説明

ストレーナ止水栓

【課題】従来の止水栓は、止水機能を中心とし、異物の濾過、逆流防止、流量調整については独立した機器を別に設定してきているが、止水栓設置環境の変化等に関連して配水配管中に異物が流入することも多くなり、配管システムへのストレーナ機構の組み入れ、栓体の面間距離短縮の必要が生じてきている。
【解決手段】ボールバルブ2の2次側側部に、上面を弁座に構成し側周に濾過スクリーンを設定したユニット体3を嵌装した通水室23を設け、その上部に上記ユニット体の弁座に着座する浮動弁体を先端に着合して昇降作動する栓棒止水弁と2次側通水口に逆止弁5を設定した弁室を設けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副栓として回動操作によるボールバルブ機構を持つ止水栓に、簡易に交換、清掃が可能なストレーナ機構を設定し、併せて、逆流防止、流量調整をも行えるようにしたストレーナ止水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給水本管からの分水配管所要箇所に設定される止水栓は、止水機能のみを中心とし、異物の濾過、逆流防止、流量調整については逆止弁等の独立した機器を別に設定してきているが、水道用メータの設置環境の変化等に関連して機器配列の長さスペース(所謂、面間距離)を可能な限り短縮しなければならない必要に迫られてきている。
【0003】
更に、マンション等集合住宅の発展により分水配管の形態も変化し、配水配管中に異物が流入することも多くなり、配管システム中にこれを阻止、排除するためのストレーナ機構を組み入れる必要も生じてきた。
【0004】
そのため、特許文献1に記載されるように逆止弁とストレーナを一体に備えた止水栓、特許文献2に記載されるような逆止弁を一体に備えた止水栓が開発され、水道用メータへの止水栓付設については特許文献3に記載されるように、エルボ型継手の活用やカートリッジ式逆止弁の使用によって面間距離の短縮が図られてきている。
【特許文献1】特開平06−129552号公報
【特許文献2】特開平07−280114号公報
【特許文献3】特開2002−131097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ストレーナは止水栓等の流路中に設置されるものであるため、その交換や清掃には機器本体の分解等、極めて面倒な作業が必要となるほか、設置スペースの関係から面間距離の延長や高さの増大を招き、機器本体の体積が増大して設置スペースの狭小な場所では適用できない問題がある。
【0006】
また、最小限止水栓の設置が必要な水道用メータの設置は本管から分水される配水支管に設置されるものであり、逆流防止のための逆止弁の設定は欠くことができないうえ、本管からの距離の遠近によって給水圧に差がありメータの設置部において流量調整を行うことにより給水圧の調整を行うことが望まれるが、それぞれ独立した装置を設定したのでは、機器本体の体積増大や配管スペースの増大を伴い、到底これに対応し切れない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記した問題点に対応し、本来の止水機能、異物濾過機能のほか、逆流防止、流量調整機能をも備えたストレーナ止水栓を提供しようとするものであり、ボールバルブの2次側側部に、上面を弁座に構成し側周に濾過スクリーンを設定したユニット体を嵌装した通水室を設け、その上部に上記ユニット体の弁座に着座する浮動弁体を先端に着合して昇降作動する栓棒止水弁と2次側通水口に逆止弁を設定した弁室を設けるようにした。
【0008】
即ち、副栓として機能するボールバルブの側部にストレーナを嵌装する通水室を設け、その上部に主栓となる栓棒止水弁の弁室を設け、その弁座とストレーナをユニット体に構成することにより弁座設定スペースをストレーナ設定スペースに取り込み、更に、同ユニット体を通水室内に嵌装することにより、ストレーナの設定スペースを節減すると共に、本来、止水栓の1次側通水口と2次側通水口の間に直列するボールバルブの設定スペースと栓棒止水弁の設定スペースを横並びに配置して両通水口間の面間距離を大幅に短縮した。
【0009】
また、ボールバルブの回動支軸を、ボールに穿設された排出通水孔の中軸に対して所定角度偏心させた位置に設定し、通水が排出通水室に対して斜降角度をもって排出されるように構成して排出通水室をボールバルブの斜下方に配置することにより、その分、栓棒の高さを低く設定することを可能にした。
【0010】
