説明

スピーカ装置

【課題】静電型の面スピーカと従来のスピーカとを併用し、薄型で柔軟性のある静電型の面スピーカの特長を活用したスピーカ装置を提供する。
【解決手段】面スピーカパネル9は、枠体21に面スピーカ22が張設され、面スピーカ22がパンチングパネル板23で覆われる。上前板8は、筐体の左右方向に延設され、複数の透孔(音孔)8aが形成された格子状の骨組みを有する。コーンスピーカ10は、その前面開口部10aが、電子楽器の左端部領域内に位置するように配設される。面スピーカ22は、鍵配列方向の幅とほぼ同じ幅にわたって、上前板8の前面に配設されている。コーンスピーカ10の前面開口部10aに対向する開口領域と、面スピーカ22に対向する開口領域とは完全に重複する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型の面スピーカと従来のスピーカとを併用するスピーカ装置に関する。一例として、電子鍵盤楽器において、楽音を出力するために使用する。
【背景技術】
【0002】
電気音響変換器として、厚みの薄い面スピーカが知られている。例えば、電極間に電圧を印加しクローン力を利用して駆動する静電型スピーカ(コンデンサスピーカともいう)や、圧電特性を有するフィルムを用いたものなどが知られている。
面スピーカは、平板の面積を広くとるほど、音の指向性が平板に垂直な方向に強くなり、その結果、音が遠くまで到達する。
【0003】
このうち、静電型スピーカとして、最近注目されているものは、薄型フレキシブル(flexible)静電型スピーカである。これは、薄型・軽量であるとともに、柔軟性があるため、曲げることが可能で、曲げた後に応力が残らず、元の形状に戻りにくいという性質がある(特許文献1,2等参照)。
このような特徴を活用して、複数個の静電型スピーカを折り曲げ可能に連結することにより、カーテンスピーカを実現し、音場を自在にコントロールできるようにしたものが知られている(特許文献2)。
しかし、静電型スピーカのような面スピーカを、その特色を活用して使用するための配置や取付構造は、十分に検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−68053号公報
【特許文献2】特開2008−28652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、静電型の面スピーカと従来のスピーカとを併用し、これらの配置や取付構造を工夫することにより、薄型で柔軟性のある静電型の面スピーカの特長を活用したスピーカ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、スピーカ装置において、低音域再生用スピーカ(図1の10)と、該低音域再生用スピーカ(10)を収容する筐体(1,2,3,5)と、静電型の面スピーカ(22)を有し、前記筐体の外面の一部である板体(8)には、1又は複数の音孔(8a)が形成され、前記低音域再生用スピーカ(10)は、当該前面開口部(10a)と前記1又は複数の音孔(8a)による開口領域の一部とが対向するように配設され、前記静電型の面スピーカ(22)は、前記1又は複数の音孔(8a)と対向するように配設され、前記低音域再生用スピーカ(10)の前面開口部(10a)に対向する開口領域と、前記静電型の面スピーカ(22)に対向する開口領域とは、少なくとも部分的に重複するものである。
【0007】
静電型の面スピーカは、近似的に2次元面と見なせるような厚みの薄いスピーカであって、平坦で薄い平板形状であるが、薄い平板を湾曲させた曲面、さらには、任意の曲面や、折り曲げ面を形成した面スピーカなど、任意の形態の面スピーカも可能である

平板形状の静電型の面スピーカは、平面波を発生するので、聴取位置が電子鍵盤楽器から遠ざかっても減衰が少なく、よく聞こえる。一方、聴取位置が至近位置になってもうるさく感じられない。
一方、湾曲面が形成された湾曲面スピーカである場合、湾曲面の凸面側においては、音波の指向角が広角になり、湾曲面の凹面側においては、音波が集束する。
しかし、面スピーカの音圧は、低音域が大きく減衰し、周波数が高くなるに従い音圧が大きくなるが、中高音域は面積干渉により平坦な周波数特性を呈する。ここで、面スピーカの面積(振動板の面積)を広くするにしたがって、面積分だけ低音域の音圧が上がる。しかし、低音域の再生に限界がある。
これに対し、従来のスピーカ、例えば、ダイナミック型(動電型)のコーンスピーカ(以下、単に「コーンスピーカ」という)は、低音域においても音圧が比較的低下しない。特に、ウーファスピーカと呼ばれる大口径のコーンスピーカは、低音域再生に適している。しかし、コーンスピーカは、指向特性が鋭くなく、振動板の背面から出力される逆位相の音が振動板の前面に回り込むので、低音域が低下したり、特に中音域よりも高いところで指向特性に乱れが生じたりしやすい。
そこで、静電型の面スピーカと低音域再生用スピーカとを併用することにより、両者の欠点を補う。低音域再生用スピーカとして、上述したコーンスピーカを用いるが、必ずしもウーファスピーカに限られず、低音域を再生するスピーカであればよい。
【0008】
静電型の面スピーカと低音域再生用スピーカとの併用に際し、低音域再生用スピーカの前面開口部と対向する開口領域と、静電型の面スピーカと対向する開口領域とが、少なくとも部分的に重複するので、スピーカ装置の筐体において、低音域再生用スピーカと静電型の面スピーカとを配設する面積が少なくて済む。
静電型の面スピーカは、膜状を呈し、音響透過性があるので、開口領域が重複しても、低音域再生用スピーカから出力される音も前面に出力される。
【0009】
ここで、音孔(8a)とは、音を通過させる透孔などである。開口領域は、複数の音孔により形成されている場合と、単に1個の大きな透孔により形成されている場合がある。
低音域再生用スピーカ(10)は、筐体の外面の一部であって音孔が形成された板体(8)よりも内部の筐体内に配設される。これに対し、静電型の面スピーカは、上述した板体よりも外界の側に配設されてもよいし、上述した板体よりも内部の筐体内に配設されてもよい。前者の場合、低音域再生用スピーカは、静電型の面スピーカを間にして上述した板体に対向する。
面スピーカは、その振動面の前面又は背面と、透孔による開口領域の半分以上とが、対向するように配設されることが望ましい、言い換えれば、振動面の前面又は背面は、音響透過面積の半分以上と対向することが望ましい。
しかし、半分以下であっても、その振動面の前面又は背面から発生した音が透孔を通過すればよい。振動面の前面に透孔がある場合は、この透孔を通して発生した音が外界に放出されるし、振動面の背面に透孔がある場合は、この透孔を通して発生した音が、筐体の内部に放出されるので、背面に低音域の音圧を低下させる空気層ができないし、また、筐体の隙間から外界に出る場合もある。
【0010】
本発明は、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載のスピーカ装置において、前記筐体(図1の1,2,3,5)は、電子楽器の筐体であり、前記筐体の外面の一部である板体(8)は、長尺体であり、前記静電型の面スピーカ(22)は、前記長尺体(8)の長手方向に沿って長くされた形状で前記長尺体(8)に配設されるものである。
板体を長尺体とすることにより、静電型の面スピーカの振動板を広げることができ、振動板が広がるに従い、低音域の音圧が上がるため、低音域における音圧の低下度合いが小さくなる。
【0011】
本発明は、請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載のスピーカ装置において、前記電子楽器(図1の1,2,3,4,5)は、鍵盤部を備えた電子鍵盤楽器であり、前記長尺体(8)は、前記電子鍵盤楽器の前板であり、前記低音域再生用スピーカ(10)は、当該前面開口部(10a)が前記鍵盤部(4)の鍵配列方向の端部領域に位置するように配設され、前記静電型の面スピーカ(22)は、前記鍵盤部(4)の鍵配列方向の幅とほぼ同じ幅か、又は、該ほぼ同じ幅を超え前記電子鍵盤楽器の筐体の左右全幅以下にわたって配設されるものである。
