説明

ストランドガイドローラ

連続的な中心軸(1)及び少なくとも2つのローラシェル(2a、2b、2c)を備え、中心軸が少なくとも3つの転がり接触軸受(4)内に回転可能に取り付けられることによって支持され、各ローラシェルが2つの転がり接触軸受の間で中心軸上に回転式に固定されて配置されているストランドガイドローラにおいて、内部ストレスを最小限に抑え、耐用寿命を延ばすために、ストランドガイドローラを転がり接触軸受(4)で浮動式に支持し、固定軸受ハウジング(8)内で軸方向に変位できるようにすることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的な中心軸及び少なくとも2つのローラシェルを備えたストランドガイドローラに関する。このストランドガイドローラは、中心軸は少なくとも3つの転がり接触軸受内に回転可能に取り付けられることによって支持され、ローラシェルはそれぞれ2つの転がり接触軸受の間で中心軸上に回転可能に固定され配置されている。
【背景技術】
【0002】
高いストランド幅(スラブ及び薄スラブ)を有する金属ストランドの鋳造のためのストランド鋳造システムでは、金属ストランドを、ストランドガイドスタンド又はストランドガイドセグメントの支持構造内に多重に取り付けられて支持されているストランドガイドローラのストランド鋳造モールドを出た後に、支持しガイドするための使用が行われる。
【0003】
詳細には、本発明は、スラブ及び薄スラブ断面を有するストランドの鋳造のための鋼材ストランド鋳造システムの多重に取り付けられたストランドガイドローラに関する。数学的に見ると、ストランドガイドローラは、n個のローラシェル(n≧2)及びm個の支持軸受(m=n+1)を含む。
【0004】
中心連続かつ回転可能な軸を備えた、多重に取り付けられたストランドガイドローラは、ストランド鋳造システムの従来の機器の一部である。例えば、特許文献1では、中心軸が4つの転がり接触軸受内で回転可能に支持された、4重に取り付けられたストランドガイドローラが開示されている。これらの軸受位置の1つ(特許文献1の図1に示すアイテムY)は、固定軸受として構成されている。その結果、ストランドガイドローラは左右半分に分割され、溶銑ストランドによって発生するこれらの領域での熱膨張にそれぞれ対応することができる。個々のローラシェルは楔連結によって、中心軸に回転式に係合する。規定された固定軸受を固定することによって、撓み動作の方向を判断して熱膨張を補償する。例えば汚染などによって起きた妨害の場合、これにより望ましくない追加的な軸方向力が発生する場合がある。軸方向に向いた開きボルト及びばねアセンブリによって軸方向の戻り力がかかることが、ストランドガイドローラの設計をさらに複雑にしている。
【0005】
特許文献2には、軸受位置がローラ本体の切込みによって形成されている、多重に取り付けられた、一部品型のストランドガイドローラも開示されている。必然的に分割される軸受のうち、外側軸受の1つは固定軸受として構成されている。これにより、非対称のローラ設計及び膨張に対する非対称の補償が生じる。ストランドの重量及びドライブモーメントによる高い径方向の負荷によって、膨張の補償が損なわれることがあり、したがってストランドガイドローラの耐用寿命が短くなる。
【0006】
特許文献3には、転がり接触軸受内に多重に取り付けられたストランドガイドローラも開示されており、ここではストランドガイドローラは端側に置かれた固定軸受によってストランドガイド内に配置されている。この場合もまた、軸方向力と膨張力が重なることによって、望ましくない高い負荷が軸受にかかることがある。
【特許文献1】米国特許第5,649,889号明細書
【特許文献2】オーストリア国特許第373,383号明細書
【特許文献3】米国特許第4,164,252号明細書(デンマーク国特許第27 54 952号明細書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、既知の従来技術の短所を防ぎ、溶銑ストランドから生じる熱及び機械的負荷によって発生するローラ設計における引張力を実質的に防ぎ、ストランドガイドローラの耐用寿命が延びる、ストランドガイドローラを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず上述のタイプのストランドガイドローラから説明すると、この目的は、ストランドガイドローラが固定軸受ハウジング内で転がり接触軸受によって浮動的に支持される、すなわち軸方向変位が可能である、ということにより達成される。この設計の基本的な利点は、ストランドガイドローラ全体が支持されており、軸方向に変位可能となっており、したがって軸方向の撓み動作は、局所的に起きる妨害位置と無関係にいつでも可能である、ということである。したがって、1つにはストランドの運搬によって、また1つにはストランドガイドローラの熱膨張によって発生する軸方向力の蓄積が、一貫して回避される。
【0009】
