説明

スパッタターゲット材料、磁気記録媒体及びスパッタターゲット材料の製造方法

【課題】化学量論的に良好なカーバイド又は炭素含有のマスター合金スパッタターゲット材料を提供すること。
【解決手段】スパッタターゲット材料は、Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cからなる合金系を含有してなり、Cは、0.5〜20at%を含み、Mは、0.5〜20at%を含み、かつTi、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの群から選ばれた元素とし、またM1は、0.5〜20at%を含み、かつTi、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの群から選ばれた元素とし、更にM2は、0.5〜10at%を含み、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの群から選択した元素とする。他方、基板及び上記のスパッタターゲット材料からなる少なくとも1つの下層を含む磁気記録媒体とすることができる。スパッタターゲット材料を製造する方法は、クロム合金やカーバイド又は炭素含有のマスター合金を含む元素の組み合わせからなる粉体材料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはスパッタターゲットに関し、詳しくは、コバルト合金磁気フィルムにおける磁気結晶面の好都合なエピタキシャル成長を促進するのに有効なカーボンを含有するクロム基合金材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングを遂行するプロセスは、原子レベルの滑らかな面を持ち厚みを正確にコントロールされた薄膜材料を堆積させるため、例えば、半導体を被覆したり、及び/又は磁気記録媒体の表面にフィルムを形成したりするなど様々な分野で広く使用されている。従来の磁気記録媒体の製造において、薄膜の複数の層は、複数のスパッタターゲットによって基板上に次々とスパッタされる。この場合、各スパッタターゲットがそれぞれ異なる材料で構成されているので、薄膜が積み重なった状態(以下、「スタック」と記載する)で堆積する。図1は、従来の磁気記録媒体における代表的な薄膜のスタックを示している。スタックのベースは、非磁性基板101であり、代表的にはアルミニウム又はガラスである。シード層102、即ち最初に堆積された層は、一般に、より高い層の粒状組織の形や配向を決めるものであり、一般にNiP又はNiAlからなっている。次に、多くは1ないし3つの個別の層を含んだ非磁性の下層104が堆積され、その場合に下層は、一般にCrMoやCrTiのようなクロム基の合金である。1つ又は2つの別個の層を含んだ中間層105が下層104の上に形成される。ここで、中間層105は、コバルト基であり、わずかに磁気を有するものである。磁気を有する上層 106が中間層105の上に堆積される。この場合、当該上層は2ないし3つの別個の層を含んでいてもよい。そして、カーボン潤滑層108が上層106を覆って形成される。
【0003】
磁気記録媒体上の単位面積当たりに記録可能なデータ量は、上記上層のグレインサイズに反比例する。また、微量の添加元素による粒界偏析もデータ記録容量の増加に寄与する。上層の結晶粒のサイズ及び一定の粒界偏析は、スタックの前の段階で堆積された薄膜の特性、特に下層の特性によって影響を受けることがある。
【0004】
磁性合金薄膜層における望ましい微細構造を促進するための1つの技術は、下層に合金を使用することである。クロムを含んでいる下層は、コバルト合金磁性薄膜における磁気結晶面のエピタキシャル成長を促進する傾向がある。さらに、クロム下層は、粒状組織の微細化を促進し、磁膜用途における媒体による雑音を低減する。下層の合金は、一般にCr-X-Y合金系で表わされる。X元素は、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)又はW(タングステン)のような大きな原子の元素を表わし、クロム合金格子を広げる。Y元素は、ホウ素(B)のようなより小さな原子の元素を表わし、粒界を分離する傾向にあり、また粒子の成長抑制剤の役割をする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
元素形態において黒鉛粉末を含む粉体ブレンドを固めた材料から作られたスパッタターゲットは、スパッタリングプロセス中に所謂、噴出現象を介して生起する粒子の生成を促す傾向がある。さらに、スパッタターゲット材料の調合に黒鉛粉末を使用すると、ターゲット全体にわたって炭素の分散を悪くする。従って、炭素含有のクロム合金を製造する従来の技術は、スパッタターゲット材料への用途においては減少しつつあり、使用された場合にもコバルト合金磁気記録層において得られるような合金の有益なエピタキシャル成長特性を調整する用途である。
【0006】
従って、磁気記録媒体のコバルト合金膜中に、好ましい磁気結晶面の最適なエピタキシャル成長を促進するために、炭素含有のクロム基合金のスパッタターゲット材料を提供することは、極めて望ましいことである。特に、スパッタターゲット材料全体にわたって炭素の最適な分散を得るために、またコバルト合金磁性層に最適なエピタキシャル成長適合性を有する薄膜のスパッタリング形成を達成するために、化学量論的に良好なカーバイド化合物又は炭素含有のマスター合金を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、磁気記録媒体の下層をスパッタリングするためのスパッタターゲット材料を製造する粉末冶金方法を提供することにより、上記問題を解決する。ここで、スパッタターゲットは、コバルト合金薄膜層と最もよく適合する良好なエピタキシャル成長を促す炭素含有のクロム合金組成で構成される。
【0008】
