説明

スライド機構

【課題】本発明はベース側プレート上をスライド側プレートがスライドするよう構成されたスライド機構に関し、中央部分に比較的広い空間を形成できると共に搭載される装置・機器の小型化を図ることを課題とする。
【解決手段】ベース側プレート31と、このベース側プレート31上をスライドするスライド側プレート32と、スライド側プレート32に離間配設された一対のワイヤー取付ピン54A,54B,55A,55Bに両端部が固定されており、この両端部の間に山型に屈曲形成された屈曲部133A,134Aが外側に向け凸となるよう配設されたばね材よりなるワイヤー33,34と、スライド側プレート32に配設されると共にワイヤー33,34に係合しスライド側プレート32のスライドに伴いワイヤー33,34を変形付勢し又は変形したワイヤー33,34から弾性力が印加されるローラー52,53とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライド機構に係り、特にベース側プレート上をスライド側プレートがスライドするスライド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、テンキー等が配設された第1の筐体に対して液晶表示装置等が配設された第2の筐体をスライド可能な構成とした携帯電話機が提供されている。この種の携帯電話機には、筐体のスライド動作を可能とするためにスライド機構が内設されている。この種のスライド機構としては、例えば特許文献1に開示された機構が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたスライド機構は、ベース部材と、スライダーと、トーションバネとを有した構成とされている。スライダーはベース部材に対して移動可能な構成とされており、またトーションバネはベース部材とスライダーとの間に設けられている。
【0004】
このトーションバネは、スライダーの移動に伴い弾性力を蓄成しながらベース部材上を回転移動し、所定位置を越えた時点で蓄成された弾性力によりスライダーを移動付勢する構成とされている。これにより、上記所定位置以降は、スライダーはトーションバネの弾性力によりスライドアシストされ、よってスライダーを自動的に移動させることができる。
【特許文献1】特開2005−210649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のスライド機構は、スライダーの移動に伴いトーションバネが大きくベース部材上を回転移動する構成であったため、スライド機構内にトーションバネの移動する移動領域を設けておく必要がある。このため、このスライド機構ではトーションバネの移動領域に他の部品等を配設することができず、またスライド機構が大型化してしまうという問題点があった。
【0006】
また、トーションバネをスライド機構に組み付ける際、トーションバネの一方の端部をベース部材に取り付けると共に、他方の端部をスライダーに取り付ける必要があり、トーションバネの取付作業が面倒であるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、中央部分に比較的広い空間を形成できると共に、搭載される装置・機器の小型化を図りうるスライド機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明に係るスライド機構では、
ベース側プレートと、
該ベース側プレート上をスライドするスライド側プレートと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか一方に配設されており、固定された両端部の間に山型に屈曲形成された屈曲部が前記一方のプレートの外側に向け凸となるよう配設されたばね材よりなるワイヤーと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか他方に配設されており、前記ワイヤーに係合することにより前記スライド側プレートのスライドに伴い前記ワイヤーを変形付勢し、また変形した前記ワイヤーから復元力が印加されるローラーとを有することを特徴とするものである。
【0009】
また、上記の課題を解決するために本発明に係るスライド機構では、
ベース側プレートと、
該ベース側プレート上をスライドするスライド側プレートと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか一方に、離間配設された一対の取付ピンと、
該取付ピンに両端部が固定されており、該両端部の間に山型に屈曲形成された屈曲部が前記ベース側プレートの内側に向け凸となるよう配設されたばね材よりなるワイヤーと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか他方に配設されており、前記ワイヤーに係合することにより前記スライド側プレートのスライドに伴い前記ワイヤーを変形付勢し、また変形した前記ワイヤーから復元力が印加されるローラーとを有し、
