説明

スクロール流体機械

【課題】圧縮室内部にピンクランク機構が存在しないために圧縮室内にベアリングを設ける必要がなく、連続運転時間を長時間化することができるスクロール流体機械を提供する。
【解決手段】駆動軸に旋回可能に支持されている鏡板上に旋回ラップを立設した旋回スクロールと、前記旋回スクロールと対向して設けられ鏡板上に固定ラップを立設した固定スクロールとを有し、前記旋回ラップと固定ラップとを重ね合わせて前記旋回スクロールを旋回させることで流体を圧縮する圧縮室を形成するスクロール流体機械において、前記旋回スクロールの鏡板に取り付けられるとともに、前記固定スクロールの前記旋回スクロールと対向しない裏面側に延設された棒状部材と、該棒状部材に取り付けられるとともにピンクランク機構が設けられ、前記駆動軸に旋回可能に支持された旋回板と、を有し、前記旋回板に、前記圧縮室の軸方向のシールを行うシール手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール流体機械に関するものであって、特に、圧縮を行う圧縮室内にピンクランク機構を有さないために圧縮室内にベアリングを設ける必要がなく、圧縮室内でのベアリングの破損を回避することができるスクロール流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気圧縮や冷凍・空調に使用される圧縮機の1つとして、スクロール流体機械が知られている。スクロール流体機械は、一般に、駆動軸に支持された鏡板に旋回ラップを立設した旋回スクロールと、鏡板に固定ラップを立設した固定スクロールとを有し、前記旋回ラップと固定ラップとを噛み合わせることにより、旋回ラップと固定ラップとの間に密閉した圧縮室を形成して構成されている。
【0003】
スクロール流体機械では、前記駆動軸を偏心的に旋回させることにより、旋回ラップと固定ラップの相対運動によって前記圧縮室の容積が求心方向に漸次減少するとともに、圧縮室の外周部から吸引した流体を圧縮しながら中心部へ導いた後に吐出することで、前記流体を圧縮する。
【0004】
このように構成されたスクロール流体機械では、旋回スクロールを固定スクロールに対して旋回運動させるために、旋回スクロールの旋回域を規制して自転を防止する自転防止機構が設けられており、自転防止機構の1つとしてピンクランク機構が知られている。ピンクランク機構は、旋回スクロール側と固定スクロール側をピンクランク軸を介して連結し、旋回スクロールの運動規制を行うものである。ピンクランク機構を適用したスクロール流体機械として、例えば特許文献1には、旋回スクロール側のピン部と、固定スクロール側のピン部とに分割し、両者を嵌合により一体化してピンクランク軸を構成した技術が開示されている。
【0005】
さらに、軸方向両面に夫々一条の旋回ラップを形成した一の旋回スクロールと、前記旋回スクロールのラップに嵌合する一の固定ラップを有する一対の固定スクロールを有したダブルラップ方式のスクロール流体機械が特許文献2に開示されている。このようなダブルラップ方式のスクロール流体機械においては、チップシールと称される樹脂部材を用いて旋回ラップの軸方向を支持・制限することが多い。
【0006】
また、シングルラップ方式のスクロール流体機械において、真空シールに関する技術として、例えば特許文献3には、チップシールとは別に旋回部の最外周にチップシールと類似したPシール(ダストシール)を設けたシングルラップ方式のスクロール流体機械が開示されている。
【0007】
また、非特許文献1には大口径ベローズ(蛇腹)内にベアリングを収納した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−201977号公報
【特許文献2】特開平5−187372号公報
【特許文献3】特開2005−320885号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】XDS Scroll Pump インターネット<http://www.edwardsvacuum.com/Products/List.aspx?r=3>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば特許文献1、2に開示されたようなピンクランク機構を用いたスクロール流体機械においては、圧縮を行う圧縮室内にピンクランク機構が存在する。ピンクランク機構はベアリングを必要とするため、ピンクランク機構が圧縮室内に存在するスクロール流体機械では、ベアリンググリスへの異物付着や腐食性ガスによるグリスの劣化、ベアリングの破損が生じる可能性がある。また、前記ベアリングにグリスを補充する際には、スクロール流体機械の圧縮室を分解する必要があり、ベアリングへのグリスの補充に時間と手間がかかるという課題も生じる。さらに、ベアリングの潤滑にグリスを用いるか、ベアリングとしてドライベアリングを用いる必要があり、ベアリングに係るコストが大きくなるという課題もある。
