説明

スライド継手および排水ます

【課題】スライド継手における段差部に起因する詰まりを抑制する。
【解決手段】スライド継手11は、管継手本体14と、管継手本体14にスライド自在なスライド部材15とを備えている。管継手本体14は、一端側に開口21aが形成されかつ内壁面21bを有する直管部21と、一端側が直管部21の他端側に連続する曲管部22とを有している。スライド部材15は、排水管12が接続される受け口26と、受け口26に連続し、開口21aから管継手本体14内に挿入可能に形成された略円筒形状の筒部27と、を有している。管継手本体14の曲管部22は、直管部21の内壁面21bと連続し、直管部21の一端側から直管部21の軸方向に沿って視たときに開口21aの内側にせり出した内壁面部22aを有している。スライド部材15を管継手本体14内に挿入すると、スライド部材15の筒部27は、管継手本体14の曲管部22の内壁面部22aに当接してそれ以上の進入を規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド継手および排水ますに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、宅地等の建物の基礎周辺には、家屋等から排出される排水を合流させる排水ますが設けられている。排水ますは、屋内から屋外に跨って配設される排水管や管継手からなる排水管路に対し、接続用の排水管(以下、「接続用排水管」という)を介して接続される。通常、排水ますを排水管路に接続する際には、まず、排水管路と排水ますとをそれぞれ所定の位置に配設した後、接続用排水管の一端を排水管路に接続し、接続用排水管の他端を排水ますに接続する。
【0003】
ところで、接続用排水管の一端と排水管路との接続に際しては、両者の間に重なり部分、すなわち接続しろが必要である。また、接続用排水管の他端と排水ますとの接続に際しても、接続しろが必要である。そのため、接続用排水管の長さは、それら接続しろの長さの分だけ、排水管路と排水ますとの間の間隔よりも長くなる。したがって、排水管路と排水ますとを接続用排水管を介して接続する際には、排水管路と排水ますとの間に、それらの間隔よりも長い接続用排水管を嵌め込む作業が必要となる。
【0004】
しかし、何らかの工夫を施さなければ、接続用排水管を無理に嵌め込まなければならなくなるため、上記作業は困難となる。また、近年、特に都市部では、土地の有効利用の観点から、屋外の配管スペースが小さくなる傾向にある。そのため、上記接続用排水管を取り付ける作業は、一層困難になっている。そこで、以前より、このような場合に、スライド継手が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示されたスライド継手は、真っ直ぐに延びる略筒形状に形成されている。このスライド継手の一端側には、接続用排水管の一端部を差し込むための受け口が形成されている。当該受け口は、通常の継手の受け口よりも軸方向に長く形成されている。そのため、この受け口に接続用排水管をいったん多めに差し込み、その後に当該接続用排水管を管軸方向に沿って若干引き出すことができる。ただし、上記スライド継手には、接続用排水管が過剰に差し込まれないように、受け口の最奥部に段差部が形成されている。
【0006】
上記スライド継手を用いて排水管路と排水ますとを接続するにあたっては、まず、接続用排水管の一端部をスライド継手の受け口に差し込む。このとき、接続用排水管の一端部が受け口の内面に形成された段差部に突き当たるまで、接続用排水管をスライド継手に差し込む。一方、スライド継手の他端部を排水ますの受け口に差し込む。次に、接続用排水管をスライド継手内で管軸方向に沿って排水管路側にスライドさせ、接続用排水管の他端部を排水管路の受け口に差し込む。
【特許文献1】実開昭60−36469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、スライド継手を用いることにより、位置が固定された排水管路と排水ますとを容易に接続することができる。しかしながら、上述したように、特許文献1に記載されたスライド継手では、受け口の内面に、接続用排水管の過剰な挿入を規制する段差部が形成されている。そのため、設置後に当該段差部に排水中の固形物等がひっかかり、詰まりの要因となるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スライド継手における段差部に起因する詰まりを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスライド継手は、一端側に開口が形成されかつ内壁面を有する直管部と、一端側が前記直管部の他端側に連続する曲管部とを有する管継手本体と、排水管が接続される受け口と、前記受け口の一端側に半径方向内側に突出する段差が形成されるように前記受け口の一端側に連続し、前記開口から前記管継手本体内に挿入可能に形成された略円筒形状の筒部と、を有し、前記管継手本体に対してスライド自在なスライド部材と、を備え、前記管継手本体の前記曲管部は、前記直管部の前記内壁面と連続し、前記直管部の一端側から前記直管部の軸方向に沿って視たときに前記開口の内側にせり出した内壁面部を有し、前記管継手本体の前記直管部から前記曲管部に向かって前記スライド部材を前記筒部側から挿入すると、前記スライド部材の前記筒部は、前記管継手本体の前記曲管部の前記内壁面部に当接してそれ以上の進入を規制されるものである。
【0010】
上記スライド継手は、受け口を有するスライド部材と管継手本体とから構成され、スライド部材は管継手本体に対してスライド自在に形成されている。これにより、スライド継手自体が伸縮可能となる。そのため、例えば、固定配置された排水管路と排水ますとの間に排水管を嵌め込む際に、排水管路および排水ますのいずれか一方にスライド継手の管継手本体を接続し、スライド継手を収縮させた状態で上記他方に排水管の一端を接続し、その後にスライド継手を伸長させて排水管の他端をスライド部材の受け口に接続することによって、排水管を容易に設置することができる。これにより、従来のように排水管をスライドさせるのではなく、スライド継手のみを伸縮させることによって、配管作業を容易に行うことができる。
【0011】
