説明

スクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法

【課題】複雑な機構を必要とすることなく、マスクの交換時におけるペーストの一時保管を行うことができるようにしたスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】マスク12が取り外される際、ペースト掻き寄せ面42aを斜め下方に向けた基準姿勢にある各スキージ42をスキージ昇降シリンダ32により下降させて各スキージ42の下端をマスク12に当接させた後、スキージ揺動モータ53により一対のスキージ42を下端同士が近づく方向に同時に揺動させて一対のスキージ42の下端同士を接触させることによって、一対のスキージ42によりマスク12上のペーストPtを掬い取り、その後スキージ昇降シリンダ32により一対のスキージ42を同時に上昇させて一対のスキージ42によるペーストPtの掬い取り状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に半田等のペーストのスクリーン印刷を施すスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機は、基板の上面に設けられた電極部の配置と同じ配置の開口部を有するスクリーンマスク(以下、単にマスクと称する)を基板の上面に接触させたうえでマスク上に半田等のペーストを供給し、マスクの上面に下端を当接させたスキージを水平面内方向(マスクの面内方向)に移動させることによってマスクの開口部内にペーストを押し込んでペーストを転写させ、その後に基板からマスクを分離させるようになっている。
【0003】
このようなスクリーン印刷機において、マスクの開口部の配置はスクリーン印刷の対象となっている基板の電極の配置によって異なるため、スクリーン印刷の対象とする基板が変更されるときにはオペレータによってマスクも交換される。このマスクの交換時におけるマスクの取り外しの際には通常、それまでスクリーン印刷用に使用されていたペーストがマスク上に残存しているが、このマスク上に残存しているペーストはマスクの交換終了後に再使用するため、オペレータが箆等で掻き取って別の場所に一時保管するようにしていた。
【0004】
また、このようなオペレータの手作業によるペーストの掻き取り及び保管作業には時間かかかってマスクの交換作業の作業効率が悪いことから、マスク上のペーストの掻き取りと一時保管(及び交換後のマスク上へのペーストの戻し作業)とを自動で実行するペーストの掻き取り保管作業装置を備えたスクリーン印刷機も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−62209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のスクリーン印刷機では、機構が複雑なペーストの掻き取り保管作業装置を別途設ける必要があり、その分コスト高となるおそれがあるという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、複雑な機構を必要とすることなく、マスクの交換時におけるペーストの一時保管を行うことができるようにしたスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のスクリーン印刷機は、基板を保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の上面に接触されるマスクと、マスクの上方に水平面内の一の方向に移動自在に設けられたベース部材と、ベース部材の下方にペースト掻き寄せ面同士がベース部材の移動方向に対向する姿勢で配置され、各々ベース部材に対して昇降自在であるとともにペースト掻き寄せ面を斜め下方に向けた基準姿勢から水平な揺動軸を中心として下端をベース部材の移動方向に移動させる揺動が可能な一対のスキージと、一対のスキージをそれぞれベース部材に対して昇降させる昇降アクチュエータと、一対のスキージをそれぞれスキージの揺動軸を中心として揺動させる揺動アクチュエータと、基準姿勢にある一方のスキージを昇降アクチュエータにより下降させ、その下降させたスキージの下端がマスクに当接した状態を維持したままベース部材を移動させることにより、マスク上に供給されたペーストを、マスクに下端を当接させた側のスキージのペースト掻き寄せ面で掻き寄せて基板にペーストを転写させる制御手段とを備えたスクリーン印刷機であって、制御手段は、マスクが取り外される際、基準姿勢にある各スキージを昇降アクチュエータにより下降させて各スキージの下端をマスクに当接させた後、揺動アクチュエータにより一対のスキージを下端同士が近づく方向に同時に揺動させて一対のスキージの下端同士を接触させることによって、一対のスキージによりマスク上のペーストを掬い取り、その後昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時に上昇させて一対のスキージによるペーストの掬い取り状態を維持する。
