説明

スクリーン印刷用具及びスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法

【課題】スクリーン印刷において、インクを溶融する熱容量を大きく取り、インクの場所による温度のバラツキや粘度のバラツキを押さえ、印刷状態のバラツキを無くすことを目的とする。
【解決手段】本発明のスクリーン印刷用具100は、スクリーン版により被印刷物240にスクリーン印刷するスクリーン印刷用具であって、熱を供給するヒータ150と、インク170を貯蔵し、ヒータ150から供給された熱によりインク170を加熱するインク貯蔵部130と、インク貯蔵部130で加熱したインク170をスリット160から吐出しながら印刷する先端部140とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スクリーン版により被印刷物にスクリーン印刷するスクリーン印刷用具およびスクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスクリーン印刷は、スキージがスクリーン版の上面と接触した状態で直線的に摺動し、その摺動によってインクが当該スクリーン版のパターン開孔に強制充填され、その開孔を通して被印刷物に印刷する。そのため、印刷の品質ないし仕上がり状態の均一化や印刷精度等の向上を図るためには、毎回の印刷時におけるインクの粘性変化を防止することが課題である。特にプリント基板等にスクリーン印刷する場合には、常に印刷に適する一定の粘度を有するインクを供給できるようにすることが、プリント基板等の被印刷物の小型化を促進することなる。
スクリーン印刷の公知の技術として、例えば特許文献1に示すように、スキージによりクリーム半田を加熱するスクリーン印刷方法がある。しかしながら、インクを溶融するための熱容量を十分に大きくとり、場所によるインクの温度・粘度のバラツキが少なくし、最終的には印刷状態のバラツキを押さえるという課題については解決に至っていない。
また、スクリーン印刷機においては、インクの乾燥に時間がかかるためインクを乾燥させる乾燥炉は必須の設備であるが、乾燥炉は設備的に占有するスペースが大きく、そのためスクリーン印刷機の設備が大型化し、しいては設備コストが高くなるという課題があった。
【特許文献1】特開2005−001118公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の課題をふまえ、例えば、スクリーン版により被印刷物にスクリーン印刷するスクリーン印刷用具およびスクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法において、インクを溶融する熱容量を大きく取り、インクの場所による温度のバラツキや粘度のバラツキを押さえ、印刷状態のバラツキを無くすことを目的とする。また、ホットメルト型のインクをスクリーン印刷に利用することにより、乾燥時間を短縮させ、乾燥炉の設備を省略し、設備コストを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のスクリーン印刷用具は、
スクリーン版により被印刷物にスクリーン印刷するスクリーン印刷用具であって、熱を供給するヒータと、インクを貯蔵し、前記ヒータから供給された熱によりインクを加熱するインク貯蔵部と、インク貯蔵部で加熱したインクをスリットから吐出しながら印刷する先端部とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷用具である。
【0005】
また、本発明のスクリーン印刷用具は、
前記先端部の、スクリーン版と接触する部分をダイヤモンド溶射したことを特徴とするスクリーン印刷用具である。
【0006】
また、本発明のスクリーン印刷用具は、
前記先端部の、スクリーン版と接触する部分をカナック処理したことを特徴とするスクリーン印刷用具である。
【0007】
また、本発明のスクリーン印刷用具は、
前記先端部は、前記スリットを間に形成する二つのブロックから構成されたことを特徴とするスクリーン印刷用具である。
【0008】
また、本発明のスクリーン印刷機は、
スクリーン版により被印刷物に印刷を行うスクリーン印刷機において、前記スクリーン印刷用具を備えたことを特徴とするスクリーン印刷機である。
【0009】
また、本発明のスクリーン印刷機は、
スクリーン版により被印刷物に印刷を行うスクリーン印刷機において、電流を流すことにより発生した熱によりインクを融解するスクリーン版を備えたことを特徴とする前記スクリーン印刷機である。