前記ワイヤーの端部が、前記取付ピンに対して外側から内側に向け巻き付けられて取り付けされた構成としたことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記発明において、前記ベース側プレートに前記スライド側プレートのエッジ部と係合する樹脂製ガイドを設けた構成としてもよい。
【0011】
また、上記発明において、前記ワイヤーを前記ベース側プレートに対向するよう2本配設し、前記ローラーを前記スライド側プレートに対向するよう2個配設した構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記発明によれば、ワイヤーの屈曲部が外側に向け凸となるよう配設したことにより、ベース側プレートの中央部分に広い空間部を形成することができる。よってこの中央部に他の部品の搭載が可能となり、また機構全体の小型化を図ることができる。
【0013】
また、ワイヤーが取付ピンに対して外側から内側に向け巻き付けられて取り付けられた構成とすることにより、ワイヤーをその屈曲部が内側に向け凸となるよう配設しても、ベース側プレートに広い空間を形成することができ、この空間部分に他の部品の配設が可能となり、スライド機構の有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0015】
図1乃至図3は、本発明の第1実施例であるスライド機構30Aを示している。尚、図1はスライド機構30Aの平面図及び正面図であり、図2はスライド機構30Aの分解斜視図であり、図3は図1(B)に矢印Bで示す領域を拡大して示す図である。
【0016】
スライド機構30Aは、大略するとベース側プレート31、スライド側プレート32、ワイヤー33,34、ローラー35,36、及びガイド37,38等により構成されている。
【0017】
ベース側プレート31は、金属板材(例えば、ステンレス等)をプレス加工により成形したものであり、平面視で略長方形状を有している。またベース側プレート31は、底板部39の長辺側の両側部に折曲部41,42が形成されている(図2及び図3に詳しい)。
【0018】
折曲部41,42は、正面視で略コ字状に成形されている。この折曲部41,42は、長手方向に部分的に切り欠き部45,46が形成されている。また折曲部41,42には、後述するようにガイド37,38が配設される。更に、底板部39の略中央位置には、開口部40が形成されている。この開口部40は、図2に示すようにフレキシブル配線基板(以下、FPCという)60が装着される。
【0019】
スライド側プレート32は、金属板材(例えば、ステンレス等)をプレス加工することにより、基部49の両側部にエッジ部50,51を形成した構成とされている。このエッジ部50,51は、基部49の両側部に若干段差を形成するよう設けられている。
【0020】
また、エッジ部50は前記した折曲部41に配設されるガイド37に摺接し、エッジ部51は前記した折曲部42に配設されるガイド38に摺接する。これによりスライド側プレート32はガイド37,38にガイドされ、図中矢印X1,X2方向にスライド可能な構成となる。
【0021】
ここで主に図3を用い、スライド側プレート32がベース側プレート31にスライド可能に支持される構造について説明する。尚、図示の便宜上、図3にはガイド38側のみを示している。
【0022】
前記のように、ベース側プレート31の両側縁には折曲部41,42が形成されており、折曲部41にはガイド37が、また折曲部42にはガイド38が配設されている。このガイド37,38は、ポリアセタール樹脂等の樹脂材により形成されている。ポリアセタール樹脂は、非晶部分と結晶部分が混在するために、強度、弾性率、耐衝撃性、摺動特性等に優れたエンジニアリング・プラスチックである。
【0023】
このガイド37,38は、周知の成形方法(例えば、モールド成形法)を用いて成形することができる。また、ガイド37,38は、スライド側プレート32に対してインサート成型することも可能である。インサート成型した場合には、ガイド37,38を折曲部41,42内に取り付ける作業が不要となるため、スライド機構30Aの組み立て工程の簡単化を図ることができる。
【0024】
また、ガイド37,38は、所定の間隔で係合凸部58,59が形成されている。この係合凸部58,59の形成位置は、折曲部41,42に形成された切り欠き部45,46の形成位置と対応するよう構成されている。そして、ガイド37,38を折曲部41,42に取り付けた状態において、係合凸部58,59は切り欠き部45,46と係合するよう構成されている。
【0025】
更に、ガイド37,38には、長手方向にスライド溝47,48が形成されている(図2及び図3に詳しい)。このスライド溝47,48の幅W(図3に矢印で示す)は、エッジ部50,51の厚さよりも若干大きく設定されている。スライド側プレート32がベース側プレート31に取り付けられた際、スライド側プレート32のエッジ部50,51はガイド37,38のスライド溝47,48内に挿入される。これにより、スライド側プレート32のエッジ部50,51は、ガイド37,38を介してベース側プレート31に支持された構成となる。
