説明

ステアリングサポートビーム及びインストルメントパネル取付構造体

【課題】 取付用ブラケットを精度高くかつ容易に位置決め固定できると共に、溶接施工性を向上することができ、軽量で低コストのステアリングサポートビームを提供する。
【解決手段】 この発明のステアリングサポートビーム1は、筒状のサポートビーム本体2に複数個の取付用ブラケット10、13、20、23、26の嵌合部が外嵌めされて固着され、前記複数個の取付用ブラケットのうち少なくとも1つの取付用ブラケット20の嵌合部が、他の取付用ブラケット10の嵌合部との間に、前記サポートビーム本体2に外嵌めされたアウターパイプ3を介して配置されることによって位置決めされてサポートビーム本体2に固着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車体の左右間に架設されるステアリングサポートビームに関する。
【0002】
なお、この明細書において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
自動車の前部のインストルメントパネルの内部には、車体の左右のフロントピラー間にステアリングサポートビームが架設されている。このようなステアリングサポートビームが配置されることによって、側面からの衝突等による衝撃に対して十分な剛性、強度が確保される。このステアリングサポートビームに複数の取付用ブラケットが溶接固定され、これら取付用ブラケットにそれぞれ各種車載部品が取付固定される。
【0004】
前記取付用ブラケットをステアリングサポートビームに溶接するに際しては、溶接用治具を用いることによって取付用ブラケットを精度良く位置決めして溶接することが行われているが、複数の取付用ブラケットを位置決めするためには溶接用治具の構造が複雑化してしまい、これにより溶接施工性が悪くなるという問題があった。また、入力が大きいステー類が取り付けられるブラケットが、ステアリングサポートビームに溶接されている場合には、応力集中しないように継手形状や溶接品質に十分な注意を払わなければならなかった。
【0005】
取付用ブラケットの位置決めを容易化する技術としては、サポートビーム本体に対してその長手方向に延ばされたフランジや内嵌め用溝を設け、このフランジや内嵌め用溝に取付用ブラケットを固定する手法が知られている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平5−238421号公報(請求項1、請求項3、図1、図7)
【特許文献2】特表2004−501024号公報(請求項1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の技術では、取付用ブラケットの位置決めは容易化されるものの、溶接時にフランジや内嵌め用溝の存在によって溶接施工性が悪くなるという問題があった。また、ステアリングサポートビームの長手方向に沿ってフランジが形成されているので、重量増となって軽量化を図るのが困難であるし、コストも増大する。また、ステアリングサポートビームの長手方向に沿って内嵌め用溝を形成した構成では、内嵌め用溝を形成するためにビーム自体を厚肉にしなければならず、このために重量増となって軽量化を図るのが困難であるし、コストも増大する。
【0007】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、取付用ブラケットを精度高くかつ容易に位置決め固定できると共に、溶接施工性を向上することができ、軽量で低コストのステアリングサポートビームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]筒状のサポートビーム本体に複数個の取付用ブラケットの嵌合部がそれぞれ外嵌めされて固着され、前記複数個の取付用ブラケットのうち少なくとも1つの取付用ブラケットの嵌合部が、他の取付用ブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【0010】
[2]筒状のサポートビーム本体の両端部にそれぞれフロントピラー取付用サイドブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、前記サポートビーム本体の軸線方向の中間部に複数個の車載部品取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、
前記複数個の車載部品取付用ブラケットのうち少なくとも1つの車載部品取付用ブラケットの嵌合部が、前記サイドブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【0011】
[3]筒状のサポートビーム本体の両端部にそれぞれフロントピラー取付用サイドブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、前記サポートビーム本体の軸線方向の中間部にエアバッグユニット取付用ブラケットの嵌合部及びステアリング取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、
前記エアバッグユニット取付用ブラケットの嵌合部は、前記一端側のサイドブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着され、
前記ステアリング取付用ブラケットの嵌合部は、前記他端側のサイドブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【0012】
