説明

スキンケア組成物

スクロース酢酸イソ酪酸エステルと、ある種のジオール及びグリセロールのカルボン酸エステルとの混合物を含むスキンケア組成物を開示する。本発明のスキンケア組成物は、化粧用、保護用及び皮膚治療用の組成物として有用であって、スクロース酢酸イソ酪酸エステルと、プロピレングリコール及びグリセロールから選ばれるポリオールの1種又はそれ以上のカルボン酸エステルとの混合物を含み、そのカルボン酸エステル残基は炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基である。このスキンケア組成物は、目蓋や唇を含む人体などの皮膚に適用したとき、平滑性と耐水性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロース酢酸イソ酪酸エステル(スクロースアセテートイソブチレート)と、ある種のジオール及びグリセロールのカルボン酸エステルとの混合物を含むスキンケア組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、スクロース酢酸イソ酪酸エステルと、プロピレングリコール及びグリセロールから選ばれるポリオールの1種又はそれ以上のカルボン酸エステルとの混合物を含み、前記カルボン酸エステル残基が炭素原子2〜10を含む化粧用、保護用及び皮膚治療用の組成物などの液体スキンケア組成物に関する。スキンケア組成物は、目蓋や唇を含む人体などの皮膚に適用すると、平滑性と耐水性を発揮する。
【背景技術】
【0002】
スクロース酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)は、フルーツジュース、栄養ドリンク剤及び炭酸ソフトドリンクなど柑橘類の飲料中の増量剤(weighting agent)として使用される安定な液体である。増量剤は、比較的大きな比重を有しており、芳香油と混合させて出来上がった飲料中で香味料エマルジョンを安定させ、芳香油が水から分離するのを防止する。SAIB(100%)は、室温ではきわめて高い粘度を有しており、それを流動性(pourable)にするには、香料成分に加える前に加熱しなければならない。特許文献1には、(a)曇り剤として、1種又はそれ以上の実質的に飽和の脂肪、及び(b)1種又はそれ以上の増量剤を含む飲料乳白剤が開示されている。成分(a)はグリセリル三−カプリル酸/カプリン酸エステルであり、成分(b)はSAIBであることができる。特許文献2には、(1)芳香油に、(2)芳香油に対して20〜100%量のソルビトール、ソルビタン又はソルバイドのC8〜C14脂肪酸エステル、(3)SAIB及び(4)SAIBに対して5〜30%量のC6〜C12飽和脂肪酸グリセリドを含む飲料用香料組成物が開示されている。特許文献3には、SAIB0.1〜60重量%及びビタミンE0.01〜10重量部を含む食品組成物40〜99.9重量%と、中鎖トリグリセリド30〜95重量%及び、天然油脂又はエステル交換油5〜70重量%から作製された混合脂肪からなる油脂組成物100重量部と、40重量%未満の天然ガム水性溶液80重量部超とを含むスポーツドリンク組成物が開示されている。
【0003】
SAIB(100%)は、高粘度で、極めて粘着性が高いため、化粧用/パーソナルケア製品に組み込むことが困難である。SAIBを含む口紅及びリップライナー(lip liners)は特許文献4に提案されている。オイル、脱水クレー物質及びSAIBを含む化粧品組成物は特許文献5に開示されている。化粧品及びスキンケア組成物に組み込むためには、SAIBを加熱して流動性にしなければならない。SAIBの高粘度及び、特にその粘着性(ネバネバ感)は、スキンケア製品中での使用又は、スキンケア製品それ自体としての使用を厳しく制限している。特許文献6には、SAIBであってもよい増量用オイルを含む液体パーソナルクレンジング乳液が開示されている。これらの組成物は、親油性の皮膚保湿剤(moisturizing agent)1〜30%、増量用オイル1〜20%、安定剤0.1〜5%、泡立て剤(lathering agent)1〜30%及び水を含んでいる。特許文献7及び8には:
(1)周囲条件又は生理的条件下では単体が結晶化しない、1種又はそれ以上のカルボン酸の非高分子エステル又は混合エステルを含み、37℃で少なくとも5000cPの粘度を有する非水溶性で高粘度な液体坦持用物質;及び、
(2)生物学的に活性な物質;
を含む生物学的活性物質放出用の組成物が開示されている。
【0004】