【0026】
エッジ部50,51は、スライド溝47,48内で矢印X1,X2方向に摺動可能な構成となっている。よって、スライド側プレート32はベース側プレート31に対してスライド可能な状態となる。この際、前記のようにガイド37,38は摺動特性等に優れたエンジニアリング・プラスチックであるポリアセタール樹脂製であるため、金属製のエッジ部50,51がスライド溝47,48内を摺動しても耐久性は良好である。
【0027】
また、エッジ部50,51がスライド溝47,48内を摺動する際、ガイド37,38には図中矢印X1,X2方向に力が印加される。しかしながら、ガイド37,38に一体的に形成された係合凸部58,59が切り欠き部45,46に係合しているため、ガイド37,38がX1,X2方向に移動するようなことはない。このため、ガイド37,38がベース側プレート31から離脱するようなことはなく、スライド機構30Aの信頼性を高めることができる。
【0028】
ワイヤー33,34は線状のばね材であり、本実施例ではピアノ線を用いている。このワイヤー33,34の図中矢印X1方向側の端部33B,34Bは、ワイヤー取付ピン54A,55Aに取り付けられることによりベース側プレート31に固定されている。また、ワイヤー33,34の図中矢印X2方向側の端部33C,34Cは、ワイヤー取付ピン54B,55Bに取り付けられることによりベース側プレート31に固定されている。この各取付ピン54A,54B,55A,55Bは、底板部39に予め形成された小孔に挿入された後、溶接等により底板部39に固定される。
【0029】
ワイヤー取付ピン54A,55Aとワイヤー取付ピン54B,55Bは、矢印X1,X2方向に離間している。また、各取付ピン54A,55A,54B,55Bの配設位置は、ベース側プレート31の長手方向縁部31A,31Bに近い位置に設定されている。
【0030】
ワイヤー33,34は、ベース側プレート31に取り付けられた状態において、平面視で略く字状を有した構成とされている。具体的には、ワイヤー33,34の端部33B,34Bと端部33C,34Cとの略中央位置に山型に屈曲形成された屈曲部33A,34Aが形成されている。そしてこの各屈曲部33A,34Aは外側に向け凸となるようベース側プレート31に配設されている。
【0031】
これにより、対向配設された一対のワイヤー33,34は、各端部33B,34B及び端部33C,34Cから中央に位置に向けて漸次その離間距離(図1における、一対のワイヤー33,34間の左右方向の距離)が漸次広くなり、屈曲部33A,34Aが対向する位置にて最も広くなる。
【0032】
また、ワイヤー33,34は、ベース側プレート31の底板部39と略接するように配設されている。このワイヤー33,34は、ベース側プレート31とスライド側プレート32との離間部分に配設されるものであるが、ワイヤー33,34を底板部39に近接配置したことにより、スライド機構30Aの薄型化を図ることができる。
【0033】
尚、以下の説明において、「内側」とはある基準位置に対してベース側プレート31のX1,X2方向に延在する中央線(図1に矢印STで示す)側であると定義し、「外側」とは当該基準位置に対して中央線側とは反対側であると定義する。
【0034】
具体的には、基準位置をワイヤー取付ピン54Bとした場合、このワイヤー取付ピン54Bに対する内側は、図1におけるワイヤー取付ピン54Bより左側となる。また、ワイヤー取付ピン54B(基準位置)に対する外側は、図1におけるワイヤー取付ピン54Bより右側となる。同様に、ワイヤー取付ピン55B(基準位置)に対する内側は、図1におけるワイヤー取付ピン55Bより右側となる。更に、ワイヤー取付ピン55B(基準位置)に対する外側は、図1におけるワイヤー取付ピン55Bより左側となる。
【0035】
ここで、再びスライド機構30Aの構成説明に戻る。ローラー35,36は、ローラー取付ピン52,53を用いてスライド側プレート32の背面(底板部39と対向する側の面)に配設されている。従って、ローラー35,36は、スライド側プレート32の移動(スライド)に伴って一体的に移動する。
【0036】
このローラー35,36は、前記したガイド37,38と同様に耐衝撃性、摺動特性等に優れたポリアセタール樹脂により形成されている。また、ローラー35,36の外周部分には、内側に向け所定の曲率で湾曲形状に窪んだ湾曲凹部56,57が形成されている(図3に詳しい)。この湾曲凹部56,57の曲率は、ワイヤー33,34の半径と対応するよう設定されている。
【0037】
このローラー35,36は、スライド側プレート32がベース側プレート31に装着された状態でワイヤー33,34の外側に係合する。そして、スライド側プレート32の移動に伴い、ローラー35,36は、ワイヤー33,34の外側を転動する。
【0038】
この際、前記のようにローラー35,36の外周にはワイヤー33,34の半径と対応した曲率の湾曲凹部56,57が形成されているため、ローラー35,36がワイヤー33,34から離脱することを有効に防止することができる。また、ローラー35,36は耐衝撃性、摺動特性等に優れたポリアセタール樹脂により形成されているため、ローラー35,36の長寿命化を図ることができる。
