説明

スクロール圧縮装置

【課題】ケーシング外への潤滑オイルの吐出量を低減することができるスクロール圧縮装置を提供する。
【解決手段】ケーシングの内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構と、スクロール圧縮機構と駆動軸で連結され当該スクロール圧縮機構を駆動する駆動モータとが収容され、スクロール圧縮機構がメインフレームによりケーシングに支持され、駆動モータの駆動軸がベアリングプレートによりケーシング3に支持され、ベアリングプレート8が上下の空間を連通する開口部8Eを有し、開口部8E内に当該開口部8Eを上下に貫通するバッフル板14を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定スクロールと揺動スクロールの噛み合い部に潤滑オイルを供給し、固定スクロールと揺動スクロールの噛み合いにより圧縮を行うスクロール圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉されたケーシング内に、互いに噛合する渦巻き状のラップを有する固定スクロールと揺動スクロールとからなる圧縮機構を備え、この圧縮機構を駆動モータで駆動させて、固定スクロールに対して揺動スクロールを自転することなく円運動させることにより圧縮を行うスクロール圧縮装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種のスクロール圧縮装置では、吸入管から吸引した低圧の冷媒を圧縮機構で圧縮し、圧縮された高圧冷媒をケーシングに設けた吐出管からケーシング外に吐出する。また、圧縮機構の各摺動部分、及び、固定スクロールと揺動スクロールの噛み合い部には、潤滑オイルが供給される。供給する潤滑オイルは、ケーシング下部に設けられた油溜めに貯留され、圧縮機構で過剰となった潤滑オイルは、自重で油溜めに戻される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−60532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動モータの駆動軸等の回転体の回転によって潤滑オイルが霧状となることがある。霧状となった潤滑オイルは、高圧のガス冷媒と混合され、混合気体となるが、この混合気体から潤滑オイルをうまく分離することができないため、霧状の潤滑オイルが多量にケーシング内に存在する状態となる事がある。ケーシング内に多量の霧状の潤滑オイルと高圧冷媒との混合気体が存在する状態となった場合には、高圧冷媒とともに、霧状の潤滑オイルが吐出管からケーシング外に多量に排出されてしまう場合がある。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、ケーシング外への潤滑オイルの吐出量を低減することができるスクロール圧縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ケーシングの内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構と、前記スクロール圧縮機構と駆動軸で連結され当該スクロール圧縮機構を駆動する駆動モータとが収容され、前記スクロール圧縮機構がメインフレームにより前記ケーシングに支持され、前記駆動モータの駆動軸がベアリングプレートにより前記ケーシングに支持され、前記ベアリングプレートが上下の空間を連通する開口部を有し、前記開口部内に当該開口部を上下に貫通するバッフル板を備えたことを特徴とする。
この発明では、バッフル板に、駆動モータの駆動軸の回転によって霧状となった潤滑オイルと冷媒ガスとの混合気体を衝突させることで、混合気体から潤滑オイルを分離させることができるため、ケーシング外への潤滑オイルの吐出量を低減することができる。
【0006】
この構成において、前記駆動モータは、インバータによって駆動するDC駆動モータである構成としても良い。また、前記バッフル板が前記開口部の開口縁に沿うように折り曲げられている構成としても良い。また、前記バッフル板が前記開口部を斜めに横切るように配置されている構成としても良い。また、前記バッフル板が多数の細孔を有した板である構成としても良い。また、前記バッフル板が前記ベアリングプレートのボス部の高さに延在する構成としても良い。また、前記バッフル板が前記ベアリングプレートの下面に取り付けられる環状プレートに支持されて、前記開口部を上下に貫通する構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、DC駆動モータの駆動軸がベアリングプレートによりケーシングに支持され、ベアリングプレートが上下の空間を連通する開口部を有し、この開口部内に当該開口部を上下に貫通するバッフル板を備えたため、このバッフル板に駆動モータの駆動軸の回転によって霧状となった潤滑オイルと冷媒ガスとの混合気体を衝突させて、潤滑オイルを分離させることができ、ケーシング外への潤滑オイルの吐出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るスクロール圧縮装置の断面図である。
