説明

スクリュー押し出し機

【課題】製鋼用フォーミング鎮静剤をスクリュー押し出し機で成型する場合は大きな回転トルクが付加されるのでスクリュー先端部を支持している軸受メタルや軸受部が折損し寿命が短かった。また、軸受部にフォーミング鎮静剤が侵入することによる軸受メタルのロックや、ブレーカプレートのノズル摩耗の問題があり生産効率が悪かった。
【解決手段】スクリュー軸先端部とブレーカプレートに中間軸を挿入し、中間軸の両端を軸受メタルで支持する構造にして大きなトルクに耐えられるようにした。また、グリースを中間軸に溜めて軸受メタルのグリースの消費にしたがってグリースが供給できるようにしたので軸受メタルにフォーミング鎮静剤が侵入しなくなった。ノズルには超硬合金を用いノズルの前方は縮径にノズルの後方は拡径にして成形効率を向上した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転炉用フォーミング鎮静剤を成形するスクリュー押し出し機に関するものであり、スクリュー押し出し機の長寿命化と押し出し効率の向上及び補修の容易化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリュー押し出し機により成形したペレットは、Φ10〜20mm、長さ20〜40mmと小さくできしかも連続押し出しが可能なために生産効率が高く安価であり、転炉での反応効率が高い利点がある。水分が高くてもペレット形状が小さいため水蒸気爆発の危険性も回避できる。しかしながら、転炉用フォーミング鎮静剤は石炭、石灰、砂鉄、鉄粉、プラスチック破砕粉などを混合したスラジでありスクリューに大きな押し出しトルクを要する。それに比例してスクリュー先端部に取り付けているスクリュー先端羽根やブレーカプレートの摩耗が激しく短期間での交換を余儀なくされていた。このため、特開平8−199217号広報では、製鋼工程の転炉で使用されるフォーミング鎮静剤をプレスにてブリケット状に成形する方法が提案され部分的に採用されている。しかしながら、プレス方式で成形するブリケットは50〜100mmの矩形のため形状が大きくなり反応効率が悪かった。また、20〜40%の水分を含んでいるため大きなブリケットの場合は水蒸気爆発の危険性があった。また、プレス成形でブリケットを小さくすると生産効率が悪くコストが高くなる問題があった。このため、転炉用フォーミング鎮静剤はスクリュー押し出し機で成形したペレットが最適であることから、スクリュー押し出し機の信頼性を向上させて安定的に生産することが望まれていた。
【0003】
一般的にスクリュー押し出し機は、動力伝達部、バレル(シリンダ)、スクリュー(スクリュー溝と羽根(フライトあるいはネジ)で構成)、ブレーカプレートで構成されている。スクリューは大きな回転トルクが伝達されるが、押し出し材料から摩擦トルクとして反力を受けることになりスクリューを捩じる力が生じる。そのためスクリューは強度の高い鍛造材を使用しているものの破損する場合が多い。スクリューを交換するための分解組み立て工程も複雑であり一度破損すると多くの補修時間と労力を要していた。
【0004】
従来のスクリュー押し出し機の応用方法としては、特開平5−329843号広報では熱可塑性樹脂製品の生成方法として、少なくとも部分的に加流したゴム組成物からの熱可塑性樹脂製品を生成する方法が提案されている。また、特開2001−514296号広報ではポリマー組成物を形成する方法として、熱可塑性ポリアミドと20重量%迄の熱可塑性セグメント化ポリウレタンの混合物を溶融混合装置に供給し、上記セグメント化ポリウレタンが柔らかいセグメントと硬いセグメントを有し、混合装置で上記混合物を溶融し、このように生成した混合物を排出し、溶融物の温度が混合工程時に240〜260℃の範囲に維持されることを含んでなる方法が提案されている。
【0005】
特開2009−220579号広報では、二軸混練押出機(2軸スクリュー押し出し機)は、駆動モーターの動力を第1変速機で2つに分岐して混練スクリューの一対のシャフトに伝達する動力伝達経路を備えた二軸混練押出機(2軸スクリュー押し出し機)が提案されている。本発明の2軸スクリュー押し出し機はもっとも汎用的に用いられており、スクリューの先端は軸受で固定されていないのが特徴である。
【0006】
特開2009−67000号広報では、ケーシングと、一対のスクリュー軸と、駆動機構と、複数個の排出口部をもつダイスプレート(ブレーカプレート)とからなり、上記一対のスクリュー軸に上記ダイスプレートから突出する突出部を形成し、ダイスプレートに突出部を軸受する平軸受からなる軸受部を設けた構造のスクリュー押し出し機が提案されている。本発明の2軸スクリュー押し出し機は特に過大なトルクの作用するスクリュー押し出し機に採用されておりスクリューの先端を軸受で固定しているのが特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献01】特開平8−199217号広報(ブリケット)
