説明

ステアリング装置のホールカバー

【課題】 ステアリング装置のホールカバーを通してエンジン音等がキャビン内に侵入することを効果的に抑制すること。
【解決手段】 ステアリング装置のホールカバー10は、車両のダッシュパネル21に設けた貫通孔21aを通してダッシュパネル21を貫通するステアリングシャフト31とダッシュパネル21間に設けられていて、ダッシュパネル21の貫通孔21aとステアリングシャフト31間を塞ぐことが可能である。ホールカバー10は、ダッシュパネル21に組付けられるアウターカバー11と、このアウターカバー11とステアリングシャフト31間に設けられてアウターカバー11とによってダッシュパネル21の貫通孔21aを塞ぐセンターカバー12を備えている。アウターカバー11の内周部とセンターカバー12の外周部には、ステアリングシャフト31に対して同軸的なネジ嵌合部Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のダッシュパネルに設けた貫通孔を通してダッシュパネルを貫通するステアリングシャフトとダッシュパネル間に設けられてダッシュパネルの貫通孔とステアリングシャフト間を塞ぐステアリング装置のホールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のホールカバーは、例えば、下記特許文献1に記載されていて、ダッシュパネルに組付けられるアウターカバーと、このアウターカバーとステアリングシャフト間に設けられて前記アウターカバーとによってダッシュパネルに設けた貫通孔を塞ぐセンターカバーを備える構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−76329号公報
【0004】
上記した特許文献1に記載されているホールカバーにおいては、アウターカバーとセンターカバーが隙間嵌めの関係で嵌め合わされていて、両者を固定するために嵌め合わされている部分の外周から固定バンドを用いて締め付ける構成が採用されている。
【発明の概要】
【0005】
上記した従来のホールカバーにおいては、固定バンドによる締め付けが不十分である場合、アウターカバーとセンターカバー間の嵌め合わされている部分に隙間が残って、この隙間を通してエンジン音等がダッシュパネル前方のエンジンルーム内からダッシュパネル後方のキャビン内にダイレクトに(直線的に)侵入するおそれがある。また、固定バンドによる締め付けが周方向にて不均一である場合、アウターカバーとセンターカバー間の嵌め合わされている部分の一部に隙間が生じて、同隙間を通してエンジン音等がキャビン内にダイレクトに侵入するおそれがある。
【0006】
また、上記した従来のホールカバーにおいては、アウターカバーとセンターカバーを嵌め合わされている部分の外周から固定バンドを用いて締め付ける構成が採用されているため、固定バンドを取付ける部分がキャビン内に出っ張って、レイアウト上の制約が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に対処すべくなされたものであり、車両のダッシュパネルに設けた貫通孔を通してダッシュパネルを貫通するステアリングシャフトと前記ダッシュパネル間に設けられて前記ダッシュパネルの貫通孔と前記ステアリングシャフト間を塞ぐステアリング装置のホールカバーであって、前記ダッシュパネルに組付けられるアウターカバーと、このアウターカバーと前記ステアリングシャフト間に設けられて前記アウターカバーとによって前記ダッシュパネルの貫通孔を塞ぐセンターカバーを備えていて、前記アウターカバーの内周部と前記センターカバーの外周部には前記ステアリングシャフトに対して同軸的なネジ嵌合部が形成されていることに特徴がある。この場合において、前記ネジ嵌合部の上方部分は、前記ダッシュパネルより車両前方に向けて突出していることが望ましい。
【0008】
本発明によるステアリング装置のホールカバーにおいては、前記アウターカバーの内周部と前記センターカバーの外周部に、前記ステアリングシャフトに対して同軸的なネジ嵌合部が形成されている。このため、ネジ嵌合部での締め付けがステアリングシャフトの周方向にて不均一となることがなく、仮に、ネジ嵌合部での締め付けが不十分であって、ネジ嵌合部に隙間が形成される場合でも、その隙間は螺旋状であるため、同隙間を通してエンジン音等がキャビン内に侵入することがあっても、その際のエンジン音等は侵入途中にて順次消失して殆ど問題とならない。
【0009】
また、本発明の実施に際して、前記ネジ嵌合部の上方部分が、前記ダッシュパネルより車両前方に向けて突出するように構成されている場合には、当該ホールカバーのキャビン内への出っ張る量を従来に比して減少させることができて、レイアウト上の制約を少なくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるステアリング装置のホールカバーの一実施形態を概略的に示した全体構成図である。
【図2】図1に示したホールカバーにおけるセンターカバーの第1変形実施形態を示した断面図である。
【図3】図1に示したホールカバーにおけるセンターカバーの第2変形実施形態を示した側面図である。
【図4】図3に示した第2変形実施形態のセンターカバーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明によるステアリング装置のホールカバーの一実施形態を概略的に示している。この実施形態では、ホールカバー10が、アウターカバー11と、センターカバー12によって構成されていて、車両のダッシュパネル21に設けた貫通孔21aを通してダッシュパネル21を貫通するステアリングシャフト31とダッシュパネル21間に設けられていて、ダッシュパネル21の貫通孔21aとステアリングシャフト31間を塞いでいる。
【0012】
