説明

スパッタリング装置

【課題】基板5とターゲット3との間の放電領域内において電離するガス分子の圧力を均等化し、これにより電離した荷電粒子をターゲット3に均等の衝突させて、基板5上に均等な膜厚の薄膜を形成する。
【解決手段】スパッタリング装置は、真空チャンバ1内にターゲット3を配置し、同真空チャンバ1内にガスを供給して希薄ガス雰囲気とすると共に、この希薄ガスを電離し、電離した荷電粒子を前記ターゲット3に衝突させて、これによりターゲット3から発生して粒子をターゲット3と対向する基板5上に堆積させて薄膜を形成するものである。ここで、真空チャンバ1内に希薄ガスを供給するノズル9に多数の小孔を有するオリフィス22を設ける。オリフィス22の小孔の径は0.5μm〜1μmが適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内で高エネルギーの粒子をターゲットに衝突し、これによりターゲットからそれを構成する材料分子を発射させるスパッタリング装置に関し、放電領域内において電離するガスの圧力を均等化し、基板上に均一な膜厚の薄膜を形成することが出来るようにしたスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング法により、半導体ウエハ等の基板の上に薄膜を形成する場合、真空チャンバ内において、ターゲットをスパッタリングし、基板上に成膜する。従来において、前述のようにターゲットをスパッタリングして成膜する場合、予め真空チャンバの中にターゲットを配置し、真空チャンバ内にアルゴン等の不活性ガスを導入すると共に、グロー放電、プラズマ放電或いはマグネトロン放電により希薄ガスを電離し、発生したイオンをカソード側に配置したターゲットに衝突させる。イオンが衝突したターゲットからスパッタリング現象により粒子が放出され、この粒子が基板の表面状に凝着して薄膜を形成する。
【0003】
このようなスパッタリング装置は、半導体ウエハ等の基板上に薄膜パターンを形成するために使用されている。半導体ウエハ等の製造プロセスでは、基板が年々大面積化する傾向にある。そこで問題となるのが、基板上の薄膜の膜厚分布である。半導体デバイス等の均質性を確保するためには、半導体ウエハ等の基板の全表面にわたって均質で且つ均等な膜厚を有する薄膜を形成する必要がある。
【0004】
基板上に均等な膜厚の薄膜を形成するための条件の一つとして、基板とターゲットとの間の放電領域に均等な圧力の希薄ガス雰囲気を形成することが必要である。従来のスパッタリング装置では、マスフローコントローラにより精密に流量制御してガスを真空チャンバ内に導入している。しかし、従来のスパッタリング装置におけるガス導入流路は、単なるパイプ状のものであったり、基板とターゲットとの間の放電領域を囲むように配置したリング状のものであった。
しかし、こられらのガス導入流路により放電領域に導入されたガスは、基板とターゲットとの間の放電領域において圧力が偏在化する。その結果、基板上に均一な膜厚の薄膜を形成することが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−230640号公報
【特許文献2】特開平7−169703号公報
【特許文献3】特開平8−17735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来のスパッタリング装置における課題に鑑み、基板とターゲットとの間の放電領域内において電離するガス分子の圧力を均等化し、これにより電離した荷電粒子をターゲットに均等の衝突させて、基板上に均等な膜厚の薄膜を形成することが出来るスパッタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では前記の目的の目的を達成するため、ノズル9に設けた多数の小孔を有するオリフィス22を通して真空チャンバ1内に希薄ガスを供給し、この希薄ガスをターゲット3と基板5が対向する放電領域中に均一に分散し、電離して発生した荷電粒子をターゲット3に衝突させ、ターゲット3から放出される粒子により、基板上に均等な膜厚の薄膜を形成するようにした。
【0008】
本発明によるスパッタリング装置は、真空チャンバ1内にターゲット3を配置し、同真空チャンバ1内にガスを供給して希薄ガス雰囲気とすると共に、この希薄ガスを電離し、電離した荷電粒子を前記ターゲット3に衝突させて、これによりターゲット3から発生して粒子をターゲット3と対向する基板5上に堆積させて薄膜を形成するものである。ここで、真空チャンバ1内に希薄ガスを供給するノズル9に多数の小孔を有するオリフィス22を設ける。オリフィス22の小孔の径は0.5μm〜1μmが適当である。
【0009】
このような本発明によるスパッタリング装置では、真空チャンバ1内に希薄ガスを供給するノズル9に多数の小孔を有するオリフィス22を設けることにより、ターゲット3と基板5が対向する放電領域に希薄ガス分子を均一に分散することが出来る。これにより、放電領域の希薄ガス分子を均一に電離してイオン化し、これをターゲット3に衝突させることが出来る。このため、ターゲットから発生する均一な粒子を基板5に飛来させることが可能となり、基板5の全面にわたって均一な膜厚の薄膜を形成することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
以上説明した通り、本発明によるスパッタリング装置では、基板5の全面にわたって均一な膜厚の薄膜を形成することが出来ることにより、大きな面積の基板5においても、膜厚分布のバラツキが無く、最大膜厚と最小膜厚の差を小さくすることが出来る。これにより、大きな面積の基板5に均等な膜厚の薄膜を形成することが可能となり、生産性の向上を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、真空チャンバ1内に希薄ガスを供給するノズル9に多数の小孔を有するオリフィス22を設け、放電領域中の希薄ガス分子を均一に電離してイオン化し、基板5の全面にわたって均等な膜厚の薄膜を形成することを可能とした。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例であるスパッタリング装置を示す概略断面図である。
真空チャンバ1の内部には、ターゲット3が配置される。このターゲット3は、真空チャンバ1の下の外部から上下運動を導入する形式の上下移動機構2の上に載せられ、基板5と対向する位置に設けられたターゲットホルダまで搬送され、同ホルダに保持される。
【0013】