成分(1)はSAIBであることができ、それは、広く多様な物質、例えばカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド及び、プロピレングリコールカプリル酸/カプリン酸エステルなどで希釈されて低粘度の液体坦持用物質を形成していてもよい。特許文献8の実施例Oには、SAIB/“Miglycol(登録商標)810”の70:30混合物中にジドブジン及びジデオキシシトジンを含む薬剤放出組成物が開示されている。“Miglyol 810”は、特許の他の箇所に、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドとして、記載されている。SAIBがもっと取り扱いが容易であれば、皮膚上でもっと平滑で粘着性の少ない感覚を有していたなら、種々のタイプの化粧用/パーソナルケア製品に、広範に使用できるであろう。
【特許文献1】米国特許第4,705,691号明細書
【特許文献2】特公昭52−35746号公報
【特許文献3】特開昭59−210870号公報
【特許文献4】特開昭73−30549号公報
【特許文献5】特開昭61−207314号公報
【特許文献6】国際出願公開第99/38489号パンフレット
【特許文献7】米国特許第5,747,058号明細書
【特許文献8】米国特許第6,413,536号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、スキンケア組成物におけるSAIBの実用性を制限している粘度及び粘着性の問題が特定のグリセロールトリエステルをSAIBとブレンドすることによって克服できることを見出した。そのようなブレンド(blends)は人の皮膚に適用したとき平滑性を発揮し、且つ水での除去に対する優れた耐性を示す液体スキンケア組成物に有用であることが見出された。これらの特徴は、化粧品を含む液体スキンケア組成物の配合に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、そのより概括的な側面において、本発明は、SAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルの予備ブレンド混合物とを含んでなり、カルボン酸エステル残基が炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基であり、且つ組成物が、着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれるスキンケア剤又は化粧剤を含む液体スキンケア組成物を提供する。別の態様において、本発明により提供される液体スキンケア組成物は、水中油型エマルジョンを含み、油(不連続)相がSAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルとの予備ブレンド混合物を含み、カルボン酸エステル残基が炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基であり、且つエマルジョンが着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧剤を含んでいる。本発明は、SAIBと、炭素原子2〜10を含むカルボン酸の1種又はそれ以上のグリセロール三エステル及び/又はプロピレングリコール二エステルとの予備ブレンド混合物がSAIBと親和性があり、即ち混和性であり、長期間放置したときにも分離しない透明な混合物を形成することを見出した。本発明の別の態様は、SAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル(グリセロールトリカルボキシレート)又はプロピレングリコール二カルボン酸エステル(プロピレングリコールジカルボキシレート)(ここでカルボン酸エステル残基は炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基である)との予備ブレンド混合物;着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧品;並びに噴射剤を含んでなるエアゾールスキンケア組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
SAIBと、本発明で有用なエステル添加剤、即ちグリセロールトリエステル及び/又はプロピレングリコールジエステルとの相対量は、SAIB:エステル添加剤の重量比で80:20〜70:30である。最良の重量比は、使用する箇々のエステル添加剤、液体スキンケア組成物の最終用途、並びに、粘度及び/又は粘着性を低下させるのに寄与するその他の成分の存在などの複数の要因に依存する。これらSAIBブレンドは、皮膚に適用されたとき、平滑感を持ち、容易に展伸して潤滑性があり、そして光沢のある外観を有する。記載されるブレンドはまた、不変性のSAIBと比べて低い粘度を有し、化粧品の配合に容易に組み込むことができる。化粧品組成物の成分として、そのSAIB/エステル添加剤のブレンドは、耐水性及び、化粧用スキンケア製品や着色化粧品への転着防止性を付与する。スキンケア製品及びリップケア製品の場合、SAIB/エステル添加剤のブレンドは保護膜を与える。
