スクロール圧縮機のためのスクロール壁の構造
【課題】一般的なポンプ用途に広く使用できるような改良されたポンプを提供する。
【解決手段】本発明は、スクロール圧縮機のためのスクロール壁の構造に関する。スクロール壁構造は、固定スクロール壁を有する固定スクロールと、旋回スクロール壁を有する旋回スクロールとから構成される。スクロール壁構造は、その半径方向外側部分に入口を備え、半径方向中央部分に出口を備える。旋回スクロール壁と固定スクロール壁とによって、入口から出口へと延びる第1の流路が形成され、入口から第1の圧力にて流入したガスは、第1の圧力に比べて高い圧力である、第2の圧力にて出口から排出される。スクロール壁構造は、第2の入口を備え、これを通ったガスは第3の圧力にて流入し、第2の流路を流れて、第2の圧力にて出口から排出される。従って、2つの流路によって、それぞれの入口が提供される。
【解決手段】本発明は、スクロール圧縮機のためのスクロール壁の構造に関する。スクロール壁構造は、固定スクロール壁を有する固定スクロールと、旋回スクロール壁を有する旋回スクロールとから構成される。スクロール壁構造は、その半径方向外側部分に入口を備え、半径方向中央部分に出口を備える。旋回スクロール壁と固定スクロール壁とによって、入口から出口へと延びる第1の流路が形成され、入口から第1の圧力にて流入したガスは、第1の圧力に比べて高い圧力である、第2の圧力にて出口から排出される。スクロール壁構造は、第2の入口を備え、これを通ったガスは第3の圧力にて流入し、第2の流路を流れて、第2の圧力にて出口から排出される。従って、2つの流路によって、それぞれの入口が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたスクロール壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び図2には代表的なスクロール圧縮機を示している。図1は、スクロール圧縮機10の横断面図であって、この圧縮機は、固定スクロール12と旋回スクロール14とを備えている。固定スクロールは、略平坦な円板16になっていて、円板からは、スクロール壁18が垂直に延びている。旋回スクロールは、略平坦な円板20になっていて、円板からは、スクロール壁22が垂直に延びている。シャフト26は、モータ24によって回転する。シャフト26に設けられた偏心軸部分28は、旋回スクロール14に固定される。軸部分28が偏心運動すると、旋回スクロール壁22は、固定スクロール壁18に対して、旋回運動をする。この相対的な運動によって、流体は、スクロール壁構造の半径方向外側に設けられた入口30から、スクロール壁構造の半径方向中央に設けられた出口ないし排出口へと、ポンプ送りされる。なお、ガスは、圧縮機の入口(図示せず)を通って圧縮機に入る。
【0003】
図2は、図1の線II−IIに沿って示した横断面図であって、スクロール圧縮機のスクロール壁構造を示している。図2において、流体が流れる流路34は、矢印を付けた線で示していて、スクロール壁構造における入口30から出口32へと、略螺旋状の経路になっている。入口30から第1の圧力にて入ったガスは、4回転の間に、つまり4回巻きの間に、圧縮されてより高い圧力になってから、出口32を通ってポンプから排出される。巻きの数は、図2に示した例よりも多くても少なくても良く、ポンプ送出に求められる要件に応じて選択することができる。スクロール壁が相対的に旋回運動すると、複数の三日月形のポケット状空間が壁同士の間に形成され、このポケット状空間は、半径方向内方へ押し込まれつつ、そのサイズが徐々に圧縮されていく。当業者には周知であるが、これらの三日月形のポケット状空間は、約360゜の範囲にわたり、三日月形のポケット状空間を捕らえている壁部分は、巻き部分と称される。
【0004】
スクロール圧縮機は、これが潤滑剤不要のポンプである点で有用である。従って、スクロール圧縮機は、質量分析装置においてしばしば採用される。質量分析装置は、異なる圧力にて複数のチャンバのポンプ送出がなされ、チャンバ間には相互結合部が設けられているような、差動ポンプ型の一連のチャンバを備えている。第1のチャンバは、比較的高い圧力に保たれ(例えば2〜10ミリバール)、最後のチャンバは比較的低い圧力に保たれる(例えば10-5ミリバール)。代表的には、低い圧力のチャンバはターボ分子ポンプでポンプ送出され、比較的高い圧力のチャンバは一次ポンプによってポンプ送出される。スクロール圧縮機は、一次ポンプとして適したポンプである。当業者には周知であるが、ターボ分子ポンプは、バッキングポンプを必要とし、ターボ分子ポンプからの排気ガスは、大気圧に比べて低い圧力であるから、これをバッキングポンプによってポンプ送出してから大気に排出する。従って、こうした差動ポンプシステムにおいては、少なくとも3台のポンプ、つまりターボ分子ポンプと、バッキングポンプと、比較的高い圧力のチャンバのためのポンプとが必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、上述した問題点を解決するための、また、一般的なポンプ用途に広く使用できるような、改良されたポンプを求める要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される、スクロール圧縮機のためのスクロール壁の構造は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁とから構成され、両者が一緒になって、同時に異なる圧力にてポンプ動作すべく、それぞれ入口を有する複数の流路を形成してなる上記構造において、複数の流路は、第1の入口から出口へと延びてなる第1の流路と、第2の入口から出口へと延びてなる第2の流路とを備え、第2の入口は第1の流路から隔てられていることを特徴としている。
【0007】
従って、本発明によれば、単一のスクロール圧縮機が、同時に異なる圧力の2つのチャンバにポンプ動作できる。例えば、圧縮機は、コーティング装置を備えたロードロックチャンバを真空にするために使用できる。また、そうしたスクロール圧縮機は、ターボ分子ポンプをバッキングするのに使用できると共に、比較的高い圧力のチャンバを真空にするためにも使用できる。そうしたスクロール圧縮機は、この他にも多数の利点と用途がある。
本発明によれば、上述したスクロール壁構造を備えてなる、スクロール圧縮機が提供される。
【0008】