ここで、「ほぼ同じ幅」と規定している理由は、静電型の面スピーカが外枠に取り付けられたものである場合、外枠よりも面スピーカの振動領域の幅が狭まるから、外枠を鍵盤部(4)の鍵配列方向の幅に一致させたとき、静電型面スピーカの振動領域の幅が鍵盤部(4)の鍵配列方向の幅よりも若干狭まるからである。
「前記電子鍵盤楽器の筐体の左右全幅以下」と規定した理由は、静電型面スピーカの幅が電子鍵盤楽器の筐体よりも左右に拡がっていると、違和感があるからである。
電子鍵盤楽器は、鍵盤部の鍵配列方向の幅が長い。そのため、電子鍵盤楽器の前板のように、面スピーカの一辺が鍵配列方向に沿うように、面スピーカを配設すれば、面スピーカの面積を広くとることができる。それとともに、楽器のデザイン(外観)を特異なものにする必要がなく違和感もない。
【0012】
また、静電型の面スピーカから出る平面波は鋭い指向性があるから、演奏者に聞こえがよい面スピーカの配置は、鍵盤部の上前部である。従って、上前部に位置する上前板に静電型の面スピーカを配設すれば、小面積であっても、鋭い指向性のために、演奏者に対して伝搬効率がよい。
アップライト型電子鍵盤楽器のように、楽器本体部の棚板の下、左右の脚体間に下前板が設けられている場合、この下前板に静電型の面スピーカを配設しても静電型の面スピーカの振動板を広げることができる。
静電型の面スピーカが鍵盤部の鍵配列方向の幅とほぼ同じ幅かそれ以上にわたって配設されることから、演奏者から見て左右に拡がっている。従って、静電型の面スピーカを左と右に分割して、ステレオスピーカとすることもできる。
一方、低音域再生用スピーカを1個のみ使用する場合は、その前面開口部が鍵配列方向の低音域側に配置することにより、鍵盤の低音域の押鍵に応じて、鍵盤の低音域から楽音が発生するように聞こえる。また、もう1個の低音域再生用スピーカを使用する場合は、これを鍵配列方向の高音域側に配置することにより、2個の低音域再生用スピーカをステレオスピーカとして使用することができる。
【0013】
上述した各請求項の引用記載等において、「発明を特定するための事項」に付した括弧内の符号は、後述する「発明を実施するための形態」における、「発明を特定するための事項」に対応するものに付した符号である。この符号は、「発明を特定するための事項」とその一例との対応を示すにすぎない。「発明を特定するための事項」は、この符号により対応付けられた一例に限定されない。
なお、上述した各請求項に記載の発明においては面スピーカとして静電型のものを使用したが、静電型に限らず、圧電フィルム型等の面スピーカも使用可能である。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によれば、静電型の面スピーカと従来の低音域再生用スピーカとを併用することにより総合的な再生音域が拡がるとともに、これらの併用によっても余分な配置スペースを要しないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の実施形態であるポータブルシンセサイザ型電子鍵盤楽器の外観図である。
【図2】図1に示した実施形態における面スピーカ取付構造を示す第1の説明図である。
【図3】図1に示した実施形態における面スピーカ取付構造を示す第2の説明図である。
【図4】図1に示した実施形態における面スピーカ取付構造の他の具体例を示す第1の説明図である。
【図5】図1に示した実施形態における面スピーカ取付構造の他の具体例を示す第2の説明図である。
【図6】図1に示した実施形態における面スピーカの一具体例である静電型の面スピーカの構造図である。
【図7】図6に示した静電型の面スピーカの第2の具体例を示す部分平面図である。
【図8】図6に示した静電型の面スピーカの第3の具体例を示す部分平面図である。
【図9】図6に示した静電型の面スピーカの第4の具体例を示す部分平面図である。
【図10】図1に示した実施形態における電子鍵盤楽器の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本願発明の実施形態であるポータブルシンセサイザ型電子鍵盤楽器の外観図である。
図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)の切断線から矢視Xの方向を見た垂直断面の概要図である。
図1(a)において、1は側面板(側面部)、2は天板(屋根部)、3は底板(底面部)、4は鍵盤部である。5は上前部である。側面部は、側面板1に加えて上前部5、後傾斜板2b、下後板3c、下前板3dを含む。上前部5には上前板8がある。
【0017】
側面板(側面部)1、天板(屋根部)2、底板(底面部)3、上前板8が電子楽器の筐体となる。これに、鍵盤部4と内部空間14を有するものが楽器本体部である。
楽器本体部は、鍵盤部4に対するユーザの鍵操作により楽音信号を生成する電子回路ブロック(楽音信号生成部)13を内蔵する。
ここで、天板2は、その上面において前方左領域、すなわち、鍵盤の低音域にのみ、1又は複数本の横長の線状孔2aが形成されている。各線状孔2aは、1段下がった線状板2cと対になっており、線状孔2aが透孔(音孔)となる。厳密にいえば、線状孔2aと線状板2cとの間の隙間が透孔(音孔)となる。天板2の中央寄り左右に、操作パネル6a,6bを備え、後方の中央にディスプレイ7と操作パネル6cを備えている。ディスプレイ7は、電子鍵盤楽器の動作設定をするために、楽音パラメータを表示したり、自動演奏の曲名、楽譜を表示したりする。
図1(b)に示すように、天板2は、その後方が後傾斜板2bとなる。底板3は、基板3aに対し、前方傾斜底板3bと下後板3cとが組み立てられたものであり、この前方傾斜底板3bは下前板3dと一体成形されている。
【0018】
楽器本体部の側面部は、天板2(屋根部)と鍵盤部4との間に上前部5を有し、面スピーカ22がこの上前部5の上前板8に配設される。
図1(b)に示すように、面スピーカパネル9は、筐体の一面をなし、枠体21に面スピーカ22が張設され、この面スピーカ22がパンチングパネル板23で覆われたものである。
この実施の形態では、面スピーカパネル9が上前板8の前面に取り付けられることにより、面スピーカ22は、楽器本体部の一部に配設される。
面スピーカ22から出る平面波は鋭い指向性があるから、演奏者に聞こえがよい面スピーカ22の配置は上前部5となる。従って、上前部5の高さが低いため、広い面積が確保できない場合でも、演奏者に対して伝搬効率がよい。
【0019】
この上前板8は、筐体の左右方向に延設された長尺体であり、音を通過させる1又は複数の透孔(音孔)8aが形成された格子状の骨組みを有する。詳細は図2、図3を参照して後述する。後述する例では、上前板8のほぼ全面が格子部8bである。
加えて、コーンスピーカ10が、上述した上前部5における楽器本体部の左側領域に配設されている。
【0020】
面スピーカ22は、電子楽器筐体の内部空間14と外界とを仕切る位置に配設され、面スピーカ22から出力された音が内部空間14と外界との双方に伝搬する。
このような面スピーカ22の配設位置において、面スピーカ22の前面から出力される音は、パンチングパネル板23を経て外界に放出される。加えて、面スピーカ22の背面から出力される音は、上前板8の多数の透孔8aを経て、内部空間14に伝搬し、筐体部分、例えば、天板2や基板3a等を振動させて外界に音を2次放出させたり、内部空間14が外界に解放されている複数の線状孔2a等から外界に伝搬したりする。
【0021】
鍵盤部4の鍵盤フレーム4aは、基板3aと前方傾斜底板3bの上に取り付けられ、鍵盤フレーム4aは、所定鍵とその隣接鍵との間の鍵盤下方に設けた垂直リブ4bにより補強され、白鍵4c及び黒鍵4dを支持する。
コーンスピーカ10は、基板3aに立設されたフレーム板11に取り付けられ、その前面開口部10aの中心軸CC方向は、前方斜め上である。従って、前面開口部10aは、上前板8の背面及び上述した複数の線状孔2aの方向を向いている。また、上前板8の下部は、保持部材12によりフレーム板11に支持される。
【0022】
図示の例では、前面開口部10aの中心軸CCが水平線に対し約45度で上を向いている。この中心軸CCが垂直方向に近づくほど、コーンスピーカ10の背面から出力される音(前面開口部10aから出力される音とは逆位相の音)も上前部5から出力され、前面開口部10aの音と位相干渉することになり、演奏者に直接に伝搬される音の出力が低下するので、好ましくない。なお、天板2の線状孔2aから出力される、コーンスピーカ10の背面から出力される音については、演奏者の位置ではさほどの影響がない。
