スパッタリングターゲットを製造するための方法および装置
i)基板を提供する段階、ii)スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料をプラズマ溶解し、溶解材料の溶滴を生じさせる段階、iii)基板上に液滴を蒸着させ、基板上に材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせる段階を有するスパッタリングターゲットを製造するための方法。いくつかの適用では、基板は一時的な基板で、iv)被覆された一時基板を永久的なターゲット支持材料に前記被覆層を介して接合し、v)前記一時基板を取り外し、永久的なターゲット支持材料上に材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせることが、望ましい。プラズマ蒸着ステップは、大気圧下、又は直流プラズマ溶射、直流転送アーク蒸着、誘導プラズマ溶射などの軟真空を使用する条件下で行われる。この方法は簡単で、結果としてのターゲット上にその後の作業を必要としない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパッタリングターゲットに関わり、それ故より詳細には、本発明はスパッタリングターゲットを製造するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングターゲットは薄膜被覆産業において必須の構成部分である。それらは高純度の材料源として使用され、その材料はイオンビームなどの強力な発射体粒子による衝突の結果としてターゲット表面から放出される。続いて、蒸気の形態で放出される粒子は、基板の表面に指向され、制御された厚さと純度の薄膜の形態に蒸着される。スパッタリング方法の最も顕著な特性はその普遍性である。実際には、いかなる材料も被覆候補となりうる。というのは、それは、化学的な、あるいは熱的な方法ではなく物理的な運動量変換によって気相を経るからである。
【0003】
スパッタリング方法を使用する薄膜蒸着は、アルミニウム合金および耐熱性金属の超小形電子回路金属化層、超小形電子回路絶縁層、透明導電電極、光集積回路装置のためのアモルファス光学被膜、圧電変換器、表示装置のための光電導体および発光性フィルム、光学的アドレス指定メモリ素子、アモルファスバブルメモリ素子、薄膜抵抗およびコンデンサー、ビデオディスク、固体電解質、薄膜レーザ、および超小形電子回路フォトリソグラフィ・マスク・ブランク、などの広範囲に亘る用途における必須のステップである。
【0004】
ターゲット材料は用途に非常に依存し、さまざまである。それらは、アルミニウム、銅、鉄、銀、クロム、シリコン、タンタル、金、白金、レニウムなどの純金属、硫酸カドミウム、ガリウム砒酸塩、ガリウム燐酸塩などの合金および化合物、二酸化ケイ素、アルミナ、シリコンカーバイドなどの広範囲のセラミック、PTFE(テフロン(登録商標))などの高分子化合物により、あるいは異種材料の寄せ集めによっても形成できる。ターゲットの性能は、そのターゲット材料の純粋さ、見掛け密度、およびミクロ組織に強く依存する。
【0005】
スパッタリングターゲットにおいては、高純度の材料からなるターゲットプレートの形成のための異なる粉末冶金技術の使用を通じて製造され、それに続いて、最終的な運用条件下における適切な熱管理のためにターゲット支持材料上に取り付けられることが、伝統的に行われて来た。この技術は、比較的うんざりするものであり、粉末の準備と緻密化、それに続く室温での粉末固化、さらに次の必要とされる高密度レベルまでの焼結、などのための数多くのステップを必要とする。ある場合では、室温固化は最終製品に必要な密度を達成するのに十分でない。そのような場合、かなり一層複雑で高価な熱間静圧圧縮成形(HIP)焼結技術の助けを使うことが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、スパッタリングターゲットを製造するための改良された方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラズマ溶射/蒸着技術を使用する一連の簡単なステップで、スパッタリングターゲットを製造するのに使用できる新規な技術を扱う。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ターゲット材料をターゲット支持体上への直接のプラズマ蒸着、または一時的な基板であって、そこから最終的なターゲット材料の支持体に蒸着物が後ほど移されることになる一時的な基板への蒸着、を通じたスパッタリングターゲットを製造するための方法が提供される。
【0009】
より詳細には、本発明の第1の局面によれば、
i)被覆受容表面を有する基板を提供する段階と、
ii)スパッタリングターゲットを形成するように選択されたターゲット材料を空中で粉末状にプラズマ溶解し、溶解したターゲット材料の溶滴を生じさせる段階と、
iii)前記基板の被覆受容表面上に前記液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に前記ターゲット材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせる段階と、
を有するスパッタリングターゲットを製造するための方法が提供される。
【0010】
蒸着されたターゲット材料としては、例えば、金属または合金、セラミック、異種金属の寄せ集め、および/または、金属とセラミックの混合物、あるいは重合体(ポリマー)とすることが可能である。
【0011】
プラズマ蒸着ステップは、例えば、d.c.(直流)プラズマジェット、d.c.プラズマ転送アーク、または誘導プラズマ溶射を使用して、大気圧下または真空蒸着条件下で遂行される。
【0012】
さらに詳細には、本発明の第2の局面によれば、
スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料を溶解するためのプラズマトーチであって、溶解した材料の溶滴を生じさせ、基板の被覆受容表面上にそれらの液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせるプラズマトーチを有するスパッタリングターゲットを製造するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の他の目的、利点、および特徴は、その好適な実施の形態であって、専ら添付の図面に関する一例として与えられた実施の形態に関する以下の非限定的な説明を読むことでさらに明白となるであろう。
【0014】
さて、本発明の第1の態様を例示する実施の形態による、スパッタリングターゲットを製造するための方法100を、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示されるように、方法100は以下のステップを含む:
102−被覆受容表面204を有する一時的な基板200を提供する;