【図2】環状プレート及びバッフル板とベアリングプレートの分解斜視図である。
【図3】環状プレート及びバッフル板とベアリングプレートの組立斜視図である。
【図4】変形例のバッフル板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、1は内部高圧となるスクロール圧縮装置を示し、この圧縮機1は、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う図外の冷媒回路に接続されて、冷媒を圧縮するものである。この圧縮機1は、縦長円筒状の密閉ドーム型のケーシング3を有する。
このケーシング3は、上下方向に延びる軸線を有する円筒状の胴部であるケーシング本体5と、その上端部に気密状に溶接されて一体接合され、上方に突出した凸面を有する椀状の上キャップ7と、ケーシング本体5の下端部に気密状に溶接されて一体接合され、下方に突出した凸面を有する椀状の下キャップ9とで圧力容器に構成されており、その内部は空洞とされている。ケーシング3の外周面には、ターミナルカバー52が設けられ、このターミナルカバー52の内部には、後述のステータ37に電源を供給する電源供給端子53が備えられる。
【0010】
ケーシング3の内部には、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構11と、このスクロール圧縮機構11の下方に配置される駆動モータ13とが収容されている。これらのスクロール圧縮機構11と駆動モータ13とは、ケーシング3内を上下方向に延びるように配置される駆動軸15によって連結されている。また、これらのスクロール圧縮機構11と駆動モータ13との間には間隙空間17が形成されている。
【0011】
ケーシング3の内部上方には、メインフレーム21が収納され、このメインフレーム21には中央にラジアル軸受部28とボス収容部26とが形成されている。ラジアル軸受部28は、駆動軸15の先端(上端)側を軸支するためのものであり、当該メインフレーム21の一方の面(下側の面)の中央から下方に突出して形成されている。ボス収容部26は後述する揺動スクロール25のボス25Cを収容するためのものであり、メインフレーム21の他方の面(上側の面)の中央を下方に凹陥することにより形成されている。駆動軸15の先端(上端)には、偏心軸部15Aが形成されている。この偏心軸部15Aは、中心が駆動軸15の軸心と偏心して設けられると共に、旋回軸受け24を介して、ボス25Cに旋回駆動可能に挿入されている。
【0012】
上記スクロール圧縮機構11は、固定スクロール23と揺動スクロール25とで構成されている。固定スクロール23は、メインフレーム21の上面に密着して配置される。メインフレーム21は、ケーシング本体5の内面に取り付けられ、固定スクロール23は、メインフレーム21にねじ34で締結され固定されている。揺動スクロール25は、固定スクロール23に噛合し、固定スクロール23と、メインフレーム21との間の形成される揺動空間12内に配置される。ケーシング3内は、メインフレーム21の下方の高圧空間27と、メインフレーム21の上方の吐出空間29とに区画される。各空間27,29は、メインフレーム21及び固定スクロール23の外周に縦に延びて形成された縦溝71を介して連通している。
【0013】
ケーシング3の上キャップ7には、冷媒回路の冷媒をスクロール圧縮機構11に導く吸入管31が、またケーシング本体5には、ケーシング3内の冷媒をケーシング3外に吐出させる吐出管33がそれぞれ気密状に貫通固定されている。吸入管31は、吐出空間29を上下方向に延び、その内端部はスクロール圧縮機構11の固定スクロール23を貫通して、圧縮室35に連通し、この吸入管31により圧縮室35内に冷媒が吸入される。
【0014】
