スフィンゴ脂質のポリアルキルアミン抱合体
本発明は、新規スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体、その調製方法、およびそれを含む薬学的組成物に関する。とりわけ、本発明は、セラミドベースのポリアルキルアミン抱合体、および捕捉剤としてのその使用に関する。好ましいセラミドポリアルキルアミン抱合体は、セラミド−スペルミン抱合体であり、より好ましくは、N パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル 1 カルバモイル スペルミンである。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、新規のスフィンゴ脂質のポリアルキルアミン抱合体(conjugate)、およびとりわけトランスフェクションのためのその使用に関する。
【従来技術のリスト】
【0002】
以下は、本発明の分野に属する技術水準を記述するのに適すると考えられる従来技術のリストである。
米国特許第6,075,012号:“Reagents for intracellular delivery of macromolecules”;
米国特許第5,783,565号:“Cationic amphiphiles containing spermine or spermidine cationic group for intracellular delivery of therapeutic molecules”;
米国特許第5,334,761号:“Cationic lipids”;
US2001/048939:“Cationic reagents of transfection”;
米国特許第5,659,011号:“Agents having high nitrogen content and high cationic charge based on dicyanimide dicyandiamide or guanidine and inorganic ammonium salts”;
米国特許第5,674,908号:“Highly packed polycationic ammonium, sulfonium and phosphonium lipids”;
WO 98/05678: “Novel cationic amphiphilic lipids for liposomal gene transfer”;
米国特許第6,281,371号:“Lipopolyamines, and the preparation and use thereof”;
Marc Antoniu Ilies & Alexandru T. Balaban, Expert Opin. Ther. Patents. 11(11): 1729-1752 (2001);
Miller AD. Chem. Int. Ed. Eng. 37: 1768-1785 (1998).
【発明の背景】
【0003】
細胞以下又は分子レベルで細胞機能に影響を与えることができる、タンパク質及びポリヌクレオチド、外来物質並びに薬物など、多くの天然の生物分子及びそれらの類縁体は、それらの効果を発揮するために、好ましくは細胞内に取り込まれる。これらの物質に対して、細胞膜は、これらの物質に非透過性である選択的な障壁となる。細胞膜の複雑な組成には、リン脂質、糖脂質及びコレステロール、並びに内在性及び外在性タンパク質が含まれ、その機能は、Ca++及びその他の金属イオン、陰イオン、ATP、微小繊維、微小管、酵素並びにCa++結合タンパク質などの細胞質成分によって影響を受け、細胞外グリコカリックス(プロテオグリカン、グリコースアミノグリカン及び糖タンパク質)によっても影響を受ける。構造的細胞要素と細胞質内細胞要素の間の相互作用及び外部シグナルに対するそれらの応答は、細胞タイプ内及び細胞タイプ間に見られる膜選択性を担う輸送プロセスを構成する。
【0004】
自然の状態では細胞によって取り込まれない物質を細胞内へ上手く送達することも、研究されている。天然の細胞膜の脂質組成に極めてよく似た脂質調合物に、複合体状の物質を会合させることによって、膜障壁を克服することができる。これらの調合物は、接触すると、細胞膜と融合することができ、あるいは、より一般的には、ピノサイトーシス、エンドサイトーシス及び/又はファゴサイトーシスによって取り込まれる。これらの全てのプロセスでは、会合された物質が細胞内へ送達される。
【0005】
脂質複合体は、細胞表面間の電荷的反発(多くの場合、負に帯電している。)を克服することによっても、細胞内輸送を促進することができる。当該調合物の脂質は、細胞膜のリン脂質など両親媒性の脂質を含んでおり、水系中で、様々な層または凝集物、たとえばミセルまたは中空の脂質小胞(リポソーム)を形成する。リポソームは、リポソーム内に送達すべき物質を捕捉するために使用することができ;他の用法では、目的の薬物分子は、中空の水性内部に捕捉されるというよりむしろ、内在性膜成分として脂質小胞中に取り込まれるか、又は凝集物表面に静電的に付着させることができる。しかしながら、使用される多くのリン脂質は、両性イオン(中性)であるか、負に帯電しているかのいずれかである。
【0006】
細胞内送達の分野における進歩は、リポソーム又は小胞の形態の、正に帯電した合成陽イオン性脂質、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム・クロリド(DOTMA)が、DNAと自発的に相互作用し、脂質−DNA複合体を形成できるという発見であり、この複合体は、細胞膜に吸着して、融合によって、又はおそらくは吸着性エンドサイトーシスによって、細胞に取り込まれ、導入遺伝子の発現をもたらすことができる[Felgner, P. L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci., USA 84: 7413-7417 (1987) and U. S. Pat. No. 4,897,355 to Eppstein, D. et al.]。その他、DNA複合体化小胞を形成するために、リン脂質と組み合わせて、DOTMA類縁体である1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)を使用して成功した者もある。LipofectinTM試薬(Bethesda Research Laboratories, Gaithersburg, MD.)は、高度に陰イオン性のポリヌクレオチドを生きた組織培養細胞中に送達するのに有効な物質であり、正に帯電した脂質DOTMAと、ヘルパー脂質と称される中性脂質ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)とから構成される、正に帯電したリポソームを含む。これらのリポソームは、負に帯電した核酸と自発的に相互作用して、リポプレックスと称される複合体を形成する。DNA負電荷に比して正に帯電したリポソームを過剰に使用すると、得られた複合体上の正味電荷も正になる。このようにして調製された正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自発的に付着するか、又は、吸着的エンドサイトーシス若しくは形質膜との融合のうち何れかによって(両プロセスは、機能的ポリヌクレオチドを、例えば、組織培養細胞中に送達する。)、細胞中に導入される。DOTMAとDOTAPは、モノ陽イオン性脂質のよい例である[Illis et al. 2001, ibid.]。
【0007】
多価陽イオン単独(ポリアルキルアミン、無機塩及び複合体及び脱水溶媒を含む。)も、巨大分子の細胞内への送達を促進することが示されている。特に、多価の陽イオンは、オリゴ及びポリ陰イオン(核酸分子、アミノ酸分子など)のコンパクトな構造形態への崩壊を誘発し、これらのポリ陰イオンのウイルス中へのパッケージング、リポソーム中へのそれらの取り込み、細胞中への輸送などを促進する[Thomas T. J. et al. Biochemistry 38:3821-3830(1999)]。DNAをコンパクトにすることができる最も小さなポリ陽イオンは、ポリアミンであるスペルミジン及びスペルミンである。リンカーを介して、疎水性アンカーをこれらの分子に付着させることによって、新しいクラスのトランスフェクションベクターであるポリ陽イオン性リポポリマーが開発された。
【0008】
陽イオン性脂質及び陽イオン性ポリマーは、DNA(又は他の任意のポリ陰イオン性巨大分子)の陰イオン基と静電的に相互作用して、DNA−脂質複合体(リポプレックス)又はDNA−ポリ陽イオン複合体(ポリプレックス)を形成する。複合体の形成には、脂質又はポリマーの対イオンの放出を伴い、この放出が、リポプレックス及びポリプレックスの自発的形成のための熱力学的駆動力である。陽イオン性脂質は、4つのクラスに分けられる。(i)四級アンモニウム塩脂質(例えば、DOTMA(LipofectinTM)及びDOTAP)及びホスホニウム/アルソニウム同属体;(ii)リポポリアミン;(iii)四級アンモニウムとポリアミン部分を両方有する陽イオン性脂質;および(iv)アミジニウム、グアニジニウム及び複素環塩脂質。
【発明の概要】
【0009】
第一のその側面によれば、本発明は、以下の式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体、並びに前記式(I)の化合物の塩および立体異性体を提供する:
【化7】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又はR3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数、好ましくは3から6までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【0010】
本発明の具体的な好ましいスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンである。
【0011】
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の調製方法であって、
(a)式(I)のスフィンゴイド化合物(式中、R1、R2およびWは上述の意味を有し、R3およびR4は、独立に、水素原子またはオキソ保護基を表し、前記R3およびR4の少なくとも一つは水素原子を表す)を提供すること;
(b)工程(a)の前記化合物を、必要に応じて触媒の存在下で、活性化剤と反応させて、活性化されたR3および/またはR4基を得ること;
(c)前記活性化スフィンゴイド化合物をポリアルキルアミンと反応させること;
(d)前記保護基を除去し、これにより上述の式(I)の前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること
を含む方法を提供する。
【0012】
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を、必要に応じて生理的に許容可能な担体と組み合わせて含む組成物を提供する。
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の、生理的に許容可能なデリバリー媒体としての使用を提供する。
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の、捕捉剤としての使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明を理解し、本発明が実際にどのように実施され得るかを把握するために、ここで、添付の図面を参照しながら、非限定的な例によって幾つかの態様について説明する。
本発明は、新規な脂質様陽イオン性(lipid-like cationic (LLC))化合物に関するものであり、これは、とりわけ捕捉剤として使用することができ、特にポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬剤を細胞へデリバリーするための媒体として使用することができる。
【0014】
脂質様陽イオン性化合物は、上述のとおり、以下の一般式(I)を有する。
またLLC化合物は、上述の前記化合物の塩および立体異性体を包含する。
【0015】
本発明のLLC化合物は、たとえば、N−置換された長鎖ベース、特に、N−置換されたスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースを、様々なポリアルキルアミン又はそれらの誘導体と連結して、ポリアルキルアミン−スフィンゴイド体を形成することにより入手することができる。得られた抱合体は、そのまま使用してもよいし、又はさらにアルキル化してその化合物内に一つ以上の第四級アミンを得てもよい。
【0016】
形成されたポリアルキルアミン−スフィンゴイド体の適切なpHでのプロトン化又はアルキル化は、たとえば標的細胞中に送達するための反対の電荷の分子(たとえば生物学的に活性な生物分子)との相互作用のために望ましい陽性電荷をLLC化合物に与える。形成されたLLC化合物は、その合成後に、陰イオン、オリゴ陰イオンもしくはポリ陰イオン、または負の電荷を含有する高分子の形態の生物学的に活性な分子と直接かつ効率的に複合体化して、複合体(リポプレックス)を形成してもよい。
【0017】
「生物学的に活性な分子」の用語は、本明細書において使用される「生物学的に活性な物(entity)」の用語と交換可能に本明細書において使用され、正味の負電荷を有するか、または(局所的)負電荷を有する一つ以上の領域もしくは部分を含有する任意の生物学的に活性な物質を表し、これは、適切な条件下で、本発明のLLC化合物の正味の正電荷と相互作用する。本発明のLLC化合物によりデリバーされ得る生物学的な物の非限定的な例には、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬剤が含まれる。
【0018】
本明細書において使用される「相互作用」または「複合体化(complexation)」は、当該技術分野において公知の任意のタイプの会合(association)を表し、静電的相互作用を含み、LLC化合物が(たとえばリポソームを形成するために)ミセルおよび/または小胞を形成するとき、前記会合は、小胞内への生物学的な物のカプセル化、小胞の脂質様層内への(全体的または部分的の)生物学的な物の取込み(挿入)、ミセルまたは小胞の表面への静電的吸着、または上記の任意の組合せを含む。以下の記載において、LLC化合物と生物学的に活性な物との間のすべての可能な相互作用は、「複合体(complex)」という用語により言及される。
【0019】
LLC化合物と生物学的に活性な物との間の可能な相互作用は、一般的な用語「複合体化(complexation)」により言及されてもよい。LLC化合物と生物学な物との間で形成される複合体は、デリバリーシステムとして、たとえばかかる生物学的な物を細胞にターゲッティングするために適している。
【0020】
本明細書において使用される「捕捉剤」の用語は、負の電荷、負の双極子または局所的な負の双極子を有する分子と相互作用する本発明の抱合体の特徴を表す。前記相互作用により、本発明の抱合体は、たとえば未知の生物学的試料からたとえば生物学的に活性な分子などを捕捉することにより、たとえば同定および単離を伴う研究において適用可能である。捕捉は、負電荷、負の双極子又は局所的な負電荷を有する捕捉すべき分子と本発明の正電荷の抱合体との間の静電的相互作用を伴う。このため、本発明の抱合体は、捕捉剤としての化合物の使用の仕方の説明書とともに本発明の前記抱合体を含むキットで使用してもよい。
【0021】
本発明の抱合体は、上述のとおり生物学的に活性な分子を捕捉することによって、該分子を標的部位/標的細胞に運搬するデリバリー媒体として使用することもできる。
【0022】
本発明に従って使用され得るスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースの非限定的な例には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシンおよびその誘導体が含まれる。このような誘導体の非限定的な例には、アシル誘導体、たとえばセラミド(N−アシルスフィンゴシン)、ジヒドロセラミド、フィトセラミド及びジヒドロフィトセラミド、並びにセラミン(N−アルキルスフィンゴシン)及び対応する誘導体(たとえば、ジヒドロセラミン、フィトセラミン、ジヒドロフィトセラミンなど)が含まれる。適切にN−置換されたスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースは、遊離のヒドロキシル基を有し、これは活性化された後、ポリアルキルアミンと反応して、ポリアルキルアミン−スフィンゴイド体を形成する。活性化剤の非限定的な例は、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート、ジ−若しくはトリ−ホスゲン又はイミダゾール誘導体である。これらの活性化剤をスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースと反応させると、それぞれ、(反応条件に依存して)一方又は両方のヒドロキシル部分に、スクシニミジルオキシカルボニル、クロロギ酸又はカルバミン酸イミダゾールを生じる。活性化されたスフィンゴイドをポリアルキルアミンと反応させると、分枝、直鎖(非分枝)又は環状のポリアルキルアミン含有LLC化合物を得ることができる。
【0023】
図1は、本発明の複数の可能な化合物の化学構造を示す。化合物(図1A)は、単一の直鎖ポリアルキルアミン鎖を含むLLC化合物の一例であり;化合物(図1B)は、2つの直鎖ポリアルキルアミン鎖から構成され;化合物(図1C)は、2つの分枝ポリアルキルアミンから構成され;化合物(図1D)は、2つのオキソ基を介してスフィンゴイドベースに結合した環状ポリアルキルアミン部分から構成される。
【0024】
分枝、直鎖または環状ポリアルキルアミンスフィンゴイド抱合体の形成は、その反応で使用される過剰のポリアルキルアミンおよび使用前のポリアルキルアミンの適切な保護をモニターすることにより指示されてもよい。
【0025】
最も広い側面において、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、以下の手法に従って調製され得る:
