説明

スマート材料:ナノチューブ検知システム、ナノチューブ検知複合材料、およびナノチューブ検知デバイスによる歪みの検知と応力の測定

本発明は、材料における変位、衝撃、応力、および/または歪みを検出できるカーボンナノチューブを含んだデバイス;このようなデバイスを製造する方法;カーボンナノチューブによって変位、衝撃、応力、および/または歪みを検知/検出/モニタリングするための方法;ならびにこのような方法とデバイスに対する種々の用途;に関する。本発明のデバイスと方法はいずれも、このような応力を検出して定量化するために、機械的に誘起されるカーボンナノチューブ内の電子的な乱れに依拠している。このような検出と定量化は、導電率/コンダクタンスおよび/または抵抗率/抵抗の検出/測定、熱伝導率の検出/測定、エレクトロルミネセンスの検出/測定、光ルミネセンスの検出/測定、ならびにこれらの組み合わせ(これらに限定されない)を含む方法に依拠することができる。このような手法はいずれも、このような特性が、機械的応力および/または機械的歪みに応答してどのように変化するか、ということの理解に依拠している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、カーボンナノチューブを含む材料に関し、さらに詳細には、カーボンナノチューブを含む方法、カーボンナノチューブを含むデバイス、カーボンナノチューブを含む製品に関し、このときカーボンナノチューブは機械的状態に対して敏感に反応する。本研究は、アメリカ航空宇宙局、NASA協同認可番号NCC-1-02038(URETI);およびRobert A.Welch財団(認可番号C1494);からの支援の下で行った。
【0002】
関連特許出願に対するクロスリファレンス
本特許出願は、2003年1月23日付け出願の米国仮出願第60/442,134号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
1991年におけるカーボンナノチューブの発見〔Iijima,“Helical microtubules of graphitic carbon,”Nature,354,pp.56-58(1991)〕および1993年における単層カーボンナノチューブの発見〔Iijima et al.,“Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter,”Nature,363,pp.603-605(1993);Bethune et al.,“Cobalt-catalyzed growth of carbon nanotubes,”Nature.363,pp.605-607(1993)〕以来、これら新規材料の合成、化学、および操作を含めてかなり幅広く研究が行われている。Ebbesen,“Carbon Nanotubes,”Annu.Rev.Mater.Sci.,24,pp.235-264(1994);Zhou et al.,“Materials Science of Carbon Nanotubes: Fabrication,Integration,and Properties of Macroscopic Structures of Carbon Nanotubes,”Acc.Chem.Res.,35(12),pp.1045-1053(2002);およびDai,“Carbon Nanotubes: Synthesis,Integration,and Properties,”Acc.Chem.Res.,35(12),pp.1035-1044(2002);を参照。これら多くの研究の目的は、カーボンナノチューブの、興味をそそる特性の開発を容易にすることにある。Yakobson et al.,“Fullerene Nanotubes: C1,000,000 and Beyond,”American Scientist,85,pp.324-337(1997);Ajayan,“Nanotubes from Carbon,”Rev.,99,pp.1787-1799(1999);およびBaughman et al.,“Carbon Nanotubes-the Route Toward Applications”Science,297,pp.787-792(2002);を参照。
【0004】
カーボンナノチューブの電子的特性は、曲げによって引き起こされる歪みでかき乱されることが明らかになっており、このような乱れは反応性の増大という形で顕在化する。Ausman et al.,“Nanostressing and Mechanochemistry,”Nanotechnology,10,pp.258-262(1999);およびRuoff et al.,“Mechanical Properties of Carbon Nanotubes: Theoretical Predictions and Experimental Measurements,”C.R.Physique,4,pp.993-1008(2003);を参照。カーボンナノチューブの電気的特性はさらに、高圧(すなわち最大90キロバールまでの圧力)にさらされたときにも非直線的に変わることが示されている。Bozhko et al.,“Resistance vs.Pressure of Single-Wall Carbon Nanotubes,”Appl.Phys.A,67,pp.75-77(1998)を参照。
【0005】
これまでに、幾つかの実験〔Berzryadin et al.,“Multiprobe Transport Experiments on Individual Single-Wall Carbon Nanotubes,”Physical Review Letters,80,4036-4039(1998);Nardelli et al.,“TITLE?,”Physical Review B,60,16334-?(1999);Peng et al.,“Chemical control of nanotube electronics,”Nanotubetechnology,11,57-60(2000);およびTombler et al.,“Reversible electromechanical characteristics of carbon nanotubes under local-probe manipulation,”Nature,405,769-772(2000)〕により、ナノスケールでのSWNTの電子的特性に及ぼす機械的歪みの影響が研究されている。Pengらは、カーボンナノチューブが、曲がり、ねじれ、またはフラット化等の機械的変形を有すること、およびこれらの機械的変形がカーボンナノチューブの電子的特性に影響を及ぼすことを報告している。Tomblerらは、単層カーボンナノチューブをAFMチップによって変形させると、単層カーボンナノチューブの両端間の電圧を2オーダーだけ低下させることができる、と結論付けている。Baughmanらは、カーボンナノチューブフィルム(バッキーペーパーとも呼ばれる)をアクチュエータとして使用した。Baughman et al.,“Carbon Nanotube Actuators,”Science,284,1340-1344(1999)を参照。強誘電性材料や電歪材料と比較して、より小さな作動電圧によってアクチュエータの大きな歪みを達成できる、結論付けている。
【0006】
小さな分子種の吸着に対して導電率や抵抗の変化を伴って反応するセンサーを得るために、化学的吸着物によって引き起こされる電子的な乱れ(electronic perturbations)が利用されてきた。Kong et al.,“Nanotube Molecular Wires as Chemical Sensors,”Science,287,pp.622-625(2000);Collins et al.,“Extreme Oxygen Sensitivity of Electronic Properties of Carbon Nanotubes,”Science,287,pp.1801-1804(2000);および2002年3月18日付け出願のColeらによる米国特許出願第10/100,440号;を参照。ごく最近では、カーボンナノチューブが流量センサーとして使用されており、この場合、ナノチューブを通り過ぎて流れる液体のクーロン場の変動により、ナノチューブの自由電荷キャリヤーが強制的に引っ張られ、これによって流れの方向に沿ってナノチューブサンプル中に電圧が誘起される。Ghosh et al.,“Carbon Nanotube Flow Sensors,”Science,299,pp.1042-1044(2003)を参照。
【0007】