【特許文献02】特開平5−329843号広報(樹脂)
【特許文献03】特開2001−514296号広報(樹脂)
【特許文献04】特開2009−220579号広報(先端軸受なし)
【特許文献05】特開2009−67000号広報(先端軸受)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献01】プラスチック成形加工データブック第2版、(社)日本塑性加工学会編、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献02や特許文献03の方法では、成形材料はゴムやプラスチックの単一材料であり、加熱して一定の粘度以下になるように調整が容易でトルクを小さく制御できるので機械的な問題は少ない。しかし、転炉用フォーミング鎮静剤は多様な材料が混在しており温度調整で粘度を調整するのは困難なためトルクの低減ができない問題がある。従って、スクリュー押し出し機で転炉用フォーミング鎮静剤を成形するには大きなトルクを要するので従来の押し出し機をそのまま流用することは困難であった。例えば、特許文献04の構造では、スクリュー先端が軸受で固定されておらず大きなトルクに耐えられないので転炉用フォーミング鎮静剤の成形用には使用できない。特許文献05の方法では、スクリュー先端部を軸受で支持しているが軸受のシールが十分でないため、大きなトルクで高圧に圧縮され押し出されてきた成形材料が軸受メタル部に侵入し軸受がロックする問題があり短期間使用での軸受交換を余儀なくされていた。
【0010】
スクリュー押し出し機の長寿命化と耐摩耗に関する課題は、(1)スクリュー軸先端部の軸受破損を100%防止すること、(2)先端左官鏝羽根とブレーカプレートの摩耗を低減する、(3)ブレーカプレートに収納するノズルの摩耗を低減する、(4)回転部は超高圧運転のためその圧力に勝って給脂が可能なこと、(5)先端左官鏝羽根とブレーカプレートのギャップ0.5〜1.0mmの調整が可能なことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、スクリュー押し出し機のスクリュー軸先端部に該スクリュー軸の軸方向に軸受穴を設け、該軸受穴と同一軸芯となるようにブレーカプレートに軸受貫通孔を設け、前記軸受穴と前記軸受貫通孔に前記スクリュー軸先端部を支持する中間軸を挿入し、該中間軸と前記軸受穴及び前記中間軸と前記軸受貫通孔との間にはそれぞれ軸受メタルを嵌装しているスクリュー押し出し機である。
【0012】
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記ブレーカプレートに複数のノズルホルダー保持孔を設け、該ノズルホルダー保持孔に超硬ノズルを内装したノズルホルダーを内装し、前記超硬ノズルは前記ノズルホルダーに銀ロウ付けしており、前記ノズルホルダーは入り口から前記超硬ノズルまでの間は径が縮小し、前記超硬ノズルから出口までの間は径が拡大しているスリュー押し出し機である。
【0013】
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、前記中間軸の軸方向にスライドバネホルダーで仕切られたグリース充填室とバネ室を設け、前記グリース充填室は前記スクリュー軸方向にスライド可能に配設した前記スライドバネホルダーにより容積可変に仕切られており、前記バネ室にはバネが内蔵されており、該バネは貫通孔を設けた固定バネホルダーで支持され前記スライドバネホルダーを押圧しており、前記グリース充填室にグリース供給口からグリースが供給されるにつれて、前記スライドバネホルダーは前記バネ室側に移動し、グリースが排出されるにつれて前記スライドバネホルダーが前記グリース充填室側に移動するようにしたスクリュー押し出し機である。
【0014】
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記ブレーカプレートの内面側に保護プレートを張り付けているスクリュー押し出し機ある。
【0015】
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、前記スクリュー押し出し機の前記先端羽根に円盤状の凹みを設け、該凹みに前記先端羽根の取り付けボルトを保護するための円盤型プロテクターを嵌め込んだスクリュー押し出し機である。
【発明の効果】
【0016】
第1の解決手段による効果は、スクリュー軸先端部の折損と軸受破損が解消できることである。
