スクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法および液晶パネルの製造方法
【課題】印刷ペーストを低粘度化し、印刷ペースト中から気泡が離脱することを容易にすることにより、印刷パターンを安定して形成可能なスクリーン印刷装置を得ることができる。
【解決手段】スクリーン印刷装置において、基板1上に対向配置され、開口パターン4を有するスクリーン版3と、スクリーン版3の表面に沿って移動して、印刷ペースト2を前記のスクリーン版3上に塗り広げるスクレッパ5と、スクリーン版3上において印刷方向に移動して、印刷ペースト2を基板1に印刷するスキージ7とを備え、スクレッパ5の印刷ペースト2と接触する部分における表面に印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えた。
【解決手段】スクリーン印刷装置において、基板1上に対向配置され、開口パターン4を有するスクリーン版3と、スクリーン版3の表面に沿って移動して、印刷ペースト2を前記のスクリーン版3上に塗り広げるスクレッパ5と、スクリーン版3上において印刷方向に移動して、印刷ペースト2を基板1に印刷するスキージ7とを備え、スクレッパ5の印刷ペースト2と接触する部分における表面に印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法およびこれらを用いた液晶パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な液晶パネルの製造プロセスにおけるパネル組み立ての工程は、主にガラス基板を元に作成された駆動素子基板とカラーフィルタの役割である対向基板について、間隔をあけて貼り合わせる工程と、所定のパネルサイズに切断する工程と、その間隔内に液晶を注入する工程と、液晶の注入口を封止する工程とがある。基板を貼り合せる為に、駆動素子基板と対向基板のうち主に対向基板上に、各々パネルのサイズに対してパネルの表示部分を囲むような形状に、更に液晶の注入口を設ける様な形状にシールパターンを形成する。方法としては、スクリーン印刷方式とノズル走査によってパターンを描くシールディスペンス方式の二つが一般的である。両者のうち、スクリーン印刷方式は、基板あたり形成されるパネル数が多い場合において生産性に優れるなどの点から、近年は主流となっている。
【0003】
この様なスクリーン印刷方式を用いたシールパターン形成工程においては、予めスクリーン版に形成されたシールパターンの形状に対応した開口部よりなる開口パターンを介して基板上に印刷ペーストを塗布し印刷パターンを形成するため、スクリーン版面と間隔をあけて走査するスクレッパにより印刷ペーストをスクリーン版上に均一に押し広げるコート工程と、スクリーン版面を所定の圧力で押しながら走査するスキージにより前述の印刷ペーストを開口パターン内より押し出して基板上に塗布する印刷工程が交互に繰り返される。スクレッパを走査するコート工程では印刷ペーストがスクリーン版上を回転しながら移動して広げられるため印刷ペースト内に気泡が巻き込まれやすく、この気泡はスクリーン版上に均一に拡げられる印刷ペースト中で印刷ペーストが無い部分(空間)であるボイド(或いは貫通している場合ピンホールとも呼ぶ)の発生原因となる。この印刷ペーストの無い部分であるボイドが開口パターンにかかると印刷工程で押し出される印刷ペーストの量が不足するため、形成される印刷パターンの形状が安定せずに所望の線幅より細く形成される場合や断線する場合が発生するという問題があった。
【0004】
上述のような印刷ペースト中に発生する気泡の問題に対し、印刷ペーストの粘度と、その粘度に影響する要因となるペーストのチキソ性(揺変性とも呼ばれる)という性質が重要な要因となる。このチキソ性とは、ペーストを攪拌すると粘度が低くなり、静止状態では粘度が高くなる性質である。このペーストのチキソ性を有効に活用して、スクリーン印刷は行われている。具体的には、印刷ペーストの粘度としては、上記説明の気泡に対しては、印刷ペースト中より気泡が抜けやすい点で粘度が低い方が好ましい。一方、粘度が低い場合には、スクリーン版の開口パターンや静止時のスクレッパよりインクが垂れる「液ダレ」や、被印刷物に印刷ペーストを転移させる際にパターンエッジががたつく「にじみ」等が発生しやすくなる。この様な粘度に対する相反する要求に対し、チキソ性の大きい、即ち、攪拌時と静止時の粘度差の大きい印刷ペーストを用いることにより、主に印刷ペーストの静止時の問題である「液ダレ」や「にじみ」については、静止時においては粘度が高いことにより発生し難くすることができ、気泡の問題に対しては、印刷ペーストのコート工程における攪拌により粘度を低下させて気泡を抜けやすくすることにより発生し難くすることができる。つまり、粘度が変化するというチキソ性の特徴を利用して粘度に対する相反する要求を両立している。然しながら、現在も気泡による問題点が残存していることからすると、このチキソ性を利用した粘度低下が不十分であるものと考えられる。但し、更に印刷ペーストの攪拌速度を速くするには、スクレッパのコート速度を速くすることが有効であるが、現状のレベルを超えてコート速度を速くすると開口パターンに所望量の印刷ペーストを充填することが困難となってくる。従って、更にコート速度を上げることによる気泡対策は現実的には困難である。以上説明のスクリーン印刷に関する問題点を解決するものとして、特許文献1において、スクレッパの表面に「液ダレ」を防止する突起や溝を設け、静止時も含め印刷ペーストへの低粘度化の要望に応えるスクリーン印刷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−341965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、特許文献1のスクリーン印刷装置においては、低粘度の印刷ペーストを使用した場合、スクリーン版の開口パターンからの「液ダレ」やパターンエッジががたつく「にじみ」を防止することができないことから、極端な印刷ペーストの低粘度化を進めることが難しい。また、印刷ペーストを攪拌により低粘度化する効果についても従来からの平坦なスキージと比べて大差がない。従って、上記説明の印刷ペースト内の気泡により発生する問題点を根本的に解決することはできなかった。
【0007】
本発明は、以上説明のような問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、印刷パターンを安定して形成できるスクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法および液晶パネルの製造方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクリーン印刷装置においては、被印刷物上に対向配置され、開口パターンを有するスクリーン版と、このスクリーン版の表面に沿って移動して、印刷ペーストを前記のスクリーン版上に塗り広げるスクレッパと、このスクリーン版上において印刷方向に移動して、印刷ペーストを開口パターンを介し前記の被印刷物に印刷するスキージとを備え、このスクレッパは、印刷ペーストと接触する部分における表面に印刷ペーストの攪拌を促進する攪拌促進領域を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
スクリーン印刷装置の印刷ペーストをスクリーン版上に塗り広げるスクレッパに印刷ペーストの攪拌を促進する攪拌促進領域を備えることにより、スクレッパの移動速度を早くする事なく、印刷ペーストを低粘度化し、印刷ペースト中から気泡が離脱することを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置を示した斜視図と主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置のコート動作時の状態を説明する側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の印刷動作時の状態を説明する側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置のコート動作の作用を説明する上面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図8】本発明の実施の形態2におけるスクリーン印刷装置のコート動作の作用を説明する上面図である。
【図9】本発明の実施の形態2の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図10】本発明の実施の形態2の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における液晶パネルの断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3における液晶パネルの製造方法での組み立て工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
ここでは、本発明をスクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法および液晶パネルの製造方法におけるシールパターンを形成する工程に適用した実施形態である実施の形態1について説明を行う。まず、本実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の構成について図1を用いて説明する。ここで、図1(a)はスクリーン印刷装置全体を示した斜視図、図1(b)、図1(c)は本発明の主要部であるスクレッパ先端部の正面図および側面図を其々示したものである。なお、図は模式的なものであり、示された構成要素の正確な大きさなどを反映するものではない。また、図面が煩雑とならない様、発明の主要部以外の省略や構成の一部簡略化などを適宜行っている。以下の図においても同様とする。更に、以下の図においては、図中、既出の図において説明したものと同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
図1において、1は被印刷物となる基板、2は印刷される印刷ペースト、3はスクリーン版、4はスクリーン版3に形成された開口パターン、5はスクレッパ、6はスクレッパに形成された印刷ペーストの攪拌促進領域、7はスキージ、8は被印刷物を保持するステージである。本実施の形態1のスクリーン印刷装置は、図1に示される様に、基板1を保持するステージ8と、基板1の上部に対向配置されるスクリーン版3と、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作を行うスクレッパ5と、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2を開口パターン4を介して基板1表面に印刷するスキージ7を備え、スクレッパ5は、印刷ペースト2と接触する部分における表面に印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えている。なお、図中において、印刷ペースト2は、既にスクレッパ5によるコート動作を経て、スクリーン版3上に塗り広げられた状態で示している。また、本実施の形態1においては、図中のX方向とY方向(スクリーン版3表面に沿う方向で、フレーム3における長手方向と短手方向に其々対応)に対し、スクレッパ5とスキージ7がY方向に沿う方向に、其々配置されている。なお、スクリーン印刷装置には、印刷動作時においてスキージ7およびスクレッパ5を水平に移動させたり、スクリーン版3との距離を変える為に上下移動させたりする移動機構や、印刷前後における基板1の搬入搬出時などにステージ8を搬入搬出位置まで移動動作させるステージ移動機構や、ステージ8と装置外間の基板1の搬入搬出をする基板搬送機構なども備えるが、発明の主要部では無いので、ここでは図示と説明を省略する。
