説明

ステロール処方物の製造方法

本発明は、被覆ステロール粉末の製造方法に関する。本発明の方法では、a)微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子をミキサーに導入し、b)前記微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子を、タンパク質含有水溶液/分散体で湿潤し、c)前記湿潤粒子を十分に混合し、その後、乾燥し、d)適切である場合には、前記乾燥混合物をミルで粉砕する。本発明の方法によって製造されたステロール含有処方物は、その良好な湿潤性の故に、複雑な技術を用いなくても食品に配合でき、飲料および乳製品に使用すると、優れた官能特性および感覚特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の分野にあり、容易に湿潤させることができる植物ステロールを含む処方物の製造方法、この方法にしたがって製造された調製物、さらにこれらの処方物を含む製品、特に食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロール降下剤として使用される、わずかに水溶性の植物ステロールや植物スタノールを、食品調製物または医薬品に配合することができる多数の可能な処方法が、応用技術から公知である。
【0003】
多数の特許出願に、主に微粉化により粒径を小さくすることによって、ステロールの有効性を改善できる方法が記載されている。たとえば、ドイツ出願公開番号DE 102 53 111 A1には、水の中に容易に再分散させることが可能な、0.01〜100μmの平均粒径を有する粉状の植物ステロール処方物が記載されている。好ましくは、保護コロイドとして親水性助剤を使用する。該粉末の製造には、生態学と許容性の点で不利な有機溶媒を使用する。国際公開公報WO2005/074717 A1もまた、タンパク質と炭水化物を含むマトリックスの中にステロールを埋め込むことによって、ある種の保護コロイドを使用している。しかし、処方物中の全ステロール含有量は、助剤の割合が大きいことが原因で少ない。
【0004】
ステロールの粒度分布が0.1〜30μmであるステロール分散体のさらなる製造方法は、国際公開公報WO03/105611およびWO2005/049037に見出すことができる。この方法においてそうであるように、ステロール粒子単独をやたら微粉化することは、良好な配合を実現するには不十分である。微分散粒子の生体利用効率は表面積を大きくすることによって改善し得るが、特に、微粉化された粒子は湿潤性が乏しく、容易に凝集してしまい、通常は水面に浮遊する。また、欠点は、製造中の分散体の熱応力である。多くの場合、粉砕されたステロールは、激しい混合を必要とする特殊な方法を使用しないと飲料の中に分散させることができない。しかし、これらの装置は、通常、末端消費者、食品製造業者は入手することができない。
【0005】
したがって、多くの製造業者は、ステロールの微粉化を乳化剤の付加的な使用と組み合わせている。その一例は、選択された乳化剤との混合物中で最大15μmの粒径を持つステロールとステロールエステルを含有する、欧州特許EP 0897671 B1において特許請求された調製物である。ここでは、水相の中でのステロールに対する乳化剤の重量比は1:2未満である。
【0006】
国際特許出願公開公報WO03/086468 A1には、低いタンパク質含有量を有し、乳化剤としてモノグリセリドおよびジグリセリドを含有する、粉状のステロールエステル処方物が開示されている。たとえ、これらが優れた許容性を特徴とし、かなり以前から食品用の乳化剤としてすでに知られていたとしても、乳化剤の量を減らすか、あるいはさらには、これらを完全に除外する試みが行われる。なぜなら、乳化剤は、食品の中に存在する他の物質の生体利用効率にも影響を及ぼすか、あるいは、処方物の安定性に悪影響を与える可能性があるからである。
【0007】
可溶性と分散性を改善する他の方法(たとえば、エマルジョン、マイクロエマルジョン、分散体、懸濁液としての処方、または、シクロデキストリンまたは胆汁酸塩での錯化)が、国際特許出願公開公報WO99/63841 A1に示されている。提案されている支持体は、PEG、PVP、コポリマー、セルロースエーテルおよびセルロースエステルである。これらの処方物の欠点は、ステロールの十分な濃度を達成するために最終処方物に添加される賦形剤の画分がしばしば非常に大きいことである。また、予め混合された形態で粉状ステロール用支持体として食品原料物質を直接使用することが、EP 1 003 388 B1に開示されている。非エステル化ステロールおよびスタノール用の支持物質としてのタンパク質の選択は、WO01/37681に開示されている。
