説明

ストレッチシュリンク積層フィルムおよびその製造方法

【課題】良好な低温収縮性と包装仕上がりに優れるストレッチシュリンク積層フィルムを提供。
【解決手段】少なくとも3層から構成され、両表面層がエチレン系重合体(A)成分を主成分とし、また中間層が下記(B)、(C)及び(D)成分からなるアイオノマー系混合樹脂組成物を主成分とし、混合質量比が、(B)/(C)=70〜40/30〜60、(B)/(D)=95〜70/5〜30、さらに、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上。
(B)不飽和カルボン酸が10〜20質量部、金属イオンによる中和度が40〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸であるアイオノマー樹脂
(C)不飽和カルボン酸が5〜20質量%で、メルトフローレートが1〜30g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体
(D)融点が240℃以下となる結晶性ポリアミド

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチシュリンクフィルムおよびその製造方法に関し、さらに詳細には、主に、生鮮食品や加工食品を入れた各種トレーや容器のプリパッケージ、オーバーラップシュリンクフィルム用途に用いられるストレッチシュリンク積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に、生鮮食品や加工食品を入れた各種トレーや容器のプリパッケージ、オーバーラップシュリンクフィルム用途に用いられる熱収縮性を有するシュリンクフィルムとしては、ポリ塩化ビニル(以下、PVCと略することがある)系フィルムやポリオレフィン(以下、POと略することがある)系フィルムが知られている。これはPVCやPO系材料からなるシュリンクフィルムが、主な要求特性である力学強度、透明性、収縮特性等の実用特性およびコスト面も含めて、ユーザーの要求を比較的広く満足するからである。
【0003】
しかしながらこの中で、PVC系フィルムは廃棄物処理の問題が懸念されていることから、PVC以外の材料からなるシュリンクフィルムが要望されていた。したがって上記用途において、現状ではほとんどPO系からなるシュリンクフィルムが市場を占有している。
【0004】
次に、該用途におけるシュリンクフィルムは、主に用いられる容器により大きく2つに大別される。1つは主にコンビニエンスストア等の弁当や惣菜等の蓋付き容器のオーバーラップシュリンク包装に使用される高収縮タイプのシュリンクフィルムであり、もう1つは、主にストレッチ包装に用いられる発泡ポリスチレンやポリプロピレン系材料からなる蓋無しトレーを容器とし、これをストレッチ包装した後に、主にシワ解消やタイトなフィルムの張りを発現させるためにシュリンク包装される包装方法に使用されるストレッチシュリンクフィルムである。
【0005】
ここで、高収縮タイプのシュリンクフィルムを用いた包装方法においては、主に横ピロー式と呼ばれる溶断シール方式の包装機が用いられる。本包装方式においてはフィルムの搬送途中において、まず針の付属したロールを通過させ、フィルムに一定のピッチで穴を形成させる。次に容器を包み込むようにフィルムを筒状に形成し、容器の底部でフィルムを長手方向にローラーで圧着して熱シールした後に、容器の前後を溶断シールする。その後シュリンクトンネルを通過せしめ、先に形成したフィルムの針穴からエアを逃がしながら収縮包装する方式である。該包装方法においては、さまざまな形状や大きさの容器に対応してタイトな包装仕上がりを得るために、高い収縮率や針穴でフィルムが引き裂けない等の物性が求められる。これらのこと等のために、各種の素材を特定量組み合わせて多層化したり、電子線等による架橋などの複雑な処理を用いた製造方法により製品化したものであるため、製造工程内のリサイクルが困難であったり、一般にフィルムの製造コストが高いものとなっている(例えば特許文献1、2参照)。
【0006】
一方、ストレッチシュリンクを用いた包装方法においては、通常のストレッチ包装に用いられるトレーをフィルムでオーバーラップし、フィルムをトレーの底に折り込んだ後、収縮包装する方式であり、ストレッチ包装機と同一の横ピロー式や突き上げ式と呼ばれる折り込みタイプの包装機の後工程にシュリンクトンネルを付加した包装機が用いられる。ここで、ストレッチ包装は、用いるストレッチフィルムの主に応力−歪曲線や応力緩和などの粘弾性特性によりシワ解消や底シール性などの包装仕上がりを発現する包装方法である。これに対して、ストレッチシュリンクフィルムを用いた包装では、ストレッチ包装した後に底部のヒートシール工程とシュリンクトンネルを通過させることによりストレッチ包装後のシワ解消や底シール性などの包装仕上がりを発現する包装方式であること、およびタイトな包装仕上がりが発現できることが、通常のストレッチ包装と大きく異なる点である。
【0007】
上記包装機のうち、横ピロー方式は、包装能力が高い(通常60〜80パック程度/分)ものの包装ラインが長いためにサイズ切り替え等、段替え作業の効率等が悪いことから、同一商品を多量にパックし段替え作業の比較的少ないパックセンターや食品加工工場などで多く採用されており、商品は包装後に各店舗に配列されて陳列される。一方突き上げ指式は、包装能力は低い(通常25〜50パック程度/分)ものの、1サイズのフィルム(例えば350mm幅のロール)で比較的多くのトレーサイズに対応できることや、比較的コンパクトで設置スペースが少なくて済むことから、パックセンター等にも導入されているが、主にスーパーマーケットのインストア(バックヤード)で多く採用されている。
【0008】
このように生鮮品等の包装は、パックセンター等で包装し各店舗に配送するものと、インストアで包装し直接店舗内に陳列するものに大別されるが、最近では人件費や包装作業の効率からみた総合コスト面で、インストアの包装比率が減少しパックセンター等での集約、大量、高速包装の比率が高まりつつある。ここで、パックセンターにおける包装においては、パックした商品を2〜4パック程度積み重ねてコンテナに詰められて保冷車で各店舗に配送される。このため、通常のストレッチ包装のみでは、輸送途中の振動や商品同士の摩擦等により、配送後にフィルムの破れや積み重ねによるフィルムのたるみ等が発生することがあるため、配送後の店舗において、商品のディスプレー効果を低下させてしまったり、場合によってはリパック(再包装)が必要となるなどの問題点があった。