【0013】
スクリーン版3については、図1に示される様に、アルミなどの金属からなるフレーム3aと、フレーム3aに貼り付けられた開口パターン4を有するスクリーン3bとから構成されており、スクリーン3bについては、金属メッシュと乳剤層より構成される場合と、ごく薄い金属板により構成される場合があるが、本実施の形態1においては、何れの構成を用いても良い。また、開口パターン4については、一般的な液晶パネルに用いられるシールパターンに対応する開口パターンとした。また、複数の液晶パネルを多面取りできる様に、開口パターン4をマトリクス状に、ここでは、例えば縦4列かつ横4行に配列している。
【0014】
続いて、本発明の主要部である印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えるスクレッパ5の構成について、図1(b)、図1(c)を用い詳細に説明する。図1(b)、図1(c)は、スクレッパ5の特に印刷ペースト2と接触する部分となる下部付近を拡大して示している。図1(b)に示す様に、このスクレッパ5の印刷ペースト2と接触する部分における表面に点線で囲む様に攪拌促進領域6が形成されている。この攪拌促進領域6は、少なくともスクレッパ5によるコート動作時において印刷ペースト2が接触する領域全体より広い領域に形成されるのが望ましい。本実施の形態1では、この攪拌促進領域6において、表面に微細な凹凸形状が形成されており、平面に比べて印刷ペースト2と接触する接触面積が大きくされている。より具体的には、図1(b)、図1(c)に示すような微細な突起16が、攪拌促進領域6のほぼ全体に渡って、規則正しく配列して形成されている。突起16については、球面の突起よりなり、スクレッパ5の表面における直径としては、0.5mm〜5mm程度の範囲より選ばれた等しい大きさの突起が、ほぼ直径に等しい間隔で配列されている。即ち、攪拌促進領域6において、突起16は大きさが揃っており、均一な密度に配置されている。なお、ここで言う密度とは、突起16の個数での配置密度にあたり、具体的には凹凸形状である突起16のスクレッパ5表面でのパターン形状について、重心位置の個数を攪拌促進領域6における単位面積あたりで見積ったものを凡その密度の尺度として使うものとする。
【0015】
続いて、本実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の動作について、図2および図3の装置側面側(印刷方向と垂直な方向)から見た側面図を用いて説明する。先ず、図2に示す様に、スクレッパ5が図中(+X)方向、即ち、スクリーン版3の表面に沿ったスクリーン版3の長手方向に平行な方向となる図中矢印CTの方向に、スクリーン版3の表面と所定の間隔に保ちながら移動することにより、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作が行われる。これにより、少なくとも開口パターン4の配置される部分を含む領域においてスクリーン版3上に印刷ペースト2がほぼ均一に塗り広げられる。また、図1においては、コート動作を行うスクレッパ5と印刷を行うスキージ7を離れた位置に別々に配置した図面により、其々の構成について説明を行った。もちろん、図1の様に別々に配置し、其々独立した移動機構を設けても良いが、本実施の形態1では、具体的な構成として、図2に示す様に、スクレッパ5とスキージ7は共通の保持部15により保持されており、保持部15が図示されない移動機構により水平に移動される。また、保持部15はスクレッパ5とスキージ7の機能させる方を下降(図中(−Z)方向)し、退避させる方を上昇(図中(+Z)方向)させる動作を、スクレッパ5とスキージ7を切り替えて交互に行う移動機構を備えている。図2のコート動作前には、保持部15によりスクレッパ5がスクリーン版3の表面に対して所定の間隔に近接されるスクレッパ5の下降動作と、スキージ7が退避するスキージ7の上昇動作が行われ、スクレッパ5のみが機能するコート動作の準備が行われる。
【0016】
次に、図3に示す様に、スキージ7が図中(−X)方向、即ち、スクリーン版3の表面に沿ったスクリーン版3の長手方向に平行な方向となる図中矢印PRの方向を印刷方向として、スクリーン版3の表面に押し付けられながら移動することにより、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2が開口パターン4を介して基板1の表面に塗布される。より具体的にはスクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2が開口パターン4内に充填された後、充填された印刷ペースト2が基板1の表面に転写され、開口パターン4の形状に対応した印刷が行われる。また、印刷時には、前もってスクリーン版3或いはステージ8が移動することにより、スクリーン版3とステージ8は接触する間際まで近接され、スクリーン版3とスクリーン版3の下部に配置された基板1の表面も同様に近接され、スクリーン版3と基板1の表面は対向配置される。このスクリーン版3と基板1の近接動作は、少なくともスキージ7の動作時において近接されていれば良いことから、スキージ7の動作直前であっても良いし、スクレッパ5によるコート動作の前であっても良い。更に、このスクリーン版3と基板1の近接動作後、図3の印刷動作前には、保持部15によりスキージ7がスクリーン版3の表面に押し付けられ、基板1表面或いはステージ8に対して所定の間隔に近接されるスキージ7の下降動作と、スクレッパ5が退避するスクレッパ5の上昇動作が行われ、スキージ7のみが機能する印刷動作の準備が行われる。
【0017】
続いて、本実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法による作用について、図4を用い説明する。図4は、スクレッパ5によるコート動作中のスクレッパ5近傍の状態を示す模式図であり、其々、図4(a)はコート動作方向(図中矢印CT)に対し側面側より見た場合、図4(b)は、図4(a)中のA−B断面において、上面側、即ち、図中(+Z)方向より見た場合に相当する。図4(a)に示す様にスクレッパ5によるコート動作中には、スクレッパ5によりスクリーン版3の表面の印刷ペースト2が基本的には図中矢印R1に示す様に回転攪拌されながら進み、コート動作が行われる。コート動作中の印刷ペースト2の粘度は印刷ペースト2の攪拌速度に依存することから、一般的な従来のスクレッパの場合には、この図中矢印R1に示す回転攪拌効果により、印刷ペーストの粘度が低下する。然しながら、本実施の形態1のスクレッパ5の場合には、スクレッパ5の印刷ペースト2と接する領域に微細な突起16が規則正しく配列して形成された攪拌促進領域6が設けられていることから、図中矢印R2に示す様な回転攪拌の動きが追加される。また、図中矢印R2に示す様な回転攪拌の動きは、図4(a)に示される様な、図中矢印R1と同じY方向の回転軸に加え、図4(b)に示される様なZ方向の回転軸を有するものが発生する。更に、球面の突起16であることから、その他、様々な方向を軸とする回転攪拌の動きが複雑に発生する。この様に、攪拌促進領域6により印刷ペースト2の攪拌の動きが促進されることから、全体的な印刷ペースト2の攪拌速度が上がり、攪拌による印刷ペースト2の粘度低下作用も向上する。更に、印刷ペースト2の粘度が低い程、気泡が印刷ペースト2中から抜け易くなることから、気泡の抜けも促進されて、気泡による問題点の発生も抑制できる。
【0018】
なお、この攪拌促進領域6による印刷ペースト2の攪拌促進効果は、スクレッパ5表面における印刷ペースト2の流れが凹凸形状によって分散される効果や、スクレッパ5表面との接触面積自体が大きくなる効果により生ずる。また、実質的に攪拌促進効果が得られる為には、攪拌促進領域6のほぼ全体に渡って、上記の凹凸形状が形成される必要があり、本実施の形態1の様に配列された微細な突起16などにより凹凸形状が形成される場合には、少なくとも縦横に複数の行列を有する様に形成される必要がある。
【0019】
以上説明の様に、本実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においては、印刷ペースト2をスクリーン版3上に塗り広げるスクレッパ5に印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えることにより、スクレッパ5の移動速度を早くする事なく、印刷ペースト2を低粘度化し、印刷ペースト中から気泡が離脱することを容易にすることができる。
【0020】
更に、本実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においては、攪拌促進領域6に形成される微細な突起16が規則正しく配列して形成されていることから、攪拌促進効果が攪拌促進領域6の全体に渡り均一となる。また、突起16が全て同じ大きさに形成されていることから、同様に攪拌促進効果が攪拌促進領域6の全体に渡り均一となる。また、突起16が曲面で形成されることから、攪拌促進領域6で形成される印刷ペースト2の回転による攪拌がスムーズに起こり攪拌速度が上がる。更に球面であることで、多方向の回転軸を有する攪拌が発生すること、凹凸形状の形成が比較的容易であることなどの利点がある。
【0021】
また、本実施の形態1の攪拌促進領域6については、突起16が整列されて、均一な密度に形成されている場合を例として説明を行ったが、ランダムな位置に配置されても良い。但し、整列されて密度が均一な方が、上記説明のとおり、攪拌が均一に行われる点で好ましい。また、突起16が離散的に距離を置いて配置されていたが、其々の突起16が隙間無く密集して配置されていても良い。この様な変形例について、スクレッパ先端部の正面図および側面図を図5(a)および図5(b)に示す。図に示される様に、この変形例においては、スクレッパ5aに、其々の突起16が隙間無く密集して配置された攪拌促進領域6aを備えている。更に、突起16間の距離を詰めて密度を上げて、攪拌促進領域6の突起16間に全く平面が形成されなくしても良く、突起16間の距離は変えずに、突起16間の平坦部を埋める様に異なる径の突起を配置しても良い。この様に突起16が隙間無く配置されることにより、攪拌促進領域6aの表面が全て曲面により形成されることになり印刷ペースト2の回転による攪拌が妨げられずスムーズに起こるため攪拌速度を向上することができる。また、凹凸形状について、突起16が配列する場合を例としたが、突起16の代わりに、例えば球面からなる窪み26を配置しても良い。この様な変形例について、スクレッパ先端部の正面図および側面図を図6(a)および図6(b)に示す。図に示される様に、この変形例においては、スクレッパ5bに球面からなる窪み26を配置した攪拌促進領域6bを備えている。この様な形態においても球面の突起16の場合とほぼ同様の攪拌効果が得られ、球面であることから凹凸形状の形成も比較的容易である。
