スクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版
【課題】スクリーンメッシュの変形が防止され、高精度の印刷を繰り返し行うことができるスクリーン印刷用メッシュを提供する。
【解決手段】スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とする、スクリーン印刷用メッシュ。
【解決手段】スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とする、スクリーン印刷用メッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、所望の画像ないしパターンを大量かつ効率的に形成する方法として、スクリーン印刷法があって、例えば各種の電子部品の配線パターンや電極等の形成に広く用いられている。近年、電子部品等の小型化、高性能化等の要求に応じて、スクリーン印刷にも更なる高精度化が求められている。
【0003】
その中でも結晶系太陽電池の表電極印刷へのスクリーン印刷の要求は非常に高いものがあり、受光面積拡大のため、「より細く、より高い」印刷が望まれている。
【0004】
「より細く、より高い」電極形成に対して、複数回重ね印刷を行なう手法がある。
【0005】
これは、プラズマディスプレィのリブ形成に対してスクリーン印刷手法を用いるときに頻繁に使われた手法であるが、所望の厚みを得るために10〜15回の重ね印刷を要する上、位置精度が不十分であったため、今日では量産で採用されている事例は無いと思われる。
【0006】
このことから、複数回の重ね印刷を高精度かつ長期間安定して行うために、スクリーン印刷版には優れた寸法安定性および耐久性等が求められている。
【0007】
また、電極線幅が細くなるにつれ、製版を構成するメッシュそのものが電極形成用のペーストの吐出を阻害することが明確であるため、開口部のメッシュの影響がより少ない形状および組成のメッシュへの期待が高まっている。
【0008】
一般に、スクリーン印刷は、版枠にメッシュ状のスクリーンを張設し、このスクリーンに、インクないしペーストを透過しない部分と透過する部分とを設けて被印刷体に所望の画像ないしパターンが形成させるような版を作製し、これにインクないしペーストをスキージして被印刷体にインクないしペーストを付着させることによって行なわれる。高精度な印刷を安定的に実現するために、スクリーンには、印刷面の優れた寸法安定性と、適度な弾性、剛性等を具備していることが重要になる。
【0009】
スクリーン印刷に際しては、スキージをスクリーン面に押圧しながら摺動を行うことがなされるが、スクリーンを構成する各糸、特にスキージの摺動方向に平行方向に張設されてた糸には、このスキージの摺動によって、その断面方向への押圧ならびに糸の長手方向への伸張がなされることになる。これにより、スキージの摺動が繰り返されるにつれ、スクリーンを構成する各糸には次第にストレスが蓄積され、その弾性、剛性、伸縮性等が劣化してスクリーン印刷に適さないようになることがある。
【0010】
この状況に鑑みて、ステンレススクリーンにメッキを施すことで、変形そのものを抑制するという手法も提案されている。これは、支持体であるスクリーンをスキージで擦ることによってインキを転写させるため、スクリーンの交点部分がずれてしまい、画像の歪みとなるため、メッキ皮膜を形成することにより、交点の動きを止めてしまうという発想である(特許第2813851号公報、特開2000−177099号公報)
しかしながら、ステンレススクリーンにメッキを施すことで、糸系が太くなってしまい高細線印刷に不適であるうえ、メッキ処理による厚みバラツキやコストなどの点で改良が求められている。
【0011】
また、高い印刷精度を要求する電気電子部品用途においては、コンビネーション版というものが提唱・使用されてきた。これは弾性の大きいポリエステルスクリーンを印圧エリアの外周部に用い、精度を要する印刷エリアにはステンレススクリーンを用いる複合構成の版である(特開2001−171080号公報、特許第30787756号公報)。
【0012】
しかしながら、本発明者らが知る限りでは、その効果は充分なものではなく、印刷位置の回転変形が発生してしまう場合があると思われる。印刷位置の回転変形が発生する原因としては、印刷版に対して、スクリーンメッシュに角度を持たせて紗張りすることがあげられる。これはバイアス角度とよばれていて、スクリーン印刷を行なう際に、印刷する画像とスクリーンメッシュが干渉することを防ぐための手法であり、電子電気部品の印刷においては、20°から45°傾けて貼り付けることが一般的である。これにより、画像とスクリーンメッシュとの干渉が改善されるものの、実際に印刷を行なうときには、スキージをスクリーン版に平行に設置し、スクリーンメッシュを擦りつけることで、インキを転写する。そのため、バイアス角度方向にストレスが掛かってしまい、結果として印刷位置の回転変形が発生してしまう。
【特許文献1】特許第2813851号公報
【特許文献2】特開2000−177099号公報
【特許文献3】特開2001−171080号公報
【特許文献4】特許第30787756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記のように、スキージ摺動方向とスクリーンの糸の方向とにある程度の角度をもたせたものは、スキージの摺動が繰り返されることによってスクリーンのメッシュに変形が生じやすく、これがスクリーン上に形成されたマスクパターンに歪みや、割れ、欠け等を発生させるおそれがあった。
【0014】
また、印刷パターンによっては、場合により、スクリーンの糸と印刷パターンとが干渉してしまい、印刷されたパターンに欠け、かすれ、モアレ等が発生することがあった。この問題点は、糸の細線化や織密度を低下させることによって解消される場合もあるが、しかし、糸の細線化や織密度の低下はスクリーンの変形防止の観点からは一般的に不利となる。そして、特に緻密な印刷パターンをより正確にスクリーン印刷を行うためにも、織密度を過度に低下させることは好ましくない。
【発明が解決するための手段】
【0015】
本発明は、スクリーンの変形が防止され、高精度の印刷を繰り返して行うことができるスクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版に関するものである。
【0016】
したがって、本発明によるクリーン印刷用メッシュは、スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とするもの、である。
【0017】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記横糸が糸径10〜50μmのものである、請求項1に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【0018】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記縦糸が糸径10〜50μmのもの、を包含する。
【0019】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記スクリーンの横糸と縦糸との交差部において、その横糸および縦糸の少なくとも一方の断面が変形しているもの、を包含する。
【0020】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記のスクリーン印刷用メッシュの縦方向への強度と横方向への強度との比が5以上のもの、を包含する。
〔 ここで、縦方向への強度と横方向への強度との比とは、下記を意味する。
縦方向への強度と横方向への強度との比 = (横糸本数(本/インチ)/縦糸本数(本/インチ))×(横糸断面積/縦糸断面積)×(横糸の引っ張り強度(N/mm2)/縦糸の引っ張り強度(N/mm2)) 〕
また、本発明によるクリーン印刷版は、上記のスクリーン印刷用メッシュが版枠内に張設されてなるスクリーン印刷版であって、このスクリーン印刷用メッシュの縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度以上10度未満であることを特徴とするもの、である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるクリーン印刷用メッシュは、スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されているものであることから、スクリーンメッシュの変形が防止されたものであって、高精度の印刷を繰り返し行うことができるものである。
【0022】
本発明は、スクリーンの縦糸および横糸のそれぞれの強度、織り密度ならびにこれらの特定の相関関係によって、スクリーンメッシュの変形が効果的に防止されている。スクリーンメッシュの変形が効果的に防止されることは、縦糸および横糸の細線化を可能とし、この細線化はモアレの発生を抑制に寄与するとともに、縦糸および横糸の織密度を高めて高精度印刷を容易にし、さらに、バイアス角を最小化でき、場合によってはバイアス角を0°とすることができる。これらの相乗的作用によって、スクリーンメッシュの変形防止、耐久性の向上ならびに印刷の高精度化が高度に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるスクリーン印刷用メッシュの好ましい一具体例の概要を示す図である。
【図2】本発明によるスクリーン印刷版の好ましい一具体例の概要を示す図である。
【図3】本発明によるスクリーン印刷版の他の好ましい一具体例の概要を示す図である。