本発明の一形態においては、スパッタターゲット材料を提供する。このスパッタターゲット材料は、Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cからなる合金系を含有している。ここで、炭素Cは、0.5〜20at%含まる。金属Mは、0.5〜20at%含まれ、チタンTi,バナジウムV,イットリウムY,ジルコニウムZr,ニオビウムNb,モリブデンMo,ハフニウムHf,タンタルTa及びタングステンWの元素群から選ばれる元素である。M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。M2は、0.5〜10at%含まれ、リチウムLi,マグネシウムMg,アルミニウムAl,スカンジウムSc,マンガンMn,イットリウムY及びテルルTeの元素群から選ばれる元素である。
【0009】
本発明の他の形態においては、磁気記録媒体を提供する。磁気記録媒体は、基板及び少なくとも1つの下層を含み、前記下層がCr-C、Cr-M-C及びCr-M1-M2-Cからなる合金系を含有する。ここで、Cは、0.5〜20at%含まれる。Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。M2は、0.5〜10at%含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれる元素である。
【0010】
さらに他の発明の形態においては、スパッタターゲット材料の製造方法を提供する。この方法は、以下の(a)〜(c)の要件を含んでいる。即ち、(a) Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cからなる合金系用として、元素の粉体材料又はその元素の組み合わせを選択する。この場合、Cは、0.5〜20at%が含まる。Mは、0.5〜20at%が含まれ、かつTi、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれた元素、M1は、0.5〜20at%が含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれた元素、M2は、0.5〜10at%が含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれた元素である。ここで更に、前記粉体材料は、スパッタターゲット材料に有効な純度、メッシュサイズ及び粒子形態を少なくとも有するように選択される。(b) 前記合金系用の未圧密の調合物を作るために前記選択された元素の粉体材料又はその組み合わせを混合する。(c) スパッタターゲット材料を製造するために前記未圧密の調合物を高密度化させる。元素の組み合わせからなる粉体材料は、クロムカーバイドのようなクロム合金を含む。また、元素の組み合わせからなる粉体材料は、カーバイド又は炭素含有のマスター合金を含む。代表的なカーバイド又は炭素含有のマスター合金の例としては、Ti-C、V-C、Y-C、Zr-C、Nb-C、Mo-C、Hf-C、Ta-C、W-C、Li-C、Mg-C、Al-C、Sc-C、Mn-C、Y-C及びTe-C等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、その一部分を構成する添付図面を参照して説明する。なお、ここで理解すべきことは、本発明を実施できる特定の実施形態について図示しているだけで、他の実施形態を使用してもよく、また、本発明の範囲から逸脱しなければ変更してもよいことはいうまでもない。
【0012】
本発明は、スパッタされた下層中に最適なエピタキシャル成長及びスパッタされた上層の磁性薄膜とエピタキシャル適合させるために、個々の元素やカーバイドの原料から、又は炭素含有のマスター合金から、炭素含有のクロム合金スパッタターゲット材料を製造することにより、磁気記録媒体のデータ記録容量の増加を可能にする。
【0013】
化学式Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cによって表わされた合金系のスパッタターゲット材料の製造に粉末冶金方法を適用することは、組成範囲の広い炭素含有の合金系の製造に多様性を与える。本発明のスパッタターゲット材料の製造には、個々の元素、カーバイドあるいは炭素を含有するマスター合金の粉体調合物を使用する。この場合、マスター合金は周期表のII-A〜VII-Aの群及びI-B〜IV-Bの群に属する元素を含んでいる。本発明の製造方法は、炭素含有の合金を製造するための効率的な手段となる。このとき、この合金に含まれる炭素含有の粒子の分散を、個々の元素、カーバイド又はマスター合金添加剤の有益な化学量論をそれら添加剤の粒度分布と同様に選択することを通じて最適化することができる。別の有益な特性として、純粋な金属よりはむしろカーバイド又はマスター合金といった元素の粉体材料、黒鉛或いはその両方を使用することにより、侵食やスピッティング(spitting)の結果として、スパッタ中の粒子の生成を減らす。
【0014】
第1の発明は、スパッタターゲット材料を提供する。スパッタターゲット材料は、Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cからなる合金系を含有している。ここで、Cは、0.5〜20at%含まれる。また、Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti,V,Y,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。さらに、M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWの元素群から選ばれる元素ある。そして、M2は、0.5〜10at%含まれ、Li,Mg,Al,Sc,Mn,Y,及び Teの元素群から選ばれる元素である。さらに、スパッタターゲット材料は、以下に記述されるような合金系の粉末混合物の調合密度を高めることにより製造することができる。高密度化プロセスは、例えば、高温静水圧圧縮(HIP)のような手順、他の高圧、高温プロセス、低温パウダープレスや焼結、そして粉末冶金技術の分野において周知の他の手順と同様にその他の圧力を与えない方法も含まれる。
【0015】