(a)式(I)のスフィンゴイド化合物(式中、R1、R2およびWは上述の意味を有し、R3およびR4は、独立に、水素原子またはオキソ保護基を表し、前記R3およびR4の少なくとも一つは水素原子を表す)を提供すること;
(b)工程(a)の前記化合物を、必要に応じて触媒の存在下で、活性化剤と反応させて、活性化されたR3および/またはR4基を得ること;
(c)前記活性化スフィンゴイド化合物をポリアルキルアミンと反応させること;
(d)前記保護基を除去し、これにより上述の式(I)の前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること。
【0026】
保護基、および化合物内の活性な部分を保護するための保護基の使用、たとえば本発明のスフィンゴイド化合物においてR3およびR4が結合しているオキソ基は、当該技術分野において周知である。かかる基の具体的な非限定的な例には、トリフルオロアセトアミド、fmoc、カルボベンゾキシ(CBZ)、ジアルキルホスホロアミデートが含まれる。他の保護基は、文献[たとえばTheodora W. Greene and Peter G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd Edition, 1980 John Wiley & Sons, Inc. pp 309]に見出すことができる。
【0027】
活性化基も当業者に公知であり、その非限定的な例には、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート、ジ−若しくはトリ−ホスゲン又はイミダゾール誘導体が含まれる。他の活性化剤は、文献[たとえばGreg T. Hermanson Bioconjugate Techniques, Academic Press 1996 pp 142, 183]に見出すことができる。
【0028】
スフィンゴイド化合物の活性化、すなわちR3およびR4が結合しているオキソ基は、触媒の存在下で達成されてもよい。触媒の非限定的な例には、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、テトラゾール、ジシアノイミダゾールまたはジイソプロピルエチルアミンが含まれる。
【0029】
本発明の方法により、同一のポリアルキルアミン置換基を有する二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることができる。一つの態様によれば、本方法は、工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、前記方法が、式(I)の化合物を、少なくとも二当量のポリアルキルアミンと反応させて、同一のポリアルキルアミン置換基を備えた二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを具備することを要件とする。
【0030】
本発明の方法により、異なるポリアルキルアミン置換基を有する二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることもできる。一つの態様によれば、本方法は、工程(a)においてR3及びR4の少なくとも一つは保護基で保護され、前記方法が、活性化スフィンゴイド化合物を第一のポリアルキルアミンと工程(c)において反応させること;R3またはR4の保護基を除去して、未保護のオキソ基を得ること;未保護の化合物を活性化剤と反応させて、活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること;および前記活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を第二のポリアルキルアミンと反応させ、これにより二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを具備し、前記第一および第二のポリアルキルアミンは同一であっても異なっていてもよいことを要件とする。
【0031】
本発明の方法により、複素環のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることもできる。一つの態様によれば、工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、前記スフィンゴイド化合物を少なくとも二当量の活性化剤と反応させて、R3及びR4が共に活性化された活性化スフィンゴイド化合物を得て、前記活性化スフィンゴイド化合物を一当量未満のポリアルキルアミンと反応させ、これにより複素環スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることが要件とされる。
【0032】
明らかに、式(I)の抱合体の種々のバリエーションを得るための上記方法の改変は、本発明の一部を形成する。
実例として、本発明のモノ、ジまたは複素環のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、図1A−1Dに示される。
【0033】
スフィンゴイドとポリアルキルアミンで形成された抱合体は、第四級アミンを形成するためにメチル化剤と更に反応させることができる。得られた化合物は、形成された抱合体内の第四級、第一級及び/又は第二級アミン間の比に依存して、異なる程度で、正に帯電される。
【0034】
本発明の好ましいLLC化合物は、スペルミンと結合したセラミド、すなわちN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミン(CCS)であり、これは本明細書において略語CCSで表される。CCS中の第一級アミンの濃度を決定するために、TNBSアッセイ[Barenholz Y. et al. Biochemistry 16:2806-10 (1977)]を以下に記載のとおり実施した。
【0035】
図2A−2Bは、TNBSとCCSの酢酸塩との反応生成物のマススペクトルおよび推定化学構造を示す(図2A)。TNP−CCSを形成するためのTNBS誘導体化CCSのマススペクトルによれば、CCSの唯一の第一級アミン(ピーク978.9)はTNBSと反応した。スペルミンの第二のアミノ基は、NMRにより証明されるとおり、スペルミンとセラミドの第一ヒドロキシル基との間でC1においてカルバモイルリンカーに関与し、すなわち、本発明の陽イオン性脂質に2つの第一級アミン基が存在する場合、これらは共にTNBSと反応する。第二級アミンが立体障害のためにTNBSと反応しなかったことを確認するために、スペルミンのみをTNBSと反応させた。図2Bは、スペルミン−(TNP)2のマススペクトルを示し、これは、スペルミンがフリーの第一級アミンの両方においてTNBSと反応したことを示す。分子あたり一つのTNBSが結合したことにより、CCSが単一のTNBS反応性第一級アミンを含有することが確認された。
【0036】
CCSフリーベース(非プロトン化)の推定M.W.は766であり、これはマススペクトルで確認された(図2C)。元素分析:C−6.5%;H−11.65%、N−8.01%。
CCSのエタノールにおける溶解性(ベース)も示された。
TLCシステム:クロロホルム:メタノール:酢酸1:25:1.5により、反応生成物として単一種の存在、すなわち実質的に純粋な生成物が示された。
【0037】
上記より、特定のCCS化合物が、単一のフリーの第一級アミンを有し、その化合物のマススペクトルも示す図2Cに表される化学構造を有することが結論づけられた。
【0038】
本発明のメチル化または非メチル化LLC化合物は、ミセルおよびリポソームを含む脂質集合物を形成するための任意の公知の方法により処理されてもよい。かかるプロセシングには、DOPE、コレステロールまたはその他の様々な非陽イオン性脂質を、脂質様化合物に様々なモル比で組込むことが含まれる(非限定的な例)。形成されたリポソームは、50−5000 nmの直径を有するサイズ不揃いの異種及び異層小胞(UHV;unsized heterogeneous and heterolamellar vesicles)として形づくられてもよい。形成されたUHVは、さらなるプロセシングによって、サイズを小さくして、約50から100nmの直径を有する大きな(より均質な)単層小胞(LUV;large unilamellar vesicle)に変換されてもよい。小胞の構造及び大きさ、例えばそれらの形状及びサイズは、生物学的に活性な物のターゲットへのデリバリーのための媒体としてその効率性に対して重大な影響を及ぼすことができ、すなわち、これらは小胞のトランスフェクション特性を決定する。このため、形成された小胞の構造、UHV(サイズ不揃いの異種)またはLUV(大きな単層)、OLV(オリゴ層)およびMLV(大きなマルチ層)は、一つの重要な因子である。効率的なデリバリーのための別の重要な因子は、LLC化合物のアミン正電荷の量(L+)と、それとともに複合体化した負電荷のオリゴまたはポリアニオンの量(A−)との比である。この比は、荷電した複合体の全体の電荷を決定し、効率的デリバリーのためにその比は、捕捉された/会合した部分に依存して、1000<(L+/A−)<0.1、好ましくは20<(L+/A−)<1、より好ましくは8<(L+/A−)<1.5とすることができる。
【0039】
以下のデータは、本発明の一つの好ましいLLC化合物、酢酸塩(Acetate/)またはクロライド塩(Chloride/)としてのCCS化合物;DOPEと組み合わせたCCS化合物(CCS/DOPEの比2:1);またはコレステロールと組み合わせたCCS化合物(CCS/Chol比2:1)の物理的特性を示す。
【0040】
臨界的ミセル濃度(CMC)
CCS塩(酢酸塩およびクロライド)のCMCを、凝集によるジフェニルヘキサトリエン(DPH)蛍光の変化(増大)により測定した。酢酸塩のCMCは、クロライド塩のものと同じで、いずれも5×10-6 Mであった。
【0041】
集合物サイズ、nm
サイズ(質量−重量)は、非侵襲的バック散乱ALV装置(ALV GmbH)を用いて(ダイナミック光散乱により)測定し、様々な脂質集合調合物の直径は以下のとおり測定された:
CCS クロライド塩: ミセル 25nm;
CCS クロライド/DOPE 2:1 リポソーム 3594nm;
CCS 酢酸塩 ミセル 6nm;
CCS 酢酸塩/DOPE 2:1 リポソーム 498nm;
CCS 酢酸塩/コレステロール 2:1 リポソーム 100nm-5000nm;
【0042】
(様々な塩および様々な対イオンを備えた)リポソームおよびミセルの静電気学
CCSミセルまたはCCS/DOPEリポソームのpKaは、pH感受性のバイレイヤー組込み型蛍光団4−ヘプタデシル7−ヒドロキシクマリン(C17HC)または1.2-ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(7−ヒドロキシクマリン)(HCPE)の解離曲線から測定した (Ψ0HC)[Zuidam & Barenholz (1997) ibid.]。HCPEについて405 nm、C17HCについて380 nmでの蛍光団7−ヒドロキシクマリン(HC)部分の蛍光励起は、イオン化種の量を表し、HCPEについて370 nm、C17HCについて330 nmでの励起は、pH依存性の等吸収点であり、これはリポソームおよびミセルにおけるプローブの総量を表す。蛍光の放射は、上記励起のすべてについて450 nmで測定した。これら2つの比(HCPEについては405/370、C17HCについては380/330)は、HC蛍光団のイオン化の程度を示す。HCの滴定カーブは、HCPEについては蛍光励起強度比I405/I370、C17HCについてはI380/I330を広い範囲のバルクpHでプロットすることにより作成され、これによりHCPEおよびC17HCそれぞれのHCの見かけのpKaを計算することができる。リポソームバイレイヤーおよび/またはミセルにおいてHCのpKaは、以前に記載されたとおりヘンダーソン‐ハッセルバルヒ式に上記滴定曲線を適合することにより計算される [Zuidam & Barenholz (1997) ibid.]。表面電位は、ボルツマンの式に従って、陽イオン性バイレイヤーの強塩基性環境で劇的に起こるHCのpKaのシフトから決定される [Zuidam & Barenholz (1997) ibid.]。
【0043】
【数1】
【0044】
リポソームおよびミセルのζ−電位は、20 mLの10 mM NaCl (pH 6.7) 中に40μLのアリコートを希釈し、測定前の溶液を0.2-μmシリンジフィルター (Minisart, Sartorius, Germany) を通すことにより、Zetasizer 3000 HAS, Malvern Instruments, Malvern, UKを用いて、適用電界における粒子の移動度により25℃で測定した。ζ−電位は、HCPEおよびC17HCにより検知される(実際の表面から更に離れた)シーアの面における電気電位を表す。
【0045】
脂質集合物の静電気学を記載するパラメーターは、表面電気電位(Ψ0HC);表面pH;およびζ−電位を含み、これらはすべて以下の表1に示される。
【0046】
【表1】
【0047】
追跡アッセイ
陽イオン性脂質CCSを、DOPEありまたはなしで(2:1)、4℃でHEPES(pH7.4)中に保存した効果も評価した。図3A−3Dは、様々な追跡アッセイの結果を示す(23日間の追跡)。追跡アッセイは、TNBSテストに基づくものであり、これは、TNBS試薬と第一級アミンとの発色反応に基づく定量アッセイである。
【0048】
特に、図3Aは、DOPEありまたはなしのCCSベースリポソームを保存したときの、(TNP誘導体を形成する)TNBS結合法により追跡される第一級アミンのレベルの追跡結果を示す。DOPEの存在下または非存在下の両方において、LLC化合物から形成される脂質集合物、たとえばCCSおよびCCSとDOPEの混合物が安定であること(すなわち、時間とともに第一級アミンのレベルに実質的な変化がないこと)を、この図から結論づけることができる。
【0049】
図3Bは、HEPESバッファーpH 7.4中で保存した間のゼータ電位の追跡結果を示す。この場合も、ゼータ電位に関して実質的に経時的な変化はみられなかった。これらの結果は、CCS第一級アミノ基の上述の完全性と一致する(図3A)。従って、図3Aおよび3Bに示される極僅かな変化は、少なくとも23日の間、水相中のCCS分散液が化学的に安定であることを反映する。
【0050】
図3Cは、HCPE 405/370蛍光励起強度比の追跡結果を示し、これは、陽イオン性リポソームおよび陽イオン性ミセルの表面pH、並びに電気的表面電位Ψ0(脂質集合物組込み型プローブHCPEの405/370比により表される)が、保存の全期間にわたって変化しなかったことを示し、このことはCCSの表面の安定性を示す。
【0051】
図3Dは、脂質集合物の直径の経時的変化の追跡結果を示す。特に、DOPEなしでは、粒子は比較的小さいままであり、すなわちミセルの形態のままであった。UHVであるCCS−DOPEベースの集合物は、ミセルよりずっと大きく、保存の間に凝集する傾向があり、これによりサイズが増大する。しかし、元のサイズ分布への凝集は、以下に記載するとおり、短時間(10秒)の超音波照射により起こった。
【0052】
図3Eは、トランスフェクション活性の追跡結果を示す。一般に、トランスフェクション活性は、ルシフェラーゼ発現により評価した(トランスフェクションの方法を参照)。保存時の凝集を考慮して(図3D)、リポプレックスの調製前の脂質分散液を、Elma TRANSSONIC 460/Hバスソニケーターで10秒間超音波処理した。2日目および23日目のみを示す。追跡アッセイの結果から得られる結論は、以下のとおりである。
【0053】
− HEPESバッファー(pH 7.4)中に水性分散形態で4℃で保存した時、23日目まで、表面およびゼータ電位について、脂質の分解もアミンの修飾も実質的には起こらなかった。
− 凝集によるトランスフェクション活性の減少が起こった。しかし、これは、10秒の超音波処理による脂質集合物の超音波処理により容易に克服され、この処理により元のサイズ分布に集合体は解離し、新たなプレパレーションレベルまでトランスフェクション効率は完全に回復した。
【0054】
静電気学および水和に対するCCS含有集合物とDNAとの複合体化の効果
様々なCCSベースリポソームとプラスミドDNAとの滴定の結果を図4に示す。滴定は、DNAを添加したことによる、バイレイヤー組込み型C17 HC 380/330蛍光励起の比(450 nmで放射を読む)の変化によりモニターした。図4において、CCSの酢酸塩は「アセテート(Acetate)」と称され、CCS酢酸塩/DOPE(モル比2:1)調合物は「アセテート/DOPE」と称され、CCSクロライド塩は「クロライド」と称され、結合したクロライド塩とDOPE(比2:1)は「クロライド/DOPE」と称される。
【0055】
水和のレベル
プラスミドDNAの添加前と添加後の様々なCCSベースの脂質集合物の水和レベルは、「ラウルダン励起一般偏光(Laurdan excitation general polarization)」の変化をモニターすることにより測定し、これによれば高い値が得られるほど水和レベルは低い。
【0056】
ラウルダンGP蛍光測定
6-ドデカノイル-2-ジメチルアミノナフタレン(ラウルダン)は、Lambda(Graz, Austria)から購入し、リポソームバイレイヤーの水和レベルの変化を追跡するために使用した。このプローブのナフタレン蛍光団は、バイレイヤーの親水性疎水性境界面に位置し、その12-炭素鎖が、バイレイヤー脂質アシル鎖に平行に配置される。ラウルダンの励起および放射スペクトルは、脂質と会合したときに脂質の相に強く依存する。様々な相におけるスペクトルの違いは、脂質のヘッド基の領域にあるLD相より水和していないSO相によるものである。脂質相および水和レベルは、一般化偏光(generalized polarization; GP)と称されるラウルダン定常状態の蛍光パラメーターにより記載することができる[Hirsch-Lerner D, Barenholz Y. Biochim Biophys Acta. 1461(1):47-57 (1999)]。脂質小胞におけるラウルダンGP蛍光スペクトルは、ラウルダンの蛍光部分のまわりの水分子の数に依存する。励起GPは、以下の式に従って計算した:
GP340=(I440−I490)/(I440+I490) (1)
