説明

ステアリング装置

【課題】摩擦板を車体取付けブラケットに組み付ける作業を容易にしたステアリング装置を提供する。
【解決手段】第1の摩擦板6及び第2の摩擦板7の取付箇所が、アウターコラム11側だけで済むので、第1の摩擦板6と第2の摩擦板7を、所定の向きに交互に重ね合わせて組み付ける作業が極めて容易となる。アウターコラム11がテレスコ方向に変位すると、締付けロッド5が第2の摩擦板7の長溝72に当接するため、第2の摩擦板7は、円柱状の凸部71を揺動中心として揺動する。長溝72は、チルト位置調整方向に長く形成されている。従って、第2の摩擦板7の揺動運動の軌跡とアウターコラム11の直線運動の軌跡の差を長溝72が吸収して、第2の摩擦板7が円滑に揺動し、アウターコラム11のテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング装置、特に、運転者の体格や運転姿勢に応じて、ステアリングホイールの上下方向位置と前後方向位置の両方の位置を調整することができる位置調整式のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の体格や運転姿勢に応じてステアリングホイールの上下方向位置と前後方向位置の両方の位置を調整する為の装置として、チルト・テレスコピック式ステアリング装置と呼ばれるステアリング装置がある。
【0003】
このような位置調整式のステアリング装置では、所望の位置に調整したコラムを、車体取付けブラケットの側板に、締付けロッドを締め付けてクランプするクランプ装置が備えられている。このクランプ装置には、クランプ時のステアリング装置の剛性が大きく、クランプ力が安定し、アンクランプ操作が容易なことが要求されるため、摩擦板を介して、車体取付けブラケットの側板にコラムを締め付けてクランプする構造(特許文献1、特許文献2)が採用されている。
【0004】
このような摩擦板を使用したクランプ装置は、大きなクランプ力を得るために複数の摩擦板を重ねて合わせて使用している。特に、チルト方向のクランプ剛性とテレスコ方向のクランプ剛性の両方を大きくするために、チルト用摩擦板とテレスコ用摩擦板の両方を有するクランプ装置では、特許文献1に記載されているように、チルト位置調整方向に長いチルト用摩擦板を車体取付けブラケット側に固定し、テレスコピック位置調整方向に長いテレスコ用摩擦板をコラム側に固定している。また、特許文献2のクランプ装置は、チルト位置調整方向に長いチルト用摩擦板をアウターコラム側に固定し、テレスコピック位置調整方向に長いテレスコ用摩擦板をインナーコラム側に固定している。
【0005】
しかし、形状の異なるチルト用摩擦板とテレスコ用摩擦板を、所定の向きに交互に重ね合わせて組み付ける作業は熟練を必要とする。特に、チルト用摩擦板とテレスコ用摩擦板の固定箇所が異なると、チルト用摩擦板とテレスコ用摩擦板を組み付ける作業が特に難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−35511号公報
【特許文献2】特開2008−100597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、摩擦板を車体取付けブラケットに組み付ける作業を容易にしたステアリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、車体に取付け可能な車体取付けブラケット、上記車体取付けブラケットに、テレスコピック位置が調整可能に支持されると共に、ステアリングホイールを装着したステアリングシャフトを回動可能に軸支したコラム、上記テレスコピック位置調整方向に長く形成され、上記コラムに固定取付部によって相対移動不能に固定された第1の摩擦板、上記第1の摩擦板に重ね合わせて、上記コラムに第1の揺動支持部によって揺動可能に支持された第2の摩擦板、所望のテレスコピック位置で、上記車体取付けブラケットに上記コラムをクランプするために、互いに重ね合わされた上記第1の摩擦板と第2の摩擦板を介して、コラムを車体取付けブラケットに締付ける締付けロッド、上記第1の摩擦板に形成され、テレスコピック位置調整方向に長く形成されて上記締付けロッドが挿通されるテレスコ調整用長溝、上記第2の摩擦板に形成され、上記締付けロッドが挿通される長溝を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【0009】
第2番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記第2の摩擦板がテレスコピック位置調整方向に対して直交する方向に長く形成されていることを特徴とするステアリング装置である。
【0010】
第3番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記第2の摩擦板がテレスコピック位置調整方向に対して直交する方向及びテレスコピック位置調整方向に長く形成されていることを特徴とするステアリング装置である。
【0011】
第4番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記第2の摩擦板の長溝は、上記第2の摩擦板の第1の揺動支持部に向かって長く形成されていることを特徴とするステアリング装置である。
【0012】
第5番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記車体取付けブラケットに形成され、チルト位置調整方向に長く形成されて上記締付けロッドが挿通されるチルト調整用長溝を備え、上記コラムが車体取付けブラケットにチルト位置及びテレスコピック位置が調整可能に支持されていることを特徴とするステアリング装置である。
【0013】
第6番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記第1の摩擦板と第2の摩擦板が、上記車体取付けブラケットの側板の内側面とコラムとの間に挟持されていることを特徴とするステアリング装置である。
【0014】
第7番目の発明は、第6番目の発明のステアリング装置において、上記第1の揺動支持部が、上記第2の摩擦板に形成された円柱状の凸部と、上記コラムに形成され、上記円柱状の凸部を揺動可能に支持する円形の凹部で構成されていることを特徴とするステアリング装置である。
【0015】
第8番目の発明は、第6番目の発明のステアリング装置において、上記車体取付けブラケットに形成され、チルト位置調整方向に長く形成されて上記締付けロッドが挿通されるチルト調整用長溝、上記第1の摩擦板と車体取付けブラケットの側板との間に挟持され、上記車体取付けブラケットの側板に第2の揺動支持部によって揺動可能に支持された第3の摩擦板、上記第3の摩擦板に形成され、上記第2の揺動支持部に向かって長く形成されて上記締付けロッドが挿通される長溝を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【0016】