【図4】寸法精度評価用の認識マークの形成位置を示す図である。
【図5】実施例3のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図6】実施例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図7】実施例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図8】比較例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図9】比較例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図10】比較例6のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図11】実施例3のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図12】実施例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図13】実施例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図14】比較例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図15】比較例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図16】比較例6のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<スクリーン印刷用メッシュ>
本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とするもの、である。
【0025】
ここで、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸」において、「実質的に直角」とは、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向とスクリーンメッシュの横糸との間の角度が直角(即ち、90度)およびその前後10度未満の範囲内」であることを意味する。また、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸」において、「実質的に平行」とは、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向とスクリーンメッシュの縦糸とが平行あるいはスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向と縦糸との間の角度が10度未満の範囲内」であることを意味する。なお、本発明においては、縦糸の「縦」とは、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に沿った方向(即ち、平行方向)を「縦」と捉え、横糸の「横」とは、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との直角方向を「横」と捉えたものである。このことから明らかな通り、「縦」および「横」は、例えば外形が長方形のスクリーンメッシュにおけるその辺の長さの違いに基づいて定められたものではない。
【0026】
以下、必要に応じ、図面を参照しながら本発明を説明する。
【0027】
図1は、本発明によるスクリーン印刷用メッシュ1の好ましい一具体例の概要を示す図である。。
【0028】
本発明によるクリーン印刷用メッシュ1において、横糸2は、引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものである。引っ張り強度が2500N/mm2未満である場合には、目的である寸法精度が低下してしまい、一方、3000N/mm2超過である場合には、スクリーンメッシュに織ることが困難になることから好ましくない。なお、本明細書において、「引っ張り強度」とは、JIS G 4309によって定められたものを言う。
【0029】
横糸2の織密度は、200〜400本/インチ、好ましくは250〜300本/インチ、のものである。織密度が200本/インチ未満である場合には、高細線の画像形成が困難であり、一方、400本/インチ超過である場合には、平織りが困難であることから好ましくない。
【0030】
横糸2の直径は、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは15〜30μm、である。横糸2の直径が10μm未満である場合には、糸の強度が不十分であり、一方、50μm超過である場合には、高細線の画像形成が困難であることから好ましくない。従って、横糸2の断面積は、好ましくは78.5〜1962.5μm2、特に好ましくは176.6〜706.5μm2、である。
【0031】
本発明によるクリーン印刷用メッシュにおいて、縦糸3は、引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものである。引っ張り強度が1000N/mm2未満である場合には目的である寸法精度が低下してしまい、一方、1500N/mm2超過である場合には、横方向の強度に近似してしまうため本願発明による効果が低下してしまうことから好ましくない。縦糸3の織密度は、50〜100本/インチ、好ましくは70〜80本/インチ、である。織密度が50本/インチ未満である場合には、印刷時のストレスを吸収しきれずに永久歪みや破断してしまい、100本/インチ超過である場合には、印刷時のストレスを吸収しきれずに、横方向への伸縮を発生させてしまうことから好ましくない。
【0032】
縦糸3の直径は、10〜50μm、好ましくは15〜30μm、である。縦糸3の直径が10μm未満である場合には、糸の強度が不十分であり、一方、50μm超過である場合には、高細線の画像形成が困難であることから好ましくない。従って、縦糸3の断面積は、好ましくは78.5〜1962.5μm2、特に好ましくは176.6〜706.5μm2、である。
【0033】
本発明によるクリーン印刷用メッシュ1を構成している複数本の横糸2は、それぞれ引っ張り強度および直径に関して同一であるのが通常でありかつ好ましいが、場合により異なっていてもよい。また、本発明によるクリーン印刷用メッシュ1を構成している複数本の縦糸3は、それぞれ引っ張り強度および直径に関して同一であるのが通常でありかつ好ましいが、場合により異なっていてもよい。
【0034】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュ1の横糸2および縦糸3は、金属製であることが好ましく、特にステンレス製およびタングステン製のものが好ましい。
【0035】
また、本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、平織および綾織りのいずれでも良いが、好ましくは平織のものである。
【0036】
横糸2および縦糸3は、各糸の引っ張り強度が比較的高い場合、織密度はそれ程高くなくても必要な変形防止性を得ることができるが、各糸の引っ張り強度が比較的低い場合、織密度はある程度高いことが好ましい。また、各糸の引っ張り強度が高ければ、各糸を細線化でき、この細線化によって縦糸および横糸の織密度を高めることができるので、高精度印刷が可能になる。
【0037】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュにおいて、スクリーンメッシュの変形防止、印刷の高精度化および耐久性の向上等の効果が、総合的にバランスよく達成されるのは、スクリーン印刷用メッシュの縦方向への強度と横方向への強度との比が5以上である。
【0038】
ここで、縦方向への強度と横方向への強度との比とは、下記を意味する。
【0039】
縦方向への強度と横方向への強度との比 = (横糸本数(本/インチ)/縦糸本数(本/インチ))×(横糸断面積/縦糸断面積)×(横糸の引っ張り強度(N/mm2)/縦糸の引っ張り強度(N/mm2))
【0040】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュ1は、横糸2と縦糸3との交差部4において、その横糸2および縦糸3が固定されていることが好ましい。これによって、横糸2および縦糸3のズレが防止され、スクリーン印刷用メッシュ1の各網み目変形およびスクリーン印刷用メッシュ1の全体の変形等が防止される。
【0041】
横糸2と縦糸3とをその交差部4において固定する方法は、例えば接着剤を用いることによって行うことができるが、本発明においては、好ましくは横糸2および縦糸3の少なくとも一方の断面を交差部4において変形させること、特に横糸2および縦糸3の両者の断面を変形させることが好ましい。ここで、横糸2または縦糸3の断面を変形させる方法は任意であるが、本発明においてはカレンダー加工による方法が特に好ましい。なお、横糸2および縦糸2の固定化は、必ずしも全ての箇所の交差部において行われている必要はない。また、横糸2および縦糸3の断面の変形は横糸と縦糸との交差部4のみであってもよいが、交差部4に加えて交差部4以外の部分が変形している場合も好ましい。
【0042】
上記のスクリーン印刷用メッシュ1は版枠に張設した後、スクリーン印刷版にすることができるものである。
【0043】
<スクリーン印刷版>
本発明によるスクリーン印刷版は、図2に示されるように、上記のスクリーン印刷用メッシュ1が版枠5内に張設されてなるスクリーン印刷版6であって、このスクリーン印刷用メッシュ1の縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向7との間の角度θが0度以上10度未満であることを特徴とするもの、である。