更に、止水栓の2次側端部を、水道用メータの1次側端部に着合する伸縮管構成とし、伸縮管内に逆止弁を設定するように構成して、水道用メータの止水栓としても活用できるようにし、水道用メータの付設止水栓として使用することにより、メータの2次側端部に改めて逆止弁を設定する必要がなくなり、従来、付加できなかった機能を付加したメータ付設用の多機能止水栓として活用できるようにした。
【0011】
また、特許文献2に記載されるように逆止弁を併設する止水栓は既に存在するが、逆止弁の作動確認手段を設けたものや、逆止弁設定部を本体から解離する際に予め空気を導入する手段を設けたものは存在しない。本発明は止水部と逆止弁部の間に覆蓋機構を設けた通気孔を穿設することにより、これを逆止弁の作動チェック栓或いは止水栓本体を分解する際に機器内に急激な空気流入を避けるための通気栓として活用できるようにした。

【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。1は止水栓本体で、本管から分水される配水支管との接合口11からの給水は、ボールバルブ2の排出通水孔21を通り、通水室23に嵌合された栓棒止水弁4の弁座とストレーナをユニットに構成したユニット体3を通って2次側配管との接合構造部13に至る通水路12を形成する本胴部1aと栓棒支持胴1bからなっている。
【0013】
栓棒支持胴1bは、本胴部1aの上部に着脱可能に螺合し、内壁に刻設された雌螺子14と栓棒4の雄螺子41を螺合させて、栓棒4を支持すると共に弁室42に対して栓棒4を螺進退させる。栓棒4の先端には浮動弁体43の支軸43aが挿入される挿入孔43bが穿設され、支軸43aの挿入によって浮動弁体43が自重によって下降するフリー状態で栓棒4に着合され、弁室42に通水がないときは弁体43は自重で弁座44に着座するようになっている。
【0014】
本胴部1aの下端部には、切換弁室22が形成され、通止水を切り替える通水孔21を備えたボールバルブ2が回動可能に収容され、弁室22の側部に設けられた挿入口24からハンドルキーを挿入してボールバルブ2との嵌合回動軸25を介してボールバルブ2を回動することにより通水状態と止水状態が切り換えられるようになっている。
【0015】
切換弁室側部通水室23には、上面を弁座44に構成し側周に濾過スクリーン31を設定したユニット体3が嵌装され、その上部が栓棒止水弁室42となっており、配水管からの給水がユニット体3を通して弁室42に流入すると、浮動弁体43が押し上げられ水流は通水路12に通水する。
【0016】
この場合、栓棒4をハンドル45によって螺進下降させると、弁体挿入孔43bも相対的に下降し挿入孔の長さ範囲でしか作動しない浮動弁体43の作動範囲が規制され、供給水圧の高低に対応して流量調整を行えるようになっており、最終的には浮動弁体43を弁座44に着接させ、切換弁室22と栓棒止水弁室42との間の通水を止水する。
【0017】
止水弁室42から通水路12に至る水路には、逆止弁5が設定され2次側配水管側からの逆流はここで阻止されるようになつており、止水弁室42には覆蓋機構52を設けた通気孔51が穿設され、逆止弁5の作動が正常であるか否かを確認するためのチェック栓、或いは止水栓本体を分解する際に機器内に急激な空気流入を避けるための通気栓として活用できるようになっている。
【0018】
また、通水路12の接合構成を水道用メータ1次側端部に接合する伸縮管機構に構成すれば、逆止弁、流量調整機構、ストレーナ機構を別設する必要のない多機能を備えた水道用メータの付設止水栓として活用できるものである。
【0019】
ストレーナユニット体3は、ゴム等の柔軟素材による上枠3aと合成樹脂等の素材による下枠3bを適宜の支持柱で連結し、円筒状に構成したもので、支持柱と支持柱の間に金網等による濾過スクリーン31を設定して通水路を形成し、上枠3aは上面内周部を浮動弁体43の底部と嵌合する弁座44に構成し、外周部は弁室23と弁室42との隔壁部に設定された嵌合枠に対する嵌合構造となっている。
【0020】
合成樹脂等の素材による下枠3bの底部には、通水室23の底部に設けられた雌螺子孔26に螺入するビス32のビス孔が形成され、ビス固定によって通水圧に耐える固定強度が得られるようになっている。これらの嵌合構造によってユニット体3は通水室23内に着脱可能に嵌装され、摩耗し易い浮動弁体43の弁座44の交換、ストレーナ部の清掃を容易にしている。
【0021】
ユニット体の交換、清掃を行うには、ボールバルブ2を閉栓して1次側からの通水を止水し、栓棒支持胴1bと共に栓棒4を取り外せば、ユニット体3はビス32を外すだけで自由に取り外せるので、所定の作業を行った後に栓棒4と栓棒支持胴1bを取付けてボールバルブ2を開栓する。