第9番目の発明は、第6番目の発明のステアリング装置において、上記第2の摩擦板の第1の揺動支持部に形成された円筒孔、上記第1の摩擦板に形成され、上記円筒孔に内嵌して上記第2の摩擦板を揺動可能に支持する突起を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のステアリング装置は、テレスコピック位置調整方向に長く形成され、コラムに固定取付部によって相対移動不能に固定された第1の摩擦板と、第1の摩擦板に重ね合わせて、コラムに第1の揺動支持部によって揺動可能に支持された第2の摩擦板と、所望のテレスコピック位置で、車体取付けブラケットにコラムをクランプするために、互いに重ね合わされた第1の摩擦板と第2の摩擦板を介して、コラムを車体取付けブラケットに締付ける締付けロッドと、第1の摩擦板に形成され、テレスコピック位置調整方向に長く形成されて締付けロッドが挿通されるテレスコ調整用長溝と、第2の摩擦板に形成され、締付けロッドが挿通される長溝とから構成されている。
【0018】
従って、第1の摩擦板及び第2の摩擦板の取付箇所が、コラム側だけで済むので、第1の摩擦板と第2の摩擦板を、所定の向きに交互に重ね合わせて組み付ける作業が容易となる。
【0019】
また、第2の摩擦板の長溝を、テレスコピック位置調整方向に対して直交する方向に長く形成している。従って、コラムをテレスコ方向に調整すると、締付けロッドが長溝に当接して、第2の摩擦板が円柱状の凸部を揺動中心として揺動し、第2の摩擦板が揺動する時の円弧状の軌跡と、コラムが直線移動する時の直線状の軌跡との差を長溝が吸収して、第2の摩擦板が円滑に揺動し、コラムのテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。
【0020】
また、第2の摩擦板のボルト孔を通してコラムにねじ込んだボルトで、第2の摩擦板をコラムに対して揺動可能に支持すれば、第2の摩擦板をコラムに確実に固定することができる。
【0021】
また、第2の摩擦板をテレスコピック位置調整方向に対して直交する方向及びテレスコピック位置調整方向に長く形成すれば、第1の摩擦板との接触面積を大きくすることができるため、チルト締付及びテレスコ締付時の保持力が安定する。
【0022】
また、第1の摩擦板と車体取付けブラケットの側板との間に第3の摩擦板を挟持し、この第3の摩擦板を側板に揺動可能に支持すれば、チルト方向の調整位置にかかわらず、第3の摩擦板と側板との接触面積を大きくすることができるため、チルト方向の保持力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1のステアリング装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施例1のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図である。
【図3】車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図2のコラムの側面図である。
【図4】図2の縦断面図である。
【図5】本発明の実施例1の第2の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第2の摩擦板の正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図6】本発明の実施例1の第1の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第1の摩擦板の正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の平面図である。
【図7】(a)は図4のP部拡大断面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図8】本発明の実施例2のステアリング装置のコラムの側面図であり、実施例1の図3相当図である。
【図9】本発明の実施例2の第1の揺動支持部の拡大断面図であり、実施例1の図7(a)相当図である。
【図10】本発明の実施例3のステアリング装置のコラムの側面図であり、実施例1の図3相当図である。
【図11】本発明の実施例3のステアリング装置の縦断面図であり、実施例1の図4相当図である。
【図12】本発明の実施例3の第2の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第2の摩擦板の正面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)の平面図である。
【図13】(a)は図11のQ部拡大断面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図14】本発明の実施例4のステアリング装置の第2の摩擦板の第1の揺動支持部の側面図であり、実施例3の図13(b)相当図である。
【図15】本発明の実施例5のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図であり、実施例1の図2相当図である。
【図16】車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図15のコラムの側面図であり、実施例1の図3相当図である。
【図17】本発明の実施例5の第2の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第2の摩擦板の正面図、(b)は(a)のE−E断面図である。
【図18】本発明の実施例6のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図であり、実施例1の図2相当図である。
【図19】車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図18のコラムの側面図であり、チルト調整位置が中間位置を示す。
【図20】図18の縦断面図であり、実施例1の図4相当図である。
【図21】本発明の実施例6の第2の摩擦板単体及び第3の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第2の摩擦板の正面図、(b)は(a)のF−F断面図、(c)は第3の摩擦板の正面図、(d)は(c)のG−G断面図である。
【図22】本発明の実施例6のコラムの側面図であり、チルト調整位置が車体上方端を示す。
【図23】本発明の実施例6のコラムの側面図であり、チルト調整位置が車体下方端を示す。
【図24】本発明の実施例7のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図である。
【図25】車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図24のコラムの側面図である。
【図26】図24の縦断面図である。
【図27】本発明の実施例7の第1の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第1の摩擦板の正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の平面図、(d)は(a)のH−H断面図である。
【図28】本発明の実施例7の第1の揺動支持部の拡大断面図であり、実施例1の図7(a)相当図である。
【図29】本発明の実施例7のステアリング装置を車体下方側から見た下面図である。