さらに、本発明によって提供される、差動ポンプシステムは、両者間に相互結合部を有してなる一連のチャンバと、比較的低い圧力にてポンプ動作すべく、片方のチャンバに入口を結合されたターボ分子ポンプと、上述したようなスクロール圧縮機とを備え、スクロール圧縮機の片方の入口は比較的高い圧力にてポンプ動作すべく他方のチャンバに結合され、スクロール圧縮機の他方の入口はターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴としている。
【0009】
本発明のその他の好ましい観点については、特許請求の範囲に定義されている。
本発明を良く理解できるように、様々な実施形態を例示的に示し、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、従来技術によるスクロール圧縮機を示した断面図である。
【図2】図2は、図1の圧縮機のスクロール壁構造について、線II−IIに沿って示した断面図である。
【図3】図3は、スクロール壁構造を示した断面図である。
【図4】図4は、別のスクロール壁構造を示した断面図である。
【図5(a)】図5は、本発明の第1の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図5(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図5(b)】図5は、本発明の第1の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図5(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図6(a)】図6は、本発明の第2の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図6(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図6(b)】図6は、本発明の第2の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図6(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図7(a)】図7は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図7(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図7(b)】図7は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図7(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図8(a)】図8は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図8(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図8(b)】図8は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図8(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図9】図9は、2つのスクロール壁構造を示した模式図である。
【図10】図10は、両面型のスクロール壁構造を示した模式図である。
【図11】図11は、別の両面型のスクロール壁構造を示した模式図である。
【図12】図12は、第1の差動ポンプシステムを示したシステム構成図である。
【図13】図13は、第2の差動ポンプシステムを示したシステム構成図である。
【図14】図14は、第3の差動ポンプシステムを示したシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3〜図8に示したスクロール壁構造は、図1に示したスクロール圧縮機と略同一の全体構造になっているが、そのスクロール壁構造が異なっている。従って、スクロール圧縮機の一般的な動作については再び述べることはせずに、これらの構造については、スクロール壁構造を参照して説明することにする。
【0012】
図3を参照すると、図示のスクロール壁構造40は、固定スクロール壁44を有する固定スクロール42と、旋回スクロール壁46を有する旋回スクロールとから構成される。図2に示したスクロール壁構造と同様に、スクロール壁構造40は、半径方向外方部分には入口48を、半径方向中央部分には出口50を、有している。旋回スクロール壁44と固定スクロール壁46とによって、入口48から出口50へと延びる第1の流路52が形成され、入口48から第1の圧力にて流入したガスは、第1の圧力に比べて高い圧力である、第2の圧力にて出口50から排出される。スクロール壁構造40は、第2の入口54を備え、これを通ったガスは第3の圧力にて流入し、第2の流路53を流れて、第2の圧力にて出口50から排出される。流路52及び53は、それぞれ入口48と入口54とを備えているが、第2の流路の全長を越えると、第1の流路52は、第2の流路53と合流する。入口54を通ってガスが流入する第3の圧力は、第1の圧力に比べれば高く、第2の圧力に比べれば低い圧力である。従って、入口48及び54は、異なる圧力のガスをポンプ送出できる。第2の入口54をどこに配置するかに応じて、第3の圧力つまり第2の入口にガスが入る圧力が定まる(すなわち、入口を排気口に近づけるほど、第3の圧力は高くなる。)。
【0013】
スクロール壁構造40によれば、例えば、差動ポンプシステムにおける相互に結合された2つのチャンバを、異なる圧力に保ちつつ、単一のスクロール圧縮機によってポンプ送出することができる。従って、必要なポンプが1個だけになるという、コストの節約になる。
【0014】
図12に示した差動ポンプシステムにおいて、スクロール壁構造40を備えてなるスクロール圧縮機168は、第1の圧力にてポンプ動作すべく第2の入口54を第1のチャンバ170に連通させ、ターボ分子ポンプ174をバッキングすべく第1の入口48をターボ分子ポンプの排気口172に連通させて、配置されている。ターボ分子ポンプの入口176は、第2のチャンバ178に結合されていて、比較的低い圧力にてポンプ送出を行う。従って、ターボ分子ポンプを備えた差動ポンプシステムにおいては、従来技術においては必要であった一次ポンプとバッキングポンプとに代えて、単一のポンプだけがあれば良いことになる。