【0009】
これらの問題を解決するために、ストレッチフィルムに比べフィルムの強度やパックした商品にタイトなフィルムの張りが得られるストレッチシュリンクフィルムの使用が増加する傾向にある。該包装方法は、包装機が通常のストレッチ包装機と同一であり、包装後の工程にシュリンクトンネルを付加する程度であり、またトレー形状も多岐にわたらないことから上記した弁当容器包装のような高い収縮率は要求されず、比較的小さな収縮率で十分良好な包装仕上がりが得られる。但し、内容物が生鮮食品であることが多く、比較的低い温度(通常80℃程度)での熱収縮特性(以下本発明においては低温収縮性と呼ぶ)が求められる。
【0010】
次に、従来のシュリンク包装用フィルムの製造方法は、溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方式であるテンター法あるいはチューブラー法による方式が主に採用されている。これは、主に再加熱時の温度と延伸倍率および延伸速度等を調整することにより、比較的容易に所望の熱収縮特性やフィルム物性を付与することが出来るからであると考えられる。
【0011】
一方、ストレッチ包装用フィルムの製造方法は、溶融押出された樹脂を一旦冷却固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法が主に採用されている。これは、一般的にインフレーション法の方がテンター法あるいはチューブラー法よりも条件設定範囲が比較的広く、また安定して生産できること、さらに製造設備の費用も安価であるためと思われる。一般にインフレーション法では、原料樹脂を融点(Tm)以上の温度に加熱し、環状ダイから円筒状に押出し、溶融円筒にエアを吹き込んで膨らませてフィルムとするが、この際、エアにより直径方向に、引き取りにより縦方向に延伸がなされる。しかし、この延伸時において、樹脂は高い温度領域にあり、弾性率や粘性が低いため、インフレーション成形したのみでは、熱収縮性歪の付与という点からは、実質未延伸のフィルムであり、若干の熱収縮性は発現するが、特に比較的低い温度(80℃程度)の収縮率(低温収縮性)が発現するような十分な配向をもったフィルムとは通常なりにくい。
【0012】
そこで、一般的な良好な生産性と製造設備の費用が安価なインフレーション成形機でも低温収縮性に優れたストレッチシュリンクフィルムが製造できれば、上記の製造コスト面に関する問題点を解決する有効な1つの手段となると考えられる。ここで、溶融時の弾性率や粘性が高い樹脂の1つとしてアイオノマー樹脂が挙げられる。アイオノマー樹脂を用いたストレッチフィルム、ラップフィルム、シュリンク(熱収縮性)フィルム関連の公知文献としては、例えば下記特許3及至5が挙げられる。
【0013】
特許文献3には、アイオノマー樹脂からなる層の両面に、酢酸ビニル含量が5〜40質量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる層を積層してなる食品包装用ストレッチフィルムが提案されている。このようなフィルムは、PVC系フィルムと類似の性質を有し、自動包装適性にも優れているとしている。具体的には、アイオノマー樹脂としてデュポン社の商品名サーリンA1650(ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸含量:9質量%、中和金属イオン種:亜鉛、MFR:1.5g/10分、融点:96℃)が使用され、多層インフレーション成形装置にてブローアップ比5倍で各層の厚みが12.5μm/5μm/12.5μmの三層ストレッチフィルムを得ている実施例が唯一示されている。しかしながら、該特許ではアイオノマー樹脂をヒートシール時の耐熱性を向上させることを主な目的としていることおよびストレッチフィルムとしての必要物性を得るために、中間層の厚みが表裏各層の厚みを越えないことが必要であることを記載している。これらのことから、該特許は、アイオノマー樹脂により収縮特性を発現することを目的としたものではなく、また、仮に収縮特性が発現したとしても中間層の厚み比が低いために十分な低温収縮性が得られず、ストレッチシュリンクフィルムとしては適さないものである。
【0014】
特許文献4には、高速加工による製造が可能で、光学性、被包装材料に対する密着性、使用時の切れ性等に優れた非ハロゲン系多層ラップフィルム及びその製法を提供することを目的に不飽和カルボン酸含量が3〜20質量%、金属イオンによる中和度が0.1〜10%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーからなる層の両面に、エチレン・不飽和エステル共重合体からなる層が積層された多層ラップフィルム、及び、それを共押出Tダイフィルム成形機により製造する方法が提案されている。しかしながら、該特許では、Tダイ成形機における高速成形を主な目的としており、アイオノマー樹脂により収縮特性を発現することを目的としたものではない。
【0015】
特許文献5には、(a)ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン/エチレン共重合体及びその配合物からなる群から選ばれる物質の1つまたは2つの外層、(b)外層の物質を配向させるのに必要とされる温度以下の融点を有し、エチレン/酸共重合体及び関連するイオノマー;エチレン/酸/アクリレートターポリマー及び関連するイオノマー;上記のいずれかのものと約50%までのエチレンビニルアセテートとの配合物;エチレン/エステル共重合体と約50%までのエチレンビニルアセテートとの配合物;並びに上記物質の組み合わせよりなる群から選ばれる物質のコア層、からなる多層熱収縮性フィルムにおいて、該コア層が熱収縮性フィルムの全厚さの約50〜95%からなる厚さを有する該多層熱収縮性フィルムと該多層熱収縮性フィルムの製造方法であって、1つまたは2つの該外層および該コア層からなる多層フィルムを1つのまたは2つの該外層中の物質の配向温度以上であるが該物質の融点以下である温度で延伸する方法が提案されている。ここで、該特許は、高い収縮率と低い収縮力(収縮応力)を有する多層熱収縮性フィルムを得ることが主な目的であり、また、その発明の主旨から、外層中の物質の融点≧延伸温度≧外層中の物質の配向温度(一般に110℃以上)≧コア層中の物質の融点なる関係が成り立つ。また、外層には、低い摩擦係数を有する物質が好ましいことを記載している。さらに、フィルムを配向させる方法としては、公知の方法を採用することが出来るとしているが、好適な方法は、「バブル」法(チューブラー延伸法)であると記載されており、また具体的な実施例が示されているのは、方法1として、チューブラー延伸法、方法2として、テンター延伸法である。すなわち、これらの方法は、ともに溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することにより原反フィルムあるいは原反チューブを採取し、次いで再加熱して延伸する方法である。