【0044】
ここで、「スクリーン印刷用メッシュの縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度」とは、スクリーン印刷用メッシュ1の縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向6とが「平行」、即ち、縦糸の方向とスキージ摺動方向とが一致すること、を意味する。このような縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向7とが「平行」(即ち、縦糸の方向とスキージ摺動方向とが一致)する印刷版は、本発明の特に好ましい具体例である。
【0045】
本発明によるスクリーン印刷版は、従来の一般的なスクリーン印刷版と同様に、そのスクリーン印刷用メッシュの少なくとも一部分に、例えば感光性樹脂材料等を用いて印刷パターンを形成した後に、スクリーン印刷に用いることができるものである。
【0046】
本発明によるスクリーン印刷版は、上記の通りの特定のスクリーン印刷用メッシュを採用していることから、スクリーンメッシュの変形が防止されている。このことから、スクリーン印刷の際のスキージの摺動が繰り返されたとしても、高精度の印刷を行うことができるものである。スクリーンメッシュの変形が防止されていることは、単にスクリーン版の耐久性が優れているだけでなく、より緻密な高精度のスクリーン印刷が容易に行えること、より高いスキージ圧を採用できること、硬質のスキージを採用可能になること、スクリーンメッシュの張設力の高度化を図れること、スクリーン面積の拡大による精度低下が抑制されること等の観点からも好ましい。
【0047】
上記のスクリーン印刷用メッシュ1は、図2に示されるように、版枠5に直接に張設されることができるが、例えば図3に示されるように、他のスクリーン8を介して版枠5に張設されることができる。ここで、他のスクリーン8の好ましい具体例としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ベクトラン等の樹脂製スクリーンを挙げることができる。このような樹脂製スクリーンを他のスクリーン8として用いることにより、この他のスクリーンスクリーン8の伸縮性に基づく適度な柔軟性がスクリーン印刷用メッシュ1に付与されて、スクリーンメッシュ1の変形防止、耐久性の向上、印刷精度の向上を更に図ることができる。
【0048】
したがって、本発明によるスクリーン印刷版は、上記のスクリーン印刷用メッシュ1が他のスクリーン8を介して版枠5内に張設されてなるスクリーン印刷版60であって、このスクリーン印刷用メッシュ1の縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向7との間の角度θが0度以上10度未満であるものを、好ましい具体例として包含する。
【0049】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版は、より緻密な高精度のスクリーン印刷に適したものであって、とりわけ横方向への位置精度が求められるスクリーン印刷、例えば複数回の重ね印刷や、バックコンタクトセル、選択エミッター、ディスプレイの蛍光体の作製に好適なものである。
【実施例】
【0050】
以下、本発明によるスクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版の好ましい具体例を更に説明する。
【0051】
<実施例1>
引っ張り強度が2500N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が1000N/mm2で、直径が30μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン1を得た。このスクリーン1は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が250本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が70本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が6.20のものであった。
【0052】
<実施例2>
引っ張り強度が3000N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が25μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン2を得た。このスクリーン2は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が230本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が70本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が7.58のものであった。
【0053】
<比較例1>
引っ張り強度が2500N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が2500N/mm2で、直径が25μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン3を得た。このスクリーン3は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が230本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が230本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が1.00のものであった。
【0054】
<比較例2>
引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が30μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が30μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン4を得た。このスクリーン4は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が250本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が250本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が1.00のものであった。
【0055】
<比較例3>
引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が3000N/mm2で、直径が25μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン5を得た。このスクリーン5は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が70本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が230本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が0.13のものであった。
【0056】
<実施例3>
(1) 実施例1のスクリーン1(縦300mm×横300mmの正方形)を内部スクリーンとし、ポリエステル製のメッシュ(糸径:50μm、織密度:180本/インチ)を外部スクリーンとして、これらが版枠(縦550mm(内径)×横500mm(内径)の正方形)に張設されたコンビネーションスクリーンを常法に従って作成した。そのときのテンションは、0.75〜0.80mm(プロテック社製テンションゲージ 「STG75B」)であった。このコンビネーションスクリーンは、内部スクリーンであるスクリーン1が、その縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度となるように張設されているものである。外部スクリーンの紗張り角度は0°とした。
(2) このコンビネーションスクリーンの内部スクリーン(スクリーン1)の全領域に、縦300mm×横300mmの正方形の直間法フィルム(ムラカミ社製、「MS−FILM」)を用いて、画像再現性評価用のストライプパターン(線幅:50〜100μm)と寸法精度評価用の認識マーク(詳細後記)とが混在したテストパターンが形成された製版を得た。
この製版について、「画像再現性」の評価を行なった。結果は、表2に示される通りである。
そして、上記の製版について、「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価を行った。結果は、表2、表3および図5に示される通りである。
(3) 次いで、この製版について、印刷機(マイクロテック社製、「MT−550TV」)を用い下記の印刷条件でスクリーン印刷を行い、15000ショットの印刷後における「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価を行なった。
【0057】
結果は、表2、表3および図11に示される通りである。
【0058】
印刷条件
スキージ:平スキージ 硬度 70°
スキージ角度:70°
クリアランス:1.5mm
印圧:0.20MPa
背圧:0.05MPa
スキージ速度:150mm/sec.