加えて、上記スライド継手では、管継手本体の曲管部は、直管部の開口側から視たときに開口の内側にせり出した内壁面部を有している。そのため、管継手本体内にスライド部材を挿入した際に、スライド部材の筒部が上記内壁面部に当接することによって、スライド部材の過剰な挿入が規制される。したがって、管継手本体の内壁面に段差部を設けなくても、スライド部材の過剰な挿入を規制することができる。このように、上記スライド継手によれば、管継手本体の曲管部の内壁面の一部(内壁面部)が、スライド部材を規制するストッパ部を兼ねている。したがって、上記スライド継手によれば、段差部に起因するごみ等のひっかかりを抑制することができる。
【0012】
前記管継手本体の前記直管部の長さは、前記スライド部材の前記受け口の少なくとも一部の長さと、前記スライド部材と前記管継手本体との接続しろの長さとを足し合わせた長さ以上であり、前記スライド部材は、前記受け口の少なくとも一部の長さと前記接続しろの長さとを足し合わせた長さ以上、前記管継手本体内に挿入可能に形成されていることが好ましい。
【0013】
ここで、「接続しろの長さ」とは、上記スライド部材のうち、上記スライド部材と管継手本体とを接続する際に最低限必要とされる接続部分(両者が重なる部分)の軸方向の長さを言う。接続しろは、通常、管の材料や呼び径や接続方法によってそれぞれ規定されている。
【0014】
上記スライド継手によれば、スライド部材を上記受け口の少なくとも一部の長さと上記接続しろの長さとを足し合わせた長さ以上挿入することができる。これにより、少なくとも上記受け口の少なくとも一部の長さ分だけは、スライド継手を伸縮させることが可能となる。そのため、上記スライド継手を少なくとも受け口の一部の長さ分だけ縮めることにより、スライド継手の受け口を接続用の排水管と干渉させずに対峙させることができる。そして、スライド継手を少なくとも受け口の一部の長さ分だけ伸張させることにより、配管作業を容易に行うことができる。
【0015】
前記管継手本体の前記直管部の内径は、前記スライド部材の前記受け口の外径以上であり、前記スライド部材を前記管継手本体に挿入して前記スライド部材の前記筒部が前記管継手本体の前記曲管部の前記内壁面部に当接するときに、前記スライド部材の前記受け口の少なくとも一部は、前記管継手本体の前記直管部内に挿入された状態となることが好ましい。なお、「受け口の外径」とは、受け口にフランジが設けられている場合には、そのフランジを除いた部分の外径を言う。
【0016】
このことにより、スライド部材の筒部だけでなく、受け口の一部または全部も管継手本体内に挿入することが可能となる。これにより、スライド継手を最も縮めたときのスライド継手の全長を短くすることができる。そのため、スライド継手のコンパクト化を図ることができる。したがって、上記スライド継手によれば、例えば、それぞれ位置が固定された排水管路と排水ますとの接続やそれぞれ位置が固定された排水管路同士の接続の際に、それぞれの間隔が狭くても、配管作業を容易に行うことができる。
【0017】
前記スライド部材の前記受け口には、径方向外向きに突出する突出部が設けられていることが好ましい。
【0018】
上記スライド継手によれば、管継手本体内に挿入したスライド部材を引き出す際に、上記突出部をつかんで、または上記突出部に指をひっかけて引き出すことができる。そのため、スライド部材を容易に引き出すことができる。したがって、上記スライド継手によれば、配管作業を容易に行うことができる。
【0019】
前記スライド部材の前記筒部の外壁面には、周方向に延びる第1の溝が形成され、前記管継手本体の前記直管部の内壁面には、周方向に延びる第2の溝が形成され、前記第2の溝内に収容され、内径が前記第1の溝の外径よりも小さくかつ外径が前記第1の溝の外径よりも大きく、拡径自在に構成された略リング状のストッパ部材をさらに備え、前記第1の溝は、前記スライド部材を前記管継手本体内に挿入するときには前記ストッパ部材に対してスライド自在であり、前記スライド部材を前記管継手本体内から引き出すときには前記ストッパ部材に係止される様に形成されていてもよい。
【0020】
上記スライド継手では、スライド部材を管継手本体に挿入した後、第1の溝と第2の溝とが対峙する位置までスライド部材を管継手本体内から引き出すと、第2の溝に収容されたリングと第1の溝とが係合する。これにより、スライド継手を伸長する際に、スライド部材の所定量以上のスライドが規制されることとなる。そのため、上記スライド継手によれば、スライド部材が所定の長さ以上に管継手本体から引き出されないように規制することができる。
【0021】
前記管継手本体の前記直管部の内壁面には、前記スライド部材が挿入される際に、前記スライド部材の外壁面と前記管継手本体の前記直管部の内壁面との隙間を閉塞する環状のシール部材が取り付けられていることが好ましい。
【0022】
上記スライド継手によれば、管継手本体に対してスライド部材を挿入するだけで、管継手本体とスライド部材との隙間をシールすることができる。
【0023】
前記スライド部材の前記筒部の外壁面には、周方向に延びる線条突起が形成され、前記管継手本体の前記直管部の内壁面には、前記スライド部材が挿入される際に、前記スライド部材の外壁面と前記管継手本体の前記直管部の内壁面との隙間を閉塞する環状のシール部材が取り付けられ、前記環状のシール部材には、前記スライド部材を前記管継手本体内に挿入するときには前記線条突起に対してスライド自在であり、前記スライド部材を前記管継手本体内から引き出すときには前記線条突起に係止される係合部が形成されていることが好ましい。
【0024】
上記スライド継手によれば、スライド部材を挿入するだけで、管継手本体とスライド部材との隙間をシールすることができる。また、上記スライド継手によれば、スライド部材を引き出す際には、シール部材の係合部と線条突起とが係合することにより、スライド部材が所定の長さ以上に管継手本体から引き出されないように規制することができる。
【0025】
前記スライド部材は、前記管継手本体よりも上流側に配置されることが好ましい。
【0026】
上記スライド継手によれば、スライド部材の筒部の端面(挿入方向の先端面)が軸方向に対して直交する面である場合、管継手本体内にスライド部材が挿入されると、スライド部材の筒部の端部によって管継手本体内に段差が生じる。すなわち、スライド部材の内径は管継手本体の直管部の内径よりも小さいので、その内径の変化によって段差が生じる。しかし、スライド部材を管継手本体よりも上流側に配置することで、排水は、内径の小さいスライド部材から内径の大きい管継手本体に向かって流れることとなる。そのため、上記段差は下流側に向かって乗り上げるような段差ではなく、下流側に向かって下がるような段差となるので、排水中のごみ等が当該段差にひっかかることを抑制することができ、詰まりを抑制することができる。
【0027】
前記スライド部材は略鉛直方向に延びていることが好ましい。