SWNTはラマン活性であり、多くの研究者が、ラマン活性モードに及ぼす応力または歪み影響を研究してきた。最近、ある研究者らが、ナノチューブ中の引張り歪みによる、約1590cm-1でのラマンシフト(Gバンドシフトと呼ばれる)を示す結果を報告している〔Hadjiev et al.,“Raman scattering test of single-wall carbon nanotube compositions,”Applied.Physics Letters,78,3193-3195(2001);Li et al.,“Carbon Nanotube Film Sensor,”Advanced Materials,Submitted(2003)〕。多層カーボンナノチューブに関する類似のラマン研究も報告されている。Wagner et al.,“Stress-induced fragmentation of multiwall carbon nanotubes in a polymer matrix,”Applied Physics Letters,72,188-190(1998);およびSchadler et al.,“Load transfer in carbon nanotube epoxy composites,”Appled Physics Letters,73,3842-3844(1998);を参照。Wagnerとその共同研究者は、SWNTの無秩序性によって引き起こされるラマンD*バンド(〜2610cm-1)の波数のシフト〔グラファイトにおけるブリージング振動モード(a breathing vibrational mode)を反映しており、弾性マトリックス歪みと共に直線的にシフトすることが観察されている〕を観察することによって、ラマン分光法を、カーボンナノチューブを含んだポリマー複合材料中の応力のプローブとして使用できる、ということを示している。Zhao et al.,“The Use of Carbon Nanotubes to Sense Matrix Stresses Around a Single Glass Fiber,”Composites Sci.&Tech.,61,pp.2139-2143(2001);およびZhao et al.,“Direction-Sensitive Strain Mapping with Carbon Nanotube Sensors,”Composites Sci.&Tech.,62,pp.147-150(2002);を参照。しかしながらラマン分光法は、高感度で精巧な装置を必要とする難儀な方法である。さらに、この方法は、単にカーボンナノチューブの電子構造の乱れだけでなく、カーボンナノチューブの振動モードの乱れにも依拠する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
機械的応力/機械的歪みをマクロスケールで検出・モニターすることができ、電気的、光電子的、または発光的な変化において現れる電子の乱れに対して感受性のあるセンサーは極めて有用である。このようなセンサーは、自動車から、航空宇宙用、住宅用、および商業用ビルディングまでの広範囲にわたる構造用途において大きな影響を及ぼすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カーボンナノチューブ自体における、または材料もしくは製品における変位、衝撃、応力、および/または歪みを検出することができるカーボンナノチューブを含んだデバイス;このようなデバイスを製造する方法;変位、衝撃、応力、および/または歪みをカーボンナノチューブによって検知/検出/モニターするための方法;およびこのような方法とデバイスに対する種々の用途;に関する。本発明のデバイスと方法は一般に、このような応力/歪みを検出して定量化する上で、機械的に誘起されるカーボンナノチューブ内の電子的な乱れに依拠する。このような検出と定量化に依拠することができる方法としては、導電率/コンダクタンスおよび/または抵抗率/抵抗の検出/測定、熱伝導率の検出/測定、エレクトロルミネセンスの検出/測定、光ルミネセンスの検出/測定、ならびにこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。このような方法はいずれも、上記のような特性が、機械的応力および/または機械的歪みに応じてどの程度変化するか、ということを知ることに依拠している。
【0010】
ある実施態様においては、本発明のデバイス(以後、“センサー”とも呼ぶ)と方法は、複数のカーボンナノチューブと前記カーボンナノチューブに取り付けられたプローブ電極を含む。ある実施態様においては、これらの電極は2箇所だけに取り付けられるが、他の実施態様においては4箇所に取り付けられる(すなわち4点プローブ)。このようなプローブ電極は、あるタイプの電圧によって検出される変化に基づいたカーボンナノチューブセンサーの電気的特性の変化、あるいはプローブ電極を介した接触によるマルチメーターデバイス(multi-meter device)の電気的特性の変化によって変位、応力、および歪みを識別および/または定量化するよう機能する。
【0011】
ある実施態様においては、本発明のセンサーと方法は、電磁(EM)放射線の供給源を含む。このような放射線は、光電流(電気プローブによって測定することができる)または光ルミネセンスを誘起することができる。ある実施態様においては、センサーがスペクトル分析器および/または検出器をさらに含む。このような分析器/検出器を使用して、光ルミネセンスおよび/またはエレクトロルミネセンスを分析/検出することができる。
【0012】
ある実施態様においては、本発明のセンサーと方法は、熱の供給源と熱伝導率検出器を含む。このような実施態様においては、機械的状態の検知は、ある種の変位、応力、または歪みの結果としての、センサー部位両端間の熱伝導率の変化に基づいている。
【0013】
本発明のある実施態様においては、センサーは、カーボンナノチューブのマット、フィルム、または“バッキーペーパー”を含む。ある実施態様においては、カーボンナノチューブが他の材料と共に分散および/またはブレンドされ、場合によっては複合材料が形成される。ある実施態様においては、電子的特性を調整するための、および/または他の材料中への組み込みを容易にするための検討において、カーボンナノチューブが精製され、および/または化学的もしくは物理的に修飾される。ある実施態様においては、カーボンナノチューブをベースとするこのようなセンサーを他の材料中に組み込むと、多機能有用物(a multi-functional utility)が得られる。これらの実施態様においては、カーボンナノチューブは、検知能力のほかに、より高い強度やより良好な温度管理等の他の特性を有することがある。
【0014】
ある実施態様においては、機械的応力および/または機械的歪みに関して検知される材料の表面に本発明のセンサーが取り付けられるか又は加えられる。これらの実施態様の幾つかにおいては、センサーは、必要に応じて表面を横切って移動するか、移動させられるか、または移行するように造り上げることができる。これとは別に、あるいは上記の実施態様に加えて、幾つの実施態様においては、本発明のセンサーを検知される材料中に埋め込むか又は組み込むことができる。
【0015】
ある実施態様においては、本発明のセンサーは極めて小さい〔ミクロ電気機械的システム(MEMS)に適した、さらにはナノ電気機械的システム(NEMS)にさえ適した寸法を有する〕。このような種々のデバイスを使用して、材料内の応力/歪みを検知することができる。他の実施態様においては、単一のセンサーが、大きな表面積を覆っている被膜またはフィルムを含んでよい。
【0016】
本発明のセンサーと方法は、応力/歪み/変位の検知とモニタリングに使用できそうないかなる分野に対しても適用可能である。このようなセンサーは、臨界荷重状態を変えるための分散検知(distributed sensing)に対して使用することができ、このときセンサーは、損傷を検知し、保護システム〔たとえば、エアバッグやデプロイアブル・シールド(deployable shield)など〕を開始させ、荷重を調節し、荷重を分析し、そして種々のシステムを制御するように製造することができる。さらに、組み込みが容易なこのようなデバイスは、これまで想定されていない分野において使用できる可能性がある。なぜなら、従来の製造上の制約(たとえば、コスト、サイズ、および一体化可能性など)を克服しているからである。このようなセンサーに対する代表的な用途としては、飛行機、宇宙船、自動車、ビルディング、橋、ダム、および他の構造物における応力と歪みの検出があるが、これに限定されない。
【0017】
上記の説明は、本発明の特徴をかなり大まかに記載したものであり、以下に記載する本発明の詳細な説明を読めばより理解を深めることができる。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴と利点を以下に説明する。
本発明とその利点をより完全に理解するために、添付図面を参照しつつ以下に説明する。
【0018】
前述したように、本発明は、材料における変位、衝撃、応力、および/または歪み(すなわち機械的状態)を検出できるカーボンナノチューブを含んだデバイス;このようなデバイスの製造法;変位、応力、および/または歪みをカーボンナノチューブによって検知/検出/モニタリングするための方法;およびこのような方法とデバイスに対する種々の用途;に関する。このようなデバイスと方法の新規性は、カーボンナノチューブ内の機械的に誘起される電子の乱れを検出し、これによって応力/歪みを定量化する、という点にある。
【0019】
本明細書で使用している“機械的状態”とは、ある種の機械力が加えられることで材料もしくは物体中に引き起こされる状態を表わしている。このような状態としては、変位、応力、および歪み等があるが、これらに限定されない。このような機械的状態はさらに、他の幾つかのタイプの化学的もしくは物理的な原因(たとえば、腐食や落雷による損傷など)によって引き起こされる材料保全性の変化の結果として誘起されることもある。本明細書で使用している“変位”は一般に、全体としての材料もしくは物体に対する、材料もしくは物体の一部のある種の移行を表わしている。
【0020】
