕部4c、4cと、これら摺動腕部4c、4cより内側に設けられ、球状可動接点部材6を保持する接点保持部4dと、接点保持部4dの上面側に突出され、駆動板5をスライド部材4のスライド移動方向に移動可能に係合する略矩形状の係合凸部4eとを有している。
【0028】
また、接点保持部4dの後方側中央には、可動接点部材6を収容する半円状の保持孔部4fが設けられており、この保持孔部4fの内周面には、基台1の収納部1aの内底面側に向かって拡開する傾斜面4gが設けられている。そして、球状可動接点部材6が接点保持部4dの保持孔部4fと駆動板5とによって挟持された時、この傾斜面4gにより球状可動接点部材6を基台1の底面方向に付勢させるものとなっている。
【0029】
駆動板5は、導電性の金属板を打ち抜き折り曲げることにより形成されており、平板状で中央に両翼部5b、5bを有する矩形状の基板部5aと、この基板部5aの略中央に設けられた矩形状の係合孔5cと、基板部5aの両翼部5b、5bの先端部を下方に直角に折り曲げて対向して形成された一対のばね当接部5d、5dと、基板部5aの他端側に下方に折り曲げられて形成された接点押圧部5eとを有している。
【0030】
この駆動板5は、スライド部材4の駆動部4aの上面側に載置され、基板部5aに設けられた矩形状の係合孔5cがスライド部材4の駆動部4aに設けられた矩形状の係合凸部4eに係合されており、スライド部材4のスライド移動に従動して駆動板5がスライド部材4のスライド移動方向に移動可能となっている。この場合、係合孔5cは係合凸部4eに比べてスライド方向の寸法がやや大きく形成されており、駆動板5がスライド部材4の駆動部4a上を独自にスライド移動可能となるように遊嵌された状態となっている。
【0031】
また、この時、駆動板5の両翼部5b、5bに設けられた一対のばね当接部5d、5dが、スライド部材4の駆動部4aの両側面に設けられた一対の摺動腕部4c、4cの先端面に対向あるいは当接した状態で配置され、また、他端側に設けられた接点押圧部5eが、接点保持部4fの後方中央に設けられた保持孔部4fの内周面と対向した状態で配置されている。
【0032】
球状可動接点部材6は、導電性の金属材で球状に形成されている。この球状可動接点部材6は、自身では弾性を有しておらず、従来の可動接片が自身の撓みによる弾圧力によって摺動時の接点圧を生起させているのに対して、球状可動接点部材6自身の撓みで接点圧を生起させる必要がないため、金属球等で簡単に形成できるので、小型化が可能となっている。この球状可動接点部材6は、駆動板5の接点押圧部5eとスライド部材4の保持孔部4fの内周面に設けられた傾斜面4gとの間に挟持されてスライド部材4に従動可能に保持されるものとなっているので、球状可動接点部材6を球状に形成してもスライド移動時に安定して導通状態を維持することができる。
【0033】
弾性部材7は、導電性の金属線材からなるコイルばねで形成されている。この弾性部材7は、一端側がスライド部材4の駆動部4aの上面側に載置された駆動板5のばね当接部5dに当接され、他端側が基台1の収納部1aの内側面に当接された状態で、基台1の収納部1aの内底面両側に形成された一対の凹溝部1e、1e内に配設されている。また、この弾性部材7で、収納部1a内にスライド移動可能に収容されたスライド部材4を一方向(図3の右方向)に弾性付勢している。
【0034】
この場合、弾性部材7は、駆動板5の基板部5aの両翼部5b、5bに設けられた一対のばね当接部5d、5dと、基台1の収納部1aの内側面との間に、2個配設されている。すなわち、弾性部材7は、球状可動接点部材6を中心として対向する位置に一対設けられている。そして、このために、複数の弾性部材7によって球状可動接点部材6を弾圧することになるので、大きな接点圧が得られると共に、スイッチ内にこれらの弾性部材7をバランス良く配置できることから、球状可動接点部材6を確実に基台1の底面方向に付勢させることができるものとなる。
【0035】
また、図3、図4に示すように、弾性部材7が収納部1aに組み込まれた状態では、弾性部材7の一端側が駆動板5のばね当接部5dに当接され、駆動板5がスライド部材4と共にスライド部材4の操作部4bが突出する方向へ付勢されており、この時、駆動板5の接点押圧部5eと、スライド部材4の保持孔部4fの内周面に設けられた傾斜面4gとの間に挟持された球状可動接点部材6は、弾性部材7の弾圧力による接点押圧部5eの押圧力(図4の左方向)によって、保持孔部4fの傾斜面4gに押圧され、この傾斜面4gに沿って収納部1aの内底面側(図4の下方向)へ弾圧されている。
【0036】
このように、球状可動接点部材6を、弾性部材7の弾圧力により駆動板5の一端側とスライド部材4との間に挟持し、この球状可動接点部材6を挟持するスライド部材4の当接面に傾斜面4gを設けると共に、この傾斜面4gにより球状可動接点部材6を弾性部材7の弾圧力によって球状可動接点6を基台1の底面方向に付勢させるようにしたので、小型の球状可動接点6でも接点圧を増加させることができ、1段目と2段目の接点切り換えを確実に行うことができる。
【0037】
また、収納部1aの内底面には、スライド部材4のスライド移動方向に沿って延びる案内溝1fを設け、この案内溝1fの両側には、球状可動接点部材6を摺動案内する一対の傾斜部1g、1gが設けられており、これら一対の傾斜部1g、1gに連設して案内溝1fの底面から一段高い位置の対向する内側面に、共通固定接点2、第1の個別固定接点3a、第2の個別固定接点3bを突出させて形成し、この一対の傾斜部1g、1g上を球状可動接点部材6が摺動するものとなっており、球状可動接点部材6が順次、第1の個別固定接点3a及び第2の個別固定接点3bと摺接することから、球状の可動接点部材6を確実に接触させることができるものとなっている。
【0038】