104−スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料をプラズマ溶解し、溶解した材料の溶滴を生じさせる;
106−一時的な基板200の被覆受容表面204上に液滴を蒸着させ、一時的なターゲット200の被覆受容表面204上に上記材料の被覆層206を生じさせる;
108−被覆した一時的なターゲットを永久的なターゲット支持材料208に被覆層206を介して接合する;
110−一時的な基板200を取り外し、永久的なターゲット支持材料208上に上記材料206の被覆層からなるスパッタリングターゲット210を生じさせる。
【0016】
これらそれぞれのステップは、図2および図3を参照しながら、さらに詳細にここで説明される。
【0017】
ステップ102では、被覆受容表面204を有する一時的な基板200が提供される(図2および図3の第1ステップ参照)。図2および図3では、一時的な基板200が2つの相対する側面を有し、その1つの側面が被覆を受容する側面204であるような平坦なディスクとして示されているが、それにかかわらず、一時的な基板は被覆受容表面を備える他の形状を持つことができる。
【0018】
一時的な基板材料の適切な選択、および蒸着ステップ106の間の温度の制御により、蒸着されるターゲット材料206中の内部応力およびクラックを最小にすることができる(ステップ104〜106)。使用可能な基板の材料の例としては、モリブデンまたはタングステンなどの耐熱性金属、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、窒化シリコン、シリコンカーバイド、および窒化ボロンなどのセラミック、あるいはグラファイトまたは炭素ベース複合材料、を含む。
【0019】
一時的な基板の材料は、蒸着プロセスに伴う高温に耐えるように、そして1つのターゲット材料と同様の体積膨張係数を持つように選択される。ターゲット材料206の熱膨張係数と一時的な基板200のそれとが非常に異なる場合にはいつも、基板材料にマーキング(marking)を提供することにより内部応力の蒸着物への進行を最小にすることができるということが見出だされてきた。らせん状のマーキング202’を含んだそのような一時的な基板200’が、追加図面の図4で示されている。マーキングは、らせん状または放射状の形状、あるいは蒸着された被覆206において内部応力の進行を回避することができる程度に十分なレベルの柔軟性を、基板200’に与える部分のような、多くの形状を有することができる。
【0020】
ある適用においては、一時的な基板100は、続いて一時的な基板200からターゲット材料206を取り外すことの助けとなるように、および/または、一時的な基板200から蒸着されたターゲット材料206への拡散に起因する蒸着されたターゲット材料206の汚染を避けるために、拡散バリアまたは衝撃のない不活性物質の制御層によって、予め被覆される。標準的なスパッタリング方法を使用すること、あるいは、付着/拡散制御層(図示せず)などの蒸着のための化学蒸着(CVD)技術は、そのような目的のために効果的に使用できるであろう。基板200の表面仕上げを適切に制御することは、さらなるターゲット材料蒸着のためにこの場合に再利用できるかも知れない基板200を犠牲にすることなく、基板200からターゲット材料206を簡単に取り外すことを可能にもするであろう。
【0021】
次に、方法100は、スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料をプラズマ溶解し、溶解した材料の溶滴を生じさせ(ステップ104)、そして一時的な基板200の被覆受容表面204上にそれらの液滴を蒸着させる(ステップ106)段階を含む。蒸着物206は、図2および図3の両方に示された第2のステップで示されるように、スパッタリングターゲットの適用に必要な材料206の被覆層の厚さに蓄積される。
【0022】
被覆形成ステップ106が一旦終了すると、結果として得られた一時的な支持体200を有するターゲットプレート206は、図2および図3の第3のステップで例証されるように、はんだ付、エポキシ、または他の適切な結合手段や技術のいずれかを使用して、被覆層206を介して永久的なターゲット支持材料208に接合される(ステップ108)。
【0023】
はんだ付ステップ108の前に、蒸着されたターゲット材料206が内部応力を回復するように、ターゲット材料蒸着物206の熱処理法が、永久的なターゲット材料支持体208上に対して実行できる。あるいは、ターゲット材料蒸着物206には、一時的な基板200に関して上述したのと同様に、応力除去マーキングを提供することができる。
【0024】
次に、例えば、エッチングを施すか、機械加工によって切断するか(ステップ110)、あるいは他の材料取り外し方法を使用することによって、一時的な基板200は取り外され、スパッタリングターゲット210がもたらされる。
【0025】
次に、ターゲットの表面210は、例えば研摩や、つや出しされることにより、適切に仕上げられることができる。
【0026】
ある用途においては、永久的なターゲット支持材料208上に、材料206のプラズマ蒸着を直接実行できる。もちろん、これらの場合は、方法100のステップ108〜110は実行されない。この特定の場合、方法100の適用は、使用済みの、および消耗したターゲットの再使用でありうる。
【0027】
蒸着ステップ104〜106がターゲット支持体208上に直接実行される場合は、これらのステップの間、ターゲット支持体208の防熱が施される。例えば、ターゲット支持体208は、モリブデンから作ることができ、または高温の基板208上へのターゲット材料206の蒸着を可能にするような適切な耐熱性材料から作ることができる。
【0028】
ステップ104〜106はプラズマ溶射/蒸着装置を使用することで達成される。
【0029】
このような、直流(d.c.)プラズマジェット300の形態のプラズマ装置の第1の例が図5に示されている。
【0030】
プラズマジェット300を使用して、方法100のステップ106〜108は、ターゲット材料を大気圧下または真空蒸着条件下で直流プラズマジェットに粉末状にして注入することによって、実行される。個々の粉末粒子は、溶解して飛行し、基板200に向かって加速され、基板にターゲット材料206の平坦な板状体を形成しながら衝突する。被覆206は、必要な蒸着物の厚さに達するまで、逐次平坦な板状体の蒸着を通じて蓄積される。純度および見掛け密度の点から見た蒸着物の材質は、供給物質の純度、並びに、プラズマトーチ−基板間の距離ZS、基板の温度、プラズマガス成分、およびプラズマパワーなどの蒸着条件に依存する。真空蒸着条件下で動作するこのような装置300に対する典型的な動作条件は以下の通りである:
プラズマガス流量=40から50slpm
プラズマガス成分=10から20体積%のH2を含むAr/H2
プラズマパワー=30から40kW
蒸着チャンバ圧力=50から100Torr
プラズマ基板蒸着距離=10から20cm
粉末供給速度=10から20g/min
粉末平均粒子直径=30から50マイクロメートル。
