説明

スポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムスポンジ

【課題】 スポンジ成形時の収縮率が小さく、未架橋成分のブリードアウトのない、微細で均一な連続気泡を有するスポンジを形成し得るスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】 (A)(A1)分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖され、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さない、ポリジオルガノシロキサン、および、(A2)分子鎖側鎖にアルケニル基を2個以上有するポリジオルガノシロキサンからなるアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサン、(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、(C)水と無機系増粘剤からなる混合物、(D)乳化剤、(E)ヒドロシリル化反応触媒および(F)硬化遅延剤からなることを特徴とするスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物およびこれを架橋・硬化してなるシリコーンゴムスポンジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムスポンジは耐熱性、耐候性に優れ、軽量であり熱伝導率も低いことから自動車部品;複写機やプリンター等の画像形成装置のロールやベルト;各種シール部品に使用されている。従来、熱分解性有機発泡剤や各種の揮発成分を配合したシリコーンゴム組成物がシリコーンゴムスポンジの製造に使用されていたが、金型を用いた成形が難しく、金型キャビティ形状の再現性に乏しいという問題があった。
【0003】
特開2005−62534号公報には、水と界面活性剤を含有する付加反応硬化型の定着ローラ用シリコーンゴムスポンジ形成性組成物が記載されている。しかし、この組成物は、水を均一・安定にシリコーンゴム組成物に分散させることが困難なことから、調製が難しく、また、得られた組成物の保存安定性も乏しいという問題があった。
【0004】
また、特開2002−114860号公報には、ヒドロシリル化反応架橋性のシリコーンゴム組成物に水を含有した吸水性ポリマーを配合した、シリコーンゴムスポンジ形成性組成物が記載されている。また、WO2005/085357国際公開パンフレットには、ヒドロシリル化反応架橋性のシリコーンゴム組成物、水溶性ポリマーの水溶液および乳化剤からなるシリコーンゴムスポンジ用エマルション組成物が記載されている。これらのスポンジ形成性組成物は、加熱等により硬化・架橋して含水状態のシリコーンゴム成形体を形成し、次いで加熱等により水を除去することでシリコーンゴムスポンジを形成することができる。しかし、これらのスポンジ形成性組成物では、配合するポリマーに起因して、成形時の金型汚れが発生したり、得られるスポンジの耐熱性が悪化したり、外観不良を起こしたりするという問題があった。また、得られるスポンジ気泡の細かさも十分ではなかった。
【0005】
特開2004−346248号公報には、ヒドロシリル化反応架橋性のシリコーンゴム組成物、スメクタイトクレーを含有する水および乳化剤からなるシリコーンゴム用エマルション組成物が記載されている。しかし、この組成物には、得られるスポンジ成形物の収縮率が大きく、金型キャビティ形状の再現性に乏しいという問題があり、また、得られるスポンジ気泡の細かさや均一性も十分ではなかった。
【特許文献1】特開2005−62534号公報
【特許文献2】特開2002−114860号公報
【特許文献3】国際公開第2005/085357号パンフレット
【特許文献4】特開2004−346248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スポンジ成形時の収縮率が小さく、未架橋成分のブリードアウトのない、微細で均一な連続気泡を有するスポンジを形成し得るスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物は、
(A)(A1)分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖され、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さない、ポリジオルガノシロキサン 0〜90質量部、(A2)分子鎖側鎖にアルケニル基を2個以上有するポリジオルガノシロキサン 10〜100質量部
からなるアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサン 100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン((B)成分中ケイ素原子に結合した水素原子のモル数が、前記(A)成分中のアルケニル基1モル当たり、0.4〜20となる量)、
(C)水と無機系増粘剤からなる混合物 10〜250質量部、
(D)乳化剤 0.1〜15質量部、
(E)ヒドロシリル化反応触媒(本組成物を架橋させるのに十分な量)
および
(F)硬化遅延剤 0.001〜5質量部
からなることを特徴とする。
【0008】
また、上記スポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物は、さらに(G)シリカ微粉末を(A)成分100質量部に対して20質量部以下の範囲で含有することが好ましい。
