説明

スタータヘッドシャフトの製造方法

【課題】 加熱処理により発生する機械的残留応力を除去する。
【解決手段】 本発明は、前方領域T1と、第1中間領域T2と、スタータ用のショルダ面2が設けられている第2中間領域T3とを備えている剛質のスタータヘッドシャフト10の製造方法であって、a)3つの領域を機械加工し、b)第1中間領域T2の外側ねじ切り部(16)を形成し、c)スタータヘッドシャフト10の少なくとも一方の端部を表面加熱する処理を含んでいる。本発明は、加熱処理により発生する機械的残留応力を低下させるために、加熱処理前の追加的な処理を含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のスタータヘッドシャフトの製造方法に関する。
【0002】
より詳しく言うと、本発明は、スタータヘッドを備えるスタータのスタータヘッドシャフトに関する。スタータヘッドは、スタータヘッドシャフト上で、後方の自由位置と前方の作動位置との間を軸方向にスライドするように取り付けられたスタータヘッドピニオンを備えており、かつ、ボディと、スタータヘッドシャフト上をスライドするように取り付けられ、内側ねじ切り部を有するスリーブとを有している。内側ねじ切り部は、スタータヘッドシャフトの外側ねじ切り部と協動するようになっている。また、スタータヘッドシャフトの一方の軸方向である軸方向の後方の自由位置へ向かうスタータヘッドピニオンの軸方向の移動を制限する停止手段が設けられている。
【0003】
剛質のスタータヘッドシャフトは、スタータヘッドが軸方向に移動する少なくとも1つの軸方向の前方領域と、スタータヘッドの相補的な内側ねじ切り部と協動する外側ねじ切り部を備える軸方向の第1中間領域と、スタータヘッドの後方軸方向の自由位置を設定し、前方を向き、かつ径方向に伸びる少なくとも1つの環状のショルダ面を備える軸方向の第2中間領域とを、その順に備えている。
【0004】
スタータヘッドは、例えば平坦で径方向に延びる環状の停止面と直接的に協動するか、停止面に対して、軸方向後方に保持されたリング、または停止ワッシャを介して、間接的に協動する。リングまたは停止ワッシャは、スタータヘッドシャフトの内側溝に嵌合するようになっている。
【0005】
また、スタータヘッドシャフトは、軸方向後方へ延び、スタータの電気モータのロータシャフトとなっている。
【背景技術】
【0006】
上述したようなスタータヘッドシャフトの製造方法は、次の処理を含んでいる。
−自動旋盤の切削工具により、スタータヘッドシャフトを機械加工して、粗面とする。
−冷却変形により、ロータシャフトに、螺旋状の外側ねじ切り部と、ロータのアーマチャの薄板金層を保持するナーリング部とを形成する。
−後段の加熱処理に影響を及ぼさないように、スタータヘッドシャフトを洗浄して、切削油及び潤滑油を除去する。
−プログラムのパラメータに基づいて、所定の深さまで、表面層を局部的に高周波表面硬化加熱処理し、スタータヘッドシャフトの機械的特性を変更して、最適なものとする。スタータヘッドシャフトは、例えば、垂直位置に保持され、スタータヘッドシャフトに沿って軸方向に移動するインダクタに対して、スタータヘッドシャフトを回転させることにより、「移動しながら」表面焼き戻し処理が行われる。(変形として、スタータヘッドシャフトに対して軸方向に静止した「フォーム」インダクタにより、加熱処理を行ってもよい)。
−スタータヘッドシャフトの両端を保持し、局部的に圧力を加え、2点間を弾性変形させる歪み取り処理を行う。
−加熱処理中に、スタータヘッドシャフトの円筒状の表面に発生したスケール層を除去する剥離処理を行い、表面を剛質及び最終的な寸法とし、かつ、円形形状、同心円形状のような所定の形状とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような製造方法によると、2つの原因により、残留応力が発生する。
【0008】
加熱処理の前段の処理による機械的応力と、表面硬化加熱処理による熱的応力とによってである。
【0009】
残留応力は、低炭素鋼の炭素含有率が0.38%〜0.55%、好ましくは0.45%〜0.51%である、スタータヘッドシャフトの領域の材料の機械的特性を超えると、高周波表面硬化処理された表面にクラックを生じる程の大きさとなる。
【0010】