【0022】
また、本発明における攪拌促進領域の形態はこれらの形態に限られず、形状、大きさ、密度、配列などを適宜変更しても良い。更に、少なくとも微細な凹凸形状が形成されれば、同様に攪拌促進効果が得られることから、その他、様々な凹凸形状であっても良く、上記説明の本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。例えば、必ずしも凹凸形状が規則正しく配列するものに限られず、ある程度のバラツキを含んで均一な密度に形成された凹凸形状であれば良く、均一に処理されたブラスト面の様な粗面よりなる凹凸形状であっても構わない。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態1においては、同じ大きさの突起16が整列される攪拌促進領域6を備えるスクレッパ5を有したスクリーン印刷装置について説明を行った。実施の形態1の攪拌促進領域6に備えられた凹凸形状である突起16は同じ大きさの突起16であることから、全ての突起16が同じ攪拌促進の役割を担っていたが、本実施の形態2においては、少なくとも二種類の異なる凹凸形状を有し、其々が異なる役割を担う特徴を有する攪拌促進領域を備えたスクレッパを有したスクリーン印刷装置について説明を行う。なお、本実施の形態2における実施の形態1からの変更点については、スクレッパに設けられた攪拌促進領域の構成の違いのみであり、その他の印刷機構などについては同一の構成で良いことから、以下、実施の形態1との変更部である攪拌促進領域の構成を重点的に説明し、実施の形態1と同じ構成については適宜説明を省略する。
【0024】
まず、本実施の形態2における特徴部分である攪拌促進領域6cを備えたスクレッパ5cについて、図7を用いて説明する。ここで、図7(a)および図7(b)は本発明の主要部であるスクレッパ5cの先端部の正面図および側面図を其々示したものである。図7(a)に示す様に、このスクレッパ5cの印刷ペースト2と接触する部分における表面に点線で囲む様に攪拌促進領域6cが形成されている。本実施の形態2の攪拌促進領域6cにおいても、表面に微細な凹凸形状が形成されているが、より具体的には、図7(a)および図7(b)に示すように攪拌促進領域6cの下部に微細な突起16aが規則正しく配列して形成されており、更に攪拌促進領域6cの上部に上下方向を長手方向にして延在する溝26aが微細な突起16aの間に微細な窪みとして形成されている点が異なる。突起16aについては、実施の形態1における突起16と同様の形態で良く、球面の突起よりなり、スクレッパ5cの表面における直径としては、0.5mm〜5mm程度の範囲より選ばれた等しい大きさの突起が、ほぼ直径に等しい間隔で配列されている。即ち、攪拌促進領域6cにおいて、突起16aは大きさが揃っており、均一な密度に配置されている。
【0025】
続いて、本実施の形態2のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法による作用について、図8を用い説明する。図8は、スクレッパ5cによるコート動作中のスクレッパ5c近傍の状態を示す模式図であり、コート動作方向(図中矢印CT)に対し側面側より見た場合に相当する。図8に示す様に、スクレッパ5cによるコート動作中には、実施の形態1と同様にスクレッパ5cによりスクリーン版3の表面の印刷ペースト2が基本的には図中矢印R1に示す様に回転攪拌されながら進み、コート動作が行われる。本実施の形態2のスクレッパ5cの場合には、スクレッパ5cの印刷ペースト2と接する領域に微細な突起16が規則正しく配列して形成された攪拌促進領域6が設けられていることから、このコート動作において、図中矢印R2に示す様な回転攪拌の動きが追加される。この図中矢印R2に示す回転攪拌効果により、印刷ペースト2の粘度が低下する。更に、本実施の形態2においては、攪拌促進領域6cの上部に上下方向を長手方向にして延在する溝26aにより、図8に示す様に、印刷ペースト2中に発生している気泡9が溝26a内部の印刷ペースト2中を介して、スクレッパ5cの上部へ移動し、印刷ペースト2の表面より離脱する。また、溝26aの断面において、図8に示す様に印刷ペースト2と接する下側の面において、傾斜部27aが形成されていることにより、印刷ペースト2が上方に向かって移動し易くなることから、溝26a内の上部における気泡9の離脱が促進される。また、溝26aは凹凸形状でもあることから、当然、印刷ペースト2の攪拌についても促進する効果を有し、印刷ペースト2の粘度低下にも寄与する。
【0026】
以上説明の様に、本実施の形態2のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においても、実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法と同様に、印刷ペースト2をスクリーン版3上に塗り広げるスクレッパ5cに印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6cを備えることにより、スクレッパ5cの移動速度を早くする事なく、印刷ペースト2を低粘度化し、印刷ペースト中から気泡が離脱することを容易にすることができる。
【0027】
更に、本実施の形態2のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においては、スクレッパ5cに下部に設けられる突起16aと上部に設けられる上下方向を長手方向に延在する溝26aの二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域6cを備えることにより、突起16aと溝26aなどの凹凸形状により、印刷ペースト2を低粘度化するとともに、攪拌促進領域6cの上部に設けられる上下方向を長手方向に延在する溝26aにより、印刷ペースト2をスクレッパ5cの上部へ誘導することにより、気泡の離脱を促進することができる。結果として、気泡の離脱効果の高いスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を得ることができる。
【0028】
二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域としては、他の形態であっても良い。その他の二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域を備えたスクレッパの一例について、図9を用い説明する。図9(a)および図9(b)は、この二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域を備えたスクレッパの先端部の正面図および側面図を示したものである。図に示される様に、この変形例においては、スクレッパ5dに、攪拌促進領域6dを備えており、この攪拌促進領域6dにおいては、二種類の異なる径を有する微細な突起16bと微細な突起16cが形成されており、突起16bと突起16cともに、球面の突起よりなり、スクレッパ5dの表面における直径としては、例えば突起16bが5mm程度、突起16cが1mm程度に形成され、突起16bの方が突起16cに比べて大きい突起となっている。また、配置としては、大きい突起16bの間に小さい突起16cが配置され、より具体的には、近接して配置される四つの大きい突起16bに対して、四つの大きい突起16bにより囲まれる中心位置に小さい突起16cが一つ配置される規則で、規則正しく配列して形成されている。
【0029】
この図9に示した突起16bと突起16cの二種類の異なる径を有する攪拌促進領域6dを備えたスクレッパ5dよりなる実施の形態2の変形例の作用について説明する。印刷ペースト2のコート動作中において、実施の形態1或いは実施の形態2と同様に、突起16bと突起16cよりなる凹凸形状により、印刷ペースト2は攪拌され、攪拌促進領域6dは印刷ペースト2の攪拌の促進に寄与する。また、大小二種類の突起16bと突起16cの両者により、印刷ペースト2の攪拌は促進されるが、印刷ペースト2は、大きい突起16bにより、突起16b近傍から離れた範囲まで比較的広い領域範囲が攪拌され、小さい突起16cにより、突起16c近傍の比較的狭い領域範囲が攪拌される。この様に異なる範囲での複雑な攪拌が生じることから、印刷ペースト2の攪拌速度が上がり、印刷ペースト2の粘度低下が促進される。更に、小さい突起16cによる細かい攪拌を行い印刷ペースト2の粘度低下を促進する役割、大きい突起16bによる攪拌促進領域6d内の全体に渡る攪拌を行い印刷ペースト2中の気泡を離脱のし易い印刷ペースト2の周辺部まで誘導する役割といった、二種類の異なる凹凸形状による其々異なる役割分担が行われ、気泡の離脱を促進することができる。
【0030】
この図9を用い説明した実施の形態2の変形例については、更に図10に示す様に、大きい突起に囲まれる小さい突起の数を増やしても良い。図10(a)および図10(b)は、この小さい突起の数を増やした攪拌促進領域6eを備えたスクレッパ5eの先端部の正面図および側面図を示したものである。図に示される様に、この変形例においては、攪拌促進領域6eにおいて、大きい突起16bに囲まれる小さい突起16dの数を増やしており、具体的には、四つの大きい突起16bにより囲まれる一つの領域あたりに、複数の小さい突起16dが配置されており、ここでは、一例として四つの小さい突起16dを配置している。この変更点以外については、図9を用い説明した実施の形態2の変形例と同様の構成で良いので、詳細な説明は省略する。
【0031】
図9を用いて説明したとおり、小さい突起は、主に、細かい攪拌を行い印刷ペースト2の粘度低下を促進する役割を担っている。従って、攪拌促進領域6eにおける小さい突起16dの配置割合が増加していることから、より攪拌が激しく起こり、印刷ペースト2の粘度低下効果が上がる。続いて、この様に、より粘度低下が大きく、気泡の離脱のし易くなった印刷ペースト2が、大きい突起16bにより攪拌促進領域6e内の全体にわたり攪拌される。その結果、印刷ペースト2中の気泡が、気泡を離脱し易い印刷ペースト2の周辺部まで誘導されることになり、更に気泡の離脱を促進する効果を向上することができる。なお、図10で説明したスクレッパ5eについては、一例であり、小さい突起16dの数や大きさについては、適宜変更しても良く、大きい突起16bの数や大きさについても変更しても良い。大きさの目安としては、小さい突起16dについては、0.5mm〜3mm程度の範囲、大きい突起16bについては、3mm〜10mm程度の範囲が望ましいが、必ずしもこれらの範囲でなくとも良い。
【0032】
更に、異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域としては、上記説明の構成に限られず、実施の形態1、実施の形態2およびこれらの変形例で説明した各形態について、形状(突起或いは窪みであるかも含めて)、大きさ、密度、配列などを適宜変更したものについて、其々組合せて配置しても良く、異なる凹凸形状で其々異なる役割を分担させると良い。
【0033】
実施の形態3.