従来の販売モデルに対応して使用される転がり接触軸受は、軸受製造業者によって提供されているものなどがあり、多岐にわたる。転がり接触軸受はそれぞれ、少なくとも1つの内輪、外輪、及び外輪と内輪の間に分布して配置された転がり接触体を含む。任意で、転がり接触体はローラ保持器内で互いに対して定位置に固定される。転がり接触軸受の内輪は、中心軸とともに、またストランドガイドローラのローラシェル及び任意で他の中間輪とともに、軸方向に伸長されたユニットを形成し、この伸長されたユニットは転がり接触軸受の軸受ハウジング内に配置されており、軸方向に変位可能となっている。
【0010】
軸方向(ストランドガイドローラの回転軸方向)に伸長されたユニットには、実質的に2つの動作の可能性がある。1つには、転がり接触軸受を、内輪、外輪及び転がり接触体からなる構成部品として、周囲を囲む軸受ハウジング内に嵌め込むことができ、軸方向に変位可能となるようにする。もう1つには、内輪に対して外輪が、制限された距離での軸方向変位ができるように、外輪、内輪及び転がり接触体が互いに対して適合された転がり接触軸受を使用することが可能である。
【0011】
したがって、伸長されたユニットの軸方向の変位動作を可能にする、ストランドガイドローラで可能な適切な構成には、
a)転がり接触軸受の少なくとも1つが、関連する軸受ハウジング内に配置され、軸方向に変位可能となっていること、
b)転がり接触軸受の構成部品である、外輪、内輪及び転がり接触軸受の少なくとも1つの転がり接触体によって、互いに対して、制限された軸方向変位ができるようになっていること(例えば、トロイダル軸受)、及び
c)転がり接触軸受の少なくとも1つが条件a)を満たし、転がり接触軸受の少なくとも1つが条件b)を満たすこと、
が含まれている。
【0012】
外側の転がり接触軸受の内向き方向への変位の可能性又は端側に配置された転がり接触軸受が止め具によって制限されることにより、ストランドガイドローラの伸長されたユニットの自由な軸方向変位性は制限される。したがって、端側に配置されたこれらの転がり接触軸受はそれぞれ、片側で固定軸受の機能を果たす。特に、内輪に対する外輪の制限された軸方向変位が可能な転がり接触軸受の場合は、ストランドガイドローラの伸長されたユニットの自由な軸方向変位性は、それぞれの転がり接触軸受内で許容される軸方向変位性とするように適合させなければならない。
【0013】
好ましくは、ストランドガイドローラの外側の転がり接触軸受は球体ローラ軸受によって形成される。
【0014】
内側の転がり接触軸受は好ましくはトロイダル軸受によって形成される。この軸受設計によって、内輪に対する外輪の軸方向動作の十分な自由度が可能になる。さらに、トロイダル軸受はストランドガイドスタンドによって生じる調心の誤差(製造上の不精確度、熱条件での膨張)を実質的に補償することができる。さらに、これらは球体ローラ軸受より高い負荷能力を示す。
【0015】
本発明の他の利点及び特徴は、保護範囲を制限する訳ではなく、以下の例示的な実施形態の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ストランドガイドローラは、連続的な中心軸1と、互いに位置合わせされており、且つ調心バネ3a、3b、3cを使用することによって中心軸1に回転可能に固定された状態で配置された3つのローラシェル2a、2b、2cから構成されている。隣り合うローラシェル2a、2bの間、隣り合うローラシェル2b、2cの間、及び中心軸1の端部領域の両方において、中心軸は転がり接触軸受4内に支持されている。外側の転がり接触軸受は少なくとも2列の球体ローラ軸受4a、4dによって形成されている一方、内側の転がり接触軸受はトロイダル軸受4b、4cによって形成されている。各軸受の構造は、原則は知られているが、内輪5、外輪6、及び任意でローラ保持器(図示せず)内で互いに対して所定位置に固定された多数の転がり接触体7から構成されている。前記転がり接触軸受4はそれぞれ軸受ハウジング8によって囲まれ、その外側が密閉されている。軸受ハウジングは、ストランドガイドスタンド又はストランドガイドセグメントのセグメントフレームの支持構造体9に脱着可能に固定され、該支持構造体を介して軸受潤滑手段10及び/又は軸受ハウジング冷却手段11に連結されている。
【0017】
各転がり接触軸受4の内輪5、内輪に隣接する軸受シールを支持するスペーサスリーブ12、及びローラシェル2a、2b、2cは、クランププレート13とクランプネジ14との間で、軸方向に伸長されたユニット15に連結されている。クランププレート13は中心軸1の端面にネジを使用して固定されており、同時にローラ内側冷却手段の中央冷却剤通路を閉じている。クランプネジ14は、中心軸1の反対側端部で、ネジ山を切った中心軸の心棒にネジ留めされ固定されている。このように伸長されたユニット15は、固定軸受ハウジング8内部で浮動式に配置され、これにより軸方向変位が可能になる。
【0018】
発生する軸方向力を効果的に阻止し低減するために、転がり接触体7の輪郭ならびに内輪5及び外輪6の走行面の向かい合う輪郭の設計は、内側トロイダル軸受4b、4bが軸方向変位に十分に対応できるようになっている。2つの外側又は端側の径方向ローラ軸受4a、4dでは、外輪6が軸受ハウジング8内に軸方向に変位可能にそれぞれ配置され、トロイダル軸受4b、4cに向かって内向き方向に向かう軸方向動作は止め具16によって制限される。これらの止め具16は、径方向ローラ軸受4a、4dの外輪6がそれぞれ打ち当たる、軸受ハウジング8内の横端面17によって形成される。これにより、ストランドガイドローラは全体として、構成部品が伸長されたユニット15を形成する限り、制限はされているが自由な軸方向動作を両方向に行うことを可能にする。変位の許容される距離は約10から12mmであり、最大16mmまで可能であり、トロイダル軸受の許容制限値によって決まり、ローラの温度によって変化する。
