説明

ステントまたはそれに関連する改良

【課題】 動脈瘤が発生しているか、または発生しようとしている血管に対し、それにサポートを与えるべく、外部に適用されるためのステントが提供されている。
【解決手段】 このステントは、たとえばMRI、CAD、およびRPを用いて取込まれた動脈の実際の輪郭に対し、形態学的に合致するべく創製することにより、あつらえの性質をもつものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトにおける使用のためのステントにおける、またはそれ関連する改良に関するものである。
【0002】
本発明は、特に上行大動脈に関連した使用のためのステントに、排他的ではなく関係する。
【背景技術】
【0003】
大動脈切開は、動脈の破裂が機構不全を生じる結果となる劇的な出血を引き起こすことから、致命的な出来事であるか、またはそうである可能性がある。かなりの数の人々を苦しめている1つの特殊な症状は、マルファン(Marfan)症候群として知られるものであり、それは身体の結合組織に影響を及ぼし、その程度は、動脈根部が心臓からの血流の拍動でやがては脆弱化の焦点となるほどである。動脈を作る組織は脆弱化され、それゆえ動脈直径の付随した増加とともに広がり、裂傷または動脈瘤を生じる。切断面における動脈壁は薄くなり、もしも拡張が増大すれば、さらなる破裂が上記の結果とともに起こることとなる。さらに、大動脈弁が動脈根部に形成されており、その拡張は、漏出が起きている弁の作動効率に付加的かつ有害な影響を与える。
【0004】
もちろん、動脈根部の切開はマルファン症候群の患者に限らず、だれにでも影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
慣例的には、この問題に選択的にまたは緊急ベースで取組むための外科的手法は、大動脈内のステントの挿入または、大動脈根部の除去および、機械的な弁、またはある症例ではブタの弁を取入れたステントによるその置換を含み、ステントは適切に縫合される。別の手法においては、ステントは適当な切開処置の後に大動脈根部内に挿入され、次いで元通りに適切に縫合される。これらの手法は、しかしながら、時間およびコストの双方において相当な支出を必要とする。心/肺バイパス装置の開発は、そのような手法に関連した全ての感染の危険性により必要である。術後には、血液と、今取付けられた根部および弁を組合せた内部置換物との間の密接な接触の故に、継続した感染の危険性が、時間に関する制限なしに残存する。たとえば歯科医療のような、外科手術を受けた患者は、身体に対する潜在的な侵入活性が予測される場合はいつでも、抗生物質による防御を確保するよう絶え間なく注意するべきである。さらに、この種の外科手術に続く凝血の危険性の増大により、必ず必要とされるINRをチェックするための血液検査とともに、抗凝固薬が通常、毎日投与されねばならず、したがって患者のケアという継続的コストを増加する。
【0006】
内部に配置された通常のステントは一般に、合成材料から製造され、その一つの例は、商品名ダクロン(DACRON(登録商標))として市販されている、頑丈な弾性特性をもつポリマーエステルである。内部ステントのいくつかのデザインにおいては、柔軟性と組合わされた硬さの程度をもたらす補強が施されており、螺旋状に巻いたオープンコイル型またはメッシュインサートの形状をとってよい。柔軟性は、動脈の様々な蛇行に適応するために必須であるが、たとえばねじれによる変形に抵抗するため、硬さもまた必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
動脈瘤を治療するための通常の内部ステントは、適当にフィットするようなサイズの範囲で市販されている。しかしながら、動脈瘤の箇所においては、膨張した動脈の内部輪郭に対して成形してはいない。内部ステントは、動脈瘤のどちらかの側の動脈内に局在しており、それゆえステントの外側にポケットが形成されることがあるが、動脈内であるためこれらのポケットは血液を含むことがある。根部の除去と、ステントおよび弁の置換とによる大動脈根部置換の症例では、ステントの直径は、もし弁が置換される場合には、左心室内の出口開口か、またはもし弁が置換されない場合には、より下位の動脈にマッチするよう選択される。したがって、大動脈弓に隣接した大動脈の上端へのステントの移植は、グッドフィットといったものにはならない傾向がある。
【0008】
本発明の目的は、現在必要とされているような侵入特性をもつ手法を不必要にする、新規な改良されたステントを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、結果として得られるステントが特注の形状のものである、新規な改良されたステントの製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の実施態様によれば、血管の外部の位置に適したステントであって、該ステントが、前記血管の周囲に局在可能でありかつ前記血管と形態学的に関連するように形成されているステント、および、該ステントを前記血管とそのような関係に維持するための手段を提供する。