【0010】
また、本発明のスクリーン印刷方法は、
前記インク貯蔵部でインクを加熱し、その後、前記先端部のスリットからインクを吐出することにより、被印刷物にスクリーン版を重ねてスクリーン印刷を行うことを特徴とするスクリーン印刷方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スクリーン印刷時に、ホットメルトインクを融解するための十分な溶融温度を保持することが可能となり、ホットメルトインクの温度のバラツキや、粘度のバラツキの発生を抑え、印刷場所によるバラツキをなくし、印刷状態を良好とする効果を奏する。
【0012】
また、本発明によれば、ホットメルトインクを利用することによりインクの溶剤の発生を抑えることが可能となり、さらに設備的にシステムとしてスペース、金額面で大きな比重を占める乾燥炉が不要となるため、システムがシンプルとなり、占有スペース、設備コストを大幅に抑える効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
実施の形態1を、図1〜図5を用いて説明する。まず、ダイ(スクリーン印刷用具の一例)について説明する。図1は、この実施の形態におけるダイ(スクリーン印刷用具の一例)の縦断面図である。図2は、この実施の形態におけるダイの斜視図である。ここで、ダイとはスクリーン印刷機で利用するスクリーン印刷用ヘッドであって、インクを一時的に貯蔵し、印刷する際にインクをスクリーン版へ吐出するものあり、従来のスクリーン印刷機のスキージヘッド部と置き換えたものである。
ダイ100は、例えば、鉄やステンレスを材料としており、ホットメルトインク170(インクの一例)を一時的に貯蔵し加熱するインク貯蔵部130と、インク貯蔵部130で加熱されたホットメルトインク170を吐出する先端部140を備えている。インク貯蔵部130は、例えば円柱形の空洞を内部に備え、その空洞にホットメルトインクを貯蔵する。先端部140は、インク貯蔵部130につながる隙間(スリット160)を備えており、その隙間を通して、インク貯蔵部130に貯蔵されたホットメルトインク170を吐出口161から吐出する。
【0014】
また、ダイ100はインク貯蔵部130で貯蔵されたホットメルトインク170に熱を供給するヒータ150を備えている。図1では、ヒータ150は棒状の形状をしており、ヒータ150をインク貯蔵部130の一部に密着して設置している。これはヒータ150の設置方法の一例であり、バンドヒータ(バンド状の電熱体)やテープ状のヒータをダイ100の周辺に巻いて設置してもかまわない。また、ダイ100にカードリッジ型のヒータ(ステンレス(または銅、真鍮)の保護管の内部にコイル状に巻いた電熱線を挿入し高熱伝導、高絶縁性の特殊粉末を充填し、固形化したパイプ状のヒータ)を直接ダイに埋め込んで設置してもかまわない。
また、インクは熱によって溶融するホットメルトインク170を想定しているが、熱によって溶融するものであれば、半田ペーストでもかまわない。
ホットメルトインクとは、例えば、常温では一定の形状を保った固形物質もしくは粘土状の物質であるが、一定の熱を与えることにより溶融し、流動性のあるインクとなるものである。その性質を利用すれば、熱を与え液状化させた状態で被印刷物に転移させ、常温で乾燥させることにより、従来のインクに比べより短い時間で印刷することが可能となる。
ヒータ150の熱によりダイ100は温められ、ダイ100の熱によりインク貯蔵部130に貯蔵されたホットメルトインク170は、溶融し一定の粘度が維持される。溶融したホットメルトインク170は、インク貯蔵部130に加えられた圧力により、先端部140のスリット160から外部に吐出される。インク貯蔵部130に圧力をかける方法については後述する。吐出したホットメルトインク170は、例えば、スクリーン版230の開口部231を通じてワーク240(被印刷物の一例)に転移される。
【0015】
また、ダイ100は、スリット160を間に形成する二つのブロック、ブロックa110とブロックb111とで構成されている。これは、ダイ100の先端部140とスクリーン版の距離を調整するために二つのブロックとして分割している。例えば、ブロックa110もしくはブロックb111の先端部のどちらか一方が、スクリーン版230と接触し移動することにより磨耗し、スクリーン版との距離が変化した場合、インクを正常に吐出できなくなる可能性がある。ダイが一体として形成されている場合は、先端部140を研磨等して高さを調整しなくてはならないが、二つのブロックによりダイを構築することにより、ブロックa110もしくはブロックb111のどちらか一方を上下に移動させることにより先端部140のスクリーンと接する高さを調整することが可能となる。
