説明

スムースンドポリペプチドおよび使用方法

スムースンド(Smoothened)(SMO)タンパク質の一部分のアミノ酸配列を含む、単離または精製された、ポリペプチド、またはペプチド模倣体であって、該部分はSMOタンパク質のいずれかの細胞内ループのアミノ酸配列、その機能的断片、または該部分か該機能的断片かのいずれかの機能的変異体を含み、該機能的断片は、該細胞内ループの少なくとも7つの連続するアミノ酸を含み、かつ該機能的断片または機能的変異体は病気の細胞の増殖を阻害する、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、またはこれらの脂肪酸誘導体が開示される。関連する結合体、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、および医薬組成物がさらに提供される。病気の細胞の増殖の阻害方法、癌の治療もしくは予防の方法、新生物もしくは乾癬の治療方法、およびヘッジホッグ(Hedgehog)シグナル伝達経路に係わる遺伝子の発現を阻害し、それによりヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する方法が、本発明によってさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、参照によって援用される2006年10月31日に出願された米国仮特許出願第60/855,422号の利益を主張する。
【0002】
(電子的に提出されたデータの参照による援用)
本明細書と同時に提出され、以下:2007年10月24日に作成された、「701943Sequence_ST25.TXT」という名前がつけられた1つの53,510バイトのASCII(テキスト)ファイル、として特定される、コンピュータに読み込み可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、本明細書においてその全体が参照によって援用される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
癌は、シグナル伝達経路の調節不全によって引き起こされる。1つのかかる経路は、パッチ(Patch)(Ptch)タンパク質およびスムースンド(Smoothened)(SMO)タンパク質を伴うヘッジホッグ(Hedgehog)(HH)シグナル伝達経路である。HH経路は、胚細胞の成長に不可欠であり(Beachyら, Nature, 432: 324-331 (2004))、乳癌(Katanoら, Cancer Lett., 227: 99-104 (2005))、前立腺癌(Sanchezら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 101: 12561-12566 (2004))、胃癌(Bermanら, Nature, 425: 846-851 (2003))、結腸癌(Douardら, Surgery, 139: 665-670 (2006))、肝臓癌(Sicklickら, Carcinogenesis, 27: 748-757 (2006))、黒色腫(Ponsら, Clin. Transl. Oncol., 8: 466-474 (2006))、基底細胞癌(Lamら, Oncogene, 18, 833-836 (1999))、および髄芽腫(Bermanら, Science, 297, 1559-1561 (2002)およびRomerら, Cancer Res., 65, 4975-4978 (2005))を含むいくつかの癌において調節不全となっていることがわかった。癌の治療に使用するためのHH経路の阻害剤に対する要求が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、単離または精製された、ポリペプチドもしくはペプチド模倣体、およびこれらの脂肪酸誘導体を提供する。該ポリペプチドまたはペプチド模倣体は、SMOタンパク質の一部分に相当するアミノ酸配列を含み、該部分は配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列を含み、該配列番号のそれぞれの配列は、概してはSMOタンパク質の細胞内ループに相当する。該ポリペプチドまたはペプチド模倣体は、該部分の機能的断片であり得、該機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも7つの連続するアミノ酸を含む。該ポリペプチドまたはペプチド模倣体は、該部分または該機能的断片の機能的変異体であり得る。本発明のポリペプチドおよびペプチド模倣体(これらの脂肪酸誘導体、機能的断片、および機能的変異体を含む)は、HH経路および/または病気の細胞の増殖を阻害する。
【0005】
本発明はまた、任意の本発明のポリペプチドもしくはペプチド模倣体、またはこれらの脂肪酸誘導体を含む結合体を提供する。本発明のポリペプチドをコードする核酸、ならびに関連する組み換え発現ベクターおよび宿主細胞がさらに提供される。本発明のポリペプチド、ペプチド模倣体、脂肪酸誘導体、結合体、核酸、および組み換え発現ベクターのうちのいずれかを含む医薬組成物が本発明によってさらに提供される。
【0006】
本発明の医薬組成物は、病気の細胞の増殖を阻害するのに有用であり、したがって本発明はさらに病気の細胞の増殖を阻害する方法を提供する。該方法は、病気の細胞の増殖を阻害するのに有効な量で、病気の細胞と本発明の医薬組成物とを接触させることを含む。
【0007】
本発明は、宿主における癌の治療方法または予防方法、宿主における乾癬の治療方法、宿主における新生物の治療方法、ならびに病気の細胞におけるGli-1、Gli-2、Gli-3、Ptch、Shh、Smo、およびNESからなる群から選択される遺伝子の発現の阻害方法を含む、本発明の医薬組成物の他の使用方法を提供する。
(図面のいくつかの図の簡単な説明)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施態様によるSMOi1-1、SMOi2-1、およびSMOi3-1の脂質化された(lipidated)ポリペプチドの濃度の関数として、48時間の処理時の生存MCF-7乳癌細胞の%(対照に対する)を示す。
【図2】図2は、0 μM、5 μM、または10 μM(それぞれ白い棒、黒い棒、線を引いた棒)のシクロパミン、SMOi3-1、またはSMOi2-1による処理時の胃腺癌細胞の生存細胞量(mass)を示す。
【図3】図3は、本発明の実施態様による、SMOタンパク質の第三番目の細胞内ループに基づくアミノ酸配列を含むポリペプチドによる48時間の処理時の生存MCF-7細胞の%(対照に対する)を示す。
【図4】図4は、本発明の実施態様によるSMOi2-8、またはレトロインベルソ(retroinverso)類似体SMOi2-16およびSMOi2-17による48時間の処理時の生存SK-Mel2細胞の%を示す。
【図5】図5は、シクロパミン、本発明の実施態様によるSMOi3-1ポリペプチド、またはSMOi2-1ポリペプチドによる48時間の処理時のDU145細胞におけるHH経路の遺伝子の相対的発現量を示す。
【図6】図6は、本発明の実施態様による、SMOi2-8、またはSMOi2-8の5位のTrp残基の代わりに4-ベンゾイルフェニルアラニン(BPA)残基を含むペプチド模倣体による60時間の処理時の生存SK-Mel2細胞の%を示す。
【図7】図7は、本発明の実施態様による第二番目の細胞内ループ誘導体(SMOi2-12(丸)およびSMOi2-17(四角))の、SK-Mel2黒色腫細胞における、該ペプチド化合物に48時間曝した後のMTTアッセイによって測定された毒性を示す。
【図8】図8は、本発明の実施態様によるSMOi2-8/WMC-77の比の増大に伴うプローブについて測定された蛍光発光強度を示す。
【図9】図9は、本発明の実施態様によるSMOi2-12(菱形)またはSMOi2-20(四角)に曝した時の乳癌細胞、黒色腫細胞、肝細胞癌(heptaoma)細胞、および膵臓癌細胞の増殖阻害を示す。
【図10】図10は、SMOi2-8(菱形)ペプチドおよびSMOi2-16(三角形)ペプチドの円二色性スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
SMOタンパク質は、ヘッジホッグ(HH)シグナル伝達経路において機能する膜貫通タンパク質であり(例えばHuangfuおよびAnderson, Development 133: 3-14 (2006)参照)、該経路は、論じたように、いくつかの癌、例えば乳癌、前立腺癌、胃癌などに関係している。こうしたタンパク質は、細胞外領域、7つの膜貫通領域、3つの細胞内ループ、および細胞内領域を含む。SMOタンパク質は、大まかなトポロジーにおいてGタンパク質共役受容体(GPCR)に類似するが、GPCRとは異なるようにしてシグナルを送るようである。SMOタンパク質の例としては、ヒトSMOタンパク質(例えばGenBankアクセッション番号NP_005622(配列番号:1))、およびそのオルソログ、例えばマウスSMOタンパク質(例えばGenBankアクセッション番号NP_795970)、ラットSMOタンパク質(例えばGenBankアクセッション番号NP_036939)、ショウジョウバエ(fruit fly)SMOタンパク質(例えばGenBankアクセッション番号NP_523443)、ゼブラフィッシュSMOタンパク質(例えばGenBankアクセッション番号NP_571102)、ニワトリSMOタンパク質(例えばGenBankアクセッション番号AAB84389)、アフリカツメガエルSMOタンパク質(例えばGenBankアクセッション番号AAK15464)などが挙げられる。
【0010】
本発明は、SMOタンパク質の一部分に相当するアミノ酸配列を含む、単離または精製されたポリペプチドを提供し、該部分は配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列のそれぞれは、SMOタンパク質の細胞内ループと同一であるか、または実質的に同一である。例えば、配列番号:2は、SMOの第二番目の細胞内ループのN末端に1つのさらなるアミノ酸(Leu)を含む。
【0011】
本明細書において使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1つ以上のペプチド結合によってつながったアミノ酸の一本鎖を指す。これに関して、該用語は、少なくとも1つのペプチド結合が存在することを条件として、任意の長さのペプチド、オリゴペプチド、およびポリペプチドを包含する。本明細書では、本発明のポリペプチドは、少なくとも6つのペプチド結合、例えば10個以上のペプチド結合を含む。
【0012】
本発明のポリペプチドは、SMOタンパク質の一部分のアミノ酸配列を含む。すなわち、本発明のポリペプチドは、完全長、野生型のSMOタンパク質、例えば配列番号:1は何ら包含しない。このことに関して、本発明のポリペプチドは、野生型SMOタンパク質のうちの約780個未満のアミノ酸を含む。例えば、本発明のポリペプチドは、野生型SMOタンパク質のうちの約500個未満のアミノ酸を含む。最も好ましくは、本発明のポリペプチドは、野生型SMOタンパク質のうちの約75個未満、例えば約50個のアミノ酸を含む。本発明のポリペプチドはまた、約10〜約12個のアミノ酸(本明細書において論じられるように、任意のCPPを除く)を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の実施態様によるSMOタンパク質の部分は、配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列を含む。このことに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号:2、3、または4のアミノ酸配列を含み得るか、本質的に該アミノ酸配列からなり得るか、または該アミノ酸配列からなり得る。
【0014】
あるいは、該SMOタンパク質の部分は、配列番号:5〜8のいずれかのアミノ酸配列を含む。このことに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号:5、6、7、または8のアミノ酸配列を含み得るか、本質的に該アミノ酸配列からなり得るか、または該アミノ酸配列からなり得る。
【0015】
本明細書中に記載される本発明のポリペプチドの機能的断片は、本発明の範囲に含まれる。本発明のポリペプチドに関連して用いられる場合、用語「機能的断片」は、本発明のポリペプチドの任意の部分または一部分を指し、該部分または一部分は、それを一部分とするポリペプチド(親ポリペプチド)の生物学的活性を保持する。該機能的断片が病気の細胞の増殖を阻害することを条件として、該機能的断片は、それを一部分とするポリペプチドの連続するアミノ酸を含む任意の断片であり得る。例えば、機能的断片は、親ポリペプチドと同様の程度か、同じ程度か、またはより高い程度に、増殖を阻害するか、または疾患(例えば癌、新生物、乾癬)を治療もしくは予防する能力を保持する、本発明のポリペプチドの部分を包含する。親ポリペプチドに対して、該機能的断片は、例えば約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、またはそれより多くの親ポリペプチドを含み得る。
【0016】
機能的断片は、アミノ末端もしくはカルボキシ末端、または双方の末端にさらなるアミノ酸、例えば親ポリペプチドのアミノ酸配列に見られないアミノ酸を含み得る。さらなるアミノ酸は、該機能的断片の生物学的機能、例えば増殖の阻害、または疾患(例えば癌、新生物、乾癬)の治療もしくは予防を妨げないことが望ましい。さらなるアミノ酸は、親ポリペプチドの生物学的活性と比較して生物学的活性を高めることがより望ましい。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも5つの連続するアミノ酸を含み、病気の細胞の増殖を阻害する。本発明のより好ましい実施態様において、機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも7つの連続するアミノ酸を含む。本発明のさらに好ましい実施態様において、機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも4つの連続するアミノ酸を含み、病気の細胞の増殖を阻害する。本発明の機能的断片は、例えば配列番号:5〜8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、機能的断片は、配列番号:9〜33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。本発明の機能的断片はまた、配列番号:9〜33のいずれかのアミノ酸配列から本質的になり得るか、または該アミノ酸配列からなり得る。
【0018】