【0009】
請求項2に記載のスクリーン印刷方法は、基板を保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の上面に接触されるマスクと、マスクの上方に水平面内の一の方向に移動自在に設けられたベース部材と、ベース部材の下方にペースト掻き寄せ面同士がベース部材の移動方向に対向する姿勢で配置され、各々ベース部材に対して昇降自在であるとともにペースト掻き寄せ面を斜め下方に向けた基準姿勢から水平な揺動軸を中心として下端をベース部材の移動方向に移動させる揺動が可能な一対のスキージと、一対のスキージをそれぞれベース部材に対して昇降させる昇降アクチュエータと、一対のスキージをそれぞれスキージの揺動軸を中心として揺動させる揺動アクチュエータとを備えたスクリーン印刷機によるスクリーン印刷方法であって、基準姿勢にある一方のスキージを昇降アクチュエータにより下降させ、その下降させたスキージの下端がマスクに当接した状態を維持したままベース部材を移動させることにより、マスク上に供給されたペーストを、マスクに下端を当接させた側のスキージのペースト掻き寄せ面で掻き寄せて基板にペーストを転写させる工程と、マスクが取り外される際、基準姿勢にある各スキージを昇降アクチュエータにより下降させて各スキージの下端をマスクに当接させた後、揺動アクチュエータにより一対のスキージを下端同士が近づく方向に同時に揺動させて一対のスキージの下端同士を接触させることによって、一対のスキージによりマスク上のペーストを掬い取り、その後昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時に上昇させて一対のスキージによるペーストの掬い取り状態を維持する工程とを含む。
【0010】
請求項3に記載のスクリーン印刷方法は、請求項2に記載のスクリーン印刷方法であって、揺動アクチュエータにより一対のスキージを下端同士が近づく方向に同時に揺動させるとき、各スキージの下端がそのスキージの揺動軸の直下の位置よりも対向するスキージの側に移動した状態となるまでは昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時にベース部材に対して上昇させ、各スキージの下端がそのスキージの揺動軸の直下の位置よりも対向するスキージの側に移動した後は一対のスキージの下端同士が接触した状態となるまで昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時にベース部材に対して下降させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、一対のスキージがそれぞれ揺動アクチュエータによって水平な揺動軸回りに揺動されるようになっており、マスクが取り外される際には、下端をマスクに当接させた一対のスキージを下端同士が近づく方向に同時に揺動させてマスク上のペーストを掬い取った後、一対のスキージを同時に上昇させてペーストの掬い取り状態を維持するようにしているので、複雑な機構を必要とすることなく、マスクの交換時におけるペーストの一時保管を行うことができ、これによりマスクの交換作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機の構成図
【図2】本発明に一実施の形態におけるスクリーン印刷機の側面図
【図3】(a)(b)本発明に一実施の形態におけるスクリーン印刷機が備えるスキージヘッドの側面図
【図4】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順を示すフローチャート
【図5】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順の説明図
【図6】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順の説明図
【図7】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順の説明図