続いて、本発明を液晶パネルの製造方法に適用した実施形態である実施の形態3について説明を行う。まず、本実施の形態3の液晶パネルの製造方法により製造される液晶パネルの構成について図10を用いて説明する。なお、ここでは、一例としてTFT(Thin Film Transistor)方式の液晶パネルについて説明する。この液晶パネル200は、図に示される様に、スイッチング素子基板210、カラーフィルタ基板220、およびスイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220との間に充填された液晶230から構成されている。
【0034】
上述のスイッチング素子基板210は、ガラス基板211の一方の面に液晶230を配向させる配向膜212、配向膜212の下部に設けられ液晶230を駆動する電圧を印加する画素電極213、画素電極213に電圧を供給するTFTなどのスイッチング素子214、スイッチング素子214を覆う絶縁膜215、スイッチング素子214に供給される信号を外部から受け入れる端子216、端子216から入力された信号を対向電極へ伝達するためのトランスファ電極217等を有している。また、ガラス基板211の他方の面には偏光板231を有している。一方、上述のカラーフィルタ基板220は、ガラス基板221の一方の面に液晶230を配向させる配向膜222、配向膜222の下部に配置され、スイッチング素子基板210上の画素電極213との間に電界を生じ液晶230を駆動する共通電極223、共通電極223下部に設けられるカラーフィルタ224および遮光層225等を有している。また、ガラス基板221の他方の面には偏光板232を有している。
【0035】
また、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220はシールパターン233を介して貼り合わされている。更にトランスファ電極217と共通電極223は、トランスファ材234により電気的に接続されており、端子216から入力された信号が共通電極223に伝達される。この他に、液晶パネル200は駆動信号を発生する制御基板235、制御基板235を端子216に電気的に接続するFFC(Flexible Flat Cable)236、光源となるバックライトユニット(図示せず)等を備えている。
【0036】
この液晶パネル200は次の様に動作する。例えば、制御基板235から電気信号が入力されると、画素電極213および共通電極223に駆動電圧が加わり、駆動電圧に合わせて液晶230の分子の方向が変わる。そして、バックライトユニットの発する光がスイッチング素子基板210、液晶230およびカラーフィルタ基板220を介して外部へ透過あるいは遮断されることにより、液晶パネル200に映像等が表示される。
【0037】
なお、この液晶パネル200は一例であり他の構成でも良い。液晶パネル200の動作モードは、TN(Twisted Nematic)モードや、STN(Supper Twisted Nematic)モード、強誘電性液晶モード等でも良く、駆動方法は、単純マトリックスやアクティブマトリックス等でも良い。また、画素電極213を透過電極とする透過型液晶パネルに限られず、画素電極213を反射電極とする反射型液晶パネルや、反射電極と透過電極の双方とする半透過型液晶パネルでも良い。更にカラーフィルタ基板220に設けた共通電極223をスイッチング素子基板210側に設置して、画素電極213との間に基板面に対して横方向に電界をかけ液晶230を動作させる横電界方式を用いた液晶パネルでも良い。
【0038】
次に、本実施の形態3の液晶パネルの製造方法について説明する。スイッチング素子基板210およびカラーフィルタ基板220の製造方法については一般的な方法を用いても良いため、簡単に説明する。スイッチング素子基板210は、ガラス基板211の一方の面に、成膜、フォトリソグラフィー法によるパターンニング、エッチング等のパターン形成工程を繰り返し用いてスイッチング素子214や画素電極213、端子216、トランスファ電極217を形成することにより製造される。また、カラーフィルタ基板220は、同様に、ガラス基板221の一方の面に、カラーフィルタ224や共通電極223を形成することにより製造される。また、一対のスイッチング素子基板210およびカラーフィルタ基板220から多数の液晶パネル200が効率良く製造できる様に、ガラス基板211、221の短辺および長辺と平行に液晶パネルの面付けが並ぶ様に規則正しく整列して配置されている。
【0039】
続いて、本実施の形態3において特徴的な組み立て工程について図11に示すフローチャートにしたがって説明する。まず、基板洗浄工程において、画素電極213が形成されているスイッチング素子基板210を洗浄する(S1)。次に、配向膜材料塗布工程において、スイッチング素子基板210の一方の面に、配向膜材料を塗布形成する(S2)。この工程は、例えば、印刷法により有機膜からなる配向膜材料を塗布し、ホットプレートなどにより焼成処理し乾燥させる。その後、ラビング工程において配向膜材料にラビングを行い、配向膜材料表面を配向処理し配向膜212とする(S3)。また、S1からS3と同様に、共通電極223が形成されているカラーフィルタ基板220についても、洗浄、配向膜材料の塗布、ラビングを行うことにより配向膜222を形成する。
【0040】
続いて、シール材塗布工程において、実施の形態1で説明したスクリーン印刷装置により、シール材を印刷ペーストとして、液晶パネル用基板であるスイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220を被印刷物とし、これら液晶パネル用基板の一方の面にシール材の塗布を行いシールパターン233を形成する(S4)。この工程では、ガラス基板211、221の短辺および長辺と平行に規則正しく配置された液晶パネルの面付けに対応して、液晶パネルの周辺に配置されるシールパターン233も短辺および長辺と平行に規則正しく整列して形成する。また、実施の形態1で説明した攪拌を促進する攪拌促進領域を備えるスクレッパを有するスクリーン印刷装置を用いており、気泡により発生するピンホールを起因とするシールパターン形状の不安定化について懸念する必要が無いことから、スクレッパの移動速度を特に早くする事なく、従来のコート動作条件を用いて構わない。その他、具体的なスクリーン印刷装置による印刷処理の方法については、実施の形態1で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、トランスファ材塗布工程において、スイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220の一方の面にトランスファ材234の塗布処理を行う(S5)。そして、スペーサ散布工程において、スイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220の一方の面にスペーサを散布する(S6)。この工程は、例えば、湿式法や乾式法によりスペーサを分散させることにより行われる。なお、スペーサとして有機樹脂膜をパターニングして形成された柱状のスペーサを用いる場合には、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220の何れかの上に組み立て工程前に形成しておくことが望ましく、その場合においては、このスペーサ散布工程は省略可能である。その後、貼り合わせ工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせる(S7)。続いて、シール硬化工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた状態で、シールパターン233を完全に硬化させる(S8)。この工程は、例えば、シールパターン233の材質に合わせて熱を加えることや、紫外線を照射することにより行われる。次に、セル分断工程において、貼り合わせた基板を多数の個別セルに分解する(S9)。そして、液晶注入工程において、個々のセルに対して液晶注入口から液晶を注入する(S10)。この工程は、例えば、液晶230を液晶注入口から真空注入により充填することにより行われる。更に、封止工程において、液晶注入口を封止する(S11)。この工程は、例えば、光硬化型樹脂で封じ、光を照射することにより行われる。
【0042】
以上のS7〜S11の貼り合わせから液晶封止までの工程については、通常の真空中において注入口から液晶を注入する真空注入法を一例として説明した。しかし、別の液晶注入方法として、注入口の無いシールパターン233の形状とし、液晶230をスイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の上に液滴状態で滴下して形成し、この滴下した液晶230を挟む様にスイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた後にシールパターン233を硬化させる方法、所謂、液晶滴下(ODF)法を用いてもかまわない。最後に、偏光板貼り付け工程において、セルに偏光板231、232を貼り付け(S12)、制御基板実装工程において、制御基板235を実装する(S13)ことによって、液晶パネル200が完成する。
【0043】
以上説明した実施の形態3の液晶パネルの製造方法においては、上述の通り、シール材塗布工程において、実施の形態1で説明した攪拌を促進する攪拌促進領域を備えるスクレッパを有するスクリーン印刷装置を用い、シールパターン233を形成することにより、ピンホールを起因とするシールパターン形状の不安定を発生することがなく、また、スクレッパの移動速度を特に早くする必要も無いことから、充填不良を起因とするシールパターン形状の不安定についても発生することが無い。従って、安定したシールパターン233形成が可能となる。その結果、液晶パネル200の製造工程におけるシールパターン形状不良を起因とする不良品発生による歩留りの低下や、製造される液晶パネル200におけるシールパターン形状が細線化することによる信頼性の低下などを防止することができる。従って、不良品となり工程内で脱落される基板を削減できることから、原材料費の削減につながる。更に不良品の代替品を再度作りなおす無用な処理の削減を実現できることから製造にかかるエネルギー消費量の削減につながる。
【0044】
また、本実施の形態3においては、実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法をシール塗布工程に用いた液晶表示パネルの製造方法について説明した。然しながら実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に代えて、実施の形態1の変形例や実施の形態2および実施の形態2の変形例において説明したスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を用いた場合においても本実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0045】
実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3およびこれらの変形例においては、液晶パネルにおけるシール材形成工程に用いるスクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法或いは液晶パネルの製造方法へ本発明を適用した場合を例にとって説明したが、あくまでも例示的なものであり、スクリーン印刷を用いペーストパターンを形成する必要のある工程を有していれば、例えば、電子ペーパーや有機EL表示装置など、液晶パネル以外の表示装置におけるペーストパターンを形成する工程に用いるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法でも良く、更に、表示装置の製造工程に限らずスクリーン印刷に用いられるあらゆる被印刷物を対象とするスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に適用することも可能であり、同様の効果が得られる。また、印刷ペーストに関しても、シール材に限定されず、チキソ性を有しスクリーン印刷に用いられるあらゆる印刷ペーストに適用できる。
【0046】
以上の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素を、本発明の効果の得られる範囲において、容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 基板、2 印刷ペースト、3 スクリーン版、4 開口パターン、
5、5a、5b、5c、5d、5e スクレッパ、
6、6a、6b、6c、6d、6e 攪拌促進領域、7 スキージ、
16、16a、16b、16c、16d 突起、26 窪み、26a 溝、