【0023】
面スピーカパネル9とコーンスピーカ10とは、上前板8を挟んで、上前板8の前面と背面とに配設されている。
コーンスピーカ10は、その前面開口部10aと1又は複数の透孔8aによる開口領域の一部とが対向するように配設される。言い換えれば、前面開口部10aは、上前板8における複数の透孔8aの面積の総和である音響透過面積の一部と対向する。図示の例では、前面開口部10aが、鍵盤部4の鍵配列方向における、楽器本体部の左端部領域内に位置するように配設される。
【0024】
一方、面スピーカパネル9の面スピーカ22は、その振動面と1又は複数の透孔8aによる開口領域の半分以上とが対向するように配設されている。言い換えれば、面スピーカ22の背面は、上述した音響透過面積の半分以上と対向するようにする。
図示の例では、面スピーカ22が上前板8の長手方向に沿って長くされた形状をしており、鍵盤部4の鍵配列方向の幅とほぼ同じ幅にわたって、上前板8の前面に配設されている。鍵盤部4の両側に拍子木4e,4fがあり、拍子木4e,4fを含めた鍵盤部4の鍵配列方向の幅が、面スピーカ22とほぼ同じ幅になる。
従って、面スピーカ22の横幅を長くして面スピーカ22の面積を広くとることができるので、低音域の音圧が上がるため、低音域における音圧の低下度合いが小さくなる。
【0025】
面スピーカパネル9とコーンスピーカ10とは、演奏者の側から見て重なっている。従って、上述したコーンスピーカ10の前面開口部10aに対向する開口領域と、面スピーカ22に対向する開口領域とは、少なくとも部分的に重複する。図示の例では、完全に重複する。静電型の面スピーカ22は、膜状を呈し、音響透過性があるので、開口領域が重複しても、コーンスピーカ10から出力される音も前面に出力される。
上述した面スピーカ22及びコーンスピーカ10は、電子回路ブロック(楽音信号生成部)13から出力された楽音信号に応じた音を出力する。
【0026】
面スピーカ22は、その前面と背面とから音が放出される。面スピーカ22は、背面の空気層の空気バネと振動板とが共振し、共振周波数より低い周波数では音圧が低下する。ここで、共振周波数は、背面の空気層が薄いほど高くなる。そのため、面スピーカ22を板体(図示の上前板8)より外界側に配設した場合、面スピーカ22の背面に十分な厚さの空気層が形成されている必要がある。この空気層は1cmあればよく、3cmもあれば十分である。
しかし、1又は複数の透孔8aを板体(上前板8)に形成しておけば、面スピーカ22の背面から出力される音を筐体の内部空間14の側に逃がす作用を奏するので、面スピーカ22の背面側の空気層が薄くても、これを補って、上述した共振周波数が高くなりすぎないようにする作用を奏する。
コーンスピーカ10の前面開口部10aから放出された音は、面スピーカ22を透過して前面に放出されるとともに、天板2の線状孔2aからも放出される。
【0027】
なお、面スピーカは、また、底板(底面部)の前方傾斜底板3bに配設されてもよく、後傾斜板2bに配設されてもよい。図示の下後板3cは、その前後に上下2段になっており、その上段である後上底板3eに面スピーカを配設してもよい。前方傾斜底板3b、後傾斜板2b、後上底板3eに、多数の透孔(音孔)を開けて面スピーカを配設することができる。面スピーカは、複数の箇所に配設されてもよい。また、面スピーカは、電子楽器の筐体の外側に配設されてもよいし、筐体の内側に配設されてもよい。
一方、コーンスピーカ10は、基板(棚板)3aに配設されてもよく、電子楽器の複数の箇所に配設されてもよい。
【0028】
図2は、図1に示した実施形態における面スピーカ取付構造を示す第1の説明図である。
図2(a)は図1(b)に示した垂直断面の部分拡大図、図2(b)は保持部材12の取付構造を示す斜視図である。
図示の例では、上前板8が天板2と一体的に成型されている。上前板8は、全体として、複数の透孔8aが形成された格子部8bを有し、格子部8bの周囲領域に取付孔8c,8dが形成されている。
【0029】
上前板8の下部は、前方に折り返して段差部8eを有し、段差部8eの下面において、図示しないネジ部材により保持部材12に取り付けられる。
保持部材12は、その前部において、縦に直角に折り曲げられ、さらにその下部が水平に切り起されて取付部12aとなり、ここに上前板8を取り付けるためのネジ孔12bが形成されている。
保持部材12は、その後部において、縦に直角に折り曲げられて取付部12cがあり、この保持部材12を、図1(b)に示したフレーム板11に取り付けるための取付孔12dが形成されている。
【0030】
面スピーカパネル9の枠体21は、中央に大きな矩形の開口部21aを備えた、面スピーカ22の支持体である。その上縁部と下縁部の背面側において、鍵盤部4の鍵配列方向の2箇所以上において、係合突起が形成されている。この係合突起は、図3に拡大図示されているように、弾性変形部21bと係止部21c、弾性変形部21eと係止部21fにより構成されている。
面スピーカ22は、枠体21の前面から枠体21の上縁部、下縁部を回って枠体21の背面まで張設されて接着剤等により枠体21に固着される。
パンチングパネル板23の上端部23aは、枠体21の上部の曲面に沿って曲面を描き、天板2の前端面に沿って直角に折り曲げられ、次に、枠体21の上部の前面に接するように折り曲げられている。ネジ部材25が、枠体21の取付孔21dを通して面スピーカ22、パンチングパネル板23の折り返し部のネジ孔23bまでねじ込まれる。
一方、パンチングパネル板23の下端部23cは、面スピーカ22が固着された枠体21の前面から直角に折り曲げられている。この下端部23cの上面は、取付部23dが面スピーカ22に接した状態で、面スピーカ22の底面bt(図3参照)と重なり合う。
【0031】
図3は、図1に示した実施形態における面スピーカパネル9の取付構造を示す第2の説明図である。
ネジ部材25により、枠体21、面スピーカ22が、図2に示したパンチングパネル板23の上端部23aにねじ止めされる。
また、パンチングパネル板23の取付部23dが、下端部23cからの切り起しにより形成され、ここにネジ孔23eが形成されている。ネジ部材33により、取付孔21gから、枠体21、面スピーカ22を経て、パンチングパネル板23のネジ孔23eにねじ止めされる。その結果、パンチングパネル板23の下端部23cが面スピーカパネル9の底面となる。
なお、上述したパンチングパネル板23は、面スピーカ22を保護し、音を透過するものであればよく、図示しない枠体にネットを張設したものや、合成樹脂製の板材で、複数の線状の透孔(音孔)が形成されたスピーカグリルであってもよい。
【0032】
上述した面スピーカパネル9(図3)は、その係合突起(弾性変形部21bと係止部21c、弾性変形部21eと係止部21f)を、それぞれ、上前板8の取付孔(係着部)8c(図2),8d(図2,図3)に装着する。係止部21c,21fが取付孔(係着部)8c,8dの前面に押し込まれることにより、弾性変形部21b、21eが撓み、係止部21c,21fが取付孔8c,8dを貫通し、弾性変形部21b、21eの撓みが若干戻ることにより、係止部21c,21fが取付孔8c,8dの背面の角部に係合固定される。面スピーカパネル9の底面である、パンチングパネル板23の下端部23cは、上前板8の段差部8eに載置される。
このようにして、面スピーカパネル9を上前板8に対し、簡単に取付け固定することができる。さらに、面スピーカ22が振動することによる枠体21のビリツキが上述した弾性変形部21b、21eの弾性によって発生しない効果を有する。
【0033】
ここで、係止部21c,21fとは、筐体に取り付けられる側の係合部材を意味し、係着部(取付孔8c,8d)とは、筐体側の係合部材を意味する。上述した取付孔8c,8dは係着部の一例であり、係着部は必ずしも取付孔に限られない。
図示の例では、係止部の側に弾性変形部21b,21eがあって、係合突起を構成する。しかし、係着部の側に弾性変形部があってもよい。例えば、上前板8の側に、上述した係合突起(弾性変形部21bと係止部21c、弾性変形部21eと係止部21f)と同様な形状の係合突起(弾性変形部と係止部)を有し、枠体21の側には、上述した取付孔8c,8dと同様な形状の取付孔を有する場合である。また、係止部の側と係着部の側の両方に弾性変形部があってよい。