式中、I440およびI490は、放射波長440および490 nmおよび励起波長340 nmでの蛍光放射強度である。
【0057】
ラウルダン標識リポソームのアリコートを、1 mLの20 mM HEPESバッファー(pH 7.4)で所望の濃度に希釈し、次いで様々な量のDNAを添加した。蛍光測定は、1-cm光路を用いてPerkin Elmer LS50B ルミネセンス分光計で25℃の温度で行った。得られた結果を図5に示し、これは、リポソームCCS/DOPEまたはミセルCCSが高い水和状態にあるが、DNAの添加により脱水すること(リポプレックスの形成)を示し、これは、ラウルダンGP値の急激な増大により表される。
【0058】
CCS−ベースの脂質集合物およびリポプレックスの形態学および構造
最後に、光学顕微鏡検査(図6A−6C)およびCryo-TEM画像(図7A−7D)を得、各画像を示す:図6Aは、CCSクロライド塩:Chol(2:1の比)から構成されるリポソームの光学顕微鏡画像を示し;図6Bは、CCSクロライド塩:DOPE(2:1の比)から構成されるリポソームの光学顕微鏡画像を示し;図6Cは、CCS酢酸塩:DOPE(2:1の比)から構成されるリポソームの光学顕微鏡画像を示し、図7Aは、Hepes中のCCSクロライド塩ベースのミセルのCryo-TEM画像を示し、図7Bは、CCSクロライド:DOPE(2:1の比)から構成されるHepes中のリポソームのCryo-TEM画像を示し、図7Cは、CCSクロライド:Chol(2:1の比)から構成されるHepes中のミセルのCryo-TEM画像を示す。
【0059】
CCSベースの脂質集合物の核酸およびタンパク質デリバリー効率を、生物学的活性により測定した。CCSベースの核酸およびアミノ酸リポプレックスの生物学的効率。
【0060】
本発明のLLC化合物によるトランスフェクションは、たとえば、ワクチン接種、遺伝子発現のための細胞への遺伝子の導入、遺伝子およびオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド療法を促進することができる。更に、本発明のLLC化合物により形成されたリポソームおよびミセルは、マウスの腹腔マクロファージ表面において、高レベルのMHC IIおよび同時刺激分子(たとえばB7およびCD40)の発現を効果的に誘導することが見出された(データ示さず)。これらは、増殖性抗原提示に必須である。中性および陰イオン性リポソームは、かかる能力を保持していないと思われる。
【0061】
よって、本発明により形成される複合体は、適切な賦形剤、好ましくは生理的に許容可能な担体とともにデリバーされる生物学的に活性な物を担持する複合体を含む薬学的組成物の一部とすることができる。かかる薬学的組成物は、たとえが静脈内、皮下、局所的、鼻内、経口、眼内または筋内へのインビボ投与、並びに生体外(ex vivo)およびインビトロ(細胞培養)適用のために調製することができる。
【0062】
本発明に従って生理的に許容可能な担体とは、好ましくは生物学的に活性な分子にも抱合体にも反応せず、かつ生物学的に活性な分子と抱合体の効果的なデリバリーに必要とされる、不活性な無毒の固体又は液体物質を一般に表す。本発明の組成物の一部を形成する集合物は、典型的には懸濁液または分散液の形態である。
【0063】
生理的に許容可能な担体の非限定的な例には、水、生理的食塩水、5%デキストロース(グルコース)、10%スクロースなどが含まれ、これらは単独であるか、又は微量(10%まで)のアルコール(エタノールなど)を加える。
【0064】
LLC化合物媒体の効率的な使用の更なる具体例は、細胞、とりわけ癌細胞へのオリゴヌクレオチドの移送である。癌治療の一つのアプローチは、癌細胞の機能を妨害するために、アンチセンスの形態で特定のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドをターゲットにすることである。
【0065】
本発明のLLC媒体の別の使用は、ワクチン接種である。従って、抗原を、LLC化合物と複合体化して(媒体内にカプセル化するか、脂質様層に捕捉するか、媒体の表面に会合させるか、または単に複合体化して)、抗原性の物(ワクチン)を形成することができる。複合体は、免疫賦活剤または免疫応答の所望の調整(刺激、増大など)を促進する任意の他の生物学的に活性な化合物を更に含んでいてもよい。
【0066】
とりわけ、CCS−抗原(生物学的に活性な分子)調合物は、抗原のみ;負電荷のリポソームと会合した抗原、またはDOTAP(モノ陽イオン性脂質)ベースのワクチンよりも、薬物動態に優れていることを見出した。CCSベースのワクチンは、抗原を鼻のリンパ節にデリバーすることができる唯一のワクチンであった(データ示さず)。
【実施例】
【0067】
化学
例1:N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミン(CCS)の合成
(i)N−パルミトイルスフィンゴシン(1.61g、3mmol)を、加熱しながら、無水THF(100mL)中に溶解した。透明な溶液を室温とし、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート(1.92g、7.5mmol)を添加した。攪拌しながら、DMAP(0.81g、7.5mmol)を添加し、この反応をさらに16時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、n−ヘプタンから再結晶された残留物から、融点73−76℃の白色粉末として、ジスクシニミジルセラミジルカーボネート1.3g(68%)を得た。
【0068】
(ii)スペルミン(0.5g、2.5mmol)及びジスクシニミジルセラミジルカーボネート(0.39g、0.5mmol)を、攪拌しながら、無水ジクロロメタン中に溶解した後、触媒量の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)で処理した。室温で16時間、この溶液を攪拌し、溶媒を蒸発させ、残留物を水で処理し、濾過し、真空中で乾燥させると、0.4g(82%)の未精製物質が得られ、60:20:20のブタノール:AcOH:H2O溶出液を用いた、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって、これをさらに精製した。
【0069】
(iii)前記化合物内の第四級アミンを得るために、DMS又はCH3Iで工程(ii)の生成物をメチル化することができる。
【0070】
例2:他の合成手順
上記手順と同様に、以下の手順を適用することができる。
図1Aに図示されている直鎖一置換セラミド−スペルミン抱合体の合成
対応する1,3−ジ−O−スクシニミジル誘導体を得るために、DMAPの存在下で、1当量のセラミドを、2.5当量のジスクシニミジルカーボネートと反応させる。
このようにして得られたジスクシニミジル誘導体を、触媒量のDMAPを用いて、室温で、当量のスペルミンと反応させて、図1Bの3−一置換−セラミド−スペルミン抱合体を得る。
【0071】
図1Bに図示されている直鎖二置換セラミド−スペルミン抱合体の合成
上述したように調製された一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルスフィノギド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80°で、2.5当量のスペルミンと反応させる。1,3−二置換CCSが、このようにして得られる。
【0072】
図1Cに図示されている直鎖二置換セラミド−分枝スペルミン抱合体の合成
上述のように調製された一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルセラミド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80°で、2.5当量のα−ω−ジプロテクトスペルミンと反応させる。
プロテクションを除去し、1,3−「分枝」二置換セラミド−スペルミン抱合体を得る。
【0073】
図1Dに図示されている直鎖二置換セラミド−環状スペルミン抱合体の合成
上述のように調製した一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルセラミド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80℃で、0.75当量のスペルミンと反応させる。
【0074】
例3:N−パルミトイルD−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンの化学的特徴付け
本発明の例示の陽イオン性脂質においてCCS分子あたりの第一級アミンを測定するためにTNBSアッセイを使用した。従って、試験化合物CCS(100 mL)を重炭酸塩溶液(500μL、pH8.4)に添加し、その後TNBS(1200 nmol、20μL)を添加した。その混合物を30分間インキュベートした。インキュベーション後、酢酸を添加した(20μL)。赤い沈殿物を沈降させ、アセトニトリル中に溶解した。特定の化合物TNP−CCSのマススペクトルを得た。構造解析のためにTNBSアッセイをスペルミンについても実施した。
【0075】
以下のパラメーターを例示の脂質集合物について決定した:
− 臨界的ミセル濃度(CMC)を、凝集によるジフェニルヘキサトリエン(DPH)の蛍光の変化を測定することにより決定した;
− リポソームサイズを、非侵襲的バック散乱ALV装置(ALV GmbH)を用いてダイナミック光散乱により決定した。
− CCSベースの集合物の表面電位および表面pHを、集合物に組み込まれたC17HCまたはヒドロキシクマリンホスファチジルエタノールアミン(HCPE)のヒドロキシクマリン(HC)部分の解離曲線から決定した。
− ゼータ電位を、Zetasizer(Malvern装置)を用いて10 mM NaCl中で決定した。
【0076】
CCSベース脂質集合物のプラスミドDNAによる滴定
C17HCを組込んだリポソームおよびミセルのアリコート(典型的には20−40 nmol)を、HEPES 20 mM pH 7.4を含有する1 cm石英キュベットに添加し、励起波長380/330の比を、450 nmにおける放射で記録した。その後、種々の量のDNAを添加して、図4に表示の電荷比を作成した。この間、380/330比を記録した。これに関連して以下の追加のパラメータを決定した:
【0077】
− DNAとの複合体化によるCCSベース脂質集合物の水和レベルの変化
− プラスミドDNA添加前および添加後の水和を、Hirsch Lerner and Barenholzに記載されるとおり、ラウルダン励起一般偏光(Laurdan excitation general polarization)の変化を測定することによりモニターした[Hirsch Lerner and Barenholz (1999) ibid.]。この手法によれば、高い値が得られるほど水和のレベルが低いことを示す。
【0078】
CCSベース脂質集合物の水性分散液中の安定性
CCS単独(ミセル)またはCCSとDOPEとの組合せ(モル比2:1 UHVリポソーム)をHEPESバッファー(pH 7.4)中で4℃で保存した効果を測定した。第一級アミンのレベルを、保存時間とともにTNBS結合で測定し、新たに水和した調製物の%として記載した。ゼータ電位の変化、HCPE蛍光450 nm/370 nm励起比の変化、および形成された脂質集合物(リポソームまたはミセル)のサイズの変化を測定した。
【0079】
保存アッセイ
対応の脂質集合物(CCSまたはCCS/DOPE2:1)を、Hepesバッファー中で再構成することにより上述のとおり調製し、4℃で0〜21日間保存した。21日目には、保存の6つの時点があり、以下のパラメーターについて同時にアッセイした:
表面電位(HCPE)
ゼータ電位
サイズ
第一級アミン(TNBS)
トランスフェクション効率
【0080】
その結果を図3A−3Eに示す。試験したパラメーターすべてのうち、唯一の物理的変化は、時間とともにリポソームが凝集したことであり、これによりトランスフェクション活性は可逆的に低下したが、この効果は、リポソームの短時間(10秒)の超音波処理により克服することができた。静電気的パラメーター(ゼータ電位および表面電位)および第一級アミンの数は変化しなかった。
【0081】
材料
モノ陽イオン性脂質DOTAP(N−(1−(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル),N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド);中性脂質DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン)は、すべてAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL)から得た。
4-ヘプタデシル-7-ヒドロキシクマリンは、Molecular Probes(Oregon USA)から得た。
コレステロールはSigmaから得た。
【0082】
pH感受性プローブ7-ヒドロキシクマリン−ホスファチジルエタノールアミン(HCPE)は、Molecular Probes(Eugene, OR)のアミン標識法に従って、DOPE第一級アミンを7-HCスクシニミジルエステル(Molecular Probes)で標識することにより調製した。
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)およびHepesは、Sigmaから得た。
6-ドデカノイル-2-ジメチルアミノナフタレン(laurdan)および6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン(DPH)は、Molecular probesから得た。
【0083】
DNA
以下のプラスミドを使用した:
(1)CMVプロモーター−エンハンサーの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする商業的に入手可能なプラスミドpQBI 25(Qbiogene, Montreal, Canada);
(2)pCMV-EYFPmito、ミトコンドリア局在シグナルを保持する改良型黄色蛍光タンパク質 (EYFP) をコードするプラスミドを、BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CAから購入した。ルシフェラーゼ遺伝子をコードするpCMV Lucは、875 bp CMV プロモーター-エンハンサーフラグメントをpGL3エンハンサーに挿入することにより構築した (Promega, Madison, WI);
すべてのプラスミドは、E.coliで繁殖させ、QIAGEN EndoFree Plasmid Megaキット (QIAGEN, Hilden, Germany)を用いて、製造者のプロトコールに従って、無菌の内毒素フリーの形態で精製し、記載されるとおりに純度およびトポロジーについて分析した (Even-Chen and Barenholz, 2000)。
【0084】
顕微鏡検査
リポソームのサイズ分布の研究のため、一滴の脂質分散液をスライドガラス上に置き、カバーガラスで覆い、Nomarskyコントラストを用いて透過モードで観察した。スライドガラスは、Olympus FV300 レーザー走査顕微鏡 (Olympus Optical, Japan) で観察した。凝集物のサイズを見積もるため、3-μmラテックスビーズ(Sigma)を調合物に添加した。
【0085】
凍結透過型電子顕微鏡検査
各実験のために、10 mM陽イオン性脂質の濃度の脂質分散液を、20 mM HEPESバッファーpH 7.4中で調製した。ガラス状化試料を、25℃、100%相対湿度において、管理環境ガラス化システム(CEVS)で調製した。試料を、Philips CM120顕微鏡で120kVで操作して調査した。-178℃以下の顕微鏡において試料を平衡化し、その後、電子ビーム照射ダメージを最小にするために低用量イメージングモードで調査し、位相差を高めるために4-7 nmの僅かなアンダーフォーカスで記録した。Oxford CT-3500冷却ホルダーを使用した。画像は、Digital Micrograph 3.1 software packageを用いてGatan MultiScan 791 CCDカメラによりデジタルで記録した。
【0086】
DPHを用いたCMC測定
テトラヒドロフラン中に溶解したDPHを、0.25 ml%の濃度で、脂質分散液の濃度の範囲まで添加し、蛍光を360 nm励起および430 nm放射を用いてPerkin Elmer LS-50Bで記録した。その後、蛍光を脂質濃度の関数としてプロットし、CMC領域の上または下に二本の直線を横断させることにより、CMCポイントを曲線の傾きの変化として検出した。
【0087】
NMRスペクトロスコピーを用いたスペルミン−セラミド抱合体の構造解析
一次元NMR研究
NMR実験を実施し、5 mmコンピューター切替え可能なプローブを備えた500 MHzスペクトロメーターの共鳴振動数でVarian Inovaでスペクトルを集めた。化学シフトを、それぞれ1Hおよび13C振動数について500 MHzを用いて標準的VNMRソフトウェアを用いて処理した。セラミドサンプルをCDCl3中に溶解し、セラミド−スペルミン抱合体を三酢酸塩として使用し、重水素化メタノール中に溶解した(CD4O)。セラミド−スペルミン抱合体の配座解析のため、0℃−40℃の温度範囲を調査した。全てのケースにおいて、水和溶媒のピークを内部基準として使用した。
【0088】
二次元NMR実験
1H−1H相関分光法(COSY)および1H−13C異核多量子コヒーレンス(HMQC)実験を、インバースプローブを用いて行った。溶解性の障害物のため、重水素化メタノール中の三酢酸塩(CD4O)を使用した。表3および4に示されるアサインメント(ナンバリングについては図8参照)は、二次元実験とともに、一次元1H−および13C−NMRから集められたデータの結果である。スペルミンには二つの可能な抱合部位が存在し、一つはヒドロキシル基HO(C1)であり、もう一つはHO(C3)である。ウレタン基を介したスペルミンのセラミド部分への抱合は、誘導体化ヒドロキシル基に隣接して存在するプロトンに対して電子求引性効果を誘導すると仮定される。NMR解析により、H1aおよびH1bプロトンは実際に大きく影響を受け、それらのピークはそれぞれδ=4.17および3.9 ppmにシフトダウンすることが明らかになった(セラミドにおける5.36 ppmおよび5.56 ppmと比較して)。H2は僅かに影響を受け、δ=3.9にシフトした(セラミドではδ=3.7 ppm)。13C−NMRにおいて、C1がδ=64.2にシフトダウンすることが観察された(出発物質セラミドではδ=62.29)。HO(C1)を介した抱合は、H3およびC3についてマイナーなシフトしか引き起こさなかった(それぞれ、セラミドでのδ=4.06および73.94 ppmからスペルミン−セラミドでのδ=3.8および72.18 ppm)。