【0008】
本発明で有用なグリセロールトリエステルの例としては、グリセロール三酢酸エステル(トリアセチン)、グリセロール三酪酸エステル(トリブチリン)、及びグリセロールカプリル酸/カプリン酸エステル、即ちグリセロール三カルボン酸エステルであって、そのカルボン酸エステル残基がカプリル酸エステル(オクタン酸エステル)及びカプリン酸エステル(デカン酸エステル)の混合されたものであるグリセロールトリエステルが含まれる。プロピレングリコール(プロパン−1,2−ジオール)ジエステルの例としては、プロピレングリコール二酢酸エステル、プロピレングリコール二プロピオン酸エステル、及びプロピレングリコールカプリル酸/カプリン酸エステル、即ちプロピレングリコール二カルボン酸エステルであって、そのカルボン酸エステル残基がカプリル酸エステル(オクタン酸エステル)及びカプリン酸エステル(デカン酸エステル)の混合されたものであるプロピレングリコールジエステルが含まれる。エステル添加剤は、好ましくは、グリセロールトリカルボン酸エステル及びプロピレングリコールジカルボン酸エステルから選ばれ、前記カルボン酸エステル残基は酢酸、酪酸、イソ酪酸、カプリル酸、カプリン酸又はそれらのいずれか2種もしくはそれ以上の混合物から選ばれるカルボン酸の残基である。一般に、カプリル酸/カプリン酸混合エステル類が最も好ましい。10を超える炭素を有する脂肪酸の液体トリグリセリド、例えばココナッツ油、コーン油、大豆油などは、SAIBと非親和性であることが見出された。カプリル酸及びカプリン酸のプロピレングリコールジエステルは、Abitec corp.製“Captex(登録商標)200”として購入できるが、SAIBの粘度を効果的に低下させ、且つプロピレングリコールジエステル/SAIBブレンド中20重量%の濃度でのその粘着性を取り除くという、最も望ましい結果を提供することが見出された。SAIBの皮膚の上での永続性(substantivity)、耐転着性及び耐水性はその最高濃度で最大となる。従って、SAIB/プロピレングリコールジエステルの80/20(重量/重量)のブレンドが、本発明の最も好ましい態様である。
【0009】
20重量%でのプロピレングリコールカプリル酸/カプリン酸ジエステルと同じ程度に平滑性を与え、皮膚の上を潤滑にするためには、典型的には、C2〜C10脂肪酸トリグリセリドエステルが25重量%必要である。同じ濃度では、C2脂肪酸トリグリセリドエステル(トリアセチン)よりも、C4〜C10脂肪酸トリグリセリドエステルの方が、皮膚上では、より平滑性でより潤滑感を与える。植物油、例えば大豆油、コーン油及びココナッツ油などはSAIBとのブレンドでは非親和性であり、曇り(hage)及び/又は分離をもたらすが、上記のグリセロールトリエステル又はプロピレングリコールジエステルがSAIB/植物油ブレンドに加えられると、SAIBと植物油とを親和させ、溶解させることができる。例えば、SAIB/グリセロールカプリル酸/カプリン酸エステル/大豆油の重量比80/10/10のブレンドは透明であり、皮膚上に容易に展伸する。
【0010】
本発明で使用するSAIBは、食品用及び工業用の両方の銘柄の中から購入できる。SAIBは、スクロース分子当り平均2個のアセチル残基及び6個のイソブチリル残基からなっている。
【0011】
本発明によって提供される液体スキンケア組成物は、典型的には、本明細書に記載された予備ブレンドSAIB/エステル添加剤の1種又はそれ以上を2〜95重量%含む。組成物の残りは、その組成物が液体である限り、例えば組成物が流動性である限り、種々の希釈剤及びスキンケア成分から選択することができる。スキンケア組成物は、保護剤として、他の成分(ingredient)の担持体として、また光沢を与えるために、皮膚に直接適用することができる。液体スキンケア組成物のSAIB成分は、製品、例えば皮膚保湿剤、ベビー用スキンケア製品、ボディオイル及び入浴後やシャワーの製品などにおける皮膚の保護剤として機能する。SAIB成分はまた、その他の成分、例えば日焼け防止製品の場合での紫外線吸収剤、又はセルフタンニング(sun-less tanning)製品におけるジヒドロキシアセトンなどを皮膚上に搬送して保持することができる。また、SAIB/エステル添加剤混合物は、フェースメーキャップ、例えばリキッドファンデーション、ほお紅、アイシャドー、アイライン又はマスカラなど;及びボディ化粧品に組合せることもできる。これらの製品において、SAIB/希釈剤の添加剤は光沢、耐転着性及び耐水性を付与する。本発明の液体スキンケア組成物はまた、ベビー用ケア調製品、入浴やシャワー用の製品及びボディオイルを含む。