[4]前記固着が溶接により行われている前項1〜3のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【0013】
[5]前記ブラケットの嵌合部の軸線方向の少なくとも一端側の縁部が周方向に沿って溶接されることによって、前記ブラケットの嵌合部が前記サポートビーム本体に固着されている前項4に記載のステアリングサポートビーム。
【0014】
[6]前記ブラケットの嵌合部に長孔が穿設され、該長孔において前記ブラケットの嵌合部と前記サポートビーム本体とが溶接されている前項4に記載のステアリングサポートビーム。
【0015】
[7]前記長孔が、前記ブラケットの嵌合部に対して軸線方向または周方向に沿って形成されている前項6に記載のステアリングサポートビーム。
【0016】
[8]前記ブラケットの嵌合部の周方向の一部に開口部が設けられ、該開口部において前記ブラケットの嵌合部と前記サポートビーム本体とが溶接されている前項4に記載のステアリングサポートビーム。
【0017】
[9]前記ブラケットの嵌合部の周方向の一部に摩擦撹拌接合部が形成されることによって、前記ブラケットの嵌合部と前記サポートビーム本体とが固着されている前項1〜3のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【0018】
[10]前記サポートビーム本体、前記アウターパイプ及び前記ブラケットのいずれもが押出材からなる前項1〜9のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【0019】
[11]前記サポートビーム本体及び前記アウターパイプは押出材からなり、前記ブラケットは鋳物からなる前項1〜9のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【0020】
[12]前記押出材は、軽金属またはその合金からなる押出材である前項10または11に記載のステアリングサポートビーム。
【0021】
[13]前記押出材は、アルミニウム押出材である前項10または11に記載のステアリングサポートビーム。
【0022】
[14]前記押出材は、合成樹脂押出材である前項10または11に記載のステアリングサポートビーム。
【0023】
[15]前項1〜14のいずれか1項に記載のステアリングサポートビームを用いたインストルメントパネル取付構造体。
【0024】
[16]前項1〜14のいずれか1項に記載のステアリングサポートビームを有する車両。
【発明の効果】
【0025】
[1]の発明では、少なくとも1つの取付用ブラケットの嵌合部が、他の取付用ブラケットの嵌合部との間に、サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされてサポートビーム本体に固着されているから、該取付用ブラケットはサポートビーム本体に対して精度高く位置決めされた状態で固定される。また、アウターパイプを設けるだけで精度高く位置決めすることが可能となるものであり、従来技術のようにサポートビーム本体に対してその長手方向に延ばされたフランジや内嵌め用溝を設けなくて良いから、溶接施工性を向上させることができて生産性を向上できると共に、構造の簡単化及び軽量化を図ることができる。また、アウターパイプにより少なくとも1つの取付用ブラケットの位置決めがなされるので、溶接時に用いられる溶接用治具の構造を簡単化することができ、これにより溶接施工性をさらに向上させることができる。更に、アウターパイプがサポートビーム本体に対して外嵌めされて二重管構造となっているから、ステアリングサポートビームの強度を向上させることができる。
【0026】
[2]の発明では、少なくとも1つの車載部品取付用ブラケットの嵌合部が、前記サイドブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着されているから、該車載部品取付用ブラケットはサポートビーム本体に対して精度高く位置決めされた状態で固定される。また、アウターパイプを設けるだけで精度高く位置決めすることが可能となるものであり、従来技術のようにサポートビーム本体に対してその長手方向に延ばされたフランジや内嵌め用溝を設けなくて良いから、溶接施工性を向上させることができて生産性を向上できると共に、構造の簡単化及び軽量化を図ることができる。また、アウターパイプにより少なくとも1つの車載部品取付用ブラケットの位置決めがなされるので、溶接時に用いられる溶接用治具の構造を簡単化することができ、これにより溶接施工性をさらに向上させることができる。更に、アウターパイプがサポートビーム本体に対して外嵌めされて二重管構造となっているから、ステアリングサポートビームの強度を向上させることができる。
【0027】