特に、前方を向き、スタータヘッドの直接的または間接的な停止面となる環状の径方向面であるショルダ面において、円形のクラックが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、スタータヘッドを軸方向に滑らせる少なくとも1つの軸方向の前方領域と、スタータヘッドの相補的な内側ねじ切り部と協動する外側ねじ切り部を備える軸方向の第1中間領域と、スタータヘッドの後方軸方向の自由位置を設定するために、後方停止面をなし、かつ前方を向く少なくとも1つの環状のショルダ面を有する軸方向の第2中間領域とを備えている剛質のスタータヘッドシャフトの製造方法であって、−a)前方領域、第1中間領域及び第2中間領域を機械加工し、−b)第1中間領域の外側ねじ切り部を形成し、−c)スタータヘッドシャフトの少なくとも前部を表面加熱する処理を、連続的に含んでおり、かつ、加熱処理の前処理である機械加工処理により発生する機械的残留応力を低下させるために、加熱処理前に追加的な処理を含むことを特徴とする製造方法である。
【0012】
本発明の他の特徴は、次の通りである。
−前記追加的な処理は、スタータヘッドシャフトの少なくとも軸方向を向く部分を焼き戻しする処理である。
−スタータヘッドシャフトの少なくとも軸方向を向く部分を焼き戻しする追加的な処理は、前記軸方向を向く部分に沿った高周波表面加熱処理である。
−高周波表面加熱による追加的な焼き戻し処理は、インダクタがスタータヘッドシャフトの前記軸方向を向く部分に対して軸方向に静止している加熱期間を含んでいる。
−静止加熱期間は、0.5秒〜15秒である。
−静止加熱期間は、1.9秒〜2.3秒であり、2.1秒であるのが好ましい。
−インダクタの軸方向長さは、スタータヘッドシャフトの前記軸方向を向く部分の軸方向長さと等しい。
−インダクタの軸方向長さは、スタータヘッドシャフトの前記軸方向を向く部分の軸方向の長さ以下であり、インダクタは、スタータヘッドシャフトに対して、軸方向と平行に移動する。
−スタータヘッドシャフトに対するインダクタの軸方向平行移動の相対速度は、100mm/分〜700mm/分である。
−スタータヘッドシャフトに対するインダクタの軸方向平行移動の相対速度は、450mm/分〜550mm/分であり、好ましくは500mm/分である。
−高周波加熱電力は、10kW以下である。
−高周波加熱電力は、4.5kW〜7kWである。
−スタータヘッドシャフトは、インダクタに対して、200回転/分以下の回転速度で回転する。
−インダクタの内部形状は、前記スタータヘッドシャフトの外部形状と相補的となっている。
−ある実施例によれば、スタータヘッドシャフトの少なくとも軸方向を向く部分を焼き戻しする前記追加的な処理は、スタータヘッドシャフトを加熱炉内で加熱する処理である。
−加熱温度は、500℃〜700℃である。
−加熱温度は、540℃〜560℃であり、550℃であるのが好ましい。
−スタータヘッドシャフトの加熱処理時間は、30分〜120分である。
−スタータヘッドシャフトの加熱処理時間は、55分〜65分であり、60分であるのが好ましい。
−加熱炉内でのスタータヘッドシャフトの加熱処理は、恒温加熱処理である。
−加熱炉内でのスタータヘッドシャフトの加熱処理後に、外気温度に徐々に冷却する処理を行う。
−スタータヘッドシャフトの少なくとも軸方向を向く前部及び後部の表面加熱処理である前記処理c)は、高周波表面硬化処理である。
−前記追加的な処理である高周波による表面加熱処理及び表面硬化処理は、同一の高周波加熱手段により行われる。
−製造方法は、表面加熱処理後に、スタータヘッドシャフトの少なくとも前部に対する機械的歪み取り処理を含んでいる。
−製造方法は、スタータヘッドシャフトの少なくとも前部に対する表面加熱処理に続いて、スタータヘッドシャフトの表面の所定の部分を平坦とする剥離処理を含んでいる。
−スタータヘッドシャフトの第2中間領域にあり、前方を向く前記環状のショルダ面は、スタータヘッドの所定の軸方向位置を設定する弾性の停止リングが嵌合される内側溝の一部を構成している。
−スタータヘッドシャフトは、前記第2中間領域を軸方向に越えて延び、スタータの電気モータのロータシャフトをなす後方領域を有している。
−ロータシャフトは、冷却変形により形成されたナーリング部を備えており、機械的残留応力を低下させる前記追加的な処理は、冷却変形によるロータシャフトのナーリング部の形成後に行われる。
【0013】
本発明のその他の特徴及び利点は、図面を用いて行う詳細な説明から明らかになると思う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下の説明及び特許請求の範囲において、図面の左側を前方、右側を後方と非限定的に定める。