【0011】
さらに、特許文献2に開示されるようなダブルラップ方式のスクロール流体機械において、チップシールを用いて旋回ラップの軸方向を支持・制限する場合には、チップシールの磨耗が進むと旋回ラップが固定ラップに接触・干渉してしまう。そのため、チップシールが磨耗して前記接触・干渉が起こる前にチップシールを交換する必要があり、スクロール流体機械の運転時間がチップシールの交換時間に依存して短時間になるという課題がある。
なお、大部分のシングルラップ方式のスクロール流体機械ではチップシールではなくベアリングで旋回ラップの軸方向を支持しているので、チップシールの磨耗が進むとシール性能は落ちるが、接触・干渉が起こることはない。しかし、ベアリングで軸方向を支持する場合はベアリングが荷重に耐えられるように大きく、かつ、アンギュラ・ベアリングのような複雑な構造となってしまい、圧縮室内に配置することが難しくなる。
【0012】
そこで、特許文献3又は非特許文献1に開示されるような真空シール技術を適用することが考えられるが、特許文献3に開示された真空シール技術を適用する場合、前記Pシールは接触式のために磨耗するので、チップシール同様に早めの交換が必要となる。また、チップシールよりも真空性能に及ぼす影響が遥かに大きい。
【0013】
また、非特許文献1に開示された真空シール技術を適用する場合、ベローズの寿命が厳しい、ベアリングのグリス補充に手間取るという問題がある。
【0014】
従って、本発明は係る従来技術の問題点に鑑み、ダブルラップ方式のスクロール流体機械にも適用可能であって、圧縮室内部にピンクランク機構が存在しないために圧縮室内にベアリングを設ける必要がなく、さらにチップシールと称される樹脂材によって軸方向を支持・制限する必要がないために連続運転時間を長時間化することができるスクロール流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明においては、駆動軸に旋回可能に支持されている鏡板上に旋回ラップを立設した旋回スクロールと、前記旋回スクロールと対向して設けられ鏡板上に固定ラップを立設した固定スクロールとを有し、前記旋回ラップと固定ラップとを重ね合わせて前記旋回スクロールを旋回させることで流体を圧縮する圧縮室を形成するスクロール流体機械において、前記旋回スクロールの鏡板に取り付けられるとともに、前記固定スクロールの前記旋回スクロールと対向しない裏面側に延設された棒状部材と、該棒状部材に取り付けられるとともにピンクランク機構が設けられ、前記駆動軸に旋回可能に支持された旋回板と、を有し、前記旋回板に、前記圧縮室のシールを行うシール手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
旋回板を設けることにより、駆動軸によって旋回板を旋回させ、該旋回板に棒状部材を介して固定された旋回スクロールが旋回する。従って、駆動軸の駆動によって直接旋回させる旋回板にピンクランク機構を設ければよい。よって、旋回板は圧縮を行う圧縮室外に位置するため、ピンクランク機構を圧縮室内に設ける必要がなく、圧縮室内部にピンクランク機構に係るベアリングを設ける必要がない。そのため、圧縮室内にベアリングが存在することに起因する従来の課題であった、ベアリンググリスへの異物付着や腐食性ガスによるグリスの劣化、ベアリングの破損の可能性、ベアリングへのグリス補充時の分解作業に係る膨大な時間と手間、ベアリングの潤滑にグリスを用いたりベアリングとしてドライベアリングを用いることによる高コスト化が生じない。
【0017】
さらに、前記シール手段を設けることにより、樹脂材であるチップシールで圧縮室の軸方向のシールを行う必要がなく、スクロール流体機械の連続運転時間の長時間化が可能となる。
【0018】
また、前記シール手段は、前記固定スクロールの裏面側と前記旋回板との間に設けられたベローズであって、該ベローズは、固定スクロールの裏面側と旋回板との間の空間において、前記棒状部材の外周側を取り囲んで設けられているとよい。