【0034】
面スピーカパネル9の背面と上側面とが接する辺において、図示の例では面スピーカ22の端部上の鍵配列方向に防振部材31が貼設される。一方、面スピーカパネル9の背面と底面とが接する辺において、図示の例では面スピーカ22の端部上の鍵配列方向に防振部材32が貼設されている。これらの防振部材31,32は、例えば防振ゴム部材であり、面スピーカパネル9が上前板8に装着された後において、両者の隙間に介在し、面スピーカパネル9が不用意に振動したり、外れたりしないようにする。
【0035】
上述した面スピーカパネル9は取り外すこともできる。
図2において、上述した係止部21cと取付孔8cとの係合箇所の近傍(係合に作用できる程度の近傍)において、線状孔2aと線状板2cとの間に僅かな隙間が形成されている。ここに、マイナスドライバ24のような細長い工具を差し込み、係合突起の係止部21cを押し下げて、弾性変形部21bを撓ませ、係止部21cと取付孔8cとの係合を解除し、係止部21cを取付孔8cから引き抜く。
その後、面スピーカパネル9を上方に浮かすことにより、下の係合突起の係止部21fと取付孔8dとの係合が解除される。このようにして、枠体21の係合突起を取付孔8c,8dから離脱させ、面スピーカパネル9を上前板8から外すことができる。
面スピーカパネル9には、鍵配列方向の複数箇所に係合箇所が設けられる。上述した線状孔2aが近傍にない係合箇所においては、工具を差し込む透孔を天板2に形成しておく(図示省略)。
【0036】
上述した面スピーカ22は、モノラル信号の供給を受けてよい。しかし、面スピーカ22は、鍵配列方向に長いため、左チャンネル用の面スピーカ22Lと右チャンネル用の面スピーカ22Rとに分けた面スピーカパネル9として上前板8に装着したり、面スピーカパネル9自体を左チャンネル用、右チャンネル用に分けて、上前板8に装着したりしてもよい。その際、図1(a)に示した左側領域にあるコーンスピーカ10を、上前部5の右側領域にも配設し、これらをステレオスピーカとしてもよい。
【0037】
上述した説明において、面スピーカ22への駆動電流の供給は、面スピーカ22から引き出された入力線と、電子回路ブロック13にある駆動回路の出力線とを、プラグ,ソケット等のコネクタを用いて電気的に接続すればよい。
その際、先に説明した係合突起(弾性変形部21b,21e、係止部21c,21f)とは別に、枠体21に電気接続用の複数のプラグを形成しておき、先に説明した取付孔(係着部)8c,8dとは別に、上前板(支持体)8に電気接続用の複数のソケットを形成しておいてもよい。この場合、係合突起と取付孔とが機械的に係合している状態において、複数のプラグの各電気的接触子と複数のソケットの各電気的接触子とが互いに接触して電気的に接続される。
【0038】
あるいは、次に説明するように、上述した係合突起(弾性変形部21b,係止部21c、弾性変形部21e,係止部21f)、及び、取付孔8c,8dに、それぞれ電気的接触部材を設け、係合突起と取付孔とを、機械的な結合部材とするに加えて、電気的コネクタ(プラグ及びソケット)とすることもできる。
面スピーカ22の電極は3個である。従って、面スピーカパネル9は、モノラルの場合少なくとも3箇所、ステレオの場合、少なくとも6箇所の係合突起をプラグとする。
【0039】
図4、図5は、図1に示した実施形態における面スピーカ取付構造の他の具体例を示す説明図である。図中、図1〜図3と同様の部分には同じ符号を付している。
図4(a)は、図3に示した枠体21の上部の部分拡大図である。面スピーカ22の図示は省略した。図4(b)は、図4(a)の垂直断面図であり、垂直断面をX方向に見たものであり、併せて、面スピーカ22、天板2、上前板8の一部分を記載している。
【0040】
図4(a)において、係合突起(弾性変形部21b,係止部21c)がプラグとなる。係止部21cの傾斜面21hに貫通孔21iが形成され、弾性変形部21bの溝21jに連通する。溝21jは、枠体21の上端面に形成された浅溝21kに連通する。
41は導電性弾性部材であって、山部41a,41c、41eと、これらの間の谷部41b,41dという折れ曲がりのある平板部材である。山部41a,41cは三角状、谷部41b,41dは平坦、山部41eは湾曲している。
この導電性弾性部材41は、その山部41cが溝21jに挿入され、山部41eが浅溝21kに嵌め込まれ、山部41aが貫通孔21iに圧入固定される。谷部41b,41dは、溝21jの底面との間に隙間を置く。
【0041】
一方、図4(b)に示した上前板8の取付孔8cをソケットとする。この取付孔8cの背面側の上角部に導電性部材42を設ける。この導電性部材42は、直角に2度曲げられ、天板2の裏面において、ネジ部材43により天板2に固定される。
上述した係合突起の係止部21cが取付孔8cと係合したとき、導電性弾性部材41の第2の山部41cは、導電性部材42に接触し、その弾性力により導電性部材42を押圧する。その結果、枠体21の上部が上前板8に係合するとき、上述した1つの係合部において、1対の接続端子が電気的に接続される。
導電性弾性部材41の山部41eは、面スピーカ22の接続端子22aと面接触することにより、面スピーカ22の1つの電極に接続される。一方、導電性部材42は、図示しない接続線により、図1(b)に示した電子回路ブロック13に接続される。
【0042】
なお、弾性変形部21bは、係合中も弾性力を残しており、弾性変形部21bの上面(溝21jを有する側)が取付孔8cの上面(天板2の下面)を押圧している。
そこで、係合中に、弾性変形部21bの上面が取付孔8cの上面に接触しないように設計し、導電性弾性部材41が導電性部材42を押圧するのみの状態とすることもできる。この場合、弾性変形部21bと導電性弾性部材41の両弾性力により、係合状態が保持される。
また、導電性弾性部材41を、弾性変形の無視できる単なる導電性部材に置き換え、置き換えたものが、弾性変形部21bの弾性のみにより、導電性部材42に接触して押圧する状態とすることもできる。
【0043】
図5(a)は、図3に示した枠体21の下部の部分拡大図である。面スピーカ22の図示は省略する。後述する導電性弾性部材51の図示を明確にするため、係合突起(弾性変形部21e,係止部21f)の外形線を一点鎖線で図示し、この係合突起に隠れている導電性弾性部材51の外形線を実線で図示している。
図5(b)は、図5(a)の垂直断面図であり、垂直断面をX方向に見たものであり、併せて、面スピーカ22、上前板8の一部分を記載している。
図中、図3と同様な部分には同じ符号を付している。
【0044】
図5(a)において、係合突起(弾性変形部21e,係止部21f)がプラグとなる。係止部21fの傾斜面21Lに貫通孔21mが形成され、弾性変形部21eの溝21nに連通する。溝21nは、枠体21の貫通孔に連通し、枠体21の前面に開口部21oが形成される。
51は導電性弾性部材であって、接触構造部と端子部構造部を有する。接触構造部は、谷部51a,51cと、谷部51a,51cの間の山部51bと、谷部51cに続く山部51dからなる。谷部51a,51cは三角状であり、山部51b,51dは平坦である。山部51dの端は垂直に折れ曲がり端子部構造に連なる。
端子部構造は、山部51dの幅よりも幅広に形成され、その幅方向の端部51e,51fは、上述した接触構造部の側に折り曲げられることにより「コ」の字状に形成され、かつ、その幅方向中心部から接触構造部の側に矩形片51gが切起されている。この矩形片51gに、取付孔51hと、その上に係合突起51iとが形成されている。
【0045】
導電性弾性部材51は、上述した開口部21oから挿入される。谷部51a、山部51d、谷部51c、山部51bは、弾性変形部21eの溝21nに挿入され、谷部51aは、貫通孔21mに圧入固定される。山部51b,51dは、溝21nの天井面との間に隙間を置く。
端部51e,51fは、枠体21の縦溝21pに嵌合し、後述するように、ネジ部材52を取付孔51hから枠体21にねじ止めすることにより、導電性弾性部材51が枠体21に固定される。
【0046】