【0008】
特に、それらのエステル化誘導体よりもはるかに疎水性が高い非エステル化ステロールおよびスタノールの処理は、その製造方法に厳しい要求を課す。加えて、粉砕された遊離ステロールには、これらが低い最小点火エネルギー(MIE<3mJ)を有するという欠点があり、したがってこれらの生成物は点火に対して極めて感度が高いものとして分類される。したがって、遊離ステロールを使用する場合には、相応の安全措置に留意しなければならない。
【0009】
ステロール含有微粒子の可能な製造方法は、欧州特許EP 1148793 B1に見出し得る。同方法は、高エネルギーでの均質化に基づく。しかし、水性懸濁液媒体をベースとして同方法により製造された粉末は適切ではない均質性を有しており、再分散可能であるとしても困難を伴う。多くのステロール含有粉末処方物の欠点は、保存中に遊離ステロールが凝集挙動を示すことである。保存中、特に該処方物を加圧下で保存するならば、著しい凝集または塊の形成が観察され、その後に処理できるようにするためには、抑制されなかった固体凝集物を再び粉砕しなければならない。
【0010】
国際特許出願公開公報WO2006/020980 A1には、ステロール粒子の凝集物が記載されている。その製造方法は、接着性顆粒の大きさを拡大する造粒法であり、微粉化されたステロール粒子を、結合剤が部分的にまたは完全に溶解された懸濁液媒体で湿潤させる。残される凝集物が150〜850μmの大きさとなるように、湿潤後、懸濁液媒体を除去する。この方法には装置の高度な使用が必要であり、得られる凝集物が所望される安定性を持つためには、極めて正確に制御されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ドイツ出願公開番号DE 102 53 111 A1
【特許文献2】国際公開公報WO2005/074717 A1
【特許文献3】国際公開公報WO03/105611
【特許文献4】国際公開公報WO2005/049037
【特許文献5】欧州特許EP 0897671 B1
【特許文献6】国際特許出願公開公報WO03/086468 A1
【特許文献7】国際特許出願公開公報WO99/63841 A1
【特許文献8】EP 1 003 388 B1
【特許文献9】WO01/37681
【特許文献10】欧州特許EP 1148793 B1
【特許文献11】国際特許出願公開公報WO2006/020980 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、簡単で迅速な方法を使用して製造でき、食品への非エステル化ステロールおよび/またはスタノールの良好で迅速な分散および配合を可能にし得る、高濃度ステロール含有処方物を提供することである。該処方物は、食品において優れた感覚特性と官能特性を有するはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
a)微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子をミキサーに導入し、
b)前記微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子を、タンパク質含有水溶液/分散体で湿潤し、
c)前記湿潤粒子を十分に混合し、その後、乾燥し、
d)適切である場合には、前記乾燥材料をミルで粉砕する、
被覆ステロール粉末の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
驚くべきことに、タンパク質含有水溶液を微粉化粉末の混合の際に噴霧しさえすれば、単純なプロシェアミキサーの使用にもかかわらず、乾燥(工程c)後に、粉末のその後の粉砕(工程d)を除外することができ、最初に使用された材料の粒径から実質的に逸脱した粒径の被覆ステロール粉末を伴うこともない。わずかな粒径の拡大しか検出され得ない。
【0015】
工程d)の実施後でさえ、粒度分布は、使用された微粉化ステロールおよび/またはスタノールの粒度分布よりもわずかに大きくなったにすぎないはずである。
【0016】