前記ベローズを設けることで、圧縮室の軸方向のシールをチップシールを用いることなく実現可能となる。さらに、ベローズは、前記棒状部材の周囲を覆えばよいだけなので、ベローズの径を小さく抑えることができる。これにより、ベローズの長寿命化が可能であり、如いてはスクロール流体機械の長時間運転が可能となる。
【0019】
また、前記シール手段は、前記固定スクロールの裏面側と前記棒状部材との間に設けられたベローズであって、該ベローズは、固定スクロールの裏面側と旋回板との間の空間において、一端は前記棒状部材の外周側全周に渡って前記棒状部材に取り付けられているとともに、他端は前記棒状部材の外周側を取り囲んで前記固定スクロールの裏面側に取り付けられているとよい。
これにより、固定スクロールと旋回板との距離を短くすることができ、スクロール流体機械全体のコンパクト化に寄与できる。
【0020】
また、前記シール手段は、前記旋回板の前記固定スクロールの裏面側と対向する面に設けたリング状の突起物を有し、該突起物は、その先端が前記固定スクロールの裏面側に摺動可能に接触しているとともに、前記棒状部材の外周側を取り囲んで設けられているとよい。
これにより、シール手段である前記突起部と、旋回板とが一体化するため、簡単な構造で発明の実施が可能となる。
【0021】
また、前記シール手段は、前記固定スクロールの裏面上に第2の固定ラップを立設するとともに、前記固定スクロールの裏面側と対向する前記旋回板の面に第2の旋回ラップを立設し、前記第2の旋回ラップと第2の固定ラップとを重ね合わせて前記旋回スクロールを旋回させることで流体を圧縮する第2の圧縮室であるとよい。
これにより、圧縮室が1つ増えるため、スクロール流体機械の圧縮性能が向上する。この場合、前記第2の圧縮室では、中心付近で圧力が最も高くなる。そのため、前記第2の圧縮室が、前記圧縮室からのガス軸方向に外部に漏れないようにシールの役目を果たす、即ち自己加圧パージ型の構成となる。
【0022】
また、前記棒状部材に、外部と前記圧縮室内を連通する連通路を設け、該連通路により、外部より圧縮室内へ冷却用流体を導入可能とするとよい。
これにより、前記連通路を介して空気や冷却液を圧縮室内に導入することで圧縮室内を容易に冷却することができる。この場合、前記棒状部材に2つの連通路を設け、一方を前記冷却用流体の導入口、他方を前記冷却用流体の排出口とすると、前記圧縮室内に連続的に冷却用流体を導入・排出することができ好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圧縮室内部にピンクランク機構が存在しないために圧縮室内にベアリングを設ける必要がなく、連続運転時間を長時間化することができるスクロール流体機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
【図2】実施例2に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
【図3】実施例3に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
【図4】実施例4に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
【図5】実施例5に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0026】
図1は、実施例1に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
まず、図1に基づいて実施例1におけるスクロール流体機械の構成について説明する。
図1に示したスクロール流体機械1において、2はスクロール流体機械1の外枠を形成する圧縮機ケーシングを示し、圧縮機ケーシング2は、一側が開口したケーシング本体4と、該ケーシング本体4の開口と反対側に突出して形成された筒状の軸受部6とから概略構成されている。
【0027】
8はスクロール流体機械1の本体をなす圧縮部で、ケーシング本体4に背面が取り付けられるとともに表面に複数の固定ラップ10aが立設された固定スクロール10と、固定スクロール10と対面して設けられるとともに固定スクロール10と対面する面に固定ラップ12aが立設された固定スクロール12と、固定スクロール10と固定スクロール12の間に位置し固定スクロール10との間及び固定スクロール12との間で後述する圧縮室18a及び18bを形成する旋回スクロール14と、一端側が圧縮機ケーシング2の軸受部6に軸受20を介して回転可能に支持され後述する旋回円盤24及び棒状のボス26を介して旋回スクロール14に連結されるとともに他端側が軸受部6から突出した駆動軸22と、によって概略構成される。駆動軸22には、モータ25が直接又はベルト(不図示)、プーリ(不図示)、等を介して接続されている。
