説明

スクリーン印刷機

【課題】基板印刷高度の測定精度が高いスクリーン印刷機を提供することを課題とする。
【解決手段】スクリーン印刷機1は、スクリーンマスク32と、スクリーンマスク32の上面に摺接するスキージ23fと、スクリーンマスク32からスキージ23fに加わる荷重を検出する荷重センサ75fと、スクリーンマスク32の下面に当接するまで、回路基板Bを上昇させる基板昇降装置5と、回路基板Bの高度を検出する高度センサ502a、520と、荷重センサ75fから入力される荷重の変化を基に、回路基板Bがスクリーンマスク32の下面に当接したことを判別し、高度センサ502a、520から入力される当接時の回路基板Bの高度を基に得られる基板印刷高度を記憶する制御装置9と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだや接着剤などの塗布物を、回路基板に印刷する際に用いられるスクリーン印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機は、スキージとスクリーンマスクとを備えている。スキージは、スクリーンマスクの上方に配置されている。スクリーンマスクには、パターン孔が形成されている。スクリーンマスクの上面には、はんだが配置されている。スクリーンマスクの下方には、回路基板が配置されている。
【0003】
回路基板にはんだを印刷する際は、まず、回路基板の上面をスクリーンマスクの下面まで上昇させる。次に、スキージをスクリーンマスクの上面まで下降させる。続いて、スクリーンマスクの上面に対して、スキージを水平方向に摺動させる。スキージにより、はんだはパターン孔に押し込まれる。押し込まれたはんだは、回路基板に転写される。このようにして、はんだは回路基板に印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−329729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷の際、回路基板の上面と、スクリーンマスクの下面と、の間の隙間幅が大きいと、印刷されたはんだが、にじんでしまう場合がある。また、はんだの印刷位置が、所定の印刷位置に対して、ずれてしまう場合がある。また、はんだが回路基板に転写されない場合がある。このように、隙間幅が大きいと、印刷品質が低下してしまう。このため、印刷の際、回路基板の上面と、スクリーンマスクの下面と、の密着度は高い方が好ましい。当該密着度を高くするためには、印刷時の回路基板の高度、つまり基板印刷高度が、スクリーンマスクの下面に回路基板が隙間なく密着する高度に、設定されていればよい。
【0006】
そこで、特許文献1には、真空度の変化を利用して、基板印刷高度を測定する印刷装置が開示されている。同文献記載の印刷装置は、昇降可能な基板支持台を備えている。基板支持台は、スクリーンマスクの下方に配置されている。基板支持台の上面には、吸着孔が穿設されている。吸着孔から供給される負圧により、回路基板は、基板支持台の上面に固定される。
【0007】
基板印刷高度を測定する際は、まず、基板支持台から回路基板を取り外す。次いで、吸着孔から負圧を供給しながら(空気を吸引しながら)基板支持台を上昇させる。基板支持台がスクリーンマスクの下面に当接すると、吸着孔がスクリーンマスクの下面に吸い付く。このため、吸着孔の真空度が高くなる。特許文献1の印刷装置は、当該真空度の変化から、基板印刷高度を測定している。
【0008】
しかしながら、同文献記載の印刷装置の場合、基板印刷高度を測定する際、回路基板は、基板支持台から取り外されている。このため、実際には、回路基板自体の上下方向厚さは、測定されていない。したがって、回路基板自体の上下方向厚さ分だけ、測定により得られた基板印刷高度と、理想的な基板印刷高度と、の間に誤差が発生してしまう。
【0009】
ここで、誤差を小さくするためには、回路基板自体の上下方向厚さ分だけ、測定により得られた基板印刷高度を、補正すればよい。しかしながら、回路基板の上下方向厚さの公称値と実測値とが異なる場合がある。この場合、公称値を用いて、測定により得られた基板印刷高度を補正しても、やはり公称値と実測値との誤差の分だけ、測定により得られた基板印刷高度と、理想的な基板印刷高度と、の間に誤差が発生してしまう。
【0010】