【0015】
図13には、第2の差動ポンプシステムを示していて、スクロール圧縮機168の第2の入口54は第1のチャンバ170に結合され、第1の入口48は、スプリット・フロー式のターボ分子ポンプ182の排気口180に結合されている。ターボ分子ポンプ182のメインの入口184は、ひとつのチャンバ178に結合され、第2の中間段階の入口186は、別のチャンバ188に結合されている。
【0016】
図14には、第3の差動ポンプシステムを示していて、スクロール圧縮機168の第2の入口54は第1のチャンバ170に結合され、第1の入口48は、スプリット・フロー式のターボ分子ポンプ182の排気口180と第2のチャンバ190とに結合されている。スプリット・フロー式のターボ分子ポンプ182と、相互結合された2つのチャンバ178及び188との関係は図13の場合と同じである。
【0017】
以下、様々なスクロール圧縮機の構造について詳しく述べるが、それらのいずれの構造も、図12〜図14に示した差動ポンプシステムに組み込むのに適したものである。
当業者は、かかる構造について、その他の多数の利点と用途を認識するだろう。
図4に示したスクロール壁構造60は、固定スクロール壁64を有する固定スクロール62と、旋回スクロール壁66を有する旋回スクロールとから構成される。構造60は、第1の入口68と、出口70と、第2の入口72とを備える。構造60は、2つの開始点を有し、すなわち、2つの第1の流路71は、入口60から1回転ないし1巻き分だけ延びた後に、一点に収束している。第2の入口72は、第1の流路71が収束している場所に設けられる。第2の流路73は、第2の入口72から出口70へと延びていて、第2の流路の全長を越えると、第1の流路71と合流する。図4に示すように、2つの開始点を設けることによって、入口68からポンプ送出するガスの量を増やすことができるという利益が得られる。スクロール構造60におけるその他の点は、図3に示した構造と同じである。
【0018】
また、複数の前記第1の入口が、それぞれ前記第1の流路を有していて、これらが単一の前記第1の流路において合流するようなスクロール壁構造を提供することも可能である。この構成によれば、第1の圧力にてポンプ送出するために、複数の入口が提供される。
図5〜図8は、図3に関連して説明したスクロール壁構造に対する、4つの改変例を示している。図5(a)、図6(a)、図7(a)、及び図8(a)は固定スクロール壁だけを示しており、また、図5(b)、図6(b)、図7(b)、及び図8(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【0019】
図3に示したスクロール壁構造40においては、第2の入口54は、第1の入口48と出口50との間における第1の流路52に設けられている。従って、第2の入口54の圧力は、入口48の圧力に影響を与える。ある種の状況においては、第2の入口で圧力を隔離することは望ましい。図5に示した固定スクロール壁構造によれば、第2の入口を隔離することができる。これに関して、図5(a)は、固定スクロール壁76を有する固定スクロール74を示し、旋回スクロール壁75は図5(b)に示している。第1の流路77は、第1の入口78から出口80まで延びている。第2の入口82は、およそ1回巻き分の固定スクロール壁を介して、第1の流路77から隔てられている。第2の流路84は、第2の入口82からおよそ360゜にわたって延びてから、第1の流路と合流して、合流した流路77及び84は出口80へと至る。図5に示した構成によれば、第2の入口において、第1の入口78の圧力とは独立して、圧力を維持ことが可能になる。しかしながら、第2の流路の少なくとも一部分(すなわち1巻き分未満)によって、第2の入口が第1の流路から隔てられている限り、ある程度の隔離を得ることができることを理解されたい。
【0020】
図6(a)は、固定スクロール壁88を有する固定スクロール86を示し、旋回スクロール壁89は図6(b)に示している。第1の流路90は、第1の入口92から出口94へと延びている。第2の入口96は、およそ2回巻き分の固定スクロール壁を介して、第1の流路90から隔てられている。第2の流路98は、第2の入口96からおよそ700゜にわたって延びてから、第1の流路90と合流して出口94へと延びる。図6に示した構成が、図5に示した構成よりも優れている点は、例えば大きな差圧が求められる場合などに、第2の入口96の圧力を第1の入口92からより良く隔離できることである。
図5及び図6に示した構造は、それぞれの入口にてポンプ送りされるガス種をある程度、隔離することが望ましいような、ある種のポンプ用途においては、さらに有利である。従って、これらの構成によれば、第1の入口と第2の入口とは、2つの入口から独立しているので、互換的に用いることができる。
【0021】
図4に示すように、第1の入口48には、2つの開始点の構造を採用することが可能である。図7(a)は、固定スクロール壁102を有する固定スクロール100を示し、旋回スクロール壁109は図7(b)に示している。この構造は、第1の入口104と、第2の入口106と、出口108とを備えている。この構造においては、第1の入口104については単一の開始点があり、第2の入口106については2つの開始点がある。第1の流路110が、1回半巻き分だけ延びてから、第2の入口106に達する。第2の入口106においては、第1の流路110は、2つの第2の流路112と合流し、これは、第2の入口106から1回巻き分の固定スクロールを経て、単一の流路110及び112に収束して、出口108へと至る。第2の入口106に2つの開始点を設けることによって、より大量のガスを第2の入口を通してポンプ送出することができる。
【0022】
図8(a)は、固定スクロール壁116を有する固定スクロール114を示し、旋回スクロール壁117は図8(b)に示している。固定スクロールは、第1の入口118と、第2の入口120と、出口122とを備えている。この構造においては、第1の入口118と、第2の入口120との両方に、2つの開始点がある。これに関して、2つの第1の流路124は、第1の入口118から二股に分岐して、1回巻き分を越えて延びてから収束して、単一の第1の流路124になる。ひとつになった第1の流路は、第2の入口120に遭遇すると、2つの第2の流路126に合流し、この第2の流路は第2の入口120からおよそ1回巻き分だけ延びてから、収束して単一の第2の流路126になって、出口122へと続く。この構成の優れている点は、第1の入口118と第2の入口120とのいずれについても、大容量のポンプ送出が得られることである。