本発明のスパッタターゲット材料は、例えば、炭素Cの元素の原子百分率の組み合わせ、そして上述したような周期表のII-A〜VII-A群とI-B〜IV-B群の元素のいかなる組み合わせも含む。スパッタターゲット材料は、0.5〜20at%の範囲の炭素組成を有する。好ましくは、スパッタターゲット材料内には、1.0〜10at%の炭素組成が含まれる。より好ましくは、1.5〜8at%の範囲の炭素を含む。炭素を2〜6at%含有するCr-M-C合金系を含むスパッタターゲット材料の代表的な実施例は、Cr-20M-6C、Cr-20M-2C、Cr-6M-4C、Cr-20M-4C、及びCr-6M-2Cを含むものである。なお、上記数字は合金内の参照元素の原子百分率に相当する。さらに、上記代表的な範囲内の全ての原子濃度は、本発明のスパッタターゲット材料において使用することができる。ここに記述された発明の方法を使用して、上記範囲内の炭素の特定の原子百分率を有するスパッタターゲット材料を選択し、製造することは可能である。
【0016】
本発明のスパッタターゲット材料は、またII-A〜VII-A群及びI-B〜IV-B群の元素組成を含む。製造された合金系によっては、その元素に以下に示すM又はM1及びM2が含まれる。即ち、Mは、Ti,V,Y,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,及びWの元素群から選ぶことができる。また、M1は、Ti,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,及びWの元素群から選ぶことができる。そして、M2は、Li,Mg,Al,Sc,Mn,Y,及びTeの元素群から選ぶことができる。M又はM1がTiであるようないくつかの実施例においては、原子百分率は10〜50at%である。Cr-C,Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cの合金系を含有するスパッタターゲット材料の他の代表的な実施例は、Cr-4C,Cr-15W-5C,Cr-20Mo-2Ti-2C及びCr-20Mo-2Ta-2Cを含んでいる。
【0017】
Cr-M-C合金系に関して、スパッタターゲット材料は、Mが0.5〜20at%の範囲の組成を有する前記合金系を含有している。好ましくは、上記スパッタターゲット材料は、Mが1.0〜10at%の範囲の組成を有する上記合金系を含有する。より好ましくは、上記スパッタターゲット材料は、Mの範囲が1.5〜8at%である上記合金系を含有している。上記合金系のMがMoであるようなスパッタターゲット材料の代表的な実施例は、Moの原子百分率が6〜20at%であり、Cr-20M-6C,Cr-20M-2C,Cr-6M-4C,Cr-20M-4C及びCr-6M-2Cを含んでいる。ここで、上記数字は合金内の参照元素の原子百分率に相当する。また、炭素比率でもって上述されているように、これら特定の範囲内にあるMの全ての原子濃度を有するスパッタターゲット材料は、本発明の方法を使用して製造することができる。
【0018】
Cr-M1-M2-C合金系に関して、スパッタターゲット材料は、M1が0.5〜20at%の範囲の組成を有する上記合金系を含有している。好ましくは、上記スパッタターゲット材料は、M1が1.0〜10at%の組成を有する上記合金系を含有している。さらに好ましくは、上記スパッタターゲット材料は、M1の範囲が1.5〜8at%である上記合金系を含有している。また上記合金系は、M2が0.5〜10at%の範囲の組成を有する。好ましくは、M2が1.0〜4.0at%の範囲の組成を含む。さらに好ましくは、M2の範囲が1.5〜3.5at%のものを含む。スパッタターゲット材料の代表的な実施例は、上記合金系のM1かM2のいずれか一方がMoである場合、Moの原子百分率は6〜20at%である。炭素比率でもって上述されているように、上記特定の範囲内のこれら全ての比率で化合及び置換が可能なように、M1あるいはM2の全ての原子濃度を有するスパッタターゲット材料は、本発明の方法を使用して製造することができる。
【0019】
本発明の合金系を含有するスパッタターゲット材料は、100at%にするために合金の残部としてクロム組成を有する。Cr-C合金系として、クロム組成は、合金系に含まれたCの原子濃度を100at%から差し引いたものに相当する。したがって、Crは、Cr-C合金系を構成するスパッタターゲット材料中に80〜99.5at%含まれる。Cr-M-C合金系のスパッタターゲット材料は、MとCの合計の原子濃度を100at%から差し引いたものに相当するクロム組成を含有する。この合金系においては、Crは、スパッタターゲット材料中に60〜99at%含まれる。例えば、Cr-6Mo-2CからなるCr-M-C合金系は、92at%のクロム組成を有する。同様に、Cr-M1-M2-C合金系を有するスパッタターゲット材料は、100at%からその合金系に含まれるM1、M2及びCの合計の原子濃度を差し引いたクロム組成を有する。例えば、Crは、発明のCr-M1-M2-C合金系を有するスパッタターゲット材料中に50〜98.5at%含まれる。特定の実例では、C、M、M1あるいはM2の量を前述した範囲より高い原子濃度に増加させることは有益である。そのような実施例では、得られたスパッタターゲット材料のクロム組成は、合金系の残部を100at%まで上げるのに応じて減少する。
【0020】
スパッタターゲット材料がここに与えられた示唆及び手引きに基づいてCr-C、Cr-M-CあるいはCr-M1-M2-C合金系のいずれについてもCr、M、M1、M2及びC元素を置換及び組み合わせることによって全て製造することができることは、明らかである。合金系の選択、各元素の原子濃度、及びどの元素をM、M1あるいはM2として使用するかということは、例えばスパッタターゲット材料の使用目的に応じて選択することである。ここに記述された合金系の全ては、磁気記録媒体として効果的なエピタキシャル成長及びその適合を促進する。さらに、発明の合金系、元素組成及び/又は選択された合金系の原子濃度は、例えば、異なる磁気記録媒体での使用においてはエピタキシャル成長適合性を最適化するために変更することができる。合金系の異なる組成を作り、テストして発明を最適化することは、周知である。
【0021】