【0059】
画像再現性の評価
画像再現性の評価は、以下のようにして行った。
印刷方向と平行の線幅100μmの部分において、
メッシュの存在率が15%以下のものを◎と、
メッシュの存在率が15%超〜30%以下のものを○と、
メッシュの存在率が30%超〜60%以下のものを△と、
メッシュの存在率が60%超のものを×と、評価した。
【0060】
寸法精度の評価
寸法精度評価用の認識マークは、図4に示されるような、前記の縦300mm×横300mmの直間法フィルム8のA点〜I点の箇所に、製版時の露光段階において形成されたものである。ここで、A点は、スキージの開始側に存在するA〜C点のうち一番端に存在する点であるが、これを寸法精度評価時の基準点(原点)として扱う。
【0061】
上記の「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価は、上記A点〜I点の位置が、製版によってどのように変動するかを評価することによって行った。図5および表3には、作成された製版におけるA点〜I点の位置が示されている。
【0062】
上記の「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価は、上記A点〜I点の位置が、15000ショットの印刷後に、どのように変動するかを評価することによって行った。評価結果は、図11および表4に示されている。
【0063】
なお、図5および図11には、A点〜I点の付近に、中心を等しくする2つの正方形が9組示されている。これらは、A点〜I点の位置の変動量を視覚的に判りやすく表示するための指標であって、内側の小さい正方形の1辺は5μmの長さを、外側の大きい正方形の1辺は10μmの長さを示している。9組の正方形の各中心点の間の距離は不動となっているので、各組の正方形の中心点とA点〜I点の各点との関係から、A点〜I点の位置の変動量および変動方向を容易に導きだすことができる。
【0064】
表3および表4は、A点〜I点の位置を数値で表現したものである。
【0065】
これらの表には、9組の正方形の各中心点と、A点〜I点の各点との間の位置のずれ量が示されている。例えば、B点について、Xが−2.0、Yが1.0と示されている場合、B点が、正方形の中心点より、X軸方向に「−2.0μm」、Y軸方向に「+1.0μm」ずれていることを意味している。
【0066】
<実施例4〜5および比較例4〜6>
内部スクリーンの種類および角度等を表2に示されるように変えた以外は、実施例3と同様にして、コンビネーションスクリーンを作成し、さらに製版を作成した。
【0067】
実施例3と同様に、「画像再現性」および「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価を行なった。
【0068】
結果は、表2、表3および図6〜図10に示される通りである。
【0069】
(3) 次いで、実施例3と同様にスクリーン印刷を行って、15000ショット印刷後における「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価を行なった。
【0070】
結果は、表2、表4および図12〜図16に示される通りである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0071】
<まとめ>
上記から明らかになるように、実施例のスクリーンメッシュは、製版において画像部でのメッシュの影響が最小限に抑えられており、印刷位置精度においても、印刷方向への伸びはあるものの、課題である横方向のズレは最小限に抑えられることが確認できる。
【0072】
これに対して、比較例のスクリーンメッシュは、製版での画像再現性が十分でなく、開口部に対するメッシュの影響が強く出ていることと、寸法精度、特に印刷後の寸法精度が十分でないことが判る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、所望の画像ないしパターンを大量かつ効率的に形成する方法として、スクリーン印刷法があって、例えば各種の電子部品の配線パターンや電極等の形成に広く用いられている。近年、電子部品等の小型化、高性能化等の要求に応じて、スクリーン印刷にも更なる高精度化が求められている。
【0003】
その中でも結晶系太陽電池の表電極印刷へのスクリーン印刷の要求は非常に高いものがあり、受光面積拡大のため、「より細く、より高い」印刷が望まれている。
【0004】
「より細く、より高い」電極形成に対して、複数回重ね印刷を行なう手法がある。
【0005】
これは、プラズマディスプレィのリブ形成に対してスクリーン印刷手法を用いるときに頻繁に使われた手法であるが、所望の厚みを得るために10〜15回の重ね印刷を要する上、位置精度が不十分であったため、今日では量産で採用されている事例は無いと思われる。
【0006】
このことから、複数回の重ね印刷を高精度かつ長期間安定して行うために、スクリーン印刷版には優れた寸法安定性および耐久性等が求められている。
【0007】
また、電極線幅が細くなるにつれ、製版を構成するメッシュそのものが電極形成用のペーストの吐出を阻害することが明確であるため、開口部のメッシュの影響がより少ない形状および組成のメッシュへの期待が高まっている。
【0008】
一般に、スクリーン印刷は、版枠にメッシュ状のスクリーンを張設し、このスクリーンに、インクないしペーストを透過しない部分と透過する部分とを設けて被印刷体に所望の画像ないしパターンが形成させるような版を作製し、これにインクないしペーストをスキージして被印刷体にインクないしペーストを付着させることによって行なわれる。高精度な印刷を安定的に実現するために、スクリーンには、印刷面の優れた寸法安定性と、適度な弾性、剛性等を具備していることが重要になる。
【0009】
スクリーン印刷に際しては、スキージをスクリーン面に押圧しながら摺動を行うことがなされるが、スクリーンを構成する各糸、特にスキージの摺動方向に平行方向に張設されてた糸には、このスキージの摺動によって、その断面方向への押圧ならびに糸の長手方向への伸張がなされることになる。これにより、スキージの摺動が繰り返されるにつれ、スクリーンを構成する各糸には次第にストレスが蓄積され、その弾性、剛性、伸縮性等が劣化してスクリーン印刷に適さないようになることがある。
【0010】
この状況に鑑みて、ステンレススクリーンにメッキを施すことで、変形そのものを抑制するという手法も提案されている。これは、支持体であるスクリーンをスキージで擦ることによってインキを転写させるため、スクリーンの交点部分がずれてしまい、画像の歪みとなるため、メッキ皮膜を形成することにより、交点の動きを止めてしまうという発想である(特許第2813851号公報、特開2000−177099号公報)
しかしながら、ステンレススクリーンにメッキを施すことで、糸系が太くなってしまい高細線印刷に不適であるうえ、メッキ処理による厚みバラツキやコストなどの点で改良が求められている。
【0011】
また、高い印刷精度を要求する電気電子部品用途においては、コンビネーション版というものが提唱・使用されてきた。これは弾性の大きいポリエステルスクリーンを印圧エリアの外周部に用い、精度を要する印刷エリアにはステンレススクリーンを用いる複合構成の版である(特開2001−171080号公報、特許第30787756号公報)。
【0012】
しかしながら、本発明者らが知る限りでは、その効果は充分なものではなく、印刷位置の回転変形が発生してしまう場合があると思われる。印刷位置の回転変形が発生する原因としては、印刷版に対して、スクリーンメッシュに角度を持たせて紗張りすることがあげられる。これはバイアス角度とよばれていて、スクリーン印刷を行なう際に、印刷する画像とスクリーンメッシュが干渉することを防ぐための手法であり、電子電気部品の印刷においては、20°から45°傾けて貼り付けることが一般的である。これにより、画像とスクリーンメッシュとの干渉が改善されるものの、実際に印刷を行なうときには、スキージをスクリーン版に平行に設置し、スクリーンメッシュを擦りつけることで、インキを転写する。そのため、バイアス角度方向にストレスが掛かってしまい、結果として印刷位置の回転変形が発生してしまう。