【0028】
固定スクロール10は、鏡板10bと、鏡板10bの表面に立設され、鏡板10bの中心が巻き始め端となり、外周側が巻き終わり端となった渦巻状の固定ラップ10aとから概略構成されている。固定スクロール12も同様である。
また、旋回スクロール14は、鏡板14bと、鏡板14aの両面にそれぞれ立設され、鏡板14bの中心が巻き始め端となり、外周側が巻き終わり端となった渦巻状の旋回ラップ14a及び14cとから概略構成されている。固定ラップ10a、12aと旋回ラップ14a、14cとのそれぞれの先端部にはシールを行わせるためのチップシール13が配設されている。
なお、前記各鏡板10b、12b、14bの面と駆動軸22が垂直の関係となるように、前記各鏡板10b、12b、14b及び駆動軸22は設けられている。
【0029】
旋回スクロール14の旋回ラップ14aは、固定スクロール10の固定ラップ10aと所定角度ずらして重なり合うように配設され、固定スクロール10の固定ラップ10aと旋回スクロール14の旋回ラップ14aとの間には圧縮室18aが形成されている。
同様に、旋回スクロール14の旋回ラップ14cは、固定スクロール12の固定ラップ12aと所定角度ずらして重なり合うように配設され、固定スクロール12の固定ラップ12aと旋回スクロール14の旋回ラップ14cとの間には圧縮室18bが形成されている。
【0030】
また、駆動軸22の圧縮室8側の先端部には旋回円盤24が取り付けられている。旋回円盤24は、固定スクロール10の鏡板10bと平行に設けられており、その中心部に駆動軸22の先端が取り付けられている。
【0031】
旋回円盤24の駆動軸22が取り付けられた面と反対側の面には棒状のボス26が取り付けられている。ボス26は、駆動軸22の軸方向と同方向に旋回円盤24に一端が取り付けられており、他端は固定スクロール10の鏡板10aに設けられた貫通部10cを貫通して旋回スクロール14の鏡板14bに取り付けられている。
【0032】
また、駆動軸22は、その一端を形成する偏心軸22aが旋回円盤24に取り付けられている。さらに、旋回円盤24に作用する偏心軸回りの自転を阻止して公転旋回を規制する自転防止機構として、旋回円盤24に設けた転がり軸受31と圧縮機ケーシング2に設けた転がり軸受32で支えられるピンクランク軸33とを1組として、円周上に等間隔で3組配置されるピンクランク機構30が設けられている。
【0033】
そして、圧縮部8では、モータ25の駆動によって駆動軸22を回転駆動することにより、駆動軸22に接続された旋回円盤24及びボス26を介して旋回スクロール14を固定スクロール10及び12に対して所望の旋回半径で旋回運動させる。これにより、圧縮部18に外周側の空気導入口28から吸い込んだ被圧縮物(空気等)を順次圧縮し、吐出口29より圧縮空気の供給先に連絡するように構成されている。
【0034】
さらに、固定スクロール10の背面と、該背面と対向する旋回円盤24の面とを接続するようにベローズ40が設けられている。ベローズ40は、固定スクロール10と旋回円盤24の間でボス26の周方向全周を取り囲むように設けられている。
【0035】
実施例1によれば、旋回円盤24を設けることにより、駆動軸22によって旋回円盤24を旋回させ、該旋回円盤24にボス26を介して固定された旋回スクロール14が旋回する。従って、駆動軸22の駆動によって直接旋回させる旋回円盤24にピンクランク機構を設ければよい。従って、旋回円盤24は圧縮部8外に位置するため、ピンクランク機構を圧縮部8内に設ける必要がなく、圧縮部8内部にピンクランク機構に係るベアリングを設ける必要がない。そのため、圧縮部8内にベアリングが存在することに起因する従来の課題であった、ベアリンググリスへの異物付着や腐食性ガスによるグリスの劣化、ベアリングの破損の可能性、ベアリングへのグリス補充時の分解作業に係る膨大な時間と手間、ベアリングの潤滑にグリスを用いたりベアリングとしてドライベアリングを用いることによる高コスト化が生じない。
さらに、圧縮部8の外周側にピンクランク機構を設ける必要がないため、圧縮部8をコンパクト化し、如いてはスクロール流体機械全体のコンパクト化が可能となる。
【0036】