【0028】
このことにより、排水はスライド部材内を上方から下方に向かって流れることになる。そのため、上述のようにスライド継手内に段差が生じた場合であっても、その段差はいわゆる管底部分における上下方向の段差にはならない。したがって、排水中のごみ等が上記段差にひっかかることがより一層抑制される。
【0029】
本発明に係る排水ますは、前記スライド継手と、前記スライド継手の前記管継手本体の前記曲管部に取り付けられた、または一体成形されたます本体と、を備えたものである。
【0030】
このことにより、上述の作用効果を奏する排水ますを得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、スライド継手における段差部に起因する詰まりを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下に説明するように、本実施形態に係るスライド継手は、家屋内からの排水を屋外で合流させるための排水システムの一部を構成する。ただし、本発明に係るスライド継手の利用箇所は、下記の排水システムに限定される訳ではない。
【0033】
《排水システム1》
図1は、本実施形態に係る排水システム1の構成を示す図である。上述の通り、この排水システム1は、家屋100内からの排水を屋外で合流させるためのものである。排水システム1は、家屋100の内外に跨って配設された排水管路2と、屋外の所定の位置に配置された排水ます3と、排水管路2と排水ます3とを接続する接続構造10とを備えている。
【0034】
《排水管路2の構成》
本実施形態では、排水管路2は、家屋100の内外に跨って配設された貫通管4と、曲がり継手5とから構成されている。貫通管4の一部は、家屋100の基礎に埋設されている。曲がり継手5の両端には、受け口5a,5bが形成されている。曲がり継手5の一方の受け口5aは下方に向かって開口しており、他方の受け口5bは側方に向かって開口している。曲がり継手5の他方の受け口5bには、貫通管4の屋外側の端部が接続されている。曲がり継手5の他方の受け口5aには、後述する接続構造10の接続用排水管12が接続されている。
【0035】
《排水ます3の構成》
排水ます3は、ます本体6と、ます本体6内に形成された排水流路50に排水を導くための流入部7と、ます本体6から上下方向に延びる略円筒形状の立ち上がり管8と、立ち上がり管8の上部に取り付けられた蓋(図示省略)とを有している。流入部7は、管状に形成され、ます本体6の内外を貫く様に設けられている。流入部7の外側部分には、受け口7aが形成されている。
【0036】
《接続構造10の構成》
接続構造10は、伸縮自在なスライド継手11と、接続用排水管12とを備えている。また、本実施形態では、接続構造10は、スライド継手11と排水ます3の流入部7とを接続するための短管13を備えている。
【0037】
《スライド継手11の構成》
図2は、スライド継手11の側面断面図である。図2に示すように、スライド継手11は、管継手本体14と、管継手本体14内に挿入可能に形成されたスライド部材15とを備えている。
【0038】
−スライド部材15−
スライド部材15は、接続用排水管12が接続される受け口26と、受け口26に連続し、管継手本体14内に挿入可能に形成された略円筒形状の筒部27とを備えている。受け口26と筒部27との境界部分には、半径方向内側に突出する段差15cが形成されている。図2に示すように、接続用排水管12は、その先端が上記段差15cに当接するように受け口26に差し込まれる。
【0039】
受け口26の端部(図2では上端部)には、径方向外側に向かって突出し周方向に延びるフランジ28が形成されている。フランジ28の外径は、後述する管継手本体14の直管部21の内径よりも大きくなっている。
【0040】
本実施形態では、筒部27と受け口26との外径は等しく、スライド部材15の外壁面15aは段差なく形成されている。なお、受け口26の外径とは、受け口26におけるフランジ28を除いた部分の外径を言う。また、筒部27は受け口26よりも肉厚に形成されている。筒部27の内壁面27aは、排水管12が受け口26に接続されたときに、排水管12の内壁面12aと面一となる様に形成されている。さらに、筒部27の内壁面27aは、軸方向端部(図2では下端部)に行くほど外側に向かうような斜面によって形成されている。
【0041】
なお、筒部27の内壁面27aは、排水管12が受け口26に接続されたときに、排水管12の内壁面12aと面一ではなく、排水管12の内壁面12aよりも径方向外側に位置する様に形成されていてもよい。
【0042】
−管継手本体14−
管継手本体14は、直管部21と、直管部21に連続する曲管部22と、曲管部22に連続し、管状部材(管、排水ますの差し口等)を差し込み可能な受け口23とを有している。
【0043】
直管部21の一端側には、スライド部材15が挿入される開口21aが形成されている。また、直管部21は、スライド部材15の受け口26の外径に略等しい内径Lを有している。これにより、直管部21内にスライド部材15を挿入可能となっている。
【0044】
曲管部22は、直管部21の他端側(開口21aと逆側)に連続する様に形成されている。曲管部22は、直管部21の他端側の内壁面21bに連続し、直管部21の一端側から直管部21の軸方向を視たときに、開口21aの内側にせり出した内壁面部22aを有している。なお、本実施形態では、曲管部22は、管継手本体14内部に形成される排水流路が、当該内壁面部22aによって略90度曲げられる様に形成されている。
【0045】
−スライド部材15と管継手本体14との軸方向長さの関係−
管継手本体14の直管部21の長さをXとすると、スライド部材15を長さXだけ挿入すると、スライド部材15の一端は、曲管部22の内壁面部22a(より厳密には、内壁面部22aの上端部分)と当接し、それ以上の進入を規制されることとなる(図3参照)。なお、内壁面部22aの上端部分、すなわち、スライド部材15の一端が当接する内壁面部22aの部分は、半管以上の位置であることが好ましい。ここで、半管以上の位置とは、側方に向かって開放する受け口23の中心位置以上の高い位置である。言い換えると、管継手本体14の横方向に延びる部分を管と考えた場合に、当該管の中心位置以上の高い位置をいう。
【0046】
直管部21の長さXは、スライド部材15の受け口26の長さAと、スライド部材15と管継手本体14との接続しろの長さCとを足し合わせた長さ以上である。なお、本実施形態では、直管部21の長さXは、スライド部材15の長さ(受け口26の長さA+筒部27の長さB)からフランジ28の厚みEを引いた長さと略等しくなる様に設定されている。