【図30】図28のJ−J断面図であり、(a)は通常の運転状態、(b)は二次衝突時にステアリングホイールに運転者が衝突し、アウターコラムが車体前方側にコラプス移動した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施例では、ステアリングホイールの上下方向位置と前後方向位置の両方の位置を調整する、チルト・テレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用した例について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の実施例1のステアリング装置の全体斜視図であり、コラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置である。図1に示すコラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置は、ステアリングホイール101の操作力を軽減するために、コラム105に取付けた操舵補助部(電動アシスト機構)102の操舵補助力をステアリングシャフトに付与し、中間シャフト106を介して、ラックピニオン式のステアリングギヤ103のラックを往復移動させ、タイロッド104を介して舵輪を操舵する方式のパワーステアリング装置である。
【0026】
図2は本発明の実施例1のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図、図3は車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図2のコラムの側面図である。図4は図2の縦断面図、図5は本発明の実施例1の第2の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第2の摩擦板の正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。図6は本発明の実施例1の第1の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第1の摩擦板の正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の平面図である。図7(a)は図4のP部拡大断面図、図7(b)は図7(a)のB−B断面図である。
【0027】
図2から図4に示すように、インナーコラム10の外周には、軸方向に摺動可能にアウターコラム11が嵌合している。アウターコラム11には、ステアリングシャフト12が回転可能に軸支され、ステアリングシャフト12の左端(車体後方側)には、図1のステアリングホイール101が固定されている。本発明の実施例では、アウターコラム11は、アルミダイカスト製の一体成型品であるが、鋼管にディスタンスブラケットを溶接したものであってもよい。また、軽量化を目的として、マグネシウムダイカスト製であってもよい。
【0028】
アウターコラム11の右側(車体前方側)には、アウターコラム11を左右両側から挟み込むようにして、車体取付けブラケット3が取付けられている。車体取付けブラケット3は、車体41に固定されたアルミ合金製等のカプセル42を介して、車体前方側に離脱可能に取付けられている。
【0029】
二次衝突時にステアリングホイール101に運転者が衝突して大きな衝撃力が作用すると、カプセル42から車体取付けブラケット3が車体前方側に離脱し、アウターコラム11は、インナーコラム10に案内されて車体前方側にコラプス移動し、衝撃エネルギーを吸収する。
【0030】
インナーコラム10の車体前方側(右側)には、操舵補助部102(電動アシスト機構)のハウジング21の左端が圧入によって固定される。操舵補助部102は、電動モータ22、減速ギヤボックス部23等から構成されている。操舵補助部102は、図示しない枢動ピンを介して車体41にチルト可能に支持されている。
【0031】
操舵補助部102は、ステアリングシャフト12に作用するトルクを検出し、電動モータ22を駆動し、図示しない出力軸を所要の操舵補助力で回転させ、中間シャフト106を経由して、ステアリングギヤ103に連結され、車輪の操舵角を変えることができる。
【0032】
車体取付けブラケット3は、上板32と、この上板32から下方に延びる側板33、34を有している。上記アウターコラム11には、アウターコラム11の下方に突出して、ディスタンスブラケット13が一体的に形成されている。
【0033】
車体取付けブラケット3の側板33、34には、チルト調整用長溝35、36が形成されている。チルト調整用長溝35、36は、上記した枢動ピンを中心とする円弧状に形成されている。ディスタンスブラケット13には、図4の左右方向に延びると共に、アウターコラム11の軸心方向に長く延びるテレスコ調整用長溝16、17が形成されている。
【0034】
丸棒状の締付けロッド5が、上記チルト調整用長溝35、36及びテレスコ調整用長溝16、17を通して、図4の右側から挿入されている。締付けロッド5の右端には円筒状の頭部51が形成されている。締付けロッド5の頭部51の左端面が、右側の側板34の外側面342に当接している。
【0035】
車体取付けブラケット3の側板33、34の内側面331、341とディスタンスブラケット13の側面14、15との間には、第1の摩擦板(図6参照)6と第2の摩擦板(図5参照)7が重ね合わせて挟持されている。第2の摩擦板7がディスタンスブラケット13の側面14、15に接触して配置され、第1の摩擦板6が第2の摩擦板7を車幅方向の外側から挟み込み、側板33、34の内側面331、341に接触して配置されている。
【0036】
図5に示すように、第2の摩擦板7は、チルト位置調整方向(図5の上下方向)に長い小判形に形成され、その上方に、円柱状の凸部71が一体的に形成されている。また、下方には、チルト位置調整方向(図5の上下方向)に長い長溝72が形成されて、この長溝72に締付けロッド5が挿通される。長溝72は、円柱状の凸部71の中心に向かって長く形成されている。長溝72の幅W1は、締付けロッド5が通る程度の若干の隙間を有する寸法に形成されている。
【0037】
図7に示すように、アウターコラム11の外周面には、アウターコラム11の軸心近傍の両側面に直線状リブ18、18が形成され、この直線状リブ18、18の側面に、各々円形の凹部181、181が形成されている。円形の凹部181に第2の摩擦板7の円柱状の凸部71が内嵌して、円形の凹部181に対して円柱状の凸部71が揺動可能に支持されている。従って、第2の摩擦板7は、円柱状の凸部71を揺動中心として、アウターコラム11に対して揺動可能に支持されている。円柱状の凸部71と円形の凹部181によって、第2の摩擦板7をアウターコラム11に対して揺動可能に支持する第1の揺動支持部が構成されている。
【0038】
図6に示すように、第1の摩擦板6は、テレスコピック位置調整方向(図6(a)の左右方向)に長い矩形状に形成されている。第1の摩擦板6の下方には、テレスコピック位置調整方向(図6(a)の左右方向)に長いテレスコ調整用長溝61が形成されて、このテレスコ調整用長溝61に締付けロッド5が挿通される。第1の摩擦板6のテレスコ調整用長溝61は、上記ディスタンスブラケット13のテレスコ調整用長溝16、17と同一形状である。テレスコ調整用長溝61の幅W2は、締付けロッド5が通る程度の若干の隙間を有する寸法に形成されている。
【0039】