駆動モータ(DC駆動モータ)13は、直流電源からの入力を受けて駆動するDC(Direct Current)モータであり、環状のステータ37と、このステータ37の内側に回転自在に構成されたロータ39とを備える。駆動モータ13は、一定の入力電圧を受け、パルス波のデューティ比、つまり、パルス波を出す周期と出した時のパルス幅と、を制御するPWM(Pulse Width Modulation)インバータによって回転トルクが制御され駆動する。
【0015】
ロータ39には、駆動軸15を介してスクロール圧縮機構11の揺動スクロール25が駆動連結されている。ステータ37は、ステータコア37Aと、ステータコイル18とから成る。ステータコア37Aは、薄い鉄板を重ね合わせて形成され、内部には、図示は省略したが、複数の溝を有する。ステータコイル18は、複数相のステータ巻線が巻回されて形成され、ステータコア37Aの内部に形成された溝に嵌入されて、ステータコア37Aの上下に備えられる。ステータコイル18は、インシュレータ19の内部に収容されている。ステータコイル18は、不図示の導線を介して電源供給端子53に接続される。
【0016】
ロータ39は、フェライト磁石、或いは、ネオジウム磁石から形成され着磁によって磁化される。ロータ39を磁化させる方法としては、ロータ39をステータ37に内挿した後、ステータ37のステータコイル18を形成するステータ巻き線に電流を流して着磁する巻線着磁、或いは、ロータ39を外部の着磁装置を用いて着磁させた後にステータ37に内挿する外部着磁がある。駆動軸15の内部には、ロータ39の巻線着磁を行う際に、ロータ39の位置決めに用いる、詳細は後述する、ホルダ(ピンホルダ)58が圧入されている。
ステータ37は、環状のスペーサリング38によってケーシング3の内壁面に支持される。スペーサリング38はケーシング3の内壁面に焼き嵌めによって固定され、ステータ37はスペーサリング38の内壁面に焼き嵌めによって固定される。スペーサリング38の上端面は、ステータ37の上端面よりも下方に設けられる。
【0017】
駆動モータ13の下方には、駆動軸15の下端部を回転可能に嵌入支持するベアリングプレート8が備えられる。ベアリングプレート8は、図2に示すように、円筒状に形成され駆動軸15が嵌入されるボス部8Aと、このボス部8Aに略等間隔に周設され4方向に延び、ケーシング本体5に固定されるアーム部8Bとを備える。つまり、駆動軸15は、ベアリングプレート8によってケーシング3に支持される。ベアリングプレート8は、各アーム部8Bの間に形成され、上下の空間を連通する開口部8Eを有する。
図1に示す、ベアリングプレート8の下方の下部空間(油溜め)40は、高圧に保たれており、その下端部に相当する下キャップ9の内底部には油が貯留される。ベアリングプレート8と、油溜め40の間には、環状プレート59がベアリングプレート8に固定されて備えられる。また、環状プレート59の上方には、バッフル板14が環状プレート59に支持されて設けられる。バッフル板14は、例えば、多数の細孔14Dを有した、例えば薄板状のパンチングメタルによって形成される。
【0018】
駆動軸15内には、高圧油供給手段の一部としての給油路41が形成され、この給油路41は、駆動軸15の内部を上下に延び、揺動スクロール25の背面の油室43に連通している。この給油路41は、駆動軸15の下端に設けたオイルピックアップ45に連結される。オイルピックアップ45の奥側には、駆動軸15の径方向に延び、給油路41を貫通する横穴57が設けられる。この横穴57には、上述したホルダ58が圧入される。オイルピックアップ45は、ロータ39の着磁後に、駆動軸15に圧入される。
【0019】
オイルピックアップ45は、下端に設けられた吸込口42と、この吸込口42の上方に形成されたパドル44とを備える。オイルピックアップ45の下端は、油溜め40に貯留された潤滑オイルに浸漬されて、当該給油路41の吸込口42が潤滑オイル内にて開口している。駆動軸15が回転すると、油溜め40に貯留された潤滑オイルがオイルピックアップ45の吸込口42から給油路41に入り、この給油路41のパドル44に沿って上方に汲み上げられる。そして、汲み上げられた潤滑オイルは、給油路41を通じ、ラジアル軸受部28、及び、旋回軸受24等のスクロール圧縮機構11の各摺動部分に供給される。さらに、潤滑オイルは、給油路41を通じて揺動スクロール25背面の油室43に供給され、この油室43から、揺動スクロール25に設けられた連通路51を介して、圧縮室35へ供給される。
【0020】