【0047】
ここで、受け口26の長さAとは、スライド部材15の受け口26に排水管12が差し込まれたときの排水管12の差し込み量を言う。受け口26の長さAは、通常、管の材料や呼び径によってそれぞれ規定されている。また、接続しろの長さCとは、スライド部材15と管継手本体14とを接着等する際に最低限必要とされる接続部分(両者が重なる部分)の長さを言い、通常、管の呼び径や接続方法によってそれぞれ規定されている。
【0048】
本実施形態では、スライド部材15は、(受け口26の長さA)−(フランジ28の厚みE)+(接続しろの長さC)だけ、管継手本体14内に挿入可能に形成されている。本実施形態では、直管部21は、スライド部材15の受け口26の外径に略等しい内径Lを有しており、受け口26の一部(すなわち、フランジ28を除いた部分)も直管部21に挿入可能である。そのため、スライド部材15の筒部27の長さBは、上記接続しろの長さC以上となっている。
【0049】
なお、本実施形態では、筒部27の長さBは、上記接続しろの長さCよりも長い。しかし、筒部27の長さBは、接続しろの長さCと等しくてもよい。
【0050】
−スライド部材15と管継手本体14との接続構造−
直管部21の一端部の内壁面21bには、周方向に延びる凹部21cが形成されている。そして、凹部21cには、環状のシール部材24が嵌め込まれている。これにより、管継手本体14内にスライド部材15を挿入した際に、接着剤等を用いなくとも両者の隙間をシールすることができる。
【0051】
また、直管部21の内壁面21bの凹部21cよりも他端側(図2の下側)には、周方向に延びる凹部21dが形成されている。一方、スライド部材15の筒部の外壁面27bには、周方向に延びる凹部27cが形成されている。そして、凹部21dには、略C字形状のリング29が収容されている。リング29は、通常状態において、内径が凹部27cの外径よりも小さく、かつ、外径が凹部27cの外径よりも大きくなる様に形成されている。また、リング29は、一部に切り欠き部(図示省略)が設けられており、拡径容易に構成されている。凹部27cは、スライド部材15を管継手本体14内に挿入するときには凹部21d内のリング29に対してスライドし、スライド部材15を管継手本体14内から引き出すときにはリング29に係止される様に形成されている。
【0052】
具体的には、図4(a)に示すように、凹部27cは、スライド部材15の挿入方向に向かって先端側の端面c1と、後端側の端面c2とを備えている。先端側の端面c1は、挿入方向と略直交する方向に延び、後端側の端面c2はテーパ状に形成されている。
【0053】
これにより、図4(a)に示すように、スライド部材15が管継手本体14内に挿入される際には、リング29がいったん筒部27の凹部27cに嵌っても、スライド部材15が進むにつれて、リング29は後端側の端面c2によって凹部27cの外部へ押し出されることとなる。そのため、リング29は凹部27cと係合しない。
【0054】
一方、図4(c)に示すように、スライド部材15が管継手本体14内から引き出される際には、リング29は、いったん筒部27の凹部27cに嵌ると、前端側の端面c1に引っかかる。これにより、スライド部材15は、管継手本体14内からそれ以上引き出されない様に規制されることとなる。
【0055】
《スライド継手11と排水ます3との接続構造》
図1に示すように、管継手本体14の受け口23と排水ます3の流入部7の受け口7aとには、それぞれ短管13の端部が差し込まれて接着されている。このように、管継手本体14は、短管13を介して排水ます3に接続されている。
【0056】
《スライド継手11と排水管路2との接続構造》
排水管路2の曲がり継手5の受け口5aには、排水管12の一端部が接着されている。そして、スライド部材15の受け口26は、当該排水管12の他端部に接続される。このようにして、スライド継手11は、排水管12を介して排水管路2に接続されることとなる。
【0057】
以上のように、スライド継手11の管継手本体14およびスライド部材15は、それぞれ排水ます3および排水管路2に接続される。このようにして、本実施形態では、管継手本体14は、スライド部材15よりも下流側に配置されている。また、スライド部材15は、上下方向に延びる様に配置されている。
【0058】
以上が排水システム1の構成である。次に、それぞれ位置が固定された排水管路2と排水ます3の流入部7とを、接続構造10を用いて接続する際の手順を説明する。なお、排水管路2の貫通管4は、家屋100の基礎に埋設されて位置が固定されているものとする。また、排水ます3も所定の位置に固定されているものとする。
【0059】
《排水管路2と排水ます3の流入部7との接続手順》
まず、管継手本体14内にスライド部材15を挿入し、スライド継手11を組み立てる。なお、本実施形態では、管継手本体14の直管部21の内径Lは、スライド部材15の筒部27および受け口26の外径に略等しい。そのため、スライド部材15の筒部27だけでなく、受け口26の少なくとも一部も直管部21の内部に円滑に挿入することができる。そして、スライド部材15が直管部21の長さXと等しい長さだけ挿入され、スライド部材15の一端が直管部21の他端まで達すると、スライド部材15の一端は曲管部22の内壁面部22aと当接し、それ以上の進入を規制されることとなる(図3参照)。
【0060】
また、本実施形態では、直管部21の長さXは、スライド部材15の長さ(受け口26の長さA+筒部27の長さB)からフランジ28の厚みEを引いた長さと略等しくなる様に設定されている。そのため、スライド部材15が直管部21の長さXと等しい長さだけ挿入されると、フランジ28が直管部21の端面(図3では上端面)に当接することにより、スライド部材15はそれ以上の進入を規制されることとなる(図3参照)。
【0061】
そして、スライド部材15を長さXだけ挿入した状態(すなわち、フランジ28以外のスライド部材15の全体を挿入した状態)で、管継手本体14を排水ます3に接続する。具体的には、短管13の一端部を管継手本体14の受け口23に挿入し、接着剤等を用いて接続する。また、短管13の他端部を排水ます3の流入部7の受け口7aに挿入し、接着剤等を用いて接続する。これにより、管継手本体14は、短管13を介して排水ます3の流入部7と接続される(図5参照)。
【0062】