【0031】
図6は直流プラズマ転送アーク装置の形態のプラズマ装置310の第2の例を示す。直流プラズマ転送アーク装置310は、図5の直流プラズマジェット300に非常に類似しているので、2つの装置の間の相違点のみが、ここで、より詳細に説明される。
【0032】
直流プラズマ転送アーク装置310により、プラズマ放電の転送はプラズマトーチ・カソードと基板200との間で達成され、この場合、基板はアノードとして機能する。一般的に、より高いターゲット材料密度がこの技術を使用して達成されるが、この技術では、基板材料200によってターゲット材料が、より汚染する傾向にある。
【0033】
図7は、方法100のステップ106〜108を実行するのに使用できる無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置320を示す。この特定の装置により、プラズマジェットがエネルギーの誘導電磁結合を通じてプラズマガス中に生じるが、これは直流プラズマ技術に比較して、プラズマ環境のかなり高いレベルの純度を保証する。粉末状のターゲット材料206は、プラズマガスによる空中での加熱によって溶解し、基板200に向かって加速され、連続した個々の板状体の生成を通じて、基板上に蒸着物206が蓄積される。
【0034】
真空誘導プラズマ溶射の、さらに特定の例によれば、プラズマジェットが垂直下向きに指向されている状態で、誘導プラズマトーチが適切な真空蒸着チャンバの頂部に取り付けられる。ターゲット材料206が蒸着されるべき基板200は、真空蒸着チャンバ中に置かれ、並進機構および回転機構(図示せず)に取り付けられ、これによって基板200がプラズマジェットの方向に対して、ほぼ直角方向に保持されることができる。この真空誘導プラズマ溶射装置の特定の例によれば、基板200の動きは、プラズマトーチのノズル出口と基板表面との間の固定された蒸着距離を保持するような方法で設定される。形成された個々の板状体のサイズと形状は、その粒子の径、温度、および基板への衝突前の速度に依存する一方で、蒸着の厚さは基板とプラズマトーチの間の相対速度に依存する。形成された蒸着物の微細組織は、順次、基板へのそれらの衝突前の粒子パラメータ、および基板の状態に依存する。基板温度、直線速度、および基板への粒子の衝突角度が、得られる蒸着物206の特性に影響を及ぼすということが見出だされた。
【0035】
PL−50テンカ(Tekna)誘導プラズマトーチを使用した誘導結合r.f.プラズマ蒸着ステップの典型的な動作条件は以下の通りである:
プラズマガス流量;
シースガス=90slpm(Ar)+10slpm(H2)
主要ガス=30slpm(Ar)
粉末ガス=9slpm(He)
プラズマ・プレート・パワー=80kW
チャンバ圧力=100Torr
粉末供給速度=30〜40g/min
粉末材料=シリコン
粉末粒径分布=40〜90マイクロメートル
プラズマトーチ−基板距離=20cm
基板回転=20rpm
全蒸着時間=30min。
【0036】
図8は、ラバル収縮/膨張ノズルを追加し、図7の装置320に類似した無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置330を示す。この構成は、基板200へのそれらの衝突前の粒子の速度をかなり増加させ、音速以下のプラズマ蒸着条件(図7参照)を使用して得られる粒状組織と比較して著しく微細な粒状組織を有する蒸着物206の生成の増加をもたらすことができる。ナノサイズを与えられた粉末を使用したプラズマ装置330を使用することで、ナノ構造被覆を生成することもできる。
【0037】
シリコン・スパッタリングターゲットの製造に対する本発明の方法および装置を使用する可能性を示すために、グラファイト基板上へのシリコン粉末の真空誘導プラズマ蒸着によって実験が実施された。これらの実験によって、相対的に一定の蒸着厚みプロファイル、および図9〜図11に示されたような微細なミクロ粒子組織とともに、シリコン元素の理論的密度の99%を上回るターゲット密度を得ることができることが示された。
【0038】
図9は、実施した2つの異なる実験に対する20cmのグラファイト基板上に蒸着したシリコン・ターゲット材料の放射状の形状を示している。
【0039】
図10aおよび図10bは、それぞれ第1および第2の実験の結果として蒸着された材料の電子顕微鏡写真である。
【0040】
最後に、図11は、第1の実験に対するシリコン蒸着物の見かけの密度を示す。シリコンの理論的密度が2.33g/cm3であることに注意されたい。
【0041】
本発明は、その好適な実施の形態によってここで説明してきたが、添付の特許請求の範囲で規定された対象とする発明の精神と本質を逸脱しないで、それを変更することできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態によるスパッタリングターゲットを製造するための方法のフローチャートである。
【図2】図1の様々なステップを示す概略側面図である。
【図3】図1の様々なステップを示す概略平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による一時的な基板の概略平面図である。
【図5】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第1の例による直流プラズマ装置の概略断面図である。
【図6】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第2の例による直流プラズマ転送アーク装置の概略断面図である。
【図7】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第3の例による無線周波数誘導プラズマ装置の概略断面図である。
【図8】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第4の例による超音速無線周波数誘導装置の概略断面図である。
【図9】実施した2つの実験(第1および第2)に対する、一時的なグラファイト基板上に蒸着するシリコン・ターゲット材料の径方向プロファイルのグラフである。
【図10a】実施した第1の実験に対する、蒸着された材料の電子顕微鏡写真である。
【図10b】実施した第2の実験に対する、蒸着された材料の電子顕微鏡写真である。
【図11】実施した第1の実験に従った、シリコン蒸着に対する見掛け密度プロファイルのグラフである。
【符号の説明】
【0043】
200 基板
202 マーキング
204 被覆受容表面
206 ターゲットプレート
208 ターゲット支持材料
210 スパッタリングターゲット
300 直流プラズマジェット
310 プラズマ装置(直流プラズマ転送アーク装置)
320 プラズマ装置(無線周波数誘導プラズマ溶射装置)
330 プラズマ装置(無線周波数誘導プラズマ溶射装置)
【技術分野】
【0001】