【0011】
ステントはスリーブを含んでもよく、それは2つの部分からなってよく、ほぼ円筒形であるが、任意の特別の場合の形態学的必要性に適合するため、形状の変化する1以上の断片を含んでよい。
【0012】
スリーブは、他の相互に連絡する血管または、ステントによってサポートされている血管に隣接する構造物を収容するための、適切に局在するくぼみまたは開口が設けられる。
【0013】
ステントのスリーブには、主要な心臓構造物、たとえば心室筋への付着のためのベースまたはフランジ部分が設けられてよく、保護またはアンカーポイントがステントに確立されるようにする。ベースまたはフランジ部分は、前記構造物への適当な縫合または他の手段のために適応されてよい。たとえば、他の手段は、ステープルまたは接着を含んでよい。
【0014】
本発明のステントの別の形状においては、スリーブは心臓構造物に固定されることが必要とされなくてよく、また付加的な確保を不要にするほど、血管に対して形態学的上サイズマッチしたものであってよい。そのような状況においては、ステントは血管、たとえば上行大動脈の形に効果的に成形し、この様式で、必要なサポートおよび、必要とされる実用的な場所を提供する。1つの実施態様においては、ステントは相対方向のいずれかの末端において先細りになってよく、血管上の所定の位置にある場合、ステントはその位置に固定し、したがってその適切な場所において維持されるようにする。
【0015】
スリーブの部品の相互連絡は、この部品のメイティングエッジ(mating edge)に供給されたリリース可能なラッチのある蝶番機構によって行なわれる。
【0016】
他の実施例として、スリーブは、それが動脈壁上に広がること、さらにまた、もとの状態を回復することを可能にするべく、長手方向にスリットの入った弾性の材料からなってよく、該スリーブは、前記形態学的な関係において動脈を受入れる位置において、適当にクランプすることが可能である。クランピングは適当な留め具、たとえばスリーブの周囲をしっかり固定する結束バンドとして知られるものの適用により実現されてよく、それには留め具を受入れかつ位置を定めるための1以上の溝が設けられてよい。別法としてクランピングは、スリーブ内のスリットのメイティングエッジに設けられた蝶番素子を通した伸縮可能な錠ピンの挿入により行なわれてもよい。
【0017】
ステントスリーブの部品を一緒に固定する他の手段が、本発明から離れることなく採用されてよいことが理解されるであろう。たとえばジップファスナは、妨げになるかもしれない表面の存在を避けるべく適切に設計され、かつ目的に適合した手段により供給される。特に、血管,たとえば大動脈と接触しているファスナの表面は、腐食を生じないような性質のものであるべきである。この点に関しては、保護フラップが設けられることも可能である。
【0018】
ステントのスリーブは、いろいろな厚さのものでよく、付着箇所に強度を与えるため、最大の厚さはその基部またはフランジ部分に与えられる。したがって厚さは、その部位から離れたところでは減少してよく、動脈を通した血液の拍動に対応する必要があるとすれば、ある程度の屈曲を与えるようにする。
【0019】
スリーブは、外側のケーシングと、相対的に内側のケーシングを有してもよく、外側のケーシングは内側のケーシングよりも、より剛性のある構造のものであり、後者は上記の湾曲を与えるべく設定されてよい。この関係において、内側のケーシングは、動脈を包囲するがしかし屈曲を可能にするべく、花弁状の形状でよい。
【0020】
別の実施態様においては、本発明のステントは、らせん型に配列した1以上の部品から形成され、それによって、血管を取囲む位置にあるとき、親密なサポートがそこに与えられるようにする。この実施態様の利点は、血管上に栄養補給すること、およびらせん形に巻いたコイルをリフォームして一元的なサポートを提供するその潜在性にある。所定の場所で、らせん形成はオープンコイルまたはクローズドコイルを形成してよく、したがって血管を取囲むフォーマのような構造を構成してよい。この実施態様は、必要な軸長および形状に依存して、1つ以上の断片をなしてよい。断片には適当な相互連絡が与えられており、らせんフィラメントの形状かまたはその同等物でよく、それにより、締めるときコイルが血管を取囲んでサポートするようにする。
【0021】
本発明のらせん形のステントは、その隙間の範囲内での組織の成長を可能にしてよく、それにより血管に対するその完全性および、同時にその強度を高めるのに役立つ。
【0022】
ステントの内表面は、何ら腐食または摩耗が起こらぬよう、滑らかでなければならず、また同様の理由から、ステントの外表面は同様に、隣接する身体の他の部分、たとえば他の血管または心嚢壁に対して耐性でなければならない。