次に、曲がり継手5と接続用の排水管12とを接続する。具体的には、曲がり継手5の一方の受け口5aに排水管12の一端部を挿入し、接着剤等を用いて固定する。その後、曲がり継手5の他方の受け口5bに貫通管4の屋外側端を接着する(図6参照)。このとき、排水管12の他端部(図6では下端部)は、スライド部材15の受け口26と対峙することとなる。
【0063】
なお、本実施形態では、スライド部材15は、フランジ28以外の全ての部分が管継手本体14内に挿入されている。つまり、スライド部材15は、(受け口26の長さA)−(フランジ28の厚みE)+(接続しろの長さC)だけ、管継手本体14内に挿入されている。そのため、スライド部材15の上端部に形成されたフランジ28は、排水管12の他端部(図6では下端部)よりも僅かに下方に位置することとなる。したがって、スライド部材15と排水管12とがひっかかることなく、排水管12の他端部をスライド部材15の受け口26に対向させることができる。
【0064】
そして、上記状態において、フランジ28をつかんでスライド部材15を上方へスライドさせる。すなわち、スライド部材15を管継手本体14内から徐々に引き出していく。これにより、排水管12の他端部はスライド部材15の受け口26に差し込まれていく。そして、排水管12の他端部がスライド部材15の内壁面15bに形成された段差15cに当接するまで、スライド部材15を上方へスライドさせる。次に、接着剤等によりスライド部材15の受け口26と排水管12の他端部とを固定すると共にシールする。なお、スライド部材15と管継手本体14との隙間は、前述のシール部材24によってシールされている。
【0065】
なお、上述のように、スライド部材15を管継手本体14内から引き出す際、排水管12の長さによっては、スライド部材15が管継手本体14内から抜けてしまうことも考えられる。しかしながら、本スライド継手11には、直管部21の凹部21dと、リング29と、スライド部材15の凹部27cとにより、スライド部材15が所定長さ以上引き出されない様に規制する規制構造が形成されている。そのため、スライド部材15が管継手本体14内から必要以上に引き出され、抜けてしまうことを抑制することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、受け口26を有するスライド継手11をスライド部材15と管継手本体14とから構成し、スライド部材15は管継手本体14に対してスライド自在に形成されている。これにより、スライド継手11自体が伸縮可能に形成されることとなる。そのため、上記スライド継手11を用いることにより、配管作業を容易化することができる。本実施形態によれば、従来のように長尺の排水管12をスライドさせるのではなく、排水管12を固定した後、スライド継手11のみを伸縮させることによって配管作業を行うことができる。
【0067】
また、本スライド継手11では、管継手本体14の曲管部22は、直管部21の開口21a側から視たときに開口21aの内側にせり出した内壁面部22aを有している。そのため、管継手本体14の内壁面に段差部を設けなくても、管継手本体14内にスライド部材15を挿入した際に、スライド部材15の筒部27が内壁面部22aに当接することによって、スライド部材15の過剰な挿入が規制される。すなわち、管継手本体14の曲管部22の内壁面の一部(内壁面部22a)がスライド部材15を規制するストッパ部を兼ねている。そのため、本スライド継手11によれば、従来のスライド継手と異なり、内壁面に段差部を設ける必要がない。したがって、本スライド継手11によれば、排水に含まれる固形物等のひっかかりを抑制することができる。
【0068】
本スライド継手11では、管継手本体14の直管部21の長さXは、スライド部材15の受け口26の長さAからフランジ28の厚みEを引いた長さと、スライド部材15と管継手本体14との接続しろの長さCとを足し合わせた長さ以上に設定されている。本スライド継手11によれば、スライド部材15を、受け口26の長さAからフランジ28の厚みEを引いた長さと、接続しろCの長さとを足し合わせた長さ以上挿入することができる。これにより、少なくとも受け口26の長さAからフランジ28の厚みEを引いた長さ分だけは、スライド継手11を伸縮させることが可能となる。そのため、本スライド継手11を少なくとも上記長さ分だけ縮めることにより、受け口26を接続用の排水管12と干渉させずに対峙させることができる。そして、スライド継手11を少なくとも上記長さ分だけ伸張させることにより、配管作業を容易に行うことができる。
【0069】
本スライド継手11では、管継手本体14の直管部21は、スライド部材15の受け口26の外径に略等しい内径Lを有している。そして、スライド部材15の受け口26の一部も管継手本体14内に挿入することが可能である。これにより、スライド継手11を最も縮めたときのスライド継手11の全長を短くすることができる。そのため、スライド継手11のコンパクト化を図ることができる。したがって、本スライド継手11によれば、例えば、本実施形態のようにそれぞれ位置が固定された排水管路2と排水ます3との接続や、それぞれ位置が固定された排水管路同士の接続の際に、それぞれの間隔が狭くても配管作業を容易に行うことができる。
【0070】
また、本スライド継手11では、受け口26のフランジ28を除いた部分の全体を管継手本体14内に挿入可能である。つまり、フランジ28を除いたスライド部材15全てを管継手本体14内に挿入可能である。そのため、スライド継手11を十分に伸縮させることができる。したがって、本スライド継手11によれば、伸縮量が多い分、スライド部材15自体の長さを短縮することができる。
【0071】
また、本スライド継手11では、受け口26の一端側にフランジ28が形成されており、このフランジ28は、径方向外向きに突出する突出部を形成している。本スライド継手11によれば、フランジ28をつかんで引き出すことにより、管継手本体14内に挿入したスライド部材15を容易に引き出すことができる。そのため、配管作業を容易に行うことができる。
【0072】
さらに、本スライド継手11では、筒部27の外壁面27bには凹部27cが形成され、直管部21の内壁面21bには凹部21dが形成されている。また、凹部21d内には、内径が凹部27cの外径よりも小さくかつ外径が凹部27cの外径よりも大きく、拡径可能に構成された略C字形状のリング29が収容されている。そして、筒部27の凹部27cは、スライド部材15を管継手本体14内に挿入するときには凹部21d内のリング29に対してスライド自在であり、スライド部材15を管継手本体14内から引き出すときにはリング29に係止される様に形成されている。
【0073】