【特許文献1】特許第2813851号公報
【特許文献2】特開2000−177099号公報
【特許文献3】特開2001−171080号公報
【特許文献4】特許第30787756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記のように、スキージ摺動方向とスクリーンの糸の方向とにある程度の角度をもたせたものは、スキージの摺動が繰り返されることによってスクリーンのメッシュに変形が生じやすく、これがスクリーン上に形成されたマスクパターンに歪みや、割れ、欠け等を発生させるおそれがあった。
【0014】
また、印刷パターンによっては、場合により、スクリーンの糸と印刷パターンとが干渉してしまい、印刷されたパターンに欠け、かすれ、モアレ等が発生することがあった。この問題点は、糸の細線化や織密度を低下させることによって解消される場合もあるが、しかし、糸の細線化や織密度の低下はスクリーンの変形防止の観点からは一般的に不利となる。そして、特に緻密な印刷パターンをより正確にスクリーン印刷を行うためにも、織密度を過度に低下させることは好ましくない。
【発明が解決するための手段】
【0015】
本発明は、スクリーンの変形が防止され、高精度の印刷を繰り返して行うことができるスクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版に関するものである。
【0016】
したがって、本発明によるクリーン印刷用メッシュは、スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とするもの、である。
【0017】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記横糸が糸径10〜50μmのものである、請求項1に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【0018】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記縦糸が糸径10〜50μmのもの、を包含する。
【0019】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記スクリーンの横糸と縦糸との交差部において、その横糸および縦糸の少なくとも一方の断面が変形しているもの、を包含する。
【0020】
このような本発明によるクリーン印刷用メッシュは、好ましくは、前記のスクリーン印刷用メッシュの縦方向への強度と横方向への強度との比が5以上のもの、を包含する。
〔 ここで、縦方向への強度と横方向への強度との比とは、下記を意味する。
縦方向への強度と横方向への強度との比 = (横糸本数(本/インチ)/縦糸本数(本/インチ))×(横糸断面積/縦糸断面積)×(横糸の引っ張り強度(N/mm2)/縦糸の引っ張り強度(N/mm2)) 〕
また、本発明によるクリーン印刷版は、上記のスクリーン印刷用メッシュが版枠内に張設されてなるスクリーン印刷版であって、このスクリーン印刷用メッシュの縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度以上10度未満であることを特徴とするもの、である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるクリーン印刷用メッシュは、スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されているものであることから、スクリーンメッシュの変形が防止されたものであって、高精度の印刷を繰り返し行うことができるものである。
【0022】
本発明は、スクリーンの縦糸および横糸のそれぞれの強度、織り密度ならびにこれらの特定の相関関係によって、スクリーンメッシュの変形が効果的に防止されている。スクリーンメッシュの変形が効果的に防止されることは、縦糸および横糸の細線化を可能とし、この細線化はモアレの発生を抑制に寄与するとともに、縦糸および横糸の織密度を高めて高精度印刷を容易にし、さらに、バイアス角を最小化でき、場合によってはバイアス角を0°とすることができる。これらの相乗的作用によって、スクリーンメッシュの変形防止、耐久性の向上ならびに印刷の高精度化が高度に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるスクリーン印刷用メッシュの好ましい一具体例の概要を示す図である。
【図2】本発明によるスクリーン印刷版の好ましい一具体例の概要を示す図である。
【図3】本発明によるスクリーン印刷版の他の好ましい一具体例の概要を示す図である。
【図4】寸法精度評価用の認識マークの形成位置を示す図である。
【図5】実施例3のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図6】実施例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図7】実施例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図8】比較例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図9】比較例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図10】比較例6のスクリーン印刷版についての「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図11】実施例3のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図12】実施例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図13】実施例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図14】比較例4のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図15】比較例5のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【図16】比較例6のスクリーン印刷版についての「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<スクリーン印刷用メッシュ>
本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とするもの、である。
【0025】
ここで、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸」において、「実質的に直角」とは、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向とスクリーンメッシュの横糸との間の角度が直角(即ち、90度)およびその前後10度未満の範囲内」であることを意味する。また、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸」において、「実質的に平行」とは、「スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向とスクリーンメッシュの縦糸とが平行あるいはスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向と縦糸との間の角度が10度未満の範囲内」であることを意味する。なお、本発明においては、縦糸の「縦」とは、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に沿った方向(即ち、平行方向)を「縦」と捉え、横糸の「横」とは、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との直角方向を「横」と捉えたものである。このことから明らかな通り、「縦」および「横」は、例えば外形が長方形のスクリーンメッシュにおけるその辺の長さの違いに基づいて定められたものではない。