【0023】
ステントの内表面は、腐食および摩耗を最少にするべく、また血管の外表面から生じてステントに接触してくることがある代謝産物を、出口において援助するべく、適当に輪郭をつけるかまたは側面を描かれてよい。ステントの内表面は、この同一平面内において、おそらくは蠕動性の作用により、心臓周囲の空間内への代謝産物の動きを促進してよい。さらに、この様式でステントに輪郭をつけるかまたは側面を描くことは、血管、たとえば大動脈の軸方向の動きを限定する助けとなり、それによりステントの範囲内への血管の封じ込めを保証する傾向がある。したがって、ステントは血管の直径方向に加えて軸方向の動きに対する機械的なバリアとしての役割を果たす。
【0024】
ステントが製造される材料は、その破裂強さ、曲げ強さ、引張り強さ、液体の空隙率、荷重の配分、および、特に心筋に装着するための全般的な保証の実施態様から、構造上の完全性をもたねばならない。さらに、材料はある程度の不透明性をもつべきであるが、非侵入性の研究手法、たとえばMRIスキャンを行なえるようにする目的のためには、半透明でなければならない。材料は、しかしながら、電磁場の作用に対し、耐性でなければならない。
【0025】
材料はまた、その作業環境について潜在的な可変性があるとすれば、熱安定性でなければならず、身体の構造内のその場所について生物適合性であるべきである。特に、それは機械的、化学的、熱的、タンパク質的、酵素的、および心膜液の生物適合性と、任意のこれらの供給源からの攻撃に対する抵抗性とをもつべきである。
【0026】
ステントが製されてよい材料は、やがては徐々に放出されることが可能な抗生物質を含有してよく、抗生物質成分はステントの製造の間に組込まれる。
【0027】
ステントが製造されてよい材料は、上述の強さおよび適合性の必要条件を満たすための、ポリマー、金属、またはセラミックか、あるいはそれらの適当な混合物であってよい。適切であってもよいもう1つの材料は、熱収縮プラスチック材料であり、形という実施態様では直後に、あるいは一定の期間をかけて回復可能となって形態学的な適合を生み出すものであり、本発明の1つの重要な、新規かつ独創的な工程である。プラスチック材料の回収は組込み式でよく、一定の期間をかけて起こるようにするか、または別法として、適当な外部からの手段により引き金を引くようにすることも可能である。
【0028】
ステントが製造されてよい材料は、ポリプロピレンポリマー、ポリエステル、PTFE、またはデュポン社(Du Pont)からデルリン(DELRIN(登録商標))という名で市販されているもののような、ポリオキシメチレンホモポリマーか、あるいは超高分子ポリエチレンでよい。さらに、ポリマー材料は適当な材料、たとえば縫合材料のエンブロイダリ(embroidery)がそれに適用されてもよい。
【0029】
一般に、本発明のステントは、冒された血管への最初の適用の後に調整可能な形状にあってよい。そのような調整は、患者の身体の外側から開始することが可能であってよく、電子的であってもよい。
【0030】
本発明の第2の実施態様によれば、ステントが実際に適用されるべき動脈について、スキャン済み画像からコンピュータ化した3Dモデルを作成すること、およびコンピュータ化した3Dモデルを適当な材料においてラピッドプロトタイピングし、ステントまたはステント用のモールドか、またはそれらの前駆体を供給することの工程を含む、動脈に形態学的にフィットするための、本発明の第1の実施態様によるステントの製造のための方法が提供される。
【0031】
先に示したように、ステントが製造されてよい材料は、ポリマー性のものでよく、たとえば縫合糸からなる、織物またはエンブロイダリ処理された構造物がそれに適用されてよい。本発明の第2の実施態様による、形態学的形状のステントの1つの作成法は、適当な形状の薄いポリマーシェルを生成することであり、次いでその上にフィラメント材料からなる網を置き、ポリマーシェルの表面上に、その固有の完全性をもつエンブロイダリ処理されたかまたは織物の層を産生し、それがステントの型としての役割を果たすようにする。一度エンブロイダリが完了すれば、ポリマー材料は適当な手段、たとえば熱、化学、または溶媒手段によって除去され、織物構造物によって構成された、形態学的な形状のステントを残す。このステントが血管に適用可能となるためには、ステントに切り込みを入れて、血管内への侵入を可能にし、次いで遊離端を最縫合して血管を取巻く完全なサポート構造を供給することが必要であろう。
【0032】
本発明のステントのさらなる製造法においては、薄い3次元のシェルは、ステントがそれに向けて意図されている血管の形態学的プロフィールに適合するポリマー材料から製造される。ステントは、熱成形、機械加工,ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)、または類似の方法により産生されてよく、次いで多軸コントロールのあるコンピュータで数値制御されたコントロール機械に装着される。次いでシェル内には、必要な開口および他の適切な機械的性質をもつ特徴を供給するべく、適当な穿孔が機械加工される。機械加工は1以上の様々な方法,たとえば、水流切断、レーザー切断、ドリリング、または他の適切な機械加工法を用いて達成されてよい。