さらに本発明の範囲に含まれるのは、本明細書中に記載される、本発明のポリペプチドの機能的変異体、および本発明の機能的断片の機能的変異体である。本明細書中で用いられる場合、用語「機能的変異体」は、親ポリペプチドまたは親機能的断片に対する実質的な、または顕著な、配列相同性または配列類似性を有するポリペプチドを指し、該機能的変異体は、それをその変異体とするポリペプチドまたは機能的断片の生物学的活性を保持する。機能的変異体は、例えば、親ポリペプチドまたは親機能的断片と同様の程度か、同じ程度か、またはより高い程度で、病気の細胞の増殖を阻害する能力を保持する、本明細書中に記載される本発明のポリペプチド(親ポリペプチド)の変異体、および本明細書中に記載される機能的断片(親機能的断片)の変異体を包含する。親ポリペプチドまたは親機能的断片に対して、機能的変異体は、例えば親ポリペプチドまたは親機能的断片に対してアミノ酸配列が少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%、またはより高パーセント同一であり得る。
【0019】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を伴う、親ポリペプチドまたは親機能的断片のアミノ酸配列を含み得る。このことに関して、機能的変異体は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多くの保存的アミノ酸置換を伴う、親ポリペプチドまたは親機能的断片のアミノ酸配列を含み得る。あるいは、またはさらに、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を伴う、親ポリペプチドまたは親機能的断片のアミノ酸配列を含み得る。このことに関して、機能的変異体は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多くの非保存的アミノ酸置換を伴う、親ポリペプチドまたは親機能的断片のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が機能的変異体の生物学的活性を妨げないか、または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物学的活性を高め、その結果機能的変異体の生物学的活性が、親ポリペプチドまたは親機能的断片と比較して増大することが好ましい。
【0020】
機能的変異体は、好ましくは1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野で公知であり、ある物理的性質および/または化学的性質を有する1つのアミノ酸が同じ化学的性質または物理的性質を有する別のアミノ酸と交換される、アミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性アミノ酸に対して置換された酸性アミノ酸(例えばAspまたはGlu)、非極性側鎖を備える別のアミノ酸に対して置換された非極性側鎖を備えるアミノ酸(例えばAla、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、別の塩基性アミノ酸に対して置換された塩基性アミノ酸(Lys、Argなど)、極性側鎖を備える別のアミノ酸に対して置換された極性側鎖を備えるアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)、別の芳香族アミノ酸に対する芳香族アミノ酸(Trp、Phe、Tyrなど)などであり得る。
【0021】
本発明の機能的変異体は、配列番号:2、3、または4の少なくとも4つの連続するアミノ酸を含み、親ポリペプチドまたは親機能的断片に対して少なくとも75%の配列相同性(例えば80%、85%、90%、95%の配列相同性)を有し、かつ病気の細胞の増殖を阻害することが望ましい。
【0022】
例えば、機能的変異体は、配列番号:17〜21および23〜33のうちの任意のものの機能的変異体であり得る。このことに関して、機能的変異体は、配列番号:38〜54および57〜59のうちの任意のもののアミノ酸配列(XaaはTyr、Phe、またはBPAからなる群から選択される)を含み得る。
【0023】
例えば、機能的変異体はまた、1〜7位、9位、11位、および12位のうちのいずれかにおけるアミノ酸の1つがAlaで置換されたSMOi2-8のアミノ酸配列を含むSMOi2-8(配列番号:23)の機能的変異体であり得る。
【0024】
あるいは、機能的変異体は、本明細書中に記載される任意の本発明のポリペプチドまたは機能的断片のレトロインベルソ類似体を含み得る。用語「レトロインベルソ(retroinverso)類似体」は、該レトロインベルソ類似体のアミノ酸配列が(N末端からC末端へ読む場合)、C末端からN末端へ読む場合の親ポリペプチドのアミノ酸配列と同じであるような、親ポリペプチドの逆にしたアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。さらに、レトロインベルソ類似体に関しては、アミノ酸のそれぞれは、アミノ酸のL異性体ではなく、アミノ酸のD異性体である。例えば、トリペプチドVal-Ala-Glyのレトロインベルソ類似体は、アミノ酸配列Gly-Ala-Valを有し、そのそれぞれのアミノ酸はD異性体である。本発明に関しては、機能的変異体は、好ましくは配列番号:23、26、または33のレトロインベルソ類似体を含む。このことに関して、機能的変異体は、配列番号:34〜37のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0025】
本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)は、当該技術分野で公知の方法によって得ることができる。ポリペプチドをデノボ合成する適切な方法は、Chanら, Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis, Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2005; Peptide and Protein Drug Analysis, Reid, R.編, Marcel Dekker, Inc., 2000; Epitope Mapping, Westwooodら編, Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2000; および米国特許第5,449,752号などの参照文献に記載されている。ポリペプチドはまた、標準的な組み換え方法を用いて本明細書中に記載される核酸を用いて組み換えで製造され得る。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 2001; ならびにAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing AssociatesおよびJohn Wiley & Sons, NY, 1994を参照。さらに、本発明のポリペプチド(その機能的断片および機能的変異体を含む)のなかには、植物、細菌、昆虫、哺乳動物、例えばラット、ヒト等、などの供給源から単離および/または精製され得るものもある。単離および精製の方法は、当該技術分野で周知である。あるいは、本明細書中に記載されるポリペプチド(その機能的断片および機能的変異体を含む)は、合成され得るか、またはSynpep(Dublin, CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg, MD)、およびMultiple Peptide Systems(San Diego, CA)などの会社から商業的に入手され得る。このことに関して、本発明のポリペプチドは、合成のものであってもよく、組み換え体であってもよく、単離され得、および/または精製され得る。
【0026】
本明細書中に記載される任意の本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)のペプチド模倣体もまた、本発明によって提供される。本明細書において使用される場合、用語「ペプチド模倣体」は、その安定性または生物学的機能を増大させる修飾を伴う、対応するポリペプチドの本質的に同じ全般的構造を有する化合物を指す。ペプチド模倣体としては、例えば、対応するポリペプチドの同じアミノ酸配列であって、2つ以上の該アミノ酸の間の主鎖の改変を伴うアミノ酸配列を含む化合物が挙げられる。さらに、ペプチド模倣体は、天然に存在するアミノ酸に代えて、合成アミノ酸または天然に存在しないアミノ酸を含み得る。
【0027】
好ましい実施態様において、ペプチド模倣体は、ペプトイドである。本明細書中で使用される場合、用語「ペプトイド」は、α炭素ではなく、アミノ酸の窒素原子にそれぞれのアミノ酸の側鎖が付加されたペプチド模倣体を指す。例えば、ペプトイドは、NRCH2COの一般構造の繰り返し単位を有し、かつ対応するポリペプチドと同じであるか、または実質的に同じであるアミノ酸配列を有するN置換グリシンと考えることができる。
【0028】
別の好ましい実施態様において、ペプチド模倣体は、それぞれのアミノ酸の間の結合がメチル化された、改変された主鎖を含む。このことに関して、ペプチド模倣体は、以下の構造のメチル化されたペプチドの主鎖を含み得る。
【0029】
【化1】

【0030】
ポリペプチド(またはその機能的断片もしくは機能的変異体)またはペプチド模倣体がその生物学的活性、例えば病気の細胞の増殖を阻害し、宿主における疾患(例えば癌、新生物、乾癬)を治療し、または予防する能力等、を保持することを条件として、本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)およびペプチド模倣体は、任意の長さであってもよく、すなわち任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、本発明のポリペプチドまたはペプチド模倣体は、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長、12アミノ酸長、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、50アミノ酸長、70アミノ酸長、75アミノ酸長、100アミノ酸長、125アミノ酸長、150アミノ酸長、175アミノ酸長、200アミノ酸長、300アミノ酸長、400アミノ酸長、500アミノ酸長、600アミノ酸長、700アミノ酸長、800アミノ酸長、900アミノ酸長、1000アミノ酸長、またはこれを超えるアミノ酸長などの50〜5000アミノ酸長であり得る。本発明のポリペプチドは、好ましくは5〜50アミノ酸長である。
【0031】
本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)およびペプチド模倣体は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸に代えて、合成アミノ酸を含んでもよい。かかる合成アミノ酸は、当該技術分野で公知であり、かかる合成アミノ酸としては、例えばアミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、trans-3-ヒドロキシプロリンおよびtrans-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ベンゾイルフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン、β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N'-ベンジル-N'-メチル-リシン、N',N'-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、ならびにα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0032】
本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)およびペプチド模倣体は、脂質化されたもの(lipidated)(例えば脂肪酸化されたもの(fatty acidated))、グリコシル化されたもの、アミド化されたもの、カルボキシル化されたもの、リン酸化されたもの、エステル化されたもの、N-アシル化されたもの、例えばジスルフィド架橋により環化されたもの、もしくは酸付加塩に変換されたもの、および/または必要に応じて二量体化されたもの、もしくは重合したもの、もしくは結合したものであり得る。
【0033】
このことに関して、本発明は、本発明の任意のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)およびペプチド模倣体の脂質化された誘導体をさらに提供する。本発明の脂質化された誘導体は、脂質分子を含む本明細書中に記載される任意のポリペプチドおよびペプチド模倣体を包含する。本明細書において使用される場合、用語「脂質分子」は、ポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)またはペプチド模倣体が細胞膜を横切って、細胞内に入ることを容易にする疎水性部分を含む任意の分子を指す。脂質は、例えば、脂肪酸、ファルネシル基(例えばファルネシル二リン酸)、ゲラニルゲラニル基(例えばゲラニルゲラニル二リン酸)、リン脂質基、グリコホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、カルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスホグリセリド(lysophosphoglyceride)、およびコレステロール基などの当該技術分野で公知の任意の脂質であり得る。
【0034】
脂質化された誘導体は、本明細書中に記載されるポリペプチドまたはペプチド模倣体が脂肪酸分子を含む、脂肪酸誘導体であることが好ましい。脂肪酸分子は、任意のC8〜C20脂肪酸であり得る。脂肪酸分子は、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、ドコサヘキサエン酸(docosohexenoic acid)、エルカ酸、アラキジン酸、またはベヘン酸であり得る。脂肪酸は、さらなる官能基、例えば任意の炭素原子上の1つ以上のアミノ基を任意に含み得る。好ましい実施態様において、脂肪酸分子は、C8〜C16脂肪酸、例えばC16脂肪酸である。より好ましい実施態様において、脂肪酸はパルミチン酸である。
【0035】
脂質分子に関して当てはまることだが、脂肪酸分子は、本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)またはペプチド模倣体の任意の適切な部分に結合させることができる。本発明の好ましい実施態様において、本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)またはペプチド模倣体の脂肪酸誘導体は、アミノ(N)末端、カルボキシル(C)末端、またはN末端およびC末端の双方に脂肪酸分子を含む。
【0036】