【図8】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1において、スクリーン印刷機1は、基板2上に設けられた多数の電極部3のそれぞれに半田等のペーストPtをスクリーン印刷する作業(スクリーン印刷作業)を実行するものであり、図示しない基台上に設けられた基板保持ユニット11、基板保持ユニット11の上方に設けられたマスク12、マスク12の上方に設けられたスキージヘッド13、基板保持ユニット11とマスク12の間の領域に設けられたカメラユニット14及びこれら各部の作動制御を行う制御装置15を備えている。
【0014】
図1及び図2において、基板保持ユニット11は、XYZロボットから成るユニット移動機構11Mによって水平面内(XY面内)の方向への移動(回転も含む)及び上下方向(Z軸方向)の移動が自在なベース部21、ベース部21に取り付けられて水平面内の一の方向(X軸方向)に基板2を搬送する一対のコンベア22、ベース部21に設けられた下受け部昇降シリンダ23によって昇降され、コンベア22によって所定の作業位置(図1に示す位置)に搬送及び位置決めされた基板2の両端がコンベア22から上方に離間するように基板2を下方から持ち上げ支持(図2参照)する下受け部24及び基板2の搬送方向(X軸方向)と直交する水平面内方向(Y軸方向)に開閉自在に設けられ、下受け部24により持ち上げ支持された基板2をその両側方(Y軸方向)からクランプする一対のクランプ部材25を備えている。
【0015】
マスク12は、矩形枠状のマスク枠12Wによって四辺が支持されており、中央領域には基板2上の各電極部3に対応した多数の開口部12hと、基板2のひとつの対角線上に設けられた2つの基板側マーク2mに対応した2つのマスク側マーク12mが設けられている。
【0016】
図1及び図2において、スキージヘッド13は、図示しないアクチュエータ等から成るスキージヘッド移動機構13MによってY軸方向に移動自在に設けられたベースプレート31(ベース部材)、ベースプレート31の下方をベースプレート31に設けられたスキージ昇降シリンダ32によって昇降自在な一対の(2つの)スキージユニット33を備えている。各スキージユニット33はスキージ昇降シリンダ32によってベースプレート31に対して昇降されるスキージホルダ41、スキージホルダ41に取り付けられてX軸方向に延びる薄板部材から成るスキージ42等を有して成り、一対のスキージユニット33はそれぞれのスキージ42のペースト掻き寄せ面42a(図3(a))をY軸方向に対向させる姿勢で設けられている。
【0017】
ここで、スキージユニット33のスキージホルダ41は、図3(a),(b)に示すように、ベースプレート31の下方に突出して延びたスキージ昇降シリンダ32のピストンロッド32aの下端に取り付けられて下方に延びた上部ホルダ41aと、上部ホルダ41aの下端に取り付けられた下部ホルダ41bから成る。下部ホルダ41bの上端にはX軸方向に(すなわち水平方向に)延びたシャフト部材41cが取り付けられており(図1も参照)、このシャフト部材41cは上部ホルダ41aの下端部に支持されている。このためシャフト部材41cをその中心軸まわりに回転させると、このシャフト部材41cが取り付けられた下部ホルダ41bがスキージ42と一体となって、スキージ42の下端をベースプレート31の移動方向(Y軸方向)に移動させる方向に揺動する。
【0018】
各スキージユニット33において、シャフト部材41cの長手方向(Y軸方向)の一端側には外歯を有するギヤ部材51がシャフト部材41cと同軸に設けられており、上部ホルダ41aの一方の側面(他方のスキージユニット33と対向する側とは反対側の側面)にはギヤ部材51と噛合するピニオン52を正逆両方向に回転駆動するスキージ揺動モータ53が取り付けられている。このためスキージ揺動モータ53によってピニオン52を正方向又は逆方向に回転させると、ピニオン52と噛合したギヤ部材51を介してシャフト部材41cがその中心軸回りに回転し(図3(b)中に示す矢印R)、これによって下部ホルダ41bがスキージ42の下端を(すなわちスキージ42がその下端を)ベースプレート31の移動方向(Y軸方向)に移動させる方向に揺動する。
【0019】
各スキージ42は、そのペースト掻き寄せ面42aを斜め下方に向けた姿勢(図3(a)に示す姿勢)を基準姿勢としており、スキージ42が基準姿勢にある状態からスキージ揺動モータ53をピニオン52が正方向に回転するように駆動することによって、スキージ42の下端を対向するスキージ42の側へ移動させた揺動姿勢(例えば図3(b)に示す姿勢)に揺動させることができ、また逆に、スキージ42が揺動姿勢にある状態からスキージ揺動モータ53をピニオン52が逆方向に回転するように駆動することによって、スキージ42の下端を対向するスキージ42とは反対の側へ移動させて基準姿勢に復帰させることができる。
