説明

スクイズ性塗布容器

【課題】小形で、しかも、製造コストが安価であるうえ、構造が簡単で、しかも、直接液体を上方に吐出させたり、下方に滴下させたりすることのできるスクイズ性塗布容器を提供する。
【解決手段】スクイズ性を有する容器本体1と、この容器本体1の開口を蓋するキャップ21を備え、このキャップ21に、容器本体1内に収容する塗布液6の流出用の貫通孔23を設け、容器本体1内の上部空間に塗布液貯留室12を設け、この塗布液貯留室12の底壁15aにパイプ18を挿通し、このパイプ18の上端を上記貫通孔23との間に所定の空隙19をあけた位置に位置決めし、容器本体1の傾倒状態において塗布液貯留室12内の塗布液6を上記空隙19を経由し上記貫通孔23から滴下可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体や窓ガラス等に撥水剤,曇止め剤,洗浄剤等の各種塗布液を塗布するスクイズ性塗布容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車体や窓ガラス等に雨の跡が付いたり、塵芥等が付着したりして車体や窓ガラス等が汚れると、運転者等は、内部に洗浄剤等を収容した塗布容器を用いて車体や窓ガラス等に洗浄剤等を塗布し、車体や窓ガラス等に付着している雨の跡や塵芥等を濡れ雑巾等で拭き取るようにしている。また、自動車の外観等をいつも清潔できれいな状態にしておくことを好む運転者等では、定期的に自動車の主体や窓ガラス等に塗布容器で洗浄剤等を塗布し、車体等に付着している塵芥等を濡れ雑巾等できれいに拭き取ることが行われている。
【0003】
このような塗布容器として、例えば、図7に示すようなスクイズ性塗布容器が用いられている。このスクイズ性塗布容器は、使用時に容器体31の胴部31aを手指で強く握って胴部31a内の塗布液30を蓋体32のノズル34から上方に(図7の矢印参照)吐出するものであり、弾性圧搾可能な(スクイズ性を有する)胴部31aの上面開口部から口頸部31bが起立する容器体31と、この容器体31の口頸部31bに螺着される蓋体32と、上記胴部31a内に配設されるパイプ33とを備えている。また、上記蓋体32には、その中央に貫通孔32aが形成されているとともに、この貫通孔32aを取り囲むようにして上記蓋体32の上面からノズル34が突設されている。また、上記パイプ33の上端部が上記貫通孔32aに挿通されているとともに、下端部が上記胴部31aの底部に位置決めされている。
【0004】
そして、使用時には、ノズル34を上方や横側方(やや上向き)に向けた状態で胴部31aを手指で強く握り、これにより胴部31aの内圧を高め、胴部31a内の塗布液30をパイプ33内にその液体流入口(下端開口)から流入させてパイプ33,ノズル34内を上昇させたのち、ノズル34の先端開口から吐出させるようにしている。一方、吐出後に胴部31aから手指を離すと、パイプ33を介して外気が胴部31a内に流入し、胴部31aがそれ自体の復元力で元の形状に戻るようになっている。
【0005】
また、自動車の車体等に塗布液30を塗布する場合には、塗布液30を上方や横側方に勢いよく吐出させるだけではなく、下方に滴下させたいときがある。ところが、上記のスクイズ性塗布容器では、少し使用して胴部31a内の塗布液30が減少したのちに(もしくは使い始めのときから)、容器体31を逆さにする(ノズル34を下方に向ける)と、塗布液30の液面よりもパイプ33の液体流入口のほうが上方に位置し、塗布液30をパイプ33の液体流入口から流入させてノズル34の先端開口から下方に滴下させることができない。
【0006】
そこで、図8に示すような液溜め室付き容器が提案されている。この容器は、容器体35(上記容器体31と同様構造)と、この容器体35の口頸部35bに螺着される装着筒36と、この装着筒36により上記容器体35の口頸部35bの上端面上に載置,固定される液体流出筒37と、この液体流出筒37の上端部に固定される押下ヘッド38と、この押下ヘッド38に形成された蓋板39a付き液溜め室39とを備えている。そして、上記胴部35a内に配設されるパイプ40の上端部が上記液体流出筒37に挿通されているとともに、下端部が上記胴部35aの底部に位置決めされている。
【0007】