本発明のスクリーン印刷機は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、基板印刷高度の測定精度が高いスクリーン印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明のスクリーン印刷機は、スクリーンマスクと、該スクリーンマスクの上面に摺接するスキージと、該スクリーンマスクから該スキージに加わる荷重を検出する荷重センサと、該スクリーンマスクの下面に当接するまで、回路基板を上昇させる基板昇降装置と、該回路基板の高度を検出する高度センサと、該荷重センサから入力される該荷重の変化を基に、該回路基板が該スクリーンマスクの該下面に当接したことを判別し、該高度センサから入力される当接時の該回路基板の高度を基に得られる基板印刷高度を記憶する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のスクリーン印刷機によると、基板印刷高度を測定する際、実際に回路基板が用いられる。このため、測定の際に回路基板が用いられない場合と比較して、基板印刷高度の測定精度が高くなる。したがって、印刷時における、回路基板の上面と、スクリーンマスクの下面と、の密着度を高くすることができる。
【0013】
また、印刷時においては、搬送高度から基板印刷高度まで、回路基板を上昇させる必要がある。基板昇降装置、高度センサは、本来、回路基板を上昇させるために用いられるものである。また、荷重センサは、本来、印刷時にスクリーンマスクや塗布物(はんだ、接着剤など)などからスキージに加わる荷重(印圧)を検出するために用いられるものである。本発明のスクリーン印刷機によると、既設のこれらの装置を流用して、基板印刷高度を測定することができる。このため、本発明のスクリーン印刷機は汎用性が高い。
【0014】
また、仮に、オペレーターが回路基板の上面と、スクリーンマスクの下面と、の密着度を測定する場合、オペレーターの経験や勘に、測定精度が依存することになる。このため、密着度が低下するおそれがある。これに対して、本発明のスクリーン印刷機によると、機械的に基板印刷高度を測定することができる。つまり、密着度に関して、属人性を排除することができる。このため、密着度を高くすることができる。また、オペレーターの作業負荷を軽減することができる。
【0015】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、さらに、前記スクリーンマスクの前記上面に当接するまで、前記スキージを下降させるスキージ昇降装置を備え、該スキージ昇降装置は、該スキージを下降させ、前記制御装置は、前記荷重センサから入力される前記荷重の変化を基に、下降中の該スキージが該スクリーンマスクの該上面に当接したことを判別し、該スキージ昇降装置は、該スキージを停止し、前記基板昇降装置は、該スキージが該スクリーンマスクの該上面に当接した状態で、前記回路基板を上昇させ、該制御装置は、該荷重センサから入力される該荷重の変化を基に、該回路基板が該スクリーンマスクの該下面に当接したことを判別し、前記高度センサから入力される当接時の該回路基板の高度を基に得られる基板印刷高度を記憶する構成とする方がよい。
【0016】
本構成によると、スキージがスクリーンマスクの上面に当接した時点で、スキージの下降が停止される。このため、スキージの圧接力により、スクリーンマスクが下方に撓むおそれが小さい。したがって、回路基板をスクリーンマスクの下面に当接させる際、つまり基板印刷高度を測定する際、基板印刷高度が低く見積もられるおそれが小さい。よって、基板印刷高度の測定精度がさらに高くなる。
【0017】
(3)上記課題を解決するため、本発明のスクリーン印刷機は、スクリーンマスクと、該スクリーンマスクの上面に摺接するスキージと、該スキージから独立して、該スクリーンマスクの該上面に当接する高度測定具と、該スクリーンマスクから該高度測定具に加わる荷重を検出する荷重センサと、該スクリーンマスクの下面に当接するまで、回路基板を上昇させる基板昇降装置と、該荷重センサから入力される該荷重の変化を基に、該回路基板が該スクリーンマスクの該下面に当接したことを判別する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のスクリーン印刷機によると、基板印刷高度を測定する際、実際に回路基板が用いられる。このため、測定の際に回路基板が用いられない場合と比較して、基板印刷高度の測定精度が高くなる。したがって、印刷時における、回路基板の上面と、スクリーンマスクの下面と、の密着度を高くすることができる。
【0019】
また、印刷時においては、搬送高度から基板印刷高度まで、回路基板を上昇させる必要がある。基板昇降装置は、本来、回路基板を上昇させるために用いられるものである。また、荷重センサは、本来、印刷時にスクリーンマスクや塗布物(はんだ、接着剤など)などからスキージに加わる荷重(印圧)を検出するために用いられるものである。本発明のスクリーン印刷機によると、既設のこれらの装置を流用して、基板印刷高度を測定することができる。このため、本発明のスクリーン印刷機は汎用性が高い。
【0020】