液体スキンケア組成物は、好ましくは、1種又はそれ以上の予備ブレンドSAIB/エステル添加剤2〜95重量%;着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧剤0.5〜20重量%;及び皮膚科学的に許容される液体希釈剤5〜98重量%が含まれる。そのような皮膚科学的に許容される液体希釈剤の例としては、水、脂肪酸、脂肪酸エステル、植物油、脂肪族アルコール、エトキシル化及び/もしくはプロポキシル化脂肪族アルコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、グリセリルエステル、液体炭化水素、例えば鉱油、スクアラン及びスクアレンなど、シリコーンオイル、アルコール溶媒、例えばエタノール及びイソプロパノールなど並びに/又は液体噴射剤を含む、均一な混合物又はエマルジョンが含まれる。
【0012】
上記で論じた成分に加えて、液体スキンケア組成物は、人の皮膚に適用することを意図した製品に一般的に存在するその他の成分を含んでいてもよい。そのようなその他の選択的な成分の例としては、香料、乳化剤、界面活性剤、保湿剤(湿潤剤)、スキンコンディショナー、スキン保護剤、スキン美白剤、高分子フィルム形成剤、フィルム変性剤、例えば可塑剤、増粘剤又は粘度低下剤、バインダー、ワックス、溶媒、着色料、保存量及びビタミンなどが含まれる。
【0013】
SAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルとのブレンドは、先ずSAIBを60℃に加熱して流動性にすることにより製造することができる。SAIBとエステル添加剤はジャーの中に量り採り、一緒に混合する。ブレンドは、次いで加熱され確実に均一になるように混合する。
【0014】
本発明の水中油型エマルジョンには不連続油相と連続水性相とが含まれ、そこではSAIB/エステル添加剤が、エマルジョンの合計重量に基づいて、2〜25重量%を構成する。油相又は有機相にはSAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルとの予備ブレンド混合物が含まれ、そのカルボン酸エステル残基は炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基である。その油相には、典型的には、SAIB/エステル添加剤ブレンドと親和性を有し、安定なエマルジョンを形成する1種又はそれ以上のオイル又は油溶性物質が含まれる。そのようなオイル又は油溶性化合物には、合計12〜38の炭素原子を含む脂肪酸のアルキルエステル、精油、脂肪酸、植物油、動物油及び魚油、脂肪族アルコール、エトキシル化及び/もしくはプロポキシル化脂肪族アルコール、グリセリルモノ−及びジ−エステル、液体炭化水素、例えば鉱油、スクアラン及びスクアレンなど、ラノリン及びその誘導体、シリコーンオイル等が含まれる。ある場合には、オイル及び/又は油溶性化合物の組合せは、その箇々の成分はそうでないとしても、SAIB/エステル添加剤ブレンドと親和性を有している。そのような液体親油性物質の固有の具体例は、トイレ化粧品香料工業協会(the Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association)(CTFA)の“International Cosmetic Dictionary and Handbook”に列挙されており、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリルを含んでいる。そのエマルジョンには、着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧剤が、その薬剤の溶解性により、油相又は水相のいずれかに含まれる。
【0015】
本発明により提供されるエマルジョンは、水性相50〜95重量%と油相(添加剤を含む)5〜50重量%とで構成される。好ましくは、水性相はエマルジョンの60〜90重量%を構成し、油相は10〜40重量%を構成する。エマルジョンは、当業者には公知の慣用手法により製造することができる。種々の界面活性剤がエマルジョンの乳化剤として使用することができる。
【0016】