【0015】
図1は、軸線X−Xを有し、前方から後方へ延びる円筒状のスタータシャフトであるスタータヘッドシャフト10を示している。
【0016】
公知のように、本実施例において、スタータヘッドシャフト10は、前方から後方へ向かって順に、ハウジングまたはスタータの端部に取り付けられた前部軸受(図示しない)内で、スタータヘッドシャフト10を回転案内するための滑らかな前方軸端部12、スタータのスタータヘッド(図示しない)を滑り案内するための滑らかな滑り案内部14、及び、スタータヘッドシャフト10にスタータヘッドを回転連結させるために、スタータヘッドの内側ねじ切り部(図示しない)と協動する螺旋状の外側ねじ切り部16を備えている。
【0017】
内側溝18には、軸方向を向くストップリング(図示しない)が嵌合され、スタータヘッドの軸方向の自由な後方位置が設定される。
【0018】
前方軸端部12、滑り案内部14、外側ねじ切り部16、及び内側溝18は、スタータヘッドシャフト10を構成している。スタータヘッドシャフト10は、ナーリング部20により、軸線方向X−Xの後方へ延びている。ナーリング部20は、スタータの電気モータのアーマチャに設けられた薄板金層(図示しない)と係合するようになっている。
【0019】
スタータヘッドシャフト10は、前方軸端部12と同様に、スタータの後部軸受内で、スタータヘッドシャフト10を回転案内する滑らかな後方軸端部21を備えている。
【0020】
本発明では、図1に示すように、滑り案内部14の長さと対応する軸方向の前方領域T1、外側ねじ切り部16を含む軸方向の第1中間領域T2、軸方向の第2中間領域T3、スタータヘッドシャフト10を、第2中間軸方向領域T3を越えて延ばし、おおむねナーリング部20の長さと対応する軸方向の後方領域T4を定めてある。
【0021】
図3からわかるように、第2中間軸方向領域T3に含まれる内側溝18の後端は、前方を向いた径方向面であるショルダ面22により区切られている。ショルダ面22は、第2中間領域T3において、外径D1が、例えば13mmである円筒面24まで、径方向外周側へ延びている。
【0022】
また、内側溝18の前端は、後方を向く径方向面26により区切られている。径方向面26は、ショルダ面22の外径D1の小径部まで延びている。
【0023】
公知のように、スタータヘッドシャフトは、まず、「未加工」の鋼または鋼片を自動旋盤加工して、図2に示すように、粗面に加工される。図1のシャフトと比べると、図2のシャフトには、外側ねじ切り部16と、後方軸方向領域T4のナーリング部20とは形成されていない。
【0024】
円筒状の剛片は、自動旋盤の切削工具により切削される。この処理により、スタータヘッドシャフト10の面、特に、ストップリングが嵌合する内側溝18の後方にあり、前方を向くショルダ面22(図3参照)に残留応力が発生する。この残留応力は、数ミクロンの深さで存在する。
【0025】
外側ねじ切り部16及びナーリング部20は、冷却変形により、または、材料を除去する種々の方法により形成される。
【0026】
例えば、フランス国特許第2,745,855号で公知のように、螺旋状の外側ねじ切り部16は、その形状により、スタータヘッドの前方軸方向停止機能を発揮している。ナーリング部20の形状は、シャフトの対応する長さの仕上げ面に対して、圧力をかけてラックを通過させ、冷却変形させることにより得られる。
【0027】
この処理により、さらに数ミリメートルの深さにわたって残留応力が発生する。また、円筒状のナールドホイールを用いたり、材料を除去することにより、ナーリング部20の形状を得ることができる。
【0028】
次に、洗浄処理を行う。この処理により、スタータヘッドシャフト10が洗浄され、次の熱処理に影響しないように、切削油や潤滑剤が取り除かれる。
【0029】
本発明によるスタータヘッドシャフト10の製造方法は、機械的な加工処理から発生し、外観上、許容できないクラックを発生させる残留応力を緩和する追加的な焼き戻し処理を含んでいる。
【0030】
本発明による緩和または「抑留」焼き戻し処理により、部材の機械的残留応力は、許容しうる程度まで低下されるか、または除去されて、次に続く公知の製造処理へ移る。
【0031】
燃焼室のような加熱装置または高周波加熱装置を用いて、緩和焼き戻し処理を行うことができる。
【0032】