このことにより、本スライド継手11では、スライド部材15を管継手本体14に挿入した後、筒部27の凹部27cと直管部21の凹部21dとが対峙する位置までスライド部材15を管継手本体14内から引き出すと、直管部21の凹部21dに収容されたリング29と筒部27の凹部27cとが係合する。これにより、スライド継手11を伸長する際に、スライド部材15の所定量以上のスライドが規制されることになる。そのため、本スライド継手11によれば、スライド部材15が所定の長さ以上管継手本体14から引き出されないように規制することができる。
【0074】
また、このような規制構造がなければ、抜け止めのために接続しろを多めに確保しておくことが望まれるが、本実施形態によれば、このような規制構造を備えているので、抜け止めのために接続しろの長さCを長めに設定しておく必要がない。これにより、管継手本体14の直管部21およびスライド部材15自体の長さをそれぞれ短くすることができる。したがって、スライド継手11のコンパクト化を図ることができる。
【0075】
本スライド継手11では、管継手本体14の直管部21の一端部の内壁面21bには、スライド部材15が挿入される際に、スライド部材15の外壁面15aと管継手本体14の直管部21の内壁面21bとの隙間を閉塞する環状のシール部材24が取り付けられている。このことにより、本スライド継手11によれば、スライド部材15を挿入した後、スライド部材15と、管継手本体14との隙間を改めてシールする必要がなく、スライド部材15を挿入するだけで、管継手本体14とスライド部材15との隙間をシールすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、スライド部材15は、管継手本体14よりも上流側に配置される。このことにより、本スライド継手11のように、スライド部材15の筒部27の端面(挿入方向の先端面)が軸方向に対して直交する面である場合、管継手本体14内にスライド部材15が挿入されると、スライド部材15の筒部27の端部によって管継手本体14内に段差が生じる。すなわち、スライド部材15の内径は管継手本体14の直管部21の内径Lよりも小さいので、その内径の変化によって段差が生じる。しかし、スライド部材15を管継手本体14よりも上流側に配置することで、排水は、内径の小さいスライド部材15から内径の大きい管継手本体14に向かって流れることとなる。そのため、上記段差は下流側に向かって乗り上げるような段差ではなく、下流側に向かって下がるような段差となるので、排水中のごみ等が当該段差にひっかかることを抑制することができ、詰まりを抑制することができる。
【0077】
上述のように、スライド部材15の内径は管継手本体14の直管部21の内径Lよりも小さいので、管継手本体14内にスライド部材15が挿入されると、スライド部材15の筒部27の端部によって管継手本体14内に段差が生じる。しかしながら、本実施形態では、スライド部材15は略鉛直方向に延びる様に配置されている。そのため、上記段差は、いわゆる管底部分における上下方向の段差にはならない。したがって、本スライド継手11によれば、排水中のごみ等が上記段差にひっかかることがさらに抑制され、詰まりをより一層抑制することができる。
【0078】
なお、上述の通り、スライド部材15は上下方向に延びる様に配置されることがより好ましいが、スライド部材15の配置方向は本実施形態のものに限られない。スライド部材15は、横向きに配置されていてもよい。
【0079】
また、図1に示すように、本実施形態では、管継手本体14は、上方からの排水を側方に導くような姿勢に配置されている。スライド部材15は、管継手本体14の直管部21に上方から挿入されている。そのため、施工時に誤ってスライド部材15を上方に十分に引き上げなかったとしても(図3参照)、曲管部22の下側には、十分な大きさの流路が確保される。通常、排水は、配管内の全体を満たすいわゆる満水状態で流れるのではなく、配管内の下半分を流れる。そのため、配管内の下半分に流路を確保しておけば、実用上特に問題になることはない。したがって、本実施形態によれば、万が一、スライド部材15の一部が下方に出っ張ったとしても、スライド部材15は曲管部22の内壁面部22aによって規制されるので、曲管部22の管底部分には十分な流路を確保することができる。したがって、排水の流れを阻害するおそれはない。
【0080】
《変形例1》
上記実施形態では、筒部27の凹部27c、直管部21の凹部21dおよびリング29によって、スライド部材15が所定の長さ以上管継手本体14内から引き出されない様に規制していた。変形例1に係るスライド継手11は、本実施形態に係るスライド継手11の規制構造を変形したものである。他の部分については本実施形態のスライド継手11と同様であるため、以下、規制構造についてのみ説明する。
【0081】
−スライド部材15と管継手本体14との接続構造−
図7に示すように、上記実施形態と同様に、直管部21の一端部の内壁面21bには、周方向に延びる凹部21cが形成されている。そして、凹部21cには、環状のシール部材24が嵌め込まれている。これにより、管継手本体14内にスライド部材15を挿入し、引き出した際に接着剤等を用いなくとも両者の隙間をシールすることができる。また、スライド部材15の筒部の外壁面27bには、周方向に延びる線条突起27eが形成されている。
【0082】
この変形例1では、図8(a)、(b)に拡大して示すように、環状のシール部材24は、本体部24aとリップ部24bとを備えている。リップ部24bは、スライド部材15の挿入方向に向かって本体部24aの内周面側から径方向内側に枝分かれしている。シール部材24は、リップ部24bが本体部24aから離れた状態(図8(b)の状態)と、リップ部24bが本体部24aに当接する状態(図8(a)の状態)とに変形可能に構成されている。なお、シール部材24は、リップ部24bが本体部24aから離れた状態(図8(b)の状態)が通常状態(外力が加えられない状態)となる様に構成されている。
【0083】
また、シール部材24は、通常状態では、その内径がスライド部材15の外径よりも大きく線条突起27eの外径よりも小さいが、リップ部24bが本体部24aに当接する状態では、その内径がスライド部材15の外径よりも大きく線条突起27eの外径以上となる様に形成されている。
【0084】