アウターカバー11は、ゴム等の弾性材料にて形成されていて、ステアリングシャフト31に対して同軸的な円筒部11aと、この円筒部11aから上下左右に延びるフランジ部11bを有しており、フランジ部11bの外周縁部にてダッシュパネル21と固定パネル22によって挟持されている。なお、固定パネル22は、ダッシュパネル21のキャビンR1側(図1の右側)に脱着可能に組付けられている。
【0013】
センターカバー12は、円筒状の鉄板12aと、この鉄板12aの内周に加硫成形したゴム製の内筒12bと、鉄板12aの外周に加硫成形したゴム製の外筒12cを有しており、内筒12bにてステアリングシャフト31の外周にステアリングシャフト31の回転を許容した状態で組付けられ、外筒12cの外周にてアウターカバー11の内周に一体的に組付けられている。なお、内筒12bには、ステアリングシャフト31の外周に密に嵌合する環状のシール部12b1が形成されている。
【0014】
ところで、この実施形態においては、アウターカバー11の内周部とセンターカバー12の外周部に、ステアリングシャフト31に対して同軸的なネジ嵌合部Aが形成されている。ネジ嵌合部Aは、アウターカバー11の円筒部11a内周に形成した内ネジ(雌ネジ)11a1と、センターカバー12の外筒12c外周に形成した外ネジ(雄ネジ)12c1からなり、その上方部分は、ダッシュパネル21より車両前方(エンジンルームR2側)に向けて突出している。なお、この実施形態においては、センターカバー12の外筒12cに、アウターカバー11における円筒部11aのキャビン側端部と接合可能な環状フランジ部12c2が形成されている。
【0015】
このため、この実施形態のホールカバー10においては、ネジ嵌合部Aでの締め付けが周方向にて不均一となることがなく、仮に、ネジ嵌合部Aでの締め付けが不十分であって、ネジ嵌合部Aに隙間が形成される場合でも、その隙間は螺旋状であるため、同隙間を通してエンジンルームR2内のエンジン音等がキャビンR1内に侵入することがあっても、その際のエンジン音等は侵入途中にて順次消失して殆ど問題とならない。
【0016】
また、この実施形態のホールカバー10においては、ネジ嵌合部Aの上方部分が、ダッシュパネル21より車両前方に向けて突出するように構成されているため、当該ホールカバー10のキャビンR1内への出っ張る量を従来(アウターカバーとセンターカバーを嵌め合わされている部分の外周から締め付けるための固定バンドを取付けるための円筒部がキャビンR1内に設定されている場合)に比して減少させることができて、レイアウト上の制約を少なくすることが可能である。
【0017】
なお、上記した実施形態では、センターカバー12の外筒12cに形成した環状フランジ部12c2が、アウターカバー11における円筒部11aのキャビン側端部と接合可能である。このため、センターカバー12の環状フランジ部12c2が円筒部11aのキャビン側端部と接合する程度に、センターカバー12の外ネジ(雄ネジ)12c1がアウターカバー11の内ネジ(雌ネジ)11a1に組付けられておれば、ネジ嵌合部Aに隙間が形成される場合でも、エンジン音等のキャビンR1内への侵入を的確に阻止することが可能である。
【0018】
上記した実施形態においては、センターカバー12が、円筒状の鉄板12aと、ゴム製の内筒12bおよび外筒12cを有する構成として実施したが、内筒12bおよび外筒12cのゴム素材にて十分な剛性が確保できる場合には、図2に示したように、円筒状の鉄板12aを無くし、内筒12bおよび外筒12cに相当するものを一体のゴムで構成して実施することも可能であり、その構成は適宜変更可能である。
【0019】
また、上記した実施形態の実施に際して、図3および図4に示したように、センターカバー12における外筒12cの環状フランジ部12c2に一対の突起12c3を設けて実施することも可能である。この場合には、一対の突起12c3を用いてセンターカバー12を容易に回転させることができて、センターカバー12をアウターカバー11に組付ける際の組付性を良好とすることが可能である。
【符号の説明】
【0020】
10…ホールカバー、11…アウターカバー、11a…円筒部、11a1…内ネジ(雌ネジ)、11b…フランジ部、12…センターカバー、12a…円筒状の鉄板、12b…ゴム製の内筒、12c…ゴム製の外筒、12c1…外ネジ(雄ネジ)、12c2…環状フランジ部、12c3…突起、21…ダッシュパネル、21a…貫通孔、22…固定パネル、31…ステアリングシャフト、A…ネジ嵌合部、R1…キャビン、R2…エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のダッシュパネルに設けた貫通孔を通してダッシュパネルを貫通するステアリングシャフトと前記ダッシュパネル間に設けられて前記ダッシュパネルの貫通孔と前記ステアリングシャフト間を塞ぐステアリング装置のホールカバーであって、
前記ダッシュパネルに組付けられるアウターカバーと、このアウターカバーと前記ステアリングシャフト間に設けられて前記アウターカバーとによって前記ダッシュパネルの貫通孔を塞ぐセンターカバーを備えていて、
前記アウターカバーの内周部と前記センターカバーの外周部には前記ステアリングシャフトに対して同軸的なネジ嵌合部が形成されていることを特徴とするステアリング装置のホールカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置のホールカバーであって、前記ネジ嵌合部の上方部分は、前記ダッシュパネルより車両前方に向けて突出していることを特徴とするステアリング装置のホールカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274820(P2010−274820A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130236(P2009−130236)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】