本明細書で使用している“センサー”は、検出とモニタリングを行うことができるデバイスを表わしている(連続的な検出、またはある時間にわたる個別間隔での検出)。このようなセンサーはさらに、レスポンスを既知の値の応力、歪み、および/または変位と関係付けることによってセンサーが検知するということを“定量化する”(すなわち測定する)ように造り上げることができる。このような関係は“較正”と呼ばれている。本発明による“検知素子”は、機械的状態または機械的状態の変化に応答するデバイスの一部である。本発明によれば、検知素子はカーボンナノチューブを含むが、検知プロセスにおいて積極的役割を果たしても果たさなくてもよい他の材料を含んでもよい。
【0021】
本発明によれば、カーボンナノチューブ(CNT)は、公知のいかなる方法(たとえば、アーク法、レーザーオーブン法、化学蒸着法、フレーム法、およびHiPco法など)によっても製造することができ、また種々の形態(たとえば、すす、粉末、繊維、および“バッキーペーパー”など)をとってよい。このようなカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、二層カーボンナノチューブ、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、炭素フィブリル、カーボンナノチューブル(carbon nanotubule)、カーボンナノ繊維、気相成長炭素繊維、およびこれらの組み合わせ物があるが、これらに限定されない。カーボンナノチューブは、種々の長さ、直径、カイラリティー、または層数を有してよく、また端部がオープンであってもキャップされていてもよい。さらに、カーボンナノチューブはさらに、種々の手法で化学的に官能化させることができ、このとき化学的官能化は前記ナノチューブの電子的特性を調整するよう作用し、および/または化学的官能化は前記ナノチューブの操作を容易にするよう作用する。
【0022】
本発明によれば、化学的に官能化されたカーボンナノチューブは、上記カーボンナノチューブのいずれかの化学的修飾を含む。このような修飾は、ナノチューブの末端に対してなされても、ナノチューブの側壁に対してなされても、あるいはそれらの両方に対してなされてもよい。本発明によれば、化学的修飾としては、共有結合、イオン結合、化学吸着、インターカレーション、界面活性剤相互作用、ポリマーラッピング、カッティング、溶媒和、およびこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。化学的修飾の幾つかの代表的な種類に関しては、Liu et al.,“Fullerene Pipes,”Science,280,pp.1253-1256(1998);Chen et al.,“Solution Properties of Single-Walled Carbon Nanotubes,”Science,282,pp.95-98(1998);Khabashesku et al.,“Fluorination of Single-Walled Carbon Nanotubes and Subsequent Derivatization Reactions,”Acc.Chem.Res.,35,pp.1087-1095(2002);Sun et al.,“Functionalized Carbon Nanotubes:Properties and Applications,”Acc.Chem.Res.,35,pp.1096-1104(2002);Holzinger et al.,“Sidewall Functionalization of Carbon Nanotubes,”Angew.Chem.Int.Ed.,40(21),pp.4002-4005(2001)Bahr et al.,“Covalent chemistry of single-wall carbon nanotubes,”J.Mater.Chem.,12,pp.1952-1958(2002);Gu et al.,“Cutting Single-Wall Carbon Nanotubes through Fluorination,”Nano Letters,2(9),pp.1009-1013(2002);およびO’Connell et al.,“Reversible water-solubilization of single-wall carbon nanotubes by polymer wrapping,”Chem.Phys.Lett.,342,pp.265-271(2001);を参照。
【0023】
本発明のデバイスと方法において使用されるカーボンナノチューブは、本発明のデバイス中に組み込む前に、あるいは本発明の方法にしたがって処理する前に、物理吸着、プラズマ処理、放射線処理、熱処理、加圧処理、およびこれらの組み合わせ(これらに限定されない)を含めた方法によって物理的に修飾することもできる。本発明のある実施態様においては、本発明の方法にしたがって処理する前に、カーボンナノチューブが化学的かつ物理的に修飾されている。
【0024】
本発明のデバイスと方法において使用されるカーボンナノチューブは、製造したままの未加工の形態であってもよいし、あるいは精製法によって精製することもできる。さらに、未加工のカーボンナノチューブと精製したカーボンナノチューブとの混合物も使用することができる。カーボンナノチューブを精製する幾つかの代表的な方法に関しては、Rinzler et al.,“Large-Scale Purification of Single-Walled Carbon Nanotubes:Process,Product,and Characterization,”Appl.Phys.A,67,pp.29-37(1998);Zimmerman et al.,“Gas-Phase Purification of Single-Wall Carbon Nanotubes,”Chem.Mater.,12(5),pp.1361-1366(2000);Chiang et al.,“Purification and Characterization of Single-Wall Carbon naotubes,”J.Phys.Chem.B,105,pp.1157-1161(2001);およびChiang et al.,“Purification and Characterization of Single-Wall Carbon Naotubes(SWNT) Obtained from the Gas-Phase Decomposition of CO(HiPco Process),”J.Phys.Chem.B,105,pp.8297-8301(2001);を参照。
【0025】
一般には、本発明は、物体もしくは材料上の、あるいは物体もしくは材料内の機械的状態を検知および/または分析することができるデバイスと方法を提供する。本発明のデバイスと方法においては、機械的状態の検知と分析に際してカーボンナノチューブが決定的な役割を果たす。機械的状態によって誘起される変形(分子レベルのわずかな変形)の結果としてカーボンナノチューブの電子構造が変化することで検知能力がもたらされる。変形の結果としてのこのような電子構造の変化は、カーボンナノチューブの電子的特性の変化、カーボンナノチューブの熱的特性の変化、およびカーボンナノチューブの光ルミネセンス特性の変化によって検出することができる。本発明のデバイスは、それらが検知している物体もしくは材料とは明確に識別できるが、物体もしくは材料の固有の部分であってもよい。
【0026】
機械的状態を定量化可能な手法で分析するためには、検出可能な熱的特性、電子的特性、および光ルミネセンス特性を完全に理解された機械的状態と関連付けるデータを編集しなければならない。このような理解には、機械的状態の値についての理解だけでなく、相関付け可能なデータが得られる環境(温度、圧力、および雰囲気等)についての完全な理解が必要とされる。このようなデータ編集またはデータベースは、最大で何万(またはそれ以上)というデータポイントを含んでよく、コンピュータのハードウェアとソフトウェアを使用して、このような情報にアクセスしたり、またこのような情報を検索したりすることができる。こうした情報により、不明な状況において観察された熱的特性、電子的特性、および光ルミネセンス特性を比較して定量することができる較正基準が得られる。このような較正データのデータベースが、種々の機械的状態に応じて検知素子が発するレスポンスを理解する上で重要なポイントとなる。
【0027】
ある実施態様においては、本発明のデバイスと方法において使用されるカーボンナノチューブは、本発明の方法とデバイスにしたがって処理または使用する前に、長さ、直径、カイラリティー、導電率、層数、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特性に基づいて選別することができる。Farkas et al.,“Length sorting cut single wall carbon nanotubes by high performance liquid chromatography,”Chem.Phys.Lett.,363,pp.111-116(2002);Chattopadhyay et al.,“A Route for Bulk Separation of Semiconducting from Metallic Single-Wall Carbon nanotubes,”J.Am.Chem.Soc.,125,3370-3375(2003);Bachilo et al.,“Structure-Assigned Optical Spectra of Single-Walled Carbon Nanotubes,”Science,298,2361-2366(2002);およびStrano et al.,“Electronic Structure Control of Single Walled Carbon Nanotubes Functionalization,”Science,301,pp.1519-1522(2003);を参照。