【0026】
以下、必要に応じ、図面を参照しながら本発明を説明する。
【0027】
図1は、本発明によるスクリーン印刷用メッシュ1の好ましい一具体例の概要を示す図である。。
【0028】
本発明によるクリーン印刷用メッシュ1において、横糸2は、引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものである。引っ張り強度が2500N/mm2未満である場合には、目的である寸法精度が低下してしまい、一方、3000N/mm2超過である場合には、スクリーンメッシュに織ることが困難になることから好ましくない。なお、本明細書において、「引っ張り強度」とは、JIS G 4309によって定められたものを言う。
【0029】
横糸2の織密度は、200〜400本/インチ、好ましくは250〜300本/インチ、のものである。織密度が200本/インチ未満である場合には、高細線の画像形成が困難であり、一方、400本/インチ超過である場合には、平織りが困難であることから好ましくない。
【0030】
横糸2の直径は、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは15〜30μm、である。横糸2の直径が10μm未満である場合には、糸の強度が不十分であり、一方、50μm超過である場合には、高細線の画像形成が困難であることから好ましくない。従って、横糸2の断面積は、好ましくは78.5〜1962.5μm2、特に好ましくは176.6〜706.5μm2、である。
【0031】
本発明によるクリーン印刷用メッシュにおいて、縦糸3は、引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものである。引っ張り強度が1000N/mm2未満である場合には目的である寸法精度が低下してしまい、一方、1500N/mm2超過である場合には、横方向の強度に近似してしまうため本願発明による効果が低下してしまうことから好ましくない。縦糸3の織密度は、50〜100本/インチ、好ましくは70〜80本/インチ、である。織密度が50本/インチ未満である場合には、印刷時のストレスを吸収しきれずに永久歪みや破断してしまい、100本/インチ超過である場合には、印刷時のストレスを吸収しきれずに、横方向への伸縮を発生させてしまうことから好ましくない。
【0032】
縦糸3の直径は、10〜50μm、好ましくは15〜30μm、である。縦糸3の直径が10μm未満である場合には、糸の強度が不十分であり、一方、50μm超過である場合には、高細線の画像形成が困難であることから好ましくない。従って、縦糸3の断面積は、好ましくは78.5〜1962.5μm2、特に好ましくは176.6〜706.5μm2、である。
【0033】
本発明によるクリーン印刷用メッシュ1を構成している複数本の横糸2は、それぞれ引っ張り強度および直径に関して同一であるのが通常でありかつ好ましいが、場合により異なっていてもよい。また、本発明によるクリーン印刷用メッシュ1を構成している複数本の縦糸3は、それぞれ引っ張り強度および直径に関して同一であるのが通常でありかつ好ましいが、場合により異なっていてもよい。
【0034】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュ1の横糸2および縦糸3は、金属製であることが好ましく、特にステンレス製およびタングステン製のものが好ましい。
【0035】
また、本発明によるスクリーン印刷用メッシュは、平織および綾織りのいずれでも良いが、好ましくは平織のものである。
【0036】
横糸2および縦糸3は、各糸の引っ張り強度が比較的高い場合、織密度はそれ程高くなくても必要な変形防止性を得ることができるが、各糸の引っ張り強度が比較的低い場合、織密度はある程度高いことが好ましい。また、各糸の引っ張り強度が高ければ、各糸を細線化でき、この細線化によって縦糸および横糸の織密度を高めることができるので、高精度印刷が可能になる。
【0037】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュにおいて、スクリーンメッシュの変形防止、印刷の高精度化および耐久性の向上等の効果が、総合的にバランスよく達成されるのは、スクリーン印刷用メッシュの縦方向への強度と横方向への強度との比が5以上である。
【0038】
ここで、縦方向への強度と横方向への強度との比とは、下記を意味する。
【0039】
縦方向への強度と横方向への強度との比 = (横糸本数(本/インチ)/縦糸本数(本/インチ))×(横糸断面積/縦糸断面積)×(横糸の引っ張り強度(N/mm2)/縦糸の引っ張り強度(N/mm2))
【0040】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュ1は、横糸2と縦糸3との交差部4において、その横糸2および縦糸3が固定されていることが好ましい。これによって、横糸2および縦糸3のズレが防止され、スクリーン印刷用メッシュ1の各網み目変形およびスクリーン印刷用メッシュ1の全体の変形等が防止される。
【0041】
横糸2と縦糸3とをその交差部4において固定する方法は、例えば接着剤を用いることによって行うことができるが、本発明においては、好ましくは横糸2および縦糸3の少なくとも一方の断面を交差部4において変形させること、特に横糸2および縦糸3の両者の断面を変形させることが好ましい。ここで、横糸2または縦糸3の断面を変形させる方法は任意であるが、本発明においてはカレンダー加工による方法が特に好ましい。なお、横糸2および縦糸2の固定化は、必ずしも全ての箇所の交差部において行われている必要はない。また、横糸2および縦糸3の断面の変形は横糸と縦糸との交差部4のみであってもよいが、交差部4に加えて交差部4以外の部分が変形している場合も好ましい。
【0042】
上記のスクリーン印刷用メッシュ1は版枠に張設した後、スクリーン印刷版にすることができるものである。
【0043】
<スクリーン印刷版>
本発明によるスクリーン印刷版は、図2に示されるように、上記のスクリーン印刷用メッシュ1が版枠5内に張設されてなるスクリーン印刷版6であって、このスクリーン印刷用メッシュ1の縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向7との間の角度θが0度以上10度未満であることを特徴とするもの、である。
【0044】
ここで、「スクリーン印刷用メッシュの縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度」とは、スクリーン印刷用メッシュ1の縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向6とが「平行」、即ち、縦糸の方向とスキージ摺動方向とが一致すること、を意味する。このような縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向7とが「平行」(即ち、縦糸の方向とスキージ摺動方向とが一致)する印刷版は、本発明の特に好ましい具体例である。
【0045】
本発明によるスクリーン印刷版は、従来の一般的なスクリーン印刷版と同様に、そのスクリーン印刷用メッシュの少なくとも一部分に、例えば感光性樹脂材料等を用いて印刷パターンを形成した後に、スクリーン印刷に用いることができるものである。
【0046】