【0089】
このケースにおいて、HO(C3)およびアミドはいずれも、使用した溶媒からの重水素と迅速に交換したため、明らかには検出されなかった。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
図9A−9Bは、それぞれ、本発明のCCS化合物の1H−NMRおよび13C−NMRを示し、これらは上記結果に対応する。
本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の内容は、本明細書の開示の中に含まれるものとして読まなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1A−1Dは、式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の一般的な定義に包含される、複数の可能な化学構造、「直鎖」、「分枝」又は「環状」の脂質様陽イオン性(LLC)化合物を示す。図1Aは、単一のポリアルキルアミン鎖に連結されたスフィンゴイド骨格(セラミド)を示し、図1B及び図1Cは、2つのポリアルキルアミン鎖に連結された同一のスフィンゴイド骨格を示し、図1Dは、同一の骨格を示すが、2つのヒドロキシル部分を介して、単一のポリアミン鎖が連結されて、環状ポリアミン抱合体を形成している。
【図2A】図2A−2Cは、本発明の特定のLLC化合物、セラミドカルバモイルスペルミン(CCS)とも称されるN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンを、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)と結合させてTNP-CCSを形成したもの(図2A)、またはそのもの(図2C)のマススペクトルを、スペルミンをTNBSと結合させてTNP-スペルミン-TNP(スペルミン(TNP)2)を形成したもの(図2B)と比較して示す。各化合物の化学構造も示す。
【図2B】図2A−2Cは、本発明の特定のLLC化合物、セラミドカルバモイルスペルミン(CCS)とも称されるN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンを、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)と結合させてTNP-CCSを形成したもの(図2A)、またはそのもの(図2C)のマススペクトルを、スペルミンをTNBSと結合させてTNP-スペルミン-TNP(スペルミン(TNP)2)を形成したもの(図2B)と比較して示す。各化合物の化学構造も示す。
【図2C】図2A−2Cは、本発明の特定のLLC化合物、セラミドカルバモイルスペルミン(CCS)とも称されるN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンを、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)と結合させてTNP-CCSを形成したもの(図2A)、またはそのもの(図2C)のマススペクトルを、スペルミンをTNBSと結合させてTNP-スペルミン-TNP(スペルミン(TNP)2)を形成したもの(図2B)と比較して示す。各化合物の化学構造も示す。
【図3A】図3A−3Eは、CCSベース脂質集合物をHepesバッファーpH 7.4中で4℃で保存したときの追跡アッセイの棒グラフを示す。 図3Aは、新たに調製した(=新たに水和させた)調合物中に見出される第一級アミンのパーセントで表される、保存分散液中のCCS第一級アミンの濃度の変化を示す。
【図3B】図3Bは、保存の間のゼータ電位の変化を示す。
【図3C】図3Cは、膜に組み込まれたpH感受性プローブHCPE(1,2-ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(7−ヒドロキシクマリン))の励起波長405 nm/380 nmの比の変化を示す[Zuidam NJ, Barenholz Y. Biochim Biophys Acta 1329: 211-22 (1997); Zuidam NJ, Barenholz Y. Biochim Biophys Acta 1368: 115-28 (1998)]。
【図3D】図3Dは、脂質集合物の直径の変化を示す。
【図3E】図3Eは、トランスフェクション活性の変化を示す。
【図4】図4は、pHおよび電気的ポテンシャルプローブ、4−ヘプタデシル−7−ヒドロキシクマリン(C17HC)により決定される電気的表面ポテンシャルに対する、CCSを含む様々な脂質集合物(リポソームおよびミセル)とプラスミドDNAとの滴定の効果を示す。
【図5】図5は、プラスミドの添加前(脂質)および添加後(2種類の比の「脂質/DNA」)の、様々なCCSベース集合物(酢酸塩、酢酸塩/DOPEの組合せ、クロライド塩、またはクロライド塩/DOPEの組合せ)の水和レベルを示し、これは、蛍光プローブLaurdanの一般励起蛍光偏光により半定量的に測定される[Hirsch-Lerner D. and Barenholz Y. Biochim Biophys Acta. 1461(1):47-57 (1999)]。
【図6】図6A−6Cは、光学顕微鏡画像を示す。とりわけ、図6Aは、CCSクロライド塩:Chol(比2:1)を含むリポソームの画像を示し、図6Bは、CCSクロライド塩:DOPE(比2:1)を含むリポソームの画像を示し、図6Cは、CCS酢酸塩:DOPE(比2:1)から構成されるリポソームの画像を示す。
【図7A】図7A−7Dは、Cryo−TEM画像を示す。とりわけ、図7Aは、CCSクロライド塩ベースの集合物(虫のようなミセル)の画像を示す。
【図7B】図7Bは、CCSクロライド:DOPE(比2:1)を含むHepesバッファーpH 7.4中のリポソームの画像を示す。
【図7C】図7Cは、CCSクロライド:Chol(比2:1)を含むリポソームの画像を示し、図7Dは、CCSクロライド:Chol(比2:1)を含むリポソームの別の画像を示す。
【図8】図8は、CCSの中心領域の構造およびナンバリングを示し、本明細書に記載の二次元NMR実験から得られるCCSの1Hおよび13Cのアサインメントを含む。
【図9】図9A−9Bは、本明細書に記載されるとおりCCSの1H−NMR(図9A)および13C−NMR(図9B)を示す。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、新規のスフィンゴ脂質のポリアルキルアミン抱合体(conjugate)、およびとりわけトランスフェクションのためのその使用に関する。
【従来技術のリスト】
【0002】
以下は、本発明の分野に属する技術水準を記述するのに適すると考えられる従来技術のリストである。
米国特許第6,075,012号:“Reagents for intracellular delivery of macromolecules”;
米国特許第5,783,565号:“Cationic amphiphiles containing spermine or spermidine cationic group for intracellular delivery of therapeutic molecules”;
米国特許第5,334,761号:“Cationic lipids”;
US2001/048939:“Cationic reagents of transfection”;
米国特許第5,659,011号:“Agents having high nitrogen content and high cationic charge based on dicyanimide dicyandiamide or guanidine and inorganic ammonium salts”;
米国特許第5,674,908号:“Highly packed polycationic ammonium, sulfonium and phosphonium lipids”;
WO 98/05678: “Novel cationic amphiphilic lipids for liposomal gene transfer”;
米国特許第6,281,371号:“Lipopolyamines, and the preparation and use thereof”;
Marc Antoniu Ilies & Alexandru T. Balaban, Expert Opin. Ther. Patents. 11(11): 1729-1752 (2001);
Miller AD. Chem. Int. Ed. Eng. 37: 1768-1785 (1998).
【発明の背景】
【0003】
細胞以下又は分子レベルで細胞機能に影響を与えることができる、タンパク質及びポリヌクレオチド、外来物質並びに薬物など、多くの天然の生物分子及びそれらの類縁体は、それらの効果を発揮するために、好ましくは細胞内に取り込まれる。これらの物質に対して、細胞膜は、これらの物質に非透過性である選択的な障壁となる。細胞膜の複雑な組成には、リン脂質、糖脂質及びコレステロール、並びに内在性及び外在性タンパク質が含まれ、その機能は、Ca++及びその他の金属イオン、陰イオン、ATP、微小繊維、微小管、酵素並びにCa++結合タンパク質などの細胞質成分によって影響を受け、細胞外グリコカリックス(プロテオグリカン、グリコースアミノグリカン及び糖タンパク質)によっても影響を受ける。構造的細胞要素と細胞質内細胞要素の間の相互作用及び外部シグナルに対するそれらの応答は、細胞タイプ内及び細胞タイプ間に見られる膜選択性を担う輸送プロセスを構成する。
【0004】
自然の状態では細胞によって取り込まれない物質を細胞内へ上手く送達することも、研究されている。天然の細胞膜の脂質組成に極めてよく似た脂質調合物に、複合体状の物質を会合させることによって、膜障壁を克服することができる。これらの調合物は、接触すると、細胞膜と融合することができ、あるいは、より一般的には、ピノサイトーシス、エンドサイトーシス及び/又はファゴサイトーシスによって取り込まれる。これらの全てのプロセスでは、会合された物質が細胞内へ送達される。
【0005】
脂質複合体は、細胞表面間の電荷的反発(多くの場合、負に帯電している。)を克服することによっても、細胞内輸送を促進することができる。当該調合物の脂質は、細胞膜のリン脂質など両親媒性の脂質を含んでおり、水系中で、様々な層または凝集物、たとえばミセルまたは中空の脂質小胞(リポソーム)を形成する。リポソームは、リポソーム内に送達すべき物質を捕捉するために使用することができ;他の用法では、目的の薬物分子は、中空の水性内部に捕捉されるというよりむしろ、内在性膜成分として脂質小胞中に取り込まれるか、又は凝集物表面に静電的に付着させることができる。しかしながら、使用される多くのリン脂質は、両性イオン(中性)であるか、負に帯電しているかのいずれかである。
【0006】
細胞内送達の分野における進歩は、リポソーム又は小胞の形態の、正に帯電した合成陽イオン性脂質、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム・クロリド(DOTMA)が、DNAと自発的に相互作用し、脂質−DNA複合体を形成できるという発見であり、この複合体は、細胞膜に吸着して、融合によって、又はおそらくは吸着性エンドサイトーシスによって、細胞に取り込まれ、導入遺伝子の発現をもたらすことができる[Felgner, P. L. et al. Proc. Natl. Acad. Sci., USA 84: 7413-7417 (1987) and U. S. Pat. No. 4,897,355 to Eppstein, D. et al.]。その他、DNA複合体化小胞を形成するために、リン脂質と組み合わせて、DOTMA類縁体である1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)を使用して成功した者もある。LipofectinTM試薬(Bethesda Research Laboratories, Gaithersburg, MD.)は、高度に陰イオン性のポリヌクレオチドを生きた組織培養細胞中に送達するのに有効な物質であり、正に帯電した脂質DOTMAと、ヘルパー脂質と称される中性脂質ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)とから構成される、正に帯電したリポソームを含む。これらのリポソームは、負に帯電した核酸と自発的に相互作用して、リポプレックスと称される複合体を形成する。DNA負電荷に比して正に帯電したリポソームを過剰に使用すると、得られた複合体上の正味電荷も正になる。このようにして調製された正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自発的に付着するか、又は、吸着的エンドサイトーシス若しくは形質膜との融合のうち何れかによって(両プロセスは、機能的ポリヌクレオチドを、例えば、組織培養細胞中に送達する。)、細胞中に導入される。DOTMAとDOTAPは、モノ陽イオン性脂質のよい例である[Illis et al. 2001, ibid.]。
【0007】
多価陽イオン単独(ポリアルキルアミン、無機塩及び複合体及び脱水溶媒を含む。)も、巨大分子の細胞内への送達を促進することが示されている。特に、多価の陽イオンは、オリゴ及びポリ陰イオン(核酸分子、アミノ酸分子など)のコンパクトな構造形態への崩壊を誘発し、これらのポリ陰イオンのウイルス中へのパッケージング、リポソーム中へのそれらの取り込み、細胞中への輸送などを促進する[Thomas T. J. et al. Biochemistry 38:3821-3830(1999)]。DNAをコンパクトにすることができる最も小さなポリ陽イオンは、ポリアミンであるスペルミジン及びスペルミンである。リンカーを介して、疎水性アンカーをこれらの分子に付着させることによって、新しいクラスのトランスフェクションベクターであるポリ陽イオン性リポポリマーが開発された。
【0008】
陽イオン性脂質及び陽イオン性ポリマーは、DNA(又は他の任意のポリ陰イオン性巨大分子)の陰イオン基と静電的に相互作用して、DNA−脂質複合体(リポプレックス)又はDNA−ポリ陽イオン複合体(ポリプレックス)を形成する。複合体の形成には、脂質又はポリマーの対イオンの放出を伴い、この放出が、リポプレックス及びポリプレックスの自発的形成のための熱力学的駆動力である。陽イオン性脂質は、4つのクラスに分けられる。(i)四級アンモニウム塩脂質(例えば、DOTMA(LipofectinTM)及びDOTAP)及びホスホニウム/アルソニウム同属体;(ii)リポポリアミン;(iii)四級アンモニウムとポリアミン部分を両方有する陽イオン性脂質;および(iv)アミジニウム、グアニジニウム及び複素環塩脂質。
【発明の概要】
【0009】
第一のその側面によれば、本発明は、以下の式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体、並びに前記式(I)の化合物の塩および立体異性体を提供する:
【化7】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又はR3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数、好ましくは3から6までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【0010】
本発明の具体的な好ましいスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンである。
【0011】
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の調製方法であって、
(a)式(I)のスフィンゴイド化合物(式中、R1、R2およびWは上述の意味を有し、R3およびR4は、独立に、水素原子またはオキソ保護基を表し、前記R3およびR4の少なくとも一つは水素原子を表す)を提供すること;
(b)工程(a)の前記化合物を、必要に応じて触媒の存在下で、活性化剤と反応させて、活性化されたR3および/またはR4基を得ること;
(c)前記活性化スフィンゴイド化合物をポリアルキルアミンと反応させること;
(d)前記保護基を除去し、これにより上述の式(I)の前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること
を含む方法を提供する。
【0012】
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を、必要に応じて生理的に許容可能な担体と組み合わせて含む組成物を提供する。
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の、生理的に許容可能なデリバリー媒体としての使用を提供する。
更に本発明は、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の、捕捉剤としての使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本発明を理解し、本発明が実際にどのように実施され得るかを把握するために、ここで、添付の図面を参照しながら、非限定的な例によって幾つかの態様について説明する。
本発明は、新規な脂質様陽イオン性(lipid-like cationic (LLC))化合物に関するものであり、これは、とりわけ捕捉剤として使用することができ、特にポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬剤を細胞へデリバリーするための媒体として使用することができる。
【0014】
脂質様陽イオン性化合物は、上述のとおり、以下の一般式(I)を有する。