【0016】
次に、図3〜図5を用いて、本実施の形態に係るダイ100(スクリーン印刷用具の一例)をスクリーン印刷機200に取付けた場合の実施例について説明する。
図3は、本実施の形態に係るダイ100をスクリーン印刷機に取付けた場合の、スクリーン印刷機の構成を模式的に示す図である。
図4は、本実施の形態に係るダイ100をスクリーン印刷機に取付けた場合の、スクリーン印刷機の正面図である。
図5は、本実施の形態に係るダイ100をスクリーン印刷機に取付けた場合の、スクリーン印刷機の平面図である。
まず、スクリーン印刷機200の構成について説明する。
スクリーン印刷機200は、本実施の形態にかかるダイ100を取付けるダイ取付板210を備えている。このダイ取付板210にダイ100を取付け固定し、ダイ取付板210を印刷方向に移動することにより印刷する。ダイ取付板210の両端には、スクリーン版230とダイ100の距離を調節する上下調整機構265が備えられている。この上下調整機構265を利用することにより、ダイ100と、スクリーン版230及びワーク240(被印刷物の一例)との距離を調整する。また、ダイ取付板210の両端にはスライドガイド266が備えられており、スクリーン印刷機200にスライド軸267に沿って、通常のスキージユニットと同様に、一定方向にボールネジやベルト等で駆動させることが可能となっている。モータ268を取付けることにより、自動でダイ取付板210を移動させることも可能である。
【0017】
スクリーン印刷機200には、ダイ100にインクを供給するホットメルトタンク260(インク供給タンクの一例)が備えられている。このホットメルトタンク260とダイ100とは、管261で繋がっているおり、ホットメルトインク170は、ホットメルトタンク260から、管261を通して、ダイ100にホットメルトインク170が供給される。ホットメルトタンク260と管261には、ホットメルトインク170を溶融状態に保ち、保温するためのヒータ264が備え付けられている。このヒータ264に電流が流れることにより、ホットメルトタンク260と管261が温められ、ホットメルトインク170が溶融状態となり、ダイ100まで、流動することが可能となる。
【0018】
また、管261の途中にはポンプ262が設置されており、ポンプ262が加えた圧力により、ホットメルトインク170はホットメルトタンク260から管261を通じてダイ100に供給される。ポンプ262を取付けてホットメルトインクを供給する方法は一例であり、ホットメルトタンク260に、窒素ガス等の空気を送入することにより、ホットメルトタンク260の内部に発生した圧力により、ホットメルトインク170をダイ100に供給してもかまわない。
また、ダイ取付板には、管取付口263が備えられている。管取付口263は、ホットメルトタンク260から伸びる管261とダイ100とを容易に接続可能とするものである。
スクリーン枠232は、スクリーン版230を固定するための固定具である。
スクリーン版230は、例えば、ポリエステルなどの繊維で織った紗(スクリーン)であって、このスクリーンを前記スクリーン枠232に張って固定させ、その上に版膜(レジスト)を作り、必要な画線以外の目をふさぐことにより、開口部231を有したものである。インクがスクリーン版230の開口部231を通ることにより、ワーク240(被印刷物の一例)にインクが転移し印刷することができる。
ワークテーブル250は、ワーク240(被印刷物の一例)を載せるための台である。
【0019】
次に、ダイ100の先端部の特徴について説明する。
従来のスクリーン印刷機では、スクリーン版の枠内にインクをのせて、スキージでインクを押し込むことにより、スクリーン版の開口部を通過して、インクを被印刷物に転移して印刷する。従来のスキージを利用した場合、スキージを進行方向でスクリーン版と90度以下の角度が形成できるように設置しなければならないが、この場合、インクがスキージの外に大きく出てしまう事が考えられる。インクが外に大きく出た場合、インクに熱が十分に伝えることが出来ないため、熱を十分に確保できない可能性がある。すなわち、熱容量が十分に確保できない場合は、場所によって温度バラツキが大きくなり、粘度もバラツキが発生し、最終的に印刷状態にも場所によるバラツキが発生する。