本発明によるスクリーン印刷版は、上記の通りの特定のスクリーン印刷用メッシュを採用していることから、スクリーンメッシュの変形が防止されている。このことから、スクリーン印刷の際のスキージの摺動が繰り返されたとしても、高精度の印刷を行うことができるものである。スクリーンメッシュの変形が防止されていることは、単にスクリーン版の耐久性が優れているだけでなく、より緻密な高精度のスクリーン印刷が容易に行えること、より高いスキージ圧を採用できること、硬質のスキージを採用可能になること、スクリーンメッシュの張設力の高度化を図れること、スクリーン面積の拡大による精度低下が抑制されること等の観点からも好ましい。
【0047】
上記のスクリーン印刷用メッシュ1は、図2に示されるように、版枠5に直接に張設されることができるが、例えば図3に示されるように、他のスクリーン8を介して版枠5に張設されることができる。ここで、他のスクリーン8の好ましい具体例としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ベクトラン等の樹脂製スクリーンを挙げることができる。このような樹脂製スクリーンを他のスクリーン8として用いることにより、この他のスクリーンスクリーン8の伸縮性に基づく適度な柔軟性がスクリーン印刷用メッシュ1に付与されて、スクリーンメッシュ1の変形防止、耐久性の向上、印刷精度の向上を更に図ることができる。
【0048】
したがって、本発明によるスクリーン印刷版は、上記のスクリーン印刷用メッシュ1が他のスクリーン8を介して版枠5内に張設されてなるスクリーン印刷版60であって、このスクリーン印刷用メッシュ1の縦糸3の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向7との間の角度θが0度以上10度未満であるものを、好ましい具体例として包含する。
【0049】
本発明によるスクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版は、より緻密な高精度のスクリーン印刷に適したものであって、とりわけ横方向への位置精度が求められるスクリーン印刷、例えば複数回の重ね印刷や、バックコンタクトセル、選択エミッター、ディスプレイの蛍光体の作製に好適なものである。
【実施例】
【0050】
以下、本発明によるスクリーン印刷用メッシュおよびスクリーン印刷版の好ましい具体例を更に説明する。
【0051】
<実施例1>
引っ張り強度が2500N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が1000N/mm2で、直径が30μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン1を得た。このスクリーン1は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が250本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が70本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が6.20のものであった。
【0052】
<実施例2>
引っ張り強度が3000N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が25μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン2を得た。このスクリーン2は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が230本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が70本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が7.58のものであった。
【0053】
<比較例1>
引っ張り強度が2500N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が2500N/mm2で、直径が25μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン3を得た。このスクリーン3は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が230本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が230本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が1.00のものであった。
【0054】
<比較例2>
引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が30μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が30μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン4を得た。このスクリーン4は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が250本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が250本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が1.00のものであった。
【0055】
<比較例3>
引っ張り強度が1300N/mm2で、直径が25μmであるステンレス製の糸を横糸として用い、引っ張り強度が3000N/mm2で、直径が25μmであるあるステンレス製の糸を縦糸として用いたスクリーン5を得た。このスクリーン5は、横糸の織密度(横糸本数/インチ)が70本/インチであり、縦糸の織密度(縦糸本数/インチ)が230本/インチのものであり、縦方向への強度と横方向への強度との比が0.13のものであった。
【0056】
<実施例3>
(1) 実施例1のスクリーン1(縦300mm×横300mmの正方形)を内部スクリーンとし、ポリエステル製のメッシュ(糸径:50μm、織密度:180本/インチ)を外部スクリーンとして、これらが版枠(縦550mm(内径)×横500mm(内径)の正方形)に張設されたコンビネーションスクリーンを常法に従って作成した。そのときのテンションは、0.75〜0.80mm(プロテック社製テンションゲージ 「STG75B」)であった。このコンビネーションスクリーンは、内部スクリーンであるスクリーン1が、その縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度となるように張設されているものである。外部スクリーンの紗張り角度は0°とした。
(2) このコンビネーションスクリーンの内部スクリーン(スクリーン1)の全領域に、縦300mm×横300mmの正方形の直間法フィルム(ムラカミ社製、「MS−FILM」)を用いて、画像再現性評価用のストライプパターン(線幅:50〜100μm)と寸法精度評価用の認識マーク(詳細後記)とが混在したテストパターンが形成された製版を得た。
この製版について、「画像再現性」の評価を行なった。結果は、表2に示される通りである。
そして、上記の製版について、「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価を行った。結果は、表2、表3および図5に示される通りである。
(3) 次いで、この製版について、印刷機(マイクロテック社製、「MT−550TV」)を用い下記の印刷条件でスクリーン印刷を行い、15000ショットの印刷後における「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価を行なった。
【0057】
結果は、表2、表3および図11に示される通りである。
【0058】
印刷条件
スキージ:平スキージ 硬度 70°
スキージ角度:70°
クリアランス:1.5mm
印圧:0.20MPa
背圧:0.05MPa
スキージ速度:150mm/sec.