【0022】
逆止弁5の逆流防止性能を確認検査するには、栓棒止水弁43(ハンドル45によって浮動弁を弁座44まで押し下げ閉栓する)又はボールバルブ2或いは両方の弁栓を閉栓して1次側からの通水を止水し、チェック栓51を開栓する。逆止弁5の作動が正常であればチェック栓からの水漏れは発生しないが、逆止弁に異常があれば2次側からの水圧を受けてチェック栓から連続的な水漏れが発生するので、逆止弁の作動を直ちに確認することができる。
【0023】
本発明は以上のように構成したので、止水栓の面間距離を大幅に短縮することができ、従来、止水栓とは別に、逆止弁、ストレーナ、流量調整機構等を配管中に設ける必要があったのに対して本願発明による止水栓だけによって全て対応でき、部品交換や修理についても簡易迅速に対応することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるストレーナ止水栓の実施例を示すもので、ボールバルブについて、回動支軸を所定角度偏心させた位置に設定し、通水が排出通水室に対して斜降排出されるように構成した状態の全体を縦断面とした全体構造正面図である。
【図2】同じく、外観図として示した図1の左側面図である。
【図3】同じく、全体を横断面とした全体構造平面図である。
【図4】同じく、図3を外観図として示した全体構造平面図である。
【図5】同じく、全体構造を分解して縦断面として示した分解縦断面側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 止水栓本体
1a 止水栓本体の本胴部
1b 止水栓本体の栓棒支持胴
11 止水栓本体の配水支管との接合口
12 2次側接合構造部に至る通水路
13 2次側配管との接合構造部
14 栓棒支持胴の栓棒螺合雌螺子
2 切換ボールバルブ
21 ボールバルブの通水孔
22 切換弁室
23 ユニット体嵌装通水室
24 ハンドルキー挿入口
25 ボールバルブとハンドルキーとの嵌合回動軸
26 ユニット体固定雌螺子孔
3 ストレーナユニット体
3a ストレーナユニット体の上枠
3b ストレーナユニット体の下枠
31 ストレーナユニット体の濾過スクリーン
32 ストレーナユニット体の固定ビス
4 栓棒
41 栓棒の雄螺子
42 栓棒止水弁室
43 浮動弁体
43a 浮動弁体の支軸
43b 栓棒先端の浮動弁体支軸の挿入孔
44 栓棒止水弁座
45 栓棒止水弁のハンドル
5 逆止弁
51 逆止弁の作動チェック栓
52 逆止弁の作動チェック栓の覆蓋キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動操作によって通水路を開閉するボールバルブの2次側側部に、上面を弁座に構成し、側周に濾過スクリーンを設定したユニット体を嵌装した通水室を設け、その上部に上記ユニット体の弁座に着座する浮動弁体を先端に作動可能に着合して昇降作動する栓棒止水弁と2次側通水口に逆止弁を設定した弁室を設けたことを特徴とするストレーナ止水栓
【請求項2】
ボールバルブの回動支軸を、ボールに穿設された排出通水孔の中軸に対して所定角度偏心させた位置に設定し、通水が排出通水室に対して斜降角度をもって排出されるように構成した請求項1記載のストレーナ止水栓
【請求項3】
止水栓の2次側端部を、水道用メータの1次側端部に着合する伸縮管構成とし、伸縮管内に逆止弁を設定するようにした請求項1又は請求項2記載のストレーナ止水栓
【請求項4】
通水配管の中心軸線に対して、ボールバルブ弁室と栓棒止水弁室を横並びに並列設定して通水配管の長手方向面間距離を短縮するようにした請求項1又は請求項2又は請求項3記載のストレーナ止水栓
【請求項5】
止水部と逆止弁部の間に覆蓋機構を設けた通気孔を穿設するようにした請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載のストレーナ止水栓

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−278335(P2007−278335A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102741(P2006−102741)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000201593)前澤給装工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】