さらに、第2の発明は、スパッタターゲット調合物を提供する。スパッタターゲット調合物は、Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cを構成する合金系として元素の粉末混合材料、あるいはそれら元素の組み合わせを含んでいる。ここで、Cは、0.5〜20at%含まれる。Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。また、M2は、0.5〜10at%含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれる元素である。そして、ここでは、前記粉体材料は、スパッタターゲット材料に有効な少なくとも純度、メッシュサイズおよび粒子形態を有するように選択される。
【0022】
本発明のスパッタターゲット調合物は、本発明のスパッタターゲット材料の製造に使用される元素の原料の粉末混合物からなる。元素の原料は、下記のように選択され、高密度化による圧密化前に未圧密の混合物に混ぜ合わされる。したがって、その調合物は、本発明のスパッタターゲット材料として従来から知られている合金系のうち、いずれにも対応する元素及び原子濃度の未圧密の粉末混合材を含む。さらに、調合物は、材料の1つ以上が本発明の合金系の元素の組み合わせに相当する未圧密の粉末混合材料を含む。
【0023】
また、同様に元素の組み合わせに相当する2つ以上の粉体材料が本発明のスパッタターゲット調合物に含まれる。その元素の組み合わせは、例えば、Cr、M、M1、M2あるいはCから選ばれた2つ以上の元素の化学量論的に良好な集合体を含む。
【0024】
元素の粉体材料に相当するスパッタターゲット調合物の成分は、例えば、Cr、C、M、M1及びM2を含む。ここで、Mは、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWから選ばれ、M1は、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWから選ばれ、M2は、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeから選ばれる。調合物の成分は、個々の元素に対応する原料の形をしている。あるいは、その成分は、上記元素の組み合わせの形で存在する。元素の組み合わせは、任意の二元、又はより高次の化合物になりえて、例えば、合金、マスター合金あるいはカーバイドを含む。元素組み合わせの粉体材料の代表例は、クロム合金あるいは炭素含有のマスター合金を含む。代表的なカーバイドは、Cr-C、Ti-C、V-C、Y-C、Zr-C、Nb-C、Mo-C、Hf-C、Ta-C、W-C、Li-C、Mg-C、Al-C、Sc-C、Mn-C、Y-C又はTe-C及び当技術において周知の化学量論を有するものを含んでいる。
【0025】
スパッタターゲット調合物は、その元素あるいは組み合わせの粉体材料に多様な成分を含んで混合される。例えば、個々の元素として粉体材料が選択され、そして混合されて、前述した1つ以上の合金系に相当する特定の原子濃度で未圧密化の調合物にされる。又は、スパッタターゲット調合物は、1つ以上の個々の元素、及びカーバイド、合金あるいはマスター合金のような元素の組み合わせに相当する1つ以上の材料を混合して作ることができる。さらに、合金やマスター合金は、炭素を含んでいる。さらに、スパッタターゲット調合物は、発明の合金系を特定する元素の組み合わせに相当する2つ以上の材料を混合して作ることができる。したがって、最終の調合物が本発明の合金系を特定する成分及び原子濃度を含んでいる限り、スパッタターゲット調合物の成分に相当する元素の粉体材料は、変更することができる。粉体材料の選択のプロセス及び調合物に混合するプロセスは、後述するように又は物性論において周知の方法によって行なうことができる。得られたスパッタターゲット調合物はスパッタターゲットを製造するために高密度化にされる。
【0026】
第3の発明は、磁気記録媒体を提供する。この磁気記録媒体は、基板及び少なくとも1つの下層で構成する。磁気記録媒体の下層は、Cr-C、Cr-M-C及びCr-M1-M2-Cの構成を有する合金系を含んでいる。ここで、Cは、0.5〜20at%含まれる。また、Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。さらに、M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。そして、M2は、0.5〜10at%含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれる元素である。
【0027】
本発明の粉末冶金方法により製造されたスパッタターゲット材料は、選ばれたスパッタターゲット用の合金系からなる薄膜層を基板上にスパッタして形成するために使用することができる。本発明のスパッタターゲットを使用して作ることができる代表的な薄膜層は、磁気記録媒体の下層である。化学式Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cによって表わされる発明の合金系からなる下層は、上層のコバルト合金膜中における磁気結晶面の有益なエピタキシャル成長を促進する。したがって、スパッタターゲットは、本発明のスパッタターゲット材料から作ることができ、広範な用途において有用な異なる磁気記録媒体の製造用として様々な下層膜をスパッタするために使用することができる。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態による磁気記録媒体の薄膜のスタックを示す。つまり、磁気記録媒体は、基板と基板上に形成された少なくとも1つの下層を含んでいる。ここで、下層は、Cr-C、Cr-M-C及びCr-M1-M2-Cを構成する合金系からなる。この場合、Cは、0.5〜20at%含まれる。また、Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。さらに、M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。そして、M2は、0.5〜10at%含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれる元素である。また、磁気記録媒体は、例えば、下層上に形成された少なくとも1つの中間層を含む。代表的な中間層は、Co基合金からなる。さらに、磁気記録媒体は、例えば、中間層の上に形成された少なくとも1つの上層を含む。同じく、上層は、Co基合金からなる。