脂肪酸分子は、本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)またはペプチド模倣体に直接的に、またはリンカーを通じて結合させ得る。本発明の1つの実施態様において、脂肪酸分子が、本発明のポリペプチドまたはペプチド模倣体のC末端に存在する場合、脂肪酸分子は、Lys、Cys、ホモシステイン(ホモCys)、Orn、α,γ-ジアミノ酪酸、およびα,β-ジアミノプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸リンカーを通じて結合する。本発明の好ましい実施態様において、脂肪酸分子は、Lysを通じて結合する。本発明のより好ましい実施態様において、脂肪酸分子は、Lysのε炭素を通じて結合する。
【0037】
別の好ましい実施態様において、脂肪酸分子が本発明のポリペプチドまたはペプチド模倣体のC末端にある場合、脂肪酸分子は修飾され、例えば式Iまたは式IIの修飾された分子におけるようにアミノ基を含み、ここで式IはNH2(CH2)nCOOHであり、式IIはCH3(CH2)mCH(NH2)COOHであり、式中nおよびmはそれぞれ1〜24である。このことに関して、脂肪酸分子は、ポリペプチドまたはペプチド模倣体のC末端アミノ酸のカルボキシル基に結合する。好ましくはnまたはmは8〜16である。より好ましくはnまたはmは16である。
【0038】
あるいは、本明細書中に記載される本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)またはペプチド模倣体は、細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide)(CPP)を含んでもよい。かかるCPPは、本発明のポリペプチドまたはペプチド模倣体が細胞膜を横切って、細胞内に入ることを容易にする。CPPは当該技術分野で公知である。例えばDeshayesら, Cell. Mol. Life Sci. 62: 1839-1849 (2005); El-Andaloussiら, Curr. Pharm. Design 11: 3597-3611 (2005); ならびにMaeeおよびLangel, Curr. Opin. Pharmacol. 6: 509-514 (2006))を参照されたい。CPPは、当該技術分野で公知の任意のもの、例えばトランスポータン(Transportan)、VP22、Pep1等であり得る。好ましくは、CPPは、配列番号:78または79のアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列は、それぞれペネトラチンおよびTat(48-60)のアミノ酸配列に相当する。
【0039】
本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)およびペプチド模倣体は、これらの脂肪酸誘導体を含めて、単量体のペプチドであり得、または二量体のペプチドもしくは多量体のペプチドであり得る。例えばポリペプチドは、以下の一般構造:
【0040】
【化2】

【0041】
の二量体であり得、式中、配列Xは、Ac-LAKFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:85);Ac-AKFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:86);およびAc-KFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:87)からなる群から選択され;リンカー1およびリンカー2のそれぞれは必要に応じて存在し、それぞれ独立してGly、β-Ala、アミノプロピオン酸、γ-アミノ酪酸、アミノカプロン酸、またはアミノヘキサン酸であり;nおよびmは0〜6であり;YはK、C、ホモCys、Orn、ジアミノプロパン酸(DPA)、ジアミノ酪酸(DBA)であり;そして脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、またはカプリル(caprilic)酸である。好ましい実施態様において、配列Xは、配列番号:87であり、nは4であり、mは0であり、リンカー1およびリンカー2のそれぞれはβ-Alaであり、脂肪酸はパルミチン酸である。二量体のポリペプチドおよび多量体のポリペプチドを製造する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Wrightonら, Nature Biotechnology 15: 1261-1265 (1997)を参照されたい。二量体のポリペプチドの好ましい製造方法はまた、実施例1として本明細書中に示されている。
【0042】
本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)およびペプチド模倣体が、これらの脂肪酸誘導体を含めて、塩の形態である場合、好ましくはポリペプチドまたはペプチド模倣体は、薬学的に許容され得る塩の形態である。適切な薬学的に許容され得る酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの鉱酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸などの有機酸から誘導される塩が挙げられる。
【0043】
さらに本発明によって提供されるのは、本明細書中に記載される、機能的断片および機能的変異体を含む任意の本発明のポリペプチドをコードする核酸である。本明細書において使用される場合、用語「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸分子」を包含し、通常DNAまたはRNAのポリマーを指し、該ポリマーは一本鎖であっても二本鎖であってもよく、合成されたものであっても天然の供給源から得られたもの(例えば単離されたもの、および/または精製されたもの)であってもよく、該ポリマーは天然の、非天然の、または改変されたヌクレオチドを含んでもよく、そして該ポリマーは修飾されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見出されるリン酸ジエステルの代わりに、ホスホロアミダート結合、またはホスホロチオエート結合などの天然の、非天然の、または改変されたヌクレオチド間結合を含んでもよい。核酸は、何らの挿入、欠失、逆位、および/または置換も含まないことが一般的に好ましい。しかしながら本明細書において論じられるようないくつかの場合においては、核酸が1つ以上の挿入、欠失、逆位、および/または置換を含むことが適切であり得る。
【0044】
本発明の核酸は、組み換え体であることが好ましい。本明細書において使用される場合、用語「組み換え体」は、(i)生細胞において複製され得る核酸分子に、天然の、または合成の核酸部分を結合させることによって、生細胞の外で構築される分子、または(ii)上記(i)に記載の分子の複製の結果生じる分子を指す。本明細書では、複製はインビトロの複製であってもよく、インビボの複製であってもよい。
【0045】
核酸は、当該技術分野で公知の手順を用い、化学的な合成、および/または酵素による連結反応に基づき構築することができる。例えばSambrookら, 上掲、およびAusubelら, 上掲を参照されたい。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、または分子の生物学的な安定性を増大させるように、もしくはハイブリダイゼーションの際に形成される二本鎖の物理的な安定性を増大させるように設計された、様々に修飾されたヌクレオチド(例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて化学的に合成することができる。核酸を生成させるために使用することができる修飾されたヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキュエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキュエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キュエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6-ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、本発明の1つ以上の核酸は、Macromolecular Resources(Fort Collins, CO)およびSynthegen(Houston, TX)などの会社から購入することができる。
【0046】
核酸は、機能的断片および機能的変異体を含む任意の本発明のポリペプチドをコードする任意のヌクレオチド配列を含み得る。例えば、核酸は、配列番号: 2〜29、32、33、38〜48、53〜56、59〜66、70〜72、76、および80のうちのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含み得る。あるいは、核酸は、任意のこうした配列に縮重するヌクレオチド配列、または縮重する配列の組み合わせを含み得る。本発明はまた、本明細書中に記載される任意の核酸のヌクレオチド配列に対して相補的であるヌクレオチド配列、もしくは本明細書中に記載される任意の核酸のヌクレオチド配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離または精製された核酸を提供する。
【0047】
本発明の核酸は、組み換え発現ベクターに組み込むことができる。このことに関して、本発明は、本発明の任意の核酸を含む組み換え発現ベクターを提供する。本明細書では、用語「組み換え発現ベクター」は、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現を可能にする、遺伝子改変がなされたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのコンストラクトを意味する(該コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、該ベクターが該細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドが発現されるのに十分な条件下で該細胞と接触する場合において)。本発明のベクターは、全体としては天然に存在するものではない。しかしながら、該ベクターの一部は天然に存在し得る。本発明の組み換え発現ベクターは、DNAおよびRNAを含むが、これらに限定されない任意の種類のヌクレオチドを含み得、該ヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、合成されたものであっても一部分において天然の供給源から得られたものであってもよく、そして該ヌクレオチドは、天然の、非天然の、または改変されたヌクレオチドを含んでもよい。組み換え発現ベクターは、天然のヌクレオチド間結合、非天然のヌクレオチド間結合、または両方の種類の結合を含み得る。非天然のもしくは改変されたヌクレオチドまたはヌクレオチド間結合は、ベクターの転写または複製を妨げないことが好ましい。
【0048】
本発明の組み換え発現ベクターは、任意の適切な組み換え発現ベクターであり得、任意の適切な宿主を形質転換またはトランスフェクションするために使用することができる。適切なベクターとしては、繁殖および増殖のために設計されたもの、もしくは発現のために設計されたもの、または双方のために設計されたもの、例えばプラスミドおよびウイルスなどが挙げられる。ベクターは、pUC系(Fermentas Life Sciences)、pBluescript系(Stratagene, LaJolla, CA)、pET系(Novagen, Madison, WI)、pGEX系(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)、およびpEX系(Clontech, Palo Alto, CA)からなる群から選択することができる。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、およびλNM1149などのバクテリオファージベクターもまた使用することができる。植物の発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、およびpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物の発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM、およびpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは組み換え発現ベクターはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターである。
【0049】
本発明の組み換え発現ベクターは、例えばSambrookら, 上掲、およびAusubelら, 上掲に記載されている標準的な組み換えDNA技術を用いて調製することができる。環状または線状の発現ベクターのコンストラクトは、原核生物または真核生物の宿主細胞において機能する、複製系を含むように調製することができる。複製系は、例えばColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来するものであり得る。
【0050】
組み換え発現ベクターは、適宜、そしてベクターがDNA系かそれともRNA系かを考慮し、ベクターを導入しようとする宿主の種類(例えば細菌、真菌、植物、または動物)に特有の転写、ならびに翻訳開始コドン、および翻訳終止コドンなどの調節配列を含むことが望ましい。
【0051】
組み換え発現ベクターは、形質転換またはトランスフェクションがなされる宿主の選択を可能にする1つ以上のマーカー遺伝子を含んでもよい。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性、例えば抗生物質、重金属等に対する耐性、原栄養性を与えるための栄養要求性宿主における相補性等を含む。本発明の発現ベクターのために適切なマーカー遺伝子としては、例えばネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、およびアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0052】