第1の摩擦板6の上辺62、下辺63、右辺64、左辺65には、折り曲げ部(係合突起)621、631、631、641、651が形成されている。折り曲げ部621、631、631、641、651は、図6(a)で見て、紙面の奥側に向かって折り曲げられている。下辺63、右辺64、左辺65の折り曲げ部631、631、641、651は、図6(a)で見て、紙面の奥側に向かって直角に折り曲げられている。上辺62の折り曲げ部621だけは、紙面の奥側に向かって直角を超えて折り曲げられた後、上方に向かって円弧状に折り曲げられている。
【0040】
図2、図3、図4、図7に示すように、アウターコラム11の軸心近傍の側面には、矩形の凹部(係合凹部)19が形成されている。また、ディスタンスブラケット13の側面14、15の下端にも、矩形の凹部(係合凹部)131、131が形成されている。
【0041】
第1の摩擦板6をディスタンスブラケット13の側面14、15に押し付けると、第1の摩擦板6の折り曲げ部621はアウターコラム11の矩形の凹部19に係合する。折り曲げ部621は、矩形の凹部19に係合すると、車体上方側に弾性変形して、矩形の凹部19に強く押し付けられる。第1の摩擦板6の折り曲げ部631、631は、側面14、15の矩形の凹部131、131に係合する。折り曲げ部641はディスタンスブラケット13の前面132に係合し、折り曲げ部651はディスタンスブラケット13の後面133に係合する。
【0042】
従って、第1の摩擦板6は、アウターコラム11に対して、車体上下方向及び車体前後方向の移動が阻止されるため、アウターコラム11に対して相対移動不能に固定される。第1の摩擦板6は、ディスタンスブラケット13の側面14、15に押し付けるだけで、アウターコラム11に固定できるため、第1の摩擦板6の取付作業時間を短縮することができる。折り曲げ部621、631、631、641、651、矩形の凹部19、矩形の凹部131、131、前面132、後面133によって、第1の摩擦板6をアウターコラム11に相対移動不能に固定する固定取付部が構成されている。第1の摩擦板6をアウターコラム11に固定すると、アウターコラム11のテレスコ調整用長溝16、17と第1の摩擦板6のテレスコ調整用長溝61が整合する。
【0043】
上記したように、第1の摩擦板6及び第2の摩擦板7の取付箇所が、アウターコラム11側だけで済むので、第1の摩擦板6と第2の摩擦板7を、所定の向きに交互に重ね合わせて組み付ける作業が極めて容易となる。このようにして、アウターコラム11に第1の摩擦板6及び第2の摩擦板7を組み付けた後、車体取付けブラケット3の側板33、34の内側面331、341の間にアウターコラム11を挟み込む。次に、チルト調整用長溝35、36及びテレスコ調整用長溝16、17、第1の摩擦板6のテレスコ調整用長溝61、第2の摩擦板7の長溝72を通して、図4の右側から締付けロッド5を挿入すれば、アウターコラム11と車体取付けブラケット3の組み付けが完了する。
【0044】
図4に示すように、締付けロッド5の左端外周には、固定カム53、可動カム54、操作レバー55、スラスト軸受56、ナット57が、この順で外嵌され、ナット57の内径部に形成された雌ねじ(図示せず)が、締付けロッド5の左端に形成された雄ねじ58にねじ込まれている。固定カム53の右端面が、左側の側板33の外側面332に当接している。
【0045】
固定カム53と可動カム54の対向する端面には、相補的な傾斜カム面が形成され、互いに噛み合っている。可動カム54の左側面に連結された操作レバー55を手で操作すると、可動カム54が固定カム53に対して回動する。
【0046】
操作レバー55をクランプ方向に回動すると、固定カム53の傾斜カム面の山に可動カム54の傾斜カム面の山が乗り上げ、締付けロッド5を図4の左側に引っ張ると同時に、固定カム53を図4の右側に押す。
【0047】
締付けロッド5の頭部51の左端面によって、右側の側板34が左側に押され、側板34を内側に変形させ、側板34の内側面341で第1の摩擦板6、第2の摩擦板7をディスタンスブラケット13の側面15に強く押しつける。
【0048】
同時に、固定カム53の右端面によって、左側の側板33が右側に押され、側板33を内側に変形させ、側板33の内側面331で第1の摩擦板6、第2の摩擦板7をディスタンスブラケット13の側面14に強く押しつける。このようにして、第1の摩擦板6、第2の摩擦板7を使用して、アウターコラム11のディスタンスブラケット13を、車体取付けブラケット3に強固に締付けることができる。
【0049】
従って、車体取付けブラケット3に対してアウターコラム11が固定され、アウターコラム11のチルト方向の変位及びテレスコ方向の変位が阻止される。アウターコラム11は車体取付けブラケット3に対して、第1の摩擦板6、第2の摩擦板7との間に働く大きな摩擦力によって、大きな保持力で、チルト締付及びテレスコ締付される。
【0050】
次に、運転者が操作レバー55を締付解除方向に回動すると、車体取付けブラケット3の側板33、34が、挟持方向と反対の方向へそれぞれ弾性復帰するので、第1の摩擦板6及び第2の摩擦板7との間の摩擦力も解除される。
【0051】
そこで、アウターコラム11は、車体取付けブラケット3の側板33、34に対してフリーな状態となるため、締付けロッド5を側板33、34のチルト調整用長溝35、36に案内させつつチルト方向に変位させて、ステアリングホイール101のチルト方向の調整を任意に行うことができる。第1の摩擦板6及び第2の摩擦板7は、アウターコラム11と一緒に、チルト方向に変位する。
【0052】
また、前記締付けロッド5に沿って、第1の摩擦板6のテレスコ調整用長溝61、及び、ディスタンスブラケット13のテレスコ調整用長溝16、17を案内させつつ、アウターコラム11をテレスコ方向に変位させることで、ステアリングホイール101のテレスコ方向の調整を任意に行うことができる。第1の摩擦板6は、アウターコラム11と一緒に、テレスコ方向に変位する。
【0053】
図3に示すように、アウターコラム11がテレスコ方向に変位すると、締付けロッド5が第2の摩擦板7の長溝72に当接するため、第2の摩擦板7は、円柱状の凸部71を揺動中心として揺動する。長溝72は、チルト位置調整方向(図3の上下方向)に長く形成されている。従って、第2の摩擦板7が揺動する時の円弧状の軌跡と、アウターコラム11が直線移動する時の直線状の軌跡との差を長溝72が吸収して、第2の摩擦板7が円滑に揺動し、アウターコラム11のテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。
【0054】
本発明の実施例のステアリング装置は、車体取付けブラケット3とアウターコラム11との間に、第1の摩擦板6と第2の摩擦板7が挟み込まれているので、車体取付けブラケット3から摩擦板が突出せず、ステアリング装置の操作性が向上する。
【実施例2】
【0055】
次に本発明の実施例2について説明する。図8は本発明の実施例2のステアリング装置のコラムの側面図であり、実施例1の図3相当図である。図9は本発明の実施例2の第1の揺動支持部の拡大断面図であり、実施例1の図7(a)相当図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0056】
