説明

スイッチ装置

【課題】操作部を操作するときの節度感を消失することなく電極部の回路基板に対する接続作業性を高めること。
【解決手段】操作ボタン7が押圧操作されることに基づいてばね部23の断面形状Hsecが円弧面状から平面状に弾性的に変形し、ばね部23の断面形状Hsecが変化するときに操作ボタン7の操作力が大きく変動する。このため、使用者が操作ボタン7を操作するときの節度感をばね部23の断面形状Hsecの変化から得ることができるので、タクトスイッチ11に節度感を得るための反発力を持たせる必要がなくなる。従って、脚部4をプリント配線基板1に直接的に半田付けすることに基づいて電極部3をプリント配線基板1に電気的に接続することができるので、電極部3のプリント配線基板1に対する接続作業性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用者の手指が触れたことを検出するための電極部を有するスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記スイッチ装置には、図7に示すように、使用者の手指100が操作部101に触れたことを手指100および電極部102相互間の静電容量の変化として検出する構成のものがある。この構成の場合には電極部102がフィルム状のフレキシブル基板103を介して回路基板104に電気的および機械的に接続されており、使用者が操作部101に手指を触れたまま操作部101を押圧操作したときには操作部101が電極部102と共に下降し、タクトスイッチ105が操作部101によって操作される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記スイッチ装置の場合には操作部101を押圧操作するときの操作力が操作途中で大きく変化する節度感をタクトスイッチ105の反発力によって生成している。このため、電極部102および回路基板104相互間を接続する接続手段として操作部101の操作力に大きな影響を与えないフィルム状のフレキシブル基板103を選定する必要が生じるので、電極部102およびフレキシブル基板103相互間を半田付けした後にフレキシブル基板103を回路基板104に半田付けする手間が必要になる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作部を操作するときの節度感を消失することなく電極部の回路基板に対する接続作業性の向上を図り得るスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスイッチ装置は、回路基板に電気的および機械的に接続された導電性の脚部と、前記脚部に設けられ前記回路基板に隙間を介して対向する導電性の電極部と、使用者が手指で操作するためのものであって前記電極部を覆う非導電性の操作部と、前記脚部に設けられ使用者が前記操作部を操作するときの操作力で弾性変形することに基づいて前記操作部が前記回路基板側へ移動することを許容するばね部と、前記操作部が前記回路基板側へ移動することに基づいて状態が変化するスイッチとを備えたものであり、前記操作部に操作力が加えられたときに前記ばね部のばね定数が第1のばね定数から第1のばね定数とは異なる第2のばね定数に変わるように前記ばね部の断面形状が弾性的に変化するところに特徴を有している。
【発明の効果】
【0006】
使用者が操作部を操作したときにはばね部が弾性変形することに基づいて操作部が回路基板側へ移動し、操作部が回路基板側へ移動することに基づいてスイッチの状態が変化する。この操作部の操作途中でばね部のばね定数が第1のばね定数から第2のばね定数に変わるようにばね部の断面形状が弾性的に変化し、ばね部の断面形状が変化するときに操作部の操作力が大きく変動する。このため、使用者が操作部を操作するときの節度感をばね部の断面形状の変化から得ることができるので、スイッチに節度感を得るための反発力を持たせる必要がなくなる。従って、脚部を回路基板にフィルム状のフレキシブル基板を介することなく直接的に半田付けすることに基づいて電極部を回路基板に電気的に接続することができるので、電極部の回路基板に対する接続作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
【実施例1】
【0008】
プリント配線基板1には、図1に示すように、センサ電極2が搭載されている。このセンサ電極2は導電性の金属板を材料に形成されたものであり、電極部3および脚部4を有している。電極部3はプリント配線基板1に隙間を介して対向する水平な板状をなすものであり、脚部4はプリント配線基板1に対して直交する垂直な板状をなしている。この脚部4の先端部には端子部5が形成されており、端子部5はプリント配線基板1のスルーホール6内に挿入されている。この端子部5は脚部4に比べて幅寸法が小さなピン状をなすものであり、プリント配線基板1に半田付けされることに基づいて機械的に接続されている。このプリント配線基板1には回路パターンが形成されており、端子部5はプリント配線基板1に半田付けされることに基づいてプリント配線基板1の回路パターンに電気的に接続されている。このプリント配線基板1は回路基板に相当するものである。