【0033】
なおさらなる方法は、弛緩性のサポートの使用を含んでおり、それは所望の形状の3次元の形態学を模倣しており、エンブロイダリ処理されたかまたは織物構造物の、それに対する適用には、可変のサポート半径を内蔵しているコンピュータで数値制御されたコントロール機械を用いる。エンブロイダリ処理された織物層が、ひとたび弛緩性のサポートの上に置かれると、このコンビネーションは、血管への適用のために形成された適当なエントリー構造体をもつ完成されたステントとして使用されてよい。弛緩性のサポートは分解され、指示された方式で適用するための織物構造物を残す。
【0034】
ステントを製造するためのさらなる方法は、患者の胸部を開けること、ポリマーラップを手で適用し、血管の周囲にほぼ正確にフィットするようにすること、およびラップを熱で処理して、血管の形に対し本来の場所にそれをフィットさせること、および胸部を閉じること、の工程を含む。
【0035】
ステントを製造するためのなおさらなる方法は、胸部および心膜を開くこと、血管にシャッタリングを適用する工程と、室温硬化(RTV)または室温重合性のポリマーを血管の周囲およびシャッタリング(shuttering)の範囲内に注入する工程と、およびポリマーを硬化させる工程と、シャッタリングを除去する工程と、および胸部を閉じる工程を含む。
【0036】
本発明の第3の実施態様は、この方法に従って製造されたステントである。
【0037】
スキャン画像は、たとえば、患者の冒された動脈に適用されたMRI法から描かれてよく、次いでコンピュータ化され、ステントのデザインに転換される。他の研究用手法は、最初の撮像の工程、たとえば、MRA、X線CT、3Dパルスドップラーエコー測定法(3D pulsed Doppler Echo measuring)、すなわち、大動脈根部測定に使用される2D心エコーの3Dバージョン、および任意の他の適当な画像技術に適用されてよい。冒された動脈について必要に特別注文された3Dモデルを創製するため、適当なCADソフトウエアが用いられ、この画像が次に、ラピッドプロトタイピングの工程に利用される。ラピッドプロトタイピングは、慣例的に「RP」というその省略形で知られており、適当な機械において行なわれ、それにおいてCAD画像の3次元のリプロダクションが、適切な材料において製作される。RP複製は、実際のステントを与えてよく、あるいはそこからステントが製造されるモデルを与えてもよい。この後者については、モデルはモールドを生じるべく用いられてよく、そこから、「ロストワックス」方法と同様の調子でステントが製造されてよい。いずれの場合にも、そのようにして産生されたステントは、個々の患者に対して特別注文され、内部に適用されたストックサイズ(stock size)のステントを用いる現在の手法とは、はっきりと対照をなす。
【0038】
RP法は、ステレオリソグラフィー(SLA)、選択的レーザー焼結法(SLS)ソリッド・グラウンド・キュアリング(SOLIDER)、積層造形法(LOM)、溶融積層法(FDM)またはコンピュータで数値制御された(CNC)機械加工を、ステントの製造に用いてよい。
【0039】
本発明は次に、添付の図面について、単なる例として記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の実施においては、患者はまず標準的なMRIユニットを用いてスキャンされる。たとえば、スキャンは冒された構造、たとえば上行大動脈について、大動脈の平面に対して実質的に軸方向の、隣接した画像を与える方法でとられる。不充分な画質は、多数のイメージングおよび、同等の画像の平均化/重ね合わせによって向上されてもよい。いくつかの場合には、画像を改良するべく、患者に鎮静剤を与えることが適切であってよい。以下の図1は、心臓の構造を明らかに示しているヒト胸部の典型的な水平断面を示している。図面参照番号1は、胸部後方の脊柱を示しており、2は左肺を、3は心臓の構造を示している。
【0041】
画像がとられた後、それらは、適当な3次元コンピュータ支援デザイン(CAD)ソフトウエアを実行している標準的なPCコンピュータに転送される。数多くの商標権を有するCADパッケージが市販されており、それらの多くは上行大動脈のような解剖学的構造の復元に適している。MRI胸部スライス画像は、画像分析ソフトウエアを用いて加工され、所望の構造物、この場合には上行大動脈(大動脈環から大動脈弓まで)を抽出する。図2は、ヒト胸部の同様のMRI水平断面を示しており、脊柱1、左肺2、心臓3、およびデジタル式に強調された上行大動脈の切断面4を含んでいる。