【0020】
図1において、カメラユニット14は撮像視野を下方に向けた下方撮像カメラ14aと撮像視野を上方に向けた上方撮像カメラ14bを備えており(図2も参照)、図示しないアクチュエータ等から成るカメラユニット移動機構14Mによって基板保持ユニット11とマスク12との間の領域を水平面内方向に移動されるようになっている。
【0021】
図1において、基板保持ユニット11が備えるコンベア22による基板2の搬送動作、下受け部24の昇降動作及び一対のクランプ部材25による基板2のクランプ動作は、制御装置15が図示しないアクチュエータ等から成る基板保持機構61の作動制御を行うことによってなされ、基板2を保持した基板保持ユニット11の水平面内方向及び上下方向の移動動作は制御装置15が前述のユニット移動機構11Mの作動制御を行うことによってなされる。
【0022】
図1において、ベースプレート31のY軸方向への往復移動動作は制御装置15が前述のスキージヘッド移動機構13Mの作動制御を行うことによってなされ、各スキージユニット33のベースプレート31に対する昇降動作は制御装置15が2つのスキージ昇降シリンダ32の作動制御を行うことによってなされる。
【0023】
図1において、カメラユニット14の水平面内での移動動作は、制御装置15が前述のカメラユニット移動機構14Mの作動制御を行うことによってなされる。下方撮像カメラ14aによる撮像動作の制御と上方撮像カメラ14bによる撮像動作の制御はそれぞれ制御装置15によってなされ、下方撮像カメラ14aの撮像動作によって得られた画像データと上方撮像カメラ14bの撮像動作によって得られた画像データはそれぞれ制御装置15に送信されて制御装置15の画像認識部15aにおいて画像認識処理される。
【0024】
このように、本実施の形態におけるスクリーン印刷機1は、基板2を保持する基板保持部としての基板保持ユニット11、基板保持ユニット11に保持された基板2の上面に接触されるマスク12、マスク12の上方に水平面内の一の方向(Y軸方向)に移動自在に設けられたベース部材としてのベースプレート31、ベースプレート31の下方にペースト掻き寄せ面42a同士がベースプレート31の移動方向(Y軸方向)に対向する姿勢で配置され、各々ベースプレート31に対して昇降自在であるとともにペースト掻き寄せ面42aを斜め下方に向けた基準姿勢から水平な揺動軸であるシャフト部材41cを中心として下端をベースプレート31の移動方向に移動させる揺動が可能な一対のスキージ42、一対のスキージ42をそれぞれベースプレート31に対して昇降させる昇降アクチュエータとしてのスキージ昇降シリンダ32、一対のスキージ42をそれぞれスキージ42の揺動軸(シャフト部材41c)を中心として揺動させる揺動アクチュエータとしてのスキージ揺動モータ53を備えたものとなっている。
【0025】
次に、図4のフローチャート及び図5〜図8の説明図を用いて本実施の形態におけるスクリーン印刷機1によるスクリーン印刷作業(スクリーン印刷方法)の実行手順について説明する。
【0026】
スクリーン印刷機1によるスクリーン印刷作業では、先ず、制御装置15が、スクリーン印刷機1の上流工程側から送られてきた基板2を図示しない基板搬入機によって受け取って搬入し(図4に示すステップST1)、コンベア22に受け渡して基板保持ユニット11による基板2の保持を行う(図4に示すステップST2)。
【0027】
この基板保持ユニット11による基板2の保持は、制御装置15は、コンベア22を作動させて基板2を所定の位置に位置決めし、下受け部昇降シリンダ23の作動によって上昇させた下受け部24によって基板2を持ち上げ支持した後、一対のクランプ部材25を閉じる方向に作動させてクランプ部材25により基板2の両側部をクランプすることによって行う。
【0028】
制御装置15は基板2の保持を行ったらカメラユニット14を移動させ、下方撮像カメラ14aによって基板2上に設けられた基板側マーク2mを撮像させるとともに、上方撮像カメラ14bにマスク12に設けられたマスク側マーク12mを撮像させる。そして、基板保持ユニット11を(すなわち基板2を)水平面内方向に移動(水平面内方向での回転も含む)をさせて、基板側マーク2mの撮像によって得られた基板2の位置と、マスク側マーク12mの撮像によって得られたマスク12の位置とが上下方向に一致するようにマスク12に対する基板2の位置合わせを行ったうえで(図4に示すステップST3)、基板保持ユニット11を上昇させて、基板2上の各電極部3とこれに対応するマスク12の開口部12hとが合致するように基板2をマスク12に接触させる(図4に示すステップST4)。