またLLC化合物は、上述の前記化合物の塩および立体異性体を包含する。
【0015】
本発明のLLC化合物は、たとえば、N−置換された長鎖ベース、特に、N−置換されたスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースを、様々なポリアルキルアミン又はそれらの誘導体と連結して、ポリアルキルアミン−スフィンゴイド体を形成することにより入手することができる。得られた抱合体は、そのまま使用してもよいし、又はさらにアルキル化してその化合物内に一つ以上の第四級アミンを得てもよい。
【0016】
形成されたポリアルキルアミン−スフィンゴイド体の適切なpHでのプロトン化又はアルキル化は、たとえば標的細胞中に送達するための反対の電荷の分子(たとえば生物学的に活性な生物分子)との相互作用のために望ましい陽性電荷をLLC化合物に与える。形成されたLLC化合物は、その合成後に、陰イオン、オリゴ陰イオンもしくはポリ陰イオン、または負の電荷を含有する高分子の形態の生物学的に活性な分子と直接かつ効率的に複合体化して、複合体(リポプレックス)を形成してもよい。
【0017】
「生物学的に活性な分子」の用語は、本明細書において使用される「生物学的に活性な物(entity)」の用語と交換可能に本明細書において使用され、正味の負電荷を有するか、または(局所的)負電荷を有する一つ以上の領域もしくは部分を含有する任意の生物学的に活性な物質を表し、これは、適切な条件下で、本発明のLLC化合物の正味の正電荷と相互作用する。本発明のLLC化合物によりデリバーされ得る生物学的な物の非限定的な例には、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチドおよび薬剤が含まれる。
【0018】
本明細書において使用される「相互作用」または「複合体化(complexation)」は、当該技術分野において公知の任意のタイプの会合(association)を表し、静電的相互作用を含み、LLC化合物が(たとえばリポソームを形成するために)ミセルおよび/または小胞を形成するとき、前記会合は、小胞内への生物学的な物のカプセル化、小胞の脂質様層内への(全体的または部分的の)生物学的な物の取込み(挿入)、ミセルまたは小胞の表面への静電的吸着、または上記の任意の組合せを含む。以下の記載において、LLC化合物と生物学的に活性な物との間のすべての可能な相互作用は、「複合体(complex)」という用語により言及される。
【0019】
LLC化合物と生物学的に活性な物との間の可能な相互作用は、一般的な用語「複合体化(complexation)」により言及されてもよい。LLC化合物と生物学な物との間で形成される複合体は、デリバリーシステムとして、たとえばかかる生物学的な物を細胞にターゲッティングするために適している。
【0020】
本明細書において使用される「捕捉剤」の用語は、負の電荷、負の双極子または局所的な負の双極子を有する分子と相互作用する本発明の抱合体の特徴を表す。前記相互作用により、本発明の抱合体は、たとえば未知の生物学的試料からたとえば生物学的に活性な分子などを捕捉することにより、たとえば同定および単離を伴う研究において適用可能である。捕捉は、負電荷、負の双極子又は局所的な負電荷を有する捕捉すべき分子と本発明の正電荷の抱合体との間の静電的相互作用を伴う。このため、本発明の抱合体は、捕捉剤としての化合物の使用の仕方の説明書とともに本発明の前記抱合体を含むキットで使用してもよい。
【0021】
本発明の抱合体は、上述のとおり生物学的に活性な分子を捕捉することによって、該分子を標的部位/標的細胞に運搬するデリバリー媒体として使用することもできる。
【0022】
本発明に従って使用され得るスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースの非限定的な例には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシンおよびその誘導体が含まれる。このような誘導体の非限定的な例には、アシル誘導体、たとえばセラミド(N−アシルスフィンゴシン)、ジヒドロセラミド、フィトセラミド及びジヒドロフィトセラミド、並びにセラミン(N−アルキルスフィンゴシン)及び対応する誘導体(たとえば、ジヒドロセラミン、フィトセラミン、ジヒドロフィトセラミンなど)が含まれる。適切にN−置換されたスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースは、遊離のヒドロキシル基を有し、これは活性化された後、ポリアルキルアミンと反応して、ポリアルキルアミン−スフィンゴイド体を形成する。活性化剤の非限定的な例は、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート、ジ−若しくはトリ−ホスゲン又はイミダゾール誘導体である。これらの活性化剤をスフィンゴイド又はスフィンゴイドベースと反応させると、それぞれ、(反応条件に依存して)一方又は両方のヒドロキシル部分に、スクシニミジルオキシカルボニル、クロロギ酸又はカルバミン酸イミダゾールを生じる。活性化されたスフィンゴイドをポリアルキルアミンと反応させると、分枝、直鎖(非分枝)又は環状のポリアルキルアミン含有LLC化合物を得ることができる。
【0023】
図1は、本発明の複数の可能な化合物の化学構造を示す。化合物(図1A)は、単一の直鎖ポリアルキルアミン鎖を含むLLC化合物の一例であり;化合物(図1B)は、2つの直鎖ポリアルキルアミン鎖から構成され;化合物(図1C)は、2つの分枝ポリアルキルアミンから構成され;化合物(図1D)は、2つのオキソ基を介してスフィンゴイドベースに結合した環状ポリアルキルアミン部分から構成される。
【0024】
分枝、直鎖または環状ポリアルキルアミンスフィンゴイド抱合体の形成は、その反応で使用される過剰のポリアルキルアミンおよび使用前のポリアルキルアミンの適切な保護をモニターすることにより指示されてもよい。
【0025】
最も広い側面において、本明細書に記載される式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、以下の手法に従って調製され得る:
(a)式(I)のスフィンゴイド化合物(式中、R1、R2およびWは上述の意味を有し、R3およびR4は、独立に、水素原子またはオキソ保護基を表し、前記R3およびR4の少なくとも一つは水素原子を表す)を提供すること;
(b)工程(a)の前記化合物を、必要に応じて触媒の存在下で、活性化剤と反応させて、活性化されたR3および/またはR4基を得ること;
(c)前記活性化スフィンゴイド化合物をポリアルキルアミンと反応させること;
(d)前記保護基を除去し、これにより上述の式(I)の前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること。
【0026】
保護基、および化合物内の活性な部分を保護するための保護基の使用、たとえば本発明のスフィンゴイド化合物においてR3およびR4が結合しているオキソ基は、当該技術分野において周知である。かかる基の具体的な非限定的な例には、トリフルオロアセトアミド、fmoc、カルボベンゾキシ(CBZ)、ジアルキルホスホロアミデートが含まれる。他の保護基は、文献[たとえばTheodora W. Greene and Peter G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd Edition, 1980 John Wiley & Sons, Inc. pp 309]に見出すことができる。
【0027】
活性化基も当業者に公知であり、その非限定的な例には、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート、ジ−若しくはトリ−ホスゲン又はイミダゾール誘導体が含まれる。他の活性化剤は、文献[たとえばGreg T. Hermanson Bioconjugate Techniques, Academic Press 1996 pp 142, 183]に見出すことができる。
【0028】
スフィンゴイド化合物の活性化、すなわちR3およびR4が結合しているオキソ基は、触媒の存在下で達成されてもよい。触媒の非限定的な例には、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、テトラゾール、ジシアノイミダゾールまたはジイソプロピルエチルアミンが含まれる。
【0029】
本発明の方法により、同一のポリアルキルアミン置換基を有する二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることができる。一つの態様によれば、本方法は、工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、前記方法が、式(I)の化合物を、少なくとも二当量のポリアルキルアミンと反応させて、同一のポリアルキルアミン置換基を備えた二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを具備することを要件とする。
【0030】
本発明の方法により、異なるポリアルキルアミン置換基を有する二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることもできる。一つの態様によれば、本方法は、工程(a)においてR3及びR4の少なくとも一つは保護基で保護され、前記方法が、活性化スフィンゴイド化合物を第一のポリアルキルアミンと工程(c)において反応させること;R3またはR4の保護基を除去して、未保護のオキソ基を得ること;未保護の化合物を活性化剤と反応させて、活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること;および前記活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を第二のポリアルキルアミンと反応させ、これにより二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを具備し、前記第一および第二のポリアルキルアミンは同一であっても異なっていてもよいことを要件とする。
【0031】
本発明の方法により、複素環のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることもできる。一つの態様によれば、工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、前記スフィンゴイド化合物を少なくとも二当量の活性化剤と反応させて、R3及びR4が共に活性化された活性化スフィンゴイド化合物を得て、前記活性化スフィンゴイド化合物を一当量未満のポリアルキルアミンと反応させ、これにより複素環スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることが要件とされる。
【0032】
明らかに、式(I)の抱合体の種々のバリエーションを得るための上記方法の改変は、本発明の一部を形成する。
実例として、本発明のモノ、ジまたは複素環のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体は、図1A−1Dに示される。
【0033】
スフィンゴイドとポリアルキルアミンで形成された抱合体は、第四級アミンを形成するためにメチル化剤と更に反応させることができる。得られた化合物は、形成された抱合体内の第四級、第一級及び/又は第二級アミン間の比に依存して、異なる程度で、正に帯電される。
【0034】
本発明の好ましいLLC化合物は、スペルミンと結合したセラミド、すなわちN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミン(CCS)であり、これは本明細書において略語CCSで表される。CCS中の第一級アミンの濃度を決定するために、TNBSアッセイ[Barenholz Y. et al. Biochemistry 16:2806-10 (1977)]を以下に記載のとおり実施した。
【0035】
図2A−2Bは、TNBSとCCSの酢酸塩との反応生成物のマススペクトルおよび推定化学構造を示す(図2A)。TNP−CCSを形成するためのTNBS誘導体化CCSのマススペクトルによれば、CCSの唯一の第一級アミン(ピーク978.9)はTNBSと反応した。スペルミンの第二のアミノ基は、NMRにより証明されるとおり、スペルミンとセラミドの第一ヒドロキシル基との間でC1においてカルバモイルリンカーに関与し、すなわち、本発明の陽イオン性脂質に2つの第一級アミン基が存在する場合、これらは共にTNBSと反応する。第二級アミンが立体障害のためにTNBSと反応しなかったことを確認するために、スペルミンのみをTNBSと反応させた。図2Bは、スペルミン−(TNP)2のマススペクトルを示し、これは、スペルミンがフリーの第一級アミンの両方においてTNBSと反応したことを示す。分子あたり一つのTNBSが結合したことにより、CCSが単一のTNBS反応性第一級アミンを含有することが確認された。
【0036】
CCSフリーベース(非プロトン化)の推定M.W.は766であり、これはマススペクトルで確認された(図2C)。元素分析:C−6.5%;H−11.65%、N−8.01%。
CCSのエタノールにおける溶解性(ベース)も示された。
TLCシステム:クロロホルム:メタノール:酢酸1:25:1.5により、反応生成物として単一種の存在、すなわち実質的に純粋な生成物が示された。
【0037】
上記より、特定のCCS化合物が、単一のフリーの第一級アミンを有し、その化合物のマススペクトルも示す図2Cに表される化学構造を有することが結論づけられた。
【0038】
本発明のメチル化または非メチル化LLC化合物は、ミセルおよびリポソームを含む脂質集合物を形成するための任意の公知の方法により処理されてもよい。かかるプロセシングには、DOPE、コレステロールまたはその他の様々な非陽イオン性脂質を、脂質様化合物に様々なモル比で組込むことが含まれる(非限定的な例)。形成されたリポソームは、50−5000 nmの直径を有するサイズ不揃いの異種及び異層小胞(UHV;unsized heterogeneous and heterolamellar vesicles)として形づくられてもよい。形成されたUHVは、さらなるプロセシングによって、サイズを小さくして、約50から100nmの直径を有する大きな(より均質な)単層小胞(LUV;large unilamellar vesicle)に変換されてもよい。小胞の構造及び大きさ、例えばそれらの形状及びサイズは、生物学的に活性な物のターゲットへのデリバリーのための媒体としてその効率性に対して重大な影響を及ぼすことができ、すなわち、これらは小胞のトランスフェクション特性を決定する。このため、形成された小胞の構造、UHV(サイズ不揃いの異種)またはLUV(大きな単層)、OLV(オリゴ層)およびMLV(大きなマルチ層)は、一つの重要な因子である。効率的なデリバリーのための別の重要な因子は、LLC化合物のアミン正電荷の量(L+)と、それとともに複合体化した負電荷のオリゴまたはポリアニオンの量(A−)との比である。この比は、荷電した複合体の全体の電荷を決定し、効率的デリバリーのためにその比は、捕捉された/会合した部分に依存して、1000<(L+/A−)<0.1、好ましくは20<(L+/A−)<1、より好ましくは8<(L+/A−)<1.5とすることができる。
【0039】
以下のデータは、本発明の一つの好ましいLLC化合物、酢酸塩(Acetate/)またはクロライド塩(Chloride/)としてのCCS化合物;DOPEと組み合わせたCCS化合物(CCS/DOPEの比2:1);またはコレステロールと組み合わせたCCS化合物(CCS/Chol比2:1)の物理的特性を示す。
【0040】
臨界的ミセル濃度(CMC)
CCS塩(酢酸塩およびクロライド)のCMCを、凝集によるジフェニルヘキサトリエン(DPH)蛍光の変化(増大)により測定した。酢酸塩のCMCは、クロライド塩のものと同じで、いずれも5×10-6 Mであった。
【0041】
集合物サイズ、nm
サイズ(質量−重量)は、非侵襲的バック散乱ALV装置(ALV GmbH)を用いて(ダイナミック光散乱により)測定し、様々な脂質集合調合物の直径は以下のとおり測定された:
CCS クロライド塩: ミセル 25nm;
CCS クロライド/DOPE 2:1 リポソーム 3594nm;
CCS 酢酸塩 ミセル 6nm;
CCS 酢酸塩/DOPE 2:1 リポソーム 498nm;
CCS 酢酸塩/コレステロール 2:1 リポソーム 100nm-5000nm;
【0042】
(様々な塩および様々な対イオンを備えた)リポソームおよびミセルの静電気学
CCSミセルまたはCCS/DOPEリポソームのpKaは、pH感受性のバイレイヤー組込み型蛍光団4−ヘプタデシル7−ヒドロキシクマリン(C17HC)または1.2-ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(7−ヒドロキシクマリン)(HCPE)の解離曲線から測定した (Ψ0HC)[Zuidam & Barenholz (1997) ibid.]。HCPEについて405 nm、C17HCについて380 nmでの蛍光団7−ヒドロキシクマリン(HC)部分の蛍光励起は、イオン化種の量を表し、HCPEについて370 nm、C17HCについて330 nmでの励起は、pH依存性の等吸収点であり、これはリポソームおよびミセルにおけるプローブの総量を表す。蛍光の放射は、上記励起のすべてについて450 nmで測定した。これら2つの比(HCPEについては405/370、C17HCについては380/330)は、HC蛍光団のイオン化の程度を示す。HCの滴定カーブは、HCPEについては蛍光励起強度比I405/I370、C17HCについてはI380/I330を広い範囲のバルクpHでプロットすることにより作成され、これによりHCPEおよびC17HCそれぞれのHCの見かけのpKaを計算することができる。リポソームバイレイヤーおよび/またはミセルにおいてHCのpKaは、以前に記載されたとおりヘンダーソン‐ハッセルバルヒ式に上記滴定曲線を適合することにより計算される [Zuidam & Barenholz (1997) ibid.]。表面電位は、ボルツマンの式に従って、陽イオン性バイレイヤーの強塩基性環境で劇的に起こるHCのpKaのシフトから決定される [Zuidam & Barenholz (1997) ibid.]。