【0023】
上述した構造に関しては、図1に示したような、片面のスクロール壁構造について説明した。片面式の圧縮機は、単一の固定スクロールと単一の旋回スクロールとから構成されていることが分かるだろう。図9は、単一のモータ128によって駆動される、2つの片面式のスクロール壁構造を示している。それぞれのスクロール壁構造は、固定スクロール130と、旋回スクロール132とを備え、これらが一緒になって、排気口138と第1の入口140と第2の入口142との間に、第1の流路134と第2の流路136とを形成している。従って、双子式のスクロール壁構造は、2〜4の異なる圧力をポンプ送出すべく、4つの流路を備える。
【0024】
スクロール壁構造としては両面式のものも知られており、かかる構成においては、図10及び図11に模式的に示すように、単一の旋回スクロール141の両側にひとつずつの2つの固定スクロール143を設ける。上述したすべての実施形態及びその変形例は、両面式のスクロール圧縮機の構造に組み入れることができる。さらに、あるスクロール壁構造を片側の固定スクロールに設けると共に、他方の固定スクロールには、異なるスクロール壁構造を設けることもできる。変形例としては、図11に示すように、両面式のスクロール構造の両側に、第1の入口144と第2の入口146とを設け、これらがそれぞれ流路148と流路150とをそれぞれの出口152及び154へ向かって有することで、異なる圧力でのポンプ送出を行うことができる。さらに、図11に示した構造によれば、それぞれの流路152及び154に沿ってポンプ送出されるガス種を隔離することができる。図11に示した構成を改変して、スクロール壁構造の側面に、それぞれ第2の入口を設けて、図9のようにしても良い。
【0025】
図10に示すように、両面式のスクロール壁構造は、構造の第1の側面における半径方向中央部分に入口156を備え、構造の半径方向外側部分に入口158を備える第1の流路160は、構造の第1の側面において、第1の入口156から半径方向外方へ延び、構造の第2の側面において、排気口162へと半径方向内方に延びている。第2の流路164は、構造の第2の側面において、第2の入口158から排気口162へと半径方向内方へ延びている。図示の如く、第1の流路は、第2の入口158にて、第2の流路と合流している。変形例としては、図5及び図6を参照して述べたように、1又は複数のスクロール壁構造の巻き部分によって、第2の入口158を第1の流路から隔て、排気口の付近において、第1の流路が第2の流路に合流するようにしても良い。第2の入口158は、中間的な入口として機能して、第1の入口156では第1の圧力にてポンプ動作すると共に、第2の入口158では第2の圧力にてポンプ動作させることができる。
【0026】
特許請求の範囲によって定義された、本発明の範囲には、多数の変形例や応用例が包含されることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたスクロール壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び図2には代表的なスクロール圧縮機を示している。図1は、スクロール圧縮機10の横断面図であって、この圧縮機は、固定スクロール12と旋回スクロール14とを備えている。固定スクロールは、略平坦な円板16になっていて、円板からは、スクロール壁18が垂直に延びている。旋回スクロールは、略平坦な円板20になっていて、円板からは、スクロール壁22が垂直に延びている。シャフト26は、モータ24によって回転する。シャフト26に設けられた偏心軸部分28は、旋回スクロール14に固定される。軸部分28が偏心運動すると、旋回スクロール壁22は、固定スクロール壁18に対して、旋回運動をする。この相対的な運動によって、流体は、スクロール壁構造の半径方向外側に設けられた入口30から、スクロール壁構造の半径方向中央に設けられた出口ないし排出口へと、ポンプ送りされる。なお、ガスは、圧縮機の入口(図示せず)を通って圧縮機に入る。
【0003】
図2は、図1の線II−IIに沿って示した横断面図であって、スクロール圧縮機のスクロール壁構造を示している。図2において、流体が流れる流路34は、矢印を付けた線で示していて、スクロール壁構造における入口30から出口32へと、略螺旋状の経路になっている。入口30から第1の圧力にて入ったガスは、4回転の間に、つまり4回巻きの間に、圧縮されてより高い圧力になってから、出口32を通ってポンプから排出される。巻きの数は、図2に示した例よりも多くても少なくても良く、ポンプ送出に求められる要件に応じて選択することができる。スクロール壁が相対的に旋回運動すると、複数の三日月形のポケット状空間が壁同士の間に形成され、このポケット状空間は、半径方向内方へ押し込まれつつ、そのサイズが徐々に圧縮されていく。当業者には周知であるが、これらの三日月形のポケット状空間は、約360゜の範囲にわたり、三日月形のポケット状空間を捕らえている壁部分は、巻き部分と称される。
【0004】
スクロール圧縮機は、これが潤滑剤不要のポンプである点で有用である。従って、スクロール圧縮機は、質量分析装置においてしばしば採用される。質量分析装置は、異なる圧力にて複数のチャンバのポンプ送出がなされ、チャンバ間には相互結合部が設けられているような、差動ポンプ型の一連のチャンバを備えている。第1のチャンバは、比較的高い圧力に保たれ(例えば2〜10ミリバール)、最後のチャンバは比較的低い圧力に保たれる(例えば10-5ミリバール)。代表的には、低い圧力のチャンバはターボ分子ポンプでポンプ送出され、比較的高い圧力のチャンバは一次ポンプによってポンプ送出される。スクロール圧縮機は、一次ポンプとして適したポンプである。当業者には周知であるが、ターボ分子ポンプは、バッキングポンプを必要とし、ターボ分子ポンプからの排気ガスは、大気圧に比べて低い圧力であるから、これをバッキングポンプによってポンプ送出してから大気に排出する。従って、こうした差動ポンプシステムにおいては、少なくとも3台のポンプ、つまりターボ分子ポンプと、バッキングポンプと、比較的高い圧力のチャンバのためのポンプとが必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、上述した問題点を解決するための、また、一般的なポンプ用途に広く使用できるような、改良されたポンプを求める要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される、スクロール圧縮機のためのスクロール壁の構造は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁とから構成され、両者が一緒になって、同時に異なる圧力にてポンプ動作すべく、それぞれ入口を有する複数の流路を形成してなる上記構造において、複数の流路は、第1の入口から出口へと延びてなる第1の流路と、第2の入口から出口へと延びてなる第2の流路とを備え、第2の入口は第1の流路から隔てられていることを特徴としている。