本発明はスパッタリングターゲットに関わり、それ故より詳細には、本発明はスパッタリングターゲットを製造するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングターゲットは薄膜被覆産業において必須の構成部分である。それらは高純度の材料源として使用され、その材料はイオンビームなどの強力な発射体粒子による衝突の結果としてターゲット表面から放出される。続いて、蒸気の形態で放出される粒子は、基板の表面に指向され、制御された厚さと純度の薄膜の形態に蒸着される。スパッタリング方法の最も顕著な特性はその普遍性である。実際には、いかなる材料も被覆候補となりうる。というのは、それは、化学的な、あるいは熱的な方法ではなく物理的な運動量変換によって気相を経るからである。
【0003】
スパッタリング方法を使用する薄膜蒸着は、アルミニウム合金および耐熱性金属の超小形電子回路金属化層、超小形電子回路絶縁層、透明導電電極、光集積回路装置のためのアモルファス光学被膜、圧電変換器、表示装置のための光電導体および発光性フィルム、光学的アドレス指定メモリ素子、アモルファスバブルメモリ素子、薄膜抵抗およびコンデンサー、ビデオディスク、固体電解質、薄膜レーザ、および超小形電子回路フォトリソグラフィ・マスク・ブランク、などの広範囲に亘る用途における必須のステップである。
【0004】
ターゲット材料は用途に非常に依存し、さまざまである。それらは、アルミニウム、銅、鉄、銀、クロム、シリコン、タンタル、金、白金、レニウムなどの純金属、硫酸カドミウム、ガリウム砒酸塩、ガリウム燐酸塩などの合金および化合物、二酸化ケイ素、アルミナ、シリコンカーバイドなどの広範囲のセラミック、PTFE(テフロン(登録商標))などの高分子化合物により、あるいは異種材料の寄せ集めによっても形成できる。ターゲットの性能は、そのターゲット材料の純粋さ、見掛け密度、およびミクロ組織に強く依存する。
【0005】
スパッタリングターゲットにおいては、高純度の材料からなるターゲットプレートの形成のための異なる粉末冶金技術の使用を通じて製造され、それに続いて、最終的な運用条件下における適切な熱管理のためにターゲット支持材料上に取り付けられることが、伝統的に行われて来た。この技術は、比較的うんざりするものであり、粉末の準備と緻密化、それに続く室温での粉末固化、さらに次の必要とされる高密度レベルまでの焼結、などのための数多くのステップを必要とする。ある場合では、室温固化は最終製品に必要な密度を達成するのに十分でない。そのような場合、かなり一層複雑で高価な熱間静圧圧縮成形(HIP)焼結技術の助けを使うことが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、スパッタリングターゲットを製造するための改良された方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラズマ溶射/蒸着技術を使用する一連の簡単なステップで、スパッタリングターゲットを製造するのに使用できる新規な技術を扱う。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ターゲット材料をターゲット支持体上への直接のプラズマ蒸着、または一時的な基板であって、そこから最終的なターゲット材料の支持体に蒸着物が後ほど移されることになる一時的な基板への蒸着、を通じたスパッタリングターゲットを製造するための方法が提供される。
【0009】
より詳細には、本発明の第1の局面によれば、
i)被覆受容表面を有する基板を提供する段階と、
ii)スパッタリングターゲットを形成するように選択されたターゲット材料を空中で粉末状にプラズマ溶解し、溶解したターゲット材料の溶滴を生じさせる段階と、
iii)前記基板の被覆受容表面上に前記液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に前記ターゲット材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせる段階と、
を有するスパッタリングターゲットを製造するための方法が提供される。
【0010】
蒸着されたターゲット材料としては、例えば、金属または合金、セラミック、異種金属の寄せ集め、および/または、金属とセラミックの混合物、あるいは重合体(ポリマー)とすることが可能である。
【0011】
プラズマ蒸着ステップは、例えば、d.c.(直流)プラズマジェット、d.c.プラズマ転送アーク、または誘導プラズマ溶射を使用して、大気圧下または真空蒸着条件下で遂行される。
【0012】
さらに詳細には、本発明の第2の局面によれば、
スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料を溶解するためのプラズマトーチであって、溶解した材料の溶滴を生じさせ、基板の被覆受容表面上にそれらの液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせるプラズマトーチを有するスパッタリングターゲットを製造するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の他の目的、利点、および特徴は、その好適な実施の形態であって、専ら添付の図面に関する一例として与えられた実施の形態に関する以下の非限定的な説明を読むことでさらに明白となるであろう。
【0014】
さて、本発明の第1の態様を例示する実施の形態による、スパッタリングターゲットを製造するための方法100を、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示されるように、方法100は以下のステップを含む:
102−被覆受容表面204を有する一時的な基板200を提供する;
104−スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料をプラズマ溶解し、溶解した材料の溶滴を生じさせる;
106−一時的な基板200の被覆受容表面204上に液滴を蒸着させ、一時的なターゲット200の被覆受容表面204上に上記材料の被覆層206を生じさせる;
108−被覆した一時的なターゲットを永久的なターゲット支持材料208に被覆層206を介して接合する;
110−一時的な基板200を取り外し、永久的なターゲット支持材料208上に上記材料206の被覆層からなるスパッタリングターゲット210を生じさせる。
【0016】
これらそれぞれのステップは、図2および図3を参照しながら、さらに詳細にここで説明される。
【0017】
ステップ102では、被覆受容表面204を有する一時的な基板200が提供される(図2および図3の第1ステップ参照)。図2および図3では、一時的な基板200が2つの相対する側面を有し、その1つの側面が被覆を受容する側面204であるような平坦なディスクとして示されているが、それにかかわらず、一時的な基板は被覆受容表面を備える他の形状を持つことができる。
【0018】