【0016】
【特許文献1】特公平1−47311号公報
【特許文献2】特公平5−64589号公報
【特許文献3】特開昭54−24982号公報
【特許文献4】特開2000−135760号公報
【特許文献5】特公平3−80627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、一般的に生産性と製造設備の費用が安価なインフレーション法でも良好な低温収縮性と収縮後のタイトなフィルムの張り、および自動包装機などにおける包装仕上がりに優れたストレッチシュリンク積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、エチレン系重合体を両表面層とし、特定の混合樹脂を主成分とする中間層を特定の厚み比とすることにより上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、また中間層が下記(B)、(C)及び(D)成分からなるアイオノマー系混合樹脂組成物を主成分とし、中間層を形成する混合樹脂組成物の混合質量比が、(B)/(C)=70〜40/30〜60、かつ(B)/(D)=95〜70/5〜30であり、さらに、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上であることを特徴とするストレッチシュリンク積層フィルム。
(B)不飽和カルボン酸が10〜30質量%、金属イオンによる中和度が40〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸であるアイオノマー樹脂
(C)不飽和カルボン酸が5〜20質量%で、メルトフローレート(JIS K7210 190℃、荷重21.18N)が1〜30g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体
(D)融点(JIS K7121)が240℃以下となる結晶性ポリアミド
(2)(C)成分であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体が、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする(1)に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(3)エチレン系重合体である(A)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(4) エチレン系重合体である(A)成分が、酢酸ビニル含有量が8〜30質量%で、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(5)フィルムの応力・歪制御TMA(TMA/SS)による80℃における縦方向および横方向の収縮応力値の合計値が0.5〜3MPaの範囲にあることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
(6)溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法で製造されたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【0019】
また、本発明のもう一つの目的は、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムをインフレーション法により製造することにより達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インフレーション法でも良好な低温収縮性と収縮後のタイトなフィルムの張りおよび自動包装機などにおける包装仕上がりに優れ、自動機による包装に好適な力学特性を有するストレッチシュリンク積層フィルムが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。また、本発明における主成分とは、少なくとも50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含有する成分のことである。
【0022】
本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、また中間層が下記(B)、(C)及び(D)成分からなるアイオノマー系混合樹脂組成物を主成分とし、中間層を形成する混合樹脂組成物の混合質量比が、(B)/(C)=70〜40/30〜60、かつ(B)/(D)=95〜70/5〜30であり、さらに、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上であることを特徴とする。
(B)不飽和カルボン酸が10〜30質量%、金属イオンによる中和度が40〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸であるアイオノマー樹脂
(C)不飽和カルボン酸が5〜20質量%で、メルトフローレート(JIS K7210 190℃、荷重21.18N)が1〜30g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体
(D)融点(JIS K7121)が240℃以下となる結晶性ポリアミド
【0023】
ここで上記両表面層に用いる主成分であるエチレン系重合体である(A)成分は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル;及びそのアイオノマー;共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体、あるいはそれらの混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を越えるものである。