【0029】
なお、このように基板2をマスク12に接触させた状態では、基板2だけでなく、基板2の両側部をクランプしているクランプ部材25の上面もマスク12の下面に接触する(図2参照)。
【0030】
マスク12に基板2が接触したら、マスク12上へのペーストPtの供給工程となる。マスク12上へのペーストPtの供給は、後述するマスク12の交換を行った直後の場合とそうでない場合とでは異なり、マスク12の交換を行った直後でない場合のほか、マスク12の交換を行った直後ではあるがペーストPtの量が不足する場合には、スクリーン印刷機1のオペレータ(図示しない)は、別途設けられた図示しないペースト供給装置を用いてマスク12上にペーストPtを供給する(図4に示すステップST5)。マスク12の交換を行った直後の場合におけるマスク12上へのペースとPtの供給ついては後述する。
【0031】
マスク12上へのペーストPtの供給工程が終了したことを検知したら、制御装置15は、スキージヘッド13を作動させてペーストPtの基板2への転写動作を行う(図4中に示すステップST6)。
【0032】
ペーストPtの基板2への転写動作では、制御装置15ははじめに、基準姿勢にある一方のスキージ42を(スキージユニット33を)スキージ昇降シリンダ32によって下降させてそのスキージ42の下端がマスク12の上面に上方から当接するようにする。そして、その下降させたスキージ42の下端がマスク12に当接した状態を維持したままベースプレート31をY軸方向に移動させることにより、マスク12上に供給されたペーストPtを、マスク12に下端を当接させた側のスキージ42のペースト掻き寄せ面42aで掻き寄せる(図2参照)。
【0033】
これによりマスク12上のペーストPtはマスク12の開口部12h内に押し込まれ、ペーストPtは基板2の電極部3上に転写される。なお、このペーストPtの転写作業では、ベースプレート31を反対の方向に移動させるときは、マスク12に接触させるスキージ42を交替させる。
【0034】
このように本実施の形態において、制御装置15は、基準姿勢にある一方のスキージ42をスキージ昇降シリンダ32により下降させ、その下降させたスキージ42の下端がマスク12に当接した状態を維持したままベースプレート31を移動させることにより、マスク12上に供給されたペーストPtを、マスク12に下端を当接させた側のスキージ42のペースト掻き寄せ面42aで掻き寄せて基板2にペーストPtを転写させるものとなっている。
【0035】
また、本実施の形態において、ステップST6は、基準姿勢にある一方のスキージ42をスキージ昇降シリンダ32により下降させ、その下降させたスキージ42の下端がマスク12に当接した状態を維持したままベースプレート31を移動させることにより、マスク12上に供給されたペーストPtを、マスク12に下端を当接させた側のスキージ42のペースト掻き寄せ面42aで掻き寄せて基板2にペーストPtを転写させる工程となっている。
【0036】
制御装置15は、ペーストPtの基板2への転写動作が終了したら、マスク12に対して基板保持ユニット11を(すなわち基板2を)下降させ、マスク12から基板2を分離させて版離れを行う(図4中に示すステップST7)。これにより基板2の各電極部3上にペーストPtが印刷された状態となる。
【0037】
制御装置15は、上記版離れを行ったら基板保持ユニット11による基板2の保持を解除し(図4中に示すステップST8)、コンベア22を作動させて図示しない基板搬出機に基板2を移載した後、基板搬出機によって基板2をスクリーン印刷機1の外部(下流工程側の他の装置、例えば部品実装機)に搬出する(図4に示すステップST9)。これによりスクリーン印刷機1による基板2の1枚当たりの印刷作業が終了する。
【0038】
制御装置15は、基板2を搬出したら、まだスクリーン印刷を行うべき基板2があるかどうかの判断を行う(図4に示すステップST10)。その結果、もうスクリーン印刷を行うべき基板2がない場合には一連の作業を終了し、まだスクリーン印刷を行うべき基板2がある場合には、次いでマスク12の交換を行う必要があるかどうかの判断を行う(図4に示すステップST11)。
【0039】
ここで、マスク12の交換を行う必要がある場合とは、例えば、次にスクリーン印刷を行う対象となる基板2の種類がこれまでスクリーン印刷を行っていた基板の種類と異なる場合であり、制御装置15は既にスクリーン印刷を行った基板2の枚数と、予め設定された基板2の枚数とを比較することによってマスク12の交換を行う必要があるか否かを判断する。
【0040】