200 液晶パネル、233 シールパターン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法およびこれらを用いた液晶パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な液晶パネルの製造プロセスにおけるパネル組み立ての工程は、主にガラス基板を元に作成された駆動素子基板とカラーフィルタの役割である対向基板について、間隔をあけて貼り合わせる工程と、所定のパネルサイズに切断する工程と、その間隔内に液晶を注入する工程と、液晶の注入口を封止する工程とがある。基板を貼り合せる為に、駆動素子基板と対向基板のうち主に対向基板上に、各々パネルのサイズに対してパネルの表示部分を囲むような形状に、更に液晶の注入口を設ける様な形状にシールパターンを形成する。方法としては、スクリーン印刷方式とノズル走査によってパターンを描くシールディスペンス方式の二つが一般的である。両者のうち、スクリーン印刷方式は、基板あたり形成されるパネル数が多い場合において生産性に優れるなどの点から、近年は主流となっている。
【0003】
この様なスクリーン印刷方式を用いたシールパターン形成工程においては、予めスクリーン版に形成されたシールパターンの形状に対応した開口部よりなる開口パターンを介して基板上に印刷ペーストを塗布し印刷パターンを形成するため、スクリーン版面と間隔をあけて走査するスクレッパにより印刷ペーストをスクリーン版上に均一に押し広げるコート工程と、スクリーン版面を所定の圧力で押しながら走査するスキージにより前述の印刷ペーストを開口パターン内より押し出して基板上に塗布する印刷工程が交互に繰り返される。スクレッパを走査するコート工程では印刷ペーストがスクリーン版上を回転しながら移動して広げられるため印刷ペースト内に気泡が巻き込まれやすく、この気泡はスクリーン版上に均一に拡げられる印刷ペースト中で印刷ペーストが無い部分(空間)であるボイド(或いは貫通している場合ピンホールとも呼ぶ)の発生原因となる。この印刷ペーストの無い部分であるボイドが開口パターンにかかると印刷工程で押し出される印刷ペーストの量が不足するため、形成される印刷パターンの形状が安定せずに所望の線幅より細く形成される場合や断線する場合が発生するという問題があった。
【0004】
上述のような印刷ペースト中に発生する気泡の問題に対し、印刷ペーストの粘度と、その粘度に影響する要因となるペーストのチキソ性(揺変性とも呼ばれる)という性質が重要な要因となる。このチキソ性とは、ペーストを攪拌すると粘度が低くなり、静止状態では粘度が高くなる性質である。このペーストのチキソ性を有効に活用して、スクリーン印刷は行われている。具体的には、印刷ペーストの粘度としては、上記説明の気泡に対しては、印刷ペースト中より気泡が抜けやすい点で粘度が低い方が好ましい。一方、粘度が低い場合には、スクリーン版の開口パターンや静止時のスクレッパよりインクが垂れる「液ダレ」や、被印刷物に印刷ペーストを転移させる際にパターンエッジががたつく「にじみ」等が発生しやすくなる。この様な粘度に対する相反する要求に対し、チキソ性の大きい、即ち、攪拌時と静止時の粘度差の大きい印刷ペーストを用いることにより、主に印刷ペーストの静止時の問題である「液ダレ」や「にじみ」については、静止時においては粘度が高いことにより発生し難くすることができ、気泡の問題に対しては、印刷ペーストのコート工程における攪拌により粘度を低下させて気泡を抜けやすくすることにより発生し難くすることができる。つまり、粘度が変化するというチキソ性の特徴を利用して粘度に対する相反する要求を両立している。然しながら、現在も気泡による問題点が残存していることからすると、このチキソ性を利用した粘度低下が不十分であるものと考えられる。但し、更に印刷ペーストの攪拌速度を速くするには、スクレッパのコート速度を速くすることが有効であるが、現状のレベルを超えてコート速度を速くすると開口パターンに所望量の印刷ペーストを充填することが困難となってくる。従って、更にコート速度を上げることによる気泡対策は現実的には困難である。以上説明のスクリーン印刷に関する問題点を解決するものとして、特許文献1において、スクレッパの表面に「液ダレ」を防止する突起や溝を設け、静止時も含め印刷ペーストへの低粘度化の要望に応えるスクリーン印刷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−341965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、特許文献1のスクリーン印刷装置においては、低粘度の印刷ペーストを使用した場合、スクリーン版の開口パターンからの「液ダレ」やパターンエッジががたつく「にじみ」を防止することができないことから、極端な印刷ペーストの低粘度化を進めることが難しい。また、印刷ペーストを攪拌により低粘度化する効果についても従来からの平坦なスキージと比べて大差がない。従って、上記説明の印刷ペースト内の気泡により発生する問題点を根本的に解決することはできなかった。
【0007】
本発明は、以上説明のような問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、印刷パターンを安定して形成できるスクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法および液晶パネルの製造方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクリーン印刷装置においては、被印刷物上に対向配置され、開口パターンを有するスクリーン版と、このスクリーン版の表面に沿って移動して、印刷ペーストを前記のスクリーン版上に塗り広げるスクレッパと、このスクリーン版上において印刷方向に移動して、印刷ペーストを開口パターンを介し前記の被印刷物に印刷するスキージとを備え、このスクレッパは、印刷ペーストと接触する部分における表面に印刷ペーストの攪拌を促進する攪拌促進領域を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
スクリーン印刷装置の印刷ペーストをスクリーン版上に塗り広げるスクレッパに印刷ペーストの攪拌を促進する攪拌促進領域を備えることにより、スクレッパの移動速度を早くする事なく、印刷ペーストを低粘度化し、印刷ペースト中から気泡が離脱することを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置を示した斜視図と主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置のコート動作時の状態を説明する側面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の印刷動作時の状態を説明する側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるスクリーン印刷装置のコート動作の作用を説明する上面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図8】本発明の実施の形態2におけるスクリーン印刷装置のコート動作の作用を説明する上面図である。
【図9】本発明の実施の形態2の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図10】本発明の実施の形態2の変形例における主要部のスクレッパ先端部の正面図及び側面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における液晶パネルの断面図である。
【図12】本発明の実施の形態3における液晶パネルの製造方法での組み立て工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
ここでは、本発明をスクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法および液晶パネルの製造方法におけるシールパターンを形成する工程に適用した実施形態である実施の形態1について説明を行う。まず、本実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の構成について図1を用いて説明する。ここで、図1(a)はスクリーン印刷装置全体を示した斜視図、図1(b)、図1(c)は本発明の主要部であるスクレッパ先端部の正面図および側面図を其々示したものである。なお、図は模式的なものであり、示された構成要素の正確な大きさなどを反映するものではない。また、図面が煩雑とならない様、発明の主要部以外の省略や構成の一部簡略化などを適宜行っている。以下の図においても同様とする。更に、以下の図においては、図中、既出の図において説明したものと同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
図1において、1は被印刷物となる基板、2は印刷される印刷ペースト、3はスクリーン版、4はスクリーン版3に形成された開口パターン、5はスクレッパ、6はスクレッパに形成された印刷ペーストの攪拌促進領域、7はスキージ、8は被印刷物を保持するステージである。本実施の形態1のスクリーン印刷装置は、図1に示される様に、基板1を保持するステージ8と、基板1の上部に対向配置されるスクリーン版3と、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作を行うスクレッパ5と、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2を開口パターン4を介して基板1表面に印刷するスキージ7を備え、スクレッパ5は、印刷ペースト2と接触する部分における表面に印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えている。なお、図中において、印刷ペースト2は、既にスクレッパ5によるコート動作を経て、スクリーン版3上に塗り広げられた状態で示している。また、本実施の形態1においては、図中のX方向とY方向(スクリーン版3表面に沿う方向で、フレーム3における長手方向と短手方向に其々対応)に対し、スクレッパ5とスキージ7がY方向に沿う方向に、其々配置されている。なお、スクリーン印刷装置には、印刷動作時においてスキージ7およびスクレッパ5を水平に移動させたり、スクリーン版3との距離を変える為に上下移動させたりする移動機構や、印刷前後における基板1の搬入搬出時などにステージ8を搬入搬出位置まで移動動作させるステージ移動機構や、ステージ8と装置外間の基板1の搬入搬出をする基板搬送機構なども備えるが、発明の主要部では無いので、ここでは図示と説明を省略する。
【0013】
スクリーン版3については、図1に示される様に、アルミなどの金属からなるフレーム3aと、フレーム3aに貼り付けられた開口パターン4を有するスクリーン3bとから構成されており、スクリーン3bについては、金属メッシュと乳剤層より構成される場合と、ごく薄い金属板により構成される場合があるが、本実施の形態1においては、何れの構成を用いても良い。また、開口パターン4については、一般的な液晶パネルに用いられるシールパターンに対応する開口パターンとした。また、複数の液晶パネルを多面取りできる様に、開口パターン4をマトリクス状に、ここでは、例えば縦4列かつ横4行に配列している。
【0014】
続いて、本発明の主要部である印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えるスクレッパ5の構成について、図1(b)、図1(c)を用い詳細に説明する。図1(b)、図1(c)は、スクレッパ5の特に印刷ペースト2と接触する部分となる下部付近を拡大して示している。図1(b)に示す様に、このスクレッパ5の印刷ペースト2と接触する部分における表面に点線で囲む様に攪拌促進領域6が形成されている。この攪拌促進領域6は、少なくともスクレッパ5によるコート動作時において印刷ペースト2が接触する領域全体より広い領域に形成されるのが望ましい。本実施の形態1では、この攪拌促進領域6において、表面に微細な凹凸形状が形成されており、平面に比べて印刷ペースト2と接触する接触面積が大きくされている。より具体的には、図1(b)、図1(c)に示すような微細な突起16が、攪拌促進領域6のほぼ全体に渡って、規則正しく配列して形成されている。突起16については、球面の突起よりなり、スクレッパ5の表面における直径としては、0.5mm〜5mm程度の範囲より選ばれた等しい大きさの突起が、ほぼ直径に等しい間隔で配列されている。即ち、攪拌促進領域6において、突起16は大きさが揃っており、均一な密度に配置されている。なお、ここで言う密度とは、突起16の個数での配置密度にあたり、具体的には凹凸形状である突起16のスクレッパ5表面でのパターン形状について、重心位置の個数を攪拌促進領域6における単位面積あたりで見積ったものを凡その密度の尺度として使うものとする。
【0015】
