説明

スキッド・トゥ・ターン飛しょう体及びスキッド・トゥ・ターン飛しょう体のロール制御方法

【課題】要求される旋回性能を低コストにて満足させるスキッド・トゥ・ターン飛しょう体を提供する。
【解決手段】ジンバル機構112をジンバル機構112の優位な回転方向と、機体の優位な旋回方向とが一致するように機体に設置する。また、追跡目標の進行方向が機体の優位な旋回方向と一致するように機体のロールを制御するロール制御装置を備える。操舵翼132の回転軸と第1のジンバル機構112の回転軸とが機体後方から見たときに45°又は0°をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール制御を改善したスキッド・トゥ・ターン飛しょう体に関する。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体の軌道修正量は追跡目標との会合直前に最も大きくなる。よって、シーカの回転角と機体の可動角とは会合直前に最大値となる。シーカの追跡性能と機体の旋回性能がこの最大値を満たすように飛しょう体は設計される。
【0003】
従来のスキッド・トゥ・ターン飛しょう体は会合直前に追跡目標がいかなる方向に旋回しても対処可能であることを前提に設計されていた。しかし、シーカ及び機体は構造上、性能に異方性を生ずるため、全方位についてシーカ性能及び旋回性能が等価となる設計では製造のコスト高となるという問題点がある。
【0004】
この点に関し、シーカを機体軸周りに回転させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、この技術によっては機体の異方性を補償することができないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−213600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、要求される旋回性能を低コストにて満足させるスキッド・トゥ・ターン飛しょう体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、追跡目標を追跡するスキッド・トゥ・ターン飛しょう体であって、複数の操舵翼と、第2のジンバル機構を内側に支持する第1のジンバル機構を有するジンバル機構と、を備え、ジンバル機構は、飛しょう体の優位な旋回方向の回転軸に対して第1のジンバル機構の回転軸が機体後方から見て0°をなすように取り付けられていることを特徴とするスキッド・トゥ・ターン飛しょう体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
安価なジンバル機構を搭載しても効率的な追跡目標の追跡が行える飛しょう体を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】飛しょう体の誘導制御装置の概要を示すブロック図である。
【図2】飛しょう体におけるジンバル機構の配置を示す斜視図である。
【図3】ジンバル機構の配置を機体の後方から見た図である。
【図4】飛しょう体の制御系を示すブロック図である。
【図5】飛しょう体のロール制御を示す図である。
【図6】操舵翼とジンバル機構との位置関係を示す後方図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態に係るスキッド・トゥ・ターン飛しょう体(以下、単に飛しょう体と呼ぶ。)を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、飛しょう体の誘導制御装置の概要を示すブロック図である。図1に示すように、飛しょう体の誘導制御装置は、追跡目標を検知するシーカ部101と、シーカ部101が出力した信号を処理し、シーカ部101にフィードバックする信号処理部102と、信号処理部102から出力された信号に従って操舵翼を制御する制御部103と、を備える。
【0011】
シーカ部101は、追跡目標を検知し、画像信号を出力する目標検知器111と、目標検知器111を支持して旋回させるジンバル機構112と、ジンバル機構112の動きを制御するジンバル駆動回路115と、を備える。
【0012】
ジンバル機構112は、目標検知器111の角度を検知する角度センサ114と、ジンバル機構112を駆動させるモータ113と、を備える。ジンバル機構112は、回転軸が互いに直行する2つの支持装置を備える。
【0013】
信号処理部102は、目標検知器111からの画像信号を入力し、画像処理を行って追跡目標を判定する信号処理回路121と、ジンバル機構112及び飛しょう体の飛しょうを制御するジンバル制御・飛しょう制御回路122と、を備える。