【0019】
中心軸1は内側冷却手段18を有する。冷却剤は、ストランドガイドローラの中心軸内に組み込むこともできる端面回転インサート19を介して供給され、除去される。ローラシェルの集中冷却を達成するために、ローラシェルを通して冷却剤ラインをガイドすることも完全に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ストランド幅が約1,500mmの鋼材ストランドの鋳造のためのストランド鋳造システムで使用されている、4重に取り付けられたストランドガイドローラの概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 中心軸
2a ローラシェル
2b ローラシェル
2c ローラシェル
3a 調心バネ
3b 調心バネ
3c 調心バネ
4a 球体ローラ軸受
4b トロイダル軸受
4c トロイダル軸受
4d 球体ローラ軸受
5 内輪
6 外輪
7 転がり接触体
8 軸受ハウジング
9 支持構造体
10 軸受潤滑手段
11 軸受ハウジング冷却手段
12 スペーサスリーブ
13 クランププレート
14 クランプネジ
15 ユニット
16 止め具
17 横端面
18 内側冷却手段
19 インサート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的な中心軸(1)及び少なくとも2つのローラシェル(2a、2b、2c)を備え、中心軸が少なくとも3つの転がり接触軸受(4)内に回転可能に取り付けられることによって支持され、各ローラシェルが2つの転がり接触軸受の間で前記中心軸上に回転式に固定されて配置されているストランドガイドローラであって、転がり接触軸受(4)で浮動式に支持され、固定軸受ハウジング(8)内で軸方向に変位できることを特徴とするストランドガイドローラ。
【請求項2】
各転がり接触軸受が少なくとも1つの内輪(5)、外輪(6)、及び前記内輪と前記外輪の間に分布して配置された転がり接触体(7)を含み、前記転がり接触軸受(4)の内輪(5)は、前記中心軸(1)とともに、また前記ローラシェル(2a、2b、2c)とともに、軸方向に伸長されたユニット(15)を形成し、このユニットは前記軸受ハウジング(8)内に配置されており、軸方向に変位可能となっていることを特徴とする請求項1に記載のストランドガイドローラ。
【請求項3】
前記軸方向に伸長されたユニット(15)が、
a)前記転がり接触軸受(4a、4d)の少なくとも1つが、関連する軸受ハウジング(8)内に配置され、軸方向に変位可能となっていること、
b)前記転がり接触軸受の構成部品である、前記外輪(5)、前記内輪(6)及び前記転がり接触軸受(4b、4c)の少なくとも1つの転がり接触体(7)によって、互いに対して、制限された軸方向変位ができるようになっていること、及び
c)前記転がり接触軸受(4)の少なくとも1つが条件a)を満たし、前記転がり接触軸受(4)の少なくとも1つが条件b)を満たすこと、
のうち1つの構成を有していることによって、軸方向に動作可能とされることを特徴とする請求項2に記載のストランドガイドローラ。
【請求項4】
外側の前記転がり接触軸受(4a、4d)の内向き方向の変位の可能性が止め具(16)によって制限されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のストランドガイドローラ。
【請求項5】
外側の前記転がり接触軸受(4a、4b)が球体ローラ軸受によって形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のストランドガイドローラ。
【請求項6】
内側の前記転がり接触軸受(4b、4c)がトロイダル軸受によって形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のストランドガイドローラ。

【図1】
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【公表番号】特表2009−512560(P2009−512560A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536962(P2008−536962)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009631
【国際公開番号】WO2007/048489
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(301041586)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ (41)
【Fターム(参考)】