したがって、工程a)で使用されるステロール粒子および/またはスタノール粒子は、最大100μmのD90%、好ましくは最大40μmのD90%、特に好ましくは最大30μmのD90%を有する粒度分布を有する。粒度分布は、ベックマン・コールター社製機器LS 230型を使用して測定し、体積分布として計算した。測定は水性懸濁液の中で行った。
【0017】
噴霧による被覆後、ほぐれた顆粒が形成され、これは、適切である場合には、粉末が最大1000μmのD90%を有する粒度分布を有するものとして分類され得る。被覆がペースティングによって進行する場合には、一般的には、次いで乾燥材料の粉砕を実施し、その際に、粒径を所望される程度に調整することができる。
【0018】
国際特許出願公開公報WO 2006/020980 A1にすでに記載されているように、被覆材料として、タンパク質含有水性被覆材料、特に粉乳またはカゼイン酸ナトリウムを使用することによって、他の親水化助剤を含有するステロール処方物と比較して、水分散性が改善される。
【0019】
本発明の方法は、遊離非エステル化ステロールまたはスタノールを用いて粉末を製造することも可能にする。これにより、食品(特に、飲料)の中で、親油性の有効成分を容易にさらに処理することができるようになる。粉末は凝集傾向が低く、したがって、優れた流動性を有する。粉末は優れた均質性を特徴とし、その改善された湿潤性によって、高度な技術的手段を用いずともさらに処理することができ、最終処方物の中での均一な分布も迅速に達成される。親水性添加剤でのステロール表面の被覆によって、官能特性と感覚特性は明らかに改善される。被覆された粉末は歯および口腔粘膜に長く留まらず、したがって、有効成分を含む食品において相当な味の低下を招く不快なステロールの味が完全に抑えられる。それにもかかわらず、この場合、助剤の画分を低く保つことができ、したがって、高度に濃縮されたステロールおよび/またはスタノール粉末が得られ、それにより、さらなる処理の間に、多量の粉末を投入することなく、食品または別の最終処方物において十分な量のステロールおよびスタノールを達成できる。
【0020】
親水化タンパク質含有助剤を使用することによって、溶解特性および分散特性が改善されるばかりではなく、驚くべきことに、これらの粉末はまた、高い凝集傾向を有する純粋な粉砕ステロールと比較して高い保存安定性も示す。
【0021】
本発明の方法は、非エステル化ステロールおよびスタノールの処理において、有機溶媒の使用または処方物の加熱を回避することを可能にし、水性媒体であるにもかかわらず、特に、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルのタイプの高い表面活性を有する乳化剤の削減を可能にする。親水化助剤、特に、カゼイン塩および粉乳の低い乳化特性は、製造される粉末の均質性、容易な再分散性および加工性を確保するには十分である。さらなる乳化剤の削減により、他の食品構成成分との起こり得る不適合性を低減することによってさらなる処理が簡単となり、消費者との不適合性の発生が減少する。
【0022】
意外なことに、グルコースおよびアラビアゴムのような他の助剤は、それらの強い親水化特性にもかかわらず、スキムミルク粉末またはカゼイン酸ナトリウムのように良好な分散特性を有さない。この挙動は、おそらく、アラビアゴムおよびグルコースの水への溶解が迅速すぎ、その結果、ステロールの被膜が部分的に分離し、ステロール粒子表面の親油性が再び次第に現れるという事実によって説明され得る。
【0023】
得られる粉末は、従来の細かく砕かれたステロールと比較して、改善された自由浮遊特性、水への良好な撹拌性(stirability)、および高いかさ密度(bulk density)を特徴とする。被覆粉末は、冷水、ジュースまたは牛乳のような水性系に単純に撹拌することによって添加することができる。
【0024】
製造は、装置を極めて低度に使用して実行され得る。たとえば、混合過程は、従来の市販粉末ミキサーを使用して行うことができる。単純なブレードミキサー、混練ミキサーまたはプロシェアミキサーが、効率的な混合操作にとって十分である。この操作は、1時間〜最長2時間で完了されるべきである。
【0025】
その後、微粉化ステロールおよび/またはスタノール粉末は、タンパク質含有水溶液を単純に噴霧することによって、またはミキサーに該溶液を直接添加する(ペースティング)ことによって湿潤され得る。従来の被覆法(たとえば、流動床法または押出し法)は除外されないが、装置の構造が原因で、噴霧デバイスを備えた単純な撹拌装置が好ましい。