【0017】
第2の解決手段による効果は、ノズル摩耗が低減するのでノズル交換周期を延長できることである。
【0018】
第3の解決手段による効果は、グリースの供給が長期間に渡り自動的に行えることである。
【0019】
第4の解決手段による効果は、(1)ブレーカプレートが原材料に接触する内面が全く摩耗しない、(2)プレートの交換が容易なことである。
【0020】
第5の解決手段による効果は、先端羽根の取り付けボルトが摩耗しないので先端羽根の脱落が皆無なことである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】スクリュー押し出し機先端部の断面図。
【図2】一般的なスクリュー押し出し機の断面図。
【図3】スクリュー軸先端部を軸受で支持した場合の断面図
【図4】スクリュー軸先端部を中間軸で支持した場合の断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実刑形態を図1、図2、図3、図4に基づいて説明する。図1は本発明におけるスクリュー軸先端部の詳細断面図である。図2は特開2009−220579号広報に示すように一般的なスクリュー押し出し機の断面図である。図3は特開2009−67000号広報に示すスクリュー押し出し機の断面図である。図4は本発明のスクリュー押し出し機の断面図であり、スクリュー軸の先端部周辺を模式的に示している。
【0023】
第1の解決手段は、特許請求項1及び図1に示すように、スクリュー押し出し機01のスクリュー軸先端部10aに該スクリュー軸10の軸方向に軸受穴10bを設け、該軸受穴10bと同一軸芯となるようにブレーカプレート40に軸受貫通孔40aを設け、前記軸受穴10bと前記軸受貫通孔40aに前記スクリュー軸先端部10aを支持する中間軸30を挿入し、該中間軸30と前記軸受穴10b及び前記中間軸30と前記軸受貫通孔40aとの間にはそれぞれ軸受メタル70、71を嵌装していることを特徴とするスクリュー押し出し機01である。
【0024】
通常、スクリュー押し出し機01はモーター81、減速機82を通じて回転トルクが付加されホッパー80から供給された原材料がスクリュー軸10で圧縮されブレーカプレート40から押し出される。スクリュー押し出し機01で押し出す原材料は特開平5−329843号広報や特開2001−514296号広報に示すように樹脂類を加熱して粘性を調整・低減して押し出すために大きなトルクを必要としない。そのため特開2009−220579号広報や図2に示すようにスクリュー押し出し機01のスクリュー軸先端10aは軸受で保持されていない場合が多い。押し出しトルクが大きくなるとスクリュー軸が360°方向に振れまわってケーシング20と接触し回転できなくなる問題があった。そのため大きなトルクが付加する場合は、特開2009−67000号広報及び図3に示すようにスクリュー軸先端部10aに突出部(軸受部)11を設けて、この突出部11をダイスプレート40(ブレーカプレート)に差し込んで平軸受71(軸受メタル)で保持して強度アップを図る方法が採用される。スクリュー軸先端部10aを軸受71で支持する方法はスクリュー軸10の強度アップに効果的であるが、突出部11はスクリュー軸10よりも直径が小さくなるので段付き部10cが生じ、応力集中により大きなせん断力が作用するので段付き部10cが折損しやすくなっていた。また、スクリュー軸10は回転トルクと原材料からの反力により360°方向に振れ回るので、ケーシング20と接触したり連続的な微振動としてスクリュー軸先端部10aに伝わったりして、段付き部10cには回転曲げによる疲労も蓄積し脆性破壊を起こしやすくなっていた。スクリュー軸10の材質はSNCH−815Hが最適でありコスト的にもこれ以上の材質アップは図りにくいため構造的な対策が望まれていた。
【0025】
特開2009−67000号広報及び図3のようにスクリュー軸先端10aを平軸受71で固定した場合、スクリュー軸先端10aの段付き部10cに応力集中による大きな応力が生じるとともに微振動による疲労が蓄積して脆性破壊する。さらに、平軸受71が固着すると駆動部の最大トルクが段付き部10cに付加される。スクリュー軸10の段付き部10cの破損を解消するには段付き部10cのない構造にすること及びスクリュー軸先端部10aに駆動トルクが作用しにくい構造にするのが最良の方法である。
【0026】