【0009】
また、上記(C)成分は、水とスメクタイトクレーの混合物であることが好ましい。また、スメクタイトクレーとしては、スメクタイトクレーとアニオン性ポリマーとからなる親水性複合物が好ましい。また、蒸気(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が1.5〜20の範囲であることが好ましい。
【0010】
本発明のシリコーンゴムスポンジは、上記スポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物を架橋・硬化してなることを特徴とする。
【0011】
また、上記シリコーンゴムスポンジは、収縮率が10%以下であることが好ましく、平均気泡径が1μm以上50μm未満であり、連続気泡率が90%以上であることが好ましい。また、上記シリコーンゴムスポンジは、画像形成装置の定着部材の弾性材料用に好適に使用でき、前記定着部材としては、ローラやベルトであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリコーンゴム組成物は、架橋・硬化して微細で均一な連続気泡を有するシリコーンゴムスポンジを形成し、得られたシリコーンゴムスポンジの収縮率が小さいという特徴を有する。また、成形時に未架橋成分がブリードアウトしないので金型汚れや外観不良を起こしにくいという特徴を有する。また、前記シリコーンゴムスポンジは、微細で均一な連続気泡を有するという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(A)成分は、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を有するアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンであり、本発明のシリコーンゴム組成物の主剤である。(A)成分は(A1)分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖され、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないポリジオルガノシロキサンと(A2)分子鎖側鎖にアルケニル基を2個以上有するポリジオルガノシロキサンからなる。(A1)成分と(A2)成分の配合比は(A1):(A2)=0:100〜90:10の範囲であり、(A1):(A2)=0:100〜75:25の範囲であることが好ましく、(A1):(A2)=10:90〜50:50の範囲であることがより好ましい。(A1)成分と(A2)成分を併用することで、本発明のシリコーンゴム組成物から形成されるシリコーンゴムスポンジの収縮率が著しく改善するからである。
【0014】
(A1)分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖され、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないポリジオルガノシロキサンの粘度は25℃において、0.1〜100Pa・sであることが好ましく、0.1〜40Pa・sの範囲がより好ましい。なお、(A1)成分のポリジオルガノシロキサンは、極少量の分子鎖末端が水酸基やアルケニル基以外の有機基に置換されていてもよい。(A1)成分のポリオルガノシロキサンのシロキサン骨格は、直鎖状でも分岐状でもよく、また両者の混合物でもよいが、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しから成り、分子鎖両末端がアルケニルジオルガノシロキシ基で封鎖された、実質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0015】
(A1)成分中のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。また、(A1)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基以外の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフロロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基等の、通常、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8の、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、好ましくはメチル基である。
【0016】
(A2)分子鎖側鎖にアルケニル基を2個以上有するポリジオルガノシロキサンの粘度は25℃において、0.1〜100Pa・sであることが好ましく、0.1〜40Pa・sの範囲がより好ましい。(A2)成分中アルケニル基は分子鎖側鎖の他に、分子鎖末端に存在してもよい。なお、(A2)成分のポリジオルガノシロキサンは、少量の分子鎖末端が水酸基などに置換されていてもよい。(A2)成分のポリオルガノシロキサンのシロキサン骨格は、直鎖状でも分岐状でもよく、また両者の混合物でもよいが、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しから成り、分子鎖両末端がアルケニルジオルガノシロキシ基またはアルケニル基を含まないトリオルガノシロキシ基で封鎖された、実質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0017】