【0007】
従って、本発明によれば、単一のスクロール圧縮機が、同時に異なる圧力の2つのチャンバにポンプ動作できる。例えば、圧縮機は、コーティング装置を備えたロードロックチャンバを真空にするために使用できる。また、そうしたスクロール圧縮機は、ターボ分子ポンプをバッキングするのに使用できると共に、比較的高い圧力のチャンバを真空にするためにも使用できる。そうしたスクロール圧縮機は、この他にも多数の利点と用途がある。
本発明によれば、上述したスクロール壁構造を備えてなる、スクロール圧縮機が提供される。
【0008】
さらに、本発明によって提供される、差動ポンプシステムは、両者間に相互結合部を有してなる一連のチャンバと、比較的低い圧力にてポンプ動作すべく、片方のチャンバに入口を結合されたターボ分子ポンプと、上述したようなスクロール圧縮機とを備え、スクロール圧縮機の片方の入口は比較的高い圧力にてポンプ動作すべく他方のチャンバに結合され、スクロール圧縮機の他方の入口はターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴としている。
【0009】
本発明のその他の好ましい観点については、特許請求の範囲に定義されている。
本発明を良く理解できるように、様々な実施形態を例示的に示し、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、従来技術によるスクロール圧縮機を示した断面図である。
【図2】図2は、図1の圧縮機のスクロール壁構造について、線II−IIに沿って示した断面図である。
【図3】図3は、スクロール壁構造を示した断面図である。
【図4】図4は、別のスクロール壁構造を示した断面図である。
【図5(a)】図5は、本発明の第1の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図5(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図5(b)】図5は、本発明の第1の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図5(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図6(a)】図6は、本発明の第2の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図6(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図6(b)】図6は、本発明の第2の実施形態によるスクロール壁構造を示した横断面図であって、図6(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図7(a)】図7は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図7(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図7(b)】図7は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図7(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図8(a)】図8は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図8(a)は固定スクロール壁だけを示している。
【図8(b)】図8は、さらに別のスクロール壁構造を示した横断面図であって、図8(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【図9】図9は、2つのスクロール壁構造を示した模式図である。
【図10】図10は、両面型のスクロール壁構造を示した模式図である。
【図11】図11は、別の両面型のスクロール壁構造を示した模式図である。
【図12】図12は、第1の差動ポンプシステムを示したシステム構成図である。
【図13】図13は、第2の差動ポンプシステムを示したシステム構成図である。
【図14】図14は、第3の差動ポンプシステムを示したシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3〜図8に示したスクロール壁構造は、図1に示したスクロール圧縮機と略同一の全体構造になっているが、そのスクロール壁構造が異なっている。従って、スクロール圧縮機の一般的な動作については再び述べることはせずに、これらの構造については、スクロール壁構造を参照して説明することにする。
【0012】
図3を参照すると、図示のスクロール壁構造40は、固定スクロール壁44を有する固定スクロール42と、旋回スクロール壁46を有する旋回スクロールとから構成される。図2に示したスクロール壁構造と同様に、スクロール壁構造40は、半径方向外方部分には入口48を、半径方向中央部分には出口50を、有している。旋回スクロール壁44と固定スクロール壁46とによって、入口48から出口50へと延びる第1の流路52が形成され、入口48から第1の圧力にて流入したガスは、第1の圧力に比べて高い圧力である、第2の圧力にて出口50から排出される。スクロール壁構造40は、第2の入口54を備え、これを通ったガスは第3の圧力にて流入し、第2の流路53を流れて、第2の圧力にて出口50から排出される。流路52及び53は、それぞれ入口48と入口54とを備えているが、第2の流路の全長を越えると、第1の流路52は、第2の流路53と合流する。入口54を通ってガスが流入する第3の圧力は、第1の圧力に比べれば高く、第2の圧力に比べれば低い圧力である。従って、入口48及び54は、異なる圧力のガスをポンプ送出できる。第2の入口54をどこに配置するかに応じて、第3の圧力つまり第2の入口にガスが入る圧力が定まる(すなわち、入口を排気口に近づけるほど、第3の圧力は高くなる。)。