本発明では、従来の特開2009−67000号広報及び図3で代表されるようにスクリュー軸先端部10aに突出部11を設けてブレーカプレート40に差し込んで平軸受70で支持するのではなく、図1及び図4に示すように、中間軸30をスクリュー軸10の軸受穴10bとブレーカプレート40の軸受貫通孔40aに挿入して支持する構造にした。中間軸30の両側に軸受メタル70、71を配設しているので、片側の軸受メタル(70もしくは71)がロックしても片側の軸受メタル(70もしくは71)が回転できるのでスクリュー軸10の回転はロックされることがなく、大きな回転トルクが付加することにより破損する箇所は完全に解消できる。中間軸30の両側の軸受メタル70、71はALBC(アルミブロンズ)でありかつ確実に給脂できる構造にしているので長期間の連続運転が可能である。
【0027】
第2の解決手段は、前記ブレーカプレート40に複数のノズルホルダー保持孔40bを設け、該ノズルホルダー保持孔40bに超硬ノズル42を内装したノズルホルダー41を内装し、前記超硬ノズル42は前記ノズルホルダー41に銀ロウ付けしており、前記ノズルホルダー41は入り口から前記超硬ノズル42までの間は径が縮小し、前記超硬ノズル42から出口までの間は径が拡大しているスリュー押し出し機01である。
【0028】
ブレーカプレート40の材質は一般的に摩耗や腐食に耐性のあるSUS630(析出硬化材)である。ノズルホルダー41は耐摩耗性や靱性に優れたSCM440Hもしくは耐腐食性を重視してSUS630が用いられる。超硬ノズル42は一般的にタングステンカーバイトが用いられる。
【0029】
通常超硬ノズル42はブレーカプレート(SUS630(析出硬化材))40に直接銀ロウ付けされているが、ブレーカプレート40が摩耗してくるとフォーミング鎮静剤の押し出し圧の変化と水蒸気によるキャビテーションのため銀ロウが剥離して超硬ノズル42が外れていた。ブレーカプレート40を100%超硬で作れば寿命アップ図れるがコストが高くなるため超硬ノズル42を直接ブレーカプレート40にロウ付けしていた。小さな水蒸気爆発を発生させて転炉ノロが泡状に膨張する現象を抑えるために、フォーミング鎮静剤には水分20〜40%を含有させている。このため水分とスラジが混合した一種の土砂摩耗となるので摩耗対策としては最悪の環境である。常に包丁と砥石の関係にあり強制的に連続摩耗していることである。
【0030】
超硬ノズル42はノズルホルダー41に銀ロウ付けして嵌装し、さらにノズルホルダー41をブレーカプレート40に銀ロウ付けして嵌装している。例えば、超硬ノズル42の口径はφ10、φ12、φ13の3種類あり、ブレーカプレート40の中心から半径方向に行くにつれて口径が大きい超硬ノズル42を配置している。ブレーカプレート40の中央部付近がφ13、中間がφ12、円周部がφ10である。これはブレーカプレート40の受ける面圧を平均化するためである。
【0031】
ノズルホルダー41は入り口から超硬ノズル42までの間は径が縮小し、超硬ノズル42から出口までの間は径が拡大している。入り口側はフォーミング鎮静剤を円滑に超硬ノズルに導きノズルホルダー41の摩耗を最小限にするために縮径にしている。出口側は水蒸気によるキャビテーション摩耗が律速するので超硬ノズル42出側の気泡を速やかに開放するために拡径にしている。この構造により入り口側の土砂摩耗と出側のキャビテーションによるコロージョン摩耗を大幅に軽減できた。
【0032】
ブレーカプレート40はSUS630、ノズルホルダーはSCM440Hで、ノズルホルダー41に超硬ノズル42を銀ロウ付けしているので、ブレーカプレート40に単純に穴あけした構造に比べると格段に長寿命が達成できる。
【0033】
第3の解決手段は、前記中間軸30の軸方向にスライドバネホルダー31で仕切られたグリース充填室30aとバネ室30bを設け、前記グリース充填室30aは前記スクリュー軸方向にスライド可能に配設した前記スライドバネホルダー31により容積可変に仕切られており、前記バネ室30bにはバネ33が内蔵されており、該バネ33は貫通孔32aを設けた固定バネホルダー32で支持され前記スライドバネホルダー31を押圧しており、前記グリース充填室30aにグリース供給口30cからグリースが供給されるにつれて、前記スライドバネホルダー31は前記バネ室30b側に移動し、グリースが排出されるにつれて前記スライドバネホルダー31が前記グリース充填室30a側に移動するようにしたスクリュー押し出し機01である。
【0034】
グリースニップル43より強制的にグリースが供給されると、グリースは軸受メタル70、71のグリース溜まり70a、71aやグリース充填室30aを充填する。グリース充填室30aにグリースが充填されるにつれて、スライドバネホルダー31はバネ室30b側に移動し、グリース充填室30aの容積が拡大するにつれてバネ33は収縮しスライドバネホルダー31を強く押圧する。軸受メタル70、71のグリース溜まり70a、71aのグリースが減少すると、スライドバネホルダー31がバネに押圧されてグリース充填室30aを収縮させながらグリース充填室30aのグリースを軸受メタル70,71に押し出す。スライドバネホルダー31にはOリング34を装着しグリース充填室30aのグリースがバネ室30bに侵入しないようにしている。軸受メタル70、71のグリースを常に充満させることによりフォーミング鎮静剤が軸受メタル70、71へ侵入するのを防止し軸受メタル70、71の固着を防止する。