一時的な基板材料の適切な選択、および蒸着ステップ106の間の温度の制御により、蒸着されるターゲット材料206中の内部応力およびクラックを最小にすることができる(ステップ104〜106)。使用可能な基板の材料の例としては、モリブデンまたはタングステンなどの耐熱性金属、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、窒化シリコン、シリコンカーバイド、および窒化ボロンなどのセラミック、あるいはグラファイトまたは炭素ベース複合材料、を含む。
【0019】
一時的な基板の材料は、蒸着プロセスに伴う高温に耐えるように、そして1つのターゲット材料と同様の体積膨張係数を持つように選択される。ターゲット材料206の熱膨張係数と一時的な基板200のそれとが非常に異なる場合にはいつも、基板材料にマーキング(marking)を提供することにより内部応力の蒸着物への進行を最小にすることができるということが見出だされてきた。らせん状のマーキング202’を含んだそのような一時的な基板200’が、追加図面の図4で示されている。マーキングは、らせん状または放射状の形状、あるいは蒸着された被覆206において内部応力の進行を回避することができる程度に十分なレベルの柔軟性を、基板200’に与える部分のような、多くの形状を有することができる。
【0020】
ある適用においては、一時的な基板100は、続いて一時的な基板200からターゲット材料206を取り外すことの助けとなるように、および/または、一時的な基板200から蒸着されたターゲット材料206への拡散に起因する蒸着されたターゲット材料206の汚染を避けるために、拡散バリアまたは衝撃のない不活性物質の制御層によって、予め被覆される。標準的なスパッタリング方法を使用すること、あるいは、付着/拡散制御層(図示せず)などの蒸着のための化学蒸着(CVD)技術は、そのような目的のために効果的に使用できるであろう。基板200の表面仕上げを適切に制御することは、さらなるターゲット材料蒸着のためにこの場合に再利用できるかも知れない基板200を犠牲にすることなく、基板200からターゲット材料206を簡単に取り外すことを可能にもするであろう。
【0021】
次に、方法100は、スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料をプラズマ溶解し、溶解した材料の溶滴を生じさせ(ステップ104)、そして一時的な基板200の被覆受容表面204上にそれらの液滴を蒸着させる(ステップ106)段階を含む。蒸着物206は、図2および図3の両方に示された第2のステップで示されるように、スパッタリングターゲットの適用に必要な材料206の被覆層の厚さに蓄積される。
【0022】
被覆形成ステップ106が一旦終了すると、結果として得られた一時的な支持体200を有するターゲットプレート206は、図2および図3の第3のステップで例証されるように、はんだ付、エポキシ、または他の適切な結合手段や技術のいずれかを使用して、被覆層206を介して永久的なターゲット支持材料208に接合される(ステップ108)。
【0023】
はんだ付ステップ108の前に、蒸着されたターゲット材料206が内部応力を回復するように、ターゲット材料蒸着物206の熱処理法が、永久的なターゲット材料支持体208上に対して実行できる。あるいは、ターゲット材料蒸着物206には、一時的な基板200に関して上述したのと同様に、応力除去マーキングを提供することができる。
【0024】
次に、例えば、エッチングを施すか、機械加工によって切断するか(ステップ110)、あるいは他の材料取り外し方法を使用することによって、一時的な基板200は取り外され、スパッタリングターゲット210がもたらされる。
【0025】
次に、ターゲットの表面210は、例えば研摩や、つや出しされることにより、適切に仕上げられることができる。
【0026】
ある用途においては、永久的なターゲット支持材料208上に、材料206のプラズマ蒸着を直接実行できる。もちろん、これらの場合は、方法100のステップ108〜110は実行されない。この特定の場合、方法100の適用は、使用済みの、および消耗したターゲットの再使用でありうる。
【0027】
蒸着ステップ104〜106がターゲット支持体208上に直接実行される場合は、これらのステップの間、ターゲット支持体208の防熱が施される。例えば、ターゲット支持体208は、モリブデンから作ることができ、または高温の基板208上へのターゲット材料206の蒸着を可能にするような適切な耐熱性材料から作ることができる。
【0028】
ステップ104〜106はプラズマ溶射/蒸着装置を使用することで達成される。
【0029】
このような、直流(d.c.)プラズマジェット300の形態のプラズマ装置の第1の例が図5に示されている。
【0030】
プラズマジェット300を使用して、方法100のステップ106〜108は、ターゲット材料を大気圧下または真空蒸着条件下で直流プラズマジェットに粉末状にして注入することによって、実行される。個々の粉末粒子は、溶解して飛行し、基板200に向かって加速され、基板にターゲット材料206の平坦な板状体を形成しながら衝突する。被覆206は、必要な蒸着物の厚さに達するまで、逐次平坦な板状体の蒸着を通じて蓄積される。純度および見掛け密度の点から見た蒸着物の材質は、供給物質の純度、並びに、プラズマトーチ−基板間の距離ZS、基板の温度、プラズマガス成分、およびプラズマパワーなどの蒸着条件に依存する。真空蒸着条件下で動作するこのような装置300に対する典型的な動作条件は以下の通りである:
プラズマガス流量=40から50slpm
プラズマガス成分=10から20体積%のH2を含むAr/H2
プラズマパワー=30から40kW
蒸着チャンバ圧力=50から100Torr
プラズマ基板蒸着距離=10から20cm
粉末供給速度=10から20g/min
粉末平均粒子直径=30から50マイクロメートル。
【0031】
図6は直流プラズマ転送アーク装置の形態のプラズマ装置310の第2の例を示す。直流プラズマ転送アーク装置310は、図5の直流プラズマジェット300に非常に類似しているので、2つの装置の間の相違点のみが、ここで、より詳細に説明される。
【0032】
直流プラズマ転送アーク装置310により、プラズマ放電の転送はプラズマトーチ・カソードと基板200との間で達成され、この場合、基板はアノードとして機能する。一般的に、より高いターゲット材料密度がこの技術を使用して達成されるが、この技術では、基板材料200によってターゲット材料が、より汚染する傾向にある。
【0033】
図7は、方法100のステップ106〜108を実行するのに使用できる無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置320を示す。この特定の装置により、プラズマジェットがエネルギーの誘導電磁結合を通じてプラズマガス中に生じるが、これは直流プラズマ技術に比較して、プラズマ環境のかなり高いレベルの純度を保証する。粉末状のターゲット材料206は、プラズマガスによる空中での加熱によって溶解し、基板200に向かって加速され、連続した個々の板状体の生成を通じて、基板上に蒸着物206が蓄積される。
【0034】