【0029】
図2に示す本実施形態において、磁気記録媒体400の代表的な薄膜スタックは、一般に、アルミニウム又はガラスの基板401を含んでいる。シード層402は、基板401上に形成される。この場合、シード層402は、続いて堆積される薄膜層の粒状組織の形や配向を決定する。一般に、シード層402は、NiP又はNiAlからなる。本発明の薄膜スタックにおいては、シード層402は省略することができる。
【0030】
下層404は、シード層402上に、又はシード層402が省略される場合には、基板401上に形成される。下層404は、本発明の薄膜スタックにおいて1層で示されているが、下層404は1乃至3つあるいはより多くの層で構成することができる。下層404は、化学式Cr-C、Cr-M-CあるいはCr-M1-M2-Cを有する発明の合金系で構成される。ここで、Cは、0.5〜20at%含まれる。また、Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。さらに、M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。また、M2は、0.5〜10at%含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれる元素である。さらに、本発明の磁気記録媒体の下層は、追加の元素あるいは化合物を含むことができる。例えば、発明の合金系で構成する下層は、続いて堆積される薄膜層の有益な粒状組織を促進する酸化物あるいは他の化合物を含むことができる。
【0031】
中間層405は、下層404上に形成される。中間層405は、1層で示されているが、中間層405は1乃至3つあるいはより多くの層で構成することができる。中間層405は、コバルト基の合金で構成することができ、さらにまた、追加の元素や有益な粒状組織を促進する酸化物のような化合物を含むことができる。中間層405は、わずかに磁気を有していてもよい。
【0032】
上層406は、中間層405の上に形成される。図2においては、上層406は、1層で示されている。さらに、本発明の追加の態様では、上層406は1乃至3つあるいはより多くの層で構成することができる。上層406は、同様に、コバルト基の合金で構成することができ、さらにまた、有益な粒状組織を促進する酸化物のような追加の元素や化合物を含むことができる。
【0033】
炭素の潤滑層408は、上層406の上に形成される。ここでは、潤滑層は、Cあるいは炭素基の合金を含む。炭素の潤滑層408は、記録再生ヘッド(図示せず)と上層406との間の物理的接触によって引き起こされるダメージから上層406を保護する。本発明の薄膜のスタックにおいては、炭素潤滑層408は省略することができる。
【0034】
第4の発明は、化学式Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cによって表わされる合金系を有するスパッタターゲット材料の製造方法を提供する。前述したように、これらの合金系に相当する構成要素の粉体材料、あるいはその構成要素の組み合わせは、未圧密化の調合物を製造するために混合することができる。ここで、Cは、0.5〜20at%含まれる。また、Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。さらに、M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれる元素である。そして、M2は、0.5〜10at%含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれる元素である。元素の粉体材料、あるいはその組み合わせは、スパッタターゲット材料として有効な少なくとも純度、メッシュサイズ及び粒子形態を有して選択される。スパッタターゲット調合物は、例えば、スパッタターゲット材料を製造するために高密度化して固めることができる。その後、スパッタターゲットに加工される。
【0035】
本発明のスパッタターゲット材料の製造方法は、所要の物理的及び/又は化学的性質を有する元素の粉体材料又はその元素の組み合わせの選択を含んでいる。本発明の方法の利点は、化学式Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cによって表わされる本発明の合金系をすべての元素の組み合わせ及びすべての原子濃度で製造するために、構成要素の化学量論的に良好な集合体が選択され、使用されることである。
【0036】
簡単にいえば、粉体材料は、所要の合金系を作るために選ばれる。例えば、CrとCは、Cr-C合金系用として選ばれる。Cr、C及びMの元素の粉体材料は、Cr-M-C合金系用として選ばれる。ここで、Mは、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWのうちの任意の1つに相当する。同様に、Cr、C、M1及びM2は、Cr-M1-M2-C合金系用として選ばれる。ここで、M1は、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWのうちの任意の1つに相当し、M2は、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeのうちの任意の1つに相当する。個々の元素の粉体材料が選択することができる。又は、所要の合金系の2つ以上の元素に相当する元素の組み合わせが選択することができる。例えば、カーバイドMo-C及びCr-Cは、MがMoである場合に、Cr-M-C合金系を製造するための粉体材料として化学量論的に良好な組み合わせの中で選択することができる。所望の又は予め決められた物理的及び/又は化学的性質を有する元素の粉体材料の選択は、物性論の技術分野においては周知である。
【0037】