また、ベローズ40を設けることで、圧縮部8の軸方向のシールがチップシールを用いることなく可能となる。さらに、ベローズ40は、棒状のボス26の周囲を取り囲めばよいだけなので、ベローズの径を小さく抑えることができる。これにより、ベローズ40の長寿命化が可能であり、如いてはスクロール流体機械1の長時間運転が可能となる。
【0037】
さらに、本実施例のようにダブルラップ式のスクロール流体機械であっても、旋回スクロールをボスによって支持しているため、チップシール13が磨り減っても旋回スクロール14と固定スクロール10、12間の間隔を保持することができる。これにより、旋回スクロール14と固定スクロール10、12の接触を防止することができる。
【0038】
さらに、ボス26内に、外部と圧縮室18a、18b内を接続する貫通路(不図示)を設けると、該貫通路を介して空気や冷却液を導入することで圧縮室内を容易に冷却することができる。
この場合、前記ボス26内に2つの貫通路を設け、一方を前記空気や冷却液等の流体の導入口、他方を前記流体の排出口とすると、前記圧縮室内に連続的に前記流体を導入・排出することができ好ましい。
【実施例2】
【0039】
図2は、実施例2に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
図2において、図1と同一の符号は同一の物を表しその説明を省略する。
【0040】
図2においては、図1に示したベローズ40に代えて、ベローズ42が設けられている。ベローズ42は、固定スクロール10の裏面(旋回円盤24と対向する面)と、ボス26とを接続しており、ボス26の全周に渡って設けられている。ベローズ42を図2に示したように設けることによっても、圧縮部8の軸方向のシールが可能である。
【0041】
実施例2によれば、実施例1と同様の効果に加えて、固定スクロール10と旋回円盤24との距離を短くすることができ、スクロール流体機械1全体のコンパクト化に寄与できる。
【実施例3】
【0042】
図3は、実施例3に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
図3において、図1又は図2と同一の符号は同一の物を表しその説明を省略する。
【0043】
図3においては、図1に示したベローズ40や図2に示したベローズ42が設けられていない。
一方、旋回円盤24の固定スクロール10と対向する面には、リング状の突起部24aが設けられている。突起部24aは、ボス26を取り囲むように設けられており、その先端は固定スクロール10の旋回円盤と対向する面に接触しており、旋回円盤24の旋回時に先端が固定スクロール10の面上を摺動するように構成されている。これにより、突起部24aにより圧縮部8の軸方向のシールが可能となる。
【0044】
実施例3によれば、実施例1と同様の効果に加えて、ベローズが不要であるため簡単な構造で本発明の実施が可能となる。
【実施例4】
【0045】
図4は、実施例4に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
図4において、図1〜図3と同一の符号は同一の物を表しその説明を省略する。
【0046】
図4においては、固定スクロール10の旋回円盤24側の面にも、鏡板10bの表面に立設され、鏡板10bの中心が巻き始め端となり、外周側が巻き終わり端となった渦巻状の固定ラップ10dが設けられている。
また、旋回円盤24の固定スクロール10側の面には、旋回円盤24の表面に立設され、旋回円盤24の中心が巻き始め端となり、外周側が巻き終わり端となった渦巻状の旋回ラップ24bが設けられている。
【0047】
旋回円盤24の旋回ラップ24bは、固定スクロール10の固定ラップ10dと所定角度ずらして重なり合うように配設され、固定スクロール10の固定ラップ10dと旋回円盤24の旋回ラップ24bとの間には圧縮室18cが形成されている。
【0048】
さらに、固定スクロール10の背面と、該面と対向する旋回円盤24の面とを接続するようにベローズ44が設けられている。ベローズ44は、軸方向のシール用として、固定スクロール10と旋回円盤24の間で、最外周側の固定ラップ10d及び旋回ラップ24dの周方向全周を取り囲むように設けられている。
【0049】
実施例4によれば、実施例1と同様の効果に加えて、圧縮室18a、18b、18cと3つの圧縮室が設けられているため、高い圧縮能力を発揮することができる。
【実施例5】
【0050】
図5は、実施例5に係るスクロール流体機械の一部断面で示した側面図である。