(A2)成分中のアルケニル基は、前記(A1)成分と同様である。また、(A2)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基以外の有機基も前記(A1)成分と同様である。
【0018】
(B)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンであり、本発明シリコーンゴム組成物の架橋剤である。ケイ素原子に結合した水素原子は末端シロキサン単位、および/または、ポリマー鎖中のシロキサン単位に位置することができる。このポリオルガノシロキサンは直鎖状のシロキサンポリマーであることが好ましく、RHSiO2/2単位、および/または、RXSiO1/2単位(これらの式中、Rは、上記(A)成分における、アルケニル基以外の有機基と同様の炭素数1〜10の、好ましくは炭素数1〜8の、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、好ましくはメチル基である。Xは水素原子もしくはRを表す。)を分子中に必須に含有し、RSiO2/2単位を任意に含有するものである。
【0019】
(B)成分中に存在するケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル数の合計量は、前記(A)成分中のアルケニル基1個当たり、0.4〜20個であることが好ましく、0.4〜5.0個であることがより好ましい。したがって、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の相対量は、この関係が維持されるように、例えば、1〜1000質量部の範囲で適宜決定されることが好ましい。なお、本発明のシリコーンゴム組成物から形成されるシリコーンゴムスポンジ圧縮永久歪が改善されることから、前記水素原子(即ち、SiH基)の合計量は、前記(A)成分中のアルケニル基1個当たり、1.5〜20個であることが好ましく、1.8〜5個であることが特に好ましい。
【0020】
(C)水と無機系増粘剤からなる混合物は、本発明のシリコーンゴム組成物を架橋・硬化して得られるシリコーンゴムを多孔質状、すなわちシリコーンゴムスポンジとするための成分である。(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して10〜250質量部であり、好ましくは20〜200質量部であり、より好ましくは40〜150質量部である。(C)成分の配合量が10質量部未満であると、本発明のシリコーンゴム組成物を架橋硬化してなるシリコーンゴムが多孔質状、すなわちシリコーンゴムスポンジとなり難く、250質量部を超えると、形成されるシリコーンゴムスポンジの強度が損なわれるからである。
【0021】
(C)成分において水は、本発明のシリコーンゴム組成物を架橋・硬化した後、硬化物中から除去されることでシリコーンゴムを多孔質状、すなわちシリコーンゴムスポンジとするための成分である。(C)成分中の水は清浄であればよく、その種類は制限されない。例えば、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水などが例示される。(C)成分の(A)成分への分散が安定するという点から、(C)成分中の水はイオン交換水であることが好ましい。
【0022】
(C)成分中の増粘剤は、天然または合成の無機系増粘剤であり、水と混合することで(C)成分の粘度を高め、(C)成分の(A)成分中への分散を容易にし、(A)成分中の(C)成分の分散状態を安定させるために配合される。具体的には、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライトおよびノントロナイト等の粘土鉱物を主成分とするベントナイトなどの天然または合成のスメクタイトクレー;および、これらとポリアクリル酸のようなアニオン性ポリマーなどとからなる親水性複合物が例示される。その配合量は、(C)成分中の水100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0023】
中でも、ベントナイト(モンモリロナイト)、ヘクトライトクレー、サポナイトクレーなどのスメクタイトクレーであることが好ましい。水に分散させたときの粘度の上昇が大きく、後述する(D)乳化剤の使用量を少なくすることができるからである。このような、スメクタイトクレーとしては、例えば水熱合成品であるスメクトン(登録商標:クニミネ工業(株)製)、ルーセンタイト(登録商標:コープケミカル(株)製)、天然精製品であるクニピア(登録商標:クニミネ工業(株)製)、ベンゲル(登録商標:(株)ホージュン製)、ベントン(登録商標:エレメンティス(株)製)、ビーガム(登録商標:バンダービルト社製)等が入手可能である。これらのスメクタイトクレーのpHはシリコーンゴムスポンジの耐熱性を維持する点からpH5.0〜9.0であることが好ましい。
【0024】
(D)成分の乳化剤は、従来公知のものが使用でき、アニオン系、カチオン系、両性イオン系及びノニオン系のいずれでもよい。具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドのようなノニオン系界面活性剤;ポリシロキサン・ポリオキシエチレングラフト共重合体のようなポリオルガノシロキサンからなるノニオン系界面活性剤;脂肪族アミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩のようなカチオン系界面活性剤;高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリエチレングリコール硫酸エステル塩のようなアニオン系界面活性剤;カルボキシベタイン型またはグリシン型の両性イオン系界面活性剤が例示される。中でも、後述する(E)成分を触媒とするヒドロシリル化反応に影響が少ないことからノニオン系界面活性剤であることが好ましい。