【0042】
大動脈切片は次に、画像データおよびMRIデータファイルからの位置データを用いて、CADソフトウエアにおいて復元される。図3は、上行大動脈4、大動脈弁を含んでいる大動脈根部5、大動脈弓6、および冠動脈起点7を示している。
【0043】
連続的なMRI画像の間を補間するべく、CADソフトウエア内の適当なスムージングアルゴリズム(smoothing algorithm)が用いられ、自然に輪郭が描かれたCADモデルを製作する。上行大動脈の場合には、冠動脈を正しく同定すること、および位置づけることに注意が払われるべきである。この方法は、適切に資格が与えられた解剖学者/外科医によるMRI画像の検査によって、最良に行なわれる。図4は、スムージング後の同じ上行大動脈4、大動脈根部5、大動脈6、および冠動脈起点7のCADモデルを示している。
【0044】
CADモデルは、ベースのMRI画像データを、完成したCADモデル上に重ね合わせることにより、いくつかのCADパッケージ内で確認されることが可能である。以下の図5は、CAD復元と、元のデータからのMRI画像切片との重ね合わせを示している。眼に見える構造物は、上行大動脈の上部4および大動脈弓6である。
【0045】
CADモデルは次に、そこからステントが製造される道具を製造するべく用いられることが可能である。製造法に応じて、物理的モデルは以下のように製造されることが可能である:CADモデルファイルは、適当なラピッドプロトタイピング機械、たとえばステレオリソグラフィー機械(SLA)に転送されることが可能であり、上行大動脈の物理的モデルをポリマー、たとえばUV硬化性エポキシ樹脂中に製作する。このモデルは次に、シリコンゴムにモールドを製作するべく用いられることが可能である。モールドは次に、大動脈の娘モデルを製作するべく用いられることが可能である。他の製造技術、たとえば、選択的レーザー焼結法(SLS)、CNC機械加工などが使用されることが可能である。
【0046】
このように製作された物理的モデルは、次に完成したステントを製作するための多くの製造方法において使用される:
1. エンブロイダリング:3次元CAD復元の2次元プロジェクション(射影)から、線形次元データがとられ、標準的なコンピュータで制御されるエンブロイダリング機械上での多数の構成素子の製造に用いられる。構成素子は医療用のグレードの、マルチフィラメント縫合糸、たとえばポリエステルにおいてエンブロイダリ処理されオープン構造のネットを製作する。構成素子は、CNCエンブロイダリング機械において、水溶性のポリマーシート上にエンブロイダリ処理される。製作後、水溶性のシートは分解され、構成素子は、配列の間のその3次元の形状を想定して縫い合わされる。完成されたステントは次に、梱包および、移植のため外科医に輸送する前に、たとえば水蒸気加熱、放射線照射などにより滅菌される。図6は、2つの構成素子において製造される外部ステントを示しており、縫合されたとき、3次元の形状を呈する。2つの部分は上行大動脈8および大動脈根部9にフィットしており、大動脈根部切断面において、冠動脈起点10用に製作されたアクセスを含む。
2. 熱硬化:マルチフィラメント、熱収縮性、ポリマーからなる医療用グレードのオープン構造メッシュチューブは、サポートされるべき構造物の最大外径にフィットするべく適当な直径のものが取得される。構造物の3次元CAD復元は、ラピッドプロトタイピング機械、たとえば、ステレオリソグラフィー(SLA)または選択的レーザー焼結(SLS)に転送され、3次元の物理的モデルが適当なポリマー,たとえばエポキシドにおいて製作される。このモデルは次にモールド、たとえばスプリットモールドを、適当な材料、たとえばシリコンゴムにおいて製作するべく用いられる。モールドから、充実性パターンが製造される。熱収縮性ポリマーメッシュチューブの適当な大きさに製zou された切断面が、パターン上に滑り落とされ、2つの構成素子は研究室用オーブン内で、(問題のポリマーの特質に合わせるべく)適当な温度において適当な時間にわたり静置される。この暴露の後、パターンおよびポリマーメッシュはオーブンから取出される。ポリマーメッシュチューブは、パターンの形態学に非常に高い精度まで適合するべく収縮しており、外部ステントを形成する。ステントは次に、たとえば、患者の胸部に関して前方の位置において、ステントに沿った軸線を切断することにより、パターンから除去される。ステントは次に、適当に滅菌され、梱包され、移植のため外科医に送られる。