さらに、所望の物理的及び/又は化学的性質を有する元素の粉体材料の選択は、スパッタターゲット材料として有効な純度を有する粉体材料の選択を含んでいる。有効な純度は、スパッタターゲットの利用目的に応じて選ばれる。ある薄膜応用は、磁気記録媒体の薄膜として有効な高純度を要求する。高純度とは、元素の原料粉末、あるいは、前述したカーバイド又は炭素を含有する合金のような元素の組み合わせであって、少なくとも約99.94%の純度を有するものを含んでいる。高純度の恩恵を受けてスパッタされた薄膜下層の一例は、元素の粉体材料の純度が、99.98%のCr及び99.50%のCr3C2に相当するCr-4Cである。他の薄膜応用は、例えば少なくとも約99.90〜99.93%の純度を含む、より低い純度の粉体材料を使用することができる。さらに、他のスパッタされた薄膜下層の応用は、まだ有効である間はより低い純度の粉体材料を使用することができ、例えば、少なくとも約99.85%又は99.85〜99.89%の純度を有するものも含まれる。純度について後者の2つの範囲を要求する下層の応用例は、Cr-15Mo-4C及びCr-20Mo-6Cをそれぞれ含んでいる。ここで、元素の粉体材料の純度は、99.98%のCr、99.90%のMo及び99.5%のMo2Cに相当する。
【0038】
さらに、本発明の合金系のための元素の粉体材料の選択は、スパッタターゲット材料に有効なメッシュサイズの選択を含む。有効なメッシュサイズは、例えば調合物混合における粉末の総量に基づいて選ばれる。この粉末の総量は、調合物内の合金系元素の原子濃度に一致する。さらに、有効なメッシュサイズは、元素の原子サイズや最終製造物の合金系の元素のような他の物理的及び/又は化学的性質に基づいて、又はそれらを含んで選ばれる。
【0039】
さらに、メッシュサイズは、他の要因に基づいて、又例えば、均質な粉末調合物の生成について原子濃度を考慮して選択することができる。例えば、粉体材料のより小さな原子濃度は、均質な、又は本質的に均質な調合物を製造するために、調合物の他の粉体材料と混合する際に、より大きな注意が必要である。M、M1、M2及び/又はCのより細かいメッシュサイズは、スパッタターゲット材料の全体にわたってより高い均一性及び/又はより最適な分散性を得るべく、発明の合金系のこれらの構成要素に対して選ぶことができる。メッシュサイズは、粉末調合物の均質性を達成するために本発明の合金系として同類の元素群内から異なる元素を選ぶことにより、特定の混合手順と一致させるために調節することができる。別の要因は、合金系に有益な相変化の活性化を含んでいる。例えば、炭素によって製造されたもののようなより小さなメッシュサイズは、相変化の望ましい活性化に帰着する。したがって、上記小さなメッシュサイズは、発明の特定の合金系に有効なメッシュサイズとして選択される。MがMoに相当するCr-M-C合金系の元素の粉体材料の代表的なメッシュサイズは、Crが100メッシュ、Moが325メッシュ及びカーバイドが325メッシュである。
【0040】
さらに、本発明の合金系のための元素の粉体材料の選択は、スパッタターゲット材料に有効な粒子形態の選択を含む。スパッタターゲットに有効な粉末元素、カーバイドあるいは炭素を含有するマスター合金の粒子形状は、スパッタターゲットを製造するのに使用される所要の高密度化プロセスに基づいて選ぶことができる。例えば、粉体材料の粒径は、高温静水圧圧縮(HIP)方法が高密度化のために使用される場合には、粗いメッシュサイズである。より粗いメッシュサイズは、例えば、100メッシュを含む。一方、圧力をかけない高密度化方法が使用される場合に、より細かい粒径を選択することは、本発明の合金系に対して完全に焼結させるために有効であり、最大で100%密度まで達成するのに有効である。高密度化のためにより低い圧力及び温度を用いる方法は、例えば、冷たい粉末を圧縮し、焼結した物を含む。高密度化のこれらの方法に適用可能な代表的な粒径は、例えば、325メッシュを含んでいる。
【0041】
カーバイド又は炭素を含有する合金のような組み合わせを含む元素の上記粉体材料は、材料科学の技術分野において周知の化学的及び物理的方法のいずれによっても製造することができる。さらに、カーバイド又は炭素を含有する合金のような組み合わせを含む元素の上記粉体材料は、材料科学の技術分野において周知の様々なプロセスのいずれによっても製造することができる。特に、有用な製造プロセスは、噴霧法を含んでいる。それは、高密度化を改善するために一定の化学的均質性及び球形粒子のような有益な特性を示す粉体材料を製造することができ、そのとき、高圧、高温プロセスが使用される。
【0042】
炭素を含有するクロム合金を作るための他の選択肢は、クロムと炭素とが予め合金化された粉末を使用することである。この原料は、例えば、Cr-Cマスター合金を溶かし、粉末にすることにより用意することができる。次の例において、99.98%のCr溶解原料は、99.9%の片状黒鉛と共に真空誘導溶解される。予め合金化された材料の所要の組成は、Cを14at%含有するCr-C、あるいはCr-14Cの組み合わせである。それから、溶融合金は、高圧アルゴン噴射でもって細かい粒子状にガス噴霧される。その結果、球形粒子に凝固する。このような凝固された粉末の代表的な微細構造は、図3に示されている。図3は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)の後方散乱イメージモードである。この顕微鏡写真は、粉末粒子の断面によって微細構造を明らかにする。
【0043】
元素の組み合わせCr-14Cの微細構造は、過飽和のクロムマトリックス内に、一様に分散した1〜2μmのカーバイド粒子(矢印)からなる。この粉末の化学組成は、次の表に示したものである。
【0044】
【表1】

【0045】