一方、図5(b)に示した上前板8の取付孔8dをソケットとする。この取付孔8dの背面側の下角部に導電性部材53を設ける。この導電性部材53は、直角に曲げられ、上前板8の背面において、ネジ部材54により固定される。
上述した係合突起の係止部21fが取付孔8dと係合したとき、導電性弾性部材51の第2の谷部51cは、導電性部材53に接触し、その弾性力により導電性部材53を押圧する。このようにして、面スピーカパネル9の枠体21の下部が上前板8に係合するとき、上述した1つの係合部において、1対の接続端子が電気的に接続される。
【0047】
係合突起の弾性変形部21eは、係合中も弾性力を残しており、弾性変形部21eの下面(溝21nを有する側)が取付孔8dの下面を押圧している。
そこで、係合中に、弾性変形部21eの下面が取付孔8dの下面に接触しないように設計し、導電性弾性部材51が導電性部材53を押圧するのみの状態とすることもできる。この場合、弾性変形部21eと導電性弾性部材51の両弾性力により、係合状態が保持される。
また、導電性弾性部材51を、弾性変形の無視できる単なる導電性部材に置き換え、これが、弾性変形部21eの弾性のみにより、導電性部材53に接触して押圧する状態とすることもできる。
【0048】
端子部構造において、端部51e,51fと矩形片51gとの隙間に、面スピーカ22の接続端子22bが挿入される。接続端子22bには、図5(a)に示した取付孔22cと係合孔(係合凹部でもよい)22dとが形成されている。
係合孔22dと係合突起51iとを位置合わせすることにより、取付孔22cと取付孔51hとの位置決めが容易になる。ネジ部材52を、面スピーカ22、取付孔22c、取付孔51hから枠体21にねじ止めすることにより、導電性弾性部材51が枠体21に固定されると同時に、面スピーカ22の接続端子22bが導電性弾性部材51の矩形片51gと接触することにより、導電性弾性部材51が面スピーカ22の1つの電極に接続される。
一方、導電性部材53は、図示しない接続線により、図1(b)に示した電子回路ブロック13に接続される。
【0049】
図6は、図1に示した実施形態における面スピーカ22の一具体例である、柔軟性を有する面スピーカ60の構造図である。
図6(a)は面スピーカ60の積層構造を開いて見せた模式図、図6(b)は面スピーカ60の部分平面図、図6(c)は面スピーカ60の部分断面図、図6(d)は面スピーカ60の他の例を示す部分断面図である。
【0050】
まず、積層構造の主要部を説明する。
図6(a)〜図6(c)において、音響透過性を有する第1の固定電極シート62と音響透過性を有する第2の固定電極シート66との間に、音響透過性を有する第1の絶縁性シート63と音響透過性を有する第2の絶縁性シート65とを介して、特に薄くて柔軟性を有する振動電極シート(振動膜)64が積層配置されている。
第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65は、薄くて柔軟性がある緩衝材(クッション材)である。また、上述した第1の固定電極シート62、第2の固定電極シート66も、薄くて柔軟性がある。
振動電極シート64の前面から出力された音は、第1の絶縁性シート63、第1の固定電極シート62を透過し、この静電型スピーカの前面から放出されるとともに、振動電極シート64の背面から出力された音は、第2の絶縁性シート65、第2の固定電極シート66を透過し、この静電型スピーカの背面から放出される。
【0051】
61は音響透過性を有する第3の絶縁性シート、67は音響透過性を有する第4の絶縁性シートであって、これらは、静電型スピーカの背面を保護したり防水したりするとともに、感電を防止するためのカバーでもある。これらも柔軟性がある。
従って、この面スピーカ60は、全体としても、柔軟性のある薄型フレキシブル(flexible)静電型スピーカである。
上述した振動電極シート64を除き、他の第1の固定電極シート62、第2の固定電極シート66、第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65、第3の絶縁性シート61、第4の絶縁性シート67は、通気性を有している。なお、第3の絶縁性シート61、第4の絶縁性シート67は、省略可能である。
【0052】
68a〜68e,69a〜69eは、振動電極シート64を、第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65により、部分的に支持するための接着層であって、その幅は狭く、例えば、4〜10[mm]であり、柔軟性があり、その厚みは薄く、例えば、0.1〜0.5[mm]である。図示の例において接着層はテープ状であり、具体的には両面接着テープを使用している。
振動電極シート64は、接着層68a〜68e,69a〜69eにより間隔をあけて支持される。
この接着層68a〜68e,69a〜69eにより、振動電極シート64は、接着層68a〜68e,69a〜69eのない領域で、振動電極シート64に対し、第1の絶縁性シート63との間、及び、第2の絶縁性シート65との間が僅かに離間して支持される。
【0053】
振動電極シート64、第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65は柔軟性を有するため、接触していても問題ない。第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65は、振動電極シート64を支持するとともに、振動電極シート64に適度な弾性応力を付与する。
接着層68a〜68e,69a〜69eは、静電型の面スピーカにとって必須のものではない。しかし、振動電極シート64は、緩衝作用のある第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65との間で相互作用を及ぼし合いながら、これらと一体となって振動する。
従って、接着層68,69は、スペーサというよりも、振動電極シート64と第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65との相互作用を安定させる機能がある。接着層68,69は、また、面スピーカ60の全体を折り曲げたときに、多層状に形成された積層シートの各層が破損しないようにしたり、ずれて皺ができないようにしたりする役目を果たす。
【0054】
図6(c)において、振動電極シート64は、接着層68a〜68eにより、第1の絶縁性シート63に等間隔の第1の支持位置で支持されるとともに、接着層69a〜69eにより、第2の絶縁性シート65に同じ第1の支持位置で支持される。第1の支持位置の間隔は、1[cm]〜10[cm]とし、試作品では3.6[cm]とした。
図6(d)において、振動電極シート64は、接着層68f,68gにより、第1の絶縁性シート63に等間隔の第1の支持位置で支持されるとともに、接着層69f,69gにより、第2の絶縁性シート65に等間隔の第2の支持位置で支持される。第1の支持位置と第2の第1の支持位置とは交互に配置されるので、振動電極シート64は、交互に支持される。
【0055】
なお、図6(b),図6(c)に示したように、面スピーカ60の端部(図示右端部)は、接着層68e,69e,68h,69hで支持することが好ましい。面スピーカ60の周縁部において、各シートの層間を、接着層68e,69e,68h,69hと同様な接着層(両面接着テープ)で相互に接着したり、接着剤を塗布したりして、層が離れないようにする。面スピーカ60の周縁部は、縫合したり、合成樹脂でまとめたり、図示しない枠体に取り付けられたりする。
【0056】
上述した振動電極シート64は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)等の、合成樹脂薄膜の両面又は片面に、アルミニウム等の導電性を有する金属を蒸着したり、導電性塗料を塗布したりしたものであり、その厚さは数[μm]〜数十[μm]である。
上述した第1の固定電極シート62、第2の固定電極シート66は、ポリエチレンテレフタレートの片面又は両面に、アルミニウム等の導電性を有する金属を蒸着したり、導電性塗料を塗布したりして、その厚みを貫通する多数の貫通孔62a,66aが形成されたパンチングメタルである。この試作品では、厚さが0.5[mm]である。
