説明

スクライブヘッド

【課題】スクライブヘッドにおいて昇降機構内にカレット等が混入しないようにして動作不良を防止すること。
【解決手段】ベースプレート11の上下にトッププレート12とボトムプレート13を有し、トッププレート12の上部にサーボモータ14、トッププレートとボトムプレートの間に昇降機構部を設ける。トッププレート12、ボトムプレート13の側面にはL字形カバー31a,31b,33a,33bを設け、L字形カバーと共に段差部を形成する。この段差部に沿ってコ字形のメインカバー35を挿入して固定する。これによりメインカバー35で昇降機構部を覆うことができ、スクライブ時にカレット等の異物の混入を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクライブ装置に用いられるスクライブヘッドに関し、特にスクライブ時のカレット等の混入を防止することができるスクライブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示パネルや液晶プロジェクタ基板等のフラットパネルディスプレイ(FPD)等では、製造過程においてマザーガラス基板が貼り合わされた後に所定の大きさの単個のパネルとなるように分断される。マザーガラス基板等の脆性材料基板の分断には、スクライブ工程とブレイク工程があり、スクライブ工程ではスクライブ装置が用いられる。FPDの製造では、一枚のマザー基板をスクライブして、ブレイク加工により複数個のパネル基板を取り出す。
【0003】
スクライブ装置には、例えば特許文献1に示されるように、脆性材料基板を載置して保持するテーブルと、脆性材料基板に対して相対的に水平方向に移動することができ、上下方向にも移動自在のスクライブヘッドとが設けられている。スクライブヘッドの下端部には、チップホルダが取付けられている。チップホルダはその下端にスクライビングホイールを回転自在に保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008−149515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるにこのような従来のスクライブ装置において、スクライブヘッドにはガラス等の脆性材料基板をスクライブしたり分断する際に、例えば微小なカレット等の異物が混入し易く、動作不良の原因となることがあるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであって、カレット等の混入を防止できるようにしたスクライブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明のスクライブヘッドは、ベースプレートと、前記ベースプレートに対して垂直に取り付けられたトッププレート及びボトムプレートと、前記トッププレートとボトムプレートとの間に設けられ、前記チップホルダをその下端に保持し、チップホルダを昇降させる昇降機構と、を有するスクライブヘッドにおいて、前記トッププレートとボトムプレートの夫々の側壁に取り付けられて段差部を形成するL字形カバーと、前記トッププレートとボトムプレート及び前記L字形カバーに接して前記昇降機構を覆うメインカバーと、を具備するものである。
【0008】
ここで前記昇降機構は、サーボモータと、前記サーボモータのモータ軸に連結するボールねじと、前記ボールねじによって上下動自在に前記ベースプレートに取り付けられるスライドブロックと、を具備するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、スクライブヘッドを用いてスクライブする際に脆性材料基板から生じるカレット等の微小な異物が昇降機構部に混入するのを防ぐことができる。そのため異物の混入に伴う動作不良を未然に防止することができ、スクライブ動作を安定させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施の形態によるスクライブヘッドの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は本実施の形態によるスクライブヘッドの組立構成図である。
【図3】図3は本実施の形態によるメインカバーを取り付ける前のスクライブヘッドの正面図である。
【図4】図4は本実施の形態によるメインカバーを取り付ける前のスクライブヘッドの中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施の形態によるスクライブヘッドの一例を示す斜視図であり、図2はその組立構成図である。又図3はこの実施の形態のメインカバーを取り付ける前のスクライブヘッドの正面図、図4はその中央縦断面図である。これらの図に示すようにスクライブヘッドは図示しないブリッジに垂直に取り付けられる長方形状のベースプレート11を有している。ベースプレート11の上部にトッププレート12が水平に設けられ、ベースプレート11の最下部にトッププレート12と平行にボトムプレート13が設けられる。トッププレート12、及びボトムプレート13はほぼ同一形状の十分厚い金属板であり、その厚さは同一とする。トッププレート12の上部にはサーボモータ14がその回転軸を下方に向けて固定されている。又サーボモータ14の上部には、その回転角を検出するエンコーダ15が設けられている。サーボモータ14のモータ軸には、図4に示すようにカップリング16を介してボールねじ17のシャフト17aが取り付けられる。又ベースプレート11にはトッププレート12とボトムプレート13の間にスライドブロック18がリニアウェイ19を介して上下動自在に取り付けられている。スライドブロック18にはボールねじ17のナット部17bが取り付けられ、サーボモータ14の回転に伴ってスライドブロック18を上下動させることができる。スライドブロック18の下方には、ボトムプレート13を貫通して上ヘッドカバー20の内側に下向きにチップホルダ21が設けられている。チップホルダ21はホルダ部の下端にホイールチップ22を回転自在に保持するものである。ここでサーボモータ14とカップリング16、ボールねじ17、スライドブロック18及びリニアウェイ19は、チップホルダ21を昇降させる昇降機構を構成している。