カバー8は、平板状の金属板からなり、略矩形状の蓋部8aと、前方側の対向する両側部に下方へ屈曲して設けられた一対の第1脚部8b、8bと、後側部の両端側に下方へ屈曲して設けられた一対の第2脚部8c、8cとを有している。また、第1脚部8b、8bには、L字状の係止爪8d、8dが設けられ、これら係止爪8d、8dが基台1の開口部1b側の一側面に設けられた一対の係合突起1c、1cと係合し、また、第2脚部8c、8cには、U字状の係止桟8e、8eが設けられ、これら係止桟8e、8eが開口部1bが設けられた側面とは交差する方向の対向する側面に設けられた一対の係合突起1d、1dと係合することによりカバー8が基台1の収納部1aの上面側に装着されている。
【0039】
次に、図4乃至図8を用いて本発明のスイッチ装置の動作を説明する。
まず、図4に示す初期状態では、スライド部材4は弾性部材7の弾圧力により駆動板5を介して図示左方向へ付勢されている。この時、球状可動接点部材6は、弾性部材7の弾圧力により駆動板5を介してスライド部材4の傾斜面4gに押圧されて下方に付勢され、接点圧を生起した状態で収納部1aの内底面に形成された案内溝1fの両傾斜面1g、1g上に弾圧されている。この状態では、球状可動接点部材6は、共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bとは離間しておりスイッチはオフ状態となっている(図6参照)。
【0040】
次に、図7に示すようにスライド部材4を図示右方向へ押圧操作すると、弾性部材7の付勢力に抗してスライド部材4及び駆動板5と球状可動接点部材6が右方向に移動し、球状可動接点部材6が案内溝1fの傾斜面1g、1g上を摺動して、図5に示す案内溝1fの底面及び内側面から表出された共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面の前端側に接触して、共通固定接点2と第1の個別可動接点3aが球状可動接点部材6を介して電気的に導通され1段目スイッチがオン状態となる。
この時、球状可動接点部材6は、スライド部材4の押圧操作に伴い圧縮された弾性部材7の更に加圧された弾圧力により共通固定接点2と第1の個別固定接点3aに弾圧されるので、確実に安定した接点圧が得られるものとなる。
【0041】
次に、この状態から、図8に示すように、更にスライド部材4を図示右方向に押圧操作すると、更に弾性部材7の付勢力に抗してスライド部材4及び駆動板5と球状可動接点部材6が右方向に移動し、球状可動接点部材6が案内溝1fの共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面に設けられた傾斜部2a及び3cに沿って側端面から平板面上に乗り上げて、球状可動接点部材6が図5で右側に示す第2の個別固定接点3bと接触して、第2の個別可動接点3bと共通個別固定接点2が球状可動接点部材6を介して電気的に導通され2段目スイッチがオン状態となる。
この時、球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面ら平板面上に乗り上げて平板面上を摺動する過程において、球状可動接点部材6が段差を乗り越える時にクリック感触が生起されるものとなる。
【0042】
尚、球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面ら平板面上に乗り上げる際に、球状可動接点部材6が案内溝1fの傾斜面1g、1g上を摺動して、図5に示す案内溝1fの底面及び内側面から表出された共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面の前端側に当接する点(位置)は、球状可動接点6の中心点の位置よりも下側の位置でぶつかるように設定されている。このため、乗り越えが容易に行われると共に、良好なクリック感触が得られるものとなっている。
【0043】
また、この時、球状の可動接点部材6は、段差部により高さが変わるため、スライド部材4の傾斜面4gに沿って上方へ移動することになるが、駆動板5はスライド部材4の駆動部4a上を独自にスライド移動可能に遊嵌されているため、球状可動接点部材6を押圧している駆動板5の接点押圧部5eが、スライド部材4のスライド移動方向(図8で右側)へ移動することにより、球状可動接点部材6は上方への移動が可能となっている。
また、球状可動接点部材6は、スライド部材4の押圧操作に伴い圧縮された弾性部材7の更に加圧された弾圧力により共通固定接点2と第2の個別固定接点3bに弾圧されるので、更に、確実に安定した接点圧が得られるものとなる。
【0044】
尚、本実施例では、共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bは、一部の平板面及び側端面が案内溝1fの底面及び内側面から表出して、基台1の底面(案内溝1fの底面)から段差を持って平板面が平面状に突出した状態で埋設されている構成としたが、これに限らず、共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bの平板面を基台1の底面に直交する方向に立てて配置して、側端面上を球状可動接点6が摺動するようにしても良い。
【0045】