【0014】
制御部103は、ジンバル制御・飛しょう制御回路122が出力した制御信号を入力し、操舵翼132を回転させるモータ133を駆動させる操舵駆動回路135と、飛しょう体の姿勢角変化を検知するレートセンサ131と、操舵翼132の回転角度を検知する角度センサ134と、を備える。
【0015】
ジンバル制御・飛しょう制御回路122は、角度センサ114からジンバル機構112の角度を入力し、信号処理回路121から追跡目標の誤差角を入力し、角度センサ134から操舵翼132の回転角度を入力し、レートセンサ131から機体の姿勢変化量を入力する。
【0016】
ジンバル制御・飛しょう制御回路122は、入力した信号から追跡目標の目視線角を算出し、さらに誘導信号を生成し、操舵翼132の回転角を制御する制御信号を操舵駆動回路135に出力する。ジンバル制御・飛しょう制御回路122は、ジンバル機構112を駆動させる信号をジンバル駆動回路115に出力する。
【0017】
図2は、飛しょう体におけるジンバル機構112の配置を示す斜視図である。図2に示すように、操舵翼132は機体の周囲に4枚設置され、それぞれ独立に駆動される。目標検知器111は第2のジンバル機構であるインナージンバル112Bに設置される。インナージンバル112Bは第1のジンバル機構であるアウタージンバル112Aに設置される。インナージンバル112Bはエレベーション方向に回転し、アウタージンバル112Aはアジマス方向に回転する。
【0018】
アウタージンバル112Aの回転可能角度112AZはインナージンバルの回転可能角度112ELよりも大きい。すなわち、ジンバル機構112は異方性をもち、アウタージンバル112Aの回転方向であるアジマス方向が優位となっている。
【0019】
図3は、ジンバル機構112の配置を機体の後方から見た図である。図3に示すように、機体がアジマス方向に優位な旋回方向を有する場合、アウタージンバル112Aの回転軸Zは操舵翼132の各回転軸Y’,Z’に対して45°の位相差を有して設置される。
【0020】
すなわち、アウタージンバル112Aの回転軸Zは機体の優位な旋回方向と垂直に配置される。従って、ジンバル機構112の優位な回転方向と機体の優位な旋回方向が一致するようにジンバル機構112は機体に設置される。
【0021】
図4は、飛しょう体の制御系を示すブロック図である。図4に示すように、ジンバル制御・飛しょう制御回路122において生成された誘導信号はピッチ・ヨー誘導制御装置401と、ロール制御装置400に入力される。
【0022】
ピッチ・ヨー誘導制御装置401は、従来の公知のピッチ・ヨー誘導制御装置を用いることができる。ピッチ・ヨー誘導制御装置401はピッチレートqと、ヨーレートrと、を出力する。
【0023】
ロール制御装置400は、ロール姿勢演算部402と、ロール飛しょう制御部403とを有する。ロール姿勢演算部402は、誘導信号からロール姿勢角指令φCMD(rad)を以下の(1)式により算出して出力する。
【数1】

【0024】
ここで、σELはエレベーション方向の誘導信号(rad/s)、σAZはアジマス方向の誘導信号(rad/s)、sign(v)は変数vの符号が正のときは1を、負のときは−1を出力する関数である。
【0025】
また、σELはエレベーション方向のジンバル角、σAZはアジマス方向のジンバル角を用いてもよい。さらに、σELはエレベーション方向の推定目視線角、σAZはアジマス方向の推定目視線角を用いてもよい。
【0026】
ロール飛しょう制御部403は、ロール姿勢角指令φCMDからロールレートpのレートセンサ特性Gと積分特性1/sとを加味したフィードバック値を減じてロール角度ゲインKφとする。ロール飛しょう制御部403は、ロールレートpにレートセンサ特性Gを加味したロール角速度ゲインKφをロール角度ゲインKφから減じ、操舵特性Gδとロール機体特性GAF_ROLLとを加味してロールレートpを出力する。
【0027】
図5は、飛しょう体のロール制御を示す図である。図5を用いて説明する。図5(a)に示すように、追跡目標501は矢印Aの方向に飛んでいるものとする。ここで、ジンバル制御・飛しょう制御回路122はエレベーション方向の誘導信号σELと、アジマス方向の誘導信号σAZと、を生成する。
【0028】
図5(b)は機体を後ろから見た図である。追跡目標501は機体から見て矢印Cの方向に進んでいるように見える。ここで、矢印Yはジンバル機構112及び飛しょう体の優位な旋回方向を表す。図5(b)に示すように、追跡目標501の進行方向と飛しょう体の優位な旋回方向とはずれている。
【0029】