【0024】
これらのエチレン系重合体である(A)成分の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体が好ましい。アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0025】
また、上記エチレン系重合体である(A)成分の中では、酢酸ビニル含有量が8〜30質量%で、メルトフローレート(以下、MFRと略することがある)(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体が最も好ましい。
【0026】
ここで酢酸ビニル含量が8質量%以上であれば、得られるフィルムが硬くならず、柔軟性や弾性回復性が良好であり、フィルム全体の透明性や熱収縮特性が損なわれることがなく、また表面粘着性も発現しやすいため好ましい。一方、30重量%以下であれば、耐熱性やフィルム強度等が十分確保され、また、表面粘着性が強過ぎないためにフィルムの巻き出し性や外観が良好であるため好ましい。これらのことから、酢酸ビニル含量は、好ましくは10〜28質量%、更に好ましくは12〜25質量%である。
【0027】
また、MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、一方10g/10分以下であれば、インフレーション成形においても製膜安定性が得られ、厚み斑や力学強度の低下やバラツキ等が少なくなるため好ましい。これらのことから、MFRは、好ましくは0.3〜8、更に好ましくは0.5〜5である。
【0028】
上記エチレン系重合体である(A)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
【0029】
上記両表面層を構成するエチレン系重合体である(A)成分には、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、防曇剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤などを混合してもかまわない。
【0030】
次に中間層に用いるアイオノマー樹脂である(B)成分は、エチレンと、不飽和カルボン酸と、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸成分の少なくとも一部を金属イオンもしくは有機アミンのうち少なくともいずれか一方で中和することにより得ることができる。また、アイオノマー樹脂は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルと、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸エステル成分の少なくとも一部を鹸化することによっても得ることができる。
【0031】
アイオノマー樹脂の原料となるエチレンと不飽和カルボン酸、任意成分としてその他不飽和化合物を含む共重合体において、不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8程度のものが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどが用いられる。これらの中では、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましく用いられる。また任意成分としての他の不飽和化合物として代表的なものは不飽和エステルであり、その具体例としては酢酸ビニルのような飽和カルボン酸の不飽和エステル、あるいはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどを挙げることができる。なお、これらは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
また、これら共重合体中の中和成分としては、Na+、K+、Li+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Al3+などの1価から3価の金属の陽イオン(以下、金属イオンと略することがある)または有機アミンを挙げることができる。なお、これらは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では特にZn2+で中和したのものの使用が好ましい。
【0033】
本発明においては、上記のアイオノマー原料となる共重合体において、エチレン含有量は50〜97質量%、好ましくは60〜95質量%、不飽和カルボン酸含量は10〜30質量%、好ましくは12〜20質量%、その他不飽和化合物は0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%の重合組成のものが好適に用いられる。また、中和度は、前記金属の陽イオンで共重合体成分中の不飽和カルボン酸量の40〜80%、好ましくは45〜60%が中和されたものが好適に用いられる。ここで、前記重合組成および中和度の範囲であれば、アイオノマー樹脂の結晶性がある程度低下するため、成形工程時の冷却条件で結晶化しにくくなり、フィルムの透明性を保持することが可能となるため好ましい。また同時に、主にイオン性架橋の凝集力により、例えばインフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工により良好な低温での熱収縮特性(低温収縮性)を付与することが可能となるため好ましい。なお、アイオノマー樹脂は1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
アイオノマー樹脂は、金属の陽イオンなどにより共重合体中のカルボキシル基を中和すると中和した部分がイオン化される。中和度が高くなるにつれてイオン化された部分がイオン結合力によって凝集しイオン性架橋となる。イオン性架橋はイオン結合によって凝集しているものであり、イオン結合力よりも大きな力を受けた時には凝集していた部分が壊れるが、イオン結合力よりも小さな力では擬似架橋状態となる。よって中和度の量に伴って溶融粘度が増大し、溶融粘度の増大の効果はアイオノマー樹脂の融点に近い方が大きくなる。ここで、前記重合組成および中和度の範囲であれば、これらの作用によって押出性能、具体的には過度な溶融粘度の上昇が無く、例えばインフレーション成形のような溶融状態からの冷却過程での延伸加工時には、イオン性架橋が擬似架橋状態のままとなるためにストレッチシュリンクフィルムに好適な低温での熱収縮特性(低温収縮性)を付与することが可能となるものと考えられる。