【0039】
続いて、上記構成とされたスライド機構30Aの動作について、図1及び図4乃至図8を用いて説明する。
【0040】
図1及び図4は、スライド側プレート32がベース側プレート31上において矢印X1方向端部に位置した状態(以下、この状態を第1の停止状態という)を示している。この第1の停止状態では、ワイヤー33,34は、ローラー35,36に弾性力を付勢している。
【0041】
この際、ワイヤー33,34は山型に屈曲された屈曲部33A,34Aが外側に向けと津となる形状とされているため、ワイヤー33,34からの弾性力は矢印X1方向の力と、これに直交して内側に向かう力に分力される。そして、スライド側プレート32は、このワイヤー33,34からのX1方向に作用する分力により矢印X1方向に付勢されている。このため、スライド側プレート32がベース側プレート31に対してスライドする(開いてしまう)ことを防止している。
【0042】
第1の停止状態からスライド側プレート32をスライドさせるには、ベース側プレート31に対してスライド側プレート32を矢印X2方向に移動させる。この時、操作者がスライド側プレート32をスライドさせる力をFとする。この力Fが前記したワイヤー33,34からのX1方向への分力よりも大きい場合、スライド側プレート32は矢印X2方向に移動を開始する。
【0043】
図5及び図6は、ローラー35,36がワイヤー33,34の屈曲部33A,34Aの位置まで移動した状態(以下、中立状態という)を示している。この中立状態では、ワイヤー33,34の弾性力はローラー35,36を外側方向に作用しており、矢印X1,X2方向に対する分力は発生しない。
【0044】
この中立状態から、操作者がスライド側プレート32をX2方向に移動させると、ローラー35,36は屈曲部33A,34Aの位置よりも矢印X2方向側においてワイヤー33,34と係合することとなる。ワイヤー33,34は、山形の形状であるため、ワイヤー33,34がローラー35,36に対して付勢する弾性力の分力は、反転して矢印X2方向となる。
【0045】
従って、この反転状態となる位置までスライド側プレート32を移動させると、その後は操作者がスライド側プレート32をX2方向にスライド付勢しなくても(即ち、操作者がスライド側プレート32から手を離しても)、スライド側プレート32はワイヤー33,34の弾性力(弾性復元力)により自動的にX2方向に移動する。尚、このワイヤー33,34の弾性力により、スライド側プレート32が自動的に移動する動作をスライドアシスト動作というもとする。
【0046】
図7及び図8は、スライド側プレート32がベース側プレート31上において矢印X2方向端部に位置した状態(以下、この状態を第2の停止状態という)を示している。この第2の停止状態においてもワイヤー33,34はローラー35,36に弾性力を付勢しており、その分力Fによりスライド側プレート32は矢印X2方向に付勢されている。従って、この矢印Fで示す分力により、ベース側プレート31に対してスライド側プレート32がX2方向端部に移動した状態を維持し、容易に移動することを防止している。
【0047】
このように、本実施例に係るスライド機構30Aは、ベース側プレート31に対してスライド側プレート32を移動させる際、中立状態よりも若干先の位置までベース側プレート31を移動すれば、後はスライドアシスト動作が行われ、自動的にスライド側プレート32を移動することができる。よって、スライド側プレート32のスライド動作を容易に行うことができ、操作性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施例に係るスライド機構30Aでは、ワイヤー33,34の略中央位置に山型に屈曲形成された屈曲部33A,34Aが形成されており、この各屈曲部33A,34Aが外側に向け凸となるよう構成されているため、中央部に比較的広い空間を形成することができる。このように、スライド機構30Aの中央部に比較的広い空間が形成されることにより、FPC60等のスライド機構30Aに配設される他の部品及び装置等の配設位置に自由度を持たせることが可能となる。
【0049】
また、ワイヤー33,34の屈曲部33A,34Aが外側に向け凸となるよう構成されることにより、ローラー35,36はワイヤー33,34の外側でガイド37,38の近傍に配置される。このため、ローラー35,36は、ワイヤー33,34を挟んでFPC60等の他の部品及び装置等が配設される領域の外側で移動することとなり、よってローラー35,36とFPC60等の他の部品及び装置等が干渉することを防止できる。
【0050】
図9は、上記した第1実施例に係るスライド機構30Aの変形例であるスライド機構30Bを示している。尚、図9において、図1乃至図8に示した構成と同一構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