本発明の別の態様は、スプレーの形体、即ち最終的には微細化された形態で皮膚又は頭髪へ適用するために設計された液体組成物に関する。そのような噴霧可能な組成物は、ポンプによる噴霧か又はエアゾールによるかのいずれかの手段によって、皮膚又は頭髪に適用することができる。噴霧可能な組成物には、溶媒及び/又は噴射剤に溶解したSAIBとエステル添加剤との予備ブレンド混合物が含まれる。噴霧可能な液体組成物にはまた、着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧剤が含まれる。SAIB/エステル添加剤混合物は皮膚又は頭髪の上に噴霧して、光沢を付与し、そして/又は、皮膚もしくは頭髪の上に有効成分もしくは装飾用顔料を搬送して固着させることができる。そのような噴霧可能な組成物は1種又はそれ以上の溶媒及び/又は噴射剤を含むことができる。溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、エタノールと水の混合物、イソプロパノールと水の混合物、C1〜C6アルキルの酢酸エステル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、2−ブトキシエタノール及び1−メトキシ−2−イソプロパノールなどのグリコールエーテル並びにアセトンなどのC3〜C8ケトンが含まれる。好ましい溶媒はエタノール又はエタノールと水の混合物である。好ましいエタノールと水の混合物は、SAIB/エステル添加剤混合物の溶解性を維持するのに十分に高いエタノール:水の比率を有すべきである。例えば、もしSAIB/エステル添加剤の濃度が6重量%であれば、エタノール:水の重量比は少なくとも4:1とすべきである。噴射剤の例としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ヘキサン、二酸化炭素、亜酸化窒素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びフルオロクロロ炭化水素が含まれる。好ましい噴射剤はジメチルエーテルである。有効成分には、UV吸収剤、ジヒドロキシアセトン、美白剤、にきび抑制剤、殺生剤及び農薬などの成分が含まれる。装飾用顔料には、例えば無機顔料、合成有機着色料及び有機着色料のレーキなどの着色料が含まれ;特に効果的な顔料は、例えばマイカ、被覆マイカ、金属箔及び粉末、並びに、きらめき(sparkle)、パールエッセンス又は蛍光などの効果を付与するビスマスオキシクロリドである。
【0017】
ボディ又はヘアスプレー組成物には、典型的には、スプレー組成物の合計重量に基づいて、SAIBとエステル添加剤との予備ブレンド混合物5〜65重量%が含まれる。その他の成分又は薬剤は、スプレー組成物の60重量%まで、例えば5〜60重量%含むことができる。スプレー組成物の残りは、溶媒、噴射剤又は溶媒及び/もしくは噴射剤の混合物で構成される。
【実施例】
【0018】
本発明の液体スキンケア組成物の製造及びその使用については、以下の実施例によりさらに、詳説されるが、そこでの全ての%は、特段の記載がない限り重量による。
【0019】
実施例1
SAIBと、グリセロール及びプロピレングリコールのエステルとの種々のブレンドが、先ずSAIBを約60℃に加熱して流動性にすることによって、前記のように製造された。SAIB及びエステル添加剤は、ジャーの中に量り取られて混合された。混合物は、次いで、確実に均一になるように、加熱し、混合した。製造されたブレンドは表Iに示される。表Iで曇り及び分離と表示されているブレンドに付いては、その曇り及び分離は、混合物を室温まで冷却したとき又はその後に発生した。皮膚の上で平滑な感じを与えると表示されたブレンドは、光沢のある外観を有し、皮膚に石鹸や水で洗い落とすことが困難な耐水性被膜を付与した。皮膚の上の被膜の耐水性は、その皮膚の上を濯いだとき、水玉が生じることから明らかである。平滑性、潤滑性、光沢及び耐水性は、これらの混合物を唇に適用したときに記した。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例2
SAIB/エステル添加剤のブレンドフィルム上の水の接触角が、これら混合物の耐水性を示すために測定された。接触角は表面濡れ性の尺度であり、試験法ASTM D5725−99に記載されている。表IIに列記されているそれぞれのブレンドに付いては、SAIB/エステル添加剤のブレンド0.2gを、28.3cm2寸法の50ポンドクラフト紙片の上に量り取った。このブレンドはクラフト紙の表面を覆うように指で展伸した。水滴を被覆されたクラフト紙の上に滴下した。被覆紙上に静止した、それぞれの水滴の接触角は、モニターに表示されたそれぞれの水滴の拡大されたビデオ画像で測定した。非被覆クラフト紙上に滴下した水滴は、その紙に迅速に吸収された。従って、非被覆クラフト紙上の水の接触角は事実上0°である。被覆紙に対する接触角は表IIに示す。接触角が大きければ大きいほど、濡れ性は低く、SAIB/エステル添加剤のブレンドの耐水性は高いことを示している。グリセロール三酢酸エステル及び三酪酸エステルのレベルの増加に連れて、接触角が低下する傾向が観察される。この傾向は、グリセロール三カプリル酸/カプリン酸エステル及びプロピレングリコール二カプリル酸/カプリン酸エステルでは明らかではない。このことによって、グリセロール三酢酸エステル及び三酪酸エステルが、その他2種のエステル添加剤と比較してより親水性であるということができる。
【0022】
【表2】

【0023】