また、仮に、オペレーターが回路基板の上面と、スクリーンマスクの下面と、の密着度を測定する場合、オペレーターの経験や勘に、測定精度が依存することになる。このため、密着度が低下するおそれがある。これに対して、本発明のスクリーン印刷機によると、機械的に基板印刷高度を測定することができる。つまり、密着度に関して、属人性を排除することができる。このため、密着度を高くすることができる。また、オペレーターの作業負荷を軽減することができる。また、本発明のスクリーン印刷機によると、スキージを用いずに、基板印刷高度を測定することができる。このため、塗布物によりスクリーンマスクが汚れにくい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、基板印刷高度の測定精度が高いスクリーン印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一実施形態のスクリーン印刷機の右側面図である。
【図2】同スクリーン印刷機の前面図である。
【図3】同スクリーン印刷機のスキージ昇降装置付近の斜視図である。
【図4】同スクリーン印刷機のブロック図である。
【図5】同スクリーン印刷機のマスク装置付近の基板印刷高度測定時の前面図である。
【図6】同スクリーン印刷機の基板印刷高度測定時の右側面図である。
【図7】第二実施形態のスクリーン印刷機のマスク装置付近の基板印刷高度測定時の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のスクリーン印刷機の実施の形態について説明する。
【0024】
<第一実施形態>
[スクリーン印刷機の構成]
まず、本実施形態のスクリーン印刷機の構成について説明する。図1に、本実施形態のスクリーン印刷機の右側面図を示す。図2に、同スクリーン印刷機の前面図を示す。図1、図2に示すように、本実施形態のスクリーン印刷機1は、スキージ装置2f、2rと、マスク装置3と、クランプ装置4と、基板昇降装置5と、バックアップテーブル用エンコーダと、メインテーブル用エンコーダと、搬送装置6と、スキージ昇降装置7と、ロードセル75f、75rと、Y軸方向ガイドレール8と、制御装置と、を備えている。ロードセル75f、75rは、本発明の「荷重センサ」の概念に含まれる。バックアップテーブル用エンコーダ、メインテーブル用エンコーダは、本発明の「高度センサ」の概念に含まれる。
【0025】
(基板昇降装置5、バックアップテーブル用エンコーダ、メインテーブル用エンコーダ)
基板昇降装置5は、バックアップ装置50と、メインテーブル51と、メインテーブル用サーボモータ52と、ボールねじ部53と、ナット側テーブル54と、を備えている。メインテーブル用サーボモータ52には、メインテーブル用エンコーダが配置されている。ボールねじ部53は、シャフト530とナット531とを備えている。シャフト530の下端は、メインテーブル用サーボモータ52の駆動軸に連結されている。シャフト530は、自身の軸回りに回転可能である。ナット531は、多数のボール(図略)を介して、シャフト530に環装されている。シャフト530が回転することにより、ナット531は上下方向に移動可能である。
【0026】
ナット側テーブル54は、長方形板状を呈している。ナット側テーブル54は、ナット531に固定されている。メインテーブル51は、長方形板状を呈している。メインテーブル51は、ナット側テーブル54の上面に配置されている。
【0027】
バックアップ装置50は、バックアップテーブル500と、複数のバックアップピン501と、バックアップテーブル用サーボモータ502と、ボールねじ部503と、ナット側テーブル504と、を備えている。
【0028】
バックアップテーブル用サーボモータ502は、ナット側テーブル54の上面後縁に配置されている。バックアップテーブル用サーボモータ502には、バックアップテーブル用エンコーダが配置されている。ボールねじ部503は、シャフト503aとナット503bとを備えている。シャフト503aの下端は、バックアップテーブル用サーボモータ502の駆動軸に連結されている。シャフト503aは、自身の軸回りに回転可能である。ナット503bは、多数のボール(図略)を介して、シャフト503aに環装されている。シャフト503aが回転することにより、ナット503bは上下方向に移動可能である。
【0029】
ナット側テーブル504は、長方形板状を呈している。ナット側テーブル504は、ナット503bに固定されている。バックアップテーブル500は、長方形板状を呈している。バックアップテーブル500は、ナット側テーブル504の上面に配置されている。バックアップテーブル500は、メインテーブル51に対して、上下方向に移動可能である。複数のバックアップピン501は、バックアップテーブル500の上面に配置されている。