本発明の合金系の構成要素である元素の粉体材料又はその組み合わせは、有効な純度、メッシュサイズ及び粒子形態を有する元素の粉末、あるいはその組み合わせの選択に続いてスパッタターゲット調合物に混合される。Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cを含有する合金系の原子濃度を達成するために粉末は、選択された量の中で混合される。ここで、Cは、0.5〜20at%含まれる。また、Mは、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれた元素である。さらに、M1は、0.5〜20at%含まれ、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選ばれた元素である。そして、M2は、0.5〜10at%含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選ばれた元素である。元素やその組み合わせの粉体材料を混合することは、均質又は実質的に均質な粉末調合物を製造するために構成要素の粉体材料を混合するか調製することを含んでいる。また、合金系の粉体材料構成要素の製造のように、合金の調合物は、材料科学の技術分野において周知の様々な化学的及び物理的方法のいずれを使用しても作ることができる。例えば、合金調合物の有益な均質性及び形態論的特性を得るために噴霧法によって製造することができる。さらに、材料科学の技術分野において周知の他の方法は、粉体材料を混合するために、及び/または均一混合物を得るために使用することができる。
【0046】
上述したように、Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cを含有するスパッタターゲット材料に有効な純度、メッシュサイズ及び粒子形態を少なくとも有するように、元素の粉体材料を選択し混合し、あるいはその元素を結合させた後に、粉末調合物は、選択された合金系の元素及び原子濃度を含んで製造される。この粉末調合物は、材料科学の技術分野において周知の後述する手順を後で使用するために保管される。又は、それは、選択された合金系を含有するスパッタターゲット材料、又はその合金系の製造に直ちに使用される。
【0047】
スパッタターゲット材料は、粉末の塊が所定の形状又は缶状に形成され、その後、粒子間金属結合させるために固めるという高密度化方法によって製造することができる。HIPを使用して高密度化する特定の例は、元素の材料は、均質な混合物を製造するために混合され、粉末は金属製の容器に閉じ込められる。また、容器は、任意の残留ガスによる材料の汚染を回避するためにガス抜きされる。そして、高温静水圧圧縮が容器に加えられる。この場合、遊離した粉末を「高温静水圧圧縮された缶」のように既知の密度を高める状況にして、熱及び静水圧が粉末を固めるために容器にかけられる。「高温静水圧圧縮された缶」は、その後、複数のスパッタターゲットのブランクを作るためにスライスされ、またターゲットブランクは、適切な形に機械加工される。その形は、円形、長方形、又は多角形であってもよい。成形が終わると、スパッタターゲットは水平に置かれ、グラインダーで磨かれ、又は削られる。
【0048】
図4は、化学式Cr-Cを有する合金系のスパッタターゲット材料の代表的な微細構造を図示している。図5は、MがMoである化学式Cr-M-Cを有する合金系のスパッタターゲット材料の代表的な微細構造を図示している。Cr-C及びCr-M-C合金系の両方については、Cは、Cr又はMoのカーバイドを使用して、スパッタターゲット調合物にそれぞれ取り入れられる。特に図4は、CrとCr2Cの粉体材料の調整によって製造されるCr-C合金中のカーバイド相の分布を示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。図5は、Cr-M-C合金中のカーバイド相の分布を示すSEMを示す。ここで、Cr-M-Cは、MがMoであり、Cr、Mo及びMo2C粉体材料の調整によって製造される。
【0049】
本発明は、示された実施形態に関して記述されているが、上述された特定の例及び研究が発明の単なる例証であることは、容易に理解できるであろう。発明の精神から外れずに、様々な改良をなすことができることは、理解されるに違いない。従って、この発明は、特許請求の範囲によってのみ制限されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の磁気記録媒体として代表的な薄膜スタックを示す。
【図2】本発明の1つの態様を示す薄膜スタックを示す。
【図3】Cr-14Cat%において予め合金とした組み合わせの粒子断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)の後方散乱イメージモードを示す。
【図4】CrとCr2C粉末混合の調製によって得られたCr-C合金中のカーバイド相の分散を示すSEM顕微鏡写真である。
【図5】Cr、MoおよびMo2C粉末混合の調製によって得られたCr-Mo-C合金中のカーバイド相の分散を示すSEM顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0051】
400…磁気記録媒体
401…基板
402…シード層
404…下層
405…中間層
406…上層
408…炭素潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cからなる合金系を有するスパッタターゲット材料であって、この場合にCは、0.5〜20at%が含まれ、Mは、0.5〜20at%が含まれ、かつTi、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選択した元素であり、またM1は、0.5〜20at%が含まれ、かつTi、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選択した元素であり、そしてM2は、0.5〜10at%が含まれ、Li、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選択した元素であることを特徴とするスパッタターゲット材料。
【請求項2】
Cが1.0〜10at%含まれることを特徴とする請求項1記載のスパッタターゲット材料。
【請求項3】
Cが1.5〜8at%含まれることを特徴とする請求項1記載のスパッタターゲット材料。
【請求項4】
Mは、Moを含むことを特徴とする請求項1記載のスパッタターゲット材料。
【請求項5】
前記合金系は、Cr-20Mo-6C、Cr-20Mo-2C、Cr-6Mo-4C、Cr-20Mo-4C及びCr-6Mo-2Cからなる合金系群から選ばれることを特徴とする請求項4記載のスパッタターゲット材料。