実施例3
SAIB/エステル添加剤のブレンドが皮膚の保湿性を改善するかどうか判定するため、そのブレンドのフィルムに対する水蒸気透過速度(WVTR)が測定された。“Vaseline(登録商標)Intensive Care(登録商標)”耐水スキン保護ローション(VIC)が比較として測定された。評価されるそれぞれのブレンド及びVICローションに付いて、VICローションのブレンド0.5gを、直径9.5cmのクラフト紙片の中央に量って置いた。混合物は、クラフト紙の表面を覆うように指で展伸した。WVTRはASTM E96に従って測定した。試験条件は、32℃、室内湿度50%であった。結果は表IIIに示すが、ここでWVTRに付いて報告される値はg/m2/24時間である。
【0024】
【表3】

【0025】
実施例4
ガラス製エアゾール容器中で、SAIB/グリセロール三カプリル酸/カプリン酸エステル80/20ブレンド36.1gを、p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル2.9gと混合した。p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルと、SAIB/グリセロール三カプリル酸/カプリン酸エステルとを一緒にしたものは非常に粘稠であった。ジメチルエーテル噴射剤(21.0g又は31.8mL)を添加し、その他の成分と混合されて、大幅に低下した粘度を有する透明な液体が得られた。この混合物を皮膚の上に噴霧した。噴射物は細かい霧であった。皮膚に残った物質はやや粘着性であったが、容易に展伸されて良好なカバー力を示した。
【0026】
実施例5
日焼け防止乳液が次の成分から製造した。
【0027】
【表4】

【0028】
“Carbopol Ultrez 10”を除くパート1の全ての成分を、プロペラ攪拌翼で攪拌しながら、ビーカー中、周囲温度で一緒にした。“Carbomer”は攪拌を継続しながらゆっくりと移し込み、混合物を約75℃まで加熱した。パート2の成分は別のビーカー中で一緒にし、全ての成分が溶融するように、攪拌しながら約75℃まで加熱した。パート2の成分の混合物は、パート1の成分に攪拌しながら迅速に添加した。混合物を冷却しながら、攪拌を続けた。混合物の温度が約50℃に達したとき、パート3の水性トリエタノールアミンを加えた。プロペラ攪拌翼は、粘度が増したとき、ジグザグ翼に交換された。パート4の成分が加えられ、完全な混合に達するように混合が継続した。得られたエマルジョンは、混合を続けながら、氷浴中で30分間冷却した。この日焼け防止乳液は、pH7.4を有する白色の中程度の粘度のローションである。皮膚の上で擦ったとき、それは容易に展伸し、すぐに皮膚に吸収されて快適な感じを与えた。適用されたエマルジョンには粘着性が感じられない。
【0029】
実施例6
保湿クリームエマルジョンが次の成分から製造した。
【0030】
【表5】

【0031】
“Carbopol Ultrez 10”を除くパート1の全ての成分は、プロペラ攪拌翼で攪拌しながら、ビーカー中、周囲温度で一緒にされた。“Carbomer”は、攪拌を継続しながら、パート1中にゆっくりと移し込み、混合物を約75℃まで加熱した。パート2の成分を別のビーカー中で一緒にし、全ての成分が溶融するように、攪拌しながら約80℃まで加熱した。パート2の混合物は、パート1の混合物に攪拌しながら迅速に添加した。得られたパート1及びパート2の混合物は、攪拌しながら、約70℃まで放冷した。一緒にしたパート1及びパート2が70℃に達したとき、パート3を攪拌しながら加えた。得られた混合物(パート1、パート2及びパート3)の温度が、約55℃に下がったとき、パート4の成分(一緒にし、55℃まで加熱したもの)を加えた。プロペラ攪拌翼は、粘度が増したとき、ジグザグ翼に交換した。パート5を加え、完全な混合に達するように攪拌が継続した。最終的な保湿用クリームエマルジョンは、混合を続けながら、氷水中で30分間冷却した。この保湿用クリームエマルジョンは、白色の中程度の粘度のクリームである。皮膚の上で擦ったとき、容易に展伸し、すぐに皮膚に吸収され、そして快適な感じを与えた。適用されたクリームには粘着性が感じられない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロース酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)と、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルから選ばれるエステル添加剤との予備ブレンド混合物を含んでなり、前記カルボン酸エステル残基が炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基であり、且つ着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれるスキンケア剤又は化粧剤を含む液体スキンケア組成物。