【0009】
センサ電極2には操作ボタン7が接合されている。この操作ボタン7は非導電性の合成樹脂を材料に形成されたものであり、センサ電極2は操作ボタン7を成形するための成形型内にセンサ電極2を収納した状態で成形型内に溶融樹脂を注入することに基づいて操作ボタン7に一体化されている。この操作ボタン7は操作部8とカバー部9とアーム部10を有している。操作部8は使用者が手指を触れるための水平な板状の部分を称するものであり、センサ電極2の電極部3は操作部8によって覆われている。カバー部9は操作部8の左端部から下方へ垂直に延びる板状の部分を称するものであり、センサ電極2の脚部4はカバー部9によって上半部が覆われている。アーム部10は操作部8の右端部から下方へ垂直に延びる板状の部分を称するものであり、プリント配線基板1にはアーム部10の延長上に位置してタクトスイッチ11が搭載されている。このタクトスイッチ11はスイッチに相当するものである。
【0010】
タクトスイッチ11はゴムを材料に形成されたものであり、ベース部12とホルダ部13とベロー部14を有している。ベース部12はタクトスイッチ11の下端部に位置する円環状の部分を称するものであり、タクトスイッチ11はベース部12をプリント配線基板1に接合することに基づいて固定されている。ホルダ部13はアーム部10の下端面に対向する円柱状の部分を称するものであり、使用者が操作ボタン7の操作部8を押圧操作したときにはセンサ電極2が弾性変形することに基づいて操作ボタン7のアーム部10がホルダ部13を押圧する。ベロー部14はベース部12およびホルダ部13相互間を接続する部分を称するものであり、ホルダ部13からベース部12へ向うに従って直径寸法が大きくなる円筒状をなしている。
【0011】
タクトスイッチ11のホルダ部13にはベロー部14の内部に位置して可動コンタクト15が接合されており、可動コンタクト15には一対の固定コンタクト16が対向配置されている。これら両固定コンタクト16のそれぞれはプリント配線基板1に接合されたものであり、操作ボタン7のアーム部10からタクトスイッチ11のホルダ部13に操作力が作用していないときには可動コンタクト15がベロー部14の弾性力で両固定コンタクト16のそれぞれから離間した状態に保持されている。このタクトスイッチ11のオフ状態で操作ボタン7の操作部8に操作力が作用したときには操作ボタン7のアーム部10がタクトスイッチ11のホルダ部13を押圧し、タクトスイッチ11のベロー部14が弾性変形することに連動して可動コンタクト15が下降し、可動コンタクト15が両固定コンタクト16のそれぞれに接触することに基づいて両固定コンタクト16相互間が可動コンタクト15を介して導通する。このタクトスイッチ11のオン状態で操作ボタン7の操作部8から操作力が除去されたときにはベロー部14が弾性復帰することに連動して可動コンタクト15が上昇し、可動コンタクト15が両固定コンタクト16のそれぞれから離間したオフ状態に復帰する。
【0012】
プリント配線基板1には、図2に示すように、センサ回路17が搭載されている。このセンサ回路17は使用者の手指100が操作ボタン7の操作部8に触れたことを手指100およびセンサ電極2相互間の静電容量の変化として検出するものであり、発振回路18と負荷抵抗19とセンサ電極2と検波回路20とオペアンプ21を有している。発振回路18は一定レベルの高周波信号Voを出力するものであり、発振回路18から出力された高周波信号Voは負荷抵抗19を通して検波回路20に検出信号Vcとして与えられる。この検波回路20は検出信号Vcの検波および平滑のそれぞれを行うものであり、ダイオードおよびコンデンサを有している。この検波回路20から出力された検出信号Vcはオペアンプ21に与えられる。このオペアンプ21は検出信号Vcの増幅およびオフセットのそれぞれを行うものであり、オペアンプ21からの出力信号Voutは制御回路に与えられる。
【0013】
センサ回路17にはコンデンサ22がプリント配線基板1の回路パターンを介して接続されている。このコンデンサ22は使用者の手指100およびセンサ電極2の電極部3の双方から形成されるものであり、使用者の手指が操作ボタン7の操作部8に触れているときには発振回路18から発振された高周波信号Voがコンデンサ22のインピーダンスおよび負荷抵抗19の両者に分圧されるので、使用者の手指100が操作ボタン7の操作部8に触れていないときに比べて検出信号Vcのレベルが小さくなる。このため、オペアンプ21を通して出力される出力信号Voutのレベルが小さくなり、使用者の手指100が操作ボタン7の操作部8に触れていないときに比べてレベルが小さな出力信号Voutがオペアンプ21から制御回路に与えられる。