メインフレーム21には、ボス収容部26からメインフレーム21を径方向に貫通し、縦溝71に開口する戻し油路47が形成される。給油路41を通じ、スクロール圧縮機構11の各摺動部分、及び、圧縮室35に供給される潤滑オイルのうち、過剰となった潤滑オイルは、この戻し油路47を通って油溜め40に戻される。戻し油路47の下方には、オイルコレクター46が設けられ、オイルコレクター46は、スペーサリング38の上端近傍まで延在する。ステータ37の外周面には、ステータ37の上下に亘る複数の切欠き54が形成される。戻し油路47、オイルコレクター46を通じて給油路41から戻された潤滑オイルは、この切欠き54、及び、ベアリングプレート8の各アーム部8Bの間を通って油溜め40に戻される。なお、図1の断面図において、吐出管33が説明の便宜上破線で示されているが、吐出管33は、オイルコレクター46とは、位相をずらして配置される。
【0021】
固定スクロール23は、鏡板23Aと、この鏡板23Aの下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ23Bとで構成されている。一方、揺動スクロール25は、鏡板25Aと、この鏡板25Aの上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ25Bとで構成されている。そして、固定スクロール23のラップ23Bと、揺動スクロール25のラップ25Bとは互いに噛合しており、このことにより固定スクロール23と揺動スクロール25との間において、両ラップ23B,25Bで複数の圧縮室35が形成されている。
【0022】
揺動スクロール25は、オルダムリング61を介して固定スクロール23に支持され、その鏡板25Aの下面の中心部には有底円筒状のボス25Cが突設されている。一方、駆動軸15の上端には偏心軸部15Aが設けられ、この偏心軸部15Aは、揺動スクロール25のボス25Cに回転可能に嵌入されている。
さらに、駆動軸15には、メインフレーム21の下側に、カウンタウェイト部(上バランサ)63が設けられ、ロータ39の下部には、下バランサ77が設けられている。駆動軸15は、これらの上バランサ63、及び、下バランサ77によって揺動スクロール25や偏心軸部15A等と動的バランスを取っている。これらのカウンタウェイト部63、及び、下バランサ73により重さのバランスを取りながら駆動軸15が回転することで、揺動スクロール25を公転させるようになっている。そして、この揺動スクロール25の公転に伴い、圧縮室35は、両ラップ23B,25B間の容積が中心に向かって収縮することで吸入管31より吸入された冷媒を圧縮するように構成されている。また、下バランサ77の下面には、ロータ39、及び、下バランサ77と一体にカシメられる規制プレート55が設けられる。規制プレート55は、ロータ39の巻線着磁を行う際に、ロータ39の回転を規制するために用いられる。
【0023】
メインフレーム21の下側には、カウンタウェイト部63の周りを囲うようにカップ48がボルト49で固定されている。カップ48は、メインフレーム21と、駆動軸15との間のクリアランスから漏れ出た潤滑オイルが、カウンタウェイト部63の回転によって吐出管側に飛散されるのを防ぐ。
【0024】
固定スクロール23の中央部には吐出孔73が設けられており、この吐出孔73から吐出されたガス冷媒は、吐出弁75を通って吐出空間29に吐出され、メインフレーム21及び固定スクロール23の各外周に設けた縦溝71を介して、メインフレーム21の下方の高圧空間27に流出し、この高圧冷媒は、ケーシング本体5に設けた吐出管33を介してケーシング3外に吐出される。
【0025】
このスクロール圧縮装置1の運転動作について説明する。
駆動モータ13を駆動すると、ステータ37に対してロータ39が回転し、それによって駆動軸15が回転する。駆動軸15が回転すると、スクロール圧縮機構11の揺動スクロール25が固定スクロール23に対して自転せずに公転のみ行う。このことにより、低圧の冷媒が吸入管31を通して圧縮室35の周縁側から圧縮室35に吸引され、この冷媒は圧縮室35の容積変化に伴って圧縮される。そして、この圧縮された冷媒は、高圧となって圧縮室35から吐出弁75を通って吐出空間29に吐出され、メインフレーム21及び固定スクロール23の各外周に設けた縦溝71を介して、メインフレーム21の下方の高圧空間27に流出し、この高圧冷媒は、ケーシング本体5に設けた吐出管33を介してケーシング3外に吐出される。ケーシング3外に吐出された冷媒は、図示を省略した冷媒回路を循環した後、再度吸入管31を通して圧縮機1に吸入されて圧縮され、このような冷媒の循環が繰り返される。
【0026】