[3]の発明では、エアバッグユニット取付用ブラケットの嵌合部は、一端側のサイドブラケットの嵌合部との間に、サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされてサポートビーム本体に固着され、またステアリング取付用ブラケットの嵌合部は、他端側のサイドブラケットの嵌合部との間に、サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされてサポートビーム本体に固着されているから、エアバッグユニット取付用ブラケット、ステアリング取付用ブラケットは、いずれもサポートビーム本体に対して精度高く位置決めされた状態で固定される。また、アウターパイプを設けるだけで精度高く位置決めすることが可能となるものであり、従来技術のようにサポートビーム本体に対してその長手方向に延ばされたフランジや内嵌め用溝を設けなくて良いから、溶接施工性を向上させることができて生産性を向上できると共に、構造の簡単化及び軽量化を図ることができる。また、アウターパイプによりエアバッグユニット取付用ブラケットとステアリング取付用ブラケットの位置決めがなされるので、溶接時に用いられる溶接用治具の構造を簡単化することができ、これにより溶接施工性をさらに向上させることができる。更に、アウターパイプがサポートビーム本体に対して外嵌めされて二重管構造となっているから、ステアリングサポートビームの強度を向上させることができる。
【0028】
[4]の発明では、固着が溶接により行われているから、さらに軽量化を図ることができる。
【0029】
[5]の発明では、ブラケットの嵌合部の軸線方向の少なくとも一端側の縁部が周方向に沿って溶接されているから、ブラケットはサポートビーム本体に対して強固に固着される。
【0030】
[6]の発明では、ブラケットの嵌合部に長孔が穿設され、該長孔においてブラケットの嵌合部とサポートビーム本体とが溶接されているから、ブラケットはサポートビーム本体に対して強固に固着される。
【0031】
[7]の発明では、長孔が、ブラケットの嵌合部に対して軸線方向または周方向に沿って形成されているから、溶接作業性が向上し、これにより生産性を向上できる利点がある。
【0032】
[8]の発明では、ブラケットの嵌合部の周方向の一部に開口部が設けられ、該開口部においてブラケットの嵌合部とサポートビーム本体とが溶接されているから、ブラケットはサポートビーム本体に対して強固に固着される。
【0033】
[9]の発明では、ブラケットの嵌合部とサポートビーム本体とが摩擦撹拌接合により接合されているから、熱歪みによる変形を生じ難いという利点がある。
【0034】
[10]の発明では、サポートビーム本体、アウターパイプ及びブラケットのいずれもが押出材で形成されているから、生産性を向上させることができ、これによりコストを低減することができる。
【0035】
[11]の発明では、サポートビーム本体及びアウターパイプは押出材で形成されているから、生産性を向上させることができ、これによりコストを低減することができる。また、ブラケットは鋳物からなるので、強度をより向上させることができる。
【0036】
[12]の発明では、押出材として、軽金属またはその合金からなる押出材が用いられているから、十分な軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【0037】
[13]の発明では、押出材として、アルミニウム押出材が用いられているから、優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【0038】
[14]の発明では、押出材として、合成樹脂押出材が用いられているから、優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【0039】
[15]の発明では、生産性を向上できると共に、構造の簡略化及び軽量化を図ることができる。
【0040】
[16]の発明では、生産性を向上できると共に、構造の簡略化及び軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
この発明に係るステアリングサポートビーム(1)の一実施形態を図1に示す。本実施形態のステアリングサポートビーム(1)は、自動車の車体の左右のフロントピラー間に配置されてこれらフロントピラーに連結固定される自動車用ステアリングサポートビームである。この図1において、(2)はサポートビーム本体、(3)(4)はアウターパイプ、(10)(13)(20)(23)(26)は取付用ブラケットである。
【0042】
前記サポートビーム本体(2)は、長尺円筒状の押出材からなる。前記アウターパイプ(3)(4)は、前記サポートビーム本体(2)に外嵌め可能な円筒状の押出材からなる(図1、3、6参照)。
【0043】
フロントピラー取付用サイドブラケット(10)は、図1、2に示すように、前記サポートビーム本体(2)に外嵌め可能な円筒状の嵌合部(11)と、該嵌合部(11)の外周面から外方に向けて突設されたリング状の取付部(12)(12)(12)(12)(12)(12)とからなる。また、もう一方のフロントピラー取付用サイドブラケット(13)は、前記フロントピラー取付用サイドブラケット(10)と同一形状、大きさの部材からなる、即ち前記サポートビーム本体(2)に外嵌め可能な円筒状の嵌合部(14)と、該嵌合部(14)の外周面から外方に向けて突設されたリング状の取付部(15)(15)(15)(15)(15)(15)とからなる(図1参照)。
【0044】
また、エアバッグユニット取付用ブラケット(20)は、図1、4に示すように、前記サポートビーム本体(2)に外嵌め可能な円筒状の嵌合部(21)と、該嵌合部(21)の外周面から外方に向けて突設された取付部(22)とからなる。
【0045】
また、ステアリング取付用ブラケット(23)は、図1、5に示すように、前記サポートビーム本体(2)に外嵌め可能な円筒状の嵌合部(24)と、該嵌合部(24)の外周面から外方に向けて突設された取付部(25)とからなる。
【0046】