加熱装置を用いる場合、緩和焼き戻し処理は、部材全体に対して行われる。
【0033】
残留応力は、次の処理を行うことにより、減少させられる。
−スタータヘッドシャフト10全体を、ボディの微細構造が変形しないように、500℃〜700℃の範囲、好ましくは550℃±10℃の範囲に加熱する。
−上述した加熱温度で、30分から120分、好ましくは60分間、恒温加熱する。加熱時間は、緩和加熱サイクルのために、加熱装置に設けられた部材に依存している。
−外気または加熱装置内で、漸進的に冷却する。
【0034】
高周波加熱装置による表面または両面加熱の場合、スタータヘッドシャフト10全体を、高周波緩和焼き戻し処理することにより、または追加的な処理である残留応力の高周波緩和焼き戻し処理期間を短縮するスタータヘッドシャフト10の一部、好ましくは図1に示す第2中間軸方向領域T3を緩和焼き戻し処理することにより、微細構造を変形させずに、残留応力を低下させることができる。
【0035】
この方法は、製造サイクルに組み込み可能であるとともに、公知の製造方法で用いられている高周波表面硬化加熱処理装置により行うことができる。この周波数は、400kHz以下であり、320kHz〜360kHzであるのが好ましい。
【0036】
この処理を行うために、図3に示すような環状のインダクタ30が設けられている。インダクタ30の軸方向の有効加熱長Lは、例えば5mmである。また、内径D2の側にある凹状の円筒面32と凸状の円筒面24との間に、1mm〜3mm、好ましくは2.5mmの径方向のクリアランスまたはエアギャップがある。
【0037】
インダクタ30及びスタータヘッドシャフト10は、「固定された」相対的軸方向位置に設けられている。そのため、加熱領域は、図3に示すように、内側溝18のショルダ面22と対応している。
【0038】
スタータヘッドシャフト10に対するインダクタ30の軸方向の相対的位置は、静止した加温または加熱のために、0.5秒〜15秒、好ましくは2.1秒だけ「固定」される。その間、インダクタ30には、10kWまたはそれ以下の電力、好ましくは4.5kW〜7kWの電力が供給される。
【0039】
この静止加熱段階において、スタータヘッドシャフト10は、200回転/分以下の速度で、回転軸である軸線X−Xの周りを回転駆動させられる。
【0040】
次に、インダクタ30は、スタータヘッドシャフト10に沿って、図3の矢示方向Fの軸線方向前方へ、100mm〜700mm/分、好ましくは500mm/分で移動し、第2中間領域T3に沿って、ショルダ面22から、前方へ向かって種々の領域を連続的に通過する。
【0041】
インダクタ30の移動速度は、インダクタ30により供給される電力に依存している。
【0042】
インダクタ30が移動している間、すなわち、スタータヘッドシャフト10に沿ってインダクタ30が相対運動している間、スタータヘッドシャフト10は、上述したように回転駆動され、また、インダクタ30の電力は、10kWまたはそれ以下の電力、好ましくは4.5kW〜7kWとされるのが好ましい。
【0043】
変形例によれば、インダクタ30として、有効加熱長Lが、焼き戻しされる全領域、例えば第2中間軸方向領域T3を「覆う」のに十分であるインダクタを用いることができる。この場合、1回の静止加熱により、緩和焼き戻しが行われる。
【0044】
また、インダクタ30を、焼き戻しされるスタータヘッドシャフト10の形状と相補的な形状、または内部形状を有するインダクタとすることができる。
【0045】
本発明による緩和焼き戻し処理後、図1に示すスタータヘッドシャフト10の軸方向の前方部P1及び後方部P2は、公知のように高周波面加熱処理される。
【0046】
上述したように、この処理は、所定の深さまでの表面層に対する硬化加熱処理である。
【0047】
スタータヘッドシャフト10の後方部P2に対する表面硬化処理を、本発明による緩和焼き戻し処理で用いられる高周波加熱装置で行うことができる。
【0048】
局部的な硬化加熱処理により、材料内に熱的残留応力が発生するが、この処理が正しく行われると、全残留応力は、上述した機械的残留応力の場合にクラックを発生させるのに十分な程度には大きくならない。
【0049】
高周波表面硬化焼き戻しを、「移動しながら」または成形インダクタにより行うことができる。
【0050】
この方法は、スタータヘッドシャフト10の両端部が保持され、局部的に圧力が加えられ、2点間が弾性的に変形される歪み取り処理と、スタータヘッドシャフト10の前方軸端部12及びショルダ面22に、加熱処理中に形成されたスケール層を除去する剥離処理を含んでいる。