このような構成により、図8(a)に示すように、スライド部材15を管継手本体14内に挿入するときには、シール部材24のリップ部24bは、線条突起27eによって本体部24a側に押し付けられて、本体部24aと当接した状態となる。これにより、線条突起27eとシール部材24とは係合せず、スライド部材15のスライドは規制されない。なお、線条突起27eがシール部材24の内側を通過すると、シール部材24は線条突起27eによって本体部24a側に押し付けられなくなるため、通常状態となる。
【0085】
一方、図8(b)に示すように、スライド部材15を管継手本体14内から引き出すときには、シール部材24のリップ部24bは、線条突起27eにひっかかり、線条突起27eと係合する。これにより、スライド部材15は、それ以上管継手本体14内から引き出されない様に規制されることとなる。
【0086】
このような変形例1に係るスライド継手11によっても、スライド部材15を挿入した後、スライド部材15と管継手本体14との隙間を改めてシールする必要がなく、スライド部材15を挿入するだけで、管継手本体14とスライド部材15との隙間をシールすることができる。また、本スライド継手11によっても、シール部材24のリップ部24bと線条突起27eとを係合させることにより、スライド部材15が所定の長さ以上管継手本体14から引き出されないように規制することができる。そのため、このような規制構造を設けることで、抜け止めのために必要となるスライド部材15と管継手本体14との接続しろの長さCを短くすることができる。これにより、管継手本体14の直管部21およびスライド部材15自体の長さをそれぞれ短くすることができる。したがって、変形例1によっても、スライド継手11のコンパクト化を図ることができる。また、この規制構造においても、スライド継手11の内壁面に段差部を設けるものではないため、ごみ等のひっかかりを抑制することができる。
【0087】
《変形例2》
図9に示すように、変形例2に係るスライド継手11は、上記実施形態に係るスライド継手11で設けていたスライド部材15の抜け規制構造を設けないこととしたものである。このような場合、抜け止めのために、スライド部材15と管継手本体14との接続しろの長さCを、上記実施形態のものよりも長くすることが好ましい。この変形例2では、上記実施形態に比べると、スライド継手11は大型化する。しかし、このようなスライド継手11であっても、上記実施形態と同様に、内壁面に段差部を設けないため、ごみ等のひっかかりを抑制することができる。
【0088】
《変形例3》
上記実施形態では、管継手本体14は、曲管部22に連続し、管状部材(管、排水ますの差し口等)を差し込み可能な受け口23を有していた。変形例3に係るスライド継手11は、図10に示すように、受け口23の代わりに差し口25を設けたものである。このようなスライド継手11であっても、上記実施形態と同様に、内壁面に段差部を設けないため、ごみ等のひっかかりを抑制することができる。
【0089】
《変形例4》
上記実施形態では、管継手本体14の直管部21は、スライド部材15の受け口26の外径に略等しい内径Lを有していた。スライド部材15の受け口26と筒部27との外径は等しかった。変形例4は、図11(a)、(b)に示すように、受け口26の外径が筒部27の外径よりも大きいものである。また、変形例4では、直管部21の内径Lは、スライド部材15の筒部27の外径と略等しく、かつ、受け口26の外径よりも小さくなっている。また、変形例4では、スライド部材15の筒部27は、受け口26と略等しい肉厚に形成され、受け口26の外壁面には、径方向外側向きに突出し、周方向に延びる突起26aが形成されている。なお、スライド部材15の抜けを防止する規制構造は、変形例1と同様に形成されている。
【0090】
このようなスライド継手11によると、スライド部材15を管継手本体14内に挿入する際に、スライド部材15の一部は管継手本体14内に収まらない。具体的には、受け口26は管継手本体14の外部に出た状態となる(図11(a)参照)。しかしながら、筒部27の長さBを、受け口26の長さAと接続しろの長さCとを足し合わせた長さ以上に設定することにより、スライド継手11を、少なくとも受け口26の長さA分だけ伸縮可能に形成することができる。このようなスライド継手11であっても、上記実施形態と同様に、内壁面に段差部を設けないため、ごみ等のひっかかりを抑制することができる。
【0091】
また、変形例4では、スライド部材15の受け口26の外壁面に、径方向外側向きに突出し、周方向に延びる突起26aが形成されている。これにより、変形例4に係るスライド継手11によれば、管継手本体14内に挿入したスライド部材15を引き出す際に、突起26aに指をひっかけて引き出すことができる。そのため、容易に引き出し作業を行うことができる。したがって、本スライド継手11によれば、配管作業をより容易に行うことができる。
【0092】
《排水ます》
上記実施形態および各変形例に係るスライド継手11は、単品で利用することもできるが、他の配管部材の一部として利用することもできる。次に、図12を参照しながら、上記スライド継手11を含んだ排水ます3Aについて説明する。なお、以下の説明では、上記実施形態と同様の部分には同様の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0093】
排水ます3Aは、ます本体6と、ます本体6に取り付けられたスライド継手11とを備えている。ます本体6内には、排水流路50が形成されている。ます本体6には、立ち上がり管8が接続されている。上記実施形態と同様、スライド継手11は、管継手本体14とスライド部材15とを有している。管継手本体14は、直管部21と、直管部21に連続する曲管部22とを有している。
【0094】
この排水ます3Aにあっては、管継手本体14の曲管部22には、受け口23(図1参照)は形成されていない。この排水ます3Aでは、管継手本体14の曲管部22は、ます本体6の流入部7に取り付けられている。なお、ます本体6の流入部7に対する曲管部22の取付態様は特に限定されず、例えば、接着等によって取り付けることができる。また、管継手本体14とます本体6とは、一体成形されていてもよい。言い換えると、ます本体6は、管継手本体14の曲管部22に一体成形されていてもよい。
【0095】
これにより、前述の効果を奏する排水ます3Aを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明は、スライド継手および排水ますについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施形態に係る排水システムの構成を示す図である。
【図2】スライド継手の側面断面図である。