【請求項2】
SAIBとエステル添加剤との予備ブレンド混合物が組成物の2〜95重量%を構成し、且つカルボン酸エステル残基が酢酸、酪酸、イソ酪酸、カプリル酸、カプリン酸又はこれらの任意の2種もしくはそれ以上の混合物から選ばれるカルボン酸の残基である請求項1に記載の液体スキンケア組成物。
【請求項3】
SAIB:エステル添加剤の重量比が80:20〜70:30の範囲である請求項2に記載の液体スキンケア組成物。
【請求項4】
水中油型エマルジョンを含んでなり、油相がSAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルとの予備ブレンド混合物を含み、前記カルボン酸エステル残基が炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基であり、且つ前記エマルジョンが、着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧剤を含む液体スキンケア組成物。
【請求項5】
前記組成物がエマルジョンであり、SAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルとの予備ブレンド混合物が、組成物の2〜25重量%を構成し、且つ前記カルボン酸エステル残基が酢酸、酪酸、イソ酪酸、カプリル酸、カプリン酸又はこれらの任意の2種もしくはそれ以上の混合物から選ばれるカルボン酸の残基である請求項1に記載の液体スキンケア組成物。
【請求項6】
水相50〜95重量%及び油相5〜50重量%を含み、油相中にSAIBと、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルから選ばれるエステル添加剤との予備ブレンド混合物を含む、水中油型スキンケアエマルジョンにおいて、そのカルボン酸エステル残基が炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基であり、且つそのエマルジョンが、着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧剤を含むエマルジョン。
【請求項7】
SAIBとエステル添加剤との予備ブレンド混合物がそのエマルジョンの2〜95重量%を構成し、且つカルボン酸エステル残基が酢酸、酪酸、イソ酪酸、カプリル酸、カプリン酸又はこれらの任意の2種もしくはそれ以上の混合物から選ばれるカルボン酸の残基である請求項6に記載のエマルジョン。
【請求項8】
水相50〜95重量%及び油相5〜50重量%を含む請求項7に記載のエマルジョン。
【請求項9】
溶媒、噴射剤又はそれらの混合物中に、スクロース酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)と、グリセロール三カルボン酸エステル又はプロピレングリコール二カルボン酸エステルから選ばれるエステル添加剤との予備ブレンド混合物含んでなり、前記カルボン酸エステル残基が炭素原子2〜10を含むカルボン酸の残基であり、且つその溶液が着色料、皮膚軟化剤、日焼け防止剤及び治療剤から選ばれる1種又はそれ以上のスキンケア剤又は化粧剤を含む噴霧可能な組成物。
【請求項10】
前記組成物がポンプによって噴霧可能であり、且つエタノール、エタノール/水混合物、イソプロパノール又はイソプロパノール/水混合物中に溶解したSAIBとエステル添加剤との予備ブレンド混合物5〜65重量%を含んでなり、SAIB:エステル添加剤の重量比が80:20〜70:30の範囲である請求項9に記載の噴霧可能な組成物。
【請求項11】
前記組成物がエアゾール噴射剤によって噴霧可能であり、且つプロパン、n−ブタン、イソブタン、ヘキサン、二酸化炭素、亜酸化窒素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びフルオロクロロ炭化水素から選ばれる噴射剤中に溶解したSAIBとエステル添加剤との予備ブレンド混合物5〜65重量%を含んでなり、SAIB:エステル添加剤の重量比が80:20〜70:30の範囲である請求項9に記載の噴霧可能な組成物。

【公表番号】特表2007−532695(P2007−532695A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509499(P2007−509499)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/011837
【国際公開番号】WO2005/105031
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】