【0051】
本発明は、機械的残留応力の緩和、または解除が望まれるシャフトのいかなる部分にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明により形成された自動車のスタータヘッドシャフトの正面図である。
【図2】自動旋盤処理後の図1に示すスタータヘッドシャフトの正面図である。
【図3】図1に示すスタータヘッドシャフトの第2中間領域T3の拡大断側面図であり、本発明による追加的な焼き戻し処理を行う高周波加熱手段を示している。
【符号の説明】
【0053】
10 スタータヘッドシャフト
12 前方軸端部
14 滑り案内部
16 外側ねじ切り部
18 内側溝
20 ナーリング部
21 後方軸端部
22 ショルダ面
24 円筒面
26 径方向面
30 インダクタ
32 円筒面
P1 前部
P2 後部
T1 前方領域
T2 第1中間領域
T3 第2中間領域
T4 後方領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタータヘッドを軸方向に滑らせる少なくとも1つの軸方向の前方領域(T1)と、スタータヘッドの相補的な内側ねじ切り部と協動する外側ねじ切り部(16)を備える軸方向の第1中間領域(T2)と、スタータヘッドの所定の軸方向位置を設定するために、後方停止面をなし、かつ前方を向く少なくとも1つの環状のショルダ面(22)を有する軸方向の第2中間領域(T3)とを備えている剛質のスタータヘッドシャフト(10)の製造方法であって、
−a)前方領域(T1)、第1中間領域(T2)及び第2中間領域(T3)を機械加工し、
−b)第1中間領域(T2)の外側ねじ切り部(16)を形成し、
−c)スタータヘッドシャフト(10)の少なくとも前部(P1)を表面加熱する処理を、連続的に含んでおり、かつ、
加熱処理の前処理により発生する機械的残留応力を低下させるために、加熱処理前の追加的な処理を含んでいることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記追加的な処理は、スタータヘッドシャフト(10)の少なくとも軸方向を向く部分(18−22)、及び第2中間領域(T3)を焼き戻しする処理であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
スタータヘッドシャフト(10)の少なくとも軸方向を向く部分(18−22)及び第2中間軸方向領域(T3)を焼き戻しする追加的な処理は、前記軸方向を向く部分(18−22)及び第2中間軸方向領域(T3)に沿う高周波表面加熱処理であることを特徴とする、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
高周波表面加熱による追加的な焼き戻し処理は、インダクタがスタータヘッドシャフト(10)の前記軸方向を向く部分に対して、軸方向に静止している加熱期間を含んでいる、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
静止加熱期間は、0.5秒〜15秒であることを特徴とする、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
インダクタ(30)の軸方向長さ(L)は、スタータヘッドシャフト(10)の前記軸方向を向く部分の軸方向長さと等しいことを特徴とする、請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
インダクタ(30)の軸方向長さ(L)は、スタータヘッドシャフト(10)の前記軸方向を向く部分の軸方向長さ以下であり、インダクタ(30)は、スタータヘッドシャフト(10)に対して、軸方向に平行移動するようになっていることを特徴とする、請求項3記載の製造方法。
【請求項8】
スタータヘッドシャフト(10)に対するインダクタ(30)の軸方向平行移動の相対速度は、100mm/分〜700mm/分であることを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
高周波加熱電力は、10kW以下であることを特徴とする、請求項3記載の製造方法。
【請求項10】
スタータヘッドシャフト(10)は、インダクタ(30)に対して、200回転/分以下の回転速度で回転するようになっている、請求項3記載の製造方法。