真空チャンバ1の中の前記ターゲット3ホルダ17の真上には、基板ホルダが配置され、この基板ホルダの下面に基板5が保持される。この基板5は、前記ターゲット3と上下に対向する。ホルダ5は、真空チャンバ1の上の外部から上下運動を導入する形式の昇降機構7により上下動される。さらに、基板5の下には、シャッタ6が設けられ、このシャッタ6は駆動機構8により開閉操作される。
スパッタリング装置には図示していないスパッタ電源を備えており、ターゲット3はその電源のカソード側の配置され、基板5はアノード側に配置される。
【0014】
真空チャンバ1の側方には、フランジ継手19を介してターボ分子ポンプ16とロータリーポンプ17が接続され、これらの排気手段により真空チャンバ1内が高度の真空状態に排気される。また、真空チャンバ1の側方には、フランジ継手18を介して真空ゲージ15が接続され、真空チャンバ1内の真空度が計測、監視される。
【0015】
また真空チャンバ1の側方には、フランジ継手20を通してノズル21が挿入されている。このノズル21の先端部9は、ターゲット3と基板5が対向する放電領域の近傍に挿入されている。このノズル21には、マスフローコントローラ11を介して流量制御されながら、ガス供給源14からアルゴンガス等の不活性ガスが真空チャンバ1内のターゲット3と基板5が対向する放電領域に導入される。マスフローコントローラ11の前後にはガスの供給を開放・遮断するバルブ10、12が設けられ、さらにマスフローコントローラ11を通らないバイパス流路にもバルブ14が設けられている。
【0016】
図2は、このノズル21の先端部9の構造を示す分解斜視図である。
ノズル21の先端部9には、ネジ継手23が設けられ、このネジ継手23に通されたノズル21の先端部に円板状のオリフィス22が取り付けられる。このオリフィス22はフランジ付円筒状の押え部材24によりノズル21に押えられ、これが雌ネジ付キャップ状の固定部材25の内側に嵌め込まれ、この固定部材25が前記ネジ継手23にねじ込まれることにより、オリフィス22がノズル21の先端面に固定される。
【0017】
オリフィス22は、薄い金属板に細かい多数の小孔を穿孔したもので、この金属板がリング状のフランジの中に張られている。小孔の径は0.5μm〜1μmであり、この小孔を通してノズル21側から真空チャンバ1内にアルゴン等の不活性ガスが導入される。小孔の径が0.5μm以下であると、アルゴン等の不活性ガスの通りが悪く、ターゲット3と基板5が対向する放電領域に必要とする十分な不活性ガスを供給することが出来ない。このため、成膜速度が極端に遅くなる。小孔の径が0.5μm以上であれば、このような問題は無く、放電領域に必要とする十分な不活性ガスを供給することが出来る。他方、小孔の径が1μmを越えると、オリフィス22によるガスの分散効果が無くなり、基板5の膜厚分布が悪くなる。すなわち、基板5上の最大膜厚と最小膜厚の差を小さくすることが出来ない。
【0018】
図3は、本発明によるスパッタリング装置の一実施例において、直径100mmの基板上にスパッタリング法により薄膜を形成し、その膜厚分布を示したグラフである。基板の中心を通る径方向の線に沿って膜厚分布を示しており、基板の中心を0とし、基板の中心からの距離をそれぞれ±(mm)で位置を表している。この図3から明らかな通り、膜厚分布は約16.5μm〜約16.9μmであり、そのばらつきは約2%である。
【0019】
図4と図5は、オリフィスを設けていない従来のスパッタリング装置において、直径100mmの基板上にスパッタリング法により薄膜を形成し、同様してその膜厚分布を示したグラフである。何れも膜厚分布のばらつきは約30%を越えており、本発明とは際だった相違が見られる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、半導体デバイス等の薄膜形成により製造されるデバイスの製造プロセスにおいて、広い面積の基板上に均等な膜厚の薄膜を形成出来るので、基板の中心部と周辺部とにおいて、均質なチップデバイスを製造出来ることになり、その生産性の向上のために利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例であるスパッタリング装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例であるスパッタリング装置に使用するノズルの先端部の構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明によるスパッタリング装置の一実施例において、直径100mmの基板上にスパッタリング法により薄膜を形成し、その膜厚分布を示したグラフである。
【図4】オリフィスを設けていない従来のスパッタリング装置において、直径100mmの基板上にスパッタリング法により薄膜を形成し、同様してその膜厚分布を示したグラフである。
【図5】オリフィスを設けていない従来のスパッタリング装置において、直径100mmの基板上にスパッタリング法により薄膜を形成し、同様してその膜厚分布を示したグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 真空チャンバ
3 ターゲット
5 基板
9 ノズル
22 オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ(1)内にターゲット(3)を配置し、同真空チャンバ(1)内にガスを供給してを希薄ガス雰囲気とすると共に、希薄ガスを電離し、この電離した荷電粒子を前記ターゲット(3)に衝突させて、これによりターゲット(3)から発生した粒子をターゲット(3)と対向する基板(5)上に堆積させて薄膜を形成するスパッタリング装置において、真空チャンバ(1)内に希薄ガスを供給するノズル(9)に多数の小孔を有するオリフィス(22)を設けたことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
オリフィス(22)の小孔の径が0.5μm〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−120868(P2009−120868A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293056(P2007−293056)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(390027683)株式会社エイコー・エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】