実施例2は、第2の摩擦板をアウターコラム11に対して揺動可能に支持する第1の揺動支持部を変更した例である。すなわち、図8、図9に示すように、実施例2の第2の摩擦板7Aは、実施例1と同様に、チルト位置調整方向に長い小判形に形成され、その下方には、実施例1と同様に、チルト位置調整方向に長い長溝72が形成されて、この長溝72に締付けロッド5が挿通される。実施例2の第2の摩擦板7Aの上方には、円形のボルト孔73が貫通して形成されている。
【0057】
このボルト孔73を通してボルト74をアウターコラム11の直線状リブ18の側面にねじ込み、第2の摩擦板7Aをアウターコラム11に固定している。従って、第2の摩擦板7Aは、ボルト74の軸部741を揺動中心として、アウターコラム11に対して揺動可能に支持されている。ボルト孔73とボルト74によって、第2の摩擦板7Aをアウターコラム11に対して揺動可能に支持する実施例2の第1の揺動支持部が構成されている。
【0058】
実施例2の第1の摩擦板6は、実施例1と全く同一の構造を有するので、詳細な説明は省略するが、第1の摩擦板6をディスタンスブラケット13の側面14、15に押し付けると、実施例1と同一の構造の固定取付部によって、第1の摩擦板6がアウターコラム11に相対移動不能に固定される。実施例2では、第2の摩擦板7Aをボルト74によって、アウターコラム11に対して揺動可能に支持するので、第2の摩擦板7Aを確実にアウターコラム11に固定することができる。
【0059】
図8に示すように、アウターコラム11がテレスコ方向に変位すると、締付けロッド5が第2の摩擦板7Aの長溝72に当接するため、第2の摩擦板7Aは、ボルト74の軸部741を揺動中心として揺動する。長溝72は、チルト位置調整方向に長く形成されている。従って、第2の摩擦板7Aの揺動運動の軌跡とアウターコラム11の直線運動の軌跡の差を長溝72が吸収して、第2の摩擦板7Aが円滑に揺動し、アウターコラム11のテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。
【実施例3】
【0060】
次に本発明の実施例3について説明する。図10は本発明の実施例3のステアリング装置のコラムの側面図であり、実施例1の図3相当図、図11は本発明の実施例3のステアリング装置の縦断面図であり、実施例1の図4相当図である。図12は本発明の実施例3の第2の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第2の摩擦板の正面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)の平面図である。図13(a)は図11のQ部拡大断面図、図13(b)は図13(a)のD−D断面図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0061】
実施例3は、実施例2と同様に、第2の摩擦板をアウターコラム11に対して揺動可能に支持する第1の揺動支持部を変更した例である。すなわち、図12に示すように、実施例3の第2の摩擦板7Bは、実施例1と同様に、チルト位置調整方向に長い小判形に形成され、その下方には、実施例1と同様に、チルト位置調整方向に長い長溝72が形成されて、この長溝72に締付けロッド5が挿通される。実施例3の第2の摩擦板7Bの上方には、図12(a)で見て、紙面の奥側に向かって直角に折り曲げられた後、上方に向かって円弧状に折り曲げられた円弧状の凹面(車体下方側に向かって凹)75が形成されている。円弧状の凹面75の両端には、車体上方側に向かって凸のR面751、751が形成されている。上記した長溝72は、円弧状の凹面75の中心に向かって長く形成されている。長溝72の幅W3は、締付けロッド5が通る程度の若干の隙間を有する寸法に形成されている。
【0062】
図13に示すように、アウターコラム11の軸心近傍の側面には、円弧状の凹面75と同一の曲率半径を有する円弧状の凸面(車体下方側に向かって凸)76が形成され、円弧状の凸面76に第2の摩擦板7Bの円弧状の凹面75が接触して、円弧状の凸面76に対して円弧状の凹面75が揺動可能に支持されている。従って、第2の摩擦板7Bは、円弧状の凸面76を揺動中心として、アウターコラム11に対して揺動可能に支持されている。円弧状の凹面75の両端にR面751、751が形成されているため、円弧状の凹面75が円弧状の凸面76に引っ掛かることは無く、第2の摩擦板7Bは円滑に揺動する。第2の摩擦板7Bの円弧状の下面752は、直線状リブ18の上面182に支持される。円弧状の凹面75と円弧状の凸面76によって、第2の摩擦板7Bをアウターコラム11に対して揺動可能に支持する第1の揺動支持部が構成されている。
【0063】
実施例3の第1の摩擦板6は、実施例1と全く同一の構造を有するので、詳細な説明は省略するが、第1の摩擦板6をディスタンスブラケット13の側面14、15に押し付けると、実施例1と同一の構造の固定取付部によって、第1の摩擦板6がアウターコラム11に相対移動不能に固定される。実施例3では、第2の摩擦板7Bを揺動可能に支持するボルトが不要なので、部品点数を削減することができる。
【0064】
図10に示すように、アウターコラム11がテレスコ方向に変位すると、締付けロッド5が第2の摩擦板7Bの長溝72に当接するため、第2の摩擦板7Bは、円弧状の凸面76を揺動中心として揺動する。長溝72は、チルト位置調整方向に長く形成されている。従って、第2の摩擦板7Bの揺動運動の軌跡とアウターコラム11の直線運動の軌跡の差を長溝72が吸収して、第2の摩擦板7Bが円滑に揺動し、アウターコラム11のテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。
【実施例4】
【0065】
次に本発明の実施例4について説明する。図14は本発明の実施例4のステアリング装置の第2の摩擦板の第1の揺動支持部の側面図であり、実施例3の図13(b)相当図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0066】
実施例4は、実施例3と同様に、第2の摩擦板をアウターコラム11に対して揺動可能に支持する第1の揺動支持部を変更した例である。すなわち、図14に示すように、実施例4の第2の摩擦板7Bは、実施例3と全く同一形状を有し、その上方に、円弧状の凹面(車体下方側に向かって凹)75とR面751、751が形成されている。
【0067】
アウターコラム11の軸心近傍の側面には、実施例3と同様に、円弧状の凹面75と同一の曲率半径を有する円弧状の凸面(車体下方側に向かって凸)76が形成され、円弧状の凸面76に第2の摩擦板7Bの円弧状の凹面75が接触して、円弧状の凸面76に対して円弧状の凹面75が揺動可能に支持されている。また、直線状リブ18の上面182には、第2の摩擦板7Bの円弧状の下面752と同一の曲率半径を有する円弧状の凹面183が形成されている。
【0068】
従って、円弧状の凹面183に第2の摩擦板7Bの円弧状の下面752が接触して、円弧状の凹面183に対して円弧状の下面752が揺動可能に支持されている。第2の摩擦板7Bは、円弧状の凸面76と円弧状の凹面183に挟持されるため、摩擦板の組み付け途中に、第2の摩擦板7Bがアウターコラム11から脱落するのを防止できる。円弧状の凹面75と円弧状の凸面76、円弧状の凹面183によって、第2の摩擦板7Bをアウターコラム11に対して揺動可能に支持する第1の揺動支持部が構成されている。
【実施例5】
【0069】