上記した第1実施例に係るスライド機構30Aは、中央線STを挟んでワイヤー33とワイヤー34を対称となるよう配置した構成とした。これに対して本変形例では、1本のワイヤー33のみを配設したことを特徴としている。尚、図9では、平面視で右側に位置するワイヤー33のみを配設した構成を示したが、ワイヤー34のみを配設したスライド機構30Bとすることも可能である。
【0052】
このように、1本のワイヤー33又はワイヤー34を設けたスライド機構30Bにおいても、スライド側プレート32に対してスライドアシスト動作を行わせることが可能である。また、本変形例に係るスライド機構30Bは、2本のワイヤー33,34を有したスライド機構30Aに比べ、部品点数の削減及び小型化を図ることができる。
【0053】
次に、本発明の第2実施例について説明する。図10乃至図17は、第2実施例であるスライド機構130Aを説明するための図である。尚、図10乃至図17において、図1乃至図9に示した第1実施例に係るスライド機構30A,30Bの構成と同一構成については同一符号を付して、その説明を省略するものとする。
【0054】
本実施例に係るスライド機構130Aも、大略するとベース側プレート31、スライド側プレート32、ワイヤー133,134、ローラー35,36、及びガイド37,38等により構成されている。
【0055】
ベース側プレート31は、底板部39の長辺側の両側部に折曲部41,42が形成されており、この折曲部41,42には切り欠き部45,46が形成されている。また折曲部41,42には、ガイド37,38が配設される。また、底板部39の略中央位置には、FPC60が装着される開口部40が形成されている。
【0056】
スライド側プレート32は基部49の両側部にエッジ部50,51を形成しており、このエッジ部50は折曲部41に配設されるガイド37に摺接し、またエッジ部51は折曲部42に配設されるガイド38に摺接される。これによりスライド側プレート32は、ガイド37,38にガイドされることにより、図中矢印X1,X2方向にスライド可能な構成となっている。
【0057】
ワイヤー133,134は、第1実施例と同様にピアノ線等よりなる線状のばね材である。このワイヤー133,134の図中矢印X1方向側の端部33B,34Bはワイヤー取付ピン54A,55Aに取り付けられることによりベース側プレート31に固定される。また、ワイヤー133,134の図中矢印X2方向側の端部33C,34Cはワイヤー取付ピン54B,55Bに取り付けられることによりベース側プレート31に固定される。
【0058】
尚、各端部33B,33C,34B,34Cの各取付ピン54A,54B,55A,55Bへの具体的な取付構造については、説明の便宜上、後述するものとする。
【0059】
ワイヤー取付ピン54A,55Aとワイヤー取付ピン54B,55Bは、矢印X1,X2方向に離間しており、また各取付ピン54A,55A,54B,55Bの配設位置は、ベース側プレート31の長手方向縁部31A,31Bに近い位置に設定されている。よって、ワイヤー取付ピン54Aとワイヤー取付ピン55Aとの離間距離、及びワイヤー取付ピン54Bとワイヤー取付ピン55Bとの離間距離(図10に矢印L3で示す)は、比較的長く離間した構成とされている。
【0060】
ワイヤー133,134は、ベース側プレート31に取り付けられた状態において、平面視で略く字状を有した構成とされている。具体的には、ワイヤー133,134の端部33B,34Bと端部33C,34Cとの略中央位置に山型に屈曲形成された屈曲部133A,134Aが形成されており、各屈曲部133A,134Aは内側に向け凸となるよう配設されている。これにより、対向配設された一対のワイヤー133,134は、各端部33B,34B及び端部33C,34Cから中央に位置に向けて漸次その離間距離(図10における、一対のワイヤー133,134間の左右方向の距離)が漸次狭くなり、屈曲部133A,134Aが対向する位置にて最も狭くなる(この離間距離L4を図10に矢印で示す)。
【0061】
ローラー35,36は、ローラー取付ピン52,53を用いてスライド側プレート32の背面(底板部39と対向する側の面)に配設されている。このローラー35,36は、スライド側プレート32がベース側プレート31に装着された状態でワイヤー133,134の内側に係合する。そして、スライド側プレート32の移動に伴い、ローラー35,36は、ワイヤー133,134の内側上を転動する。
【0062】
更に、一対のローラー取付ピン52,53の離間距離L1(図10に矢印で示す)は、ワイヤー取付ピン54Aとワイヤー取付ピン55Aとの離間距離、及びワイヤー取付ピン54Bとワイヤー取付ピン55Bとの離間距離L3よりも短く、屈曲部33Aと屈曲部34Aとの離間距離L4よりも大きくなるよう設定されている(L3>L1>L4)。
【0063】
この各離間距離L1,L3,L4は、上記の条件を満たせば適宜変更することが可能である。そして、この調整により、スライド側プレート32を移動させる際に必要となる力F0(図13,図14等に示す)を調整することができる。