【0028】
ある実施態様においては、本発明は、機械的状態を検出・測定するための方法に関する。このような機械的状態としては、応力、歪み、変位、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。このような方法は、複数のカーボンナノチューブを選択する工程;カーボンナノチューブに電気プローブを取り付ける工程;カーボンナノチューブをある機械的状態にさらす工程;カーボンナノチューブの電気的特性の変化を、電気プローブを使用して測定する工程;そして必要に応じて、こうした電気的特性の変化を、電気的特性の変化と機械的状態とを定量化可能な手法にて関連付けるデータベースと比較し、こうした比較に基づいてこの機械的状態にある値を割り当てる工程;を含む多くの工程を含んでよい。
【0029】
本発明による電気的特性としては、抵抗率、抵抗、導電率、コンダクタンス、およびこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。本発明による電気プローブは、電気的特性を測定可能な方法で適切に検出するいかなるデバイスであってもよい。電気プローブは一般には、2つ以上の電極と電源を含む。ある実施態様においては、電気プローブは4点プローブである。マルチメーターは、本発明のある実施態様において使用できる、他のタイプの電気プローブである。
【0030】
ある実施態様においては、本発明は、機械的状態を検出・測定するためのデバイス(すなわちセンサー)に関し、一般には、複数のカーボンナノチューブ;ナノチューブに連結された電気プローブ;および必要に応じて、電気プローブを使用して得た電気計測値と機械的状態とを、あらかじめ確定された基準(previously measured standards)に基づいた定量化可能な手法にて関連付けるアクセス可能な情報データベース;を含む。本発明による電気プローブは、1つ以上の機械的状態にさらされることの結果としてのカーボンナノチューブの電気的特性の変化を適切に測定する電気プローブであればいかなるタイプの電気プローブであってもよい。ある実施態様においては、電気プローブは4点プローブである。
【0031】
カーボンナノチューブの電子的な乱れが起こると、光ルミネセンススペクトルが変化する、ということが知られている。Suzuki et al.,“Photoemission spectroscopy of single-walled carbon nanotube bundles,”J.Electron Spectroscopy,vol.114-116,pp.225-228(2001);およびO’Connell et al.,“Band Gap Fluorescence from Individual Single-Walled Carbon Nanotubes,”Science,297,pp.593-596(2002);を参照。このような知見を利用して、本出願者らは、光ルミネセンスを介して機械的状態を検知/測定するための方法を発明した。このような方法は一般に、複数のカーボンナノチューブを選択する工程;電磁放射線の供給源を使用してカーボンナノチューブを照射し、発生する光ルミネセンス(光電子放出)を検出/分析する工程;カーボンナノチューブをある機械的状態にさらす工程;光ルミネセンスの変化を検出/測定する工程;および必要に応じて、こうした光ルミネセンスの変化を、光ルミネセンスの変化と機械的状態とを定量化可能な手法にて関連付けるデータベースと比較し、こうした比較に基づいて、この機械的状態にある値を割り当てる工程;を含む。
【0032】
したがって本発明はさらに、光ルミネセンスを介して機械的状態を検知/測定するためのデバイス(センサー)に関する。このようなデバイスは一般に、複数のカーボンナノチューブ;電磁放射線の供給源;光ルミネセンスを検出/分析するための検出器および/またはスペクトル分析器;および必要に応じて、カーボンナノチューブの光ルミネセンス特性の変化と機械的状態とを、あらかじめ確定された基準に基づいた定量化可能な手法にて関連付けるアクセス可能な情報データベース;を含む。
【0033】
光ルミネセンスと機械的状態とを関連付ける方法とデバイスに対し、電磁放射線の供給源は、カーボンナノチューブを含む検知素子がある機械的状態になったときに、検出可能な光ルミネセンス変化を適切にもたらすものであれば、いかなる供給源であってもよい。このような電磁放射線供給源は、単色電磁放射線源、多色電磁放射線源、およびこれらの組み合わせであってよい。ある実施態様においては、電磁放射線源はレーザーである。一般には、光ルミネセンスを誘起させるべくカーボンナノチューブセンサーを照射するのに有用な電磁放射線の波長範囲は約2μm〜約100nmである。
【0034】
光ルミネセンスと機械的状態とを関連付ける方法とデバイスにおいて使用される検出器は、光ルミネセンスの変化を本発明にしたがって検出できるものであればいかなる検出器であってもよい。このような検出器としては、光ダイオード、光ダイオードアレイ、光電子増倍管、PbS検出器、MCT(HgCdTe)検出器、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。ある実施態様においては、複数の検出器が使用される。
【0035】
ある実施態様おいては、光ルミネセンスの変化を分析するのにスペクトル分析器が使用される。本発明によるスペクトル分析器としては、プリズム、回折格子、ホログラフィック回折格子、モノクロメータ、スペクトルフィルタ、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。ある実施態様においては、複数のスペクトル分析器が使用される。ある実施態様においては、スペクトル分析器は、マルチスペクトルの“空間(spatial)”分析を行うことができる。
【0036】
本発明は、本明細書に記載の機械的状態を、カーボンナノチューブを含んだ検知素子の熱伝導率の変化をモニタリングすることによって検知することができる方法に関する。カーボンナノチューブが分子レベルで変形を起こすと、マクロスケールでの熱伝導率の変化として現れる。これらの変形は、センサーに、あるいはセンサーが取り付けられているか又は組み込まれている物体もしくは材料に加えられる機械的状態によって引き起こされる。このような方法は一般に、カーボンナノチューブを含んだセンサーのある部位に熱エネルギー(すなわち熱)を加えること;次いでセンサーの他の部位への熱エネルギーの散逸または移送をモニタリングすること;を含む。
【0037】
本発明はさらに、カーボンナノチューブを含んだ検知素子内の熱伝導率の変化をモニタリングすることによって機械的状態を検知できるデバイスに関する。このようなデバイスは一般に、カーボンナノチューブを含んだ検知素子のほかに、熱の外部供給源と熱伝導率検出器を含む。熱伝導率検出器は、本発明の方法とデバイスにしたがって、直接的もしくは間接的な手法で熱伝導率の検出を適切な形で可能にするものであれば、いかなる熱伝導率検出器であってもよい。ある実施態様においては、熱伝導率検出器は熱電対である。
【0038】
本発明によれば、カーボンナノチューブは、本明細書に記載のセンサーと方法における検知素子(または検知素子の一部)として作用する。下記の実施態様においては、上記の方法、デバイス、または方法とデバイスとの組み合わせのいずれに対しても記載のバリエーションが適用可能であると考えることができる。
【0039】
ある実施態様においては、センサーは、カーボンナノチューブと他の材料を含んだ検知素子を含む。このような他の材料としては、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリマー、球形粒子、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。ある実施態様においては、これらの材料は不活性であるが、他の実施態様においては、これらの材料の少なくとも一部が検知プロセスにおいて積極的役割を果たす。これらの実施態様の幾つかにおいては、カーボンナノチューブを前記他の材料中に組み込むか、あるいはーボンナノチューブを前記他の材料と一体化させる。あらゆる用途に関して、カーボンナノチューブをこのような他の材料中に組み込む方法、あるいはカーボンナノチューブをこのような他の材料と一体化させる方法としては、インクジェット印刷、噴霧、剪断混合、スピンコーティング、浸漬コーティング、初期湿潤(incipient wetting)、共重合、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。
【0040】
ある実施態様においては、本発明のデバイスと方法において使用される複数のカーボンナノチューブはある特定の形態をとっている。このような形態としては、マット、フィルム、アレイ、バッキーペーパー、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。ある実施態様においては、カーボンナノチューブを化学的に誘導体化させる。ある実施態様においては、カーボンナノチューブを整列させる。