次に本発明の実施例5について説明する。図15は本発明の実施例5のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図であり、実施例1の図2相当図である。図16は車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図15のコラムの側面図であり、実施例1の図3相当図である。図17は本発明の実施例5の第2の摩擦板単体の部品図であり、図17(a)は第2の摩擦板の正面図、図17(b)は図17(a)のE−E断面図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0070】
実施例5は、第2の摩擦板の面積を大きくして、クランプ力が安定するようにした例である。すなわち、図15から図17に示すように、実施例5の第2の摩擦板7Cは、チルト位置調整方向及びテレスコピック位置調整方向に長く形成された凧形(対角線が直交し、隣り合った辺の長さが等しい組が2組ある四角形)に形成され、その下方には、実施例1と同様に、チルト位置調整方向に長い長溝72が形成されて、この長溝72に締付けロッド5が挿通される。実施例5の第2の摩擦板7Cの上方には、実施例1と同様に、円柱状の凸部71が一体的に形成されている。長溝72は、円柱状の凸部71の中心に向かって長く形成されている。長溝72の幅W4は、締付けロッド5が通る程度の若干の隙間を有する寸法に形成されている。
【0071】
アウターコラム11の外周面には、実施例1と同様に、円形の凹部(図示せず)が形成され、円形の凹部に第2の摩擦板7Cの円柱状の凸部71が内嵌して、円形の凹部に対して円柱状の凸部71が揺動可能に支持されている。従って、第2の摩擦板7Cは、円柱状の凸部71を揺動中心として、アウターコラム11に対して揺動可能に支持されている。
【0072】
実施例5の第1の摩擦板6は、実施例1と全く同一の構造を有するので、詳細な説明は省略するが、第1の摩擦板6をディスタンスブラケット13の側面14、15に押し付けると、実施例1と同一の構造の固定取付部によって、第1の摩擦板6がアウターコラム11に相対移動不能に固定される。
【0073】
操作レバー55をクランプ方向に回動し、第1の摩擦板6、第2の摩擦板7Cを使用して、アウターコラム11のディスタンスブラケット13を、車体取付けブラケット3に締付ける。すると、アウターコラム11は車体取付けブラケット3に対して、第1の摩擦板6、第2の摩擦板7Cとの間に働く摩擦力によって、チルト締付及びテレスコ締付される。実施例5の第2の摩擦板7Cは、実施例1よりもチルト位置調整方向及びテレスコピック位置調整方向に長く形成されて、第1の摩擦板6との接触面積を大きくすることができるため、チルト締付及びテレスコ締付時の保持力が安定する。
【0074】
図16に示すように、アウターコラム11がテレスコ方向に変位すると、第1の摩擦板6は、アウターコラム11と一緒に、テレスコ方向に変位する。また、締付けロッド5が第2の摩擦板7Cの長溝72に当接するため、第2の摩擦板7Cは、円柱状の凸部71を揺動中心として揺動する。長溝72は、チルト位置調整方向に長く形成されている。従って、第2の摩擦板7Cの揺動運動の軌跡とアウターコラム11の直線運動の軌跡の差を長溝72が吸収して、第2の摩擦板7Cが円滑に揺動し、アウターコラム11のテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。実施例5では、第2の摩擦板7Cの形状を凧形に形成した例について説明したが、円形や多角形に形成してもよい。
【実施例6】
【0075】
次に本発明の実施例6について説明する。図18は本発明の実施例6のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図であり、実施例1の図2相当図である。図19は車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図18のコラムの側面図であり、チルト調整位置が中間位置を示す。図20は図18の縦断面図であり、実施例1の図4相当図である。図21は本発明の実施例6の第2の摩擦板単体及び第3の摩擦板単体の部品図であり、図21(a)は第2の摩擦板の正面図、図21(b)は図21(a)のF−F断面図、図21(c)は第3の摩擦板の正面図、図21(d)は図21(c)のG−G断面図である。
【0076】
図22は本発明の実施例6のコラムの側面図であり、チルト調整位置が車体上方端を示す。図23は本発明の実施例6のコラムの側面図であり、チルト調整位置が車体下方端を示す。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0077】
実施例6は、面積の大きな第2の摩擦板と第3の摩擦板を使用して、クランプ力が安定するとともに、大きなクランプ力が得られるようにした例である。すなわち、図18から図23に示すように、車体取付けブラケット3の側板33、34の内側面331、341とディスタンスブラケット13の側面14、15との間には、第1の摩擦板6、第2の摩擦板7C、第3の摩擦板8が重ね合わせて挟持されている。
【0078】
第2の摩擦板7Cがディスタンスブラケット13の側面14、15に接触して配置され、第1の摩擦板6が第2の摩擦板7Cを車幅方向の外側から挟み込んでいる。第3の摩擦板8は第1の摩擦板6を車幅方向の外側から挟み込むとともに、側板33、34の内側面331、341に接触して配置されている。
【0079】
実施例6の第2の摩擦板7Cは、実施例5の第2の摩擦板7Cと全く同一形状を有し、凧形に形成されれている。すなわち、図21(a)、(b)に示すように、第2の摩擦板7Cの下方には、実施例5と同様に、チルト位置調整方向に長い長溝72が形成されて、この長溝72に締付けロッド5が挿通される。実施例6の第2の摩擦板7Cの上方には、実施例5と同様に、円柱状の凸部71が一体的に形成されている。長溝72は、円柱状の凸部71の中心に向かって長く形成されている。長溝72の幅W5は、締付けロッド5が通る程度の若干の隙間を有する寸法に形成されている。
【0080】
アウターコラム11の外周面には、実施例5と同様に、円形の凹部(図示せず)が形成され、円形の凹部に第2の摩擦板7Cの円柱状の凸部71が内嵌して、円形の凹部に対して円柱状の凸部71が揺動可能に支持されている。従って、第2の摩擦板7Cは、円柱状の凸部71を揺動中心として、アウターコラム11に対して揺動可能に支持されている。
【0081】
実施例6の第1の摩擦板6は、実施例1と全く同一の構造を有するので、詳細な説明は省略するが、第1の摩擦板6をディスタンスブラケット13の側面14、15に押し付けると、実施例1と同一の構造の固定取付部によって、第1の摩擦板6がアウターコラム11に相対移動不能に固定される。
【0082】
図21(c)、(d)に示すように、実施例6の第3の摩擦板8は、チルト位置調整方向及びテレスコピック位置調整方向に長く形成された凧形(対角線が直交し、隣り合った辺の長さが等しい組が2組ある四角形)に形成されている。第3の摩擦板8の下方には、図21の上下方向に長い長溝82が形成されて、この長溝82に締付けロッド5が挿通される。第3の摩擦板8の上方には、円柱状の凸部81が一体的に形成され、上記した長溝82は、円柱状の凸部81の中心に向かって長く形成されている。長溝82の幅W6は、締付けロッド5が通る程度の若干の隙間を有する寸法に形成されている。第3の摩擦板8を二等分する対角線(図21(c)の上下方向の対角線)方向の長さL2は、第2の摩擦板7Cを二等分する対角線(図21(a)の上下方向の対角線)方向の長さL1よりも長く形成されている。