第1の固定電極シート62、第2の固定電極シート66は、パンチングメタルに代えて、金網を用いてもよいし、不織布にアルミニウム蒸着をしたものを用いてもよい。後者の場合、第3の絶縁性シート61と第1の固定電極シート62とを一体化し、第4の絶縁性シート67と第2の固定電極シート66とを一体化することができる。
上述した第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65は、例えば、発泡合成樹脂や不織布である。
上述した第3の絶縁性シート61、第4の絶縁性シート67も、例えば、発泡合成樹脂や不織布であるが、材料選択の自由度が大きい。
【0057】
図7は、図1に示した実施形態における面スピーカ22の他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカ70を示す部分平面図である。
先の図6においては、接着層68a〜68e,69a〜69eを図示縦方向に並べて互いに平行配置していた。図7においては、加えて、接着層71a,71b,71cを、図示横方向に並べて互いに平行配置したものである。
図示の接着層71a,71bは、接着層68a〜68d,69a〜69dと同じ間隔で配置されている。
上述した縦方向、横方向に配置する2種の接着層に代えて、1枚の格子状接着層を用いれば、接着層の厚みが均一になる。
この面スピーカ70の積層断面構造は、接着層の配置を除けば図6(c)、図6(d)と同じであるので図示を省略する。
【0058】
図6、図7に示した例では、接着層68a〜68h、69a〜69h、71a〜71cにより、振動電極シート64と第1の絶縁性シート63、振動電極シート64と第2の絶縁性シート65が接着されていた。
これらに加えて、第3の絶縁性シート61と第1の固定電極シート62との層間、第1の固定電極シート62と第1の絶縁性シート63との層間、第2の絶縁性シート65と第2の固定電極シート66との層間、第2の固定電極シート66と第4の絶縁性シート67との層間のうち、任意の層間を、図示しない接着層(両面接着テープ)で接着してもよい。特に、面スピーカ40の周縁部においては、全ての層間を接着層(両面接着テープ)で接着してもよい。
【0059】
このようにすることにより、積層体としての一体性が増し、層間に隙間ができたり、層間がずれたりしない。図示しない両面接着テープによる接着位置は、図6(c),図6(d)、図7に示す接着層68a〜68h、69a〜69h、71a〜71cの支持位置と一致させることが、音響透過率を下げないようにする点で望ましい。
しかし、層間によって、接着位置を異ならせてもよい。また、層間によって、縦方向に並べる1次元平行配置と、これに直交する横方向に並べる1次元平行配置の選択を変えたりすることができる。
【0060】
図8は、図1に示した実施形態における面スピーカ22のさらに他の例である、柔軟性を有する静電型の面スピーカ80A,80Bを示す部分平面図である。
この具体例は、図6に示した積層断面構造を有した面スピーカ60を1ユニットとし、複数のユニットを、間隔をあけて配置したものを、1つの面スピーカ80A又は80Bとして形成したものである。
すなわち、面スピーカ80A,80Bは、複数のユニットと、これら複数のユニットのうち隣接するユニット同士を連結する連接部に区分された積層シートである。
図8(a)においては、複数の面スピーカユニットを1次元配置し、図8(b)においては、複数の面スピーカユニットを2次元配置(縦横方向)している。
【0061】
図8(a)において、静電型の面スピーカユニット811〜815は、図6(c)又は図6(d)に示した積層断面構造を有し、面スピーカ80Aの振動面となる。これに対し、スピーカユニットの連接部82の領域においては、図6(c)又は図6(d)に示した導電層(第1の固定電極シート62、振動電極シート64、第2の固定電極シート66)がなく、絶縁層(第3の絶縁性シート61、第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65、第4の絶縁性シート67)のみを残しており、これらが連接部82を構成する。
【0062】
連接部82の領域においては、さらに、第1の絶縁性シート63、第2の絶縁性シート65をなくしてもよい。この場合、まず、各面スピーカユニット811〜815として、それぞれ、第1の固定電極シート62、第1の絶縁性シート63、振動電極シート64、第2の絶縁性シート65、第2の固定電極シート66、及び、接着層68a〜68h、69a〜69h、71a〜71cの積層構造を予め作成しておき、これらの面スピーカユニット811〜815の上面と下面とを、第3の絶縁性シート61、第4の絶縁性シート67で覆うことにより、面スピーカ80Aを形成することができる。この場合、第3の絶縁性シート61、第4の絶縁性シート67が連接部82を構成する。
このような工程で製造すれば、箇々の面スピーカユニット811〜815の面積が小さくても、広い面積の面スピーカ80A,80Bが得られる。
【0063】
連接部82においては、第1,第2の固定電極シート62,66の層及び振動電極シート64の層が存在しないので、この連接部82で、折り曲げたり折り畳んだりしても、電極シートが傷まない。
ここで、連接部82に存在する絶縁性シートの層は、隣接するユニットにおける同じ層から連続して存在する。言い換えれば、これらの層は、全てのユニット及び連接部に共通の連続した層である。そのため、連接部を設けるために、別の連結部材を設けたり、この別の連結部材を隣接するユニットと縫合や接着等により結合したりする工程が不要である。
【0064】
図8(b)において、各面スピーカユニット831〜834は、図6(a)に示した面スピーカユニット811〜815と同様の積層構造を有し、面スピーカ80Bの振動面となる。この具体例では、面スピーカユニット831〜834は、横方向が連接部84aにより連接され、縦方向が連接部84bにより連接されている。連接部84a,84bにおける積層構造は、図8(a)に示した連接部82と同様である。
さらに、静電型スピーカユニット831〜834の周縁部84cも、図示しない枠体を取り付ける領域とするために、連接部84a,84bと同じく、導電層のない積層構造にしている。
【0065】
上述した図8(a)の面スピーカユニット811〜815、図8(b)の面スピーカユニット831〜834は、各ユニットの各電極にリード線を接続し、これらのリード線をユニット毎に独立して駆動回路に接続する。又は、連接部82、84a,84bにおいて、隣接するユニットの対応する電極同士を短いリード線でつなぎ、各ユニットの各電極を共通のリード線で駆動回路に接続してもよい。
【0066】
図9は、図6に示した柔軟性を有する静電型の面スピーカの第4の具体例を示す平面図である。
図9(a)は面スピーカ90の背面側を示す平面図、図9(b)は図9(a)に面スピーカ内の導電性接着層の配置を加えた背面側を示す平面図、図9(c),(d),(e)は、それぞれ、図9(b)の矢視X-X,Y-Y,Z-Z方向を見た断面図である。図中、図6と同様な部分には同じ符号を付している。接着層68a,69a,68b,69b等は、図6と同様に、図示縦方向に延設されている。
図9(a)に示すように、この面スピーカ90は、ステレオ用に、左右に2つの面スピーカユニット90L,90Rが配置されたものである。左右対称構造であるため、左右の構成には同じ符号を付し、右側の面スピーカユニット90Rついてのみ説明する。背面側の図であるので面スピーカユニット90Rを左側に図示している。面スピーカユニット90L,90Rの間の領域が図8に示した連接部82と同様の連接部90Cであり、面スピーカユニット90L,90Rを合わせたものの周縁部は、図示しない枠体を取り付ける領域となる。
【0067】
図9(b)、図9(c)に示す91は、帯状の第1の導電性接着層であり、第1の固定電極シート62と第3の絶縁性シート61との両者の層間にあって、面スピーカ90の上縁の左半分に延設され、両者を接着する。導電性接着層は、導電性粘着剤自体や、金属箔テープの両面に導電性粘着剤を塗布したもので実現される。