【0043】
【数1】
【0044】
リポソームおよびミセルのζ−電位は、20 mLの10 mM NaCl (pH 6.7) 中に40μLのアリコートを希釈し、測定前の溶液を0.2-μmシリンジフィルター (Minisart, Sartorius, Germany) を通すことにより、Zetasizer 3000 HAS, Malvern Instruments, Malvern, UKを用いて、適用電界における粒子の移動度により25℃で測定した。ζ−電位は、HCPEおよびC17HCにより検知される(実際の表面から更に離れた)シーアの面における電気電位を表す。
【0045】
脂質集合物の静電気学を記載するパラメーターは、表面電気電位(Ψ0HC);表面pH;およびζ−電位を含み、これらはすべて以下の表1に示される。
【0046】
【表1】
【0047】
追跡アッセイ
陽イオン性脂質CCSを、DOPEありまたはなしで(2:1)、4℃でHEPES(pH7.4)中に保存した効果も評価した。図3A−3Dは、様々な追跡アッセイの結果を示す(23日間の追跡)。追跡アッセイは、TNBSテストに基づくものであり、これは、TNBS試薬と第一級アミンとの発色反応に基づく定量アッセイである。
【0048】
特に、図3Aは、DOPEありまたはなしのCCSベースリポソームを保存したときの、(TNP誘導体を形成する)TNBS結合法により追跡される第一級アミンのレベルの追跡結果を示す。DOPEの存在下または非存在下の両方において、LLC化合物から形成される脂質集合物、たとえばCCSおよびCCSとDOPEの混合物が安定であること(すなわち、時間とともに第一級アミンのレベルに実質的な変化がないこと)を、この図から結論づけることができる。
【0049】
図3Bは、HEPESバッファーpH 7.4中で保存した間のゼータ電位の追跡結果を示す。この場合も、ゼータ電位に関して実質的に経時的な変化はみられなかった。これらの結果は、CCS第一級アミノ基の上述の完全性と一致する(図3A)。従って、図3Aおよび3Bに示される極僅かな変化は、少なくとも23日の間、水相中のCCS分散液が化学的に安定であることを反映する。
【0050】
図3Cは、HCPE 405/370蛍光励起強度比の追跡結果を示し、これは、陽イオン性リポソームおよび陽イオン性ミセルの表面pH、並びに電気的表面電位Ψ0(脂質集合物組込み型プローブHCPEの405/370比により表される)が、保存の全期間にわたって変化しなかったことを示し、このことはCCSの表面の安定性を示す。
【0051】
図3Dは、脂質集合物の直径の経時的変化の追跡結果を示す。特に、DOPEなしでは、粒子は比較的小さいままであり、すなわちミセルの形態のままであった。UHVであるCCS−DOPEベースの集合物は、ミセルよりずっと大きく、保存の間に凝集する傾向があり、これによりサイズが増大する。しかし、元のサイズ分布への凝集は、以下に記載するとおり、短時間(10秒)の超音波照射により起こった。
【0052】
図3Eは、トランスフェクション活性の追跡結果を示す。一般に、トランスフェクション活性は、ルシフェラーゼ発現により評価した(トランスフェクションの方法を参照)。保存時の凝集を考慮して(図3D)、リポプレックスの調製前の脂質分散液を、Elma TRANSSONIC 460/Hバスソニケーターで10秒間超音波処理した。2日目および23日目のみを示す。追跡アッセイの結果から得られる結論は、以下のとおりである。
【0053】
− HEPESバッファー(pH 7.4)中に水性分散形態で4℃で保存した時、23日目まで、表面およびゼータ電位について、脂質の分解もアミンの修飾も実質的には起こらなかった。
− 凝集によるトランスフェクション活性の減少が起こった。しかし、これは、10秒の超音波処理による脂質集合物の超音波処理により容易に克服され、この処理により元のサイズ分布に集合体は解離し、新たなプレパレーションレベルまでトランスフェクション効率は完全に回復した。
【0054】
静電気学および水和に対するCCS含有集合物とDNAとの複合体化の効果
様々なCCSベースリポソームとプラスミドDNAとの滴定の結果を図4に示す。滴定は、DNAを添加したことによる、バイレイヤー組込み型C17 HC 380/330蛍光励起の比(450 nmで放射を読む)の変化によりモニターした。図4において、CCSの酢酸塩は「アセテート(Acetate)」と称され、CCS酢酸塩/DOPE(モル比2:1)調合物は「アセテート/DOPE」と称され、CCSクロライド塩は「クロライド」と称され、結合したクロライド塩とDOPE(比2:1)は「クロライド/DOPE」と称される。
【0055】
水和のレベル
プラスミドDNAの添加前と添加後の様々なCCSベースの脂質集合物の水和レベルは、「ラウルダン励起一般偏光(Laurdan excitation general polarization)」の変化をモニターすることにより測定し、これによれば高い値が得られるほど水和レベルは低い。
【0056】
ラウルダンGP蛍光測定
6-ドデカノイル-2-ジメチルアミノナフタレン(ラウルダン)は、Lambda(Graz, Austria)から購入し、リポソームバイレイヤーの水和レベルの変化を追跡するために使用した。このプローブのナフタレン蛍光団は、バイレイヤーの親水性疎水性境界面に位置し、その12-炭素鎖が、バイレイヤー脂質アシル鎖に平行に配置される。ラウルダンの励起および放射スペクトルは、脂質と会合したときに脂質の相に強く依存する。様々な相におけるスペクトルの違いは、脂質のヘッド基の領域にあるLD相より水和していないSO相によるものである。脂質相および水和レベルは、一般化偏光(generalized polarization; GP)と称されるラウルダン定常状態の蛍光パラメーターにより記載することができる[Hirsch-Lerner D, Barenholz Y. Biochim Biophys Acta. 1461(1):47-57 (1999)]。脂質小胞におけるラウルダンGP蛍光スペクトルは、ラウルダンの蛍光部分のまわりの水分子の数に依存する。励起GPは、以下の式に従って計算した:
GP340=(I440−I490)/(I440+I490) (1)
式中、I440およびI490は、放射波長440および490 nmおよび励起波長340 nmでの蛍光放射強度である。
【0057】
ラウルダン標識リポソームのアリコートを、1 mLの20 mM HEPESバッファー(pH 7.4)で所望の濃度に希釈し、次いで様々な量のDNAを添加した。蛍光測定は、1-cm光路を用いてPerkin Elmer LS50B ルミネセンス分光計で25℃の温度で行った。得られた結果を図5に示し、これは、リポソームCCS/DOPEまたはミセルCCSが高い水和状態にあるが、DNAの添加により脱水すること(リポプレックスの形成)を示し、これは、ラウルダンGP値の急激な増大により表される。
【0058】
CCS−ベースの脂質集合物およびリポプレックスの形態学および構造
最後に、光学顕微鏡検査(図6A−6C)およびCryo-TEM画像(図7A−7D)を得、各画像を示す:図6Aは、CCSクロライド塩:Chol(2:1の比)から構成されるリポソームの光学顕微鏡画像を示し;図6Bは、CCSクロライド塩:DOPE(2:1の比)から構成されるリポソームの光学顕微鏡画像を示し;図6Cは、CCS酢酸塩:DOPE(2:1の比)から構成されるリポソームの光学顕微鏡画像を示し、図7Aは、Hepes中のCCSクロライド塩ベースのミセルのCryo-TEM画像を示し、図7Bは、CCSクロライド:DOPE(2:1の比)から構成されるHepes中のリポソームのCryo-TEM画像を示し、図7Cは、CCSクロライド:Chol(2:1の比)から構成されるHepes中のミセルのCryo-TEM画像を示す。
【0059】
CCSベースの脂質集合物の核酸およびタンパク質デリバリー効率を、生物学的活性により測定した。CCSベースの核酸およびアミノ酸リポプレックスの生物学的効率。
【0060】
本発明のLLC化合物によるトランスフェクションは、たとえば、ワクチン接種、遺伝子発現のための細胞への遺伝子の導入、遺伝子およびオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド療法を促進することができる。更に、本発明のLLC化合物により形成されたリポソームおよびミセルは、マウスの腹腔マクロファージ表面において、高レベルのMHC IIおよび同時刺激分子(たとえばB7およびCD40)の発現を効果的に誘導することが見出された(データ示さず)。これらは、増殖性抗原提示に必須である。中性および陰イオン性リポソームは、かかる能力を保持していないと思われる。
【0061】
よって、本発明により形成される複合体は、適切な賦形剤、好ましくは生理的に許容可能な担体とともにデリバーされる生物学的に活性な物を担持する複合体を含む薬学的組成物の一部とすることができる。かかる薬学的組成物は、たとえが静脈内、皮下、局所的、鼻内、経口、眼内または筋内へのインビボ投与、並びに生体外(ex vivo)およびインビトロ(細胞培養)適用のために調製することができる。
【0062】
本発明に従って生理的に許容可能な担体とは、好ましくは生物学的に活性な分子にも抱合体にも反応せず、かつ生物学的に活性な分子と抱合体の効果的なデリバリーに必要とされる、不活性な無毒の固体又は液体物質を一般に表す。本発明の組成物の一部を形成する集合物は、典型的には懸濁液または分散液の形態である。
【0063】
生理的に許容可能な担体の非限定的な例には、水、生理的食塩水、5%デキストロース(グルコース)、10%スクロースなどが含まれ、これらは単独であるか、又は微量(10%まで)のアルコール(エタノールなど)を加える。
【0064】
LLC化合物媒体の効率的な使用の更なる具体例は、細胞、とりわけ癌細胞へのオリゴヌクレオチドの移送である。癌治療の一つのアプローチは、癌細胞の機能を妨害するために、アンチセンスの形態で特定のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドをターゲットにすることである。
【0065】
本発明のLLC媒体の別の使用は、ワクチン接種である。従って、抗原を、LLC化合物と複合体化して(媒体内にカプセル化するか、脂質様層に捕捉するか、媒体の表面に会合させるか、または単に複合体化して)、抗原性の物(ワクチン)を形成することができる。複合体は、免疫賦活剤または免疫応答の所望の調整(刺激、増大など)を促進する任意の他の生物学的に活性な化合物を更に含んでいてもよい。
【0066】
とりわけ、CCS−抗原(生物学的に活性な分子)調合物は、抗原のみ;負電荷のリポソームと会合した抗原、またはDOTAP(モノ陽イオン性脂質)ベースのワクチンよりも、薬物動態に優れていることを見出した。CCSベースのワクチンは、抗原を鼻のリンパ節にデリバーすることができる唯一のワクチンであった(データ示さず)。
【実施例】
【0067】
化学
例1:N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミン(CCS)の合成
(i)N−パルミトイルスフィンゴシン(1.61g、3mmol)を、加熱しながら、無水THF(100mL)中に溶解した。透明な溶液を室温とし、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート(1.92g、7.5mmol)を添加した。攪拌しながら、DMAP(0.81g、7.5mmol)を添加し、この反応をさらに16時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、n−ヘプタンから再結晶された残留物から、融点73−76℃の白色粉末として、ジスクシニミジルセラミジルカーボネート1.3g(68%)を得た。
【0068】
(ii)スペルミン(0.5g、2.5mmol)及びジスクシニミジルセラミジルカーボネート(0.39g、0.5mmol)を、攪拌しながら、無水ジクロロメタン中に溶解した後、触媒量の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)で処理した。室温で16時間、この溶液を攪拌し、溶媒を蒸発させ、残留物を水で処理し、濾過し、真空中で乾燥させると、0.4g(82%)の未精製物質が得られ、60:20:20のブタノール:AcOH:H2O溶出液を用いた、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって、これをさらに精製した。
【0069】
(iii)前記化合物内の第四級アミンを得るために、DMS又はCH3Iで工程(ii)の生成物をメチル化することができる。
【0070】
例2:他の合成手順
上記手順と同様に、以下の手順を適用することができる。
図1Aに図示されている直鎖一置換セラミド−スペルミン抱合体の合成
対応する1,3−ジ−O−スクシニミジル誘導体を得るために、DMAPの存在下で、1当量のセラミドを、2.5当量のジスクシニミジルカーボネートと反応させる。
このようにして得られたジスクシニミジル誘導体を、触媒量のDMAPを用いて、室温で、当量のスペルミンと反応させて、図1Bの3−一置換−セラミド−スペルミン抱合体を得る。
【0071】
図1Bに図示されている直鎖二置換セラミド−スペルミン抱合体の合成
上述したように調製された一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルスフィノギド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80°で、2.5当量のスペルミンと反応させる。1,3−二置換CCSが、このようにして得られる。
【0072】
図1Cに図示されている直鎖二置換セラミド−分枝スペルミン抱合体の合成
上述のように調製された一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルセラミド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80°で、2.5当量のα−ω−ジプロテクトスペルミンと反応させる。
プロテクションを除去し、1,3−「分枝」二置換セラミド−スペルミン抱合体を得る。
【0073】
図1Dに図示されている直鎖二置換セラミド−環状スペルミン抱合体の合成
上述のように調製した一当量の1,3−ジ−O−スクシニミジルセラミド誘導体を、触媒量のDMAPの存在下において、80℃で、0.75当量のスペルミンと反応させる。
【0074】
例3:N−パルミトイルD−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンの化学的特徴付け
本発明の例示の陽イオン性脂質においてCCS分子あたりの第一級アミンを測定するためにTNBSアッセイを使用した。従って、試験化合物CCS(100 mL)を重炭酸塩溶液(500μL、pH8.4)に添加し、その後TNBS(1200 nmol、20μL)を添加した。その混合物を30分間インキュベートした。インキュベーション後、酢酸を添加した(20μL)。赤い沈殿物を沈降させ、アセトニトリル中に溶解した。特定の化合物TNP−CCSのマススペクトルを得た。構造解析のためにTNBSアッセイをスペルミンについても実施した。
【0075】
以下のパラメーターを例示の脂質集合物について決定した:
− 臨界的ミセル濃度(CMC)を、凝集によるジフェニルヘキサトリエン(DPH)の蛍光の変化を測定することにより決定した;
− リポソームサイズを、非侵襲的バック散乱ALV装置(ALV GmbH)を用いてダイナミック光散乱により決定した。
− CCSベースの集合物の表面電位および表面pHを、集合物に組み込まれたC17HCまたはヒドロキシクマリンホスファチジルエタノールアミン(HCPE)のヒドロキシクマリン(HC)部分の解離曲線から決定した。
− ゼータ電位を、Zetasizer(Malvern装置)を用いて10 mM NaCl中で決定した。
【0076】
CCSベース脂質集合物のプラスミドDNAによる滴定
C17HCを組込んだリポソームおよびミセルのアリコート(典型的には20−40 nmol)を、HEPES 20 mM pH 7.4を含有する1 cm石英キュベットに添加し、励起波長380/330の比を、450 nmにおける放射で記録した。その後、種々の量のDNAを添加して、図4に表示の電荷比を作成した。この間、380/330比を記録した。これに関連して以下の追加のパラメータを決定した:
【0077】
− DNAとの複合体化によるCCSベース脂質集合物の水和レベルの変化
− プラスミドDNA添加前および添加後の水和を、Hirsch Lerner and Barenholzに記載されるとおり、ラウルダン励起一般偏光(Laurdan excitation general polarization)の変化を測定することによりモニターした[Hirsch Lerner and Barenholz (1999) ibid.]。この手法によれば、高い値が得られるほど水和のレベルが低いことを示す。
【0078】
CCSベース脂質集合物の水性分散液中の安定性
CCS単独(ミセル)またはCCSとDOPEとの組合せ(モル比2:1 UHVリポソーム)をHEPESバッファー(pH 7.4)中で4℃で保存した効果を測定した。第一級アミンのレベルを、保存時間とともにTNBS結合で測定し、新たに水和した調製物の%として記載した。ゼータ電位の変化、HCPE蛍光450 nm/370 nm励起比の変化、および形成された脂質集合物(リポソームまたはミセル)のサイズの変化を測定した。
【0079】
保存アッセイ
対応の脂質集合物(CCSまたはCCS/DOPE2:1)を、Hepesバッファー中で再構成することにより上述のとおり調製し、4℃で0〜21日間保存した。21日目には、保存の6つの時点があり、以下のパラメーターについて同時にアッセイした:
表面電位(HCPE)
ゼータ電位
サイズ
第一級アミン(TNBS)
トランスフェクション効率
【0080】
その結果を図3A−3Eに示す。試験したパラメーターすべてのうち、唯一の物理的変化は、時間とともにリポソームが凝集したことであり、これによりトランスフェクション活性は可逆的に低下したが、この効果は、リポソームの短時間(10秒)の超音波処理により克服することができた。静電気的パラメーター(ゼータ電位および表面電位)および第一級アミンの数は変化しなかった。
【0081】
材料