【図3】管継手本体内の最も奥側までスライド部材を挿入した際のスライド継手を示す側面断面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は、スライド部材の抜けを防止するための規制構造の動作を示す図である。
【図5】接続構造の取り付け時における排水システムを示す図である。
【図6】接続構造の取り付け時における排水システムを示す図である。
【図7】変形例1に係るスライド継手の側面断面図である。
【図8】(a)、(b)は、変形例1に係るスライド継手のスライド部材の抜けを防止するための規制構造の動作を示す図である。
【図9】変形例2に係るスライド継手の側面断面図である。
【図10】変形例3に係るスライド継手の側面断面図である。
【図11】(a)、(b)は、変形例4に係るスライド継手の側面断面図である。
【図12】実施形態に係る排水ますの側面図である。
【符号の説明】
【0098】
3A 排水ます
11 スライド継手
12 排水管
14 管継手本体
15 スライド部材
15a 外壁面
21 直管部
21a 開口
21b 内壁面
21d 凹部(第2の溝)
22 曲管部
22a 内壁面部
24 シール部材
24b リップ部(係合部)
26 受け口
26a 突起(突出部)
27 筒部
27b 外壁面
27c 凹部(第1の溝)
27e 線条突起
28 フランジ(突出部)
29 リング(ストッパ部材)
A 受け口の長さ
B 筒部の長さ
C 接続しろの長さ
X 直管部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口が形成されかつ内壁面を有する直管部と、一端側が前記直管部の他端側に連続する曲管部とを有する管継手本体と、
排水管が接続される受け口と、前記受け口の一端側に半径方向内側に突出する段差が形成されるように前記受け口の一端側に連続し、前記開口から前記管継手本体内に挿入可能に形成された略円筒形状の筒部と、を有し、前記管継手本体に対してスライド自在なスライド部材と、を備え、
前記管継手本体の前記曲管部は、前記直管部の前記内壁面と連続し、前記直管部の一端側から前記直管部の軸方向に沿って視たときに前記開口の内側にせり出した内壁面部を有し、
前記管継手本体の前記直管部から前記曲管部に向かって前記スライド部材を前記筒部側から挿入すると、前記スライド部材の前記筒部は、前記管継手本体の前記曲管部の前記内壁面部に当接してそれ以上の進入を規制される、スライド継手。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド継手であって、
前記管継手本体の前記直管部の長さは、前記スライド部材の前記受け口の少なくとも一部の長さと、前記スライド部材と前記管継手本体との接続しろの長さとを足し合わせた長さ以上であり、
前記スライド部材は、前記受け口の少なくとも一部の長さと前記接続しろの長さとを足し合わせた長さ以上、前記管継手本体内に挿入可能に形成されている、スライド継手。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスライド継手であって、
前記管継手本体の前記直管部の内径は、前記スライド部材の前記受け口の外径以上であり、
前記スライド部材を前記管継手本体に挿入して前記スライド部材の前記筒部が前記管継手本体の前記曲管部の前記内壁面部に当接するときに、前記スライド部材の前記受け口の少なくとも一部は、前記管継手本体の前記直管部内に挿入された状態となる、スライド継手。
【請求項4】
請求項1または2に記載のスライド継手であって、
前記スライド部材の前記受け口には、径方向外向きに突出する突出部が設けられている、スライド継手。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のスライド継手であって、
前記スライド部材の前記筒部の外壁面には、周方向に延びる第1の溝が形成され、
前記管継手本体の前記直管部の内壁面には、周方向に延びる第2の溝が形成され、
前記第2の溝内に収容され、内径が前記第1の溝の外径よりも小さくかつ外径が前記第1の溝の外径よりも大きく、拡径自在に構成された略リング状のストッパ部材をさらに備え、
前記第1の溝は、前記スライド部材を前記管継手本体内に挿入するときには前記ストッパ部材に対してスライド自在であり、前記スライド部材を前記管継手本体内から引き出すときには前記ストッパ部材に係止される様に形成されている、スライド継手。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のスライド継手であって、
前記管継手本体の前記直管部の内壁面には、前記スライド部材が挿入される際に、前記スライド部材の外壁面と前記管継手本体の前記直管部の内壁面との隙間を閉塞する環状のシール部材が取り付けられている、スライド継手。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のスライド継手であって、
前記スライド部材の前記筒部の外壁面には、周方向に延びる線条突起が形成され、
前記管継手本体の前記直管部の内壁面には、前記スライド部材が挿入される際に、前記スライド部材の外壁面と前記管継手本体の前記直管部の内壁面との隙間を閉塞する環状のシール部材が取り付けられ、
前記環状のシール部材には、前記スライド部材を前記管継手本体内に挿入するときには前記線条突起に対してスライド自在であり、前記スライド部材を前記管継手本体内から引き出すときには前記線条突起に係止される係合部が形成されている、スライド継手。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載のスライド継手であって、
前記スライド部材は、前記管継手本体よりも上流側に配置されている、スライド継手。
【請求項9】
請求項8に記載のスライド継手であって、
前記スライド部材は略鉛直方向に延びている、スライド継手。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載のスライド継手と、
前記スライド継手の前記管継手本体の前記曲管部に取り付けられた、または一体成形されたます本体と、
を備えた排水ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−138762(P2009−138762A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312426(P2007−312426)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】