【請求項6】
前記合金系は、Cr-4C、Cr-15W-5C、Cr-20Mo-2Ti-2C及びCr-20Mo-2Ta-2Cの合金系群から選ばれることを特徴とする請求項1記載のスパッタターゲット材料。
【請求項7】
基板及び少なくとも1つの下層を含み、前記下層がCr-C、Cr-M-C及びCr-M1-M2-Cからなる合金系を含有する磁気記録媒体であって、この場合に、Cは、0.5〜20at%が含まれ、またMは、0.5at%〜20at%が含まれ、かつTi、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選択した元素であり、またM1は、0.5〜20at%が含まれ、かつTi、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選択した元素であり、更にM2は、0.5〜10at%が含まれ、かつLi、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選択した元素であることを特徴とした磁気記録媒体。
【請求項8】
Cが1.0〜10at%含まれたことを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
Cが1.5〜8at%含まれたことを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
Mは、Moを含むことを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記合金系は、Cr-20Mo-6C、Cr-20Mo-2C、Cr-6Mo-4C、Cr-20Mo-4C及びCr-6Mo-2Cの合金系群から選択することを特徴とする請求項10記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記合金系は、Cr-4C、Cr-15W-5C、Cr-20Mo-2Ti-2C及びCr-20Mo-2Ta-2Cの合金系群から選択することを特徴とする請求項7記載のスパッタターゲット材料。
【請求項13】
(a) Cr-C、Cr-M-C又はCr-M1-M2-Cからなる合金系用として、元素の粉体材料又はその粉体材料の元素の組み合わせを選択し、この場合に、Cは、0.5〜20at%が含まれ、Mは、0.5〜20at%が含まれ、かつTi、V、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選択した元素とし、M1は、0.5〜20at%が含まれ、かつTi、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWの元素群から選択した元素とし、M2は、0.5〜10at%が含まれ、かつLi、Mg、Al、Sc、Mn、Y及びTeの元素群から選択した元素とし、さらに、前記粉体材料は、スパッタターゲット材料に有効な純度、メッシュサイズ及び粒子形態を少なくとも有して選択されたものとし、また、
(b)前記合金系用の未圧密の調合物を作るために前記選択された元素の粉体材料又はその組み合わせを混合し、そして
(c)スパッタターゲット材料を製造するために前記未圧密の調合物を高密度化する、
ことを含むことを特徴とするスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項14】
Cが1.0〜10at%含まれることを特徴とする請求項13記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項15】
Cが1.5〜8at%含まれることを特徴とする請求項13記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項16】
Mは、Moを含むことを特徴とする請求項13記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項17】
前記合金系は、Cr-20Mo-6C、Cr-20Mo-2C、Cr-6Mo-4C、Cr-20Mo-4C及びCr-6Mo-2Cの合金系群から選択することを特徴とする請求項16記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項18】
前記合金系は、Cr-4C、Cr-15W-5C、Cr-20Mo-2Ti-2C及びCr-20Mo-2Ta-2Cの合金系群から選択することを特徴とする請求項13記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項19】
前記元素の組み合わせは、クロム合金を含むことを特徴とする請求項13記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項20】
前記クロム合金は、クロムカーバイドを含むことを特徴とする請求項19記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項21】
前記元素の組み合わせは、カーバイド又はカーボンを含有するマスター合金を含むことを特徴とする請求項13記載のスパッタターゲット材料の製造方法。
【請求項22】
前記カーバイド又はカーボンを含有するマスター合金は、Ti-C、V-C、Y-C、Zr-C、Nb-C、Mo-C、Hf-C、Ta-C、及びW-C、Li-C、Mg-C、Al-C、Sc-C、Mn-C、Y-C及びTe-Cの合金群から選択することを特徴とする請求項13記載のスパッタターゲット材料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−144117(P2006−144117A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303259(P2005−303259)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(503375441)ヘラエウス インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】HERAEUS,INC.
【Fターム(参考)】