【0013】
スクロール壁構造40によれば、例えば、差動ポンプシステムにおける相互に結合された2つのチャンバを、異なる圧力に保ちつつ、単一のスクロール圧縮機によってポンプ送出することができる。従って、必要なポンプが1個だけになるという、コストの節約になる。
【0014】
図12に示した差動ポンプシステムにおいて、スクロール壁構造40を備えてなるスクロール圧縮機168は、第1の圧力にてポンプ動作すべく第2の入口54を第1のチャンバ170に連通させ、ターボ分子ポンプ174をバッキングすべく第1の入口48をターボ分子ポンプの排気口172に連通させて、配置されている。ターボ分子ポンプの入口176は、第2のチャンバ178に結合されていて、比較的低い圧力にてポンプ送出を行う。従って、ターボ分子ポンプを備えた差動ポンプシステムにおいては、従来技術においては必要であった一次ポンプとバッキングポンプとに代えて、単一のポンプだけがあれば良いことになる。
【0015】
図13には、第2の差動ポンプシステムを示していて、スクロール圧縮機168の第2の入口54は第1のチャンバ170に結合され、第1の入口48は、スプリット・フロー式のターボ分子ポンプ182の排気口180に結合されている。ターボ分子ポンプ182のメインの入口184は、ひとつのチャンバ178に結合され、第2の中間段階の入口186は、別のチャンバ188に結合されている。
【0016】
図14には、第3の差動ポンプシステムを示していて、スクロール圧縮機168の第2の入口54は第1のチャンバ170に結合され、第1の入口48は、スプリット・フロー式のターボ分子ポンプ182の排気口180と第2のチャンバ190とに結合されている。スプリット・フロー式のターボ分子ポンプ182と、相互結合された2つのチャンバ178及び188との関係は図13の場合と同じである。
【0017】
以下、様々なスクロール圧縮機の構造について詳しく述べるが、それらのいずれの構造も、図12〜図14に示した差動ポンプシステムに組み込むのに適したものである。
当業者は、かかる構造について、その他の多数の利点と用途を認識するだろう。
図4に示したスクロール壁構造60は、固定スクロール壁64を有する固定スクロール62と、旋回スクロール壁66を有する旋回スクロールとから構成される。構造60は、第1の入口68と、出口70と、第2の入口72とを備える。構造60は、2つの開始点を有し、すなわち、2つの第1の流路71は、入口60から1回転ないし1巻き分だけ延びた後に、一点に収束している。第2の入口72は、第1の流路71が収束している場所に設けられる。第2の流路73は、第2の入口72から出口70へと延びていて、第2の流路の全長を越えると、第1の流路71と合流する。図4に示すように、2つの開始点を設けることによって、入口68からポンプ送出するガスの量を増やすことができるという利益が得られる。スクロール構造60におけるその他の点は、図3に示した構造と同じである。
【0018】
また、複数の前記第1の入口が、それぞれ前記第1の流路を有していて、これらが単一の前記第1の流路において合流するようなスクロール壁構造を提供することも可能である。この構成によれば、第1の圧力にてポンプ送出するために、複数の入口が提供される。
図5〜図8は、図3に関連して説明したスクロール壁構造に対する、4つの改変例を示している。図5(a)、図6(a)、図7(a)、及び図8(a)は固定スクロール壁だけを示しており、また、図5(b)、図6(b)、図7(b)、及び図8(b)は、固定スクロール壁と旋回スクロール壁との両方を示している。
【0019】
図3に示したスクロール壁構造40においては、第2の入口54は、第1の入口48と出口50との間における第1の流路52に設けられている。従って、第2の入口54の圧力は、入口48の圧力に影響を与える。ある種の状況においては、第2の入口で圧力を隔離することは望ましい。図5に示した固定スクロール壁構造によれば、第2の入口を隔離することができる。これに関して、図5(a)は、固定スクロール壁76を有する固定スクロール74を示し、旋回スクロール壁75は図5(b)に示している。第1の流路77は、第1の入口78から出口80まで延びている。第2の入口82は、およそ1回巻き分の固定スクロール壁を介して、第1の流路77から隔てられている。第2の流路84は、第2の入口82からおよそ360゜にわたって延びてから、第1の流路と合流して、合流した流路77及び84は出口80へと至る。図5に示した構成によれば、第2の入口において、第1の入口78の圧力とは独立して、圧力を維持ことが可能になる。しかしながら、第2の流路の少なくとも一部分(すなわち1巻き分未満)によって、第2の入口が第1の流路から隔てられている限り、ある程度の隔離を得ることができることを理解されたい。
【0020】
図6(a)は、固定スクロール壁88を有する固定スクロール86を示し、旋回スクロール壁89は図6(b)に示している。第1の流路90は、第1の入口92から出口94へと延びている。第2の入口96は、およそ2回巻き分の固定スクロール壁を介して、第1の流路90から隔てられている。第2の流路98は、第2の入口96からおよそ700゜にわたって延びてから、第1の流路90と合流して出口94へと延びる。図6に示した構成が、図5に示した構成よりも優れている点は、例えば大きな差圧が求められる場合などに、第2の入口96の圧力を第1の入口92からより良く隔離できることである。
図5及び図6に示した構造は、それぞれの入口にてポンプ送りされるガス種をある程度、隔離することが望ましいような、ある種のポンプ用途においては、さらに有利である。従って、これらの構成によれば、第1の入口と第2の入口とは、2つの入口から独立しているので、互換的に用いることができる。
【0021】
図4に示すように、第1の入口48には、2つの開始点の構造を採用することが可能である。図7(a)は、固定スクロール壁102を有する固定スクロール100を示し、旋回スクロール壁109は図7(b)に示している。この構造は、第1の入口104と、第2の入口106と、出口108とを備えている。この構造においては、第1の入口104については単一の開始点があり、第2の入口106については2つの開始点がある。第1の流路110が、1回半巻き分だけ延びてから、第2の入口106に達する。第2の入口106においては、第1の流路110は、2つの第2の流路112と合流し、これは、第2の入口106から1回巻き分の固定スクロールを経て、単一の流路110及び112に収束して、出口108へと至る。第2の入口106に2つの開始点を設けることによって、より大量のガスを第2の入口を通してポンプ送出することができる。