また、取付用センターブラケット(26)は、図1に示すように、前記サポートビーム本体(2)に外嵌め可能な円筒状の嵌合部(27)と、該嵌合部(27)の外周面から外方に向けて突設された突出部(28)とからなり、該突出部(28)から長尺のセンターステー(29)が延設されている。
【0047】
前記取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)は、いずれも押出材からなる。
【0048】
しかして、前記サポートビーム本体(2)の一端部にフロントピラー取付用サイドブラケット(10)の嵌合部(11)が外嵌めされて溶接により該ビーム本体(2)の一端部に固着されている。前記サイドブラケット(10)の嵌合部(11)に当接してアウターパイプ(3)が配置され、該アウターパイプ(3)に当接してエアバッグユニット取付用ブラケット(20)の嵌合部(21)が配置されている。前記アウターパイプ(3)は前記サポートビーム本体(2)に外嵌めされ、前記エアバッグユニット取付用ブラケット(20)の嵌合部(21)は、前記サポートビーム本体(2)に外嵌めされて溶接により該ビーム本体(2)に固着されている。このように前記エアバッグユニット取付用ブラケット(20)の嵌合部(21)は、前記一端側のサイドブラケット(10)の嵌合部(11)との間に、前記サポートビーム本体(2)に外嵌めされたアウターパイプ(3)を介して配置されることによって精度高く位置決めされた状態で前記サポートビーム本体(2)に固着されている。
【0049】
また、前記サポートビーム本体(2)の他端部にフロントピラー取付用サイドブラケット(13)の嵌合部(14)が外嵌めされて溶接により該ビーム本体(2)の他端部に固着されている。前記サイドブラケット(13)の嵌合部(14)に当接してアウターパイプ(4)が配置され、該アウターパイプ(4)に当接してステアリング取付用ブラケット(23)の嵌合部(24)が配置されている。前記アウターパイプ(4)は前記サポートビーム本体(2)に外嵌めされ、前記ステアリング取付用ブラケット(23)の嵌合部(24)は、前記サポートビーム本体(2)に外嵌めされて溶接により該ビーム本体(2)に固着されている。このように前記ステアリング取付用ブラケット(23)の嵌合部(24)は、前記他端側のサイドブラケット(13)の嵌合部(14)との間に、前記サポートビーム本体(2)に外嵌めされたアウターパイプ(4)を介して配置されることによって精度高く位置決めされた状態で前記サポートビーム本体(2)に固着されている。
【0050】
更に、前記サポートビーム本体(2)における前記エアバッグユニット取付用ブラケット(20)と前記ステアリング取付用ブラケット(23)の間の位置に前記取付用センターブラケット(26)(26)の嵌合部(27)(27)が外嵌めされて溶接により該ビーム本体(2)に固着されている。前記取付用センターブラケット(26)の突出部(28)から長尺のセンターステー(29)が延設されている。
【0051】
前記一対のセンターステー(29)(29)は、いずれもその下端部が車室底部に固定される。また、前記一端側のフロントピラー取付用サイドブラケット(10)は、その取付部(12)(12)(12)(12)(12)(12)の各孔にボルト等の固着手段が挿通されて車体のフロントピラーに固定され、更に他端側のフロントピラー取付用サイドブラケット(13)も、その取付部(15)(15)(15)(15)(15)(15)の各孔にボルト等の固着手段が挿通されて車体のフロントピラーに固定されることによって、前記ステアリングサポートビーム(1)は車体に対して安定状態にかつ強固に固着される。
【0052】
上記実施形態のステアリングサポートビーム(1)では、エアバッグユニット取付用ブラケット(20)の嵌合部(21)は、一端側のサイドブラケット(10)の嵌合部(11)との間に、サポートビーム本体(2)に外嵌めされたアウターパイプ(3)を介して配置されることによって位置決めされてサポートビーム本体(2)に固着され、またステアリング取付用ブラケット(23)の嵌合部(24)は、他端側のサイドブラケット(13)の嵌合部(14)との間に、サポートビーム本体(2)に外嵌めされたアウターパイプ(4)を介して配置されることによって位置決めされてサポートビーム本体(2)に固着されているから、エアバッグユニット取付用ブラケット(20)、ステアリング取付用ブラケット(23)は、いずれもサポートビーム本体(2)に対して精度高く位置決めされた状態で固定される。また、アウターパイプ(3)(4)を設けるだけで精度高く位置決めすることが可能となるものであり、従来技術のようにサポートビーム本体に対してその長手方向に延ばされたフランジや内嵌め用溝を設けなくて良いから、溶接施工性を向上させることができて生産性を向上できると共に、ステアリングサポートビーム(1)の構造の簡単化及び軽量化を図ることができる。
【0053】
また、アウターパイプ(3)(4)によりエアバッグユニット取付用ブラケット(20)とステアリング取付用ブラケット(23)の位置決めがなされるので、溶接時に用いられる溶接用治具(40)の構造を簡単化することができ、これにより溶接施工性をさらに向上させることができる。即ち、これらブラケット(20)(23)をサポートビーム本体(2)に溶接するに際しては、ブラケット(20)(23)の軸線方向(ビーム本体の軸線方向)の位置決めは前記アウターパイプ(3)(4)により精度高く位置決めされ得る。従って、この時、溶接用治具(40)の構造に関しては、例えば図11に示すように溶接用治具(40)の支承部(41)でブラケットの取付部(22)(25)を支承してブラケット(20)(23)の少なくとも周方向の位置決めができるような構造を採用すれば良いから、溶接用治具(40)の構造を簡単化することができる。