3. 真空蒸着:身体の構造についての3次元CAD復元は、ラピッドプロトタイピング機械に転送され、そこから3次元の物理的モデルが製作される。このモデルは、それ自体が通気性であるか、または堅いメッシュ、たとえば通気性である金属メッシュを形作るべく用いられる。通気性のパターンは、次に真空蒸着製造機械内に装着され、密閉されたチャンバー内で、通気性のパターンを通して空気が引抜かれる。適当なポリマー繊維の「クラウド(cloud)」がチャンバー内に導入され、パターンを通した空気流により通気性パターンの外側に引上げられる。蒸着された繊維の「フェルト」が、時間および線維供給速度により調節可能な、適当な厚さおよび、通気性のパターンを通した空気流の速度により調節可能な、密度に形成されると、パターンおよびその付随物「フェルト」は、オーブンに移され、そこで繊維は、前記オーブン内での、双方ともに選ばれたポリマー繊維に依存する、適当な温度における適当な時間の暴露により、熱によって互いに接着される。強化されたフェルトステントがオーブンから除去されると、それは、たとえばパターンを崩壊させること、またはステントを切断することにより、通気性のパターンから分離され、滅菌され、梱包され、外科医に送られる。
【0047】
全ての場合に、外科的な移植は、既存の外科的手法を用いた、通常の手段により成し遂げられ、上行大動脈を、大動脈輪から、弓および収容している冠動脈まで暴露するようにする。前記手段は、たとえば、大動脈環を暴露するためのロス(Ro)法からとられた外科的なサブプロシジャ(sub−proceduress)を含むであろう。
【0048】
本発明のステントは、冒された動脈の輪郭に形態学的に一致しており、効果的に適用された場合には、固定スリーブを提供し、それとの実質的に完全な接触において、その外部をサポートするようにする。大動脈根部の場合には、スリーブの固定はまた、一体性をもとにもどすか、または強化するための、位置決め弁座という面における大動脈弁の調整を提供し、この場所における漏れを防止し、したがって弁を交換する必要性を避けるようにする。
【0049】
本発明は、大動脈根部切除および弁交換のための、通常の外科的手法に関連した高度に侵襲性の外科手術を必要としない。また重要なことには、ステントが所定の位置にある場合、それは明らかに体液および心膜ならびに隣接部分の内部の特徴と接触してはいるが、その外側の性質は血液とは接触していないことを意味している。このことは、血流に影響を及ぼす感染の可能性を避けること、および、アフタケアおよびそれに伴う薬物および処置に関し、連続した手法を受けている患者の依存状態を不要にするかまたは有意に軽減するという面で、本発明のこの真の局面は非常に利益がある。このような利点とは全く離れて、そのような侵襲性の外科手術を避けることは、患者にとり明らかに外傷性が少ない。
【0050】
拍動心の外科手術は、あつらえのステントを提供する本発明のおかげで、可能なことになりつつある。実際、ある形状のステント、たとえば螺旋状に巻いた変形物を用いて、患者の外傷、および術後のケアならびに投薬のより少ない、非侵襲性の手法という面において提供するすべての付随した利点をもつ、キーホールサージェリー(鍵穴手術)のための機会が生じている。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は原則的に大動脈根部切除に関連して記述されてきたが、いかなる血管における動脈瘤の治療に対しても、一般により広い適用性を有しており、したがって本文におけるいかなる「動脈」に対する参照も、血管全般というより広いコンテキストにおいて解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】心臓の構造を明らかに示しているヒトの胸部の典型的な水平断面を示している図である。
【図2】胸部のMRI画像からとられた上行大動脈のデジタル式に強調された水平断面を示している図である。
【図3】上行大動脈および大動脈弓のCAD復元を示している図である。
【図4】スムージング後の上行大動脈および大動脈弓のCAD復元を示している図である。
【図5】上行大動脈のCAD復元の、正しい空間的位置に重ね合わせられた元のMRIデータファイルの1つとの重ね合わせを示している図である。
【図6】2ピースの外部サポートを示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の外部の位置に適したステントにおいて、前記ステントが、前記血管の周囲に局在可能でありかつ前記血管と形態学的に関連するように形成され、また、該ステントを前記血管とそのような関係に維持するための手段を有することを特徴とするステント。
【請求項2】
前記ステントが、少なくとも2つの部分からなるスリーブの形状にあり、前記スリーブがほぼ円筒形の形状にあることを特徴とする請求項1記載のステント。
【請求項3】
任意の特別の場合の形態学的必要性に適合する目的で、前記スリーブが、形状の変化する1以上の断片を含むことを特徴とする請求項2記載のステント。
【請求項4】
前記スリーブが、他の相互に連絡する物を収容するための、適切に局在するくぼみまたは開口が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のステント。
【請求項5】