【0025】
これらの乳化剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。乳化剤のHLB値(2種以上を併用するときは、その重量平均HLB値)が、1以上10以下のものが好ましく、1.5以上6未満であることがより好ましく、3.5以上6未満であることが特に好ましい。(D)乳化剤の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜15質量部であり、好ましくは0.2〜3質量部である。
【0026】
(E)ヒドロシリル化反応触媒としては、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒及びロジウム系触媒から選ばれる少なくとも1種の触媒であることが好ましく、より具体的には、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、これらを熱可塑性樹脂中に分散させた粉末状白金系触媒などの白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等が使用され、特に好ましくは白金系触媒である。(E)成分は触媒として有効量(いわゆる触媒量)であればよく、具体的には、例えば前記(A)及び(B)成分の合計量に対して触媒の量(金属元素分として)が質量換算で0.01〜500ppm、好ましくは0.1〜100ppm程度の割合で配合される。
【0027】
(F)硬化遅延剤は、本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物の硬化速度や作業可使時間を調整するための成分であり、具体的には、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどの炭素−炭素三重結合を有するアルコール誘導体;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどのエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサンなどのアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、ビニル−トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シランなどのアルキン含有シランが例示される。
【0028】
(F)成分の配合量は、本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物の使用方法や成形方法に応じて適宜選択される。一般的な配合量としては、(A)成分100質量部に対して0.001質量部〜5質量部の範囲である。
【0029】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物から形成されるシリコーンゴムスポンジの強度を向上させるという点から、さらに(G)補強性シリカ微粉末を配合することが好ましい。(G)成分としては、特に限定されないが、ヒュームドシリカ及び沈降シリカが好適である。また、これらのシリカ微粉末は、例えば鎖状ポリオルガノシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、各種オルガノシラン等で表面処理されたものであってもよい。本発明の補強性シリカ微粉末の比表面積は、50〜350m2/g、特に80〜250m2/gであることが好ましい。なお、比表面積は、例えばBET吸着法により求めることができる。
【0030】
(G)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、20質量部以下(即ち、0〜20質量部)であることが好ましく、より好ましくは0〜15質量部、さらに好ましくは0〜10質量部である。
【0031】
その他に、従来シリコーンゴムに添加配合することが周知とされる各種の添加剤、例えば、ヒュームド酸化チタン等の補強充填剤;粉砕石英、結晶性シリカ、珪藻土、アスベスト、アルミノ珪酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等の非補強充填剤;これらの充填剤をオルガノシラン、ポリオルガノシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理したもの;アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを配合してもよい。また必要に応じて顔料、耐熱剤、難燃剤、内部離型剤、可塑剤、受酸剤、無官能のシリコーンオイル等のシリコーンゴム組成物に公知の添加剤を配合してもよい。また、本発明のシリコーンゴム組成物は水を含むので、防腐剤や防錆剤を配合してもよい。