【0026】
乾燥(工程c)については、従来の乾燥法(たとえば、真空乾燥または噴霧乾燥)が適しており、本明細書中ではまた、真空乾燥が、微細な自由浮遊粉末を得るために十分である。
【0027】
湿潤のために、タンパク質含有溶液でのペースティングを選択するならば、所望の粒度分布を得るために、真空乾燥後の凝集および粒度分布に応じて、その後の粉砕操作が必要である。粉砕のために工程d)で使用されるミルは、ローター/ステーター原理に基づくか、またはボールミルであるべきである。したがって、製造装置の資金の使用も、なお極めて低い。粉砕材料の冷却は、処方物の極めて低い発熱の故に除外することができる。
【0028】
乾燥後に得られる粉末は、被覆粉末の全重量に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも93wt%、特に好ましくは少なくとも95wt%の、極めて高いステロール含有量を有する。
【0029】
したがって、さらなる対象物質は、ステロールおよび/またはスタノール並びに適切である場合にはさらなる親油性助剤からなるコア、並びにカゼイン酸ナトリウム粉末および/または粉乳並びに適切である場合にはさらなる親水性助剤からなる被膜を含有する粒子を含んでなる粉状被覆ステロール調製物である。ただし、ステロール調製物は、処方物全体に基づいて、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも93wt%、特に好ましくは少なくとも95wt%のステロールおよび/またはスタノールを含有する。好ましくは、被覆処方物は、高い表面活性を有する乳化剤、特に、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルによって形成される群から選択される乳化剤を含有しない。
【0030】
本発明の方法によって製造されるステロール含有処方物は、食品、特に、牛乳、乳飲料、ホエー飲料、ヨーグルト飲料、マーガリン、果汁、果汁混合物、果汁飲料、野菜ジュース、炭酸飲料および非炭酸飲料、豆乳飲料、またはタンパク質を多く含む液体の食品代替飲料、ならびに、醗酵乳調製物、ヨーグルト、ヨーグルト飲料またはチーズ調製物に簡単な方法で配合できるが、医薬品にも簡単な方法で配合できる。
【0031】
本発明はさらに、上記組成のステロール/スタノール処方物を含む食品調製物に関する。該調製物は、好ましくは、飲料および乳製品に使用される。この場合、食品の全重量に基づいて、0.1〜50wt%、好ましくは1〜20wt%の粉状の被覆調製物が含まれる。
【0032】
ステロールおよび/またはスタノール
本発明では、植物ステロールおよび植物スタノールと称される、植物および植物原料から得られたステロールを使用する。公知の例は、エルゴステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、アベナステロール、デスモステロール、クリオナステロール、スチグマステロール、ポリフェラステロール、カリノステロール、シトステロールおよびそれらの混合物である。これらの中でも、β−シトステロールおよびカンペステロールを使用することが好ましい。同様に、スタノールと称される水素化された飽和形態のステロールが使用される化合物であり、ここでは、β−シトスタノールおよびカンペスタノールも好ましい。植物原料源としては、とりわけ、大豆、キャノーラ、パーム核、とうもろこし、ココナツ、セイヨウアブラナ、サトウキビ、ひまわり、オリーブ、綿、大豆、ピーナッツの種子および油、またはトールオイル製品に由来する製品が役立つ。
【0033】
タンパク含有助剤および/またはタンパク質
使用されるタンパク含有助剤およびタンパク質は、好ましくは、粉乳および/またはホエー粉末および/またはカゼインおよび/またはカゼイン塩である。商業的に入手可能な全乳および乾燥によってそれぞれの牛乳の品質グレードから得られるスキムミルク粉末のような粉乳が特に適している。これらは、他のタンパク質との混合物として、または単独の支持体として使用することができる。他のタンパク質を添加するか、またはタンパク質を支持体としての粉乳の代わりに使用する場合には、これらには、天然の動物源および植物源から得られた単離タンパク質が含まれ、粉状調製物の製造中に添加される。タンパク質の可能な供給源は、コムギ、大豆、ハウチワマメ、トウモロコシのような植物であるか、あるいは、卵または牛乳のような動物起源の供給源である。