【0035】
本発明に用いられるアイオノマー樹脂である(B)成分のMFR(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)は、0.2〜5g/10分であることが好ましい。かかる範囲内であれば、押出成形時に背圧等が急激にあがることがなく、バブルの安定性などのインフレーション成形性やストレッチシュリンクフィルムに好適な力学特性を得ることが可能となるため好ましい。これらのことから、MFRは、好ましくは0.3〜4.0、更に好ましくは0.5〜3.0である。
【0036】
本発明に用いられるアイオノマー樹脂である(B)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−6810号公報等に示される公知の製造方法を用いることができる。また、金属イオンを含まないエチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂を原料に、アセチルアセトン金属錯体、酸化金属、脂肪酸金属塩等を必要量後添加してイオン架橋を導入し、成形加工時にアイオノマー樹脂を得てもかまわない。
【0037】
また、本発明においては市販の原料を用いることもできる。アイオノマー樹脂の具体的な商品としては、三井・デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン」が挙げられる。また、金属イオンを含まないエチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸等の共重合体樹脂の具体的な商品としては、三井・デュポンポリケミカル社の商品名「ニュクレル」、日本ポリケム社の商品名「ノバテックEAA」などが挙げられる。
【0038】
次に、中間層に用いるエチレン・不飽和カルボン酸である(C)成分は、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種又は2種の混合組成物が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、上記のエチレン−アクリル酸エステル、及び/またはエチレン−メタクリル酸エステル共重合体において、アクリル酸及びメタクリル酸含量は5〜20質量%、好ましくは5〜18質量%が好適に用いられる。ここで、前記重合組成の範囲であれば、アイオノマー樹脂との相容性が良くフィルムの透明性を保持することが可能となるため好ましい。また同時に、自動機による包装に好適な力学特性を得ることが可能となるため好ましい。
【0040】
本発明に用いられるエチレン・不飽和カルボン酸である(C)成分のMFR(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)は、1〜30g/10分であることが好ましい。かかる範囲内であれば、アイオノマー樹脂中への分散が良好であり、バブルの安定性などのインフレーション成形性やストレッチシュリンクフィルムに好適な力学特性を得ることが可能となるため好ましい。これらのことから、MFRは、好ましくは1.5〜25、更に好ましくは2.0〜20である。
【0041】
本発明に用いられるエチレン・不飽和カルボン酸である(C)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、高圧ラジカル重合法などの公知の製造方法を用いることができる。
【0042】
次に、中間層に用いる結晶性ポリアミドである(D)成分は、例えばショウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸と、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキシルジアミン、m−キシレンジアミンのようなジアミンとの重縮合、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムのような環状ラクタム開環重合、6−アミノカプロン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、1,2−アミノドデカン酸のようなアミノカルボン酸の重縮合、或いは上記環状ラクタムとジカルボン酸とジアミンとの共重合体などにより得られ、一般にナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、共重合ナイロン、ナイロンMXD6、ナイロン46などとして市販されているものが挙げられる。ここで、透明性が重要視される用途の場合には、前記(B)成分と屈折率が近いものを採用することが好ましく、本発明においてはナイロン12が好ましく用いることができる。
【0043】
本発明においては、上記の結晶性ポリアミドは融点(JIS K7121準拠)が240℃以下のものが好適に用いられ、さらには融点が200℃以下のものが好ましく、中でも特に融点が170℃未満のものが好ましい。融点が上記範囲内にあれば、本発明の中間層を形成するアイオノマー系混合樹脂組成物を得るための溶融混練温度を過度に高くする必要が無いため、アイオノマー樹脂の熱劣化を抑えることができる。また成形時の押出温度も押出機の負荷見合いでできだけ下げられるため、結果として良好な低温での熱収縮特性(低温収縮性)を付与することが可能となる。
【0044】
本発明に用いられる結晶性ポリアミドである(B)成分のMFR(JIS K7210、準拠)は、0.5〜50g/10分であることが好ましい。かかる範囲内であれば、アイオノマー樹脂中への分散が良好であり、バブルの安定性などのインフレーション成形性を得ることが可能となるため好ましい。これらのことから、MFRは、好ましくは2〜40、更に好ましくは5〜30である。
【0045】
本発明に用いられる結晶性ポリアミドである(D)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の製造方法を用いることができる。
【0046】