【0032】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記各成分あるいはこれらに必要に応じて各種添加剤を配合した組成物を公知の混練手段により均一に混合することにより容易に製造することができる。ここで使用するミキサーとしてはホモミキサー、パドルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、真空混合攪拌ミキサー等が例示されるが、(C)成分と(D)成分を(A)成分に十分に分散させることができるものであれば特に限定されるものではない。
【0033】
かかる(A)〜(F)成分、または(A)〜(G)成分を含有して成るシリコーンゴム組成物は、例えば次のような方法で製造することができる。なお、(G)成分を配合する場合は、予め、(A)成分の一部と(G)成分とを配合したシリカマスターバッチを調製した後、残余の(A)成分と他の成分を混合することが好ましい。
【0034】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(F)成分および必要に応じて(G)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(E)成分を例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて配合する方法;(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および必要に応じて(G)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(B)成分と(F)成分を例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて配合する方法;(A)成分、(C)成分、(D)成分および必要に応じて(G)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(B)成分、(E)成分、(F)成分を例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて配合する方法が例示される。
【0035】
保存安定性の点から、(I)(A)、(C)、(D)、(E)および必要に応じて(G)成分からなり(B)成分と(F)成分を含まない組成物、(II)(A)、(C)、(D)、(F)および必要に応じて(G)成分からなり(B)成分と(E)成分を含まない組成物、(III)(B)成分からなり(C)、(E)および(F)成分を含まない組成物;または、(I)(A)、(C)、(D)、(E)および必要に応じて(G)成分からなり(B)成分と(F)成分を含まない組成物、(II)(F)成分からなり(B)、(C)、(E)成分を含まない組成物、(III)(B)成分からなり(C)、(E)および(F)成分を含まない組成物からなる3成分型スポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物として保存し、成形に供する直前に組成物(I)〜(III)を例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合することが好ましい。また、(I)(A)、(C)、(D)、(E)および必要に応じて(G)成分からなり(B)成分と(F)成分を含まない組成物と(II)(B)および(F)成分からなり、(C)成分と(E)成分を含まない組成物からなる2成分型スポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物として保存し、成形に供する直前に組成物(I)と(II)を例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合することが好ましい。
【0036】
本発明のシリコーンゴム組成物から種々の方法でシリコーンゴムスポンジを形成することができる。具体的には、例えば、本発明のシリコーンゴム組成物を成型用の金型のキャビティに注入し、加圧下で100℃未満、好ましくは50〜90℃の温度に保持して含水状態のシリコーンゴム成形体を成形し、金型から取り出して120〜250℃で加熱して含水状態のシリコーンゴム成形体から水を除去することにより、微細で均一な連続気泡を有するシリコーンゴムスポンジを得ることができる。また、本発明のシリコーンゴム組成物をノズルからロッド状に吐出し、例えば80〜100℃の熱水中に導入して硬化させ、硬化物を熱風乾燥することにより紐状のシリコーンゴムスポンジを作製することもできる。また、本発明のシリコーンゴム組成物を樹脂フィルム等の剥離性基材上にコーティングし、例えば50〜120℃に加熱して硬化させ、熱風乾燥して水を除去する、あるいは、加熱して水を除去しつつ硬化させた後、剥離性基材を除くことによりシリコーンゴムスポンジシートを形成することができる。あるいは、本発明のシリコーンゴム組成物を合成繊維織物やガラスクロス上にコーティングし、例えば50〜120℃に加熱して硬化させ、熱風乾燥して水を除去する、あるいは、加熱して水を除去しつつ硬化させることによりシリコーンゴムスポンジコーティング布を形成することができる。
【0037】
また、本発明のシリコーンゴム組成物は、収縮率が小さく金型キャビティ形状の再現性に優れ、微細で均一な連続気泡を有するスポンジを形成することから、画像形成装置の定着部材の弾性材料として有用である。定着ロールの場合、芯金に上記シリコーンゴム組成物を架橋・硬化させてなるシリコーンゴムスポンジ層を形成するものであるが、この場合、芯金の材質、寸法等はロールの種類に応じて適宜選定し得る。定着ベルトの場合、無端ベルト上に上記シリコーンゴム組成物を架橋・硬化させてなるシリコーンゴムスポンジ層を形成するものであるが、この場合、無端ベルトの材質、寸法等はベルトの種類に応じて適宜選定し得る。