ここで、会合直前には追跡目標501はその進行方向から極端な進路変更は行えない。よって、追跡目標501の進行方向とジンバル機構112及び飛しょう体の優位な旋回方向とを合わせると、効率的な追跡が行えるようになる。
【0030】
図5(c)は、ロール制御後の機体から追跡目標501の見え方を示した図である。図5(c)に示すように、追跡目標501は矢印Bに示すベクトルにて進んでいるように見える。ここで、アジマス方向に次の(2)式の誘導信号が生成され、エレベーション方向の誘導信号は0となる。
【数2】

【0031】
図5(d)は、ロール制御後の機体を後ろから見た図である。図5(d)示すように、ロール姿勢角指令φCMDに基づいて機体はθだけロールする。ロール制御後のジンバル機構112及び飛しょう体の優位な旋回方向を示す矢印Yaは、追跡目標501の進行方向矢印Dと合っている。したがって、飛しょう体は効率的に追跡目標501の追跡が可能となる。
【0032】
図6は、操舵翼132とジンバル機構112との位置関係を示す後方図である。図6(a)に示すように、飛しょう体の優位な旋回方向Dが操舵翼132に対して45°の位相がある場合には、ジンバル機構112の優位な回転方向Cが旋回方向Dに合うようにジンバル機構112を機体に設置する。すなわち、アウタージンバル112Aの回転軸Eと操舵翼132の回転軸Fとのなす角が45°になるようにジンバル機構112を機体に設置する。
【0033】
図6(b)に示すように、飛しょう体の優位な旋回方向Dが操舵翼132に対して0°の位相がある場合には、ジンバル機構112の優位な回転方向Cが飛しょう体の優位な旋回方向Dに合うようにジンバル機構112を機体に設置する。すなわち、アウタージンバル112Aの回転軸Eと飛しょう体の優位な旋回方向を操舵する操舵翼132の回転軸Fとのなす角が0°になるようにジンバル機構112を機体に設置する。
【0034】
以上述べたように、本実施形態の飛しょう体は、ジンバル機構112をジンバル機構の優位な回転方向と、機体の優位な旋回方向とが一致するように機体に設置する。また、追跡目標501の進行方向が機体の優位な旋回方向と一致するように機体のロールを制御するロール制御装置を備える。このため、安価なジンバル機構を搭載しても効率的な追跡目標の追跡が行える飛しょう体を提供することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0035】
112:ジンバル機構、
112A:アウタージンバル、
112B:インナージンバル、
132:操舵翼、
402:ロール姿勢演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追跡目標を追跡するスキッド・トゥ・ターン飛しょう体であって、
複数の操舵翼と、
第2のジンバル機構を内側に支持する第1のジンバル機構を有するジンバル機構と、を備え、
前記ジンバル機構は、
前記飛しょう体の優位な旋回方向の回転軸に対して前記第1のジンバル機構の回転軸が機体後方から見て0°をなすように取り付けられている
ことを特徴とするスキッド・トゥ・ターン飛しょう体。
【請求項2】
前記追跡目標の進行方向と前記飛しょう体の優位な旋回方向とが前記飛しょう体から見て一致するように前記飛しょう体のロールを制御するロール制御装置を備えることを特徴とする請求項1記載のスキッド・トゥ・ターン飛しょう体。
【請求項3】
前記操舵翼の回転軸と前記第1のジンバル機構の回転軸とが機体後方から見たときに45°をなしていることを特徴とする請求項1記載のスキッド・トゥ・ターン飛しょう体。
【請求項4】
前記操舵翼の回転軸と前記第1のジンバル機構の回転軸とが機体後方から見たときに0°をなしていることを特徴とする請求項1記載のスキッド・トゥ・ターン飛しょう体。
【請求項5】
スキッド・トゥ・ターン飛しょう体のロール制御方法であって、
飛しょう体の優位な旋回方向の回転軸に対して、第2のジンバル機構を内側に支持する第1のジンバル機構の回転軸が機体後方から見て0°をなすように取り付け、
誘導信号を入力してロールレートを出力するロール制御装置が、追跡目標の進行方向と前記飛しょう体の優位な旋回方向とが前記飛しょう体から見て一致するように前記飛しょう体のロールを制御する
ことを特徴とするスキッド・トゥ・ターン飛しょう体のロール制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−270923(P2010−270923A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120790(P2009−120790)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】