使用時には、胴部35aを手指で強く握り、胴部35a内の液体(図示せず)をパイプ40,液体流出筒37,押下ヘッド38の注出口38aを経由して液溜め室39に溜め、溜めたのち、蓋板39aを開けて容器体31を下向きにすることで、液溜め室39に溜めた液体を下方に滴下させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−162225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の液溜め室付き容器では、容器体35の上方に液溜め室39を設けているため、液溜め室付き容器の高さが高くなり、大形化する。しかも、液溜め室39は容器体35の外部にあるため、液溜め室39の上面開口を蓋する蓋板39aを設けなければならず、その分製造コストがアップするうえ、構造が複雑化する。しかも、容器体35内の液体を液溜め室39に溜めているため、液体をパイプ40から直接に上方に吐出することができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、小形で、しかも、製造コストが安価であるうえ、構造が簡単で、しかも、直接液体を上方に吐出させたり、下方に滴下させたりすることのできるスクイズ性塗布容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明のスクイズ性塗布容器は、スクイズ性を有する有底筒状の容器本体と、この容器本体の開口を蓋する蓋体とを備え、この蓋体に、上記容器本体内に収容する塗布液の流出口を設け、上記容器本体内の上部空間に、上記流出口に連通する塗布液貯留室を設け、この塗布液貯留室の底壁に貫通孔を設け、この貫通孔に、上端が上記塗布液貯留室に開口し下端が容器本体内の下部空間に開口している管体を液密状に挿通し、この管体の上端を上記流出口との間に所定の空隙をあけた位置に位置決めし、上記容器本体の傾倒状態において上記塗布液貯留室内に溜められた塗布液を上記管体の上端と流出口との上記空隙を経由し上記流出口から滴下可能に構成したという構成をとる。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、本発明のスクイズ性塗布容器は、スクイズ性を有する(弾性圧搾可能な)容器本体内の上部空間に塗布液貯留室を設け、この塗布液貯留室の底壁に設けた貫通孔に、上端が塗布液貯留室に開口し下端が容器本体内の下部空間に開口する管体を液密状に挿通している。また、この管体の上端を(上記容器本体の開口を蓋する)蓋体の流出口との間に所定の空隙をあけた位置に位置決めしている。したがって、スクイズ状態(容器本体を手指で強く握った状態)では、容器本体内の圧力が高まり、容器本体の塗布液が管体の下端開口から流入し内部を上昇して上端開口から流出したのち、この流出した塗布液の大部分が上記蓋体の流出口に送り込まれ、流出口から(もしくは流出口から延びる液体通路を通ったのちこの液体通路から)吐出されるものの、塗布液の一部分は上記空隙から周囲に飛び出して塗布液貯留室に溜まる。この塗布液貯留室に溜められた塗布液は、容器本体を下方に向けて傾倒させると、塗布液貯留室から流出し上記空隙を経て流出口に流入したのち、流出口から(もしくは流出口から延びる液体通路を通ったのちこの液体通路から)下方に滴下される。
【0012】
上記のように、本発明のスクイズ性塗布容器では、容器本体内の上部空間に塗布液貯留室を設けているため、容器本体内のスペースを有効利用することができ、容器全体が大形化しない。しかも、容器本体内の上部空間に塗布液貯留室を設けているため、容器本体のの開口を蓋する蓋体で、塗布液貯留室の蓋を兼用することができ、製造コストが安価であるうえ、構造が簡単になる。しかも、スクイズ状態では、容器本体の下部空間内の塗布液を上記管体を経由して流出口から吐出させることができる。
【0013】
また、上記管体の上端開口の軸心を、上記蓋体の流出口の軸心に対し横側方にずれた位置に位置決めすることにより、上記管体の上端開口の上方に上記流出口の一部を位置させ、スクイズ状態において上記管体の上端開口から流出した塗布液の一部を上記流出口の一部に衝突させて周囲に飛散させ、これを塗布液貯留室で受けて貯留するように構成した場合には、上記管体の上端開口から流出させた塗布液の一部を簡単な構造で塗布液貯留室に溜めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0015】