【0038】
また、上記シリコーンゴムスポンジ層の外周に更にフッ素樹脂層やフッ素ゴム層を設けてもよい。この場合、フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成され、上記シリコーンゴム層を被覆する。ここでフッ素系樹脂コーティング材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製、フッ素系ラテックス)等が挙げられ、またフッ素系樹脂チューブとしては、市販品を使用し得、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−ポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらのうちで特にPFAが好ましい。
【0039】
なお、上記シリコーンゴム層の厚さは適宜選定されるが、シリコーンゴムのゴム弾性を有効に利用する点で0.05〜80mmであることが好ましく、特に0.1〜50mmであることが好ましい。また、その上に形成されるフッ素樹脂又はフッ素ゴム層の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0040】
本発明のスポンジは、スポンジ成形物の金型キャビティ形状再現性に優れるという点から、収縮率が10%以下であることが好ましい。収縮率は、金型で成型したスポンジ試験片の長さ(L1)と対応する金型キャビティの長さ(L0)から以下の式で求めることができる。
収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100
【0041】
本発明のスポンジは、加熱による熱変形(熱膨張)が小さく、変形回復性に優れる点から、90%以上の気泡が連続気泡であることが好ましい。ここで気泡が連続気泡であるかどうかは、スポンジを水中に沈め、減圧することで、連続気泡中の空気を水に置換して調べることができる。スポンジ中の全気泡に対して連続気泡の占める割合、すなわち連続気泡率は水の密度を1.0g/cmとして以下の式で求めることができる。
連続気泡率(%)={(吸水した水の質量)/(気泡部分体積)}×100
式中気泡部分体積は以下の式で求めることができる。
気泡部分体積(cm)={(スポンジ質量)/(スポンジ密度)}−{(スポンジ質量)/(ゴム密度)}
式中ゴム密度は、(C)成分と(D)成分を含まない他は同様にして調製したシリコーンゴム組成物を架橋・硬化させて得られるシリコーンゴム成形体の密度を測定することで得られる値であり、スポンジ気泡壁の密度を表す。
【実施例】
【0042】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例中粘度は25℃における測定値である。
<保存安定性>
25℃で1週間静置した後、目視にて観察し、混合物が均一な状態を保っているものを安定、水相の分離が認められたものを分離と評価した。
<密度>
JIS K6268に準じて測定した。
<硬さ(Asker C)>
JIS K7312に規定されたタイプC硬さ試験機を用いた試験方法に準ずる。厚さ6mmの試験片を2枚重ねて使用した。
<引張強さ、伸び>
JIS K6251に準じて測定した。
<圧縮永久歪み>
JIS K 6262に準じて、180℃、25%圧縮という条件で、22時間後の圧縮永久ひずみを測定した。
【0043】
<気泡状態>
圧縮永久歪測定用試験片の断面を目視にて観察し、断面全体に渡って気泡状態が均一なものを均一、一部過大気泡が認められるものを不均一、断面に多数の過大気泡が認めら試験片表面に亀裂が生じたものを破裂と評価した。
<平均気泡サイズ>
硬さ測定用試験片をカミソリ刃で切断した中心部分を走査型電子顕微鏡にて観察し、0.04mm面積当り(気泡の数は200〜300個程度)の気泡の直径を測定して平均(数平均)を求め平均気泡径を測定した。また、平均気泡径測定時に認められた最大の気泡の気泡径を最大気泡径とした。なお、気泡が繋がって扁平な層状の空孔が多く認められ、気泡の直径の測定が困難な場合を層状と評価し、平均気泡径と最大気泡径は測定しなかった。
<収縮率>
長さ 70mm、幅 50mm、厚さ 6mmのキャビティを有する金型を用いて成型した、硬さ測定用試験片の長尺方向の長さを測定して、次の式に代入して求めた。
収縮率={(70−測定値(mm))/70}×100
<連続気泡率>
圧縮永久歪み用のシリコーンゴムスポンジ試験片の質量と密度を測定し、次の式に代入して気泡部分の体積を求めた。式中ゴム密度は、(C)成分と(D)成分を含まない他は同様に調製したシリコーンゴム組成物を架橋・硬化してなる圧縮永久歪み用試験片の密度である。
気泡部分体積={(スポンジ質量)/(スポンジ密度)}−{(スポンジ質量)/(ゴム密度)}
さらに、スポンジ片を水中に保持し、−750mmHg減圧下3分間放置して水を吸収させ、吸水した水の質量を計り、水の密度を1.0g/cmとして次の式に代入し連続気泡率を求めた。
連続気泡率(%)={(吸水した水の質量)/(気泡部分体積)}×100
<金型汚れ>
上記収縮率測定用試験片を成形した金型を冷却後、キャビティ内を指蝕して付着物の有無を調べた。成形前と変化無い場合を良好、オイル状の付着物が認められた場合を付着有と評価した。
【0044】
[調製例1]