また、本発明においては市販の原料を用いることもできる。結晶性ポリアミドの具体的な商品としては、宇部興産社の商品名「UBEナイロン」及び「ウベスタ」、東レ社の商品名「アミラン」、三菱エンジニアリングプラスチックス社の商品名「ノバミッド」などが挙げられる。
【0047】
また、中間層を形成する樹脂組成物が上述した(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の混合樹脂組成物であり、上述した(B)成分と(D)成分が混合質量比で(B)/(C)=70〜40/30〜60であり、且つ(B)成分と(D)成分が混合質量比で(B)/(D)=95〜70/5〜30であることが重要である。
まず、(B)成分に対する(C)成分の割合が上記範囲内であればアイオノマー本来の特徴、例えばイオン性架橋に伴う溶融粘度特性、光学特性等が損なわれることがなく熱収縮特性や収縮後のフィルムの張りを改質することができる。また、(B)成分に対する(D)成分の割合が上記範囲内であれば、自動機による包装に好適な力学特性の付与を図ることが可能となる。
上記中間層を形成する樹脂組成物が上述した(B)成分と(C)成分の混合樹脂組成物の場合、成形条件にも左右されるが、熱収縮特性や収縮後の張りを付与することが可能となるが、得られるフィルムの引張伸び特性が悪く、例えば自動機による包装時にフィルムが破断しやすくなるフィルムとなる。また中間層を形成する樹脂組成物が(B)成分と(D)成分の混合樹脂組成物の場合、成形条件にも左右されるが、得られるフィルムの引張伸び特性は良好となるが、熱収縮特性や収縮後の張りが悪くなるフィルムとなる。
【0048】
本発明のストレッチシュリンク積層フィルムは、中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比が35〜90%であることが好ましい。中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比がかかる範囲内であれば、ストレッチシュリンクフィルムとして好適な低温の熱収縮特性を得ることができる。中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は、好ましくは40〜90%、更に好ましくは45〜90%である。
【0049】
また、本発明における食品包装フィルムの熱収縮特性は、オイルバス中で測定した80℃、10秒間での縦及び横方向の熱収縮率の合計が30%以上であることが好ましく、更に好ましくは縦及び横方向ともに30〜60%である。上記熱収縮率がかかる範囲を超えるような場合には、本発明を損なわない範囲で縦及び横方向の延伸倍率を下げたり、前述した冷却量を冷却効率を下げるように調節すればよく、かかる範囲に満たない場合には、本発明を損なわない範囲で縦及び横方向の延伸倍率を上げたり、冷却効率を上げるために冷却量を上げるか、フィルムの外側面と内面側の両面から冷却することで上記範囲内とすることが可能となる。
縦及び横方向の80℃での収縮率の合計が30%未満では、シュリンクトンネルを通過しても包装後に生じたシワが取りきれず、70%を超えると収縮応力にもよるが、トレーを変形させたり、トレーの底部に織り込まれたフィルムが熱シールする際にカールしてしまったりする。熱収縮特性が上記範囲内にあれば、シワの無い良好な仕上がりを得ることが可能となる。
【0050】
また、上記(A)及び/又は(B)及び/又は(C)成分及び/又は(D)成分には本発明の主旨を超えない範囲で、防曇性、帯電防止性、滑り性、自己粘着性等の諸物性を更に向上させる目的で、必要に応じて各種添加剤をそれぞれ適宜配合することができる。
各種添加剤としては、例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪族との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、モノグリセリンオレート、ジグリセリンモノオレート、ポリグリセリンオレート、グリセリントリリシレート、グリセリンアセチルシノレート、ポリグレセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシノレート、エチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等を挙げることができる。また、ポリアルキレンエーテルポリオールを用いることができ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。更に、パラフィン系オイルから選ばれた化合物の少なくとも1種を添加することができる。これらの添加剤の添加量は樹脂成分100質量部に対して、0.1〜12質量部、好適には1〜8質量部の範囲内で配合させることが好ましい。
【0051】
また、フィルムの応力・歪制御TMA(TMA/SS)による80℃における縦方向および横方向の収縮応力値の合計値が0.5〜3MPaの範囲が好適であり、更に好ましくは0.6〜2.5MPaの範囲である。
応力・歪制御TMA(TMA/SS)とは従来の熱機械分析装置(TMA:サーマルメカニカルアナライザー)の構造を元に、変位と力の関係を制御する応力・歪制御部を負荷した構造となるものであり、CPUからは温度の制御ループとは独立に、応力・歪制御部に応力または歪に関するプログラムを与え、応力・歪制御部でこのプログラムに基づき制御することにより、試料の温度、歪、応力の3信号の関係を得ることができる装置である。
収縮応力値についてはインフレーション時の成形条件の調整、具体的には媒体による冷却条件を適宜調整することでかかる範囲内にすることできる。具体的には収縮応力値がかかる範囲を超える場合には本発明を損なわない範囲で縦及び横方向の延伸倍率を下げたり、前述した冷却量を冷却効率を下げるように調節すればよく、かかる範囲に満たない場合には本発明を損なわない範囲で縦及び横方向の延伸倍率を上げたり、冷却効率を上げるために冷却量を上げるか、フィルムの外側面と内面側の両面から冷却することで上記範囲内とすることが可能となる。上記収縮応力値が0.5MPa未満であると、パックした商品に十分なタイト感や張りの強さを与えることが出来ない場合がある。また3MPaを超えると、特に突き上げ包装機においては包装時にトレーの割れや変形を発生させたり包装後にトレ−が捻れたり、反ったりして満足する包装仕上がりが得られないことがある。
【0052】