上記した本発明の実施例によれば、共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bは一部の平板面及び側端面が基台1の底面から段差を持って突出した状態で配設され、スライド部材4のスライド方向と交差する方向に所定間隔を開けて共通固定接点2と第1、第2の個別固定接点3a、3bとを互いの側端面を対向させて配置すると共に、スライド部材4のスライド方向に第1の個別固定接点3aと第2の個別固定接点3bとを所定間隔を開けて対向させて配置し、スライド部材4の移動に伴って球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの側端面間に当接して1段目の信号が出力され、さらなるスライド部材4の移動に伴って球状可動接点6が共通固定接点2と第1の個別固定接点3aの平板面上に乗り上げて第2の個別固定接点3bと接触することによりクリック感を伴って2段目の信号を出力する構成となっており、共通固定接点2及び第1と第2の個別固定接点3a、3bの平板面及び側端面を基台1の底面から段差を持って突出した状態で形成したので、1段目と2段目の接点部の切り換え時に接点段差を簡単に形成でき、クリック感を伴った2段スイッチを容易に形成できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のスイッチ装置を示す全体斜視図である。
【図2】本発明のスイッチ装置を示す分解斜視図である。
【図3】本発明のスイッチ装置のカバーを外した状態を示す平面図である。
【図4】本発明のスイッチ装置を示す断面図である。
【図5】本発明のスイッチ装置の基台部分を示す斜視図である。
【図6】本発明のスイッチ装置の接点部の配置関係を示す平面図である。
【図7】本発明のスイッチ装置の1段目オン状態を示す断面図である。
【図8】本発明のスイッチ装置の2段目オン状態を示す断面図である。
【図9】従来のスイッチ装置の可動接片が中立位置Nの状態を示す平面図である。
【図10】従来のスイッチ装置の可動接片が第1位置MDの状態を示す平面図である。
【図11】従来のスイッチ装置の可動接点が第2位置ADの状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1:基台
1a:収納部
1b:開口部
1c:係合突起
1d:係合突起
1e:凹溝部
1f:案内溝
1g:傾斜面
2:共通固定接点
2a:傾斜部
2b:接続端子
3:個別固定接点
3a:第1個別固定接点
3b:第2個別固定接点
3c:傾斜部
3d:接続端子
3e:接続端子
4:スライド部材
4a:駆動部
4b:操作部
4c:摺動腕部
4d:接点保持部
4e:係合凸部
4f:保持孔部
4g:傾斜面
5:駆動板
5a:基板部
5b:翼部
5c:係合孔
5d:ばね当接部
5e:接点押圧部
6:球状可動接点部材
7:弾性部材
8:カバー
8a:蓋部
8b:第1脚部
8c:第2脚部
8d:係止爪
8e:係止桟

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点が配設された基台と、この基台にスライド移動可能に収容されたスライド部材と、このスライド部材を一方向へ付勢する弾性部材と、前記スライド部材の移動に伴い前記共通固定接点及び前記第1と第2の個別固定接点と接触する球状可動接点とを備え、前記共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点は一部の平板面及び側端面が前記基台の底面から段差を持って突出した状態で配設され、前記スライド部材のスライド方向と交差する方向に所定間隔を開けて前記共通固定接点と第1、第2の個別固定接点とを互いの側端面を対向させて配置すると共に、前記スライド部材のスライド方向に前記第1の個別固定接点と第2の個別固定接点とを所定間隔を開けて対向させて配置し、前記スライド部材の移動に伴って前記球状可動接点が前記共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面間に当接して1段目の信号が出力され、さらなる前記スライド部材の移動に伴って前記球状可動接点が前記共通固定接点と第1の個別固定接点の平板面上に乗り上げて前記第2の個別固定接点と接触することによりクリック感を伴って2段目の信号を出力することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記基台には、底面から上方に拡開した傾斜面を有する案内溝が設けられ、この案内溝の底面から一段高い位置の対向する内側面に前記共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点を突出させ、前記共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面で1段目の接点部を形成し、前記共通固定接点と第2の個別固定接点の平板面で2段目の接点部を形成したことを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記球状可動接点と当接する前記共通固定接点と第1の個別固定接点の側端面に、前記第2の個別固定接点が配設された方向に向かって漸次対向する間隔が狭まるような傾斜部を形成したことを特徴とする請求項2記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記共通固定接点及び第1と第2の個別固定接点は、前記球状可動接点が乗り上げる平板面側を打ち抜き加工時の抜き表面としたことを特徴とする請求項2、又は3記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記スライド部材に、前記弾性部材の一端側と当接し該弾性部材の付勢方向に移動可能な駆動板を設けると共に、前記球状可動接点を前記スライド部材と前記駆動板との間に挟持して前記スライド部材に従動可能に保持し、前記弾性部材の弾圧力によって前記球状可動接点を前記基台の底面方向に付勢することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−280704(P2007−280704A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103891(P2006−103891)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】