【0034】
スキムミルク粉末は、本発明において特に好ましい。なぜなら、これは十分な親水化特性を有しており、したがって、飲料および乳製品(特に、ヨーグルトのような発酵製品)の製造に別の方法で通例使用されている、冒頭に記載されたような食品乳化剤の欠点を同時に示すこともないからである。加えて、スキムミルク粉末は、典型的な不快なステロールの味を最もうまく隠し、この添加剤を含む処方物は、他の助剤と比較して官能特性が改善されている。
【0035】
スキムミルク粉末およびカゼイン酸ナトリウムで被覆されたステロール処方物が特に良好な分散特性を有することが見出された。なぜなら、それらは、第1に、水性系での湿潤性を高めるために十分に優れた親水性を有しており、第2に、それらは、ステロール表面から直ちに溶解する過度に優れた水溶性は有していないからである。被覆粉末の全重量に基づいて、最大10wt%、好ましくは最大7wt%、特に好ましくは最大5wt%の量が、改善された分散および処理特性を得るために十分である。国際出願公開公報WO 2005/074717 A1に記載されているように、微粉化ステロールを被覆するだけで、相対的に多量の親水化助剤の中に埋め込まないという事実の結果、処方物中のステロールの全含有量を極めて高く保つことができる。
【0036】
他の助剤
他の助剤として、本発明の調製物は、抗酸化剤、保存剤および流れ改良剤を含有することができる。可能な抗酸化剤または保存剤の例は、トコフェロール、レシチン、アスコルビン酸、パラベン、ブチル化ヒドロキシトルエンまたはブチル化ヒドロキシアニソール、ソルビン酸または安息香酸、ならびにそれらの塩である。好ましくは、トコフェロールを抗酸化剤として使用する。流れ調整剤および流れ改良剤としては、二酸化ケイ素を使用することができる。
【実施例1】
【0037】
噴霧および乾燥による被覆
450gの微粉化ステロール粉末(Vegapure(登録商標)FTE, Cognis(ドイツ国在)、粒径100μm未満)を、実験用ミキサー(Loedige, M5R型)に、室温で導入した。スキムミルク粉末(噴霧乾燥されたスキムミルク粉末ADPIグレード、供給業者:Almil(ハートホンブルク在))50gの水(60℃)300g溶液を混合しながら噴霧した(回転速度50%)(噴霧時間5分)。混合を30〜40℃で30分間続けた(回転速度15%)。続いて、混合物を60°/1mbarで真空乾燥し、水分含有量を5%未満にした。
【0038】
これにより、使用したステロール粉末と比較して、改善された自由浮遊特性、水への良好な撹拌性、および高いかさ密度を有する微細顆粒を得た。
【実施例2】
【0039】
噴霧および乾燥による被覆
450gのステロール粉末(Vegapure FTE, Cognis(ドイツ国在)、粒径100μm未満)を、実験用ミキサー(Loedige, M5R型プロシェアミキサー)に室温で導入した。スキムミルク粉末(噴霧乾燥されたスキムミルク粉末ADPIグレード、供給業者:Almil(ハートホンブルク在))50gの水(60℃)250g溶液を混合しながら噴霧した(回転速度50%)(噴霧時間5分)。続いて、混合を30〜40℃でさらに30分間続けた(回転速度15%)。
【0040】
その後、混合物を真空乾燥し、水分含有量を5%未満にした(ロータリーエバポレーターによる反応器乾燥のシミュレーション/浴温度70℃/圧力40mbar/時間2時間)。
【0041】
これによっても同様に、改善された自由浮遊特性、水湿潤性、および高いかさ密度を有する微細顆粒を得た。
【実施例3】
【0042】
ペースティング、乾燥、および粉砕による被覆
a)最終処方物(親水化ステロール粉末)に基づいて7wt%のスキムミルク粉末
85gのスキムミルク粉末(噴霧乾燥されたスキムミルク粉末ADPIグレード、供給業者:Almil(ハートホンブルク在))を、1125gの脱イオン水に80℃で溶解させた。混練機(Braun社製台所用品)の中に、1125gの微粉化ステロール(Vegapure(登録商標)FTE)を導入し、粉乳溶液を添加した。これにより滑らかなドウを得、それを、真空乾燥庫(50℃/50mbar未満)の中で乾燥し、その後、カッティングミル(Retsch Grindomix GN 200;条件:2000rpm, 30秒)で粉砕した。
【0043】
実施例3と同様に、以下の親水性被膜を適用した:
3 b)5wt%のスキムミルク粉末
3 c)10wt%のスキムミルク粉末