【0030】
(クランプ装置4)
クランプ装置4は、固定クランプ40fと、可動クランプ40rとを備えている。固定クランプ40f、可動クランプ40rは、各々、下方に開口するC字状を呈している。固定クランプ40fはメインテーブル51の前縁から、可動クランプ40rはメインテーブル51の後縁から、各々、上方に立設されている。固定クランプ40fと可動クランプ40rとは、バックアップテーブル500を挟んで、前後方向に対向している。可動クランプ40rは、前後方向に移動可能である。
【0031】
(搬送装置6)
搬送装置6は、一対のコンベアベルト60f、60rを備えている。コンベアベルト60f、60rは、各々、左右方向に延在している。コンベアベルト60fは固定クランプ40fの後面上縁に、コンベアベルト60rは可動クランプ40rの前面上縁に、各々、配置されている。一対のコンベアベルト60f、60rは、前後方向に対向している。回路基板Bは、一対のコンベアベルト60f、60r間に架設されている。回路基板Bは、一対のコンベアベルト60f、60rにより、左側(上流側)から右側(下流側)に搬送される。
【0032】
(マスク装置3)
マスク装置3は、フレーム30と、メッシュ31と、スクリーンマスク32とを備えている。マスク装置3は、クランプ装置4の上方に配置されている。フレーム30は、長方形枠状を呈している。メッシュ31は、長方形枠状を呈している。メッシュ31は、フレーム30の枠内に配置されている。スクリーンマスク32は、長方形薄板状を呈している。スクリーンマスク32は、メッシュ31に張設されている。スクリーンマスク32には、多数のパターン孔(図略)が形成されている。パターン孔は、回路基板Bの印刷位置に応じて、所定のパターンで配置されている。
【0033】
(スキージ昇降装置7、Y軸方向ガイドレール8)
図3に、本実施形態のスクリーン印刷機のスキージ昇降装置付近の斜視図を示す。図1〜図3に示すように、Y軸方向ガイドレール8は、マスク装置3の上方に配置されている。Y軸方向ガイドレール8は、前後方向に延在している。
【0034】
スキージ昇降装置7は、Y軸方向被ガイド部70と、スキージ用サーボモータ72f、72rと、ボールねじ部73f、73rと、ナット側テーブル74f、74rと、を備えている。
【0035】
Y軸方向被ガイド部70は、長方形板状を呈している。Y軸方向被ガイド部70は、Y軸方向ガイドレール8に摺動可能に取り付けられている。スキージ用サーボモータ72fは、Y軸方向被ガイド部70の右面前側に配置されている。ボールねじ部73fは、シャフト730fとナット731fとを備えている。シャフト730fの上端は、スキージ用サーボモータ72fの駆動軸に連結されている。シャフト730fは、自身の軸回りに回転可能である。ナット731fは、多数のボール(図略)を介して、シャフト730fに環装されている。シャフト730fが回転することにより、ナット731fは上下方向に移動可能である。ナット側テーブル74fは、長方形板状を呈している。ナット側テーブル74fは、ナット731fに固定されている。
【0036】
スキージ用サーボモータ72r、ボールねじ部73r、ナット側テーブル74rの構成は、スキージ用サーボモータ72f、ボールねじ部73f、ナット側テーブル74fの構成と、同様である。スキージ用サーボモータ72r、ボールねじ部73r、ナット側テーブル74rは、スキージ用サーボモータ72f、ボールねじ部73f、ナット側テーブル74fの、後方に配置されている。
【0037】
(スキージ装置2f、2r)
スキージ装置2fは、スプリング座20fと、ロッド21fと、保持部22fと、スキージ23fと、コイルスプリング24fと、を備えている。スプリング座20fは、円板状を呈している。ロッド21fは、下端にフランジ部210fを有する円柱状を呈している。ロッド21fは、スプリング座20fの下面中央から、下方に突設されている。保持部22fは、左右方向に長い角柱状を呈している。保持部22fの後下角には、平面状の面取部221fが形成されている。保持部22fの上面の左右方向中央には、ロッド係止孔220fが開設されている。ロッド21fの下端は、ロッド係止孔220fに挿入されている。ロッド21fの下端のフランジ部210fは、ロッド係止孔220f内を、上下方向に移動可能である。コイルスプリング24fは、ロッド21fに環装されている。コイルスプリング24fは、スプリング座20fの下面と保持部22fの上面との間に、介装されている。コイルスプリング24fは、保持部22fを下方に付勢している。スキージ23fは、左右方向に長い長方形薄板状を呈している。スキージ23fは、保持部22fの面取部221fに配置されている。回路基板Bにはんだを印刷する際、スキージ23fは、前方から後方に向かって、スクリーンマスク32の上面を摺動する。