【0064】
具体例を挙げると、ローラー取付ピン53,54の離間距離L1に対し、屈曲部133A,134A間の離間距離L4を大きくすることにより、ワイヤー133,134のばね力を弱くすることができ、よってスライド側プレート32の移動に要する力を小さくすることができる。しかしながら、後述するスライドアシスト動作の力も小さくなる。
【0065】
続いて、上記構成とされたスライド機構130Aの動作について、図13乃至図17を用いて説明する。
【0066】
図13(A)及び図14は、スライド側プレート32がベース側プレート31上において矢印X1方向端部に位置した状態(第1の停止状態)を示している。この第1の停止状態では、ワイヤー133,134は、ローラー35,36に弾性力を付勢する。
【0067】
この際、ワイヤー133,134は屈曲部133A,134Aを有し、内側から外側へく字状に斜めに延出した形状となっている。このため、ワイヤー133,134からの弾性力は、矢印X1方向の力(図13(A)中、矢印F1で示す)と、これに直交して内側に向かう力(図示せず)とに分力される。
【0068】
そして、スライド側プレート32は、この矢印F1で示す分力により矢印X1方向に付勢されている。従って、この矢印F1で示す分力がスライド側プレート32に作用することにより、スライド側プレート32がベース側プレート31に対してスライドすることを防止している。
【0069】
停止状態からスライド側プレート32をスライドさせるには、ベース側プレート31に対してスライド側プレート32を矢印X2方向に移動させる。この時、操作者がスライド側プレート32をスライドさせる力をFとするとF>2×F1である場合、スライド側プレート32は矢印X2方向に移動を開始する。
【0070】
即ち、スライド側プレート32をX2方向にスライドさせる場合、操作者はワイヤー133,134のばね力(2×F1)に抗して第1の筐体10をスライドさせる。尚、このワイヤー133,134の弾性力の分力F1が矢印X1方向に作用する状態を第1の反転状態という。
【0071】
図13(B)及び図15は、ローラー35,36がワイヤー133,134の屈曲部133A,134Aの位置まで移動した状態(以下、中立状態という)を示している。この中立状態では、ワイヤー133,134はローラー35,36を外側に向け弾性力を付勢するため、矢印X1,X2方向に対する分力は発生しない。
【0072】
この中立状態から操作者がスライド側プレート32をX2方向に移動させると、ローラー35,36は屈曲部133A,134Aの位置よりも矢印X2方向側においてワイヤー133,134と係合することとなる。ワイヤー133,134がローラー35,36に付勢する弾性力の分力は、図13(C)に示すように反転して矢印X2方向となる。尚、このワイヤー133,134の弾性力の分力Fが矢印X2方向に作用する状態を第2の反転状態という。
【0073】
従って、第2の反転状態となる位置までスライド側プレート32を移動させると、その後は操作者がスライド側プレート32をX2方向にスライド操作しなくても、ワイヤー133,134の弾性力の分力(2×F)により、スライド側プレート32は自動的にX2方向に移動(スライドアシスト動作)する。
【0074】
図13(D)及び図16は、スライド側プレート32がベース側プレート31上において矢印X2方向端部に位置した状態(第2の停止状態)を示している。この第2の停止状態においてもワイヤー133,134はローラー35,36に弾性力を付勢しており、その分力Fによりスライド側プレート32は矢印X2方向に付勢されている。従って、この矢印Fで示す分力により、スライド側プレート32がX2方向端部に移動した状態を維持し、容易に移動することを防止している。
【0075】
このように、本実施例に係るスライド機構130Aにおいても、ベース側プレート31に対してスライド側プレート32を移動させる際、中立状態よりも若干先の位置までベース側プレート31を移動すればスライドアシスト動作が行われる。このため、ベース側プレート31に対するスライド側プレート32のスライド動作を容易に行うことができ、操作性の向上を図ることができる。
【0076】
次に、主に図10及び図17を用いて、ワイヤー133,134の端部33B,33C,34B,34Cをワイヤー取付ピン54A,54B,55A,55Bに固定する構造について説明する。
【0077】
前記したようにワイヤー133,134はピアノ線等の線状のばね材を用いている。そして、ワイヤー133,134の各端部33B,33C,34B,34Cをワイヤー取付ピン54A,54B,55A,55Bに取り付けることにより、ワイヤー133,134をベース側プレート31に配設する構成としている。この際、本実施例では、ワイヤー取付ピン54A,54B,55A,55Bに対して端部33B,33C,34B,34Cを外側から内側に向け巻き付けて取り付けることを特徴としている。
【0078】