図5において、図4と同一の符号は同一の物を表しその説明を省略する。
図5においては、ベローズ44が設けられていないこと以外は図4と同様の構成である。
【0051】
この場合においても、圧縮室18cでは、前述したように中心付近で圧力が最も高くなる。そのため、圧縮室18a及び18bからのガスが外部に漏れないように圧縮室18がシールの役目を果たす、即ち自己加圧パージ型の構成となる。
【0052】
実施例5の構成によれば、実施例4の効果に加え、ベローズが不要である分だけスクロール流体機械1の構造が簡単になる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
真空室内部にピンクランク機構が存在しないために真空室内にベアリングを設ける必要がなく、さらにチップシールと称される樹脂材によって軸方向をシールする必要がないために連続運転時間を長時間化することができるスクロール圧縮機として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 スクロール流体機械
10、12 固定スクロール
14 旋回スクロール
18a、18b 圧縮室
18c 圧縮室(第2の圧縮室)
22 駆動軸
24 旋回円盤(旋回板)
24a 突起部
26 ボス(棒状部材)
30 ピンクランク機構
42、44、46 ベローズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に旋回可能に支持されている鏡板上に旋回ラップを立設した旋回スクロールと、前記旋回スクロールと対向して設けられ鏡板上に固定ラップを立設した固定スクロールとを有し、前記旋回ラップと固定ラップとを重ね合わせて前記旋回スクロールを旋回させることで流体を圧縮する圧縮室を形成するスクロール流体機械において、
前記旋回スクロールの鏡板に取り付けられるとともに、前記固定スクロールの前記旋回スクロールと対向しない裏面側に延設された棒状部材と、
該棒状部材に取り付けられるとともにピンクランク機構が設けられ、前記駆動軸に旋回可能に支持された旋回板と、を有し、
前記旋回板に、前記圧縮室の軸方向のシールを行うシール手段を設けたことを特徴とするスクロール流体機械。
【請求項2】
前記シール手段は、前記固定スクロールの裏面側と前記旋回板との間に設けられたベローズであって、
該ベローズは、固定スクロールの裏面側と旋回板との間の空間において、前記棒状部材の外周側を取り囲んで設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール流体機械。
【請求項3】
前記シール手段は、前記固定スクロールの裏面側と前記棒状部材との間に設けられたベローズであって、
該ベローズは、固定スクロールの裏面側と旋回板との間の空間において、一端は前記棒状部材の外周側全周に渡って前記棒状部材に取り付けられているとともに、他端は前記棒状部材の外周側を取り囲んで前記固定スクロールの裏面側に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール流体機械。
【請求項4】
前記シール手段は、前記旋回板の前記固定スクロールの裏面側と対向する面に設けたリング状の突起物を有し、
該突起物は、その先端が前記固定スクロールの裏面側に摺動可能に接触しているとともに、
前記ボスの外周側を取り囲んで設けられていることを特徴とする請求項1記載のスクロール流体機械。
【請求項5】
前記シール手段は、
前記固定スクロールの裏面上に第2の固定ラップを立設するとともに、前記固定スクロールの裏面側と対向する前記旋回板の面に第2の旋回ラップを立設し、前記第2の旋回ラップと第2の固定ラップとを重ね合わせて前記旋回スクロールを旋回させることで流体を圧縮する第2の圧縮室であることを特徴とする請求項1記載のスクロール流体機械。
【請求項6】
前記棒状部材に、外部と前記圧縮室内を連通する連通路を設け、
該連通路により、外部より圧縮室内へ冷却用流体を導入可能としたことを特徴とする請求項1〜5何れかに記載のスクロール流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145015(P2012−145015A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3323(P2011−3323)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】