本実施の形態のダイ100を利用すれば、先端部までヒータの熱により、ホットメルトインク170に熱を供給することが可能であるため、熱を十分に確保することが可能である。
【0020】
また、本実施の形態に係るダイ100は、スリット160がスクリーン版230に対して略垂直となるように当てており、ダイの先端部140がスクリーン版230に接する部分の高さを同一高さとすることにより、ダイ100の吐出口161がスクリーン版230上を移動してもホットメルトインク170がダイ100の外に大きく出ることを防いでいる。
ホットメルトインク170の被印刷物への転移は、ポンプ262もしくはホットメルトタンク260からのホットメルトインク170へかけられた圧力により行う。このようにすることにより、ホットメルトインク170に十分に熱を供給しつつ印刷することが可能となる。
【0021】
また、従来は、スキージをスクリーン版に対して90度以下の角度が形成するように設置するため、印刷方向は一方向に限られていたが、本実施の形態に係るダイ100を用いた場合、両方向で印刷することが可能なる。そのため、スキージを所定位置に戻す動作が不要となり、ダイ100の往復により印刷することが可能となる。そのため印刷時間の短縮を図る効果を奏する。
また、本実施の形態に係るダイ100の先端部140のスクリーン版230と接する高さを同一としない場合、吐出口161が大きくなるため、ポンプ262もしくはホットメルトタンク260からの圧力によるスクリーン版へのホットメルトインク170の押込みをすることが出来なくなる。ポンプ262等からの圧力により押し組むことが出来なくなるため、印刷するためにはスキージ等を用いてインクを押込まなくてはならない。また、インクがダイの外に大きく出てしまう事が考えられるため、粘度の安定性が保てない可能性がある。
【0022】
また、本実施の形態に係るダイ100のダイヘッド先端(先端部140の一例)はスクリーン版と直接接触するため、磨耗を考慮し、消耗を防ぐため強度を他の部分よりも大きくする必要がある。ダイヘッド先端(先端部140)の表面の強度を大きくするため、例えば、ダイヘッド先端(先端部140)をダイヤモンド溶射する方法がある。また、例えばダイヘッド先端(先端部140)をカナック処理(特殊な窒化処理)してもかまわない。
ダイヤモンド溶射とは、例えば、溶射技術を利用してダイヤモンド粉粒の分散した皮膜を形成することで、機械部品等の表面特性を改善する手法である。溶射技術とは,熱源によって加熱され溶融、軟化した材料を、基材表面に吹き付けて皮膜とする加工法である。
カナック処理とは、高真空中で行われる真空窒素化法の一種である。カナック処理は真空炉による窒素原子の拡散原理を利用したもので、例えば、真空にした炉内にNH3と窒化促進ガスを炉内に送り、温度を480度〜550度に加熱し、3時間〜15時間の加熱時間を保持して窒素を母材に拡散させ、合金元素と化合物を生成させる方法である。
ダイヘッド先端(先端部140)をダイヤモンド溶射したり、カナック処理をすることにより、ダイヘッド先端(先端部140)の強度が増し、スクリーン版と接触することによる磨耗を防ぐことが出来るため、例えばダイ100の交換といったスクリーン印刷機200のメンテナンスの回数を減らすことができ、より長時間印刷することも可能となる。
磨耗による先端部の消耗を防ぐことを目的とした加工であるため、ダイの材質・材料により先端部の強度が十分に確保できる場合は、加工をしなくてもかまわないし、先端の強度を確保するため別の加工をしてもかまわない。
【0023】
また、ダイ100は、スリット160を間に形成する二つのブロック、ブロックa110とブロックb111とで構成されている。これは、スクリーン印刷を行うことにより、ブロックa110とブロックb111の先端部のどちらか一方が、磨耗によりスクリーン版との距離が変化し、ホットメルトインクが外にはみ出る可能性があるからである。そこで、ダイ100のスリット160を間に形成するよう、ブロックa110とブロックb111とに分けるよう構成し、印刷を行うことにより磨耗した場合、どちらか一方を上下に移動させることにより、スクリーン版からの距離が同じになるよう調整することが可能となる。
【0024】
次に、図8を用いて、本実施の形態にかかるスクリーン印刷方法について説明する。
図8は、本実施の形態に係るスクリーン印刷方法を示すフローチャートである。