【0035】
第4の解決手段は、前記ブレーカプレート40の内面側40dに保護プレート60を張り付けているスクリュー押し出し機01である。
【0036】
超硬ホルダー41の端面41a及びブレーカプレート40の内面側40dの摩耗防止としてSUS304またはSUS316の多孔板の保護プレート60を取り付けた。保護プレート60の取り付けによりブレーカプレート40の内側面40dの摩耗がなくなり取り換え周期を延長できた。保護プレート60を外すことによりブレーカプレート40に嵌装したダイスホルダー41の交換を素早く出来る。保護プレート60の取り付けはブレーカプレート41にボルト61で取り付けてもよいし銀ロウ付けしてもよい。
【0037】
フォーミング鎮静剤はスクリュー軸10の回転により大きなトルクで圧縮力を受けブレーカプレート40のノズル40bから排出される。この過程でブレーカプレート40には大きな圧力が生じるとともに温度も最大80℃程度まで上昇するため、ブレーカプレート40、ノズルホルダー41、超硬ノズル42、保護プレート60、先端羽根50はフォーミング鎮静剤によるスラジ摩耗と水蒸気酸化を受ける。水蒸気酸化によりキャビテーションも生じるためブレーカプレート40は均一に摩耗しないのでシム調整だけではブレーカプレート40と先端羽根50の隙間を精密に調整ができなくなり交換を余儀なくされていた。
【0038】
先端羽根50とブレーカプレート40のギャップは0.5〜1.0mmのため常に研削摩耗である。しかもこの小さなギャップをきちんと維持することがフォーミング鎮静剤の安定生産に繋がる。スクリュー軸10から押し出されるフォーミング鎮静剤は先端羽根50に達すると圧力が解放されるため80℃の水蒸気と水分に分離するため包丁と砥石の関係となる。そのため、ブレーカプレート40中に組み込まれたダイスホルダー41の取り付け部を食うため摩擦摩耗とエロージョン摩耗が生じる。これを抑えるため6〜9mmのSUS304の多孔板である保護プレート60を取り付けることでブレーカプレート40の内面側40dとダイスホルダー41の端面41aの摩耗を両方解決した。
【0039】
ブレーカプレート40に調質材(例えばSCM440)を使用したり高周波焼き入れしたり全面硬質クロムメッキしたりしてもブレーカプレート40の寿命は短い。ブレーカプレート40と先端羽根50のギャップは0.5〜1.0mmが最適である。ブレーカプレート40の摩耗による交換時期は出口40bの摩耗測定と鎮静剤の吐出量にて決定する。ブレーカプレート40の代わりに保護プレート60が摩耗するのでフォーミング鎮静剤の吐出量が減少したら保護プレート60を交換すればよい。さらにブレーカプレート40とケーシング20との間にシムを入れることでブレーカプレート40と先端羽根50の隙間の調整が容易になる。保護プレート60は腐食を防止するためにSUS材で製作し、さらに摩耗を低減するためステライトを肉盛りしている。
【0040】
保護プレート60と先端羽根50とのギャップ0.5〜1.0mmを保持するため、ダイスホルダー40とケーシング20の間に枠方式のシムを入れることで可能であり、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmの4枚のシム調整にて0.5〜1.0mmのギャップの保持が可能である。シムを入れる時期とタイミングは押し出される鎮静剤の大きさにて決定する。超硬ダイス42の径がφ10〜φ15に次第に大きくなるタイミング(4〜6カ月)にて調整する。
【0041】
第5の解決手段は、前記スクリュー押し出し機01の前記先端羽根50に円盤状の凹み50aを設け、該凹み50aに前記先端羽根50の取り付けボルト52を保護するための円盤型プロテクター51を嵌め込んだスクリュー押し出し機01である。
【0042】
先端羽根50を押さえ付ける円盤型プロテクター51は、取り付けボルト52の数だけ凹みがあり、取り付けボルト52頭が半分程度隠れるようになっている。円盤型プロテクター51の表面51aは取り付けボルト52頭の摩耗を防止し、フォーミング鎮静剤の食い込みを防止するため全面ステライト肉盛りしている。かつ取り付けはインロウ方式にしており小さな抜きテーパを設けているので小さな力で取り外しが可能である。円盤型プロテクター51の凹みに取り付けボルト52頭が入り込んでいるので、取り付けボルト52は円盤型プロテクター51の廻り止めの役目を果たしている。このため、円盤型プロテクター51と先端羽根50は一緒に回転するのでフォーミング鎮静剤の排出能力が低下することはない。円盤型プロテクター51にはOリング53を装着しており中間軸30との境目からフォーミング鎮静剤が侵入してこないようにしている。