【0083】
車体取付けブラケット3の側板33、34には、円形の貫通孔37、37が各々形成され、円形の貫通孔37、37に第3の摩擦板8の円柱状の凸部81が内嵌して、円形の貫通孔37、37に対して円柱状の凸部81が揺動可能に支持されている。従って、第3の摩擦板8は、円柱状の凸部81を揺動中心として、側板33、34に対して揺動可能に支持されている。円柱状の凸部81と円形の貫通孔37、37によって、第3の摩擦板8を側板33、34に対して揺動可能に支持する第2の揺動支持部が構成されている。実施例6では、円形の貫通孔37、37は、車体取付けブラケット3のチルト調整用長溝35、36よりも車体前方側に形成されているが、チルト調整用長溝35、36よりも車体後方側に形成してもよい。
【0084】
操作レバー55をクランプ方向に回動し、第1の摩擦板6、第2の摩擦板7C、第3の摩擦板8を使用して、アウターコラム11のディスタンスブラケット13を、車体取付けブラケット3に締付ける。すると、アウターコラム11は車体取付けブラケット3に対して、第1の摩擦板6、第2の摩擦板7C、第3の摩擦板8との間に働く摩擦力によって、チルト締付及びテレスコ締付される。実施例6は、実施例5の効果に加えて、チルト方向の調整位置にかかわらず、第3の摩擦板8と側板33、34との接触面積を大きくすることができるため、チルト方向の保持力を大きくすることができる。
【0085】
図22、図23に示すように、アウターコラム11がチルト方向に変位すると、第1の摩擦板6及び第2の摩擦板7Cは、アウターコラム11と一緒に、チルト方向に変位する。また、締付けロッド5が第3の摩擦板8の長溝82に当接するため、第3の摩擦板8は、円柱状の凸部81を揺動中心として揺動する。長溝82は、テレスコピック位置調整方向に長く形成されている。従って、第3の摩擦板8の揺動運動の軌跡とアウターコラム11の揺動運動の軌跡の差を長溝82が吸収して、第3の摩擦板8が円滑に揺動し、アウターコラム11のチルト方向の調整を円滑に行うことが可能となる。
【0086】
アウターコラム11がテレスコ方向に変位すると、第1の摩擦板6は、アウターコラム11と一緒に、テレスコ方向に変位する。第3の摩擦板8は、側板33、34の円形の貫通孔37に円柱状の凸部81によって支持されているため、変位しない。また、締付けロッド5が第2の摩擦板7Cの長溝72に当接するため、第2の摩擦板7Cは、円柱状の凸部71を揺動中心として揺動する。
【0087】
長溝72は、チルト位置調整方向に長く形成されている。従って、第2の摩擦板7Cの揺動運動の軌跡とアウターコラム11の直線運動の軌跡の差を長溝72が吸収して、第2の摩擦板7Cが円滑に揺動し、アウターコラム11のテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。実施例6では、第2の摩擦板7C、第3の摩擦板8の形状を凧形に形成した例について説明したが、円形や多角形に形成してもよい。
【実施例7】
【0088】
次に本発明の実施例7について説明する。図24は本発明の実施例7のステアリング装置を車体後方側から見た分解斜視図、図25は車体取付けブラケットを取り外した状態を示す図24のコラムの側面図、図26は図24の縦断面図である。図27は本発明の実施例7の第1の摩擦板単体の部品図であり、(a)は第1の摩擦板の正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の平面図、(d)は(a)のH−H断面図である。図28は本発明の実施例7の第1の揺動支持部の拡大断面図であり、実施例1の図7(a)相当図である。
【0089】
図29は本発明の実施例7のステアリング装置を車体下方側から見た下面図である。図30は図28のJ−J断面図であり、(a)は通常の運転状態、(b)は二次衝突時にステアリングホイールに運転者が衝突しアウターコラムが車体前方側にコラプス移動した状態を示す。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0090】
実施例7は実施例5の変形例であり、第2の摩擦板の面積を大きくして、クランプ力を安定させるとともに、二次衝突時に、第1の摩擦板が、アウターコラム11及び車体取付けブラケット3に対して相対移動しないようにした例である。すなわち、図24から図30に示すように、実施例7の第2の摩擦板7Cは、実施例5と全く同一形状で凧形に形成され、アウターコラム11の円形の凹部(図28参照)181に、第2の摩擦板7Cの円柱状の凸部71が内嵌して、円形の凹部181に対して円柱状の凸部71が揺動可能に支持されている。従って、第2の摩擦板7Cは、円柱状の凸部71を揺動中心として、アウターコラム11に対して揺動可能に支持されている。
【0091】
実施例7の第1の摩擦板6Aは、図27に示すように、実施例1の第1の摩擦板6と主要部は全く同一の構造を有し、テレスコ調整用長溝61、上辺62、下辺63、右辺64、左辺65、折り曲げ部621、631、631、641、651が形成されている。テレスコ調整用長溝61の幅W7は、締付けロッド5が通る程度の若干の隙間を有する寸法に形成されている。実施例7の第1の摩擦板6Aでは、テレスコピック位置調整方向(図27(a)の左右方向)の中間位置に、半球状突起(突起)66が形成されている。半球状突起66は、図27(a)で見て、紙面の奥側に向かって半球状に突出して形成されている。
【0092】
第1の摩擦板6Aをディスタンスブラケット13の側面14、15に押し付けると、実施例1と同一の構造の固定取付部によって、第1の摩擦板6Aがアウターコラム11に相対移動不能に固定される。また、第2の摩擦板7Cの円柱状の凸部71に形成された円筒孔711(図17参照)に、図28、図30(a)に示すように、第1の摩擦板6Aの半球状突起66が挿入される。
【0093】
操作レバー55をクランプ方向に回動し、第1の摩擦板6A、第2の摩擦板7Cを使用して、アウターコラム11のディスタンスブラケット13を、車体取付けブラケット3に締付ける。すると、アウターコラム11は車体取付けブラケット3に対して、第1の摩擦板6A、第2の摩擦板7Cとの間に働く摩擦力によって、チルト締付及びテレスコ締付される。
【0094】
図25に示すように、アウターコラム11がテレスコ方向に変位すると、第1の摩擦板6Aは、アウターコラム11と一緒に、テレスコ方向に変位する。また、締付けロッド5が第2の摩擦板7Cの長溝72に当接するため、第2の摩擦板7Cは、円柱状の凸部71、半球状突起66を揺動中心として揺動する。長溝72は、チルト位置調整方向に長く形成されている。従って、第2の摩擦板7Cの揺動運動の軌跡とアウターコラム11の直線運動の軌跡の差を長溝72が吸収して、第2の摩擦板7Cが円滑に揺動し、アウターコラム11のテレスコ方向の調整を円滑に行うことが可能となる。
【0095】