【請求項11】
インダクタ(30)の内部形状は、前記スタータヘッドシャフト(10)の外部形状と相補的となっていることを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項12】
スタータヘッドシャフト(10)の少なくとも軸方向を向く部分(18−22)及び第2中間軸方向領域(T3)を焼き戻しする前記追加的な処理は、スタータヘッドシャフト(10)を加熱炉内で加熱する処理であることを特徴とする、請求項2記載の製造方法。
【請求項13】
加熱温度は、500℃〜700℃であることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
スタータヘッドシャフト(10)の加熱処理時間は、30分〜120分であることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項15】
加熱炉内でのスタータヘッドシャフト(10)の加熱処理は、恒温加熱処理であることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項16】
加熱炉内でのスタータヘッドシャフト(10)の加熱処理後に、外気温度で徐々に冷却する処理を行うことを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項17】
スタータヘッドシャフト(10)の少なくとも軸方向を向く前部(P1)及び後部(P2)の表面加熱処理である前記処理c)は、高周波表面硬化処理であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項18】
前記追加的な処理である高周波による表面加熱処理及び表面硬化処理を、同一の高周波加熱手段により行うことを特徴とする、請求項3と組み合わせた請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
製造方法は、表面加熱処理後に、スタータヘッドシャフト(10)の少なくとも前部(P1)に対する機械的歪み取り処理を含むことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項20】
製造方法は、スタータヘッドシャフト(10)の少なくとも前部(P1)及び後部(P2)に対する表面加熱処理に続いて、スタータヘッドシャフト(10)の表面の所定の部分(12)(21)を平坦とする剥離処理を含むことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項21】
スタータヘッドシャフト(10)の第2中間領域(T3)にあり、前方を向く前記環状のショルダ面(22)は、スタータヘッド(10)の前記所定の軸方向位置を設定する弾性の停止リングが嵌合される内側溝(18)の一部を構成していることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項22】
スタータヘッドシャフト(10)は、前記第2中間領域(T3)を軸方向に越えて延び、スタータの電気モータのロータシャフトをなす軸方向の後方領域(T4)を有していることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項23】
ロータシャフトは、冷却変形により形成されたナーリング部(20)を、後方領域(T4)に備えており、機械的残留応力を低下させる前記追加的な処理を、冷却変形によるロータシャフト(10)のナーリング部(20)の形成処理後に行うことを特徴とする、請求項22記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−538155(P2007−538155A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517339(P2007−517339)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001258
【国際公開番号】WO2005/113841
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(504356166)ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール (47)
【Fターム(参考)】