具体的には、端部33Bはワイヤー取付ピン54Aに対して矢印R1で示す方向(図10,図17における反時計方向)に巻回することにより、端部33Bを外側から内側に向け巻き付けて固定した構成としている。同様に、端部33Cはワイヤー取付ピン54Bに対して矢印R2で示す方向(図10,図17における時計方向)に巻回することにより、端部33Cを外側から内側に向け巻き付けて固定した構成としている。
【0079】
また、端部34Bはワイヤー取付ピン55Aに対して矢印R3で示す方向(図17における時計方向)に巻回することにより、端部34Bを外側から内側に向け巻き付けて固定した構成としている。同様に、端部34Cはワイヤー取付ピン55Bに対して矢印R4で示す方向(図10,図17における反時計方向)に巻回することにより、端部34Cを外側から内側に向け巻き付けて固定した構成としている。
【0080】
この構成とすることにより、山型に屈曲形成された屈曲部133A,134Aを有するワイヤー133,134を、その屈曲部133A,134Aがベース側プレート31の内側に向け凸となるよう配設しても、ベース側プレート31の中央部に比較的広い空間を形成することができる。
【0081】
ここで比較例として、ワイヤー取付ピン54A,54B,55A,55Bに対し、ワイヤー133,134の端部33B,33C,34B,34Cを内側から外側に向け巻き付けて取り付けた場合、即ち本実施例と反対方向に各端部33B,33C,34B,34Cを取り付けた場合を図17に一点鎖線で示す。
【0082】
具体的には、比較例では端部33Bはワイヤー取付ピン54Aに対して矢印S1で示す方向(図17における時計方向)に巻回され、端部33Cはワイヤー取付ピン54Bに対して矢印S2で示す方向(図17における反時計方向)に巻回される。
【0083】
また、端部34Bはワイヤー取付ピン55Aに対して矢印S3で示す方向(図17における反時計方向)に巻回され、端部34Cはワイヤー取付ピン55Bに対して矢印S4で示す方向(図17における時計方向)に巻回される。
【0084】
図17から明らかなように、各端部33B,33C,34B,34Cを内側から外側に向け巻き付けて取り付ける比較例では、ワイヤー133(一点鎖線で示す)の位置が、本実施例におけるワイヤー133(実線で示す)の位置に比べ、図中矢印ΔLで示す分だけ内側の位置となる。またこれに伴い、ローラー35,36の離間距離も、本実施例の場合ではL1であったものが、比較例ではこれより狭いL2となってしまう(L2<L1)。このように、比較例の構成ではワイヤー133,134の屈曲部133A,134Aがベース側プレート31の中央近傍まで突出してしまい、この中央領域の有効利用を図ることができない。
【0085】
これに対して本実施例の構成では、ワイヤー取付ピン54A,54B,55A,55Bの配設位置が同一位置でありながら、ベース側プレート31の中央位置に広い空間を形成することができる。これにより、本実施例では開口部40を広く設定でき、よって幅広のFPC60を用いることが可能になる。また、中央位置の空間が広がることにより、他の部品を配設することも可能となる。
【0086】
図18は、上記した第2実施例に係るスライド機構130Aの変形例であるスライド機構130Bを示している。尚、図18において、図10乃至図17に示した構成と同一構成については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0087】
上記した第2実施例に係るスライド機構130Aは、中央線STを挟んでワイヤー133とワイヤー134を対称となるよう配置した構成とした。これに対して本変形例では、1本のワイヤー133のみを配設したことを特徴としている。尚、図18では、平面視で右側に位置するワイヤー133のみを配設した構成を示したが、ワイヤー134のみを配設したスライド機構130Bとすることも可能である。
【0088】
このように、1本のワイヤー133又はワイヤー134を設けたスライド機構130Bとしても、前記した図9に示したスライド機構30Bと同様に、スライド側プレート32に対してスライドアシスト動作を行わせることができる。また、本変形例に係るスライド機構130Bは、2本のワイヤー133,134を有したスライド機構130Aに比べ、部品点数の削減及び小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の第1実施例であるスライド機構の平面図及び正面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例であるスライド機構の分解斜視図である。