前記ステントの前記スリーブに、主要な心臓構造物、たとえば心室筋への付着のためのベースまたはフランジ部分が設けられ、保護またはアンカーポイントが前記ステントに確立されるようにし、前記ベースまたはフランジ部分が、前記構造物への適当な付着のために適応されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載のステント。
【請求項6】
前記スリーブの部品の相互連絡が、前記部品のメイティングエッジ(mating edge)に供給されたリリース可能なラッチのある蝶番機構によって行なわれることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載のステント。
【請求項7】
前記スリーブが、それが動脈壁上に広がること、さらにまた、もとの状態を回復することを可能にするべく、長手方向にスリットの入った弾性の材料からなり、前記スリーブが、前記形態学的な関係において動脈を受入れる位置において、適当にクランプすることが可能であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載のステント。
【請求項8】
前記クランピングが、適当な留め具の適用により実現されることを特徴とする請求項7記載のステント。
【請求項9】
前記スリーブが、前記留め具を受入れかつ位置を定めるための1以上の溝を設けられていることを特徴とする請求項8記載のステント。
【請求項10】
前記クランピングが、前記スリーブ内のスリットのメイティングエッジに設けられた蝶番を通した伸縮可能な錠ピンの挿入により行なわれることを特徴とする請求項7記載のステント。
【請求項11】
前記ステントの前記スリーブが、いろいろな厚さのものであり、最大の厚さがその基部またはフランジ部分に設けられていることを特徴とする請求項5または請求項6記載のステント。
【請求項12】
前記厚さが、前記基部またはフランジ部分から離れたところでは減少し、動脈を通した血液の拍動に対応する必要があるとすれば、ある程度の屈曲を与えるようにすることを特徴とする請求項11記載のステント。
【請求項13】
前記スリーブが、外側のケーシングと、相対的に内側のケーシングを有しており、前記外側のケーシングは前記内側のケーシングよりも、より剛性のある構造のものであり、後者は湾曲を与えるべく設定されることを特徴とする請求項2〜12のいずれか1項記載のステント。
【請求項14】
前記内側のケーシングが、動脈を包囲するがしかし屈曲を可能にするべく、花弁状の形状であることを特徴とする請求項13記載のステント。
【請求項15】
血管の上に局在し、かつその周囲に巻きついて、所定の場所において、血管との形態学的関係を提供するための使用に適した、少なくとも1つのらせん部分を有することを特徴とする請求項1記載のステント。
【請求項16】
前記らせん部分の各々が、隣接する部分との結合のための相互連結(interengaging)手段を設けたことを特徴とする請求項15記載のステント。
【請求項17】
前記相互連結手段が、血管周囲のコイルを締めるべく適合されたスクリュー結合であることを特徴とする請求項16記載のステント。
【請求項18】
血管を取囲む位置において、前記らせん部分がオープンコイルまたはクローズドコイルを形成することを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項記載のステント。
【請求項19】
前記ステントの内表面が、何ら腐食または摩耗が起こらぬよう、滑らかであり、また前記ステントの外表面が、隣接する身体の他の部分に対して耐性であることを保証することを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項記載のステント。
【請求項20】
前記ステントが製造される材料が、非侵入性の研究手法を行なえるようにする目的で、半透明であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項記載のステント。
【請求項21】
前記ステントが製造される材料が、電磁場の作用に対し耐性であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項記載のステント。
【請求項22】
前記ステントが製造される材料が、熱安定性であり、かつ生物適合性であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項記載のステント。
【請求項23】
前記ステントが製造される材料が、やがては徐々に放出されることが可能な抗生物質を含有しており、前記抗生物質の成分は前記ステントの製造の間に組込まれることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項記載のステント。
【請求項24】
前記ステントが製造される材料が、ポリマー、金属、またはセラミックか、あるいはそれらの適当な混合物であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項記載のステント。