3 d)10wt%のNa−カゼイン塩(Meggle社製Emulac Na)
3 e)5wt%の乾燥グルコースシロップ(Roquette社製Glucidex IT 33)
3 f)5wt%のアラビアゴム(Alfred L. Wolff,Gum Arabic 8074型)
【0044】
実施例3にしたがって製造された全ての親水化ステロール粉末は、良好な自由浮遊特性、注型適性および流動性、並びに固まりを形成することのない良好な保存能を特徴とした。しかし、水分散性に関しては、それぞれの被覆ステロール粉末は大きな違いを示した。
【0045】
実施例3にしたがって製造されたステロール粉末を、室温で水中に分散させた。これについては、およそ250mlの試験用液体をガラスビーカーに入れ、100rpmで撹拌した。2.5gのそれぞれの粉末を撹拌した液体に添加し、分散挙動を評価した。
【0046】
【表1】

【0047】
驚くべきことに、グルコースおよびアラビアゴムは、それらの高い親水性にもかかわらず、スキムミルク粉末またはカゼイン酸ナトリウムと同様の良好な分散特性を有していなかった。グルコースおよびアラビアゴムで被覆された多量のステロール粒子は浮遊し、撹拌された水の表面上に残留した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子をミキサーに導入し、
b)前記微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子を、タンパク質含有水溶液/分散体で湿潤し、
c)前記湿潤粒子を十分に混合し、その後、乾燥し、
d)適切である場合には、前記乾燥材料をミルで粉砕する、
被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項2】
タンパク質またはタンパク質含有助剤を粉乳および/またはカゼイン塩から選択することを特徴とする、請求項1に記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項3】
前記微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子にタンパク質含有水溶液/分散体を噴霧し、粒子の乾燥後、さらなる粉砕(工程d)を行わないことを特徴とする、請求項1または2に記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項4】
工程d)の実施後、被覆粉末のD90%の形態での粒度分布が、工程a)で使用された微粉化ステロール粒子および/またはスタノール粒子のD90%よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項5】
最大50μmのD90%を有する粒度分布のステロール粒子および/またはスタノール粒子を工程a)で使用し、工程d)の実施後、粒度分布が最大1000μmのD90%を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項6】
プロシェアミキサーを工程a)で使用することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項7】
ステロールおよび/またはスタノール並びに適切である場合にはさらなる親油性助剤からなるコア、並びにカゼイン酸ナトリウム粉末および/または粉乳並びに適切である場合にはさらなる親水性助剤からなる被膜を含有する粒子を含んでなる粉状被覆ステロール調製物であって、ただし、前記ステロール調製物は、処方物全体に基づいて、少なくとも90wt%のステロールおよび/またはスタノールを含有する、粉状被覆ステロール調製物。
【請求項8】
請求項7に記載の粉状被覆ステロール調製物を0.1〜50wt%含む食品。
【請求項9】
請求項7に記載の粉状被覆ステロール調製物を0.1〜50wt%含む飲料および乳製品。

【公表番号】特表2010−511392(P2010−511392A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539638(P2009−539638)
【出願日】平成19年11月24日(2007.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010230
【国際公開番号】WO2008/067924
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】