図1は本発明のスクイズ性塗布容器の一実施の形態を示している。図において、1は合成樹脂製の容器本体であり、図2に示すように、内部に洗浄剤(塗布液)6を収容する胴部2と、この胴部2の上端開口部から上方に向かって縮径状に延びる肩部3と、この肩部3の上端開口部から上方に向かって略円筒状に延びる口部4とを備えている。上記胴部2は、スクイズ性を有する(弾圧圧搾可能な)略有底円筒状体に形成されており、これを手指で掴んで強く握ると、弾性変形しうるようになっている(図4参照)。また、上記口部4には、その外周面に第1ねじ部5が刻設されている。
【0016】
11は上記容器本体1の胴部2内の上部空間に配設される略有底円筒状の合成樹脂製の内壁であり、その内部空間が塗布液貯留室12に形成されている。上記内壁11には、その上端開口部の外周面からその周方向に沿って延びる一条の円環状の鍔部13が突設されており、上記容器本体1の口部4の上端面に載置されている。また、上記内壁11は上側大径部14と下側小径部15とを備えており、上記上側大径部14は上記口部4に内嵌している。また、上記下側小径部15には、その底壁15aに円形の貫通孔15bが形成されており、この貫通孔15bの中心は、上記底壁15aの中心から少し横側に(図1および図2では、右側に)ずれた位置に位置決めされている。また、上記底壁15aの下面から、上記貫通孔15bを取り囲むようにして円筒部16が垂下している。
【0017】
18は上記胴部2内を垂下する合成樹脂製のパイプ(管体)であり、その下端部は下向き傾斜状に湾曲するとともに、下端開口は上記胴部2の底壁2aに近接した位置に開口している。また、上記パイプ18は、その上部(上記胴部2内を垂下している部分)が上記内壁11の下側小径部15の貫通孔15bおよび円筒部16の中央孔16aに挿通,固定されている。また、上記パイプ18は、その上端開口18aが上記塗布液貯留室12内に開口し、かつ、後述するキャップ21の貫通孔23との間に所定の空隙19(図5および図6参照)をあけた状態で位置決めされている。
【0018】
21は合成樹脂製のキャップ(蓋体)であり、略有天円筒状に形成されている。このキャップ21には、図3に示すように、その周側壁21aの内周面に、上記第1ねじ部5に螺合する第2ねじ部22が刻設されている。また、上記キャップ21には、その天井壁21bの中央に円形の貫通孔(流出口)23が形成されているとともに、上記天井壁21bの上面中央部から、上記貫通孔23を取り囲むようにして略円筒形状のノズル24(その中央孔24aは、上記貫通孔23から延びる液体通路となる)が突設されている。また、上記貫通孔23の中心(すなわち、貫通孔23および中央孔24aの軸心)は上記天井壁21bの中心に位置決めされており、これにより、上記パイプ18の上端開口18aの中心(すなわち、パイプ18の、上記胴部2内を垂下している部分の軸心)に対し、少し横側方にずれた位置にある(図4参照)。
【0019】
25は中栓(図1参照)であり、円盤部25aと、この円盤部25aの上面中央部から突設され上記貫通孔23,中央孔24aに液密状に内嵌する凸部25bとを備えている。この中栓25は、パイプ18の上面開口18aから容器本体1内の塗布液6が塗布液貯留室12に流入し、かつ塗布液貯留室12に溜まる塗布液6が貫通孔23に流入することを阻止する作用をする。この中栓25は、本発明のスクイズ性塗布容器を運搬等する際に用いられるが、購買後は購買者が取り付けて使用してもよいし、取り付けなくてもよい。26は外蓋(図1参照)であり、上記キャップ21のノズル24を蓋する作用をする。
【0020】
上記の構成において、使用時には、図1の状態から図5に示すように、中栓25,外栓26を取り外し、ノズル24を上方もしくは横側方(やや上向き)の所望の部分に向け、その状態で容器本体1の胴部2を手指で強く握ることを行う。これにより、容器本体1の内圧が上がり、胴部2内の塗布液6がパイプ18の下端開口から内部に流入しこの内部を上昇して上端開口18aから流出し、その大部分は上記空隙19を通ってキャップ21の貫通孔23に送り込まれ、この貫通孔23,ノズル24の中央孔24aを通ってノズル24の先端開口から上記所望の部分に吐出される。また、パイプ18の上端開口18aから流出した塗布液6の一部は、上記貫通孔23の外周部の一部分(図5では、右側部分)に衝突して上記空隙19から周囲に飛散し、塗布液貯留室12に溜められる。