真空誘導プラズマ溶射の、さらに特定の例によれば、プラズマジェットが垂直下向きに指向されている状態で、誘導プラズマトーチが適切な真空蒸着チャンバの頂部に取り付けられる。ターゲット材料206が蒸着されるべき基板200は、真空蒸着チャンバ中に置かれ、並進機構および回転機構(図示せず)に取り付けられ、これによって基板200がプラズマジェットの方向に対して、ほぼ直角方向に保持されることができる。この真空誘導プラズマ溶射装置の特定の例によれば、基板200の動きは、プラズマトーチのノズル出口と基板表面との間の固定された蒸着距離を保持するような方法で設定される。形成された個々の板状体のサイズと形状は、その粒子の径、温度、および基板への衝突前の速度に依存する一方で、蒸着の厚さは基板とプラズマトーチの間の相対速度に依存する。形成された蒸着物の微細組織は、順次、基板へのそれらの衝突前の粒子パラメータ、および基板の状態に依存する。基板温度、直線速度、および基板への粒子の衝突角度が、得られる蒸着物206の特性に影響を及ぼすということが見出だされた。
【0035】
PL−50テンカ(Tekna)誘導プラズマトーチを使用した誘導結合r.f.プラズマ蒸着ステップの典型的な動作条件は以下の通りである:
プラズマガス流量;
シースガス=90slpm(Ar)+10slpm(H2)
主要ガス=30slpm(Ar)
粉末ガス=9slpm(He)
プラズマ・プレート・パワー=80kW
チャンバ圧力=100Torr
粉末供給速度=30〜40g/min
粉末材料=シリコン
粉末粒径分布=40〜90マイクロメートル
プラズマトーチ−基板距離=20cm
基板回転=20rpm
全蒸着時間=30min。
【0036】
図8は、ラバル収縮/膨張ノズルを追加し、図7の装置320に類似した無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置330を示す。この構成は、基板200へのそれらの衝突前の粒子の速度をかなり増加させ、音速以下のプラズマ蒸着条件(図7参照)を使用して得られる粒状組織と比較して著しく微細な粒状組織を有する蒸着物206の生成の増加をもたらすことができる。ナノサイズを与えられた粉末を使用したプラズマ装置330を使用することで、ナノ構造被覆を生成することもできる。
【0037】
シリコン・スパッタリングターゲットの製造に対する本発明の方法および装置を使用する可能性を示すために、グラファイト基板上へのシリコン粉末の真空誘導プラズマ蒸着によって実験が実施された。これらの実験によって、相対的に一定の蒸着厚みプロファイル、および図9〜図11に示されたような微細なミクロ粒子組織とともに、シリコン元素の理論的密度の99%を上回るターゲット密度を得ることができることが示された。
【0038】
図9は、実施した2つの異なる実験に対する20cmのグラファイト基板上に蒸着したシリコン・ターゲット材料の放射状の形状を示している。
【0039】
図10aおよび図10bは、それぞれ第1および第2の実験の結果として蒸着された材料の電子顕微鏡写真である。
【0040】
最後に、図11は、第1の実験に対するシリコン蒸着物の見かけの密度を示す。シリコンの理論的密度が2.33g/cm3であることに注意されたい。
【0041】
本発明は、その好適な実施の形態によってここで説明してきたが、添付の特許請求の範囲で規定された対象とする発明の精神と本質を逸脱しないで、それを変更することできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態によるスパッタリングターゲットを製造するための方法のフローチャートである。
【図2】図1の様々なステップを示す概略側面図である。
【図3】図1の様々なステップを示す概略平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による一時的な基板の概略平面図である。
【図5】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第1の例による直流プラズマ装置の概略断面図である。
【図6】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第2の例による直流プラズマ転送アーク装置の概略断面図である。
【図7】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第3の例による無線周波数誘導プラズマ装置の概略断面図である。
【図8】図1の方法のプラズマ蒸着ステップを実行することを可能にするプラズマ装置の第4の例による超音速無線周波数誘導装置の概略断面図である。
【図9】実施した2つの実験(第1および第2)に対する、一時的なグラファイト基板上に蒸着するシリコン・ターゲット材料の径方向プロファイルのグラフである。
【図10a】実施した第1の実験に対する、蒸着された材料の電子顕微鏡写真である。
【図10b】実施した第2の実験に対する、蒸着された材料の電子顕微鏡写真である。
【図11】実施した第1の実験に従った、シリコン蒸着に対する見掛け密度プロファイルのグラフである。
【符号の説明】
【0043】
200 基板
202 マーキング
204 被覆受容表面
206 ターゲットプレート
208 ターゲット支持材料
210 スパッタリングターゲット
300 直流プラズマジェット
310 プラズマ装置(直流プラズマ転送アーク装置)
320 プラズマ装置(無線周波数誘導プラズマ溶射装置)
330 プラズマ装置(無線周波数誘導プラズマ溶射装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)被覆受容表面を有する基板を提供する段階と、
ii)スパッタリングターゲットを形成するように選択されたターゲット材料を粉末状にプラズマ溶解して飛行させ、溶解したターゲット材料の溶滴を生じさせる段階と、
iii)前記基板の被覆受容表面上に前記液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に前記ターゲット材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせる段階と、
を有するスパッタリングターゲットを製造するための方法。
【請求項2】
前記基板は使用済みの、および消耗したターゲットである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は一時的な基板であり、前記方法はさらに、
iv)前記一時的な基板を永久的なターゲット支持材料に前記被覆層を介して接合する段階と、
v)前記一時的な基板を取り外し、前記永久的なターゲット支持材料上に前記ターゲット材料の前記被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせる段階と、
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一時的な基板は応力除去機能を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記応力除去機能は、らせん状または放射状の形状にある請求項4に記載の方法。