【0012】
さてこの実施の形態においては、図2,図3に示すようにトッププレート12の側壁に正面の中央部分を除いて一対のL字形カバー31a,31bが取り付けられる。L字形カバー31a,31bは細長い平板をL字形に折り曲げたものであり、ねじ32a,32bによって固定される。このL字形カバー31a,31bの幅はトッププレート12の厚さよりも小さいものとし、トッププレート12の上面とL字形カバー31a,31bの上面とが一致するように取り付ける。こうすればトッププレート12の側壁とL字形カバー31a,31bの下端面によって段差部を形成することができる。
【0013】
同様にしてボトムプレート13の側壁にも正面の中央部分を除いて一対のL字形カバー33a,33bが取り付けられる。L字形カバー33a,33bは細長い平板をL字形に折り曲げたものであり、ねじ34a,34bによって固定される。このL字形カバー33a,33bの幅はボトムプレート13の厚さよりも小さいものとし、ボトムプレート13の下面とL字形カバー33a,33bの下面とが一致するように取り付ける。こうすればボトムプレート13の側壁とL字形カバー33a,33bの上端面によって段差部を形成することができる。
【0014】
次に前述した昇降機構をカバーするためのメインカバー35について説明する。メインカバー35は図2に斜視図を示すように、平板をコ字状に折り曲げた部材であって、上部中央及び下部中央には図示のように突起部35a,35bが形成される。突起部35a,35bの幅はL字形カバー31a,31bの間の幅及びL字形カバー33a,33bの間の幅に相当するものとする。更に突起部35a,35bの中央部分には、夫々開口36a,36bが設けられている。メインカバー35の厚さはL字形カバー31a,31b,33a,33bの厚さと等しいものとする。このメインカバー35の内側の幅及び奥行きは、トッププレート12及びボトムプレート13の幅及び奥行きと夫々ほぼ等しいものとする。こうすれば図1に示すようにメインカバー35を段差部に沿って挿入することによって、メインカバー35とL字形カバー31a,31b,33a,33bとの表面をそろえてスクライブヘッドに隙間なく取り付けることができる。この状態でメインカバー35の正面の開口36a,36bからねじ37a,37bを挿入してトッププレート12、ボトムプレート13に固定する。このときメインカバー35はトッププレート12とボトムプレート13の左右に設けられたねじ32a,32b,34a,34bによってその側壁の上下部分が保持されている。
【0015】
このようにしてメインカバー35をスクライブヘッドに取り付けると、脆性材料基板をスクライブしたときにカレット等が生じた場合であってもボールねじやスライドブロック等の昇降機構部には混入することはない。従って昇降機構部の故障の原因をなくすることができる。
【0016】
尚この実施の形態においてはサーボモータとボールねじによる昇降機構をメインカバーより覆うようにしているが、本発明はエアーシリンダによってチップホルダを昇降させる昇降機構を有するスクライブヘッドにも適用することができる。
【0017】
又本実施の形態においてはL字形カバーはトッププレートとボトムプレートの側面に取り付けるようにしているが、側壁にL字形カバーに相当する突出部分を有するトッププレートやボトムプレートを用いるようにしてもよい。又トッププレートの下面及びボトムプレートの上面にその稜線部より少し内側にL字形のカバーを固定して、これに沿ってメインカバーを挿入するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明はスクライブヘッドの昇降機構にカレット等の混入を防止することができ、スクライブ装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0019】
11 ベースプレート
12 トッププレート
13 ボトムプレート
14 サーボモータ
15 エンコーダ
16 カップリング
17 ボールねじ
18 スライドブロック
19 リニアウェイ
20 上ヘッドカバー
21 チップホルダ
31a,31b,33a,33b L字形カバー
32a,32b,34a,34b,37a,37b ねじ
35 メインカバー
35a,35b 突起部
36a,36b 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに対して垂直に取り付けられたトッププレート及びボトムプレートと、
前記トッププレートとボトムプレートとの間に設けられ、前記チップホルダをその下端に保持し、チップホルダを昇降させる昇降機構と、を有するスクライブヘッドにおいて、
前記トッププレートとボトムプレートの夫々の側壁に取り付けられて段差部を形成するL字形カバーと、
前記トッププレートとボトムプレート及び前記L字形カバーに接して前記昇降機構を覆うメインカバーと、を具備するスクライブヘッド。
【請求項2】
前記昇降機構は、サーボモータと、前記サーボモータのモータ軸に連結するボールねじと、前記ボールねじによって上下動自在に前記ベースプレートに取り付けられるスライドブロックと、を具備する請求項1記載のスクライブヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−25595(P2012−25595A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162758(P2010−162758)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】