続いて、本実施の形態1におけるスクリーン印刷装置の動作について、図2および図3の装置側面側(印刷方向と垂直な方向)から見た側面図を用いて説明する。先ず、図2に示す様に、スクレッパ5が図中(+X)方向、即ち、スクリーン版3の表面に沿ったスクリーン版3の長手方向に平行な方向となる図中矢印CTの方向に、スクリーン版3の表面と所定の間隔に保ちながら移動することにより、スクリーン版3上に印刷ペースト2を塗り広げるコート動作が行われる。これにより、少なくとも開口パターン4の配置される部分を含む領域においてスクリーン版3上に印刷ペースト2がほぼ均一に塗り広げられる。また、図1においては、コート動作を行うスクレッパ5と印刷を行うスキージ7を離れた位置に別々に配置した図面により、其々の構成について説明を行った。もちろん、図1の様に別々に配置し、其々独立した移動機構を設けても良いが、本実施の形態1では、具体的な構成として、図2に示す様に、スクレッパ5とスキージ7は共通の保持部15により保持されており、保持部15が図示されない移動機構により水平に移動される。また、保持部15はスクレッパ5とスキージ7の機能させる方を下降(図中(−Z)方向)し、退避させる方を上昇(図中(+Z)方向)させる動作を、スクレッパ5とスキージ7を切り替えて交互に行う移動機構を備えている。図2のコート動作前には、保持部15によりスクレッパ5がスクリーン版3の表面に対して所定の間隔に近接されるスクレッパ5の下降動作と、スキージ7が退避するスキージ7の上昇動作が行われ、スクレッパ5のみが機能するコート動作の準備が行われる。
【0016】
次に、図3に示す様に、スキージ7が図中(−X)方向、即ち、スクリーン版3の表面に沿ったスクリーン版3の長手方向に平行な方向となる図中矢印PRの方向を印刷方向として、スクリーン版3の表面に押し付けられながら移動することにより、スクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2が開口パターン4を介して基板1の表面に塗布される。より具体的にはスクリーン版3上に塗り広げられた印刷ペースト2が開口パターン4内に充填された後、充填された印刷ペースト2が基板1の表面に転写され、開口パターン4の形状に対応した印刷が行われる。また、印刷時には、前もってスクリーン版3或いはステージ8が移動することにより、スクリーン版3とステージ8は接触する間際まで近接され、スクリーン版3とスクリーン版3の下部に配置された基板1の表面も同様に近接され、スクリーン版3と基板1の表面は対向配置される。このスクリーン版3と基板1の近接動作は、少なくともスキージ7の動作時において近接されていれば良いことから、スキージ7の動作直前であっても良いし、スクレッパ5によるコート動作の前であっても良い。更に、このスクリーン版3と基板1の近接動作後、図3の印刷動作前には、保持部15によりスキージ7がスクリーン版3の表面に押し付けられ、基板1表面或いはステージ8に対して所定の間隔に近接されるスキージ7の下降動作と、スクレッパ5が退避するスクレッパ5の上昇動作が行われ、スキージ7のみが機能する印刷動作の準備が行われる。
【0017】
続いて、本実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法による作用について、図4を用い説明する。図4は、スクレッパ5によるコート動作中のスクレッパ5近傍の状態を示す模式図であり、其々、図4(a)はコート動作方向(図中矢印CT)に対し側面側より見た場合、図4(b)は、図4(a)中のA−B断面において、上面側、即ち、図中(+Z)方向より見た場合に相当する。図4(a)に示す様にスクレッパ5によるコート動作中には、スクレッパ5によりスクリーン版3の表面の印刷ペースト2が基本的には図中矢印R1に示す様に回転攪拌されながら進み、コート動作が行われる。コート動作中の印刷ペースト2の粘度は印刷ペースト2の攪拌速度に依存することから、一般的な従来のスクレッパの場合には、この図中矢印R1に示す回転攪拌効果により、印刷ペーストの粘度が低下する。然しながら、本実施の形態1のスクレッパ5の場合には、スクレッパ5の印刷ペースト2と接する領域に微細な突起16が規則正しく配列して形成された攪拌促進領域6が設けられていることから、図中矢印R2に示す様な回転攪拌の動きが追加される。また、図中矢印R2に示す様な回転攪拌の動きは、図4(a)に示される様な、図中矢印R1と同じY方向の回転軸に加え、図4(b)に示される様なZ方向の回転軸を有するものが発生する。更に、球面の突起16であることから、その他、様々な方向を軸とする回転攪拌の動きが複雑に発生する。この様に、攪拌促進領域6により印刷ペースト2の攪拌の動きが促進されることから、全体的な印刷ペースト2の攪拌速度が上がり、攪拌による印刷ペースト2の粘度低下作用も向上する。更に、印刷ペースト2の粘度が低い程、気泡が印刷ペースト2中から抜け易くなることから、気泡の抜けも促進されて、気泡による問題点の発生も抑制できる。
【0018】
なお、この攪拌促進領域6による印刷ペースト2の攪拌促進効果は、スクレッパ5表面における印刷ペースト2の流れが凹凸形状によって分散される効果や、スクレッパ5表面との接触面積自体が大きくなる効果により生ずる。また、実質的に攪拌促進効果が得られる為には、攪拌促進領域6のほぼ全体に渡って、上記の凹凸形状が形成される必要があり、本実施の形態1の様に配列された微細な突起16などにより凹凸形状が形成される場合には、少なくとも縦横に複数の行列を有する様に形成される必要がある。
【0019】
以上説明の様に、本実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においては、印刷ペースト2をスクリーン版3上に塗り広げるスクレッパ5に印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6を備えることにより、スクレッパ5の移動速度を早くする事なく、印刷ペースト2を低粘度化し、印刷ペースト中から気泡が離脱することを容易にすることができる。
【0020】
更に、本実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においては、攪拌促進領域6に形成される微細な突起16が規則正しく配列して形成されていることから、攪拌促進効果が攪拌促進領域6の全体に渡り均一となる。また、突起16が全て同じ大きさに形成されていることから、同様に攪拌促進効果が攪拌促進領域6の全体に渡り均一となる。また、突起16が曲面で形成されることから、攪拌促進領域6で形成される印刷ペースト2の回転による攪拌がスムーズに起こり攪拌速度が上がる。更に球面であることで、多方向の回転軸を有する攪拌が発生すること、凹凸形状の形成が比較的容易であることなどの利点がある。
【0021】
また、本実施の形態1の攪拌促進領域6については、突起16が整列されて、均一な密度に形成されている場合を例として説明を行ったが、ランダムな位置に配置されても良い。但し、整列されて密度が均一な方が、上記説明のとおり、攪拌が均一に行われる点で好ましい。また、突起16が離散的に距離を置いて配置されていたが、其々の突起16が隙間無く密集して配置されていても良い。この様な変形例について、スクレッパ先端部の正面図および側面図を図5(a)および図5(b)に示す。図に示される様に、この変形例においては、スクレッパ5aに、其々の突起16が隙間無く密集して配置された攪拌促進領域6aを備えている。更に、突起16間の距離を詰めて密度を上げて、攪拌促進領域6の突起16間に全く平面が形成されなくしても良く、突起16間の距離は変えずに、突起16間の平坦部を埋める様に異なる径の突起を配置しても良い。この様に突起16が隙間無く配置されることにより、攪拌促進領域6aの表面が全て曲面により形成されることになり印刷ペースト2の回転による攪拌が妨げられずスムーズに起こるため攪拌速度を向上することができる。また、凹凸形状について、突起16が配列する場合を例としたが、突起16の代わりに、例えば球面からなる窪み26を配置しても良い。この様な変形例について、スクレッパ先端部の正面図および側面図を図6(a)および図6(b)に示す。図に示される様に、この変形例においては、スクレッパ5bに球面からなる窪み26を配置した攪拌促進領域6bを備えている。この様な形態においても球面の突起16の場合とほぼ同様の攪拌効果が得られ、球面であることから凹凸形状の形成も比較的容易である。
【0022】
また、本発明における攪拌促進領域の形態はこれらの形態に限られず、形状、大きさ、密度、配列などを適宜変更しても良い。更に、少なくとも微細な凹凸形状が形成されれば、同様に攪拌促進効果が得られることから、その他、様々な凹凸形状であっても良く、上記説明の本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。例えば、必ずしも凹凸形状が規則正しく配列するものに限られず、ある程度のバラツキを含んで均一な密度に形成された凹凸形状であれば良く、均一に処理されたブラスト面の様な粗面よりなる凹凸形状であっても構わない。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態1においては、同じ大きさの突起16が整列される攪拌促進領域6を備えるスクレッパ5を有したスクリーン印刷装置について説明を行った。実施の形態1の攪拌促進領域6に備えられた凹凸形状である突起16は同じ大きさの突起16であることから、全ての突起16が同じ攪拌促進の役割を担っていたが、本実施の形態2においては、少なくとも二種類の異なる凹凸形状を有し、其々が異なる役割を担う特徴を有する攪拌促進領域を備えたスクレッパを有したスクリーン印刷装置について説明を行う。なお、本実施の形態2における実施の形態1からの変更点については、スクレッパに設けられた攪拌促進領域の構成の違いのみであり、その他の印刷機構などについては同一の構成で良いことから、以下、実施の形態1との変更部である攪拌促進領域の構成を重点的に説明し、実施の形態1と同じ構成については適宜説明を省略する。
【0024】
まず、本実施の形態2における特徴部分である攪拌促進領域6cを備えたスクレッパ5cについて、図7を用いて説明する。ここで、図7(a)および図7(b)は本発明の主要部であるスクレッパ5cの先端部の正面図および側面図を其々示したものである。図7(a)に示す様に、このスクレッパ5cの印刷ペースト2と接触する部分における表面に点線で囲む様に攪拌促進領域6cが形成されている。本実施の形態2の攪拌促進領域6cにおいても、表面に微細な凹凸形状が形成されているが、より具体的には、図7(a)および図7(b)に示すように攪拌促進領域6cの下部に微細な突起16aが規則正しく配列して形成されており、更に攪拌促進領域6cの上部に上下方向を長手方向にして延在する溝26aが微細な突起16aの間に微細な窪みとして形成されている点が異なる。突起16aについては、実施の形態1における突起16と同様の形態で良く、球面の突起よりなり、スクレッパ5cの表面における直径としては、0.5mm〜5mm程度の範囲より選ばれた等しい大きさの突起が、ほぼ直径に等しい間隔で配列されている。即ち、攪拌促進領域6cにおいて、突起16aは大きさが揃っており、均一な密度に配置されている。
【0025】
続いて、本実施の形態2のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法による作用について、図8を用い説明する。図8は、スクレッパ5cによるコート動作中のスクレッパ5c近傍の状態を示す模式図であり、コート動作方向(図中矢印CT)に対し側面側より見た場合に相当する。図8に示す様に、スクレッパ5cによるコート動作中には、実施の形態1と同様にスクレッパ5cによりスクリーン版3の表面の印刷ペースト2が基本的には図中矢印R1に示す様に回転攪拌されながら進み、コート動作が行われる。本実施の形態2のスクレッパ5cの場合には、スクレッパ5cの印刷ペースト2と接する領域に微細な突起16が規則正しく配列して形成された攪拌促進領域6が設けられていることから、このコート動作において、図中矢印R2に示す様な回転攪拌の動きが追加される。この図中矢印R2に示す回転攪拌効果により、印刷ペースト2の粘度が低下する。更に、本実施の形態2においては、攪拌促進領域6cの上部に上下方向を長手方向にして延在する溝26aにより、図8に示す様に、印刷ペースト2中に発生している気泡9が溝26a内部の印刷ペースト2中を介して、スクレッパ5cの上部へ移動し、印刷ペースト2の表面より離脱する。また、溝26aの断面において、図8に示す様に印刷ペースト2と接する下側の面において、傾斜部27aが形成されていることにより、印刷ペースト2が上方に向かって移動し易くなることから、溝26a内の上部における気泡9の離脱が促進される。また、溝26aは凹凸形状でもあることから、当然、印刷ペースト2の攪拌についても促進する効果を有し、印刷ペースト2の粘度低下にも寄与する。
【0026】