【請求項6】
段階iv)の前に、前記被覆層の熱処理を実行する段階iii)の1)を有する請求項3に記載の方法。
【請求項7】
段階iv)の前に、応力除去マーキングを前記被覆層に提供する段階iii)の1)を有する請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記一時的な基板には制御層をもった予備被覆が施され、
前記制御層は、作業中において、段階v)における前記一時的な基板の取り外しの少なくとも1つを助けることを可能にし、前記一時的な基板と前記制御層の間の拡散を防止することにより前記被覆層の汚染を回避する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
スパッタリングまたは化学的気相蒸着法を使用することにより、前記制御層が前記一時的な基板上に蒸着される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御層は不活性物質からなる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
段階iv)における、永久的なターゲット支持材料に前記被覆層を介して前記一時的な基板を接合する段階は、はんだ付またはエポキシの少なくとも1つを使用して行われる請求項3に記載の方法。
【請求項12】
段階v)における、前記一時的な基板は機械的に取り外される請求項3に記載の方法。
【請求項13】
段階v)における、前記一時的な基板は、機械加工および/またはエッチングによって取り外される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階ii)およびiii)は、直流(d.c.)プラズマジェット装置、直流プラズマ転送アーク装置、および無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置から成るグループから選択されたプラズマ装置を使用して実行される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記プラズマ装置は大気圧下または真空蒸着条件下で動作させられる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プラズマ装置は、前記基板がアノードとして動作する直流プラズマ転送アークである請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置は、超音速または極超音速の流動条件下で前記無線周波数誘導プラズマ溶射装置を動作させるために提供されたラバル収縮/膨張ノズルを含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記基板は、耐熱性金属、セラミック、および炭素ベースの複合材から成るグループから選択された基板材料からなる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記耐熱性金属がモリブデンまたはタングステンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミックは、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、窒化シリコン、シリコンカーバイド、および窒化ボロンからなるグループから選択される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記炭素ベース複合材料の材料はグラファイトである請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記基板は一様に平坦なディスクである請求項1に記載の方法。
【請求項23】
スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料を溶解するためのプラズマトーチであって、溶解したターゲット材料の溶滴を生じさせ、基板の被覆受容表面上に前記液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に前記ターゲット材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせるプラズマトーチを有するスパッタリングターゲットを製造するための方法。
【請求項24】
前記プラズマトーチは、直流(d.c.)プラズマジェット装置、直流プラズマ転送アーク装置、および無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置から成るグループから選択される請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記プラズマトーチは直流プラズマ転送アークであり、前記基板がアノードとして動作する請求項23に記載の装置
【請求項26】
前記無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置は、ラバル収縮/膨張ノズルを含む請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記プラズマトーチは無線周波数誘導プラズマ溶射タイプであり、真空蒸着チャンバの頂部に取り付けられる請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記プラズマトーチは下向きに指向され、出口ノズルを含んでおり、前記装置は、前記真空蒸着チャンバ内に、前記基板を受容して前記基板を前記プラズマトーチから一定距離に保持するための移動支持体をさらに有する請求項27に記載の装置。
【請求項1】
i)被覆受容表面を有する基板を提供する段階と、
ii)スパッタリングターゲットを形成するように選択されたターゲット材料を粉末状にプラズマ溶解して飛行させ、溶解したターゲット材料の溶滴を生じさせる段階と、
iii)前記基板の被覆受容表面上に前記液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に前記ターゲット材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせる段階と、
を有するスパッタリングターゲットを製造するための方法。
【請求項2】
前記基板は使用済みの、および消耗したターゲットである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は一時的な基板であり、前記方法はさらに、
iv)前記一時的な基板を永久的なターゲット支持材料に前記被覆層を介して接合する段階と、
v)前記一時的な基板を取り外し、前記永久的なターゲット支持材料上に前記ターゲット材料の前記被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせる段階と、