【0041】
ある実施態様においては、材料の表面における機械的状態を検知するように、カーボンナノチューブを材料に加えるか又は取り付ける。ある実施態様においては、カーボンナノチューブを、検知しようとする材料に取り付ける前に1種以上の材料(ひとまとめになって検知素子を構成する)に取り付ける。ある実施態様においては、カーボンナノチューブを含んだコーティングまたは“スキン”を表面に施す。他の実施態様においては、カーボンナノチューブを他の材料中に組み込むか又は埋め込む。この他の材料は、検知しようとする材料と同一であっても異なっていてもよい。ある実施態様おいては、カーボンナノチューブを、検知しようとする材料または製品中に組み込む。ある実施態様においては、カーボンナノチューブを、二次元様式、三次元様式、またはこれら2つの組み合わせにて配列する。このようなマトリックス中のカーボンナノチューブは、等方的に、非等方的に、あるいはこれら両方の様式にて配向させることができる。このような配向は、1つ以上の方向にて検知するよう処理することができ、また感度を1つ以上の方向にて高めるよう行うことができる。このような組み込みは、分散法、ブレンディング法、または他の方法によって達成することができる。
【0042】
本発明のある実施態様においては、センサーは極めて小さく、ミクロ電気機械的システム(MEMS)として、あるいはさらにはナノ電気機械的システム(NEMS)として考えることができる。ある実施態様においては、本発明のセンサーと方法は、他のタイプのMEMSデバイスまたはNEMSデバイスと併用して機能するように設計されている。これらセンサーのうちのあるセンサーのサイズが小さいにも関わらず、本発明のセンサーと方法はさらに、センサーを最大限の効果が得られるように配置し、それらのセンサーを移動できるようにし、および/または多数のセンサーを使用することによって、大きな物体(たとえば、ビルディングや飛行機)における機械的状態を検知するよう設計することができる。さらに他の実施態様においては、センサーを巨視的寸法(macroscopic dimensions)で製造することができる。さらに、本発明のセンサーは、機械的状態を複数の方向にて検知する(逐次的に、あるいは一度に全て)よう製造することができる。このような複数方向検知は、複数のセンサーもしくは検知素子を使用しても、あるいは単一のセンサーを使用しても行うことができる。
【0043】
ある実施態様においては、本発明のデバイスと方法において使用されるカーボンナノチューブは、本発明のデバイスおよび/または方法において使用される前に、電子的特性が調整されるよう、および/または、他の材料中への組み込みが容易になるよう精製され、および/または化学的もしくは物理的に修飾される。ある実施態様においては、本発明の検知デバイス中に組み込んだ後に、化学的もしくは物理的修飾を取り除くか又は逆転させる。このような精製は、長さ、直径、カイラリティー、およびこれらの組み合わせによって単離および/または選別することを含んでよい。このような精製は、種々のタイプのカーボンナノチューブを、特定の量または特定の比にて含んでよい。
【0044】
本発明のある実施態様においては、カーボンナノチューブは多機能の役割を果たす。カーボンナノチューブは、センサーとして作用するほかに、構造エンハンサー(structural enhancer)、傷防止コーティング、温度管理のための熱伝導率プロバイダー、静電放電(ESD)管理のための導電率プロバイダー、およびこれらの組み合わせとしても作用する。ある実施態様においては、このようなさらなる有用性をもたらすのはセンサーそれ自体中のカーボンナノチューブであるが、他の実施態様においては、カーボンナノチューブを含んだセンサーを、機能が検知以外の役割を果たすことにある非検知用のカーボンナノチューブと混合する。
【0045】
本発明のある実施態様においては、カーボンナノチューブを含んだセンサーを組み込むことができる材料はポリマーである。ある実施態様においては、本発明のセンサーもしくは検知素子を製造するのに、ポリマー材料中にカーボンナノチューブを組み込む。ある実施態様においては、ポリマー材料を利用して、本発明のセンサーもしくは検知素子を他の材料または表面に取り付ける。本発明によるこのようなポリマー材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、およびこれらの組み合わせ物などがあるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明のある実施態様においては、カーボンナノチューブを含んだセンサーが積層物中に存在する。ある実施態様においては、積層物自体がセンサーである。他の実施態様においては、積層物は、検知される物体もしくは材料である。このような積層物は、1つだけの検知層を含んでもよいし、あるいは幾つかの層(複数方向における検知能力をデバイスに付与する)を含んでもよい。
【0047】
本発明のある実施態様においては、カーボンナノチューブを含んだセンサーを組み込むことができる材料は、金属、合金、半導体、メタロイド、セラミック、ガラス、繊維、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される。
【0048】
本発明のセンサーと方法は、応力/歪み/変位の検知とモニタリングが利用されるいかなる分野に対しても適用可能である。このようなセンサーに対する代表的な用途としては、飛行機、宇宙船、自動車、エンジン、ビルディング、橋、ダム、および他の構造物に対する応力と歪みの検知があるが、これらに限定されない。
【0049】
このような容易に一体化可能なデバイスは、これまでは想定されていない分野においても利用できるものと思われる。なぜなら、従来の製造上の制約(たとえば、コスト、サイズ、および一体化可能性)を克服しているからである。こうした思いがけない用途の例としては、タイヤ、ガスケット、スケール、およびこれらの組み合わせ物などに対する応力と歪みの検知があるが、これらに限定されない。自動車タイヤの場合、タイヤに対する紫外線保護を行うために、一般にはカーボンブラックが30重量%という多量にて加えられる。この一部または全部をカーボンナノチューブで置き換えると、タイヤにより高い強度が付与されるだけでなく、タイヤがパンクを起こしたときにそれを検知するための検知メカニズムももたらされる。このように、ナノチューブは多機能の役割を果たす。
【0050】
ある実施態様においては、センサーは、エアバッグ配備のためのトランスデューサとして使用される。このような幾つかの実施態様においては、エアバッグ配備の作動を促すのは、ある種の応力もしくは歪みの結果としての、本発明のセンサーの両端の電流変化である。類似の用途としては、パラシュート、自動エジェクトシート(auto-eject seats)、デプロイアブルシールド(deployable shields)、および自動ドアなどがあるが、これらに限定されない。
【0051】
下記の実施例は、本発明の特定の実施態様を例示するためのものである。当業者には言うまでもないことであるが、下記の実施例に開示の方法は、単に本発明の代表的な実施態様を示しているにすぎない。しかしながら、当業者は、本発明の開示内容を考慮して、開示されている特定の実施態様に対する多くの変形が可能であり、そして本発明の精神と範囲を逸脱することなく、同様もしくは類似の結果を得ることができる、ということが分かっている。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
本実施例は、応力と歪みを検知するのにフィルム(すなわち“バッキーペーパー”)を含んだアドオン・センサー(add-on sensor)が使用される、という本発明の実施態様を例示するためのものである。本実施例に記載の結果は、出願者らによる近刊予定の出版物に記載されている。Dharap et al.,“Nanotube film based on single-wall carbon nanotubes for strain sensing,”Nanotechnology,15(3),pp.379-382(2004)を参照。
【0053】
未精製のSWNT(カーボンナノテクノロジー社から入手)と0.25mg/mlのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)とを混合することによってカーボンナノチューブフィルムを作製する。本混合物を0.2mmのテフロンメンブランを通して濾過し、乾燥する。乾燥後に、フィルターからフィルム(バッキーペーパー)をはがす。次いでフィルムを、減圧下および加熱下にてさらに24時間乾燥する。図1(a)は、カーボンナノチューブフィルムの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示しており、この画像から、機械的に絡み合ったランダム配向のナノチューブバンドルでフィルムが構成されていて、これらのバンドルがフィルムに等方性の電子的特性を付与している、ということがわかる。Frogley et al.,“Polarized resonance Raman spectroscopy of single-wall carbon nanotubes within a polymer under strain,”Physical Review B,65,113413-113416(2002)を参照。図1(b)は、厚さ10μmのカーボンナノチューブフィルムの走査電子顕微鏡画像を示している。