以上説明の様に、本実施の形態2のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においても、実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法と同様に、印刷ペースト2をスクリーン版3上に塗り広げるスクレッパ5cに印刷ペースト2の攪拌を促進する攪拌促進領域6cを備えることにより、スクレッパ5cの移動速度を早くする事なく、印刷ペースト2を低粘度化し、印刷ペースト中から気泡が離脱することを容易にすることができる。
【0027】
更に、本実施の形態2のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においては、スクレッパ5cに下部に設けられる突起16aと上部に設けられる上下方向を長手方向に延在する溝26aの二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域6cを備えることにより、突起16aと溝26aなどの凹凸形状により、印刷ペースト2を低粘度化するとともに、攪拌促進領域6cの上部に設けられる上下方向を長手方向に延在する溝26aにより、印刷ペースト2をスクレッパ5cの上部へ誘導することにより、気泡の離脱を促進することができる。結果として、気泡の離脱効果の高いスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を得ることができる。
【0028】
二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域としては、他の形態であっても良い。その他の二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域を備えたスクレッパの一例について、図9を用い説明する。図9(a)および図9(b)は、この二種類の異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域を備えたスクレッパの先端部の正面図および側面図を示したものである。図に示される様に、この変形例においては、スクレッパ5dに、攪拌促進領域6dを備えており、この攪拌促進領域6dにおいては、二種類の異なる径を有する微細な突起16bと微細な突起16cが形成されており、突起16bと突起16cともに、球面の突起よりなり、スクレッパ5dの表面における直径としては、例えば突起16bが5mm程度、突起16cが1mm程度に形成され、突起16bの方が突起16cに比べて大きい突起となっている。また、配置としては、大きい突起16bの間に小さい突起16cが配置され、より具体的には、近接して配置される四つの大きい突起16bに対して、四つの大きい突起16bにより囲まれる中心位置に小さい突起16cが一つ配置される規則で、規則正しく配列して形成されている。
【0029】
この図9に示した突起16bと突起16cの二種類の異なる径を有する攪拌促進領域6dを備えたスクレッパ5dよりなる実施の形態2の変形例の作用について説明する。印刷ペースト2のコート動作中において、実施の形態1或いは実施の形態2と同様に、突起16bと突起16cよりなる凹凸形状により、印刷ペースト2は攪拌され、攪拌促進領域6dは印刷ペースト2の攪拌の促進に寄与する。また、大小二種類の突起16bと突起16cの両者により、印刷ペースト2の攪拌は促進されるが、印刷ペースト2は、大きい突起16bにより、突起16b近傍から離れた範囲まで比較的広い領域範囲が攪拌され、小さい突起16cにより、突起16c近傍の比較的狭い領域範囲が攪拌される。この様に異なる範囲での複雑な攪拌が生じることから、印刷ペースト2の攪拌速度が上がり、印刷ペースト2の粘度低下が促進される。更に、小さい突起16cによる細かい攪拌を行い印刷ペースト2の粘度低下を促進する役割、大きい突起16bによる攪拌促進領域6d内の全体に渡る攪拌を行い印刷ペースト2中の気泡を離脱のし易い印刷ペースト2の周辺部まで誘導する役割といった、二種類の異なる凹凸形状による其々異なる役割分担が行われ、気泡の離脱を促進することができる。
【0030】
この図9を用い説明した実施の形態2の変形例については、更に図10に示す様に、大きい突起に囲まれる小さい突起の数を増やしても良い。図10(a)および図10(b)は、この小さい突起の数を増やした攪拌促進領域6eを備えたスクレッパ5eの先端部の正面図および側面図を示したものである。図に示される様に、この変形例においては、攪拌促進領域6eにおいて、大きい突起16bに囲まれる小さい突起16dの数を増やしており、具体的には、四つの大きい突起16bにより囲まれる一つの領域あたりに、複数の小さい突起16dが配置されており、ここでは、一例として四つの小さい突起16dを配置している。この変更点以外については、図9を用い説明した実施の形態2の変形例と同様の構成で良いので、詳細な説明は省略する。
【0031】
図9を用いて説明したとおり、小さい突起は、主に、細かい攪拌を行い印刷ペースト2の粘度低下を促進する役割を担っている。従って、攪拌促進領域6eにおける小さい突起16dの配置割合が増加していることから、より攪拌が激しく起こり、印刷ペースト2の粘度低下効果が上がる。続いて、この様に、より粘度低下が大きく、気泡の離脱のし易くなった印刷ペースト2が、大きい突起16bにより攪拌促進領域6e内の全体にわたり攪拌される。その結果、印刷ペースト2中の気泡が、気泡を離脱し易い印刷ペースト2の周辺部まで誘導されることになり、更に気泡の離脱を促進する効果を向上することができる。なお、図10で説明したスクレッパ5eについては、一例であり、小さい突起16dの数や大きさについては、適宜変更しても良く、大きい突起16bの数や大きさについても変更しても良い。大きさの目安としては、小さい突起16dについては、0.5mm〜3mm程度の範囲、大きい突起16bについては、3mm〜10mm程度の範囲が望ましいが、必ずしもこれらの範囲でなくとも良い。
【0032】
更に、異なる凹凸形状を有した攪拌促進領域としては、上記説明の構成に限られず、実施の形態1、実施の形態2およびこれらの変形例で説明した各形態について、形状(突起或いは窪みであるかも含めて)、大きさ、密度、配列などを適宜変更したものについて、其々組合せて配置しても良く、異なる凹凸形状で其々異なる役割を分担させると良い。
【0033】
実施の形態3.
続いて、本発明を液晶パネルの製造方法に適用した実施形態である実施の形態3について説明を行う。まず、本実施の形態3の液晶パネルの製造方法により製造される液晶パネルの構成について図10を用いて説明する。なお、ここでは、一例としてTFT(Thin Film Transistor)方式の液晶パネルについて説明する。この液晶パネル200は、図に示される様に、スイッチング素子基板210、カラーフィルタ基板220、およびスイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220との間に充填された液晶230から構成されている。
【0034】
上述のスイッチング素子基板210は、ガラス基板211の一方の面に液晶230を配向させる配向膜212、配向膜212の下部に設けられ液晶230を駆動する電圧を印加する画素電極213、画素電極213に電圧を供給するTFTなどのスイッチング素子214、スイッチング素子214を覆う絶縁膜215、スイッチング素子214に供給される信号を外部から受け入れる端子216、端子216から入力された信号を対向電極へ伝達するためのトランスファ電極217等を有している。また、ガラス基板211の他方の面には偏光板231を有している。一方、上述のカラーフィルタ基板220は、ガラス基板221の一方の面に液晶230を配向させる配向膜222、配向膜222の下部に配置され、スイッチング素子基板210上の画素電極213との間に電界を生じ液晶230を駆動する共通電極223、共通電極223下部に設けられるカラーフィルタ224および遮光層225等を有している。また、ガラス基板221の他方の面には偏光板232を有している。
【0035】
また、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220はシールパターン233を介して貼り合わされている。更にトランスファ電極217と共通電極223は、トランスファ材234により電気的に接続されており、端子216から入力された信号が共通電極223に伝達される。この他に、液晶パネル200は駆動信号を発生する制御基板235、制御基板235を端子216に電気的に接続するFFC(Flexible Flat Cable)236、光源となるバックライトユニット(図示せず)等を備えている。
【0036】
この液晶パネル200は次の様に動作する。例えば、制御基板235から電気信号が入力されると、画素電極213および共通電極223に駆動電圧が加わり、駆動電圧に合わせて液晶230の分子の方向が変わる。そして、バックライトユニットの発する光がスイッチング素子基板210、液晶230およびカラーフィルタ基板220を介して外部へ透過あるいは遮断されることにより、液晶パネル200に映像等が表示される。
【0037】
なお、この液晶パネル200は一例であり他の構成でも良い。液晶パネル200の動作モードは、TN(Twisted Nematic)モードや、STN(Supper Twisted Nematic)モード、強誘電性液晶モード等でも良く、駆動方法は、単純マトリックスやアクティブマトリックス等でも良い。また、画素電極213を透過電極とする透過型液晶パネルに限られず、画素電極213を反射電極とする反射型液晶パネルや、反射電極と透過電極の双方とする半透過型液晶パネルでも良い。更にカラーフィルタ基板220に設けた共通電極223をスイッチング素子基板210側に設置して、画素電極213との間に基板面に対して横方向に電界をかけ液晶230を動作させる横電界方式を用いた液晶パネルでも良い。
【0038】
次に、本実施の形態3の液晶パネルの製造方法について説明する。スイッチング素子基板210およびカラーフィルタ基板220の製造方法については一般的な方法を用いても良いため、簡単に説明する。スイッチング素子基板210は、ガラス基板211の一方の面に、成膜、フォトリソグラフィー法によるパターンニング、エッチング等のパターン形成工程を繰り返し用いてスイッチング素子214や画素電極213、端子216、トランスファ電極217を形成することにより製造される。また、カラーフィルタ基板220は、同様に、ガラス基板221の一方の面に、カラーフィルタ224や共通電極223を形成することにより製造される。また、一対のスイッチング素子基板210およびカラーフィルタ基板220から多数の液晶パネル200が効率良く製造できる様に、ガラス基板211、221の短辺および長辺と平行に液晶パネルの面付けが並ぶ様に規則正しく整列して配置されている。
【0039】
続いて、本実施の形態3において特徴的な組み立て工程について図11に示すフローチャートにしたがって説明する。まず、基板洗浄工程において、画素電極213が形成されているスイッチング素子基板210を洗浄する(S1)。次に、配向膜材料塗布工程において、スイッチング素子基板210の一方の面に、配向膜材料を塗布形成する(S2)。この工程は、例えば、印刷法により有機膜からなる配向膜材料を塗布し、ホットプレートなどにより焼成処理し乾燥させる。その後、ラビング工程において配向膜材料にラビングを行い、配向膜材料表面を配向処理し配向膜212とする(S3)。また、S1からS3と同様に、共通電極223が形成されているカラーフィルタ基板220についても、洗浄、配向膜材料の塗布、ラビングを行うことにより配向膜222を形成する。
【0040】