まず、最初のステップ(S101)でホットメルトタンク260にホットメルトインク170を入れる。このホットメルトタンク260には、印刷をするために十分なホットメルトインク170が貯蔵されている。
次のステップ(S102)では、ホットメルトタンク260に備えられたヒータ264の熱により、ホットメルトインク170を溶融する。
ホットメルトタンク260の内部に貯蔵されたホットメルトインク170が十分に溶融したら、管261を通じて、ダイ100にホットメルトインク170を送る。ダイ100のインク貯蔵部130に満杯となるまでホットメルトインク170が送られ、印刷するまで貯蔵される(S103)。
次に、ダイ100のヒータ150の熱により、インク貯蔵部130のホットメルトインク170が印刷するに十分な粘度となるよう溶融する(S104)。
次に、ポンプ262若しくはホットメルトタンク260に圧力をかけホットメルトインク170をスリット160より押し出す(S105)。
ホットメルトインク170は、スクリーン版230のマスク(開口部231)を通過して被印刷物に転移する(S106)。
ステップ107で、印刷が完了しているかどうか確認する(S107)。印刷が完了していない場合(NOの場合)は、ステップ103に戻り、再度、ダイ100にホットメルトインク170を送る。印刷が完了している場合(YESの場合)は、印刷を終了する。
【0025】
以上のように、本実施の形態に係るスクリーン印刷用具は、
スクリーン版により被印刷物にスクリーン印刷するスクリーン印刷用具であって、熱を供給するヒータと、インクを貯蔵し、前記ヒータから供給された熱によりインクを加熱するインク貯蔵部と、インク貯蔵部で加熱したインクをスリットから吐出しながら印刷する先端部とを備えたことを特徴とする。
【0026】
また、本実施の形態のスクリーン印刷機は、前記スクリーン印刷用具を備えたことを特徴とするスクリーン印刷機である。
【0027】
このような特徴により、スクリーン印刷時に、ホットメルトインクを融解するための十分な溶融温度を保持することが可能となり、ホットメルトインクの温度のバラツキや、粘度のバラツキの発生を抑え、印刷場所によるバラツキをなくし、印刷状態を良好とする効果を奏する。
【0028】
また、本実施の形態によれば、ホットメルトインクを利用することによりインクの溶剤の発生を抑えることが可能となり、さらに設備的にシステムとしてスペース、金額面で大きな比重を占める乾燥炉が不要となるため、システムがシンプルとなり、占有スペース、設備コストを大幅に抑える効果を奏する。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態2について、図6と図7を用いて説明する。
図6は、実施の形態2に係るスクリーン印刷機の構成を模式的に示す断面図である。
図7は、実施の形態2に係るスクリーン印刷機の平面図である。
実施の形態1との違いは、スクリーン版の周辺にジュール熱発生用配線270を備えたことである。スクリーン版に設置したジュール熱発生用の配線に、ある電圧で電流を流し、スクリーンその物にジュール熱を発生させてホットメルトインクの溶融温度を保持する。ダイ100、スクリーン印刷機200の構成は、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略するが、勿論、ダイ100、ホットメルトタンク260、管261にもヒータが仕込まれておりホットメルトインクの溶融状態を保持している。
ジュール熱発生用配線270が備えられジュール熱容量を大きくしたスクリーン版230とヒータ150が備えられたダイ100からの熱を併用して用いることにより、より安定的にホットメルトインク170を溶融状態に保つことできるため、より良好な印刷状態とすることが可能となる。
【0030】
スクリーン版のジュール熱だけでホットメルトインク170を溶融し、通常のスクリーン印刷機のようにスキージで印刷することも当然考えられるが、スクリーン版だけでは、ジュール熱容量は大きく取れないため、場所によって温度のバラツキも大きくなり、粘度にもバラツキが発生する。すなわち印刷状態にも場所によるバラツキが発生する。これを押さえる意味で、スクリーン版のジュール熱とダイ100の熱を併用することにより、ホットメルトインク170の溶融状態も安定し、印刷状態も場所によるバラツキがなくなるという効果を奏する。
【0031】
以上のように、本実施の形態に係るスクリーン印刷機は、