【0054】
更に、アウターパイプ(3)(4)がサポートビーム本体(2)に対して外嵌めされて二重管構造となっているから、ステアリングサポートビーム(1)の強度を向上させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、アウターパイプ(3)(4)は、前記サポートビーム本体(2)に外嵌めされただけで固着されていないが、これらアウターパイプ(3)(4)も前記ブラケットと同様に前記サポートビーム本体(2)に固着しても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、サポートビーム本体(2)は、円筒状に形成されているが、特にこのような形状に限定されるものではなく、例えば六角形等の多角形状、楕円状、その他の異形断面形状に形成されていても良い。例えばサポートビーム本体(2)が多角形状である場合には、前記ブラケットの嵌合部及び前記アウターパイプ(3)(4)は、この多角形状のサポートビーム本体(2)に外嵌め可能な多角形状に構成すれば良い。
【0057】
また、上記実施形態では、アウターパイプ(3)(4)は、前記エアバッグユニット取付用ブラケット(20)の嵌合部(21)と前記一端側のサイドブラケット(10)の嵌合部(11)との間、及び前記ステアリング取付用ブラケット(23)の嵌合部(24)と前記他端側のサイドブラケット(13)の嵌合部(14)との間だけに配置されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば図10に示すように、全てのブラケット(10)(20)(26)(26)(23)(13)の間にアウターパイプ(3)(5)(6)(7)(4)がそれぞれ介装配置された構成を採用しても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、サポートビーム本体(2)、アウターパイプ(3)(4)(5)(6)(7)及び取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)のいずれもが押出材からなる構成が採用されているが、特にこのような構成に限定されるものではない。例えば、サポートビーム本体(2)、アウターパイプ(3)(4)(5)(6)(7)及び取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)は、射出成形材によって形成されていても良い。また、取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)については鋳物により構成されていても良い。
【0059】
前記押出材は、軽金属またはその合金からなる押出材であるのが好ましい。中でも、前記押出材は、アルミニウム押出材であるのが特に好ましく、この場合には優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【0060】
或いはまた、前記押出材は、合成樹脂押出材であるのが好ましく、この場合には優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【0061】
この発明において、前記取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)の嵌合部(11)(14)(21)(24)(27)は、その内部の空間内に前記サポートビーム本体(2)が挿入されることによって該サポートビーム本体(2)に外嵌めでき得る形状であれば特に限定されない。即ち、前記取付用ブラケットの嵌合部(11)(14)(21)(24)(27)は、サポートビーム本体(2)に外嵌めされた状態において外方に向けて離脱しない(外れない)形状であれば特に限定されない。例えば、前記取付用ブラケットの嵌合部(11)(14)(21)(24)(27)は、上記実施形態のように円筒状に形成されていても良いし、或いは図9に示すように、ブラケット(20)の嵌合部(21)の周方向の一部に開口部(35)が設けられていても良い。
【0062】
同様に、前記アウターパイプ(3)(4)(5)(6)(7)は、その内部の空間内に前記サポートビーム本体(2)が挿入されることによって該サポートビーム本体(2)に外嵌めでき得る形状であれば特に限定されない。即ち、前記アウターパイプ(3)(4)(5)(6)(7)は、サポートビーム本体(2)に外嵌めされた状態において外方に向けて離脱しない(外れない)形状であれば特に限定されない。例えば、前記アウターパイプ(3)(4)(5)(6)(7)は、上記実施形態のような円筒状等の筒状に形成されていても良いし、或いはアウターパイプ(3)(4)(5)(6)(7)の周方向の一部に開口部が設けられていても良い。
【0063】
なお、前記サポートビーム本体(2)に、前記取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)の嵌合部(11)(14)(21)(24)(27)が外嵌めされた状態時(溶接処理前)において、クリアランス(サポートビーム本体と嵌合部との隙間)が0.2〜0.3mmになるように設計されるのが好ましいが、特にこのような範囲に限定されるものではない。前記取付用ブラケットは、溶接による熱歪みにより収縮して前記サポートビーム本体(2)に密着して固着されるものとなる。
【0064】