モノ陽イオン性脂質DOTAP(N−(1−(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル),N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド);中性脂質DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルエタノールアミン)は、すべてAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL)から得た。
4-ヘプタデシル-7-ヒドロキシクマリンは、Molecular Probes(Oregon USA)から得た。
コレステロールはSigmaから得た。
【0082】
pH感受性プローブ7-ヒドロキシクマリン−ホスファチジルエタノールアミン(HCPE)は、Molecular Probes(Eugene, OR)のアミン標識法に従って、DOPE第一級アミンを7-HCスクシニミジルエステル(Molecular Probes)で標識することにより調製した。
トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)およびHepesは、Sigmaから得た。
6-ドデカノイル-2-ジメチルアミノナフタレン(laurdan)および6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン(DPH)は、Molecular probesから得た。
【0083】
DNA
以下のプラスミドを使用した:
(1)CMVプロモーター−エンハンサーの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする商業的に入手可能なプラスミドpQBI 25(Qbiogene, Montreal, Canada);
(2)pCMV-EYFPmito、ミトコンドリア局在シグナルを保持する改良型黄色蛍光タンパク質 (EYFP) をコードするプラスミドを、BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CAから購入した。ルシフェラーゼ遺伝子をコードするpCMV Lucは、875 bp CMV プロモーター-エンハンサーフラグメントをpGL3エンハンサーに挿入することにより構築した (Promega, Madison, WI);
すべてのプラスミドは、E.coliで繁殖させ、QIAGEN EndoFree Plasmid Megaキット (QIAGEN, Hilden, Germany)を用いて、製造者のプロトコールに従って、無菌の内毒素フリーの形態で精製し、記載されるとおりに純度およびトポロジーについて分析した (Even-Chen and Barenholz, 2000)。
【0084】
顕微鏡検査
リポソームのサイズ分布の研究のため、一滴の脂質分散液をスライドガラス上に置き、カバーガラスで覆い、Nomarskyコントラストを用いて透過モードで観察した。スライドガラスは、Olympus FV300 レーザー走査顕微鏡 (Olympus Optical, Japan) で観察した。凝集物のサイズを見積もるため、3-μmラテックスビーズ(Sigma)を調合物に添加した。
【0085】
凍結透過型電子顕微鏡検査
各実験のために、10 mM陽イオン性脂質の濃度の脂質分散液を、20 mM HEPESバッファーpH 7.4中で調製した。ガラス状化試料を、25℃、100%相対湿度において、管理環境ガラス化システム(CEVS)で調製した。試料を、Philips CM120顕微鏡で120kVで操作して調査した。-178℃以下の顕微鏡において試料を平衡化し、その後、電子ビーム照射ダメージを最小にするために低用量イメージングモードで調査し、位相差を高めるために4-7 nmの僅かなアンダーフォーカスで記録した。Oxford CT-3500冷却ホルダーを使用した。画像は、Digital Micrograph 3.1 software packageを用いてGatan MultiScan 791 CCDカメラによりデジタルで記録した。
【0086】
DPHを用いたCMC測定
テトラヒドロフラン中に溶解したDPHを、0.25 ml%の濃度で、脂質分散液の濃度の範囲まで添加し、蛍光を360 nm励起および430 nm放射を用いてPerkin Elmer LS-50Bで記録した。その後、蛍光を脂質濃度の関数としてプロットし、CMC領域の上または下に二本の直線を横断させることにより、CMCポイントを曲線の傾きの変化として検出した。
【0087】
NMRスペクトロスコピーを用いたスペルミン−セラミド抱合体の構造解析
一次元NMR研究
NMR実験を実施し、5 mmコンピューター切替え可能なプローブを備えた500 MHzスペクトロメーターの共鳴振動数でVarian Inovaでスペクトルを集めた。化学シフトを、それぞれ1Hおよび13C振動数について500 MHzを用いて標準的VNMRソフトウェアを用いて処理した。セラミドサンプルをCDCl3中に溶解し、セラミド−スペルミン抱合体を三酢酸塩として使用し、重水素化メタノール中に溶解した(CD4O)。セラミド−スペルミン抱合体の配座解析のため、0℃−40℃の温度範囲を調査した。全てのケースにおいて、水和溶媒のピークを内部基準として使用した。
【0088】
二次元NMR実験
1H−1H相関分光法(COSY)および1H−13C異核多量子コヒーレンス(HMQC)実験を、インバースプローブを用いて行った。溶解性の障害物のため、重水素化メタノール中の三酢酸塩(CD4O)を使用した。表3および4に示されるアサインメント(ナンバリングについては図8参照)は、二次元実験とともに、一次元1H−および13C−NMRから集められたデータの結果である。スペルミンには二つの可能な抱合部位が存在し、一つはヒドロキシル基HO(C1)であり、もう一つはHO(C3)である。ウレタン基を介したスペルミンのセラミド部分への抱合は、誘導体化ヒドロキシル基に隣接して存在するプロトンに対して電子求引性効果を誘導すると仮定される。NMR解析により、H1aおよびH1bプロトンは実際に大きく影響を受け、それらのピークはそれぞれδ=4.17および3.9 ppmにシフトダウンすることが明らかになった(セラミドにおける5.36 ppmおよび5.56 ppmと比較して)。H2は僅かに影響を受け、δ=3.9にシフトした(セラミドではδ=3.7 ppm)。13C−NMRにおいて、C1がδ=64.2にシフトダウンすることが観察された(出発物質セラミドではδ=62.29)。HO(C1)を介した抱合は、H3およびC3についてマイナーなシフトしか引き起こさなかった(それぞれ、セラミドでのδ=4.06および73.94 ppmからスペルミン−セラミドでのδ=3.8および72.18 ppm)。
【0089】
このケースにおいて、HO(C3)およびアミドはいずれも、使用した溶媒からの重水素と迅速に交換したため、明らかには検出されなかった。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
図9A−9Bは、それぞれ、本発明のCCS化合物の1H−NMRおよび13C−NMRを示し、これらは上記結果に対応する。
本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の内容は、本明細書の開示の中に含まれるものとして読まなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1A−1Dは、式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の一般的な定義に包含される、複数の可能な化学構造、「直鎖」、「分枝」又は「環状」の脂質様陽イオン性(LLC)化合物を示す。図1Aは、単一のポリアルキルアミン鎖に連結されたスフィンゴイド骨格(セラミド)を示し、図1B及び図1Cは、2つのポリアルキルアミン鎖に連結された同一のスフィンゴイド骨格を示し、図1Dは、同一の骨格を示すが、2つのヒドロキシル部分を介して、単一のポリアミン鎖が連結されて、環状ポリアミン抱合体を形成している。
【図2A】図2A−2Cは、本発明の特定のLLC化合物、セラミドカルバモイルスペルミン(CCS)とも称されるN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンを、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)と結合させてTNP-CCSを形成したもの(図2A)、またはそのもの(図2C)のマススペクトルを、スペルミンをTNBSと結合させてTNP-スペルミン-TNP(スペルミン(TNP)2)を形成したもの(図2B)と比較して示す。各化合物の化学構造も示す。
【図2B】図2A−2Cは、本発明の特定のLLC化合物、セラミドカルバモイルスペルミン(CCS)とも称されるN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンを、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)と結合させてTNP-CCSを形成したもの(図2A)、またはそのもの(図2C)のマススペクトルを、スペルミンをTNBSと結合させてTNP-スペルミン-TNP(スペルミン(TNP)2)を形成したもの(図2B)と比較して示す。各化合物の化学構造も示す。
【図2C】図2A−2Cは、本発明の特定のLLC化合物、セラミドカルバモイルスペルミン(CCS)とも称されるN−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンを、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)と結合させてTNP-CCSを形成したもの(図2A)、またはそのもの(図2C)のマススペクトルを、スペルミンをTNBSと結合させてTNP-スペルミン-TNP(スペルミン(TNP)2)を形成したもの(図2B)と比較して示す。各化合物の化学構造も示す。
【図3A】図3A−3Eは、CCSベース脂質集合物をHepesバッファーpH 7.4中で4℃で保存したときの追跡アッセイの棒グラフを示す。 図3Aは、新たに調製した(=新たに水和させた)調合物中に見出される第一級アミンのパーセントで表される、保存分散液中のCCS第一級アミンの濃度の変化を示す。
【図3B】図3Bは、保存の間のゼータ電位の変化を示す。
【図3C】図3Cは、膜に組み込まれたpH感受性プローブHCPE(1,2-ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(7−ヒドロキシクマリン))の励起波長405 nm/380 nmの比の変化を示す[Zuidam NJ, Barenholz Y. Biochim Biophys Acta 1329: 211-22 (1997); Zuidam NJ, Barenholz Y. Biochim Biophys Acta 1368: 115-28 (1998)]。
【図3D】図3Dは、脂質集合物の直径の変化を示す。
【図3E】図3Eは、トランスフェクション活性の変化を示す。
【図4】図4は、pHおよび電気的ポテンシャルプローブ、4−ヘプタデシル−7−ヒドロキシクマリン(C17HC)により決定される電気的表面ポテンシャルに対する、CCSを含む様々な脂質集合物(リポソームおよびミセル)とプラスミドDNAとの滴定の効果を示す。
【図5】図5は、プラスミドの添加前(脂質)および添加後(2種類の比の「脂質/DNA」)の、様々なCCSベース集合物(酢酸塩、酢酸塩/DOPEの組合せ、クロライド塩、またはクロライド塩/DOPEの組合せ)の水和レベルを示し、これは、蛍光プローブLaurdanの一般励起蛍光偏光により半定量的に測定される[Hirsch-Lerner D. and Barenholz Y. Biochim Biophys Acta. 1461(1):47-57 (1999)]。
【図6】図6A−6Cは、光学顕微鏡画像を示す。とりわけ、図6Aは、CCSクロライド塩:Chol(比2:1)を含むリポソームの画像を示し、図6Bは、CCSクロライド塩:DOPE(比2:1)を含むリポソームの画像を示し、図6Cは、CCS酢酸塩:DOPE(比2:1)から構成されるリポソームの画像を示す。
【図7A】図7A−7Dは、Cryo−TEM画像を示す。とりわけ、図7Aは、CCSクロライド塩ベースの集合物(虫のようなミセル)の画像を示す。
【図7B】図7Bは、CCSクロライド:DOPE(比2:1)を含むHepesバッファーpH 7.4中のリポソームの画像を示す。
【図7C】図7Cは、CCSクロライド:Chol(比2:1)を含むリポソームの画像を示し、図7Dは、CCSクロライド:Chol(比2:1)を含むリポソームの別の画像を示す。
【図8】図8は、CCSの中心領域の構造およびナンバリングを示し、本明細書に記載の二次元NMR実験から得られるCCSの1Hおよび13Cのアサインメントを含む。
【図9】図9A−9Bは、本明細書に記載されるとおりCCSの1H−NMR(図9A)および13C−NMR(図9B)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又はR3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【請求項2】
R1が−C(O)R5基を表し、R5が定義されたとおりである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R2及びR5が、独立に、直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Wが−CH=CH−を表す、請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、R1が−C(O)R5基を表し;R5が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;Wが−CH=CH−を表し;R2が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;R3及びR4が、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R3が水素を表してもよく、ここでR6及びR7が、独立に、水素または一般式(II)を有するポリアルキルアミンを表す:
【化2】
(式中、
R8はC1−C4アルキルを表し;
R9は、水素又は式(II)のポリアルキルアミン側鎖を表し、前記R8及びR9は、式(II)のポリアルキルアミン中において、各アルキルアミン単位−R8NR9−について同一であっても異なっていてもよく;
nは3から6までの整数を表す)化合物。
【請求項6】
R3が水素原子である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R3及びR4が共に、請求項1に記載される同一または異なるポリアルキルアミンを表す、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、R1が−C(O)R5基を表し;R5が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;Wが−CH=CH−を表し;R2が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;R3及びR4が、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、ここでR6及びR7が、独立に、アルキルアミンまたは一般式(II)を有するポリアルキルアミンを表す:
【化3】
(式中、
R8はC1−C4アルキルを表し;
R9は、水素又は式(II)のポリアルキルアミン側鎖を表し、前記R8及びR9は、式(II)のポリアルキルアミン中において、各アルキルアミン単位−R8NR9−について同一であっても異なっていてもよく;
nは3から6までの整数を表す)化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、R1が−C(O)R5基を表し;R5が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;Wが−CH=CH−を表し;R2が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;R3及びR4が、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−[NH−R8]n−NH−C(O)−を含む複素環を形成する、
(ここで
R8はC1−C4アルキルを表し、各アルキルアミン単位−NH−R8−について前記R8は、同一であっても異なっていてもよく;
nは3から6までの整数を表す)化合物。
【請求項10】
前記R8がC3−C4アルキルである、請求項5〜9の何れか1項に記載の化合物。
【請求項11】
N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
図2Cに図示される化学構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の調製方法であって、
【化4】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又は
R3は、水素を表し;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す);
(a)式(I)のスフィンゴイド化合物(式中、R1、R2およびWは上述の意味を有し、R3およびR4は、独立に、水素原子またはオキソ保護基を表し、前記R3およびR4の少なくとも一つは水素原子を表す)を提供すること;
(b)工程(a)の前記化合物を、必要に応じて触媒の存在下で、活性化剤と反応させて、活性化されたR3および/またはR4基を得ること;
(c)前記活性化スフィンゴイド化合物をポリアルキルアミンと反応させること;
(d)前記保護基を除去し、これにより上述の式(I)の前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること
を含む方法。