潤滑オイルの流れを説明すると、ケーシング3における下キャップ9の内底部に貯留された潤滑オイルが、オイルピックアップ45により吸い上げられ、この潤滑オイルが、駆動軸15の給油路41を通じ、スクロール圧縮機構11の各摺動部分、及び、圧縮室35へ供給される。スクロール圧縮機構11の各摺動部分、及び、圧縮室35で過剰となった潤滑オイルは、戻し油路47から、オイルコレクター46に集められ、ステータ37の外周に設けられた切欠き54を通って駆動モータ13の下方に戻される。
【0027】
図2は、駆動モータ13の下方に配置されたベアリングプレート8と、ベアリングプレート8の下面に取り付けられる環状プレート59と、環状プレート59に支持されるバッフル板14とを示す。ベアリングプレート8は、円筒状に形成されたボス部8Aと、このボス部8Aに略等間隔に周設された4本の脚部8Bとを備える。ベアリングプレート8は、各脚部8Bの間に、上下の空間を連通する開口部8Eを有する。ボス部8Aには、駆動軸15の下端部が嵌入される下軸受け孔8Cが形成される。ボス部8Aは、脚部8Bの上下に突出し、ボス部8Aの下端部8Dは、環状プレート59に形成された孔59Aに挿入される。環状プレート59の孔59Aと、ボス部8Aの間には、複数ミリ、例えば2〜3ミリの間隙が設けられる。環状プレート59は、薄板の円盤状に形成され、上面59Cにベアリングプレート8の脚部8Bが載置される。環状プレート59は、2つのボルト孔59Bを備え、各ボルト孔59Bに下方側から挿入されたボルト32によって脚部8Bに螺合される。環状プレート59の上面59Cには、バッフル板14が複数立設される。バッフル板14は、多数の細孔14Dを有した、例えば薄板状のパンチングメタルによって形成される。
【0028】
バッフル板14は、環状プレート59の径方向に外周に向かって略八の字に広がる一対の分離板部14A,14Aと、この分離板部14A間を環状プレート59の内側で繋ぐ板材14Bと、分離板部14Aの下端に分離板部14Aに略直角に設けられた取付板部14Cとから構成される。これらの分離板部14A、板材14B、取付板部14Cは、一枚のパンチングメタルを折り曲げて形成されている。一対の分離板部14A,14Aの下端にそれぞれ設けられた取付板部14Cは、互いに逆方向に、外側に向かって折り曲げられている。バッフル板14は、この取付板部14Cを環状プレート59に、例えば溶接によって固定して、環状プレート59と一体に備えられる。
【0029】
各バッフル板14は、図3に示すように、ベアリングプレート8の開口部8E内に、各開口部8Eを上下に貫通するように配置される。バッフル板14は、上端が駆動モータ13の下端近傍まで延びるような高さに形成されているのが望ましく、少なくとも、ベアリングプレート8のボス部8Aの高さに延在する。また、バッフル板14は、ベアリングプレート8の開口部8Eの開口縁に沿うように折り曲げられて形成されている。
【0030】
駆動モータ13と、ベアリングプレート8に挟まれた空間内で、駆動軸15、及び、駆動軸15とともに回転する回転体により霧状となった潤滑オイルと高圧のガス冷媒との混合気体は、このバッフル板14に衝突することにより、潤滑オイルと、ガスとに分離される。バッフル板14は、多数の細孔14Dを有した板から形成されるため、潤滑オイルが分離された高圧冷媒を、バッフル板14の細孔14Dを通して流すことができる。これによって、バッフル板14によって高圧冷媒の流れが妨げられ、駆動軸15の回転に抑制がかかることがない。
分離された潤滑オイルは、自重によって環状プレート59の上面に集められ、環状プレート59とボス部8Aの間の間隙を通って油溜め40に戻される。これによって、霧状になった潤滑オイルが、吐出管33から高圧冷媒とともに、ケーシング本体5に設けた吐出管33からケーシング3外に吐出されるのを防ぐことができ、吐出管33を介して吐出される潤滑オイルの吐出量を低減することができる。
【0031】
また、バッフル板14は、環状プレート59の径方向に延在する取付板部14Cによって環状プレート59に固定されているため、環状プレート59の周方向に沿って駆動軸15の回転方向に流れる霧状の潤滑オイルと高圧冷媒との混合気体がバッフル板14の壁面に衝突する際の衝撃に対する強度を確保することができる。また、一対の分離板部14A,14Aにそれぞれ備えられる取付板部14Cは、互いに逆方向に折り曲げられているため、潤滑オイルと高圧冷媒との混合気体が分離板部14Aに略直角に衝突する際のバッフル板14の衝撃に対する強度を高めることができる。
【0032】