【0054】
166GPaのヤング率を有する12×1.5×0.25インチの黄銅試験片にカーボンナノチューブフィルムを取り付ける(図2(a))。カーボンナノチューブフィルムと導電性の黄銅試験片との間に高強度のエポキシ樹脂を使用してPVCフィルムを取り付けて、歪みの完全な移動を確実に起こさせ、そして絶縁を確実にする(図2(a))。真空接合法(vacuum bonding method)[http://www.mide.com/pdf’s/q01.pdf]を使用して、黄銅試験片とPVCとカーボンナノチューブフィルムとの間にずれが生じないよう、エポキシ樹脂が、薄くて堅牢で且つ剛性の接合を確実に生成するようにする。図2(b)は、歪み測定値比較用の、黄銅試験片の反対側に位置する、黄銅試験片に取り付けられた電気抵抗歪みゲージを示している。黄銅試験片の概略図を図3に示す。
【0055】
4点プローブを使用して、カーボンナノチューブフィルムにおける電圧変化を測定する。黄銅試験片に対し、サーボ油圧テストフレームでの圧縮サイクルにかけるだけでなく張力も加え、外側の2つのプローブを介して電流を通す。内側2つのプローブの両端間の電圧が安定するよう、プローブとフィルムとの間の適切な接触を確実に起こさせる。荷重を徐々に増大させて加え、それぞれの間隔にて安定な読み取り値が得られるまで数秒間一定に保持する。外側2つのプローブの両端間のインプット電流を測定中は一定に保持し、内側2つのプローブ両端間の電圧変化、ならびに歪みゲージからの歪みを測定する。黄銅試験片は、張力および圧縮サイクル中は弾性範囲にある。
【0056】
電圧の変化は、張力と圧縮サイクルの両方にさらされる試験片に対してはほぼ直線的に変わる(図4(a))。比較のため、カーボンナノチューブフィルムに対する内側2つのプローブの両端間の電圧変化が、従来の歪みゲージからの歪み読み取り値に対してプロットされている(図4(b))。ナノセンサーから得られる電圧測定値の変化と歪みゲージの読み取り値との間にほぼ直線的な関係が存在する。さらに、単一のカーボンナノチューブフィルムセンサー上の幾つかの平行(すなわち軸力に沿っている)位置において、4点プローブを使用して電圧の変化を測定する。このような複数位置検知によっても、電圧の変化と歪みとの間にほぼ直線的な関係が得られる。
【0057】
内側2つのプローブの両端間の電圧変化は、ある程度はカーボンナノチューブフィルムの寸法変化によるものであり、主としてはカーボンナノチューブフィルムの抵抗率の変化による。黄銅試験片の場合、実測の軸方向引っ張り歪みが0.04%のオーダーであるので、フィルムの寸法変化は小さく、電圧の変化に及ぼす寄与も小さい(これについては以下に示す)。4点プローブを使用して測定されるフィルム(シート)の抵抗率は式I
【0058】
【数1】

【0059】
で示され[Smits,“Measurement of sheet resistivities,”The Bell System Technical Journal,5,711-718(1958)]、このときVは、内側2つのプローブの両端間の電圧であり;Iは、外側2つのプローブの両端間のインプット電流であり;C(a/d,d/s)は、フィルムの寸法に依存する係数である(aはフィルムの長さであり、dはフィルムの幅であり、そしてsは4点プローブにおける2つのプローブ間の距離である)。歪が0%から0.04%まで変化したときに、カーボンナノチューブフィルムの抵抗率(ρs)が一定のままであると仮定すると、
【0060】
【数2】

【0061】
であり、このときV1とV2は、それぞれ0%歪みと0.04%歪みにおける内側2つのプローブの両端間の電圧である。C1とC2は対応する定数であり、カーボンナノチューブフィルムの寸法に依存する。電流Iは一定に保持される。対応する定数[Smits]、0%歪みにおけるC1=2.190560および0.04%歪みにおけるC2=2.190314が得られる。式(3)から式(2)を引くと、式(4)
【0062】
【数3】

【0063】
が得られる。図4に与えられている結果に対し、電圧の変化は約170μVである。カーボンナノチューブフィルムの寸法変化による電圧の変化は小さく(〜12%)、電圧変化の残部は抵抗率の変化によるものである(〜88%)。したがって、電圧の変化は主としてフィルムの抵抗率の変化によるものである、と結論付けることができる。
【0064】
図4(a)に示されているデータにおける直線的傾向からのずれについては、さらなる研究が必要である。特定の理論に拘束されるつもりはないが、このずれに対するファクターの1つは、実験時におけるカーボンナノチューブフィルムの周囲の温度であろう。研究者らは、カーボンナノチューブの抵抗が温度と共に変化する、ということを観察している。Hones et al.,“Electrical and thermal transport properties of magnetically aligned single wall carbon nanotubes films,”Applied.Physics Letters,77,666-668(2000);およびBerzryadin et al.,“Multiprobe Transport Experiments on Individual Single-Wall Carbon Nanotubes,”Physical Review Letters,80,4036-4039(1998);を参照。歪みによって引き起こされる電子的特性の変化に及ぼす温度の影響を定量化するためには、さらなる研究が必要である。種々のガスに対する曝露も、カーボンナノチューブの電子的特性に影響を及ぼす他のファクターである。任意のナノチューブの電子的特性が、ナノチューブの直径とカイラリティーによってだけでなく、ガスに対する曝露の履歴によっても規定される、ということが報告されている。Collins et al.,“Extreme Oxygen Sensitivity of electronic properties of carbon nanotubes,”Science,287,pp.1801-1804(2000)を参照。したがって、環境条件を注意深く制御することにより、本発明のセンサーと方法において再現性のあるレスポンスを確実に達成することができる。
【0065】
(実施例2)
本実施例は、複数方向における機械的状態を検知するために、積層物のような層状材料中にカーボンナノチューブ検知素子をどのように組み込むことができるかを示すためのものである。
【0066】
図5a(図5bは分解立体図を示している)を参照すると、1つの方向に整列したカーボンナノチューブを含んだフィルム501が、フィルム501における方向とは異なった方向に配向したカーボンナノチューブを含んだフィルム503に積層されている。このような積層物は、追加の積層用樹脂(laminating agent)502を含んでよい。整列したカーボンナノチューブを含むフィルムはさらにマイラーも含んでよいが、カーボンナノチューブは、それ自体で使用することもできるし、あるいは他の材料と併用して使用することもできる。しかしながら、この特定の実施例においては、押出法によってマイラー中にカーボンナノチューブを整列させる(マイラー中に約20重量%のカーボンナノチューブを含むブレンドを、シート押出機を通して押し出す)。この押出法により、ナノチューブが押出方向に整列する。もう一枚のシートを作製し、二枚のシートを、各シート内のナノチューブが互いに垂直になるような方向に積層する。本実施例においては、エポキシ積層用樹脂によって2つの層が貼り付けられ、2つの層の間に樹脂の電気絶縁用バリヤーがもたらされる。
【0067】
それぞれの層に4点電気プローブを取り付けることで、複数方向検知における機械的状態の検知の向上が可能となる。整列したカーボンナノチューブが種々の方向に配向している積層物中にさらに層を加えると、感度をさらに高めることができる。
【0068】
(実施例3)
本実施例は、カーボンナノチューブ検知素子を、起こりうる構造的欠陥のインジケータとして機能させるよう、飛行機の翼(あるいは飛行機の他の部分)にどのようにして組み込むことができるかを示すためのものである。このようなセンサーは、雷が飛行機を襲った後の損傷を検出する際に有用であると思われる。
【0069】
図6を参照すると、飛行機の翼600(またはトレイルや胴体など)上のコーティング全体にわたって、カーボンナノチューブ602(縮尺どおりには描かれていない)を等方的に分布させることができる。このコーティングに、コーティング全体にわたる電気的特性の変化を検知するのに使用することができる電極601を取り付ける。
【0070】
(実施例4)
本実施例は、ガスケット等の他の用途においてカーボンナノチューブをどのように使用できるか、ということを示すためのものである。
【0071】
図7を参照すると、カーボンナノチューブ702の等方性分布を含んだビトン(Viton)(登録商標)ガスケット700に、規則的に配置された電極701が取り付けられている。本実施例のビトンマトリックス中におけるカーボンナノチューブの量は約20重量%である。このようなガスケットが正常に機能しなくなり始めると、圧力のむらが、電子的特性の変化として示されるようになる。このようなガスケットを配管中に使用している工業設備に対し、ガスケット保全性の低下に応じたガスケットセンサーによる警報によって、起こりうる破壊を防ぐことができる。