組み換え発現ベクターは、修飾されたTCR、ポリペプチド、もしくはタンパク質(これらの機能的部分および機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列、または該修飾されたTCR、ポリペプチド、もしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列に対して相補的であるか、もしくは該ヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列に、作動可能なように結合される天然または非天然のプロモーターを含み得る。プロモーターの選択、例えば強さ、弱さ、誘導性、組織特異性、および発生特異性は当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列をプロモーターと結合させることもまた、当業者の技術の範囲内である。プロモーターは、非ウイルス性プロモーター、またはウイルス性プロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、およびマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列に見出されるプロモーターであり得る。
【0053】
本発明の組み換え発現ベクターは、一過性発現用、安定発現用、または双方の発現用に設計され得る。該組み換え発現ベクターはまた、構成的発現用または誘導性発現用に製造され得る。
【0054】
さらに、組み換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように製造され得る。本明細書中で使用される場合、用語「自殺遺伝子」は、該自殺遺伝子を発現する細胞に死を引き起こす遺伝子を指す。自殺遺伝子は、薬剤、例えば薬物に対する感受性を、該遺伝子が発現される細胞に与え、該細胞が該薬剤と接触し、または該薬剤に曝された場合に該細胞に死を引き起こす遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当該技術分野で公知であり(例えばSuicide Gene Therapy: Methods and Reviews, Springer, Caroline J. (Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research, Sutton, Surrey, UK), Humana Press, 2004を参照)、自殺遺伝子としては、例えば単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(cytosine daminase)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、およびニトロレダクターゼが挙げられる。
【0055】
本発明はさらに、本明細書中に記載される任意の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明の組み換え発現ベクターを含み得る任意の種類の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば植物、動物、真菌、もしくは藻類であり得るか、または原核細胞、例えば細菌、もしくは原生動物であり得る。宿主細胞は、培養細胞または初代細胞、すなわち生物、例えばヒトから直接単離されたものであり得る。宿主細胞は、接着細胞、または懸濁した細胞、すなわち懸濁液中で生育する細胞であり得る。適切な宿主細胞は、当該技術分野で公知であり、適切な宿主細胞としては、例えばDH5αE.コリ(E. coli)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組み換え発現ベクターを増幅または複製する目的のためには、宿主細胞は好ましくは原核細胞、例えばDH5α細胞である。組み換え体の修飾されたTCR、ポリペプチド、もしくはタンパク質を生成させる目的のためには、宿主細胞は好ましくは哺乳動物細胞である。宿主細胞は、ヒト細胞であることが最も好ましい。宿主細胞は、任意の細胞の種類のものであってもよく、任意の種類の組織に由来するものであってもよく、そして任意の発生段階のものであってもよい。
【0056】
本明細書中に記載される少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞の集団もまた、本発明によって提供される。細胞の集団は、記載される任意の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞を、少なくとも1つの他の細胞、例えば組み換え発現ベクターを全く含まない宿主細胞(例えばT細胞)、またはT細胞以外の細胞、例えばB細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞等に加えて含む、異種性の集団であってもよい。あるいは、細胞の集団は、集団が組み換え発現ベクターを含む宿主細胞から主としてなる(例えば本質的になる)実質的に同種の集団であってもよい。集団はまた、集団のすべての細胞が、組み換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであるために該集団のすべての細胞が組み換え発現ベクターを含む、細胞のクローン集団であり得る。本発明の1つの実施態様において、細胞の集団は、本明細書中に記載される組み換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0057】
任意の本発明のポリペプチド(任意の機能的断片もしくは機能的変異体を含む)、もしくはペプチド模倣体、核酸、組み換え発現ベクター、または宿主細胞を含む結合体(conjugates)、例えばバイオコンジュゲート(bioconjugates)は、本発明の範囲に含まれる。結合体、および結合体を一般的に合成する方法は、当該技術分野で公知である(例えばHudecz, F., Methods Mol. Biol. 298: 209-223 (2005)およびKirinら, Inorg Chem. 44(15): 5405-5415 (2005)を参照)。
【0058】
本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)、ペプチド模倣体、脂肪酸誘導体、核酸、組み換え発現ベクター、および宿主細胞(その集団を含む)は、単離され得、精製され得、合成されたものであり得、および/または組み換えされたものであり得る。本明細書において使用される場合、用語「単離」は、その自然環境から取り出したことを意味する。本明細書において使用される場合、用語「精製」は、純度が増大したことを意味し、ここで「純度」は相対的な用語であり、必ずしも絶対的な純度と解釈されるべきではない。例えば、純度は少なくとも約50%であり得、60%、70%、80%、もしくは90%よりも高純度であり得、または100%であり得る。
【0059】
本発明のポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)、ペプチド模倣体、脂肪酸誘導体、結合体、核酸、組み換え発現ベクター、および宿主細胞(その集団を含む)は、それらすべてを本明細書では以下「本発明の物質」と総称するが、医薬組成物などの組成物に製剤化することができる。このことに関して、本発明は、ポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)、ペプチド模倣体、脂肪酸誘導体、結合体、核酸、組み換え発現ベクター、および宿主細胞(その集団を含む)、ならびに薬学的に許容され得る担体のうちの任意のものを含む医薬組成物を提供する。任意の本発明の物質を含む本発明の医薬組成物は、1つよりも多くの本発明の物質、例えばポリペプチドおよび核酸、または2つ以上の異なるポリペプチド、を含み得る。あるいは、該医薬組成物は、本発明の物質を、化学療法剤などの別の薬学的に活性のある薬剤または薬物、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン等と組み合わせて含み得る。
【0060】
本発明の好ましい実施態様において、医薬組成物は、本発明の物質を脂質と組み合わせて含む。脂質は、例えば脂肪酸、リン脂質、ステロール、スフィンゴ脂質、テルペン、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、プレノール脂質、糖脂質(saccharolipid)、およびポリケチドを含む任意の脂質であり得る。かかる脂質は当該技術分野で公知である。例えばFahyら, J. Lipid Res. 46: 839-861 (2005)を参照されたい。脂質はコレステロールであることが好ましい。
【0061】
医薬組成物に関しては、薬学的に許容され得る担体は、従来使用されている任意のものであってもよく、溶解度、および活性化合物(1つまたは複数)との反応性がないことなどの物理化学的考察、ならびに投与経路のみによって限定される。本明細書中に記載される薬学的に許容され得る担体、例えばビヒクル、アジュバント、賦形剤、および希釈剤は、当業者に周知であり、公衆が容易に入手し得る。薬学的に許容され得る担体は、活性薬剤(1つまたは複数)に対して化学的に不活性なものであり、かつ使用条件下で有害な副作用または毒性を有さないものであることが好ましい。
【0062】
担体の選択は、特定の本発明の物質によって、および本発明の物質を投与するために使用される特定の方法によって部分的には決定されることになる。したがって、本発明の医薬組成物の種々の適切な製剤が存在する。経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、腹腔内投与、直腸内投与、および腟内投与のための以下の製剤は、例示的なものであり、何ら限定するものではない。1つよりも多くの経路が本発明の物質を投与するために使用することができ、場合によっては、ある特定の経路が別の経路よりもより速効性であり、より効果的な反応を与え得る。本発明の好ましい実施態様において、医薬組成物は局所製剤、静脈内投与製剤(intravenous formulation)、または皮下投与製剤(subcutaneous formulation)である。
【0063】
本発明の好ましい実施態様において、医薬組成物は局所製剤である。局所製剤は当業者に周知である。かかる製剤は、皮膚への用途に本発明との関係において特に適する。本発明の局所製剤は、例えばクリーム、ローション剤、軟膏剤、貼付剤、油、ペースト剤、噴霧剤、例えばエアゾールスプレー、ゲル、ムース、回転塗布式の液体、固体の棒状物等であり得る。本発明の局所製剤は、クリーム、ローション剤、軟膏剤、または貼付剤であることが好ましい。局所製剤がローション剤である場合、ローション剤はまた、トコフェリル、アミノ安息香酸、アボベンゾン、シノキサート、ジオキシベンゾン、ホモサラート、メンチルアントラニレート、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、オクチサラート、オキシベンゾン、パジマートO、フェニルベンゾイミダゾール、スルホン酸、スリソベンゾン、二酸化チタン、トロラミンサリチル酸塩、および酸化亜鉛などの紫外(UV)線遮断剤を含むことが好ましい。
【0064】
経口投与に適した製剤は、(a)水、生理食塩水、またはオレンジジュースなどの希釈剤に有効量の本発明の物質が溶解した溶液などの溶液;(b)それぞれ固体または顆粒のような所定量の有効成分を含む、カプセル剤、サシェ剤(sachets)、錠剤、ロゼンジ、およびトローチ剤;(c)散剤;(d)適切な液体を用いた懸濁液;ならびに(e)適切な乳濁液からなり得る。液体製剤は、薬学的に許容され得る界面活性剤が添加されているか、または添加されていないかのいずれかの、水、およびアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコール、およびポリエチレンアルコールなどの希釈剤を含み得る。カプセル剤の形態は、例えば界面活性剤、滑沢剤、ならびに不活性な賦形剤(fillers)、例えばラクトース、ショ糖、リン酸カルシウム、およびコーンスターチなどを含む、通常のハードシェルまたはソフトシェルのゼラチン型のものであり得る。錠剤の形態は、ラクトース、ショ糖、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ならびに他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、および他の薬理学的に相溶性のある賦形剤のうちの1種以上を含み得る。ロゼンジの形態は、当該技術分野で公知の賦形剤などに加え、該賦形剤を含む、香料が用いられた本発明の物質、通常ショ糖およびアカシアまたはトラガント、ならびに本発明の物質を含む不活性な基剤を含む芳香製剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシア、乳濁液、ゲル等、などを含み得る。
【0065】
本発明の物質は、単独で、または他の適切な成分と組み合わせて、吸入経由で投与するためのエアロゾル製剤にすることができる。こうしたエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等などの加圧された許容され得る噴霧剤の中に入れることができる。そうした製剤はまた、ネブライザーまたはアトマイザーにおけるような非加圧製剤用の医薬として製剤化され得る。かかる噴霧製剤はまた、粘膜に噴霧するために使用され得る。
【0066】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、および目的とする受容者の血液に対して製剤を等張性にする溶質、を含み得る水性および非水性の等張性無菌注射剤溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液を含む。本発明の物質は、薬学的に許容され得る界面活性剤、例えば石鹸もしくは洗剤など、懸濁剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロースなど、または乳化剤、および他の補助薬が添加された、または添加されていない、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、エタノールもしくはヘキサデシルアルコールなどのアルコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールなどのケタール、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくはグリセリド、またはアセチル化された脂肪酸のグリセリド、を含む無菌の液体または液体の混合物などの医薬担体を用いて生理学的に許容され得る希釈剤を用いて投与され得る。
【0067】
非経口製剤で使用され得る油は、石油、動物油、植物油、または合成の油を含む。油の具体的な例としては、ピーナッツ油、大豆油、ごま油、綿実油、とうもろこし油、オリーブ油、ペトロラタム、および鉱油が挙げられる。非経口製剤で使用するための適切な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0068】