制御装置15は、ステップST11でマスク12の交換を行う必要がないと判断したときにはステップST1に戻って次にスクリーン印刷を行う対象となる基板2の搬入を行い、マスク12の交換を行う必要があると判断したときには、以下に示すマスク12上に残存したペーストPtの一時保管作業を行う(図4に示すステップST12)。
【0041】
マスク12上に残存したペーストPtの一時保管作業では、制御装置15は先ず、ペーストPtの転写が終了した状態のスキージ42(スキージユニット33)を上昇させたうえで(図5(a)→図5(b)。図5(b)中に示す矢印A1)、ベースプレート31をY軸方向に移動させて(図5(c)中に示す矢印B)、ペーストPtの転写が終了した時点でのスキージ42の下端(ペーストPtの転写を行った方のスキージ42の下端)の直上に2つのスキージ42の中間部を位置させる。これにより、基準姿勢にある2つのスキージ42の中間部の直下にペーストPtが位置した状態となる(図5(c))。
【0042】
2つのスキージ42の中間部の直下にペーストPtが位置したら、制御装置15は、基準姿勢にある各スキージ42をスキージ昇降シリンダ32により下降させて(図6(a)中に示す矢印C1)、一対のスキージ42の両下端をマスク12の上面に当接させる(図6(a))。そして、制御装置15は、一対のスキージ42の両下端がマスク12の上面に当接したことを検知したら、スキージ揺動モータ53の作動制御を行って、一対のスキージ42を下端同士が近づく方向に同時に揺動させ(図6(b)及び図7(a)中に示す矢印R1)、一対のスキージ42の下端同士を接触させる(図6(a)→図6(b)→図7(a))。これによりマスク12上のペーストPtは一対のスキージ42によって掬い取られた状態となる。
【0043】
なお、このスキージ揺動モータ53によって一対のスキージ42を下端同士が近づく方向に同時に揺動させるとき、各スキージ42の下端がそのスキージ42の揺動軸であるシャフト部材41cの直下の位置よりも対向するスキージ42の側に移動した状態(図6(b)に示す状態)となるまでは、スキージ昇降シリンダ32によって一対のスキージ42(スキージユニット33)を同時にベースプレート31に対して上昇させ(図6(b)中に示す矢印A2)、各スキージ42の下端がそのスキージ42の揺動軸(シャフト部材41c)の直下の位置よりも対向するスキージ42の側に移動した後は、一対のスキージ42の下端同士が接触した状態となるまでは(図7(a))、スキージ昇降シリンダ32により一対のスキージ42を同時にベースプレート31に対して下降させる(図7(a)中に示す矢印C2)。
【0044】
これにより、各スキージ42の下端がマスク12の上面に接触した状態を維持しつつ、一対のスキージ42を下方に開いた状態(図6(a))から閉じた状態(図7(a))にスムーズに移行させることができるので、一対のスキージ42によるペーストPtの確実な掬い取りが可能となる。
【0045】
制御装置15は、一対のスキージ42によりマスク12上のペーストPtが掬い取られるようにしたら、スキージ昇降シリンダ32により一対のスキージ42を(スキージユニット33を)同時に上昇させて(図7(b)中に示す矢印A3)、一対のスキージ42によるペーストPtの掬い取り状態が維持すされるようにする(図7(b))。
【0046】
これにより、マスク12上に残存したペーストPtは一対のスキージ42によって一方のクランプ部材25(スキージ42によるペーストPtの掻き寄せが終了した時点でペーストPtが掻き寄せられた状態となっていた側のクランプ部材25)の直上に一時保管された状態となる。そして、マスク12上からペーストPtが除去された状態となって、マスク12の交換を行うことができるようになるので、制御装置15は制御装置15に繋がるディスプレイ等の報知器62(図1)を介して、オペレータにマスク12の交換作業を促す報知を行う。
【0047】
このように、本実施の形態において、制御装置15は、マスク12が取り外される際、基準姿勢にある各スキージ42をスキージ昇降シリンダ32により下降させて各スキージ42の下端をマスク12に当接させた後、スキージ揺動モータ53により一対のスキージ42を下端同士が近づく方向に同時に揺動させて一対のスキージ42の下端同士を接触させることによって、一対のスキージ42によりマスク12上のペーストPtを掬い取り、その後スキージ昇降シリンダ32により一対のスキージ42を同時に上昇させて一対のスキージ42によるペーストPtの掬い取り状態を維持するものとなっている。
【0048】