【0014】
制御回路は出力信号Voutのレベルを予め決められた基準レベルVbaseと比較するものであり、「Vout<Vbase」を検出することに基づいて使用者の手指100が操作ボタン7の操作部8に触れていると判定し、「Vout≧Vbase」を検出することに基づいて使用者の手指100が操作ボタン7の操作部8に触れていないと判定する。この制御回路には両固定コンタクト16のそれぞれが接続されており、制御回路は使用者の手指100が操作ボタン7の操作部8に触れていると判定している状態で両固定コンタクト16相互間が導通したことを検出することに基づいてタクトスイッチ11が操作されたことを有効に判定する。
【0015】
センサ電極2の脚部4には、図1に示すように、ばね部23が形成されている。このばね部23は操作ボタン7のカバー部9から露出した湾曲部分を称するものであり、破断線Xvに沿う断面形状Vsecおよび破断線Xhに沿う断面形状Hsecのそれぞれが円弧面状に設定されている。このばね部23は使用者が操作ボタン7の操作部8を押圧操作するときに操作力Fが集中する部分であり、使用者が操作ボタン7の操作部8を押圧するときにはばね部23が弾性変形することに基づいて操作ボタン7が下降し、タクトスイッチ11のホルダ部13が操作ボタン7のアーム部10によって操作される。
【0016】
図3は使用者が操作ボタン7をタクトスイッチ11のオフ状態で下方へ真直ぐに操作するときの操作曲線αを示すものであり、操作曲線αは操作ボタン7の操作力Fおよび操作ボタン7の操作ストロークSの相関関係を示している。この操作曲線αはばね部23が第1のばね定数k1で弾性変形する第1の操作段階S1とばね部23のばね定数が第1のばね定数k1から第2のばね定数k2に切換わる第2の操作段階S2とばね部23が第2のばね定数k2で弾性変形する第3の操作段階S3から構成されている。
【0017】
第1の操作段階S1はばね部23の水平方向の断面形状Hsecが初期の円弧面状に保たれた段階であり、第1の操作段階S1ではばね部23のばね定数が断面形状Hsecに応じた第1のばね定数k1に設定される。この第1の操作段階S1では操作ボタン7の操作ストロークSが大きくなることに比例してばね部23の弾性復元力が大きくなるので、操作ボタン7の操作力Fが大きくなる。
【0018】
第2の操作段階S2はばね部23の水平方向の断面形状Hsecが初期の円弧面状から平面化されるようにばね部23が弾性変形する段階である。この第2の操作段階S2では操作ボタン7の操作力Fが第1の操作段階S1での上限値Fmaxから下降するので、使用者が操作ボタン7を操作する操作感に第1の操作段階S1とは異なる節度感が生成される。タクトスイッチ11の可動コンタクト15は第2の操作段階S2の途中で両固定コンタクト16のそれぞれに接触するものであり、使用者は操作ボタン7を節度感が得られるまで操作することに基づいてタクトスイッチ11をオフ状態からオン状態に切換えることができる。
【0019】
第3の操作段階S3はばね部23の水平方向の断面形状Hsecが変形後の平面状に保たれた段階であり、第3の操作段階S3ではばね部23のばね定数が断面形状Hsecに応じた第2のばね定数k2に設定される。この第3の操作段階S3では操作ボタン7の操作ストロークSが大きくなることに比例してばね部23の弾性復元力が大きくなるので、操作ボタン7の操作力Fが大きくなる。
【0020】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
ばね部23の水平方向の断面形状Hsecを円弧面状および平面状相互間で弾性変形させたので、ばね部23の断面形状Hsecが変化するときに操作ボタン7の操作力Fが大きく変動するようになる。このため、使用者が操作ボタン7を操作するときの節度感をばね部23の断面形状Hsecの変化から得ることができるので、タクトスイッチ11に節度感を得るための反発力を持たせる必要がなくなる。従って、センサ電極2の脚部4をプリント配線基板1にフィルム状のフレキシブル基板103を介することなく直接的に半田付けすることに基づいてセンサ電極2の電極部3をプリント配線基板1に電気的に接続することができるので、電極部3のプリント配線基板1に対する接続作業性が向上する。しかも、ばね部23の断面形状Hsecに応じて操作曲線αを調整することができるので、F−S特性(操作ボタン7の操作力Fおよび操作ストロークS相互間の関係)を設定するときの自由度が向上する。さらに、フレキシブル基板103が不要になるので、部品点数が少なくなる。これと共にフレキシブル基板103が繰返し応力で破断することがなくなるので、機械的な耐久性が向上する。
【実施例2】
【0021】