【0038】
スキージ装置2rの構成は、スキージ装置2fの構成と、同様である。スキージ装置2rの配置は、スキージ装置2fの配置と、前後対称である。スキージ装置2rのスキージは、後方から前方に向かって、スクリーンマスク32の上面を摺動する。
【0039】
(ロードセル75f、75r)
図1に示すように、ロードセル75fは、円板状を呈している。ロードセル75fは、ナット側テーブル74fの下面と、スプリング座20fの上面と、の間に介装されている。ロードセル75rの構成は、ロードセル75fの構成と、同様である。ロードセル75rの配置は、ロードセル75fの配置と、前後対称である。ロードセル75rは、ナット側テーブル74rと、スキージ装置2rと、の間に介装されている。
【0040】
(制御装置9)
図4に、本実施形態のスクリーン印刷機のブロック図を示す。図4に示すように、制御装置9は、演算部90と、記憶部91と、入出力ポート92と、駆動回路93〜96と、を備えている。
【0041】
駆動回路93はメインテーブル用サーボモータ52に、駆動回路94はバックアップテーブル用サーボモータ502に、駆動回路95はスキージ用サーボモータ72fに、駆動回路96はスキージ用サーボモータ72rに、各々、電気的に接続されている。また、制御装置9は、メインテーブル用サーボモータ52のメインテーブル用エンコーダ520、バックアップテーブル用サーボモータ502のバックアップテーブル用エンコーダ502a、ロードセル75f、75rに、各々、電気的に接続されている。
【0042】
[スクリーン印刷機の動き]
次に、本実施形態のスクリーン印刷機の基板印刷高度測定時の動きについて説明する。基板印刷高度の測定は、印刷対象となる回路基板の種類を変更する際、つまり段取り替えの際に、行われる。図5に、本実施形態のスクリーン印刷機のマスク装置付近の基板印刷高度測定時の前面図を示す。図6に、同スクリーン印刷機の基板印刷高度測定時の右側面図を示す。
【0043】
まず、図4に示すように、制御装置9の駆動回路95により、スキージ用サーボモータ72fを駆動する。スキージ用サーボモータ72fを駆動すると、図5に示すように、シャフト730fが軸回りに回転する。このため、ナット731f、ナット側テーブル74f、ロードセル75f、スキージ装置2fが下降する。そして、スキージ装置2fのスキージ23fが、スクリーンマスク32の上面に当接する。
【0044】
スキージ23fがスクリーンマスク32の上面に当接すると、その衝撃が、コイルスプリング24f、スプリング座20fを介して、ロードセル75fに伝達される。このため、ロードセル75fの荷重が変化する。
【0045】
一方、制御装置9の記憶部91には、ロードセル75fの荷重の変化に対するスキージ用しきい値(スキージ23fがスクリーンマスク32の上面に当接したことによる荷重変化と、ノイズによる荷重変化と、を判別するためのしきい値)が格納されている。ロードセルの荷重の変化が、スキージ用しきい値を超える場合、制御装置9の演算部90は、当該荷重変化が、スキージ23fがスクリーンマスク32の上面に当接したことによるものであると判別する。スキージ23fがスクリーンマスク32の上面に当接したと判別した場合は、図4に示すように、制御装置9の駆動回路95により、スキージ用サーボモータ72fを停止する。
【0046】
それから、図6に示すように、回路基板Bをスクリーンマスク32の下面に当接させる。具体的には、まず、図1、図6に示すように、一対のコンベアベルト60f、60rにより、回路基板Bを、バックアップピン501上方の所定の位置に配置する。
【0047】
次いで、制御装置9の駆動回路94により、バックアップテーブル用サーボモータ502を駆動する。バックアップテーブル用サーボモータ502を駆動すると、図6に示すように、シャフト503aが軸回りに回転する。このため、ナット503b、ナット側テーブル504、バックアップテーブル500、複数のバックアップピン501が上昇する。回路基板Bは、複数のバックアップピン501により、一対のコンベアベルト60f、60rから、持ち上げられる。回路基板Bは、回路基板Bの上面の高さと、固定クランプ40fおよび可動クランプ40rの上面の高さと、が面一に揃うまで持ち上げられる。
【0048】
回路基板Bの上面の高さと、固定クランプ40fおよび可動クランプ40rの上面の高さと、が面一に揃ったら、図4に示すように、制御装置9の駆動回路94により、バックアップテーブル用サーボモータ502を停止する。この際、バックアップテーブル用エンコーダ502aから制御装置9に、回路基板Bの高度データが伝送される。回路基板Bの高度データは、記憶部91に格納される。
【0049】