また、本実施の形態において、ステップST12は、マスク12が取り外される際、基準姿勢にある各スキージ42をスキージ昇降シリンダ32により下降させて各スキージ42の下端をマスク12に当接させた後、スキージ揺動モータ53により一対のスキージ42を下端同士が近づく方向(Y軸方向)に同時に揺動させて一対のスキージ42の下端同士を接触させることによって、一対のスキージ42によりマスク12上のペーストPtを掬い取り、その後スキージ昇降シリンダ32により一対のスキージ42を同時に上昇させて一対のスキージ42によるペーストPtの掬い取り状態を維持する工程となっている。
【0049】
オペレータは報知器62によりマスク12の交換作業を促されたらマスク12の交換作業を行う(図4に示すステップST13)。そして、オペレータは制御装置15に繋がる開始スイッチ63(図1)の操作を行い、その操作によって出力された信号を受けた制御装置15は、ステップST1に戻って次にスクリーン印刷を行う対象となっている基板2の搬入を行う。
【0050】
ここで、制御装置15は、ステップST11でマスク12の交換を行う必要があると判断し、ステップST12及びステップST13を経てステップST1に戻ってきた場合には、その後のステップST5におけるマスク12上へのペーストPtの供給工程において、ステップST12で一対のスキージ42によりマスク12上から掬って一時保管したペーストPtをマスク12上に開放して供給する。
【0051】
このペーストPtの供給では、制御装置15は先ず、スキージ昇降シリンダ32の作動制御を行って一対のスキージ42(ペーストPtを掬い上げて一時保管している状態の一対のスキージ42)を下降させ(図7(b)→図8(a)。図8(a)中に示す矢印C3)、一対のスキージ42の下端がともにマスク12の上面に当接(近接でもよい)するようにする(図8(a))。そして、制御装置15は、スキージ昇降シリンダ32によって一対のスキージ42を同時に上昇させつつ(図8(b)及び図8(c)中に示す矢印A4)、スキージ揺動モータ53によって一対のスキージ42を下端同士が離間する方向に同時に揺動させる(図8(b)及び図8(c)中に示す矢印R2)、これにより一対のスキージ42は下方に開いた状態となり、一対のスキージ42によって掬い取られて一時保管されていたペーストPtは交換後の新たなマスク12の上に開放されて供給され、その後のステップST6以降の工程の実行が可能となる。
【0052】
なお、上記のように一対のスキージ42を開く際、ペーストPtがどちらか一方のスキージ42に偏った状態で付着していたために、マスク12上にうまくペーストPtが落下しないといったケースがあり得るので、スキージ42を開く前に一対のスキージ42を上下方向に振動させてこのようなペーストPtの偏った付着を解消するようにしてもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態におけるスクリーン印刷機及びこのスクリーン印刷機1によるスクリーン印刷方法では、一対のスキージ42がそれぞれスキージ揺動モータ53によって水平な揺動軸(シャフト部材41c)回りに揺動されるようになっており、マスク12が取り外される際には、下端をマスク12に当接させた一対のスキージ42を下端同士が近づく方向に同時に揺動させてマスク12上のペーストPtを掬い取った後、一対のスキージ42を同時に上昇させてペーストPtの掬い取り状態を維持するようにしているので、複雑な機構を必要とすることなく、マスク12の交換時におけるペーストPtの一時保管を行うことができ、これによりマスク12の交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0054】
なお、上述の実施の形態では、一対のスキージ42をそれぞれスキージ42の揺動軸(シャフト部材41c)を中心として揺動させる揺動アクチュエータとしてモータ(スキージ揺動モータ53)が用いられていたが、これは他のアクチュエータ(例えばシリンダ)であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
複雑な機構を必要とすることなく、マスクの交換時におけるペーストの一時保管を行うことができるようにしたスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法を提供する。
【符号の説明】
【0056】
1 スクリーン印刷機
2 基板
11 基板保持ユニット(基板保持部)
12 マスク
15 制御装置(制御手段)
31 ベースプレート(ベース部材)
32 スキージ昇降シリンダ(昇降アクチュエータ)
41c シャフト部材(揺動軸)
42 スキージ
42a ペースト掻き寄せ面
53 スキージ揺動モータ(揺動アクチュエータ)