【0072】
(実施例5)
本実施例は、機械的状態の結果としての、検知素子の光ルミネセンスの変化を使用して、変位、応力、および歪み等を検知することができる、という実施態様を示すためのものである。
【0073】
図8を参照すると、電磁放射線源801により、多色放射線が、所望の波長を選択するためのホログラフィック格子を使用しているモノクロメーター802に向けられており、次いでカーボンナノチューブを含んだ検知素子803のほうに向けられている。当然ながらカーボンナノチューブが特定の波長の光を吸収し、吸収した光を同一または異なった波長にて再び発光放出する。スペクトル分析器804が、発光が起こる波長を決定し、検出器805がその強度を記録する。発光スペクトルが、特定の機械的状態の結果としてどのように変化するか、ということを明らかにすることによって、機械的状態を定量化可能な手法にて評価することができる。
【0074】
光ルミネセンスを利用するこのような方法とデバイスは幾つかの利点を提供し、用途によっては電気的特性の変化を検知する上で魅力的な代替手段となる。おそらく最も大きな利点は、この種の検知を、遠隔操作にて且つガラスバリヤーを通して行うことができる、ということである。
【0075】
本明細書に挙げた全ての特許と刊行物を参照により本明細書に含める。言うまでもないが、上記実施態様における上記の構造、機能、および操作のうちの特定のものは、本発明を実施するのに必要ではなく、単に代表的な実施態様の説明を完璧に行うために記載してある。さらに、言うまでもないことであるが、上記の特許と刊行物中に記載の特定の構造、機能、および操作と本発明とを組み合わせて実施することができるが、本発明を実施する上で絶対に必要というわけではない。したがって理解しておかねばならないことは、本発明は、特許請求の範囲に規定されている本発明の精神と範囲を逸脱することなく、本明細書に記載されている仕方とは別の仕方で実施することができる、ということである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】フィルムのSEM画像を示していて、(a)は、SWNTの絡み合ったバンドルで構成されているカーボンナノチューブフィルムであり、(b)は、カーボンナノチューブフィルムの厚さを示している。
【図2】本発明のセンサーを示していて、(a)は、絶縁用のPVCフィルムを黄銅試験片に取り付けた状態のカーボンナノチューブフィルムを示しており、(b)は、金属歪みゲージを反対側に取り付けた状態のカーボンナノチューブフィルムを示している。
【図3】張力と圧縮を受けている状態の黄銅試験片の概略図である。
【図4】張力と圧縮サイクルを受けている試験片に関し、(a)は、黄銅試験片における応力の関数としてのカーボンナノチューブフィルムの電圧変化を示しており、(b)は、黄銅試験片における歪みの関数としてのカーボンナノチューブフィルムの電圧変化を示している。
【図5】機能的な図面に関し、(a)は分解立体図を示しており、(b)は、フィルムの一方における整列したカーボンナノチューブが、フィルムの他方における整列したカーボンナノチューブに対して直角となるように、2つの検知素子フィルムが積層されている、という実施態様を示している。
【図6】極めて大きなセンサーが利用される場合(この場合は飛行機の翼)の実施態様を示している。
【図7】カーボンナノチューブが、起こりうるガスケット破損のセンサーとして機能するようガスケット中に組み込まれている、という場合の実施態様を示している。
【図8】カーボンナノチューブの光ルミネセンスの変化を、カーボンナノチューブを含んだセンサーに加えられている機械的状態と関連付けることができる、という実施態様を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 複数のカーボンナノチューブを含む検知素子;および
b) 前記複数のカーボンナノチューブと接触している電気プローブ;
を含む、機械的状態を測定するためのデバイス。
【請求項2】
電気プローブを使用して得た電気計測値と機械的状態とを、あらかじめ確定された基準に基づいた定量化可能な手法にて関連付ける情報のデータベースをさらに含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
電気プローブが4点プローブである、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
電気プローブが、導電率、抵抗率、コンダクタンス、抵抗、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特性を測定する、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
機械的状態が、変位、衝撃、応力、歪み、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、炭素フィブリル、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、気相成長炭素繊維、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
カーボンナノチューブ間に所望のレベルの均一性をもたらすようカーボンナノチューブが精製されており、このとき前記均一性が、均一な直径、均一な長さ、均一なカイラリティー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
カーボンナノチューブが化学的に修飾されている、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
アレイ、マット、バッキーペーパー、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される形態にて集成される複数のカーボンナノチューブをさらに含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
カーボンナノチューブをマトリックス材料中に組み込む、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
カーボンナノチューブを材料に取り付ける、請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスを製品中に組み込む、請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
前記製品が、飛行機、自動車、エンジン、宇宙船、ビルディング、橋、ダム、ガスケット、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスを製品に取り付ける、請求項1記載のデバイス。
【請求項15】
前記製品が、飛行機、自動車、エンジン、宇宙船、ビルディング、橋、ダム、ガスケット、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
カーボンナノチューブが二次元網目構造にて配置されている、請求項1記載のデバイス。
【請求項17】
カーボンナノチューブが三次元網目構造にて配置されている、請求項1記載のデバイス。
【請求項18】
a) 複数のカーボンナノチューブを選択すること;
b) カーボンナノチューブに電気プローブを取り付けること;
c) カーボンナノチューブをある機械的状態にさらすこと;
d) カーボンナノチューブの電気的特性の変化を、電気プローブを使用して測定すること;
e) こうした電気的特性の変化を、電気的特性の変化と機械的状態とを定量化可能な手法にて関連付けるデータベースと比較すること;および
f) こうした比較に基づいて、この機械的状態にある値を割り当てること;
を含む、機械的状態を測定する方法。
【請求項19】
カーボンナノチューブが、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリマー、ポリマー繊維、炭素繊維、ナノチューブ繊維、球形粒子、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される他の材料を含んでいてもよい検知素子を構成する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
電気プローブが4点プローブである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
電気プローブが、コンダクタンス、導電率、抵抗、抵抗率、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特性を測定する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
機械的状態が、変位、応力、歪み、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項23】
カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、炭素フィブリル、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、気相成長炭素繊維、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項24】