センサ電極2の電極部3には、図4に示すように、2本の脚部4が形成されており、各脚部4の下端部には端子部5が形成されている。これら各端子部5はプリント配線基板1のスルーホール6内に挿入されたものであり、プリント配線基板1に半田付けされている。センサ電極2の一方の脚部4にはばね部23が形成され、他方の脚部4にはばね部24が形成されている。このばね部24は断面形状Vsecが円弧面状に設定され、断面形状Hsecが平面状に設定されたものであり、ばね部24の断面形状Hsecは操作ボタン7が操作されたときであっても平面状に保たれる。このばね部24は操作ボタン7を操作するときの節度感の生成に寄与しないものであり、操作ボタン7を操作するときの節度感はばね部23の断面形状Hsecが円弧面状から平面状に変化することに基づいて得られる。
【0022】
上記実施例2においては、センサ電極2に3本以上の脚部4を形成しても良い。この場合、1本の脚部4のみに節度感を生成するためのばね部23を形成し、残りの複数の脚部4のそれぞれには節度感の生成に寄与しないばね部24を形成すると良い。
【実施例3】
【0023】
センサ電極2の脚部4には、図5に示すように、水平な支え部25が形成されており、支え部25には端子部5が形成されている。この端子部5はプリント配線基板1のスルーホール6内に挿入されたものであり、支え部25と共にプリント配線基板1に半田付けされている。この支え部25は幅寸法Wsが脚部4の幅寸法Wkに比べて大きく設定されたものであり、脚部4は支え部25がプリント配線基板1に接触することに基づいて起立した正規姿勢に保持されている。
【0024】
上記実施例3においては、センサ電極2にばね部23を有する1本の脚部4およびばね部24を有する1本の脚部4の合計2本を形成し、2本の脚部4のそれぞれに支え部25を形成しても良い。
【実施例4】
【0025】
センサ電極2の脚部4には、図6に示すように、水平な支え部26が形成されている。この支え部26は幅寸法Wsが脚部4の幅寸法Wkに比べて大きく設定されたものであり、脚部4は支え部26がプリント配線基板1に接触することに基づいて起立した正規姿勢に保持されている。この支え部26の両端部のそれぞれには端子部5が形成されている。これら各端子部5はプリント配線基板1のスルーホール6内に挿入されたものであり、プリント配線基板1に半田付けされている。
【0026】
上記実施例4においては、センサ電極2にばね部23を有する1本の脚部4およびばね部24を有する1本の脚部4の合計2本を形成し、2本の脚部4のそれぞれに支え部26を形成しても良い。
【0027】
上記実施例1〜4のそれぞれにおいては、ばね部23の水平方向の断面形状Hsecを三角形状および平面状相互間で弾性変形させても良い。
上記実施例1〜4のそれぞれにおいては、操作ボタン7のアーム部10に可動コンタクト15を直接的に接合し、操作ボタン7が操作されることに基づいて可動コンタクト15をプリント配線基板1の両固定コンタクト16のそれぞれに接触させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例を示す図(aはスイッチ装置を示す断面図、bはばね部を示す断面図)
【図2】センサ回路を示す図
【図3】操作曲線を示す図
【図4】本発明の実施例2を示す図(センサ電極を示す図)
【図5】本発明の実施例3を示す図(センサ電極の接続状態を示す図)
【図6】本発明の実施例4を示す図(センサ電極の接続状態を示す図)
【図7】従来例を示す図(スイッチ装置を示す断面図)
【符号の説明】
【0029】
1はプリント配線基板(回路基板)、3は電極部、4は脚部、8は操作部、11はタクトスイッチ(スイッチ)、23はばね部を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に電気的および機械的に接続された導電性の脚部と、
前記脚部に設けられ、前記回路基板に隙間を介して対向する導電性の電極部と、
使用者が手指で操作するためのものであって前記電極部を覆う非導電性の操作部と、
前記脚部に設けられ、使用者が前記操作部を操作するときの操作力で弾性変形することに基づいて前記操作部が前記回路基板側へ移動することを許容するばね部と、
前記操作部が前記回路基板側へ移動することに基づいて状態が変化するスイッチとを備え、
前記ばね部は、前記操作部に操作力が加えられたときにばね定数が第1のばね定数から第1のばね定数とは異なる第2のばね定数に変わるように断面形状が弾性的に変化するものであることを特徴とするスイッチ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−41560(P2008−41560A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217239(P2006−217239)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】