同様に、前記サポートビーム本体(2)に前記アウターパイプ(3)(4)(5)(6)(7)が外嵌めされた状態時(溶接処理前)において、クリアランス(サポートビーム本体とアウターパイプとの隙間)が0.2〜0.3mmになるように設計されるのが好ましいが、特にこのような範囲に限定されない。
【0065】
この発明において、前記取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)等を前記サポートビーム本体(2)に固着する手法は、特に限定されない。例えば、溶接により固着しても良いし、摩擦撹拌接合法により固相接合して固着しても良い。
【0066】
また、溶接位置や溶接形態等も特に限定されない。例えば、図7に示すように、ブラケット(26)の嵌合部(27)の軸線方向の少なくとも一端側の縁部が周方向に沿って溶接された構成を採用することができる。図7では、ブラケット(26)の嵌合部(27)の軸線方向の両端側の縁部が周方向に沿って溶接されて溶接部(30)(30)が形成されている。
【0067】
或いは、図8に示すように、ブラケット(23)の嵌合部(24)にその軸線方向に沿って長孔(34)が穿設され、該長孔(34)において前記ブラケット(23)の嵌合部(24)と前記サポートビーム本体(2)とが溶接されて溶接部(31)が形成された構成を採用しても良い。前記長孔(34)の形成方向は特に限定されないものの、ブラケットの嵌合部に対して軸線方向または周方向に沿って形成されるのが好ましい。
【0068】
或いはまた、図9に示すように、ブラケット(20)の嵌合部(21)の周方向の一部に開口部(35)が設けられ、該開口部(35)において前記ブラケット(20)の嵌合部(21)と前記サポートビーム本体(2)とが溶接されて溶接部(32)(32)が形成された構成を採用しても良い。
【0069】
また、取付用ブラケット(10)(13)(20)(23)(26)を前記サポートビーム本体(2)に摩擦撹拌接合法により固相接合して固着した構成を採用する場合には、例えば図10に示すように、取付用ブラケットの嵌合部の周方向に沿って周方向の少なくとも一部に摩擦撹拌接合部(33)を形成すれば良い。勿論、前記摩擦撹拌接合部(33)は、前記嵌合部の軸線方向に沿って形成されても良いし、その他の方向に沿って形成されても良い。なお、図10に示す実施形態では、アウターパイプ(3)(5)(6)(7)(4)も前記サポートビーム本体(2)に対して摩擦撹拌接合法により固相接合されて固着されている。即ち、前記アウターパイプ(3)(5)(6)(7)(4)の周方向に沿って周方向の少なくとも一部に摩擦撹拌接合部(33)が形成されている。
【0070】
この発明のステアリングサポートビームを用いたインストルメントパネル取付構造体(車体前部構造体)の一実施形態を図12に示す。本実施形態のインストルメントパネル取付構造体は、自動車内の前部に配設されるインストルメントパネル取付構造体である。これらの図において、(1)は本発明のステアリングサポートビーム、(10A)(13A)は取付用サイドブラケット、(130)はインストルメントパネルである。
【0071】
前記インストルメントパネル(130)は、図12に示すように、パネル本体部(131)の両端部から背面側(内面側)に向けて側板部(132)(133)が延ばされた構成からなる。前記パネル本体部(131)には、助手席正面側のボックス、エアコン用の送風用開口部などが形成されている。前記パネル本体部(131)の両端縁部の内面(裏面)形状は、前記取付用サイドブラケット(10A)(13A)の張出部の外周面の形状に略適合した形状部位(134)を有している。また、前記側板部(132)(133)は、いずれも前記取付用サイドブラケット(10A)(13A)の張出部の大部分を覆うことができる大きさ及び形状に形成されている。しかして、インストルメントパネル(130)は、部位(134)又は/及び側板部(132)(133)で取付用サイドブラケット(10A)(13A)を介してステアリングサポートビーム(1)と固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の一実施形態に係るステアリングサポートビームを示す斜視図である(溶接部の図示は省略した)。
【図2】図1におけるA−A線の端面図である。
【図3】図1におけるB−B線の端面図である。
【図4】図1におけるC−C線の端面図である。
【図5】図1におけるD−D線の端面図である。
【図6】図1におけるE−E線の端面図である。
【図7】ブラケットの溶接形態の一例を示す平面図である。
【図8】ブラケットの溶接形態の変形例を示す平面図である。
【図9】ブラケットの溶接形態の変形例を示す断面図である。
【図10】他の実施形態に係るステアリングサポートビームを示す平面図である。
【図11】溶接用治具を用いて溶接する状態の一例を示す平面図である。
【図12】インストルメントパネル取付構造体を分離状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
1…ステアリングサポートビーム
2…サポートビーム本体
3…アウターパイプ
4…アウターパイプ
5、6、7…アウターパイプ
10…サイドブラケット
11…嵌合部
13…取付用サイドブラケット
14…嵌合部
20…エアバッグ取付用ブラケット
21…嵌合部
23…ステアリング取付用ブラケット
24…嵌合部
26…取付用センターブラケット
27…嵌合部
30…溶接部
31…溶接部
32…溶接部
33…摩擦撹拌接合部