【0022】
図8(a)は、固定スクロール壁116を有する固定スクロール114を示し、旋回スクロール壁117は図8(b)に示している。固定スクロールは、第1の入口118と、第2の入口120と、出口122とを備えている。この構造においては、第1の入口118と、第2の入口120との両方に、2つの開始点がある。これに関して、2つの第1の流路124は、第1の入口118から二股に分岐して、1回巻き分を越えて延びてから収束して、単一の第1の流路124になる。ひとつになった第1の流路は、第2の入口120に遭遇すると、2つの第2の流路126に合流し、この第2の流路は第2の入口120からおよそ1回巻き分だけ延びてから、収束して単一の第2の流路126になって、出口122へと続く。この構成の優れている点は、第1の入口118と第2の入口120とのいずれについても、大容量のポンプ送出が得られることである。
【0023】
上述した構造に関しては、図1に示したような、片面のスクロール壁構造について説明した。片面式の圧縮機は、単一の固定スクロールと単一の旋回スクロールとから構成されていることが分かるだろう。図9は、単一のモータ128によって駆動される、2つの片面式のスクロール壁構造を示している。それぞれのスクロール壁構造は、固定スクロール130と、旋回スクロール132とを備え、これらが一緒になって、排気口138と第1の入口140と第2の入口142との間に、第1の流路134と第2の流路136とを形成している。従って、双子式のスクロール壁構造は、2〜4の異なる圧力をポンプ送出すべく、4つの流路を備える。
【0024】
スクロール壁構造としては両面式のものも知られており、かかる構成においては、図10及び図11に模式的に示すように、単一の旋回スクロール141の両側にひとつずつの2つの固定スクロール143を設ける。上述したすべての実施形態及びその変形例は、両面式のスクロール圧縮機の構造に組み入れることができる。さらに、あるスクロール壁構造を片側の固定スクロールに設けると共に、他方の固定スクロールには、異なるスクロール壁構造を設けることもできる。変形例としては、図11に示すように、両面式のスクロール構造の両側に、第1の入口144と第2の入口146とを設け、これらがそれぞれ流路148と流路150とをそれぞれの出口152及び154へ向かって有することで、異なる圧力でのポンプ送出を行うことができる。さらに、図11に示した構造によれば、それぞれの流路152及び154に沿ってポンプ送出されるガス種を隔離することができる。図11に示した構成を改変して、スクロール壁構造の側面に、それぞれ第2の入口を設けて、図9のようにしても良い。
【0025】
図10に示すように、両面式のスクロール壁構造は、構造の第1の側面における半径方向中央部分に入口156を備え、構造の半径方向外側部分に入口158を備える第1の流路160は、構造の第1の側面において、第1の入口156から半径方向外方へ延び、構造の第2の側面において、排気口162へと半径方向内方に延びている。第2の流路164は、構造の第2の側面において、第2の入口158から排気口162へと半径方向内方へ延びている。図示の如く、第1の流路は、第2の入口158にて、第2の流路と合流している。変形例としては、図5及び図6を参照して述べたように、1又は複数のスクロール壁構造の巻き部分によって、第2の入口158を第1の流路から隔て、排気口の付近において、第1の流路が第2の流路に合流するようにしても良い。第2の入口158は、中間的な入口として機能して、第1の入口156では第1の圧力にてポンプ動作すると共に、第2の入口158では第2の圧力にてポンプ動作させることができる。
【0026】
特許請求の範囲によって定義された、本発明の範囲には、多数の変形例や応用例が包含されることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール圧縮機のためのスクロール壁の構造であって、この構造が、
固定スクロール壁と、前記固定スクロール壁に対し旋回運動するように装着された旋回スクロール壁とを包含し、使用時に、複数の三日月形ポケットが、両壁の間に形成され、前記旋回スクロール壁の旋回運動中に、複数の螺旋状流路に沿って放射方向内向きに付勢されてその寸法が圧縮され、該三日月形ポケットの各々は両壁への360°の範囲にわたる巻き付き持って延びており、
前記複数の流路は、同時に異なる圧力にてポンプ動作するために有する入口と、第1の入口から出口まで延びた第1の流路と、第2の入口から出口まで延びた第2の流路とを有し、
前記第2の流路が、第1の流路と合流する前に第2の入口から少なくとも一回の巻き付きを持って延び、第2の入口が第1の流路から隔てられていることを特徴とする構造。
【請求項2】
第2の流路は、第1の流路と合流する前に、第2の入口か二つの巻き付きを持って延びていることを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項3】
第1の入口は、第2の入口から隔てられており、
ポンプ動作中における第2の入口の圧力は、第1の入口の圧力に比べて高く、または、低くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載に従ったスクロール壁構造を備えていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載に従った第1及び第2のスクロール壁構造を備えていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項6】
スクロール壁構造における固定スクロール壁は、両方の構造に共通する固定スクロールの一部分として形成されていることを特徴とする請求項5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
差動ポンプシステムであって、このシステムが、両者間に相互結合部を有してなる少なくとも2つのチャンバと、比較的低い圧力にてポンプ動作すべく、片方のチャンバに入口を結合されたターボ分子ポンプとを有する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機とを備え、