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一時的な基板は応力除去機能を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記応力除去機能は、らせん状または放射状の形状にある請求項4に記載の方法。
【請求項6】
段階iv)の前に、前記被覆層の熱処理を実行する段階iii)の1)を有する請求項3に記載の方法。
【請求項7】
段階iv)の前に、応力除去マーキングを前記被覆層に提供する段階iii)の1)を有する請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記一時的な基板には制御層をもった予備被覆が施され、
前記制御層は、作業中において、段階v)における前記一時的な基板の取り外しの少なくとも1つを助けることを可能にし、前記一時的な基板と前記制御層の間の拡散を防止することにより前記被覆層の汚染を回避する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
スパッタリングまたは化学的気相蒸着法を使用することにより、前記制御層が前記一時的な基板上に蒸着される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御層は不活性物質からなる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
段階iv)における、永久的なターゲット支持材料に前記被覆層を介して前記一時的な基板を接合する段階は、はんだ付またはエポキシの少なくとも1つを使用して行われる請求項3に記載の方法。
【請求項12】
段階v)における、前記一時的な基板は機械的に取り外される請求項3に記載の方法。
【請求項13】
段階v)における、前記一時的な基板は、機械加工および/またはエッチングによって取り外される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階ii)およびiii)は、直流(d.c.)プラズマジェット装置、直流プラズマ転送アーク装置、および無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置から成るグループから選択されたプラズマ装置を使用して実行される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記プラズマ装置は大気圧下または真空蒸着条件下で動作させられる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プラズマ装置は、前記基板がアノードとして動作する直流プラズマ転送アークである請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置は、超音速または極超音速の流動条件下で前記無線周波数誘導プラズマ溶射装置を動作させるために提供されたラバル収縮/膨張ノズルを含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記基板は、耐熱性金属、セラミック、および炭素ベースの複合材から成るグループから選択された基板材料からなる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記耐熱性金属がモリブデンまたはタングステンである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミックは、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、窒化シリコン、シリコンカーバイド、および窒化ボロンからなるグループから選択される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記炭素ベース複合材料の材料はグラファイトである請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記基板は一様に平坦なディスクである請求項1に記載の方法。
【請求項23】
スパッタリングターゲットを形成するように選択された材料を溶解するためのプラズマトーチであって、溶解したターゲット材料の溶滴を生じさせ、基板の被覆受容表面上に前記液滴を蒸着させ、前記基板の被覆受容表面上に前記ターゲット材料の被覆層からなるスパッタリングターゲットを生じさせるプラズマトーチを有するスパッタリングターゲットを製造するための方法。
【請求項24】
前記プラズマトーチは、直流(d.c.)プラズマジェット装置、直流プラズマ転送アーク装置、および無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置から成るグループから選択される請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記プラズマトーチは直流プラズマ転送アークであり、前記基板がアノードとして動作する請求項23に記載の装置
【請求項26】
前記無線周波数(r.f.)誘導プラズマ溶射装置は、ラバル収縮/膨張ノズルを含む請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記プラズマトーチは無線周波数誘導プラズマ溶射タイプであり、真空蒸着チャンバの頂部に取り付けられる請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記プラズマトーチは下向きに指向され、出口ノズルを含んでおり、前記装置は、前記真空蒸着チャンバ内に、前記基板を受容して前記基板を前記プラズマトーチから一定距離に保持するための移動支持体をさらに有する請求項27に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【公表番号】特表2006−518806(P2006−518806A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501426(P2006−501426)
【出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000251
【国際公開番号】WO2004/074540
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(503389611)テクナ・プラズマ・システムズ・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000251
【国際公開番号】WO2004/074540
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(503389611)テクナ・プラズマ・システムズ・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】
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