非経口製剤で使用するための適切な石鹸としては、脂肪酸のアルカリ金属(fatty alkali metal)塩、アンモニウム塩、およびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な洗剤としては、(a)例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド、およびアルキルピリジニウムハライドなどの陽イオン性洗剤、(b)例えばアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、およびオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、オレフィン硫酸塩、エーテル硫酸塩、およびモノグリセリド硫酸塩、ならびにスルホコハク酸塩などの陰イオン性洗剤、(c)例えば脂肪酸の(fatty)アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレン共重合体などの非イオン性洗剤、(d)例えばアルキル-β-アミノプロピオン酸塩、および2-アルキル-イミダゾリン第4級アンモニウム塩などの両性洗剤、ならびに(e)これらの混合物が挙げられる。
【0069】
非経口製剤は、典型的には、溶液中で本発明の物質を約0.5重量%〜約25重量%含むであろう。保存剤および緩衝剤が使用され得る。注射部位の刺激を最小にするか、または取り除くために、かかる組成物は、約12〜約17の親水親油バランス(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。かかる製剤における界面活性剤の量は、典型的には約5重量%〜約15重量%の範囲であろう。適切な界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ソルビタンモノオレアートなどのソルビタン脂肪酸エステル、および酸化プロピレンとプロピレングリコールとの縮合によって形成される疎水性基剤を有する、エチレンオキシドの高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、アンプル、およびバイアルなどの単位用量または複数回用量の密封された容器で提示され得、使用の直前に、無菌の液体の賦形剤、例えば注射用水の添加だけを要する凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))条件で保存され得る。即時注射の溶液および懸濁液は、先に記載した種類の無菌の散剤、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0070】
注射製剤は、本発明に従う。注射用組成物のための効果的な医薬担体に対する必要条件は、当業者に周知である(例えばPharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, BankerおよびChalmers, 編, 238-250頁(1982)、ならびにASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 第4版, 622-630頁(1986)を参照)。細胞、例えば樹状細胞に投与する場合、該細胞は注射によって投与されることが好ましい。
【0071】
さらに、本発明の物質、またはかかる本発明の物質を含む組成物は、乳化基剤または水溶性基剤などの種々の基剤と混合することによって、坐剤にすることができる。腟内投与に適した製剤は、有効成分に加えて、当該技術分野で適切であることが公知である担体を含む、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、または噴霧剤の製剤として提示され得る。
【0072】
本発明の本発明の物質は、上記医薬組成物に加えて、シクロデキストリン包接複合体、またはリポソームなどの包接複合体として製剤化され得ることを当業者は理解するであろう。
【0073】
本発明では、投与される本発明の物質の量または用量は、効果、例えば妥当な期間にわたる対象または動物の治療への反応または予防への反応、に対して十分であるべきである。例えば、本発明の物質の用量は、病気の細胞の増殖を阻害するため、または疾患(例えば癌、新生物、もしくは乾癬を、投与の時から約2時間以上、例えば12〜24時間以上の期間で治療もしくは予防するために十分であるべきである。ある実施態様において、該期間は、さらに長くなり得る。用量は、特定の本発明の物質の効力、および動物(例えばヒト)の病状、ならびに治療される動物(例えばヒト)の体重によって決定されることになる。
【0074】
投与用量を決定するための多くのアッセイが当該技術分野で公知である。本発明では、それぞれ異なる用量の本発明の物質が与えられる一組の哺乳動物の中の哺乳動物に所与の用量の本発明の物質を投与した際に、病気の細胞の増殖が阻害される程度を比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与する開始用量を決定するために使用され得る。ある用量の投与時に病気の細胞の増殖が阻害される程度は、例えば実施例2として本明細書中に記載される方法を含む当該技術分野で公知の方法によって検定され得る。
【0075】
本発明の物質の用量はまた、特定の本発明の物質の投与に付随し得る何らかの有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定されることになる。典型的には、年齢、体重、全般的な健康、食餌、性別、投与される本発明の物質、投与経路、および治療される病状の重症度などの種々の要因を考慮に入れて、主治医は、それぞれの個々の患者の治療に用いる本発明の物質の投薬量を決定することになる。例として、そして本発明を限定しないことを意図するものとして、本発明の物質の用量は、約0.001〜約1000 mg/治療される対象の体重kg/日、約0.01〜約10 mg/体重kg/日、約0.01 mg〜約1 mg/体重kg/日であり得る。
【0076】
当業者は、本発明の物質の治療の効力または予防の効力が改変によって増大されるように、任意の数の方法によって本発明の本発明の物質が改変され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本発明の物質は、直接的にかリンカーを通じて間接的にかのいずれかで、標的指向化部分(targeting moiety)に結合され得る。標的指向化部分に対して化合物、例えば本発明の物質を結合させるプラクティスは当該技術分野で公知である。例えば、Wadwaら, J. Drug Targeting 3: 111 (1995)および米国特許第5,087,616号を参照されたい。本明細書中で使用される場合、用語「標的指向化部分」は、標的指向化部分が本発明の物質の送達を、表面に受容体が発現している細胞の集団に向けるように、特異的に細胞表面の受容体を認識し、該受容体に結合する任意の分子または薬剤を指す。標的指向化部分としては、抗体またはその断片、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、および細胞表面の受容体に結合する任意の他の天然または非天然のリガンド(例えば上皮成長因子受容体(Epithelial Growth Factor Receptor)(EGFR)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、CD28、血小板由来増殖因子受容体(PDGF)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)等)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、用語「リンカー」は、本発明の物質を標的指向化部分に架橋する任意の薬剤または分子を指す。本発明の物質に一旦結合したリンカーおよび/または標的指向化部分が本発明の物質の機能、すなわち病気の細胞の増殖を阻害する能力、または疾患(例えば癌、新生物、乾癬)を治療し、もしくは予防する能力を妨げないことを条件として、当業者は、本発明の物質の機能に必要ではない本発明の物質の部位は、リンカーおよび/または標的指向化部分を結合させるのに理想的な部位であることを認識する。
【0077】
あるいは、本発明の物質が、それが投与される体の中に本発明の物質が放出される様式が時間および体内の位置に関して制御されるように、本発明の物質は、デポー剤の形態に改変され得る(例えば米国特許第4,450,150号を参照)。本発明の物質のデポー剤の形態は、例えば、本発明の物質、および多孔質または非多孔質の物質、例えばポリマーなどを含む埋め込み可能な組成物であり得、本発明の物質は、該物質によって封入され、もしくは該物質全体にわたって拡散し、および/または該非多孔質物質が分解する(degradation)。デポー剤は次いで体内の所望の位置に埋め込まれ、本発明の物質は所定の速度で該埋め込み物から放出される。
【0078】
本発明の医薬組成物、ポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)、ペプチド模倣体、脂肪酸誘導体、核酸、組み換え発現ベクター、宿主細胞、または細胞の集団が、病気の細胞の増殖を阻害する方法において使用され得ることを企図する。このことに関して、本発明は病気の細胞の増殖を阻害する方法を提供する。該方法は、病気の細胞と、病気の細胞の増殖を阻害するのに有効な量の本明細書中に記載される任意の医薬組成物とを、接触させることを含む。
【0079】
宿主の好ましい実施態様において、病気の細胞は宿主内にある。本明細書において言及される宿主は、任意の宿主であり得る。宿主は哺乳動物であることが好ましい。本明細書において使用される場合、用語「哺乳動物」は、任意の哺乳動物を指し、マウスおよびハムスターなどの齧歯目の哺乳動物、ならびにウサギなどのウサギ目(Logomorpha)の哺乳動物を含むが、これらに限定されない。哺乳動物は、ネコ科(ネコ類)およびイヌ科(イヌ類)を含む食肉目に由来するものであることが好ましい。哺乳動物は、ウシ科(ウシ類)およびブタ科(Swines)(ブタ類)、またはウマ科(ウマ類)を含む奇蹄目(Perssodactyla)のものを含む、偶蹄目に由来するものであることがより好ましい。哺乳動物は、霊長目、セボイド目(Ceboids)、もしくはシモイド目(Simoids)(サル類)のもの、または真猿亜目(order Anthropoids)(ヒト類および類人猿類)のものであることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0080】
病気の細胞は、任意の疾患の特性を示すか、または任意の疾患で苦しむ細胞であり得る。疾患は、任意の疾患、病状、または疾病、特に細胞の増殖によって引き起こされるか、または細胞の増殖を伴う任意のものであり得る。疾患は、例えば、癌、または非癌性の腫瘍、例えば嚢腫、新生物、線維腫等であり得る。
【0081】
癌は、急性リンパ性の癌、急性骨髄性白血病、肉腫、例えば、胞巣状横紋筋肉腫、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管、または肛門直腸の癌、眼癌、肝内胆管癌、関節の癌、神経膠腫、頸部、胆嚢、または胸膜の癌、鼻、鼻腔、または中耳の癌、口腔癌、外陰癌、慢性リンパ性白血病、慢性の骨髄性の癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、網、および腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌(例えば腎細胞癌(RCC))、小腸癌、軟部組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、ならびに膀胱癌のうちの任意のものを含む任意の癌であり得る。癌は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌(例えば胃腺癌)、結腸癌、肝臓癌、黒色腫、基底細胞癌、横紋筋肉腫、髄芽腫、膵臓癌、肺癌、甲状腺癌、骨髄腫、リンパ腫、神経膠腫、または肉腫であることが好ましい。
【0082】
細胞の増殖は多くの疾患を引き起こし得るため、本明細書中に記載される本発明の物質は、こうした疾患を治療または予防する方法において使用され得ることをさらに企図する。このことに関して、本発明は、宿主における癌または新生物(例えば眼新生物)を治療または予防する方法を提供する。該方法は、癌または新生物を治療するのに有効な量の本明細書中に記載される任意の医薬組成物を宿主に投与することを含む。
【0083】
本明細書において使用される場合、用語「治療する」、および「予防する」、ならびにこれらから派生する語は、100%すなわち完全な治療もしくは予防を必ずしも意味するものではない。むしろ、潜在的な利益、または治療効果を有すると当業者が認識する種々の程度の治療または予防が存在する。このことに関して、本発明の方法は、哺乳動物の癌または新生物の、任意の量の任意の水準の治療もしくは予防を提供し得る。さらに、本発明の方法によって提供される治療または予防は、治療されるか、または予防される疾患、例えば癌の1つ以上の病状または症状の治療もしくは予防を含み得る。本明細書ではまた、「予防」は、疾患の発症、または疾患の症状もしくは病状の開始を遅延させることを包含し得る。
【0084】
本発明の方法の好ましい実施態様において、医薬組成物は、宿主に局所的に投与される。別の好ましい実施態様において、医薬組成物は、腫瘍に直接投与され、例えば腫瘍内に送達される。
【0085】
本発明はさらに、宿主の乾癬を治療するのに有効な量の本明細書中に記載される任意の医薬組成物を宿主に投与することを含む、宿主の乾癬を治療する方法を提供する。乾癬は、厚い銀色の鱗屑で覆われた、炎症性、赤色の皮膚の肥厚した斑を特徴とする一般的な皮膚疾患である。乾癬は、例えば、斑状(plaque)乾癬すなわち尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)、膿疱性乾癬、滴状乾癬、およびインバース(inverse)乾癬を含む任意の形態の乾癬であり得る。
【0086】
本発明はまた、ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する方法を提供する。該方法は、病気の細胞と、ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するのに有効な量の本明細書中に記載される任意の医薬組成物とを接触させることを含む。ある遺伝子の発現は、ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化の際に転写について活性化されるため、本発明はまた、病気の細胞のこうした遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。該遺伝子は、Gli-1(例えばGenBankアクセッション番号NM_005269)、Gli-2(例えばGenBankアクセッション番号NM_005270)、Gli-3(例えばGenBankアクセッション番号NM_001034190)、Ptch(例えばGenBankアクセッション番号NM_0000264)、Shh(例えばGenBankアクセッション番号NM_000193)、Smo(例えばGenBankアクセッション番号NM_005631)、もしくはNES(例えばGenBankアクセッション番号NM_016701)の1つのもの、または組み合わせであり得、これらの遺伝子は当該技術分野で公知である。これらの遺伝子の発現を阻害する方法は、病気の細胞と、遺伝子の発現を阻害するのに有効な量の本明細書中に記載される任意の医薬組成物とを接触させることを含む。