図4は、バッフル板の変形例であるバッフル板34を示す図である。バッフル板34は、多数の細孔14Dを有した薄板状のパンチングメタルによって略扇形状に形成されている。バッフル板34は、径方向の一方の辺を所定の角度に折り曲げて形成した固定板部34Aを備える。バッフル板34は、環状プレート59をベアリングプレート8に固定した際に、固定板部34Aが脚部8Bの一方の側面近傍に配置されるように環状プレート59に溶接等によって固定され、ベアリングプレート8の開口部8Eを斜めに横切るように配置される。これによって、バッフル板34は、駆動軸15の回転方向に対して斜め下向きに設けられる。バッフル板34は、他方の辺34Bが駆動モータ13の下端近傍まで延びるような高さに形成されているのが望ましく、少なくとも、ベアリングプレート8のボス部8Aの高さに延在する。
【0033】
これらの構成によれば、駆動軸15の回転方向に流れる霧状の潤滑オイルと高圧のガス冷媒との混合気体がバッフル板34の下向きの面に衝突するため、混合気体の流れをバッフル板34で下向きに抑えることができる。これによって、霧状の潤滑オイルと高圧のガス冷媒との混合気体が吐出管33からケーシング3外に吐出されるのを防ぐことができる。また、バッフル板34に衝突することによってガス冷媒と分離された潤滑オイルを、自重で環状プレート59の上面59Cに落とすことができ、上面59Cに集まった潤滑オイルを環状プレート59と、ボス部8Aとの間の間隙を通って油溜め40に戻すことができる。これによって、吐出管33を介して吐出される潤滑オイルの吐出量を低減することができる。また、バッフル板34は、多数の細孔14Dを有した板から形成されるため、潤滑オイルが分離された高圧冷媒を、バッフル板34の孔を通して流すことができる。
【0034】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によれば、ケーシング3の内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構11と、スクロール圧縮機構11と駆動軸15で連結され当該スクロール圧縮機構11を駆動する駆動モータ13とが収容され、スクロール圧縮機構11がメインフレーム21によりケーシング3に支持され、駆動モータ13の駆動軸15がベアリングプレート8によりケーシング3に支持され、ベアリングプレート8が上下の空間を連通する開口部8Eを有し、開口部8E内に開口部8Eを上下に貫通するバッフル板14を備えたため、ベアリングプレート8のアーム部8Bによって形成される開口部8Eの空間を有効利用して、潤滑オイルの吐出量を低減するバッフル板14を配置することができる。これによって、DC駆動モータを用いることでスクロール圧縮機1の小型化が進んでも、バッフル14を設けるスペースを確保することができる。また、駆動軸15の回転によって霧状となった潤滑オイルと高圧冷媒との混合気体をバッフル板14に衝突させることで、潤滑オイルを混合気体から分離させることができ、潤滑オイルが高圧冷媒とともに吐出管33からケーシング3外に吐出されるのを防止することができるため、吐出される潤滑オイルの吐出量を低減することができる。
【0035】
また、本発明を適用した実施形態によれば、駆動モータ13は、PWMインバータによって回転トルクが制御され駆動するDC駆動モータであるため、出力効率の良いDCモータを用いることで、駆動モータ13の小型化を図ることができ、さらに、インバータによって駆動させることで、駆動モータ13の電圧の上昇/下降による無駄な熱の発生を防ぎ、駆動効率をよくすることができる。
【0036】
また、本発明を適用した実施形態によれば、バッフル板14が開口部8Eの開口縁に沿うように折り曲げられているため、霧状となった潤滑オイル/高圧冷媒の混合気体を衝突させることで混合気体から潤滑オイルを分離させるためのバッフル板14の面積を広く確保することができ、高圧冷媒とともに吐出管33を介してケーシング3外に吐出される潤滑オイルの吐出量を低減することができる。
【0037】
また、本発明を適用した実施形態によれば、バッフル板34が前記開口部を斜めに横切るように配置されているため、霧状となった潤滑オイルと高圧冷媒との混合気体の流れをバッフル板34で下向きに抑えることができ、霧状の潤滑オイルが高圧冷媒とともに吐出管33からケーシング3外に吐出されるのを防ぐことができる。また、バッフル板34の下向きの面に混合気体を衝突させることで混合気体から潤滑オイルを分離させることができ、分離された潤滑オイルは、自重で油溜め40に戻される。
【0038】