Pt ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の上面に接触されるマスクと、マスクの上方に水平面内の一の方向に移動自在に設けられたベース部材と、ベース部材の下方にペースト掻き寄せ面同士がベース部材の移動方向に対向する姿勢で配置され、各々ベース部材に対して昇降自在であるとともにペースト掻き寄せ面を斜め下方に向けた基準姿勢から水平な揺動軸を中心として下端をベース部材の移動方向に移動させる揺動が可能な一対のスキージと、一対のスキージをそれぞれベース部材に対して昇降させる昇降アクチュエータと、一対のスキージをそれぞれスキージの揺動軸を中心として揺動させる揺動アクチュエータと、基準姿勢にある一方のスキージを昇降アクチュエータにより下降させ、その下降させたスキージの下端がマスクに当接した状態を維持したままベース部材を移動させることにより、マスク上に供給されたペーストを、マスクに下端を当接させた側のスキージのペースト掻き寄せ面で掻き寄せて基板にペーストを転写させる制御手段とを備えたスクリーン印刷機であって、
制御手段は、マスクが取り外される際、基準姿勢にある各スキージを昇降アクチュエータにより下降させて各スキージの下端をマスクに当接させた後、揺動アクチュエータにより一対のスキージを下端同士が近づく方向に同時に揺動させて一対のスキージの下端同士を接触させることによって、一対のスキージによりマスク上のペーストを掬い取り、その後昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時に上昇させて一対のスキージによるペーストの掬い取り状態を維持することを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
基板を保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の上面に接触されるマスクと、マスクの上方に水平面内の一の方向に移動自在に設けられたベース部材と、ベース部材の下方にペースト掻き寄せ面同士がベース部材の移動方向に対向する姿勢で配置され、各々ベース部材に対して昇降自在であるとともにペースト掻き寄せ面を斜め下方に向けた基準姿勢から水平な揺動軸を中心として下端をベース部材の移動方向に移動させる揺動が可能な一対のスキージと、一対のスキージをそれぞれベース部材に対して昇降させる昇降アクチュエータと、一対のスキージをそれぞれスキージの揺動軸を中心として揺動させる揺動アクチュエータとを備えたスクリーン印刷機によるスクリーン印刷方法であって、
基準姿勢にある一方のスキージを昇降アクチュエータにより下降させ、その下降させたスキージの下端がマスクに当接した状態を維持したままベース部材を移動させることにより、マスク上に供給されたペーストを、マスクに下端を当接させた側のスキージのペースト掻き寄せ面で掻き寄せて基板にペーストを転写させる工程と、
マスクが取り外される際、基準姿勢にある各スキージを昇降アクチュエータにより下降させて各スキージの下端をマスクに当接させた後、揺動アクチュエータにより一対のスキージを下端同士が近づく方向に同時に揺動させて一対のスキージの下端同士を接触させることによって、一対のスキージによりマスク上のペーストを掬い取り、その後昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時に上昇させて一対のスキージによるペーストの掬い取り状態を維持する工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項3】
揺動アクチュエータにより一対のスキージを下端同士が近づく方向に同時に揺動させるとき、各スキージの下端がそのスキージの揺動軸の直下の位置よりも対向するスキージの側に移動した状態となるまでは昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時にベース部材に対して上昇させ、各スキージの下端がそのスキージの揺動軸の直下の位置よりも対向するスキージの側に移動した後は一対のスキージの下端同士が接触した状態となるまで昇降アクチュエータにより一対のスキージを同時にベース部材に対して下降させることを特徴とする請求項2に記載のスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18123(P2013−18123A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150657(P2011−150657)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】