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン 100質量部、BET比表面積225m/gのフュームドシリカ 40質量部、ヘキサメチルジシラザン 7質量部、水 2質量部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%) 0.2質量部をロスミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下200℃で2時間加熱処理して流動性のあるシリカマスターバッチを調製した。
【0045】
[調製例2]
スメクタイトクレー(有機ポリマー複合親水性精製ベントナイト(pH6.5)、(株)ホージュン製) 1質量部とイオン交換水 99質量部をホモミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合して、水と無機系増粘剤の混合物(c-1)を調整した。
[調製例3]
水溶性ポリマー(アクリル酸ナトリウム、ナカライテスク(株)製)1質量部とイオン交換水 99質量部をディスパーミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合して、水と有機系増粘剤の混合物(c-2)を調整した。
[調製例4]
水溶性ポリマー(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ナカライテスク(株)製)3質量部とイオン交換水 97質量部をディスパーミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合して、水と有機系増粘剤の混合物(c-3)を調整した。
【0046】
[実施例1〜5、比較例1〜5]
シリカマスターバッチ、(A)成分、(C)成分、(D)成分およびその他の原料を表1の配合比でホモミキサー(特殊機化(株)製)に投入し、25℃で均一になるまで混合した。得られた混合物の一部を保存し、保存安定性を調べた。ついで、得られた混合物に(B)成分、(E)成分および(F)成分を配合し脱気してスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物を調製した。得られたスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物を圧縮成形機を用いて90℃/10分の条件下で架橋・硬化させ、含水状態の各種試験片を作製した。次にこれらの試験片を200℃で4時間、開放系に放置して試験片中の水を除去し、シリコーンゴムスポンジ試験片を得た。これらのシリコーンゴムスポンジ試験片を用いて、密度、硬さ、引張強さ、伸び、圧縮永久ひずみ、収縮率、連続気泡率を測定した。その結果を表1に示した。
【0047】
【表1】


【0048】
以下に表1中の語句を説明する。
シリカマスターバッチ
調製例1で調製したシリカマスターバッチ。乾式シリカ含有量約27質量%。
[A成分]
A−1成分
a−1:粘度2,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン。ビニル基含有量 0.23質量%。
A−2成分
a−2:粘度7,500mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体。ビニル基含有量約0.31質量%
a−3:粘度350mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体。ビニル基含有量約1.17質量%
[B成分]
b−1:動粘5.0mm/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体。ケイ素原子結合水素原子含有量約0.74質量%
b−2:動粘度15mm/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体。ケイ素原子結合水素原子含有量約0.82質量%。
b−3:動粘度63mm/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体。ケイ素原子結合水素原子含有量約0.70質量%。
【0049】
[C成分]
c−1:調製例2で調製した水と無機系増粘剤の混合物。スメクタイトクレー含有量1.0質量%
c−2:調製例3で調製した水と有機系増粘剤の混合物。アクリル酸ナトリウム含有量1.0質量%
c−3:調製例4で調製した水と有機系増粘剤の混合物。カルボキシメチルセルロースナトリウム含有量3.0質量%
[D成分]
d−1:ノニオン系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、商品名:レオドールSP−O10V、花王社製)。HLB4.3。
d−2:ノニオン系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、商品名:レオドールSP−O30V、花王社製)。HLB1.8。
d−3:ノニオン系界面活性剤(ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、商品名:カオーホモテックスSP−200V、花王社製)。HLB3.0。
d−4:ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、商品名:イオネットDL−200、三洋化成社製)。HLB6.6。
d−5:ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、商品名:イオネットDO−600、三洋化成社製)。HLB10.4。
[E成分]