スクロール圧縮機の片方の入口は比較的高い圧力にてポンプ動作すべく他方のチャンバに結合され、スクロール圧縮機の他方の入口はターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴とする差動ポンプシステム。
【請求項8】
スクロール圧縮機における第2の入口は、比較的高い圧力にてポンプ動作すべく前記チャンバの前記他方に結合され、スクロール圧縮機における第1の入口は、ターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
スクロール圧縮機における第1の入口は、比較的高い圧力にてポンプ動作すべく前記チャンバの前記他方に結合され、スクロール圧縮機における第2の入口は、ターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
ターボ分子ポンプは、スプリット・フロー・ポンプであって、ターボ分子ポンプのステージ間の入口は、前記チャンバにポンプ動作すべく同チャンバに結合されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記スクロール圧縮機における第1の入口は、前記チャンバとターボ分子ポンプの排気口とに結合されていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項1】
スクロール圧縮機のためのスクロール壁の構造であって、この構造が、
固定スクロール壁と、前記固定スクロール壁に対し旋回運動するように装着された旋回スクロール壁とを包含し、使用時に、複数の三日月形ポケットが、両壁の間に形成され、前記旋回スクロール壁の旋回運動中に、複数の螺旋状流路に沿って放射方向内向きに付勢されてその寸法が圧縮され、該三日月形ポケットの各々は両壁への360°の範囲にわたる巻き付き持って延びており、
前記複数の流路は、同時に異なる圧力にてポンプ動作するために有する入口と、第1の入口から出口まで延びた第1の流路と、第2の入口から出口まで延びた第2の流路とを有し、
前記第2の流路が、第1の流路と合流する前に第2の入口から少なくとも一回の巻き付きを持って延び、第2の入口が第1の流路から隔てられていることを特徴とする構造。
【請求項2】
第2の流路は、第1の流路と合流する前に、第2の入口か二つの巻き付きを持って延びていることを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項3】
第1の入口は、第2の入口から隔てられており、
ポンプ動作中における第2の入口の圧力は、第1の入口の圧力に比べて高く、または、低くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載に従ったスクロール壁構造を備えていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載に従った第1及び第2のスクロール壁構造を備えていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項6】
スクロール壁構造における固定スクロール壁は、両方の構造に共通する固定スクロールの一部分として形成されていることを特徴とする請求項5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
差動ポンプシステムであって、このシステムが、両者間に相互結合部を有してなる少なくとも2つのチャンバと、比較的低い圧力にてポンプ動作すべく、片方のチャンバに入口を結合されたターボ分子ポンプとを有する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機とを備え、
スクロール圧縮機の片方の入口は比較的高い圧力にてポンプ動作すべく他方のチャンバに結合され、スクロール圧縮機の他方の入口はターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴とする差動ポンプシステム。
【請求項8】
スクロール圧縮機における第2の入口は、比較的高い圧力にてポンプ動作すべく前記チャンバの前記他方に結合され、スクロール圧縮機における第1の入口は、ターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
スクロール圧縮機における第1の入口は、比較的高い圧力にてポンプ動作すべく前記チャンバの前記他方に結合され、スクロール圧縮機における第2の入口は、ターボ分子ポンプをバッキングすべく同ポンプの排気口に結合されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
ターボ分子ポンプは、スプリット・フロー・ポンプであって、ターボ分子ポンプのステージ間の入口は、前記チャンバにポンプ動作すべく同チャンバに結合されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記スクロール圧縮機における第1の入口は、前記チャンバとターボ分子ポンプの排気口とに結合されていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−74923(P2011−74923A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4173(P2011−4173)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2006−523670(P2006−523670)の分割
【原出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(507261364)エドワーズ リミテッド (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2006−523670(P2006−523670)の分割
【原出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(507261364)エドワーズ リミテッド (85)
【Fターム(参考)】
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