カーボンナノチューブが、アレイ、マット、バッキーペーパー、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される形態をとっている、請求項18記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、変位、衝撃、応力、歪み、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される機械的状態を検知するために使用される、請求項18記載の方法。
【請求項26】
a) 複数のカーボンナノチューブを含む検知素子;
b) 電磁放射線の供給源;および
c) 光ルミネセンス検出器;
を含む、機械的状態を測定するためのデバイス。
【請求項27】
カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、炭素フィブリル、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、気相成長炭素繊維、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項26記載のデバイス。
【請求項28】
電磁放射線供給源が、単色電磁放射線源、多色電磁放射線源、レーザー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26記載のデバイス。
【請求項29】
光ルミネセンス検出器が約2μm〜約100nmの範囲の電磁スペクトルを検出する、請求項26記載のデバイス。
【請求項30】
光ルミネセンス検出器が、1つ以上の光ダイオード、光電子増倍管、PbS、MCT、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項26記載のデバイス。
【請求項31】
スペクトル分析を行うための、プリズム、回折格子、モノクロメータ、少なくとも1つのスペクトルフィルタ、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択されるスペクトル分析器をさらに含む、請求項26記載のデバイス。
【請求項32】
前記スペクトル分析がマルチスペクトルである、請求項31記載のデバイス。
【請求項33】
電磁放射線供給源と光ルミネセンス検出器との組み合わせ物を使用して得た光ルミネセンス測定値と機械的状態とを、あらかじめ確定された基準に基づいた定量化可能な手法にて関連付ける情報のデータベースをさらに含む、請求項26記載のデバイス。
【請求項34】
機械的状態が、変位、衝撃、応力、歪み、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26記載のデバイス。
【請求項35】
カーボンナノチューブ間に所望のレベルの均一性をもたらすようカーボンナノチューブが精製されており、このとき前記均一性が、均一な直径、均一な長さ、均一なカイラリティー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26記載のデバイス。
【請求項36】
カーボンナノチューブが化学的に修飾されている、請求項26記載のデバイス。
【請求項37】
このような化学的修飾を逆転させる、請求項36記載のデバイス。
【請求項38】
アレイ、マット、バッキーペーパー、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される形態にて集成される複数のカーボンナノチューブをさらに含む、請求項26記載のデバイス。
【請求項39】
カーボンナノチューブをマトリックス材料中に組み込む、請求項26記載のデバイス。
【請求項40】
カーボンナノチューブを材料に取り付ける、請求項26記載のデバイス。
【請求項41】
前記材料が、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、半導体、合金、繊維、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項40記載のデバイス。
【請求項42】
前記デバイスを製品中に組み込む、請求項26記載のデバイス。
【請求項43】
前記製品が、飛行機、自動車、エンジン、宇宙船、ビルディング、橋、ダム、ガスケット、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項42記載のデバイス。
【請求項44】
前記デバイスを製品に取り付ける、請求項22記載のデバイス。
【請求項45】
前記製品が、飛行機、自動車、エンジン、宇宙船、ビルディング、橋、ダム、ガスケット、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項44記載のデバイス。
【請求項46】
カーボンナノチューブが二次元網目構造にて配置されている、請求項26記載のデバイス。
【請求項47】
カーボンナノチューブが三次元網目構造にて配置されている、請求項26記載のデバイス。
【請求項48】
a) 複数のカーボンナノチューブを選択する工程;
b) 電磁放射線の供給源を使用して前記複数のカーボンナノチューブを照射する工程;
c) カーボンナノチューブをある機械的状態にさらす工程;
d) カーボンナノチューブの光ルミネセンス特性の変化を、カーボンナノチューブをある機械的状態にさらしたことの結果として、検出器を使用して測定する工程;
e) こうした光ルミネセンスの変化を、光ルミネセンスの変化と機械的状態とを定量化可能な手法にて関連付けるデータベースと比較する工程;および
f) こうした比較に基づいて、この機械的状態にある値を割り当てる工程;
を含む、機械的状態を測定する方法。
【請求項49】
カーボンナノチューブが、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリマー、球形粒子、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される他の材料を含んでいてもよい検知素子を構成する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
光ルミネセンスプローブが、蛍光、リン光、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される光ルミネセンス特性の変化を測定する、請求項48記載の方法。
【請求項51】
カーボンナノチューブの光ルミネセンス特性の変化を測定する工程が、スペクトル分析器を使用して分析することをさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項52】
a) 複数のカーボンナノチューブを含む検知素子;および
b) 熱伝導率プローブ;
を含む、機械的状態を測定するためのデバイス。
【請求項53】
熱エネルギーの供給源をさらに含む、請求項52記載のデバイス。
【請求項54】
機械的状態が、変位、衝撃、応力、歪み、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項52記載のデバイス。
【請求項55】
熱伝導率プローブが熱電対を含む、請求項52記載のデバイス。
【請求項56】
前記デバイスを、ポリマー、ガラス、金属、セラミック、半導体、合金、繊維、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される材料中に組み込む、請求項52記載のデバイス。
【請求項57】
前記デバイスを製品中に組み込む、請求項52記載のデバイス。
【請求項58】
前記製品が、飛行機、自動車、エンジン、宇宙船、ビルディング、橋、ダム、ガスケット、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項57記載のデバイス。
【請求項59】
前記デバイスを製品に取り付ける、請求項52記載のデバイス。
【請求項60】
前記製品が、飛行機、自動車、エンジン、宇宙船、ビルディング、橋、ダム、ガスケット、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項59記載のデバイス。
【請求項61】
a) 複数のカーボンナノチューブを選択する工程;
b) カーボンナノチューブの幾らかを熱源にさらす工程;
c) カーボンナノチューブをある機械的状態にさらす工程;
d) 熱伝導率プローブを使用して、カーボンナノチューブの熱伝導率特性の変化を測定する工程;
e) 熱伝導率特性の変化を、熱伝導率特性の変化と機械的状態とを定量化可能な手法にて関連付けることができる少なくとも1つのデータベースと比較する工程;および
f) こうした比較に基づいて、この機械的状態にある値を割り当てる工程;
を含む、機械的状態を測定するための方法。
【請求項62】
熱伝導率プローブが熱電対である、請求項61記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−521212(P2006−521212A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501099(P2006−501099)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/001708
【国際公開番号】WO2004/065926
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【Fターム(参考)】