【0059】
画像再現性の評価
画像再現性の評価は、以下のようにして行った。
印刷方向と平行の線幅100μmの部分において、
メッシュの存在率が15%以下のものを◎と、
メッシュの存在率が15%超〜30%以下のものを○と、
メッシュの存在率が30%超〜60%以下のものを△と、
メッシュの存在率が60%超のものを×と、評価した。
【0060】
寸法精度の評価
寸法精度評価用の認識マークは、図4に示されるような、前記の縦300mm×横300mmの直間法フィルム8のA点〜I点の箇所に、製版時の露光段階において形成されたものである。ここで、A点は、スキージの開始側に存在するA〜C点のうち一番端に存在する点であるが、これを寸法精度評価時の基準点(原点)として扱う。
【0061】
上記の「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価は、上記A点〜I点の位置が、製版によってどのように変動するかを評価することによって行った。図5および表3には、作成された製版におけるA点〜I点の位置が示されている。
【0062】
上記の「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価は、上記A点〜I点の位置が、15000ショットの印刷後に、どのように変動するかを評価することによって行った。評価結果は、図11および表4に示されている。
【0063】
なお、図5および図11には、A点〜I点の付近に、中心を等しくする2つの正方形が9組示されている。これらは、A点〜I点の位置の変動量を視覚的に判りやすく表示するための指標であって、内側の小さい正方形の1辺は5μmの長さを、外側の大きい正方形の1辺は10μmの長さを示している。9組の正方形の各中心点の間の距離は不動となっているので、各組の正方形の中心点とA点〜I点の各点との関係から、A点〜I点の位置の変動量および変動方向を容易に導きだすことができる。
【0064】
表3および表4は、A点〜I点の位置を数値で表現したものである。
【0065】
これらの表には、9組の正方形の各中心点と、A点〜I点の各点との間の位置のずれ量が示されている。例えば、B点について、Xが−2.0、Yが1.0と示されている場合、B点が、正方形の中心点より、X軸方向に「−2.0μm」、Y軸方向に「+1.0μm」ずれていることを意味している。
【0066】
<実施例4〜5および比較例4〜6>
内部スクリーンの種類および角度等を表2に示されるように変えた以外は、実施例3と同様にして、コンビネーションスクリーンを作成し、さらに製版を作成した。
【0067】
実施例3と同様に、「画像再現性」および「寸法精度(製版時の寸法精度)」の評価を行なった。
【0068】
結果は、表2、表3および図6〜図10に示される通りである。
【0069】
(3) 次いで、実施例3と同様にスクリーン印刷を行って、15000ショット印刷後における「寸法精度(印刷後の寸法精度)」の評価を行なった。
【0070】
結果は、表2、表4および図12〜図16に示される通りである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0071】
<まとめ>
上記から明らかになるように、実施例のスクリーンメッシュは、製版において画像部でのメッシュの影響が最小限に抑えられており、印刷位置精度においても、印刷方向への伸びはあるものの、課題である横方向のズレは最小限に抑えられることが確認できる。
【0072】
これに対して、比較例のスクリーンメッシュは、製版での画像再現性が十分でなく、開口部に対するメッシュの影響が強く出ていることと、寸法精度、特に印刷後の寸法精度が十分でないことが判る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、
このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とする、スクリーン印刷用メッシュ。
【請求項2】
前記横糸が糸径10〜50μmのものである、請求項1に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項3】
前記縦糸が糸径10〜50μmのものである、請求項1または2に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項4】
前記スクリーンの横糸と縦糸との交差部において、その横糸および縦糸の少なくとも一方の断面が変形している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項5】
前記のスクリーン印刷用メッシュの縦方向への強度と横方向への強度との比が5以上のものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
〔 ここで、縦方向への強度と横方向への強度との比とは、下記を意味する。
縦方向への強度と横方向への強度との比 = (横糸本数(本/インチ)/縦糸本数(本/インチ))×(横糸断面積/縦糸断面積)×(横糸の引っ張り強度(N/mm2)/縦糸の引っ張り強度(N/mm2)) 〕
【請求項6】
請求項1記載のスクリーン印刷用メッシュが版枠内に張設されてなるスクリーン印刷版であって、このスクリーン印刷用メッシュの縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度以上10度未満であることを特徴とする、スクリーン印刷版。
【請求項1】
スクリーン印刷に用いられるスクリーンであって、
このスクリーンが、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に直角方向に形成された複数の横糸と、スクリーン印刷の際のスキージ摺動方向に対し実質的に平行方向に形成された複数の縦糸とからなり、前記横糸が引っ張り強度2500〜3000N/mm2のものであって織密度200〜400本/インチで形成され、かつ、前記縦糸が引っ張り強度1000〜1500N/mm2のものであって織密度50〜100本/インチで形成されていることを特徴とする、スクリーン印刷用メッシュ。
【請求項2】
前記横糸が糸径10〜50μmのものである、請求項1に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項3】
前記縦糸が糸径10〜50μmのものである、請求項1または2に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項4】
前記スクリーンの横糸と縦糸との交差部において、その横糸および縦糸の少なくとも一方の断面が変形している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
【請求項5】
前記のスクリーン印刷用メッシュの縦方向への強度と横方向への強度との比が5以上のものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクリーン印刷用メッシュ。
〔 ここで、縦方向への強度と横方向への強度との比とは、下記を意味する。
縦方向への強度と横方向への強度との比 = (横糸本数(本/インチ)/縦糸本数(本/インチ))×(横糸断面積/縦糸断面積)×(横糸の引っ張り強度(N/mm2)/縦糸の引っ張り強度(N/mm2)) 〕
【請求項6】
請求項1記載のスクリーン印刷用メッシュが版枠内に張設されてなるスクリーン印刷版であって、このスクリーン印刷用メッシュの縦糸の方向とスクリーン印刷の際のスキージ摺動方向との間の角度が0度以上10度未満であることを特徴とする、スクリーン印刷版。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−121244(P2012−121244A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274546(P2010−274546)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390030373)株式会社ムラカミ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(390030373)株式会社ムラカミ (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]