【図3】図3は、図1(B)に矢印Bで示す部分を拡大して示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、スライド側プレートがX1方向端部に位置した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、ローラーがワイヤーの屈曲部近傍位置まで移動した状態を示す平面図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、ローラーがワイヤーの屈曲部近傍位置まで移動した状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、スライド側プレートがX2方向端部に位置した状態を示す平面図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、スライド側プレートがX2方向端部に位置した状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第1実施例の変形例を説明するための平面図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施例であるスライド機構の平面図及び正面図である。
【図11】図11は、本発明の第2実施例であるスライド機構の分解斜視図である。
【図12】図12は、図10(B)に矢印Bで示す部分を拡大して示す図である。
【図13】図13は、本発明の第2実施例であるスライド機構の動作を説明するための図である。
【図14】図14は、本発明の第2実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、スライド側プレートがX1方向端部に位置した状態を示す斜視図である。
【図15】図15は、本発明の第2実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、ローラーがワイヤーの屈曲部近傍位置まで移動した状態を示す斜視図である。
【図16】図16は、本発明の第2実施例であるスライド機構の動作を説明するための図であり、スライド側プレートがX2方向端部に所定距離移動した状態を示す斜視図である。
【図17】図17は、本発明の第2実施例の効果を説明するための図である。
【図18】図18は、本発明の第2実施例の変形例を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0090】
30A,30B,130A,130B スライド機構
31 ベース側プレート
32 スライド側プレート
33,34,133,134 ワイヤー
33A,34A,133A,134A 屈曲部
33B,33C,34B,34C 端部
35,36 ローラー
37,38 ガイド
47,48 スライド溝
50,51 エッジ部
52,53 ローラー取付ピン
54A,54B,55A,55B ワイヤー取付ピン
56,57 湾曲凹部
58,59 係合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース側プレートと、
該ベース側プレート上をスライドするスライド側プレートと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか一方に配設されており、固定された両端部の間に山型に屈曲形成された屈曲部が前記一方のプレートの外側に向け凸となるよう配設されたばね材よりなるワイヤーと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか他方に配設されており、前記ワイヤーに係合することにより前記スライド側プレートのスライドに伴い前記ワイヤーを変形付勢し、また変形した前記ワイヤーから復元力が印加されるローラーと
を有することを特徴とするスライド機構。
【請求項2】
ベース側プレートと、
該ベース側プレート上をスライドするスライド側プレートと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか一方に、離間配設された一対の取付ピンと、
該取付ピンに両端部が固定されており、該両端部の間に山型に屈曲形成された屈曲部が前記ベース側プレートの内側に向け凸となるよう配設されたばね材よりなるワイヤーと、
前記ベース側プレート又は前記スライド側プレートのいずれか他方に配設されており、前記ワイヤーに係合することにより前記スライド側プレートのスライドに伴い前記ワイヤーを変形付勢し、また変形した前記ワイヤーから復元力が印加されるローラーとを有し、
前記ワイヤーの端部が、前記取付ピンに対して外側から内側に向け巻き付けられて固定された構成としたことを特徴とするスライド機構。
【請求項3】
前記ベース側プレートに前記スライド側プレートのエッジ部と係合する樹脂製ガイドを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のスライド機構。
【請求項4】
前記ワイヤーを前記ベース側プレートに対向するよう2本配設し、
前記ローラーを前記スライド側プレートに対向するよう2個配設したことを特徴とする請求項1又は2記載のスライド機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−167262(P2008−167262A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355812(P2006−355812)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】