続いて、シール材塗布工程において、実施の形態1で説明したスクリーン印刷装置により、シール材を印刷ペーストとして、液晶パネル用基板であるスイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220を被印刷物とし、これら液晶パネル用基板の一方の面にシール材の塗布を行いシールパターン233を形成する(S4)。この工程では、ガラス基板211、221の短辺および長辺と平行に規則正しく配置された液晶パネルの面付けに対応して、液晶パネルの周辺に配置されるシールパターン233も短辺および長辺と平行に規則正しく整列して形成する。また、実施の形態1で説明した攪拌を促進する攪拌促進領域を備えるスクレッパを有するスクリーン印刷装置を用いており、気泡により発生するピンホールを起因とするシールパターン形状の不安定化について懸念する必要が無いことから、スクレッパの移動速度を特に早くする事なく、従来のコート動作条件を用いて構わない。その他、具体的なスクリーン印刷装置による印刷処理の方法については、実施の形態1で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、トランスファ材塗布工程において、スイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220の一方の面にトランスファ材234の塗布処理を行う(S5)。そして、スペーサ散布工程において、スイッチング素子基板210あるいはカラーフィルタ基板220の一方の面にスペーサを散布する(S6)。この工程は、例えば、湿式法や乾式法によりスペーサを分散させることにより行われる。なお、スペーサとして有機樹脂膜をパターニングして形成された柱状のスペーサを用いる場合には、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220の何れかの上に組み立て工程前に形成しておくことが望ましく、その場合においては、このスペーサ散布工程は省略可能である。その後、貼り合わせ工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせる(S7)。続いて、シール硬化工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた状態で、シールパターン233を完全に硬化させる(S8)。この工程は、例えば、シールパターン233の材質に合わせて熱を加えることや、紫外線を照射することにより行われる。次に、セル分断工程において、貼り合わせた基板を多数の個別セルに分解する(S9)。そして、液晶注入工程において、個々のセルに対して液晶注入口から液晶を注入する(S10)。この工程は、例えば、液晶230を液晶注入口から真空注入により充填することにより行われる。更に、封止工程において、液晶注入口を封止する(S11)。この工程は、例えば、光硬化型樹脂で封じ、光を照射することにより行われる。
【0042】
以上のS7〜S11の貼り合わせから液晶封止までの工程については、通常の真空中において注入口から液晶を注入する真空注入法を一例として説明した。しかし、別の液晶注入方法として、注入口の無いシールパターン233の形状とし、液晶230をスイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の上に液滴状態で滴下して形成し、この滴下した液晶230を挟む様にスイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた後にシールパターン233を硬化させる方法、所謂、液晶滴下(ODF)法を用いてもかまわない。最後に、偏光板貼り付け工程において、セルに偏光板231、232を貼り付け(S12)、制御基板実装工程において、制御基板235を実装する(S13)ことによって、液晶パネル200が完成する。
【0043】
以上説明した実施の形態3の液晶パネルの製造方法においては、上述の通り、シール材塗布工程において、実施の形態1で説明した攪拌を促進する攪拌促進領域を備えるスクレッパを有するスクリーン印刷装置を用い、シールパターン233を形成することにより、ピンホールを起因とするシールパターン形状の不安定を発生することがなく、また、スクレッパの移動速度を特に早くする必要も無いことから、充填不良を起因とするシールパターン形状の不安定についても発生することが無い。従って、安定したシールパターン233形成が可能となる。その結果、液晶パネル200の製造工程におけるシールパターン形状不良を起因とする不良品発生による歩留りの低下や、製造される液晶パネル200におけるシールパターン形状が細線化することによる信頼性の低下などを防止することができる。従って、不良品となり工程内で脱落される基板を削減できることから、原材料費の削減につながる。更に不良品の代替品を再度作りなおす無用な処理の削減を実現できることから製造にかかるエネルギー消費量の削減につながる。
【0044】
また、本実施の形態3においては、実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法をシール塗布工程に用いた液晶表示パネルの製造方法について説明した。然しながら実施の形態1のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に代えて、実施の形態1の変形例や実施の形態2および実施の形態2の変形例において説明したスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を用いた場合においても本実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0045】
実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3およびこれらの変形例においては、液晶パネルにおけるシール材形成工程に用いるスクリーン印刷装置、スクリーン印刷方法或いは液晶パネルの製造方法へ本発明を適用した場合を例にとって説明したが、あくまでも例示的なものであり、スクリーン印刷を用いペーストパターンを形成する必要のある工程を有していれば、例えば、電子ペーパーや有機EL表示装置など、液晶パネル以外の表示装置におけるペーストパターンを形成する工程に用いるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法でも良く、更に、表示装置の製造工程に限らずスクリーン印刷に用いられるあらゆる被印刷物を対象とするスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に適用することも可能であり、同様の効果が得られる。また、印刷ペーストに関しても、シール材に限定されず、チキソ性を有しスクリーン印刷に用いられるあらゆる印刷ペーストに適用できる。
【0046】
以上の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素を、本発明の効果の得られる範囲において、容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 基板、2 印刷ペースト、3 スクリーン版、4 開口パターン、
5、5a、5b、5c、5d、5e スクレッパ、
6、6a、6b、6c、6d、6e 攪拌促進領域、7 スキージ、
16、16a、16b、16c、16d 突起、26 窪み、26a 溝、
200 液晶パネル、233 シールパターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物上に対向配置され、開口パターンを有するスクリーン版と、前記スクリーン版の表面に沿って移動して、印刷ペーストを前記スクリーン版上に塗り広げるスクレッパと、前記スクリーン版上において印刷方向に移動して、前記印刷ペーストを前記開口パターンを介し前記被印刷物に印刷するスキージとを備え、前記スクレッパは、前記印刷ペーストと接触する部分における表面に該印刷ペーストの攪拌を促進する攪拌促進領域を備えたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
攪拌促進領域においてはスクレッパ表面に微細な凹凸形状が形成されることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
攪拌促進領域においてはスクレッパ表面に突起或いは窪みが規則正しく配列して形成されることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
突起或いは窪みが均一な密度に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
突起或いは窪みが隙間なく配置されていることを特徴とする請求項3或いは請求項4に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
突起或いは窪みが曲面により形成されていることを特徴とする請求項3から請求項5の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
突起或いは窪みが球面により形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項8】
突起或いは窪みの大きさが揃っていることを特徴とする請求項3から請求項7の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項9】
突起或いは窪みは大小二種類の大きさよりなり、大きい前記突起或いは窪みの間に小さい前記突起或いは窪みが配列されることを特徴とする請求項3から請求項7の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項10】
突起或いは窪みは攪拌促進領域下部に設けられる突起と前記攪拌促進領域上部に設けられる上下方向を長手方向にして延在する溝よりなることを特徴とする請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れかに記載のスクリーン印刷装置を用いたことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項12】
被印刷物は液晶パネル用基板であり、印刷ペーストはシール材であることを特徴とする請求項1から請求項10の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項13】
請求項12に記載のスクリーン印刷装置を用いてシール材を形成する工程を備えることを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【請求項1】
被印刷物上に対向配置され、開口パターンを有するスクリーン版と、前記スクリーン版の表面に沿って移動して、印刷ペーストを前記スクリーン版上に塗り広げるスクレッパと、前記スクリーン版上において印刷方向に移動して、前記印刷ペーストを前記開口パターンを介し前記被印刷物に印刷するスキージとを備え、前記スクレッパは、前記印刷ペーストと接触する部分における表面に該印刷ペーストの攪拌を促進する攪拌促進領域を備えたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
攪拌促進領域においてはスクレッパ表面に微細な凹凸形状が形成されることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
攪拌促進領域においてはスクレッパ表面に突起或いは窪みが規則正しく配列して形成されることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
突起或いは窪みが均一な密度に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
突起或いは窪みが隙間なく配置されていることを特徴とする請求項3或いは請求項4に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
突起或いは窪みが曲面により形成されていることを特徴とする請求項3から請求項5の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
突起或いは窪みが球面により形成されていることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項8】
突起或いは窪みの大きさが揃っていることを特徴とする請求項3から請求項7の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項9】
突起或いは窪みは大小二種類の大きさよりなり、大きい前記突起或いは窪みの間に小さい前記突起或いは窪みが配列されることを特徴とする請求項3から請求項7の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項10】
突起或いは窪みは攪拌促進領域下部に設けられる突起と前記攪拌促進領域上部に設けられる上下方向を長手方向にして延在する溝よりなることを特徴とする請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れかに記載のスクリーン印刷装置を用いたことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項12】
被印刷物は液晶パネル用基板であり、印刷ペーストはシール材であることを特徴とする請求項1から請求項10の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項13】
請求項12に記載のスクリーン印刷装置を用いてシール材を形成する工程を備えることを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−148145(P2011−148145A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10099(P2010−10099)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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