【0087】
本明細書では、細胞、例えば病気の細胞が、核酸または組み換え発現ベクターを含む医薬組成物と接触される場合、該方法は、核酸の発現を含み、したがってコードされたポリペプチド(または機能的断片もしくは機能的変異体)が細胞の内部で発現される。細胞、例えば病気の細胞が、宿主細胞(またはその集団)を含む医薬組成物と接触される場合、該方法は、宿主細胞の内部での核酸の発現、および宿主細胞の外部でのコードされたポリペプチド(または機能的断片もしくは機能的変異体)の分泌を含み、該外部でポリペプチドは次いで病気の細胞と接触するように利用され得る。
【0088】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然、本発明の範囲をなんら限定するものではないと解釈するべきである。
【実施例】
【0089】
実施例1
本実施例は、本発明の実施態様によるポリペプチド(機能的断片および機能的変異体を含む)の調製方法を示す。
【0090】
表1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを、Fmocアミノ酸誘導体(AnaSpec, San Jose, CA)を利用して伝導率監視ユニットを備えた433Aペプチドシンセサイザー(Peptide Synthesizer)(Applied Biosystems, Foster City, CA)で固相ペプチド合成によって合成する。該合成は、得られるペプチドの精製をより容易にするために、未反応のアミノ基を無水酢酸でブロッキングする条件で行う。ペプチドを、5%の水、5%のチオアニソール、および2.5%のトリイソプロピルシランを含む87.5%のトリフルオロ酢酸を用いて樹脂から切り出し、冷ジエチルエーテルで沈殿させ、エーテルで5回洗浄し、そして真空中で終夜乾燥させる。ジメチルホルムアミドに溶解したペプチドを、0.05%のトリフルオロ酢酸を含む水および0.05%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルのグラジエントで、分取(25×250 mm)Atlantis C18逆相カラム(Agilent, Palo Alto, CA)にて、HPLCによって精製する。該画分を、Zorbax 300SB-C18 Poroshellカラム、ならびに5%の酢酸を含む水、および5%の酢酸を含むアセトニトリルのグラジエントを用いて、Agilent 1100シリーズの機器(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)で、エレクトロスプレーLC/MSによって分析する。95%よりも高い純度の生成物を含む画分だけを合わせ、凍結乾燥する。ペプチドを5%の酢酸から乾燥させ、酢酸塩への変換を確実にする。さらに純度および構造をZorbax 300SB-C18分析カラムでの分離によってLC/MSによって確証する。
【0091】
【表1−1】

【0092】
【表1−2】

【0093】
本明細書中に記載されるペプチドは、以下の一般構造:
【0094】
【化3】

【0095】
を有する二量体の形態にすることができ、式中、配列Xは、Ac-LAKFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:85);Ac-AKFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:86);およびAc-KFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:87)からなる群から選択され;リンカー1およびリンカー2のそれぞれは必要に応じて存在し、それぞれ独立してGly、β-Ala、アミノプロピオン酸、γ-アミノ酪酸、アミノカプロン酸、またはアミノヘキサン酸であり;nおよびmは0〜6であり;YはK、C、ホモCys、Orn、ジアミノプロパン酸(DPA)、ジアミノ酪酸(DBA)であり;そして脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、またはカプリル(caprilic)酸である。好ましい実施態様において、配列Xは、配列番号:87であり、nは4であり、mは0であり、リンカー1およびリンカー2のそれぞれはβ-Alaであり、脂肪酸はパルミタートである。
【0096】
YがLysである、かかる二量体の阻害剤の合成のために、εアミノ基に結合した脂肪酸を伴うFmoc-Lysが前もって組み込まれた(preloaded)樹脂を、1つのアミノ基にFmoc保護基を有し、他のアミノ基にDDE保護基を有する、対応するジアミノ酸(例えばOrn、Lys、ジアミノ酪酸(DBA)、またはジアミノプロピオン酸(DPA))と反応させる。ヒドロキシルアミンとイミダゾールとの混合物のDMF液を用いてDDE基を選択的に除去する。得られる樹脂を、ABI433ペプチドシンセサイザーでリンカーのアミノ酸(例えばFmoc-Gly、β-Ala、アミノプロピオン酸、γ-アミノ酪酸、アミノカプロン酸、またはアミノヘキサン酸)に結合させる。それぞれの配列Xの残りのものを標準的な合成プロトコルを用いてペプチドシンセサイザーで同時に構築する。標準的な合成プロトコルの通りに、二量体の生成物を切り出し、脱保護し、精製する。SMOi2-17の二量体の形態であるSMOi2-56をこの方法で製造する。
【0097】
SMOi2-29およびSMOi2-30は、ペネトラチンに融合したSMOi2-9に基づくペプチドであり、ペネトラチンは、DNA、ペプチド、またはタンパク質などの種々の生物活性分子を細胞内に導入するために使用されるアンテナペディア由来のペプチドである(Granierら, J. Biol. Chem. 279: 50904-50914 (2004))。ペネトラチンは、アミノ酸配列RQIKIWFPNRR-Nle-KWKK(配列番号:78)を有する。ペネトラチン含有ペプチドは、標準的なペプチド合成方法を用いて、単一のペプチド鎖として製造される。
【0098】
次のようにポリペプチドを脂質化する:C末端にε-パルミトイル-Lysを含むLペプチドについては、市販のFmoc-ε-パルミトイル-L-Lys(AnaSpac, San Jose, CA)を利用する。Fmoc-ε-パルミトイル-D-Lysは市販されていない。Fmoc-ε-パルミトイル-D-Lysを、直角に保護されたFmoc-D-Lys(ivDDE)(N-α-Fmoc-N-ε-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル-D-リシン)(Novabiochem, San Diego, CA)を利用して、樹脂上で合成する。該アミノ酸をRink-amide樹脂に結合させた後、ivDDE保護基をヒドラジン/イミダゾール混合物のNMP液で処理することによって除去する。樹脂をNMPで洗浄し、10倍過剰のパルミチン酸/HBTU/HOBtのNMP液と2時間反応させる。樹脂をNMPで洗浄した後、ペプチドシンセサイザーで標準的なプロトコルを利用して合成を続ける。N末端においてミリスチン酸または酢酸を含むペプチドについては、対応する脂肪酸(10倍過剰)をNMPまたはNMP/DCM混合物に溶解させ、HBTU/HOBt混合物を用いて活性化し、そして樹脂上でペプチドと反応させた。その後に続く切り出しおよび脱保護を、パルミチン酸について脂質化のために行った通りに行った。
【0099】
Agilent1100 LC/MSシステム(Agilent, Santa Clara, CA)を利用して、イオンスプレー質量分析によって、それぞれのペプチドの分子量を測定し、表2および表3に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
ペプチドのHPLCは、0.1%のトリフルオロ酢酸水/0.1%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの0〜100%、20 minのグラジエント、流量1 ml/minで、Microsorb-MW 300A C8カラム(Varian, Palo Alto, CA)によって行う。ペプチドは、225 nm、256 nm、および280 nmでのUVモニタリングによって検出する。データは示していない。
【0103】
実施例2
本実施例は、毒性について本発明のポリペプチドを試験する方法を示す。
【0104】
DU145前立腺癌細胞、PC3前立腺癌細胞、MCF7乳癌細胞、またはMel-SK-2黒色腫細胞(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を、96ウェルプレート内で、200〜400細胞/ウェルの密度で、10%のウシ胎仔血清を含むDMEM培地中に接種し、24時間付着させる。それぞれのウェルについて、100 μlの細胞の懸濁液を使用する。翌日2倍の濃度でポリペプチドを含む100 μlの培地を加え、48時間CO2インキュベーター内に保存する。ポリペプチドを1 nM〜10 μMの最終濃度で添加しながら、余分の参照プレートでアッセイを行い、時間0(T0)での細胞集団の密度を測定する。細胞をPromegaの非放射性細胞増殖アッセイキット(Non-Radioactive Cell Proliferation Assay Kit)(MTT)を用いて、製品のプロトコルに従って染色する。ウェルの吸光度を、544 nmで、FLUOstar/POLARstar(登録商標)Galaxyマイクロプレートリーダー(BMG Labtechnologies GmbH, Germany)によって測定する。アッセイを対照(C)細胞および試験(T)細胞で行う。以下の式:T > T0の場合、100 [(T - T0)/(C - T0)]、およびT < T0の場合、100 [(T - T0)/T0]を用いて、細胞の反応をデータから算出する。
【0105】
実施例3
本実施例は、本発明の実施態様によるポリペプチドが病気の細胞の増殖を阻害し得ることを示す。
【0106】
N末端のパルミトイル残基を有する、SMOの3つの細胞内ループすべての完全長に対応するポリペプチド(SMOi1-1、SMOi2-1、SMOi3-1)を実施例1に記載した通りに構築する。次いでMCF-7乳癌細胞および胃腺癌細胞を用いて、実施例2に記載した通りに、ポリペプチドを毒性(成長の阻害)について試験する。SMOi2-1およびSMOi3-1の活性を、コーンリリーのウェラトルム カリホルニクム(Veratrum califonicum)から単離された催奇形物質のシクロパミン(5 μM)の活性と比較する。
【0107】
図1に示されるように、3つのペプチドすべてがMCF-7細胞の成長を阻害する。SMOi3-1ポリペプチドは細胞の成長に最も著しい影響を有し、SMOi2-1がそれに続くが、SMOi1-1は最も少ない量の阻害活性を示している。図2に示されるようにSMOi3-1ポリペプチドおよびSMOi2-1ポリペプチドは、シクロパミンと同等か、またはシクロパミンよりも良好に胃腺癌細胞の成長を阻害し得る。
【0108】
実施例4
本実施例は、本発明の実施態様によるSMOタンパク質の第二および第三番目の細胞内ループに基づくアミノ酸配列を有する機能的断片および機能的変異体は、病気の細胞の増殖を阻害し得ることを示す。
【0109】
SMOの第二または第三番目の細胞内ループに基づくポリペプチド(SMOi2またはSMOi3のポリペプチド)(表1に示される)を実施例1に記載した通りに合成し、MCF-7乳癌細胞またはSK-Mel2黒色腫細胞を用いて、実施例2に記載した通りに試験する。SK-Mel2黒色腫細胞におけるMTTアッセイによってペプチドに48時間曝した後に測定したそれぞれのペプチドのIC50を表4および表5に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
表5および図3に示したように、SMOの第三番目の細胞内ループに基づくポリペプチドは、MCF-7細胞の成長を阻害する能力を示す。第三番目の細胞内ループの断片に相当するペプチドはまた、完全長のループ(SMOi3-1)と同等か、または該ループよりも低い活性を有している。
【0113】
表4に示したように、SMOの第二番目の細胞内ループに基づくいくつかのポリペプチド(SMOi2ポリペプチド)は、SK-Mel2黒色腫細胞の成長を、ポリペプチドに48時間曝した後に阻害し得る。最も強力な阻害剤のうちには、SMOi2-16、SMOi2-17、SMOi2-8、SMOi2-23、SMOi2-24、SMOi2-20、SMOi2-26、SMOi2-11、およびSMOi2-12がある。SMOi2-6、SMOi2-7、SMOi2-2〜SMOi2-5、SMOi2-10、およびSMOi2-13もまた、強力な阻害剤である。第二番目の細胞内ループのC末端の切断は、完全長ループ(SMOi2-1)よりも癌細胞に対して著しくより毒性のあったポリペプチドを生じる。ループの末端(該末端は野生型SMOタンパク質において膜に近接している)に位置するアミノ酸でパルミトイル化された場合、ループの双方の半分は活性がある。しかしながら、N末端の半分のC末端を伸張させることは、最も強力な12残基長のポリペプチドの活性を低下させる(ペプチドSMOi2-8をSMOi2-6およびSMOi2-3と比較されたい)。
【0114】
パルミタートをアセチル残基で置換すると著しく阻害活性が減少するため(SMOi2-9およびSMOi2-13を比較されたい)、ポリペプチドにパルミチン酸の脂質を付加することは活性に不可欠のようである。このことは、おそらく該ポリペプチドの細胞透過が少ないことによるものである。ループの内部にパルミトイル基を位置させると、著しく活性の低いペプチドを生じたため(表5のSMOi3-4)、パルミトイル化がループの末端(該末端は野生型SMOタンパク質において膜に近接している)で起こることが必要であるようである。これらのポリペプチドの成長阻害曲線は、高濃度でプラトーになるか、上方に湾曲するかのいずれかであり、阻害活性が実際に高濃度で減少することを示している。SMOi3-1、SMOi3-8、SMOi3-2、SMOi3-6、およびSMOi3-12は、それぞれ試験した最も強力なポリペプチドの1つである。
【0115】
SMOi3ポリペプチドとは異なり、すべての第二番目のループの誘導体は、成長阻害活性の「標準的」濃度依存プロフィールを有している。
【0116】
細胞の内部でのペプチドの別の送達として、SMOi2-9をペネトラチンに融合させる。C末端の融合もN末端の融合も活性を回復することには役立たず、パルミトイル化が単なる細胞の透過性を超えるものを提供することを示唆している。また、SMOタンパク質の膜貫通領域の配列でパルミトイル残基を置換することは、活性の損失を克服しない(SMOi2-14およびSMOi2-15)。活性の欠乏は、これらのポリペプチドが低い溶解度を有するということによるかもしれない。パルミトイル残基のわずかにより短いミリストイルによる置換は、2.5倍低い効力の化合物(SMOi2-26)もたらす。細胞の内部でのペプチドの局在化および相互作用するタンパク質分子の特性を研究するために、ビオチンで標識された架橋性誘導体の合成を試みる。SMOi2-8のTrp残基をタンパク質リガンドにUV架橋され得るp-ベンゾイル-フェニルアラニンで置換すると、かなり活性のある化合物が生成する(SMOi2-18、表4)。しかしながら、C末端のホモシステインのSH基を通じて結合されるマレイミド-ビオチン(maleimide-biotin)の添加は(SMOi2-21)、活性を完全になくし、したがって該化合物を受容体の識別のために適さないものにする。