続いて、図6に示すように、可動クランプ40rを前方に動かすことにより、固定クランプ40fと可動クランプ40rとで、回路基板Bを前後方向から挟持する。その後、制御装置9の駆動回路93により、メインテーブル用サーボモータ52を駆動する。メインテーブル用サーボモータ52を駆動すると、図6に示すように、シャフト530が軸回りに回転する。このため、ナット531、ナット側テーブル54、メインテーブル51、バックアップ装置50、クランプ装置4、搬送装置6、回路基板Bが上昇する。回路基板Bの上面がスクリーンマスク32の下面に当接すると、その衝撃が、スクリーンマスク32の上面に当接しているスキージ装置2fを介して、ロードセル75fに伝達される。このため、ロードセル75fの荷重が変化する。
【0050】
一方、制御装置9の記憶部91には、ロードセル75fの荷重の変化に対する基板用しきい値(回路基板Bがスクリーンマスク32の下面に当接したことによる荷重変化と、ノイズによる荷重変化と、を判別するためのしきい値)が格納されている。ロードセルの荷重の変化が、基板用しきい値を超える場合、制御装置9の演算部90は、当該荷重変化が、回路基板Bがスクリーンマスク32の下面に当接したことによるものであると判別する。
【0051】
回路基板Bがスクリーンマスク32の下面に当接したと判別した場合は、図4に示すように、制御装置9の駆動回路95により、メインテーブル用サーボモータ52を停止する。この際、メインテーブル用エンコーダ520から制御装置9に、回路基板Bの高度データが伝送される。回路基板Bの高度データは、記憶部91に格納される。
【0052】
その後、記憶部91に格納された、バックアップテーブル用エンコーダ502aによる高度データと、メインテーブル用エンコーダ520による高度データと、から基板印刷高度が算出される。算出された基板印刷高度は、記憶部91に格納される。当該基板印刷高度を用いて、段取り替え後に、回路基板Bに対するはんだの印刷が行われる。
【0053】
[作用効果]
次に、本実施形態のスクリーン印刷機の作用効果について説明する。本実施形態のスクリーン印刷機1によると、基板印刷高度を測定する際、実際に回路基板Bが用いられる。このため、測定の際に回路基板Bが用いられない場合と比較して、基板印刷高度の測定精度が高くなる。したがって、印刷時における、回路基板Bの上面と、スクリーンマスク32の下面と、の密着度を高くすることができる。
【0054】
また、印刷時においては、搬送高度(図1参照)から基板印刷高度(図6参照)まで、回路基板Bを上昇させる必要がある。基板昇降装置5、バックアップテーブル用エンコーダ502a、メインテーブル用エンコーダ520は、本来、回路基板Bを上昇させるために用いられるものである。また、ロードセル75f、75rは、本来、印刷時にスクリーンマスク32やはんだからスキージ23fに加わる荷重(印圧)を検出するために用いられるものである。本実施形態のスクリーン印刷機1によると、既設のこれらの装置を流用して、基板印刷高度を測定することができる。このため、本実施形態のスクリーン印刷機1は汎用性が高い。
【0055】
また、本実施形態のスクリーン印刷機1によると、機械的に基板印刷高度を測定することができる。つまり、回路基板Bの上面と、スクリーンマスク32の下面と、の密着度に関して、属人性を排除することができる。このため、密着度を高くすることができる。また、オペレーターの作業負荷を軽減することができる。
【0056】
また、本実施形態のスクリーン印刷機1によると、スキージ23fがスクリーンマスク32の上面に当接した時点で、スキージ23fの下降が停止される。このため、スキージ23fの圧接力により、スクリーンマスク32が下方に撓むおそれが小さい。したがって、回路基板Bをスクリーンマスク32の下面に当接させる際、つまり基板印刷高度を測定する際、基板印刷高度が低く見積もられるおそれが小さい。よって、基板印刷高度の測定精度がさらに高くなる。
【0057】
また、本実施形態のスクリーン印刷機1によると、回路基板Bの生産時において、測定→印刷→印刷→印刷という工程が、実行される。すなわち、基板印刷高度の測定は、段取り替えのタイミングで行われる。このため、印刷ごとに、逐一、基板印刷高度の測定を行う場合と比較して、生産のダウンタイムが小さくなる。
【0058】
また、回路基板Bの種類による上下方向厚さの違いを、基板印刷高度に反映させることができる。このため、基板印刷高度の測定精度がさらに高くなる。また、スクリーンマスク32の種類による上下方向厚さの違いを、基板印刷高度に反映させることができる。このため、基板印刷高度の測定精度がさらに高くなる。
【0059】