自動車が衝突し、二次衝突時に、ステアリングホイール101に運転者が衝突すると、図30(b)の矢印111に示すように、アウターコラム11が車体前方側にコラプス移動する。この時、第1の摩擦板6Aを側板33、34側に残したままで、第1の摩擦板6Aと第2の摩擦板7Cとの間の摩擦力に抗して、第2の摩擦板7Cがアウターコラム11と一緒に、車体前方側にコラプス移動する場合がある。
【0096】
すると、第2の摩擦板7Cの円筒孔711の入口のR面取り部712が半球状突起66に乗り上げる。すると、側板34の内側面341、側板33の内側面331、第1の摩擦板6A、第2の摩擦板7C、ディスタンスブラケット13の側面14、15との間に大きな押し付け力F(図30(b)の矢印112の方向に作用する)が作用する。従って、アウターコラム11のディスタンスブラケット13を、車体取付けブラケット3に強固に締付けるため、アウターコラム11とディスタンスブラケット13は一体化して、所定の離脱力でカプセル42、42から離脱し、運転者に加わる衝撃力を緩和することができる。
【0097】
本発明の実施例では、第1の摩擦板、第2の摩擦板、第3の摩擦板が各々1枚の例について説明したが、どちらか一方を複数、または両方を複数にしてもよい。また、上記実施例では、第1の摩擦板、第2の摩擦板、第3の摩擦板を、アウターコラム11の車幅方向の両側面に配置した例について説明したが、アウターコラム11の車幅方向の片側の側面だけに配置してもよい。さらに、本発明の実施例では、アウターコラム11側に第1の摩擦板と第2の摩擦板を取り付けているが、車体取付けブラケットの側板に第1の摩擦板と第2の摩擦板を取り付けてもよい。また、上記実施例では、操舵補助部(電動アシスト機構)102を有するステアリング装置に適用した例について説明したが、操舵補助部の無いステアリング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0098】
101 ステアリングホイール
102 操舵補助部(電動アシスト機構)
103 ステアリングギヤ
104 タイロッド
105 コラム
106 中間シャフト
10 インナーコラム
11 アウターコラム
111 コラプス移動方向
112 押し付け力Fの作用する方向
12 ステアリングシャフト
13 ディスタンスブラケット
131 矩形の凹部
132 前面
133 後面
14、15 側面
16、17 テレスコ調整用長溝
18 直線状リブ
181 円形の凹部
182 上面
183 円弧状の凹面
19 矩形の凹部
21 ハウジング
22 電動モータ
23 減速ギヤボックス部
3 車体取付けブラケット
32 上板
33、34 側板
331、341 内側面
332、342 外側面
35、36 チルト調整用長溝
37 円形の貫通孔
41 車体
42 カプセル
5 締付けロッド
51 頭部
53 固定カム
54 可動カム
55 操作レバー
56 スラスト軸受
57 ナット
58 雄ねじ
6 第1の摩擦板
6A 第1の摩擦板
61 テレスコ調整用長溝
62 上辺
621 折り曲げ部
63 下辺
631 折り曲げ部
64 右辺
641 折り曲げ部
65 左辺
651 折り曲げ部
66 半球状突起(突起)
7 第2の摩擦板
7A 第2の摩擦板
7B 第2の摩擦板
7C 第2の摩擦板
71 円柱状の凸部
711 円筒孔
712 R面取り部
72 長溝
73 ボルト孔
74 ボルト
741 軸部
75 円弧状の凹面
751 R面
752 円弧状の下面
76 円弧状の凸面
8 第3の摩擦板
81 円柱状の凸部
82 長溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取付け可能な車体取付けブラケット、
上記車体取付けブラケットに、テレスコピック位置が調整可能に支持されると共に、ステアリングホイールを装着したステアリングシャフトを回動可能に軸支したコラム、
上記テレスコピック位置調整方向に長く形成され、上記コラムに固定取付部によって相対移動不能に固定された第1の摩擦板、
上記第1の摩擦板に重ね合わせて、上記コラムに第1の揺動支持部によって揺動可能に支持された第2の摩擦板、
所望のテレスコピック位置で、上記車体取付けブラケットに上記コラムをクランプするために、互いに重ね合わされた上記第1の摩擦板と第2の摩擦板を介して、コラムを車体取付けブラケットに締付ける締付けロッド、
上記第1の摩擦板に形成され、テレスコピック位置調整方向に長く形成されて上記締付けロッドが挿通されるテレスコ調整用長溝、
上記第2の摩擦板に形成され、上記締付けロッドが挿通される長溝を備えたこと
を特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたステアリング装置において、
上記第2の摩擦板がテレスコピック位置調整方向に対して直交する方向に長く形成されていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたステアリング装置において、
上記第2の摩擦板がテレスコピック位置調整方向に対して直交する方向及びテレスコピック位置調整方向に長く形成されていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたステアリング装置において、
上記第2の摩擦板の長溝は、上記第2の摩擦板の第1の揺動支持部に向かって長く形成されていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項1に記載されたステアリング装置において、
上記車体取付けブラケットに形成され、チルト位置調整方向に長く形成されて上記締付けロッドが挿通されるチルト調整用長溝を備え、
上記コラムが車体取付けブラケットにチルト位置及びテレスコピック位置が調整可能に支持されていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたステアリング装置において、
上記第1の摩擦板と第2の摩擦板が、
上記車体取付けブラケットの側板の内側面とコラムとの間に挟持されていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたステアリング装置において、
上記第1の揺動支持部が、
上記第2の摩擦板に形成された円柱状の凸部と、
上記コラムに形成され、上記円柱状の凸部を揺動可能に支持する円形の凹部で構成されていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項8】
請求項6に記載されたステアリング装置において、
上記車体取付けブラケットに形成され、チルト位置調整方向に長く形成されて上記締付けロッドが挿通されるチルト調整用長溝、
上記第1の摩擦板と車体取付けブラケットの側板との間に挟持され、上記車体取付けブラケットの側板に第2の揺動支持部によって揺動可能に支持された第3の摩擦板、
上記第3の摩擦板に形成され、上記第2の揺動支持部に向かって長く形成されて上記締付けロッドが挿通される長溝を備えたこと
を特徴とするステアリング装置。
【請求項9】
請求項6に記載されたステアリング装置において、
上記第2の摩擦板の第1の揺動支持部に形成された円筒孔、
上記第1の摩擦板に形成され、上記円筒孔に内嵌して上記第2の摩擦板を揺動可能に支持する突起を備えたこと
を特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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