【請求項14】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、請求項1〜12の何れか1項に記載されるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記保護基が、トリフルオロアセトアミド、fmoc、カルボベンゾキシ(CBZ)、ジアルキルホスホロアミデートから選択される第一級アミン保護基である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化剤が、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート、ジ−若しくはトリ−ホスゲン又はイミダゾール誘導体から選択される、請求項13〜15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記活性化が、触媒の存在下で行われ、前記触媒が4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、テトラゾール、ジシアノイミダゾールまたはジイソプロピルエチルアミンから選択される、請求項13〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得るための請求項13〜17の何れか1項に記載の方法であって、
工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、
前記方法が、式(I)の化合物を、少なくとも二当量のポリアルキルアミンと反応させて、同一のポリアルキルアミン置換基を備えた二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを含む、方法。
【請求項19】
二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得るための請求項13〜17の何れか1項に記載の方法であって、
工程(a)においてR3及びR4の少なくとも一つは保護基で保護され、
前記方法が、活性化スフィンゴイド化合物を第一のポリアルキルアミンと工程(c)において反応させること;R3またはR4の保護基を除去して、未保護のオキソ基を得ること;未保護の化合物を活性化剤と反応させて、活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること;および前記活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を第二のポリアルキルアミンと反応させ、これにより二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを含み、前記第一および第二のポリアルキルアミンは同一であっても異なっていてもよい、方法。
【請求項20】
複素環スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得るための請求項13〜17の何れか1項に記載の方法であって、
工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、
前記スフィンゴイド化合物を少なくとも二当量の活性化剤と反応させて、R3及びR4が共に活性化された活性化スフィンゴイドを得て、前記活性化スフィンゴイド化合物を一当量未満のポリアルキルアミンと反応させ、これにより複素環スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得る、方法。
【請求項21】
図1A〜1Dに図示されるスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の何れか一つを得るための請求項13〜20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を含む薬学的組成物:
【化5】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又は
R3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【請求項23】
薬学的に許容可能な担体を更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、請求項1〜12の何れか1項に記載されるものである、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
生物学的に活性な物質を含む、請求項22〜24の何れか1項に記載の組成物。
【請求項26】
式(I)の化合物の捕捉剤としての使用:
【化6】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又は
R3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【請求項27】
前記化合物が、請求項1〜12の何れか1項に記載されるものである、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記化合物が、請求項13〜21の何れか1項に記載されるとおり調製される、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
請求項1から12の何れか1項に記載の化合物と、捕捉剤としての前記化合物の使用説明書とを備えたキット。
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又はR3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【請求項2】
R1が−C(O)R5基を表し、R5が定義されたとおりである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R2及びR5が、独立に、直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Wが−CH=CH−を表す、請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、R1が−C(O)R5基を表し;R5が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;Wが−CH=CH−を表し;R2が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;R3及びR4が、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R3が水素を表してもよく、ここでR6及びR7が、独立に、水素または一般式(II)を有するポリアルキルアミンを表す:
【化2】
(式中、
R8はC1−C4アルキルを表し;
R9は、水素又は式(II)のポリアルキルアミン側鎖を表し、前記R8及びR9は、式(II)のポリアルキルアミン中において、各アルキルアミン単位−R8NR9−について同一であっても異なっていてもよく;
nは3から6までの整数を表す)化合物。
【請求項6】
R3が水素原子である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R3及びR4が共に、請求項1に記載される同一または異なるポリアルキルアミンを表す、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、R1が−C(O)R5基を表し;R5が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;Wが−CH=CH−を表し;R2が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;R3及びR4が、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、ここでR6及びR7が、独立に、アルキルアミンまたは一般式(II)を有するポリアルキルアミンを表す:
【化3】
(式中、
R8はC1−C4アルキルを表し;
R9は、水素又は式(II)のポリアルキルアミン側鎖を表し、前記R8及びR9は、式(II)のポリアルキルアミン中において、各アルキルアミン単位−R8NR9−について同一であっても異なっていてもよく;
nは3から6までの整数を表す)化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、R1が−C(O)R5基を表し;R5が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;Wが−CH=CH−を表し;R2が直鎖又は分枝のC12−C18アルキル又はアルケニル基を表し;R3及びR4が、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−[NH−R8]n−NH−C(O)−を含む複素環を形成する、
(ここで
R8はC1−C4アルキルを表し、各アルキルアミン単位−NH−R8−について前記R8は、同一であっても異なっていてもよく;
nは3から6までの整数を表す)化合物。
【請求項10】
前記R8がC3−C4アルキルである、請求項5〜9の何れか1項に記載の化合物。
【請求項11】
N−パルミトイル D−エリスロスフィンゴシル−1−カルバモイルスペルミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
図2Cに図示される化学構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の調製方法であって、
【化4】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又は
R3は、水素を表し;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す);
(a)式(I)のスフィンゴイド化合物(式中、R1、R2およびWは上述の意味を有し、R3およびR4は、独立に、水素原子またはオキソ保護基を表し、前記R3およびR4の少なくとも一つは水素原子を表す)を提供すること;
(b)工程(a)の前記化合物を、必要に応じて触媒の存在下で、活性化剤と反応させて、活性化されたR3および/またはR4基を得ること;
(c)前記活性化スフィンゴイド化合物をポリアルキルアミンと反応させること;
(d)前記保護基を除去し、これにより上述の式(I)の前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること
を含む方法。
【請求項14】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、請求項1〜12の何れか1項に記載されるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記保護基が、トリフルオロアセトアミド、fmoc、カルボベンゾキシ(CBZ)、ジアルキルホスホロアミデートから選択される第一級アミン保護基である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化剤が、N,N’−ジスクシニミジルカーボネート、ジ−若しくはトリ−ホスゲン又はイミダゾール誘導体から選択される、請求項13〜15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記活性化が、触媒の存在下で行われ、前記触媒が4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、テトラゾール、ジシアノイミダゾールまたはジイソプロピルエチルアミンから選択される、請求項13〜16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得るための請求項13〜17の何れか1項に記載の方法であって、
工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、
前記方法が、式(I)の化合物を、少なくとも二当量のポリアルキルアミンと反応させて、同一のポリアルキルアミン置換基を備えた二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを含む、方法。
【請求項19】
二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得るための請求項13〜17の何れか1項に記載の方法であって、
工程(a)においてR3及びR4の少なくとも一つは保護基で保護され、
前記方法が、活性化スフィンゴイド化合物を第一のポリアルキルアミンと工程(c)において反応させること;R3またはR4の保護基を除去して、未保護のオキソ基を得ること;未保護の化合物を活性化剤と反応させて、活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ること;および前記活性化された一置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を第二のポリアルキルアミンと反応させ、これにより二置換スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得ることを含み、前記第一および第二のポリアルキルアミンは同一であっても異なっていてもよい、方法。
【請求項20】
複素環スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得るための請求項13〜17の何れか1項に記載の方法であって、
工程(a)においてR3及びR4は共に水素原子であり、
前記スフィンゴイド化合物を少なくとも二当量の活性化剤と反応させて、R3及びR4が共に活性化された活性化スフィンゴイドを得て、前記活性化スフィンゴイド化合物を一当量未満のポリアルキルアミンと反応させ、これにより複素環スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を得る、方法。
【請求項21】
図1A〜1Dに図示されるスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体の何れか一つを得るための請求項13〜20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
式(I)のスフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体を含む薬学的組成物:
【化5】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又は
R3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【請求項23】
薬学的に許容可能な担体を更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記スフィンゴイド−ポリアルキルアミン抱合体が、請求項1〜12の何れか1項に記載されるものである、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
生物学的に活性な物質を含む、請求項22〜24の何れか1項に記載の組成物。
【請求項26】
式(I)の化合物の捕捉剤としての使用:
【化6】
(式中、
R1は、水素、分枝又は直鎖のアルキル、アリール、アルキルアミン、又は−C(O)R5基を表し;
R2及びR5は、独立に、分枝又は直鎖のC10−C24アルキル、アルケニル又はポリエニル基を表し;
R3及びR4は、独立に、−C(O)−NR6R7基を表し、R6及びR7は、R3及びR4について同一であるか又は異なっており、独立に、水素、又は飽和若しくは不飽和の分枝若しくは直鎖ポリアルキルアミンを表し、前記ポリアルキルアミン中の一以上のアミン単位は第四級アンモニウムであってもよく;又は
R3は、水素であり;又は
R3及びR4は、それらが結合している酸素原子とともに、−C(O)−NR9−[R8−NR9]m−C(O)−を含む複素環を形成し、R8は、飽和又は不飽和のC1−C4アルキルを表し、R9は、水素又は式−[R8−NR9]n−のポリアルキルアミンを表し、前記R9又は各アルキルアミン単位R8NR9は、前記ポリアルキルアミン中において同一であっても異なっていてもよく;
n及びmは、独立に、1から10までの整数を表し;
Wは、−CH=CH−、−CH2−CH(OH)−又は−CH2−CH2−から選択される基を表す)。
【請求項27】
前記化合物が、請求項1〜12の何れか1項に記載されるものである、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記化合物が、請求項13〜21の何れか1項に記載されるとおり調製される、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
請求項1から12の何れか1項に記載の化合物と、捕捉剤としての前記化合物の使用説明書とを備えたキット。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2006−527763(P2006−527763A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516809(P2006−516809)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000536
【国際公開番号】WO2004/110980
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(399042546)イッスム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム (10)
【出願人】(505467904)バイオラブ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000536
【国際公開番号】WO2004/110980
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(399042546)イッスム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム (10)
【出願人】(505467904)バイオラブ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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