<第二実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、スクリーン印刷機に、スキージとは別体の高度測定具が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図7に、本実施形態のスクリーン印刷機のマスク装置付近の基板印刷高度測定時の前面図を示す。なお、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0060】
図7に示すように、ロードセル75fの下面には、エアシリンダ80が取り付けられている。エアシリンダ80は、シリンダ本体800と、ピストン801と、を備えている。シリンダ本体800は、円筒状を呈している。シリンダ本体800には、配管(図略)を介して、空気が給排される。空気の給排により、ピストン801は、シリンダ本体800に対して、下方に伸縮可能である。ピストン801の下端には、高度測定具81が配置されている。高度測定具81は、スキージ23f同様の形状を呈している。高度測定具81は、スキージ23fから独立して、スクリーンマスク32の上面に当接することができる。基板印刷高度の測定は、回路基板にはんだを印刷する直前に行われる。このため、回路基板の生産時においては、測定→印刷→測定→印刷という工程が、繰り返し実行される。
【0061】
本実施形態のスクリーン印刷機によると、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態のスクリーン印刷機と同様の作用効果を有する。また、本実施形態のスクリーン印刷機によると、スキージ23fを用いずに、基板印刷高度を測定することができる。このため、はんだによりスクリーンマスク32が汚れにくい。
【0062】
また、第一実施形態のスクリーン印刷機の場合、回路基板の生産時において、測定→印刷→印刷→印刷という工程が、実行される。すなわち、基板印刷高度の測定は、段取り替えのタイミングで行われる。
【0063】
しかしながら、同じ種類の回路基板であっても、上下方向厚さがばらついている場合がある。この場合、段取り替え時だけ基板印刷高度の測定を行っても、当該ばらつきに起因する誤差が、基板印刷高度に発生してしまう。
【0064】
この点、本実施形態のスクリーン印刷機によると、回路基板の生産時において、測定→印刷→測定→印刷という工程が、繰り返し実行される。すなわち、たとえ同じ種類の回路基板であっても、印刷対象となる回路基板が変わるたびに、逐一、基板印刷高度の測定が行われる。このため、同じ種類の回路基板における上下方向厚さのばらつきを、基板印刷高度に反映させることができる。したがって、基板印刷高度の測定精度がさらに高くなる。
【0065】
<その他>
以上、本発明のスクリーン印刷機の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0066】
上記実施形態においては、図6に示すように、基板印刷高度測定時に、固定クランプ40fと可動クランプ40rとで挟持することにより、回路基板Bを固定した。しかしながら、例えば、上面に吸着孔を有するバックアップテーブル500を用いてもよい。そして、当該吸着孔から供給される負圧により、回路基板Bを固定してもよい。また、回路基板Bを固定せずに、つまり水平方向に回路基板Bが動く状態で、基板印刷高度を測定してもよい。こうすると、基板印刷高度の測定に要する時間が短くなる。
【0067】
また、上記実施形態においては、ロードセル75fの荷重変化を基に、演算部90が、「スキージ23fまたは高度測定具81がスクリーンマスク32の上面に当接したこと」、および「回路基板Bがスクリーンマスク32の下面に当接したこと」を判別した。
【0068】
しかしながら、図7に示すようなエアシリンダ80を用いて、スキージ23fまたは高度測定具81を昇降させる場合、シリンダ本体800の内圧測定用の圧力計の圧力変化を基に、演算部90が、「スキージ23fまたは高度測定具81がスクリーンマスク32の上面に当接したこと」、および「回路基板Bがスクリーンマスク32の下面に当接したこと」を判別してもよい。この場合、圧力計は、本発明の「荷重センサ」の概念に含まれる。
【0069】
また、上記実施形態においては、ロードセル75fの荷重変化を基に、演算部90が、「スキージ23fまたは高度測定具81がスクリーンマスク32の上面に当接したこと」を判別した。すなわち、当接判別を行った。しかしながら、当接判別時のスキージ用サーボモータ72fのスキージ用エンコーダからの高度情報を記憶部91に格納し、その後は当該高度情報を基に当接判別を行ってもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、スクリーン印刷機1に二つのスキージ23fを配置したが、単一のスキージ23fを配置してもよい。また、スキージ23fの移動方向は、左右方向でもよい。また、回路基板Bに対する塗布物は特に限定しない。電子部品仮止め用の接着剤などを用いてもよい。