図9(a)、図9(b)、図9(d)に示す92は、第1のフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit Board、以下FPCという)であり、絶縁フィルムの裏面(図示では上面となる)に導体箔92dが被着されたものである。このFPCに代えて銅箔テープを用いることもできる。
FPC92(図9(d))は、第1の導電性接着層91(図9(c))と同一の層間にあって、面スピーカユニット90Rの上縁の一端部から左縁を縦方向に延設される。第1の導電性接着層91の一端部91aと第1のFPC92の一端部92aにおける導体箔92dとは、面スピーカユニット90Rの上縁の一部において重なり合い接着される。第1のFPC92の他端部は、下方向に延び、第2の固定電極シート62から第4の絶縁性シート67までを突き抜けて、第1の接続端子92bとなる。92cはプラグの端子に接続するための取付孔である。
【0068】
図9(b)、図9(d)に示す93は、帯状の第2の導電性接着層であり、第1の絶縁性シート63と振動電極シート64との両者の層間にあって、面スピーカユニット90Rの左縁(第1のFPC92の右側)を縦方向に延設され下縁の一部に至り、両者を接着する。
94は第2のFPCであり、絶縁フィルムの裏面(図示上面)に導体箔(図示せず)が被着されたものである。第2のFPC94は、第2の導電性接着層93と同一の層間にあって、面スピーカユニット90Rの下縁の一部に設けられる。第2の導電性接着層93の一端部93aと第2のFPC94の一端部94aにおける導体箔とは、面スピーカユニット90Rの下縁の一部において重なり合い接着される。第2のFPC94の他端部は、振動電極シート64から第4の絶縁性シート67までを突き抜けて第2の接続端子94bとなる。
第2の接続端子94bは端部において下方向に延設され、ここに、取付孔94cが形成されている。ここで、第2のFPC94がこれらの層を突き抜ける際に、第2の固定電極シート66と短絡しないように、例えば、第2のFPC94の導体箔に絶縁被覆をしておく。
【0069】
95は帯状の第3の導電性接着層であり、第4の絶縁性シート65と第2の固定電極シート66との両者の層間にあって、面スピーカユニット90Rの右縁から縦方向に延設され下縁の一部に至り、両者を接着する。
96は第3のFPCであり、第3の導電性接着層95と同じ層間にあって、面スピーカユニット90Rの下縁に設けられる。図9(e)に示されるように、第3の導電性接着層95の一端部95aと第3のFPC96の一端部96aにおける導体箔96dは、面スピーカユニット90Rの下縁の一部において重なり合い接着される。
第3のFPC96の他端部は、第2の固定電極シート66と第4の絶縁性シート67を突き抜けて第3の接続端子96bとなる。第3の接続端子96bは端部において下方向に延設され、ここに、取付孔96cが形成されている。
【0070】
これらの第1〜第3の導電性接着層91,93,95、及び、第1〜第3のFPC92,94,96は、面スピーカユニット90Rの振動を妨げないように、その周縁部に配置されている。第1〜第3の接続端子92b,94b,96bは、いずれも、面スピーカユニット90Rの下縁部に等間隔で配置されている。
図5に示した係合突起(係止部21f,弾性変形部21e)及び取付孔8dは枠体21の下部における6箇所に設けられる。第1〜第3の接続端子92b,94b,96bは、いずれも、導電性弾性部材51の端部51e,51fと矩形片51gとの隙間に挿入される接続端子22bとなり、図5に示した導電性弾性部材51の矩形片51gにねじ止めされる。
なお、図9に示した面スピーカ90は、枠体21の上部の係合突起としては、図3に示した係合突起(弾性変形部21b、係止部21c)を使用し、図4に示したプラグを兼ねる係合突起を使用する必要はない。
【0071】
図10は、図1に示した実施形態における電子鍵盤楽器の機能ブロック図である。
図1に示した鍵盤部4における各白鍵,黒鍵の操作は、検出部101により検出され、検出信号が制御部102に出力される。制御部102は、演奏データを音源部103に出力する。この演奏データには、押鍵及び離鍵のタイミング、押鍵又は離鍵された鍵に対応するノートナンバ(音高)、ベロシティ(押鍵速度)、アフタタッチ量等のデータが含まれている。上述した制御部102は、機器組み込みプログラムをCPUに実行させることにより実現される。
【0072】
図1に示した電子鍵盤楽器には、操作パネル6a,6b,6cが設置され、これらに複数の操作子(ボタン、ノブ)104が配置されている。操作子104としては、例えば、楽器音色等の設定操作用スイッチや、自動演奏のための選曲、再生開始や再生停止等を制御するスイッチがある。
操作子104の操作は、検出部101により検出され、制御部102に出力され、制御部102では、各操作子に割り付けられた機能を、電子鍵盤楽器に設定する。音源部103に対する設定の場合は、音源部103に音源設定データを出力する。
【0073】
上述した電子鍵盤楽器は、自動演奏部105と曲データ記憶部106が内蔵されている。自動演奏部105は、操作子の操作により、曲データ記憶部106に記憶された曲を読出し、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式の演奏データを制御部102に出力する。上述した自動演奏部105も、機器組み込みプログラムをCPUに実行させることにより実現される。
MIDIインタフェース107は、パーソナルコンピュータや他の電子楽器から供給されるMIDI形式の演奏データを、下後板3cに設けられた端子から入力し、制御部102に出力する。
【0074】
音源部103は、制御部102から入力された演奏データに応じて、音色等の音源設定や、押鍵操作に応じた音高と強さのステレオ(L,Rの2チャンネル)の楽音信号を生成し、増幅器108L,108R,110L、111L、及び、111Rに出力する。図示の音源部103は、1つの楽音の発生用に、ステレオ用の左ソース、右ソースを使用する。これらの音源ソースは、図示しない音源波形メモリに記憶されている。
また、音源部103は、モノラルソースを使用するとし、操作された鍵の帯域等に応じて、左右の音量比を制御(音像定位制御)するものでもよい。
【0075】
増幅器108L,108Rの出力は、それぞれ、ヘッドフォン用の外部出力端子109L,109Rに出力される。増幅器110Lの出力は図1に示したコーンスピーカ10に出力される。図1に示した左側領域にあるコーンスピーカ10を、上前部5の右側領域にも配設した場合、音源部103のRチャンネルの出力を、図示しない増幅器(110R)を介して、右側領域に配設したコーンスピーカに出力する。
増幅器111L、111Rの出力は、それぞれ、昇圧トランス112L,112Rの1次コイルに出力される。昇圧トランス112L,112Rの2次コイルには、図1に示した面スピーカパネル9を構成する柔軟性を有する面スピーカ22が接続される。
図示の例では、面スピーカ22として、図9に示した左チャンネル用の面スピーカユニット90Lと右チャンネル用の面スピーカユニット90Rとに分かれた面スピーカ90を使用する。
昇圧トランス112Lの2次コイルは、中点タップCTを有し、中点タップCTには、高圧のバイアス直流電源113Lと高抵抗の抵抗器114Lとの直列回路が接続されている。上述した2次コイルの両端が端子115L,116L、抵抗器114Lの他端が端子117Lとなる。
【0076】
端子115L,116L,117Lとして、それぞれ、図5を参照して説明した機械的結合構造(係止部21f、弾性変形部21e、取付孔8d)が電気的接続のコネクタ(導電性弾性部材51、導電性部材53)を兼ねているものを使用する。
端子115Lは、第1の導電性薄板92、導電性接着層91を経由して、図6に示した第1の固定電極シート62に接続される。同様に、端子116Lは第2の固定電極シート66に接続され、端子116Lは振動電極シート64に接続される。
【0077】
このように、端子115L〜117Lの1個の端子(1回路)毎に、互いに独立かつ離間した6個のコネクタ(プラグ、ソケット)を使用すれば、プラグとソケットとの接続作業の際に、作業者の指が出力線の複数の回路に同時に触れる恐れが少ない。
勿論、面スピーカパネルが支持体に取り付けられている場合に限り出力線に高圧が印加されるようにするのが常である。しかし、接続作業時に、万が一、出力線間に高電圧が出力されていたとしても、接続作業者の感電を防止できる。