【請求項25】
前記ステントが製造される材料が、熱収縮プラスチック材料であり、形という態様では直後に、あるいは一定の期間をかけて回復可能であって、形態学的な適合を生み出すことを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項記載のステント。
【請求項26】
前記ステントのサイズが、その場で調節可能であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項記載のステント。
【請求項27】
血管に対し形態学的にフィットするためのステントの製造方法において、前記方法が、前記ステントが実際に適用されるべき血管について、スキャン済み画像からコンピュータ化した3Dモデルを作成する工程と、およびコンピュータ化した3Dモデルを適当な材料においてラピッドプロトタイピングし、前記ステントまたはステント用のモールドか、またはそれらの前駆体を供給する工程とを含み、血管に形態学的にフィットすることを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項記載のステントの製造方法。
【請求項28】
前記スキャン済み画像が、MRI、MRA、X線CT、3Dパルスドップラーエコー測定法、または上記の任意の1つの同等物、から選ばれる手法から取得されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記コンピュータ化した3Dモデルが、コンピュータ支援設計ソフトウエアを用いて作製されることを特徴とする請求項27または28記載の方法。
【請求項30】
前記コンピュータ化した3Dモデルが、ラピッドプロトタイピングの工程において用いられ、実質的に、外科的手法において配置されるべき形状のステントを産生することを特徴とする請求項27〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記コンピュータ化した3Dモデルが、ラピッドプロトタイピングの工程において用いられ、前記ステントの前駆体を産生し、前記前駆体のモールドがとられ、前記ステントが前記モールドにおいて形成されることを特徴とする請求項27〜29のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの2Dサブストレートエレメント上に3D画像をエンブロダリングする工程と、および次に、前記サブストレートエレメントを用いて血管の周囲にステントを形成する工程とからなり、それらを一緒に固定してステントを提供することにより、ステントが製造されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項33】
3D画像に形態学的に一致するべく作製されたポリマー材料から、薄いシェルの形状においてステントが形成され、前記ステント上に織物構造をエンブロイダリングする工程と、さらに、エンブロイダリ処理の完了に続いてシェルを除去する工程とからなり、そのように製造されたエンブロイダリ処理され、それによって形態学的に創製された構造物からなるステントを提供することを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項34】
3D画像に形態学的に一致するべく作製されたポリマー材料から、薄いシェルの形状においてステントが形成される工程と、前記シェルは多軸調整を有するコンピュータで数値制御された機械に装着される工程と、前記シェルは機械加工されて付随する血管を収容するべく穿孔が施される工程とからなることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項35】
血管の3D形態学を表している、実質的に弛緩性のフォーマをエンブロイダリングすることによりステントが形成され、それにより織物構造物としてのステントが産生されることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項36】
請求項27〜35のいずれか1項記載の方法により製造されたステント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−500093(P2006−500093A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537329(P2004−537329)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004135
【国際公開番号】WO2004/026178
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(505097952)エクステント.リミテッド (2)
【Fターム(参考)】