【0117】
SMOi2ポリペプチドのレトロインベルソ類似体は、阻害活性を示す。SMOi2-8のレトロインベルソ類似体であるSMOi2-16、ならびにSMOi2-11(およびSMOi2-12)のレトロインベルソ類似体である、SMOi2-16の切断物のSMOi2-17の双方は、そのすべてLの親ポリペプチドよりも、黒色腫細胞を阻害し、死滅させることにおいて、より強力である(図4および図7)。
【0118】
実施例5
本実施例は、本発明の実施態様による、細胞におけるヘッジホッグシグナル伝達経路のタンパク質の遺伝子発現を阻害する方法を示す。
【0119】
ヘッジホッグシグナル伝達経路の公知のマーカーである遺伝子Gli-1、Gli-2、Gli3、Ptch、Shh、Smo、およびNESの発現の分析を行う。DU145前立腺癌細胞を、SMOi3-1(5 μMもしくは10 μM)、SMOi2-1(5 μMもしくは10 μM)、またはシクロパミン(5 μM)に48時間曝す。遺伝子発現を定量PCRによってアッセイする。遺伝子発現アッセイのために、DU145前立腺癌細胞を、それぞれ5 μMのSMOi3-1に24 h、ならびに5 μMおよび10 μMのSMOi3-1に48 h曝した。DU145細胞を5 μMおよび10 μMのSMOi2-1によって24 hだけ処理した。対照は化合物処理なしのDU145細胞であった。5 μMのシクロパミンは、すべての実験で常に陽性対照として使用した。
【0120】
細胞のRNA全体を単離し、製造業者の取扱説明書に従って、RNeasy(登録商標)カラム(QIAGEN, Valencia, CA)によってさらに精製した。Agilent RNA 6000 ナノチップ(Nano Chip)(Agilent Technologies, Inc., CA)を用いて、RNAの質および量を測定した。ランダムヘキサマープライマー(Random Hexamer primer)、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(Reverse Transcription Reagents)キット(Applied Biosystems, Foster, CA)を用いて、cDNAの合成を行った。
【0121】
PTCH(アッセイID=Hs00181117_ml)、GLI1(Hs00171790_ml)、GLI2(Hs00257977_ml)、GLI3(Hs00609233_ml)、SMO(Hs00170665_m1)、SHH(Hs00179843_ml)、およびNES(Hs00707120_s1)のリアルタイム定量PCR分析に、Taqman(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Gene Expression Assay)プライマーおよびプローブ(FAM標識)セット(Applied Biosystems, Foster, CA)を使用する。18S rRNAのプライマーおよびプローブ(VIC標識)のTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ混合物(Gene Expression Assay mix)を内在性コントロールとして使用した。それぞれの試料は3連で実施する。製造業者(Applied Biosystems, Foster, CA)によって説明される比較(comparative)Ct(ΔΔCt)法を用いて、3連のCt値を解析した。目的の相対量(2-ΔΔCt)を内在性の基準(18s rRNA)に対して正規化することによって得る。
【0122】
図5に示したように、遺伝子発現の変化は、SMOのアンタゴニストであるシクロパミンの該変化よりも顕著である。このことは、該ポリペプチドが、シクロパミンよりもはるかに高い効力を有することと一致する。
【0123】
実施例6
本実施例は、本発明の実施態様による本発明のペプチド模倣体が病気の細胞の増殖を阻害することを示す。
【0124】
ペプチドSMOi2-18およびSMOi2-21を本質的に実施例1に記載される通りに製造し、SK-Mel2細胞を用いて実施例2に記載される通りに試験する。細胞は60時間ポリペプチドまたはペプチド模倣体に曝す。
【0125】
図6に示されるように、それぞれが合成アミノ酸BPAを含むペプチド模倣体SMOi2-18およびSMOi2-21は、SK-Mel2細胞の増殖を阻害する能力を示す。該阻害活性は、天然のアミノ酸だけを含む、該ポリペプチドの対応物SMOi2-8の阻害活性よりもさらにより強力である。
【0126】
実施例7
本実施例は、SMOi2-8の臨界ミセル濃度を示す。
【0127】
疎水性ナノ粒子の形成をモニタリングするために、蛍光を発するイミダゾアクリドン化合物WMC-77(5-{3-[4-(アミノプロピル)-ピペラジン-1-イル]-プロピルアミノ}-2,10b-ジアザ-アセアントリレン-6-オン)を使用する(Tarasovら, Photochem. Photobiol. 78: 313-322 (2003))。WMC-77のような化合物は、DNAのような生体高分子(Tarasovaら, 2003, 上掲)または典型的なミセルの疎水性の核(Tarasovら, Photochem. Photobiol. 70: 568-578 (1999))の両親媒性の環境に入った場合、その本来持っている蛍光を劇的に増強する傾向がある。イミダゾアクリドンは、水溶液から石英に吸着されるため、ほとんどの測定では、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)のプラスチックのポリメタクリレートの10×10 mmのセルを使用する。BIAからの類似の値の蛍光強度が窒素パージの前および後で得られているため、大気中の酸素の消光は重要ではないことがわかっている。溶液は脱イオン水を用いて調製する。補正されていない蛍光発光スペクトルを25℃で単一光子計数蛍光分光光度計(Single Photon Counting Spectrofluorometer)FLUOROMAX(登録商標)-2(Horiba Jobin Yvon, Edison, NJ)にて得る。励起および発光のモノクロメーターのスリットをそれぞれ1.5 nm および3.5 nmのバンド幅に調節する。430 nmの励起のモノクロメーターの設定を用いて、450〜700 nmの範囲で、発光スペクトル(増分1 nm, 積分時間0.2秒)を収集する。ペプチド溶液およびイミダゾアクリドンの溶液を前もって混合したアリコートについて、蛍光定量的測定を行う。すべてのプローブにおける蛍光剤WMC-77の濃度は、0.4 μMである。
【0128】
蛍光のデータを図8に提示する。ペプチド/フルオロフォアの比の増大は WMC-77の蛍光発光強度の持続的な増大をもたらし、〜2 μMで同じ水準になる。蛍光シグナルの変化は、イミダゾアクリドンの水性の媒体から有機溶媒などの非極性の媒体への移行時(Tarasovら, 1999, 上掲)、標準的な界面活性剤のミセルの核への移行時(Tarasovら, 1999, 上掲)、またはDNAへの結合時(Tarasov ら, 2003, 上掲)に観察される蛍光シグナルの変化に類似している。(Tanford, The Hydrophobic Effect: Formation of Micelles and Biological Membranes, John Wiley & Sons, New York (1980))に記載される通りに推定される臨界ミセル濃度は、SMOi2-8の0.5〜1 μMと測定されている。
【0129】
本研究のすべての他のペプチドについて上記のように臨界ミセル濃度を試験し、それぞれのペプチドについて約1 μMであることがわかっている。ミセル形成は、溶液中の遊離ペプチドの有効濃度の低下、およびそれに続いて起こる見かけ上の効力の減少の原因であり得る。大部分のペプチドはまた、媒体中10 μMよりも高い濃度で析出した。
【0130】
実施例8
本実施例は、本発明のペプチドが種々の細胞株に対して種々の感受性を示すことを示す。
【0131】
乳癌細胞(T47D)、黒色腫の癌細胞(SK-MEL-2)、肝細胞腫の癌細胞(HepG2, PLC, JM-1)、膵臓癌細胞(Panc10.05, HS766T)、結腸癌細胞(Colo205, HCT15)、および肺癌細胞(A549)を0.001 μM、0.01 μM、0.1 μM、1.0 μM、または5 μMの濃度でSMOi2-12かSMOi2-20かのいずれかを含む媒体中で培養する。細胞を実施例2に記載されるようにアッセイする。図9に示すように、SMOi2-12およびSMOi2-20は、治療される細胞に応じて種々の感受性を示している。GI50>5を示す細胞株としては、PLC、JM-1、HS766T、Colo205、HCT15、およびA549が挙げられる。
【0132】
実施例9
本実施例は、本発明のペプチドが二次構造を有することを示す。
【0133】
ペプチドを円二色性(CD)分光法によって測定する。化合物を50 mMのドデシルホスホコリン(dodecylphophocholine)(Avanti Polar Lipids, Alabaster, AL)を含むPBSに溶解することによってペプチド溶液(1 μM)を調製する。22〜24℃で0.1 cmの経路長の石英のキュベットを用いて、AVIVモデル202 CD分光光度計(Aviv Instruments, Lakewood, NJ)によって、CDスペクトルを記録する。走査範囲は180〜260 nmであり、該緩衝液のスペクトルを化合物のスペクトルから差し引く。
【0134】
SMOi2-8およびSMOi2-16のCDスペクトル(図10)は、ペプチドが主としてβストランド立体配座を採ることを示している。レトロインベルソペプチドは、親のすべてLの対応物よりも、より構造化され、硬いようである。
【0135】
実施例10
本実施例は、本発明のポリペプチドのアラニン走査研究を示す。
【0136】
SMOi2-8の配列(PalLTYAWHTSFKAL)における異なる残基の有意性を、SMOi2-8ペプチドの変異体の集合体をつくり出すことによって探索する。該集合体においては、集合体のそれぞれの変異体がAlaで置換されたアミノ酸残基を有し、SMOi2-8のあらゆる残基が集合体における少なくとも1つの変異体による変異の標的とされる。
【0137】
SMOi2-8の第10位のLys残基は、SMOi2-8ペプチドの活性に重大な意味をもつ。活性の有意な損失はまた、SMOi2-8の8位のSerの置換の際に観察される。活性は、1位のLeuをAlaで置換したときに増大した。9位のPhe、3位のTyr、および5位のTrpは、活性の有意な変化なしにAlaで置換することができる。残りの置換(2、4、6、7、11、および12)は、GI50のわずかな(40〜60%)増大をもたらす。
【0138】
本明細書中に引用された刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参照文献は、本明細書中にそれぞれの参照文献が個別にかつ具体的に参照によって援用されるように示され、その全体が記述されているのと同じ程度に、本明細書によって参照によって援用される。
【0139】
本明細書中に別段示されない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、本発明の説明との関係における(特に以下の特許請求の範囲との関係における)、語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「該(the)」、ならびに類似の指示対象の使用は、単数および複数の双方をカバーするように解釈されるべきである。別段記載しない限り、用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、オープンエンドの用語(すなわち「含むが限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中に別段示さない限り、本明細書中の値の範囲の記載は、該範囲に入るそれぞれの別個の値を個々に指す略記方法として役立つことを意図したものであるにすぎず、それぞれの別個の値は、それが本明細書中に個々に記載されているかのように本明細書中に取り込まれる。本明細書中に別段示されない限り、または文脈によって別段明らかに否定されない限り、本明細書中に記載されたすべての方法は、任意の適切な順序で行うことができる。別段特許請求しない限り、本明細書中に提供される任意の、かつすべての例または例示的な言葉(例えば「など」)の使用は、本発明をより上手く説明することを意図したものにすぎず、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書における言葉は、特許請求がなされていない任意の要素を本発明の実施に不可欠なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0140】
本発明の好ましい実施態様は、本明細書中に記載されており、本発明者らが知る本発明を実施するための最良の形態を含んでいる。こうした好ましい実施態様の変形形態は、前述の説明を読んだ際に当業者に明らかになり得る。本発明者らは当業者はかかる変形形態を適宜使用するものと思っており、本発明者らは本発明が本明細書において具体的に説明したのとは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された要旨の、適用され得る法律によって許容されるすべての修正形態および均等物を含む。また、本明細書中に別段示されない限り、または文脈によって別段明らかに否定されない限り、上記要素のすべての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせは、本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スムースンド(SMO)タンパク質(配列番号:1)の一部分のアミノ酸配列を含む、単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体であって、該部分は配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列、その機能的断片、または該部分か該機能的断片かのいずれかの機能的変異体を含み、該機能的変異体は、配列番号:2、3、または4との少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、該ポリペプチドまたはペプチド模倣体は50アミノ酸長以下であり、該機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも7つの連続するアミノ酸を含み、かつ該機能的断片または機能的変異体は病気の細胞の増殖を阻害する、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、またはこれらの脂肪酸誘導体。