34…長孔
35…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のサポートビーム本体に複数個の取付用ブラケットの嵌合部がそれぞれ外嵌めされて固着され、前記複数個の取付用ブラケットのうち少なくとも1つの取付用ブラケットの嵌合部が、他の取付用ブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【請求項2】
筒状のサポートビーム本体の両端部にそれぞれフロントピラー取付用サイドブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、前記サポートビーム本体の軸線方向の中間部に複数個の車載部品取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、
前記複数個の車載部品取付用ブラケットのうち少なくとも1つの車載部品取付用ブラケットの嵌合部が、前記サイドブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【請求項3】
筒状のサポートビーム本体の両端部にそれぞれフロントピラー取付用サイドブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、前記サポートビーム本体の軸線方向の中間部にエアバッグユニット取付用ブラケットの嵌合部及びステアリング取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、
前記エアバッグユニット取付用ブラケットの嵌合部は、前記一端側のサイドブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着され、
前記ステアリング取付用ブラケットの嵌合部は、前記他端側のサイドブラケットの嵌合部との間に、前記サポートビーム本体に外嵌めされたアウターパイプを介して配置されることによって位置決めされて前記サポートビーム本体に固着されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【請求項4】
前記固着が溶接により行われている請求項1〜3のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項5】
前記ブラケットの嵌合部の軸線方向の少なくとも一端側の縁部が周方向に沿って溶接されることによって、前記ブラケットの嵌合部が前記サポートビーム本体に固着されている請求項4に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項6】
前記ブラケットの嵌合部に長孔が穿設され、該長孔において前記ブラケットの嵌合部と前記サポートビーム本体とが溶接されている請求項4に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項7】
前記長孔が、前記ブラケットの嵌合部に対して軸線方向または周方向に沿って形成されている請求項6に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項8】
前記ブラケットの嵌合部の周方向の一部に開口部が設けられ、該開口部において前記ブラケットの嵌合部と前記サポートビーム本体とが溶接されている請求項4に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項9】
前記ブラケットの嵌合部の周方向の一部に摩擦撹拌接合部が形成されることによって、前記ブラケットの嵌合部と前記サポートビーム本体とが固着されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項10】
前記サポートビーム本体、前記アウターパイプ及び前記ブラケットのいずれもが押出材からなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項11】
前記サポートビーム本体及び前記アウターパイプは押出材からなり、前記ブラケットは鋳物からなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項12】
前記押出材は、軽金属またはその合金からなる押出材である請求項10または11に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項13】
前記押出材は、アルミニウム押出材である請求項10または11に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項14】
前記押出材は、合成樹脂押出材である請求項10または11に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のステアリングサポートビームを用いたインストルメントパネル取付構造体。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のステアリングサポートビームを有する車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−8112(P2006−8112A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147437(P2005−147437)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】