【0078】
面スピーカユニット90Lの端子115L,116L,117Lは、それぞれ、3個の端子(3回路)を有する共通のコネクタ(プラグ、ソケット)であってもよい。また、端子115R,116R,117Rを含めて、面スピーカユニット90L,90Rに共通の6個の端子(6回路)を有する共通の1個のコネクタを用いてもよい。
【0079】
ここで、静電型面スピーカの動作原理を、振動電極シート64を電位の基準にとって説明する。バイアス直流電源113Lにより、第1の固定電極シート62及び第2の固定電極シート66は、E0=数百[V]の負に帯電し、振動電極シート64と第1の固定電極シート62との間、及び、振動電極シート64と第2の固定電極シート66との間に、互いに逆方向の静電吸引力が発生する。
この状態で、第1の固定電極シート62及び第1の固定電極シート66に、逆位相の楽音信号±e[V](eはE0より十分に小さい値)が印加されると、第1の固定電極シート62及び第2の固定電極シート66は、それぞれ、(E0+e)[V]、(E0−e)[V]で負に帯電する。その結果、振動電極シート64と第1の固定電極シート62との電極間、及び、振動電極シート64と第2の固定電極シート66との間の静電吸引力のバランスがくずれ、結果として、楽音信号e[V]に比例した静電吸引力が発生し、振動電極シート64は、楽音信号e[V]の正負に応じてプッシュプル駆動される。
上述した説明では、面スピーカユニット90Lについて説明したが、面スピーカユニット90Rも同様であり、説明を省略する。
【0080】
上述した説明では、増幅器110Lの出力を直接にコーンスピーカ10へ出力していた。しかし、コーンスピーカ10の周波数特性に応じた楽音信号を供給するために、低域通過型フィルタ回路を、増幅器110Lの入力側又は出力側に挿入することが望ましい。
同様に、増幅器111Lの入力側又は出力側に、面スピーカユニット90Lの周波数特性に応じた楽音信号を昇圧トランス112Lに供給するための高域、又は、中高域通過型フィルタ回路を挿入してもよい。
上述したフィルタ回路の特性は、コーンスピーカ10から出力される音と面スピーカユニット90Lから出力される音とが、周波数特性上においてバランスするように設計する。
【0081】
さらにまた、高域再生用のツィータスピーカ(例えば、ドーム型ダイナミックスピーカ)を設け、増幅器110Lはツィータスピーカにも楽音信号を分配してもよい。面スピーカユニット90Lとツィータスピーカとを選択的に切替えていずれか一方を使用するためのスイッチを設けてもよい。
図示を省略したが、音源部103に、面スピーカユニット90L、90Rに専用のソース(L,Rの2系統)が用意されていてもよい。この場合、この専用のソースに基づく楽音信号を、増幅器111L,111Rで増幅し、昇圧トランス112L,112Rに供給する。
上述した面スピーカ90を、左右のチャンネルに分けない場合、音源部103からモノラル信号の供給を受けて、増幅し、昇圧トランスに出力する。あるいは、音源部103のステレオ出力を混合する混合部を設け、混合部の出力を増幅し昇圧トランスに出力する。
【符号の説明】
【0082】
1…側面板、2…天板、2a…線状孔、2b…後傾斜板、2c…線状板、3…底板、3a…基板、3b…前方傾斜底板、3c…下後板、3d…下前板、3e…後上底板、4…鍵盤部、4a…鍵盤フレーム、4b…垂直リブ、4c…白鍵、4d黒鍵、4e,4f…拍子木、5…上前部、6a,6b,6c…操作パネル、7…ディスプレイ、8…上前板、8a…透孔、8b…格子部、8c,8d…取付孔、8e…段差部、9…面スピーカパネル、10…コーンスピーカ、10a…前面開口部、11…フレーム板、12…保持部材、12a…取付部、12b…ネジ孔、12c…取付部、12d…取付孔、13…電子回路ブロック、14…内部空間、21…枠体、21a…開口部、21b…弾性変形部、21c…係止部、21d…取付孔、21e…弾性変形部、21f…係止部、21g…取付孔、21h…傾斜面、21i…貫通孔、21j…溝、21k…浅溝、21L…傾斜面、21m…貫通孔、21n…溝、21o…開口部、21p…縦溝、
22,22L,22R…面スピーカ、22a,22b…接続端子、22c…取付孔、22d…係合孔、23…パンチングパネル板、23a…上端部、23b…ねじ孔、23c…下端部、23d…取付部、23e…ネジ孔、24…マイナスドライバ、25…ネジ部材、31,32…防振部材、33…ネジ部材、41…導電性弾性部材、41a,41c,41e…山部、41b,41d…谷部、42…導電性部材、43…ネジ部材、51…導電性弾性部材、51a,51c…谷部、51b,51d…山部、51e,51f…端部、51g…矩形片、51h…取付孔、51i…係合突起、52…ネジ部材、53…導電性部材、54…ネジ部材、
60…面スピーカ、61…第3の絶縁性シート、62…第1の固定電極シート、62a…貫通孔、63…第1の絶縁性シート、64…振動電極シート、65…第2の絶縁性シート、66…第2の固定電極シート、66a…貫通孔、67…第4の絶縁性シート、68a〜68h,69a〜69h…接着層、
70…面スピーカ、71a,71b,71c…接着層、
80A,80B…面スピーカ、811〜815…面スピーカユニット、82…連接部、831〜834…面スピーカユニット、84a,84b…連接部、84c…周縁部、
90…面スピーカ、90L,90R…面スピーカユニット(静電型面スピーカ)、90C…連接部、91,93,95…第1〜第3の導電性接着層、91a,93a,95a…一端部、92,94,96…第1〜第3のFPC(フレキシブルプリント基板)、92a,94a,96a…一端部、92b,94b,96b…接続端子、92c,94c,96c…取付孔、92d,96d…導体箔、
101…検出部、102…制御部、103…音源部、104…操作子、105…自動演奏部、106…曲データ記憶部、107…MIDIインタフェース、108L,108R,110L増幅器、109L,109R…外部出力端子、110L,111L,111R…増幅器、112L,112R…昇圧トランス、113L,113R…バイアス直流電源、114L,114R…抵抗器、115L,115R,116L,116R,117L,117R…端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低音域再生用スピーカと、該低音域再生用スピーカを収容する筐体と、静電型の面スピーカを有し、
前記筐体の外面の一部である板体には、1又は複数の音孔が形成され、
前記低音域再生用スピーカは、当該前面開口部と前記1又は複数の音孔による開口領域の一部とが対向するように配設され、
前記静電型の面スピーカは、前記1又は複数の音孔と対向するように配設され、
前記低音域再生用スピーカの前面開口部に対向する開口領域と、前記静電型の面スピーカに対向する開口領域とは、少なくとも部分的に重複する、
ことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記筐体は、電子楽器の筐体であり、
前記筐体の外面の一部である板体は、長尺体であり、
前記静電型の面スピーカは、前記長尺体の長手方向に沿って長くされた形状をして前記長尺体に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記電子楽器は、鍵盤部を備えた電子鍵盤楽器であり、
前記長尺体は、前記電子鍵盤楽器の前板であり、
前記低音域再生用スピーカは、当該前面開口部が前記鍵盤部の鍵配列方向の端部領域に位置するように配設され、
前記静電型の面スピーカは、前記鍵盤部の鍵配列方向の幅とほぼ同じ幅か、又は、該ほぼ同じ幅を超え前記電子鍵盤楽器の筐体の左右全幅以下にわたって配設される、
ことを特徴とする請求項2に記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−39553(P2012−39553A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180332(P2010−180332)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】