【0071】
また、基板印刷高度の測定タイミングは特に限定しない。例えば、スクリーンマスク32の交換時に、基板印刷高度の測定を行ってもよい。または、スクリーンマスク32の張設力が経時的に小さくなりスクリーンマスク32に弛みが発生した際に、基板測定高度の測定を行ってもよい。こうすると、スクリーンマスク32の経時的変形による上下方向厚さの変化を、基板印刷高度に反映させることができる。このため、基板印刷高度の測定精度がさらに高くなる。
【符号の説明】
【0072】
1:スクリーン印刷機、2f:スキージ装置、2r:スキージ装置、3:マスク装置、4:クランプ装置、5:基板昇降装置、6:搬送装置、7:スキージ昇降装置、8:Y軸方向ガイドレール、9:制御装置。
20f:スプリング座、21f:ロッド、22f:保持部、23f:スキージ、24f:コイルスプリング、30:フレーム、31:メッシュ、32:スクリーンマスク、40f:固定クランプ、40r:可動クランプ、50:バックアップ装置、51:メインテーブル、52:メインテーブル用サーボモータ、53:ボールねじ部、54:ナット側テーブル、60f:コンベアベルト、60r:コンベアベルト、70:Y軸方向被ガイド部、72f:スキージ用サーボモータ、72r:スキージ用サーボモータ、73f:ボールねじ部、73r:ボールねじ部、74f:ナット側テーブル、74r:ナット側テーブル、75f:ロードセル(荷重センサ)、75r:ロードセル(荷重センサ)、80:エアシリンダ、81:高度測定具、90:演算部、91:記憶部、92:入出力ポート、93〜96:駆動回路。
210f:フランジ部、220f:ロッド係止孔、221f:面取部、500:バックアップテーブル、501:バックアップピン、502:バックアップテーブル用サーボモータ、502a:バックアップテーブル用エンコーダ(高度センサ)、503:ボールねじ部、503a:シャフト、503b:ナット、504:ナット側テーブル、520:メインテーブル用エンコーダ(高度センサ)、530:シャフト、531:ナット、730f:シャフト、731f:ナット、800:シリンダ本体、801:ピストン。
B:回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンマスクと、
該スクリーンマスクの上面に摺接するスキージと、
該スクリーンマスクから該スキージに加わる荷重を検出する荷重センサと、
該スクリーンマスクの下面に当接するまで、回路基板を上昇させる基板昇降装置と、
該回路基板の高度を検出する高度センサと、
該荷重センサから入力される該荷重の変化を基に、該回路基板が該スクリーンマスクの該下面に当接したことを判別し、該高度センサから入力される当接時の該回路基板の高度を基に得られる基板印刷高度を記憶する制御装置と、
を備えるスクリーン印刷機。
【請求項2】
さらに、前記スクリーンマスクの前記上面に当接するまで、前記スキージを下降させるスキージ昇降装置を備え、
該スキージ昇降装置は、該スキージを下降させ、
前記制御装置は、前記荷重センサから入力される前記荷重の変化を基に、下降中の該スキージが該スクリーンマスクの該上面に当接したことを判別し、
該スキージ昇降装置は、該スキージを停止し、
前記基板昇降装置は、該スキージが該スクリーンマスクの該上面に当接した状態で、前記回路基板を上昇させ、
該制御装置は、該荷重センサから入力される該荷重の変化を基に、該回路基板が該スクリーンマスクの該下面に当接したことを判別し、前記高度センサから入力される当接時の該回路基板の高度を基に得られる基板印刷高度を記憶する請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
スクリーンマスクと、
該スクリーンマスクの上面に摺接するスキージと、
該スキージから独立して、該スクリーンマスクの該上面に当接する高度測定具と、
該スクリーンマスクから該高度測定具に加わる荷重を検出する荷重センサと、
該スクリーンマスクの下面に当接するまで、回路基板を上昇させる基板昇降装置と、
該荷重センサから入力される該荷重の変化を基に、該回路基板が該スクリーンマスクの該下面に当接したことを判別する制御装置と、
を備えるスクリーン印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66558(P2012−66558A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215701(P2010−215701)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】