【請求項2】
ペプチド模倣体がペプトイドである、請求項1記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項3】
機能的断片が、配列番号:5〜8のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項4】
機能的断片が、配列番号:9〜33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項5】
機能的変異体が、配列番号:23の1〜7位、9位、11位、および12位のうちのいずれかの位置で1つのアミノ酸が置換された、配列番号:23のアミノ酸配列を含み、該位置の該アミノ酸がAlaで置換されている、請求項1または2に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項6】
機能的変異体が、配列番号:23、26、または33のレトロインベルソ類似体を含む、請求項1または2に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項7】
レトロインベルソ類似体が、配列番号:34〜37、84、および92〜94のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項8】
以下の一般構造:
【化1】



(式中、配列Xは、Ac-LAKFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:85);Ac-AKFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:86);およびAc-KFSTHWAYTL(すべてD)(配列番号:87)からなる群から選択され;リンカー1およびリンカー2のそれぞれは必要に応じて存在し、それぞれ独立してGly、β-Ala、アミノプロピオン酸、γ-アミノ酪酸、アミノカプロン酸、またはアミノヘキサン酸であり;nおよびmは0〜6であり;YはK、C、ホモCys、Orn、ジアミノプロパン酸(DPA)、ジアミノ酪酸(DBA)であり;そして脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、またはカプリル(caprilic)酸である)を含む、請求項6に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体。
【請求項9】
機能的変異体が、配列番号:38〜59のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項10】
脂肪酸誘導体が、アミノ(N)末端、カルボキシル(C)末端、またはN末端およびC末端の双方に脂肪酸分子を含み、前記脂肪酸分子が任意に少なくとも1つのアミノ基を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項11】
脂肪酸分子がC末端に存在する場合に、該脂肪酸分子は、Lys、Cys、ホモシステイン、Orn、α,γ-ジアミノ酪酸、およびα,β-ジアミノプロピオン酸からなる群から選択されるアミノ酸を通じてポリペプチドまたはペプチド模倣体に結合している、請求項10記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項12】
アミノ酸がLysである、請求項11記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項13】
脂肪酸分子がC8〜C20脂肪酸である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項14】
脂肪酸分子がC16脂肪酸である、請求項13記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項15】
脂肪酸分子が、C末端に存在する場合に、該脂肪酸分子は式Iまたは式IIの分子であり、式IはNH2(CH2)nCOOHであり、式IIはCH3(CH2)mCH(NH2)COOHであり、式中nおよびmはそれぞれ1〜24である、請求項10記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項16】
nまたはmが16である、請求項15記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項17】
細胞透過性ペプチド(CPP)をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項18】
CPPが配列番号:78または79のアミノ酸配列を含む、請求項17記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項19】
ペプチド模倣体が、以下の構造のメチル化されたペプチドの主鎖を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【化2】

【請求項20】
約10〜約12個のアミノ酸を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の単離または精製された、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。
【請求項21】
(i)スムースンド(SMO)タンパク質(配列番号:1)の一部分のアミノ酸配列を含み、該部分は配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列、その機能的断片、または該部分か該機能的断片かのいずれかの機能的変異体を含み、該機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも7つの連続するアミノ酸を含み、かつ該機能的断片または機能的変異体は病気の細胞の増殖を阻害する、ポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、またはこれらの脂肪酸誘導体、および(ii)標的指向化部分を含む、結合体。
【請求項22】
スムースンド(SMO)タンパク質(配列番号:1)の一部分のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離または精製された核酸であって、該部分は配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列、その機能的断片、または該部分か該機能的断片かのいずれかの機能的変異体を含み、該機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも7つの連続するアミノ酸を含み、かつ該機能的断片または機能的変異体は病気の細胞の増殖を阻害する、核酸。
【請求項23】
スムースンド(SMO)タンパク質(配列番号:1)の一部分のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸を含む組み換え発現ベクターであって、該部分は配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列、その機能的断片、または該部分か該機能的断片かのいずれかの機能的変異体を含み、該機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも7つの連続するアミノ酸を含み、かつ該機能的断片または機能的変異体は病気の細胞の増殖を阻害する、組み換え発現ベクター。
【請求項24】
スムースンド(SMO)タンパク質(配列番号:1)の一部分のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸を含む組み換え発現ベクターを含む宿主細胞であって、該部分は配列番号:2〜4のいずれかのアミノ酸配列、その機能的断片、または該部分か該機能的断片かのいずれかの機能的変異体を含み、該機能的断片は、配列番号:2、3、または4の少なくとも7つの連続するアミノ酸を含み、かつ該機能的断片または機能的変異体は病気の細胞の増殖を阻害する、宿主細胞。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体を含む医薬組成物であって、任意に脂質、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項21記載の結合体を含む医薬組成物であって、任意に脂質、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項27】
請求項22記載の核酸を含む医薬組成物であって、任意に脂質、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項28】
請求項23記載の組み換え発現ベクターを含む医薬組成物であって、任意に脂質、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項29】
局所製剤である、請求項25〜28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
局所製剤がクリーム、ローション剤、軟膏剤、または貼付剤である、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
ローション剤はまた紫外(UV)線遮断剤も含む、請求項30記載の医薬組成物。
【請求項32】
静脈内投与製剤、または皮下投与製剤である、請求項25〜28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
病気の細胞と、病気の細胞の増殖を阻害するのに有効な量の請求項25〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物とを、接触させることを含む、病気の細胞の増殖の阻害方法。
【請求項34】
病気の細胞が宿主内にある、請求項33記載の方法。
【請求項35】
宿主が哺乳動物である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物がヒトである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
宿主の癌を治療または予防する、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
癌が、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、胃癌、結腸癌、肝臓癌、黒色腫、基底細胞癌、横紋筋肉腫、髄芽腫、膵臓癌、肺癌、甲状腺癌、骨髄腫、リンパ腫、神経膠腫、または肉腫である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
胃癌が胃腺癌である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
宿主の新生物を治療または予防する、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
医薬組成物が宿主に局所投与される、請求項33〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
医薬組成物が宿主に腫瘍内で投与される、請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
癌を治療し、または予防するのに有効な量の、請求項25〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物を宿主に投与することを含む、宿主における癌の治療方法、または予防方法。
【請求項44】
乾癬を治療するのに有効な量の、請求項25〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物を宿主に投与することを含む、宿主における乾癬の治療方法。
【請求項45】
新生物を治療するのに有効な量の、請求項25〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物を宿主に投与することを含む、宿主における新生物の治療方法。
【請求項46】
病気の細胞と、遺伝子の発現を阻害するのに有効な量の請求項25〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物とを、接触させることを含む、病気の細胞におけるGli-1、Gli-2、Gli-3、Ptch、Shh、Smo、NES、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現の阻害方法。
【請求項47】
病気の細胞と、ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するのに有効な量の請求項25〜32のいずれか1項に記載の医薬組成物とを、接触させることを含む、病気の細胞におけるヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害方法。
【請求項48】
スムースンド(SMO)タンパク質(配列番号:1)の一部分のアミノ酸配列を含む、単離または精製された、ポリペプチド、またはペプチド模倣体であって、該部分は配列番号:5〜8のいずれかのアミノ酸配列、またはその機能的変異体を含み、該ポリペプチドまたはペプチド模倣体は約50アミノ酸長未満であり、該機能的変異体は、配列番号:80のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、またはペプチド模倣体。
【請求項49】
宿主における癌の治療もしくは予防、乾癬の治療、または新生物の治療のための医薬の製造における請求項1〜20、および48のいずれか1項に記載のポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体の使用。
【請求項50】
宿主における癌の治療もしくは予防、乾癬の治療、または新生物の治療のための請求項1〜20、および48のいずれか1項に記載のポリペプチド、もしくはペプチド模倣体、または脂肪酸誘導体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−508305(P2010−508305A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534941(P2009−534941)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/083027
【国際公開番号】WO2008/070357
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(304048296)アメリカ合衆国 (18)
【Fターム(参考)】