次にフィルムの成形方法について説明する。本発明では、例えば複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、TダイやIダイより溶融押出しした後、キャストロールに導かれて冷却され、フラット状のいわゆるキャストフィルムとして成膜するキャスト法、及びキャストフィルムをロールや加熱炉(テンター等)に導き、加熱して1軸方向若しくは縦横2軸方向に延伸し、1軸配向フィルム若しくは縦横2軸方向に延伸し、1軸配向フィルムまたは2軸配向フィルムを成膜するテンター法でも可能であるが、本発明では溶融樹脂を環状(多層)ダイより円筒状に押出し、この円筒状の溶融膜内に、一定量の空気を入れて加圧し、膨張させてから冷却装置で冷却させて、円筒状のフィルムを連続的に得るいわゆるインフレーション成形のような一旦冷却することなく、溶融状態からの冷却過程での延伸加工でストレッチシュリンクフィルムに好適な熱収縮特性を得ることが可能である。インフレーション成形では、ダイより溶融樹脂を引き取って媒体で冷却される効果が働き、フィルムを構成する分子が配向する。この配向の度合いは、樹脂の溶融粘度と冷却過程における固体化の相違、並びにブロー比に代用されるような延伸倍率等によって変化する。
ここで、押出成形温度は、樹脂組成物の流動特性や成膜性等によって適宜調整されるが、概ね240℃以下、好ましくは200〜230℃が好適である。
本発明では、インフレーション成形する際、上述した表層/中間層/裏層の3層以上の積層体を、溶融状態からの冷却過程時に縦横それぞれ3.5倍以上の延伸加工を施すことが重要である。具体的には上述した構成で環状(多層)ダイから材料樹脂を円筒状に溶融押出ししてインフレーション成形する際、媒体で冷却量を調整ししながらこの円筒状の溶融膜内に、一定量の空気を入れて加圧量を調整し、ブローアップ比(膨らまされた円筒状のフィルムの直径/環状ダイの直径)を3.5以上とし、フィルムの引き取り速度を調整することによってフィルム全体の延伸倍率が12.3倍以上となるようにすることが好ましく、更にブローアップ比が4〜10でありフィルム全体の延伸倍率が50〜100倍に調整することが好ましい。その際の冷却方法としては、筒形状のフィルムの外面側から冷却する方法、筒形上のフィルムの外面側と内面側の両面から冷却する方法のどちらでも良い。
【0053】
一般に本発明の食品包装用フィルムの厚さは、通常の包装用ストレッチフィルムの厚さと同程度の範囲、即ち8〜30μm程度、代表的には10〜20μm程度の範囲にある。
【実施例】
【0054】
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
【0055】
(1) 熱収縮率
熱収縮率の測定は下記の方法により行った。
フィルムを縦方向及び横方向に測定方向が長手方向となるように長さ×幅=150mm×25mmの大きさに切り取ってサンプルを作成し、サンプル測定方向に100mm間隔の標線を付して、80℃に温調されたシリコンオイル中に10秒間浸漬させ、下式より算出し、縦方向及び横方向の熱収縮率の合計を求めた。
(式1)収縮率={(100−L)/100}×100(%)
(但し、Lは収縮後の標線間隔:単位mm)
【0056】
(2) 収縮応力
フィルムを縦方向および横方向に測定方向が長手方向となるように長さ×幅=10mm×3mmの大きさに切り取ってサンプルを作成し、セイコー電子工業社製の応力・歪制御TMA(TMA/SS)、TMA/SS150Cを用いて、30℃〜100℃の範囲の温度域について、昇温スピード5℃/min、荷重9.8kN/m2にて測定を行い、80℃における縦方向および横方向の収縮応力値の合計を求めた。
【0057】
(3) 包装テスト
以下の2種の包装機を用い、各フィルムによる包装テスト用のパックサンプルを作成した。
a:ピロー方式 大森機械社製:横ピロー型包装機(STN7500)
b:突き上げ式 社イシダ製:突き上げ式包装機(Wmin、ZERO1)
尚、トレーは通常の発泡スチレン製トレー(長さ×幅×高さ=200×150×15mm)に200gの粘度(厚み10mm)を入れてパックサンプルを作成した。
また、パック包装後、シュリンクトンネル(大森機械社製のピロー包装機付属のC−300型)を用いて、熱風の温度を90℃、通過時間を3秒間とした条件で収縮させた。上記条件にて包装した場合の(3−1)自動包装機適性、(3−2)収縮包装後の仕上がり、(3−3)収縮包装後のフィルムの張りの強さを以下の基準で評価した。
(3−1)自動包装機適性
×:5時間包装作業を行いフィルムの破断トラブルが3回以上生じた。
△:5時間包装作業を行い、フィルムの破断トラブルが1〜3回生じた
○:5時間包装作業を行い、フィルムの破断トラブルが全く生じなかった。
(3−2)収縮包装後の仕上がりの状態。
×:皺、弛みが多く前面に発生しており見苦しく、実用上問題となる状態。
△:皺、弛みが周囲に僅かにあるが実用上問題ない状態
○:皺、弛みがなく見栄えが良い状態
(3−3)包装後のフィルムの張りの状態
包装後のフィルムの張りの状態については、同条件にてパックしたサンプルを3段積み重ねた状態にて5℃で10時間放置後の一番下段のサンプルの上面の状態を以下の基準で目視にて評価した。
×:弛みが多く見苦しく、実用上問題となる状態。
△:弛みが若干見受けられるが、実用上問題ない状態。
○:弛みがまったく無く見栄えの良い状態。
【0058】
(4) 総合評価
上記(1)から(4)の評価結果より食品包装用ストレッチシュリンクフィルムとして以下の基準で総合評価した。
×:包装仕上がりが悪く、実用上問題がある。
△:包装仕上がりが若干悪く、実用上問題となることがある。
○:包装仕上がりが良好でストレッチシュリンクフィルムとして優れている。
◎:包装仕上がりが極めて良好でストレッチシュリンクフィルムとして非常に優れている。
【0059】
(実施例1)
(A)成分として、エチレン系共重合体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体であるNUC−3758(日本ユニカー社製、酢酸ビニル含有量=15質量%、MFR=2.0g/min)(以下、単にA−1と略記する)100質量部に対し、防曇剤としてジグリセリンモノオレートが3.0質量部からなる樹脂組成物を表裏層を形成するための押出機に投入した。(B)成分として、アイオノマー樹脂であるハイミラン1706(三井・デュポンポリケミカル社製、Znタイプ、メタクリル酸含有量=15質量%、中和度=58%)が40質量%、(C)成分として、エチレン−アクリル酸共重合体であるノバテックEAA A210K(日本ポリエチレン社製、アクリル酸含有量=7質量%、MFR=3.0g/min)が40質量%、(D)成分として、ナイロン6であるアミランCM1017C(融点=226℃)が20質量%からなる樹脂組成物を中間層を形成するための押出機に投入した。押出温度を190℃〜200℃、環状ダイ温度200℃、ブローアップ比10で共押出インフレーション成形により厚み10μm(表層/中間層/表層=2.0μm/6.0μm/2.0μm)の食品包装用フィルムを得た。