熱を供給するヒータと、インクを貯蔵し、前記ヒータから供給された熱によりインクを加熱するインク貯蔵部と、インク貯蔵部で加熱したインクをスリットから吐出しながら印刷する先端部とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷用具と、電流を流すことにより発生した熱によりインクを融解するスクリーン版とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷機である。
【0032】
このような特徴により、スクリーン印刷時に、インクを融解するための十分な溶融温度を保持することが可能となり、インクの温度のバラツキや、粘度のバラツキの発生を抑え、印刷場所によるバラツキをなくし、印刷状態を良好とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態に係るスクリーン印刷用具の縦断面図である。
【図2】本実施の形態に係るスクリーン印刷用具の斜視図である。
【図3】本実施の形態1に係るスクリーン印刷機の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】本実施の形態1に係るスクリーン印刷機の正面図である。
【図5】本実施の形態1に係るスクリーン印刷機の平面図である。
【図6】本実施の形態2に係るスクリーン印刷機の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】本実施の形態2に係るスクリーン印刷機の構成を模式的に示す平面図である。
【図8】本実施の形態に係るスクリーン印刷方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
100 ダイ、110 ブロックa、111 ブロックb、130 インク貯蔵部、140 先端部、150 ヒータ、160 スリット、170 ホットメルトインク、200 スクリーン印刷機、210 ダイ取付板、230 スクリーン版、231 開口部、232 スクリーン枠、240 ワーク、250 ワークテーブル、260 ホットメルトタンク、261 管、262 ポンプ、263 管取付口、264 ヒータ、265 上下調整機構、266 スライドガイド、267 スライド軸、268 モータ、270 熱発生用配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン版により被印刷物にスクリーン印刷するスクリーン印刷用具であって、
熱を供給するヒータと、
インクを貯蔵し、前記ヒータから供給された熱によりインクを加熱するインク貯蔵部と、
インク貯蔵部で加熱したインクをスリットから吐出しながら印刷する先端部と
を備えたことを特徴とするスクリーン印刷用具。
【請求項2】
前記先端部のスクリーン版と接触する部分をダイヤモンド溶射したことを特徴とする
請求項1記載のスクリーン印刷用具。
【請求項3】
前記先端部のスクリーン版と接触する部分をカナック処理したことを特徴とする
請求項1記載のスクリーン印刷用具。
【請求項4】
前記先端部は、前記スリットを間に形成する二つのブロックから構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のスクリーン印刷用具。
【請求項5】
スクリーン版により被印刷物に印刷を行うスクリーン印刷機において、
請求項1乃至請求項4の何れかに記載したスクリーン印刷用具
を備えたことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項6】
前記スクリーン印刷機は、さらに、
電流を流すことにより発生した熱によりインクを融解するスクリーン版を備えたことを特徴とする請求項5記載のスクリーン印刷機。
【請求項7】
前記インク貯蔵部でインクを加熱し、その後、前記先端部のスリットからインクを吐出することにより、被印刷物にスクリーン版を重ねてスクリーン印刷を行う
ことを特徴とするスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−160643(P2007−160643A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358478(P2005−358478)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(593039856)マイクロ・テック株式会社 (21)
【Fターム(参考)】