また、本発明を適用した実施形態によれば、バッフル板14,34が多数の細孔14Dを有した板であるため、潤滑オイルが分離された高圧冷媒を、バッフル板14,34の孔を通して流すことができ、バッフル板14,34によって高圧冷媒の流れが妨げられるのを防止することができる。また、バッフル板14,34が多数の細孔14Dを有するため、バッフル板14,34の混合気体を衝突させて潤滑オイルを分離させるための面積を広く確保することができる。
【0039】
また、本発明を適用した実施形態によれば、バッフル板14,34がベアリングプレート8のボス部8Aの高さに延在するため、駆動軸15の回転によって霧状となった潤滑オイルと高圧冷媒との混合気体で、駆動モータ13と、油溜め40との間の空間に存在し、駆動軸15の回転方向に沿って流れる混合気体をバッフル板14,34に衝突させて混合気体から潤滑オイルを分離させることができ、潤滑オイルが高圧冷媒とともに吐出管33からケーシング3外に吐出されるのを防止することができるため、吐出される潤滑オイルの吐出量を低減することができる。
【0040】
また、本発明を適用した実施形態によれば、バッフル板14,34がベアリングプレート8の下面に取り付けられる環状プレート59に支持されて開口部8Eを上下に貫通するため、ベアリングプレート8で、駆動軸15の回転によって油溜め40内で霧状となった潤滑オイルが、環状プレート59の上部に上がってくるのを防ぐことができる。また、バッフル板14,34に衝突させることで、霧状となった潤滑オイルと高圧冷媒との混合気体から分離された潤滑オイルは、自重で環状プレート59に落ち、環状プレート59と、ベアリングプレート8との間隙から油溜め40に戻されるため、潤滑オイルが高圧冷媒とともに吐出管33からケーシング3外に吐出されるのを防止することができ、吐出される潤滑オイルの吐出量を低減することができる。
【0041】
なお、ロータ39の着磁を、ケーシング3に取り付けた駆動モータ13のステータ37のステータ巻き線に電流を流して巻線着磁によって着磁する場合、バッフル板14、或いはバッフル板34を備えた環状プレート59は、ロータ39の着磁後にベアリングプレート8の下面に取り付けられる構成である。
【符号の説明】
【0042】
1 スクロール圧縮装置
3 ケーシング
8 ベアリングプレート
8A ボス部
8E 開口部
11 スクロール圧縮機構
13 駆動モータ(DC駆動モータ)
14、34 バッフル板
15 駆動軸
21 メインフレーム
33 吐出管
40 油溜め
59 環状プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構と、前記スクロール圧縮機構と駆動軸で連結され当該スクロール圧縮機構を駆動する駆動モータとが収容され、
前記スクロール圧縮機構がメインフレームにより前記ケーシングに支持され、
前記駆動モータの駆動軸がベアリングプレートにより前記ケーシングに支持され、前記ベアリングプレートが上下の空間を連通する開口部を有し、前記開口部内に当該開口部を上下に貫通するバッフル板を備えた
ことを特徴とするスクロール圧縮装置。
【請求項2】
前記駆動モータは、インバータによって駆動するDC駆動モータであることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項3】
前記バッフル板が前記開口部の開口縁に沿うように折り曲げられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項4】
前記バッフル板が前記開口部を斜めに横切るように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項5】
前記バッフル板が多数の細孔を有した板であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項6】
前記バッフル板が前記ベアリングプレートのボス部の高さに延在することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項7】
前記バッフル板が前記ベアリングプレートの下面に取り付けられる環状プレートに支持されて、前記開口部を上下に貫通することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のスクロール圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202253(P2012−202253A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65608(P2011−65608)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】