【0060】
(実施例2)
(C)成分として、エチレン−アクリル酸共重合体であるニュクレルAN4221C(三井・デュポンポリケミカル社製、アクリル酸含有量=12質量%、MFR=10.0g/min)とした以外は実施例1と同様の方法にて共押出インフレーション成形により厚み10μm(表層/中間層/表層=2.0μm/6.0μm/2.0μm)の食品包装用フィルムを得た。
【0061】
(実施例3)
(D)成分として、ナイロン12であるウベスタ3035JU5(宇部興産社製、融点=158℃)とした以外は実施例1と同様の方法にて共押出インフレーション成形により厚み10μm(表層/中間層/表層=2.0μm/6.0μm/2.0μm)の食品包装用フィルムを得た。
【0062】
(比較例1)
(B)成分として、アイオノマー樹脂であるハイミラン1706(三井・デュポンポリケミカル社製、Znタイプ、メタクリル酸含有量=15質量%、中和度=58%)が20質量%、(C)成分として、エチレン−アクリル酸共重合体であるノバテックEAA A210K(日本ポリエチレン社製、アクリル酸含有量=7質量%、MFR=3.0g/min)が80質量%からなる樹脂組成物とし、(D)成分を用いなかった以外は実施例1と同様の方法共押出インフレーション成形により厚み10μm(表層/中間層/表層=2.5μm/5.0μm/2.5μm)の食品包装用フィルムを得た。
【0063】
(比較例2)
(B)成分として、アイオノマー樹脂であるハイミラン1706(三井・デュポンポリケミカル社製、Znタイプ、メタクリル酸含有量=15質量%、中和度=58%)が90質量%、(D)成分として、ナイロン12であるウベスタ3035JU5(宇部興産社製、融点=158℃)が10質量%からなる樹脂組成物とし、(C)成分を用いず、またブローアップ比を5とした以外は実施例1と同様の方法共押出インフレーション成形により厚み10μm(表層/中間層/表層=2.5μm/5.0μm/2.5μm)の食品包装用フィルムを得た。
【0064】
【表1】

【0065】
表1より、本発明で規定するストレッチシュリンク積層フィルムは、低温収縮性と収縮後のタイトなフィルムの張りや包装仕上がりに優れていることがわかる。また、インフレーション成形でも製造可能であることが確認できる。なお、実施例3のストレッチシュリンク積層フィルムは、実施例1、2に比べて透明性に優れているものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層から構成される積層フィルムであって、両表面層がエチレン系重合体である(A)成分を主成分とし、また中間層が下記(B)、(C)及び(D)成分からなるアイオノマー系混合樹脂組成物を主成分とし、中間層を形成する混合樹脂組成物の混合質量比が、(B)/(C)=70〜40/30〜60、かつ(B)/(D)=95〜70/5〜30であり、さらに、80℃オイルバス中10秒浸積したときの縦方向及び横方向の熱収縮率の合計値が30%以上であることを特徴とするストレッチシュリンク積層フィルム。
(B)不飽和カルボン酸が10〜30質量%、金属イオンによる中和度が40〜80%のエチレン・不飽和カルボン酸であるアイオノマー樹脂
(C)不飽和カルボン酸が5〜20質量%で、メルトフローレート(JIS K7210 190℃、荷重21.18N)が1〜30g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体
(D)融点(JIS K7121)が240℃以下となる結晶性ポリアミド
【請求項2】
(C)成分であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体が、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする請求項1記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項3】
エチレン系重合体である(A)成分が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−メタクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のエチレン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項4】
エチレン系重合体である(A)成分が、酢酸ビニル含有量が8〜30質量%で、メルトフローレート(JIS K7210、190℃、荷重21.18N)が0.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項5】
フィルムの応力・歪制御TMA(TMA/SS)による80℃における縦方向および横方向の収縮応力値の合計値が0.5〜3MPaの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム
【請求項6】
溶融押出された樹脂を一旦急冷固化することなく、環状ダイから円筒状に押出し、この円筒の中にエアを吹き込み、溶融円筒を膨らませる方式であるインフレーション法で製造されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルム。
【請求項7】
インフレーション成形機により製造することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のストレッチシュリンク積層フィルムの製造方法。


【公開番号】特開2007−30269(P2007−30269A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214847(P2005−214847)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】