【0043】
先端羽根50は従来のS45C焼き入れ方式羽根に代わってSUS304またはSUS316のオーステナイト系ステンレスにステライト#1を肉盛りをし、先端羽根50を取り付ける取り付けボルト52に円盤型プロテクター51を取り付けて取り付けボルトの52へのスラジ固着を100%防止しかつ円盤型プロテクター51の上面51aに均一にステライト合金を肉盛りしているため連続6カ月の運転に耐える。材質がSUS304またはSUS316のため、摩耗後の再溶接補修が可能である。従来最大のネックとなっていた先端羽根に全くスラジが入らないため安定した生産を実現できた。
【符号の説明】
【0044】
01 :スクリュー押し出し機01
10 :スクリュー軸
10a:スクリュー軸先端部
10b:軸受穴
10c:段付き部
11 :突出部
20 :ケーシング
30 :中間軸
30a:グリース充填室
30b:バネ室
30c:グリース供給口
31 :スライドバネホルダー
32 :固定バネホルダー
32a:貫通孔
33 :バネ
34 :Oリング
40 :ブレーカプレート
40a:軸受貫通孔
40b:ノズルホルダー保持孔
40c:内面側
41 :ノズルホルダー
41a:超硬ノズルホルダー端面
42 :超硬ノズル
43 :グリースニップル
50 :先端羽根
50a:凹み
51 :円盤型プロテクター
51a:表面
52 :取り付けボルト
53 :Oリング
60 :保護プレート
61 :ボルト
70 :軸受メタル
70a:グリース溜まり
71 :軸受メタル
71a:グリース溜まり
80 :ホッパー
81 :モーター
82 :減速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー押し出し機のスクリュー軸先端部に該スクリュー軸の軸方向に軸受穴を設け、該軸受穴と同一軸芯となるようにブレーカプレートに軸受貫通孔を設け、前記軸受穴と前記軸受貫通孔に前記スクリュー軸先端部を支持する中間軸を挿入し、該中間軸と前記軸受穴及び前記中間軸と前記軸受貫通孔との間にはそれぞれ軸受メタルを嵌装していることを特徴とするスクリュー押し出し機。
【請求項2】
前記ブレーカプレートに複数のノズルホルダー保持孔を設け、該ノズルホルダー保持孔に超硬ノズルを内装したノズルホルダーを内装し、前記超硬ノズルは前記ノズルホルダーに銀ロウ付けしており、前記ノズルホルダーは入り口から前記超硬ノズルまでの間は径が縮小し、前記超硬ノズルから出口までの間は径が拡大していることを特徴とする請求項1記載のスリュー押し出し機。
【請求項3】
前記中間軸の軸方向にスライドバネホルダーで仕切られたグリース充填室とバネ室を設け、前記グリース充填室は前記スクリュー軸方向にスライド可能に配設した前記スライドバネホルダーにより容積可変に仕切られており、前記バネ室にはバネが内蔵されており、該バネは貫通孔を設けた固定バネホルダーで支持され前記スライドバネホルダーを押圧しており、前記グリース充填室にグリース供給口からグリースが供給されるにつれて、前記スライドバネホルダーは前記バネ室側に移動し、グリースが排出されるにつれて前記スライドバネホルダーが前記グリース充填室側に移動するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスクリュー押し出し機。
【請求項4】
前記ブレーカプレートの内面側に保護プレートを張り付けていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のスクリュー押し出し機。
【請求項5】
前記スクリュー押し出し機の前記先端羽根に円盤状の凹みを設け、該凹みに前記先端羽根の取り付けボルトを保護するための円盤型プロテクターを嵌め込んだことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載のスクリュー押し出し機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−35202(P2013−35202A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172762(P2011−172762)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(504132962)
【Fターム(参考)】