【0021】
一方、塗布液6をノズル24から滴下させる場合には、図6に示すように、容器本体1を下向きに傾倒させて、上記塗布液貯留室12に溜められた塗布液6を上記空隙19を通してノズル24の先端開口から滴下させる。
【0022】
このように、上記スクイズ性塗布容器では、容器本体1内の上部空間に塗布液貯留室12を設けているため、容器本体1内のスペースを有効利用することができ、容器全体1が大形化しない。しかも、容器本体1の開口を蓋するキャップ21で、塗布液貯留室12の蓋を兼用することができ、製造コストが安価であるうえ、構造が簡単になる。しかも、容器本体1の胴部2を手指で強く握って容器本体1内の塗布液6をノズル24から直接に吐出させることも、容器本体1を下方に傾けて下方に滴下させることもできる。
【0023】
なお、上記実施の形態では、キャップ21の貫通孔23および中央孔24aの軸心とパイプ18の軸心とを少し横側方にずらすことにより、パイプ18の上端開口18aから流出した塗布液6の一部を、上記貫通孔23の外周部の一部分に衝突させて塗布液貯留室12に溜めるようにしているが、これに限定するものではなく、上記両軸心を同じ位置に設定するとともに、キャップ21の貫通孔23の直径よりもパイプ18の直径を大径にすることで、パイプ18の上端開口18aから流出した塗布液6の一部を、上記貫通孔23の外周部の全周に衝突させて塗布液貯留室12に溜めるようにしてもよい。
【0024】
また、上記実施の形態において、キャップ21の中央孔24aを、先端に向かって先細り状に延びる孔形状に形成することにより、上記中央孔24aの先端開口から塗布液6を噴射させるようにしてもよい。
【0025】
また、上記実施の形態では、塗布液6として、洗浄剤を用いているが、撥水成分を含んだもの(撥水剤)や曇止め剤を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のスクイズ性塗布容器の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】容器本体の断面図である。
【図3】キャップの断面図である。
【図4】上記容器本体の平面図である。
【図5】上記スクイズ性塗布容器の作用を示す断面図である。
【図6】上記スクイズ性塗布容器の作用を示す断面図である。
【図7】従来例を示す断面図である。
【図8】他の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 容器本体
6 塗布液
12 塗布液貯留室
15a 底壁
18 パイプ
19 空隙
21 キャップ
23 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクイズ性を有する有底筒状の容器本体と、この容器本体の開口を蓋する蓋体とを備え、この蓋体に、上記容器本体内に収容する塗布液の流出口を設け、上記容器本体内の上部空間に、上記流出口に連通する塗布液貯留室を設け、この塗布液貯留室の底壁に貫通孔を設け、この貫通孔に、上端が上記塗布液貯留室に開口し下端が容器本体内の下部空間に開口している管体を液密状に挿通し、この管体の上端を上記流出口との間に所定の空隙をあけた位置に位置決めし、上記容器本体の傾倒状態において上記塗布液貯留室内に溜められた塗布液を上記管体の上端と流出口との上記空隙を経由し上記流出口から滴下可能に構成したことを特徴とするスクイズ性塗布容器。
【請求項2】
上記管体の上端開口の軸心を、上記蓋体の流出口の軸心に対し横側方にずれた位置に位置決めすることにより、上記管体の上端開口の上方に上記流出口の一部を位置させ、スクイズ状態において上記管体の上端開口から流出した塗布液の一部を上記流出口の一部に衝突させて周囲に飛散させ、これを塗布液貯留室で受けて貯留するように構成した請求項1記載のスクイズ性塗布容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−81171(P2008−81171A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264169(P2006−264169)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】