白金系触媒:白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液。白金金属含有量約4000ppm。
[F成分]
硬化遅延剤:エチニルシクロヘキサノール 2質量部と粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン98質量部の混合物。
[その他成分]
[シリコーンレジン]
(MeSiO1/2(MeViSiO1/2(SiO4/2(式中Meはメチル基を表し、Viはビニル基を表す)で示され、数平均分子量が4300、ビニル基含有量約1.9質量%、(n+m)/r=0.71であるポリオルガノシロキサン。
[顔料マスターバッチ]
ベンガラ(商品名:バイフェロクス、バイエル社製)40質量部と粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン60質量部の混合物。
[防腐剤]
防腐剤1:パラオキシ安息香酸メチル(商品名;オキシベンM、和光純薬工業株式会社製)
防腐剤2:パラオキシ安息香酸エチル(商品名;オキシベンE、和光純薬工業株式会社製)
防腐剤3:パラオキシ安息香酸プロピル(商品名;オキシベンP、和光純薬工業株式会社製)

[SiH基/ビニル基比率]
(A)成分中のケイ素原子結合ビニル基1モルに対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(即ちSiH基)の比を表す。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のような本発明のシリコーンゴム組成物は、成形性に優れ、成形後に微細で均一な連続気泡を有するシリコーンゴムスポンジになるので、電子写真複写機、レーザビームプリンター、オンデマンド印刷機、ファクシミリ等の画像形成装置に使用されるロールやベルトの弾性材料や、断熱材、吸音材、クッション、パッキン、ガスケット、パッドなどの高温下で使用されるスポンジ用途に好適に使用される。ロールやベルトとしては、現像ロール、加圧ロール、ヒートロールが例示される。特には、電子写真複写機、レーザビームプリンター、オンデマンド印刷機、ファクシミリ等の画像形成装置において、転写紙などの転写材上に転写されたトナー画像を加熱・加圧により定着させる定着部に用いられる定着用部材、特に定着用ロールやベルトに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖され、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さない、ポリジオルガノシロキサン 0〜90質量部、(A2)分子鎖側鎖にアルケニル基を2個以上有するポリジオルガノシロキサン 10〜100質量部
からなるアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサン 100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン((B)成分中ケイ素原子に結合した水素原子のモル数が、前記(A)成分中のアルケニル基1モル当たり、0.4〜20となる量)、
(C)水と無機系増粘剤からなる混合物 10〜250質量部、
(D)乳化剤 0.1〜15質量部、
(E)ヒドロシリル化反応触媒(本組成物を架橋させるのに十分な量)
および
(F)硬化遅延剤 0.001〜5質量部
からなることを特徴とする、スポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
さらに(G)シリカ微粉末を(A)成分100質量部に対して20質量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1記載のスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(C)成分が水とスメクタイトクレーの混合物であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
スメクタイトクレーが、スメクタイトクレーとアニオン性ポリマーとからなる親水性複合物であることを特徴とする請求項3記載のスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が1.5〜20の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物を架橋・硬化して得られるシリコーンゴムスポンジ。
【請求項7】
成形後の収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項6記載のシリコーンゴムスポンジ。
【請求項8】
平均気泡径が1μm以上50μm未満であり、連続気泡率が90%以上であることを特徴とする請求項6または請求項7記載のシリコーンゴムスポンジ。
【請求項9】
画像形成装置の定着部材の弾性材料用である事を特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載のシリコーンゴムスポンジ。
【請求項10】
画像形成装置の定着部材がローラまたはベルトである事を特徴とする請求項9記載のシリコーンゴムスポンジ。

【公開番号】特開2008−214625(P2008−214625A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28092(P2008−28092)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】