スラスト軸受セグメント
【課題】スラスト軸受の荷重能力を向上させることができるスラスト軸受セグメントを提供することを目的とする。
【解決手段】例えば、舶用等の大型ディーゼルエンジンを構成するクランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメント18,20であって、半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かって彫り込まれた周溝32を、周方向に沿って設けた。
【解決手段】例えば、舶用等の大型ディーゼルエンジンを構成するクランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメント18,20であって、半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かって彫り込まれた周溝32を、周方向に沿って設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、舶用等の大型ディーゼルエンジンを構成するスラスト軸受に適用されるスラスト軸受セグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
舶用等の大型ディーゼルエンジンを構成するスラスト軸受としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3689378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された発明では、スラストカラー14の外周縁部に、周方向に沿って断面視円弧状形状を呈する凹部28が設けられており、これによりスラスト軸受7の荷重能力の向上が図られている。
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、スラストカラー14の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部28を均一に彫り込んでいく必要がある。そのため、舶用等の大型ディーゼルエンジンでは、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要し、エンジンの製造コストが高騰してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができるスラスト軸受セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられている。
【0007】
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられている。
【0008】
上記スラスト軸受セグメントにおいて、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられているとさらに好適である。
【0009】
上記スラスト軸受セグメントにおいて、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられているとさらに好適である。
【0010】
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられている。
【0011】
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられている。
【0012】
本発明に係るスラスト軸受セグメントによれば、スラスト軸受セグメントの外周縁部に周溝または段部を設けることによりスラスト軸受セグメントの外周縁部が柔構造となるので、スラスト軸受セグメントの外周縁部に集中する応力を低減させる(スラスト軸受セグメントの長さ方向(半径方向)に沿って分散させる)ことができ、各スラスト軸受セグメントに加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができる。
なお、スラスト軸受セグメントの外周縁部に応力が集中するのは、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングがクランク軸から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板に結合されており、クランク軸から遠ざかるにしたがって、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングの剛性が高くなるからである。
【0013】
また、本発明に係るスラスト軸受セグメントによれば、スラスト軸受セグメントの内周縁部に周溝または段部を設けることによりスラスト軸受セグメントの内周縁部が柔構造となるので、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングへの荷重点をスラスト軸受セグメントの外周縁側(半径方向外側)に移動させることができ、各スラスト軸受セグメントに加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができる。
なお、主軸受ハウジングへの荷重点をスラスト軸受セグメントの外周縁側に移動させることにより、各スラスト軸受セグメントに加わる最高面圧を低減させることができるのは、主軸受ハウジングがクランク軸から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板に結合されており、主軸受ハウジングへの荷重点をスラスト軸受セグメントの外周縁側に移動させることにより、スラスト軸受セグメントがより剛性の高いクランク軸から遠い側の主軸受ハウジングで支持されて、主軸受ハウジングの変位量(傾き)が減少するからである。
【0014】
本発明に係るスラスト軸受は、上記いずれかのスラスト軸受セグメントを具備している。
【0015】
本発明に係るスラスト軸受によれば、スラスト軸受セグメントの寸法を従来と同じ寸法とした場合でも、荷重能力が向上することになるので、寸法の大型化を招くことなく、従来よりも出力の大きいより大型の内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)にも適用することができる。
一方、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラスト軸受セグメントの寸法が従来よりも小さくてすむので、スラスト軸受の小型化および軽量化を図ることができる。
【0016】
本発明に係る内燃機関は、上記スラスト軸受を具備している。
【0017】
本発明に係る内燃機関によれば、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラスト軸受セグメントの寸法が従来よりも小さくてすむので、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングおよび台板の小型化および軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスラスト軸受セグメントによれば、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るスラスト軸受セグメントを具備した内燃機関の要部を左側方から見た断面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態に係るスラスト軸受セグメントについて、図1から図5を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るスラスト軸受セグメントを具備した内燃機関の要部を左側方から見た断面図、図2は図1のII−II矢視図、図3は図1のIII−III矢視図、図4は本実施形態に係るスラスト軸受セグメント(以下、「スラストパッド」という。)の平面図、図5は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係るスラストパッドを具備した内燃機関1は、例えば、舶用の主機として採用される大型ディーゼルエンジン(クロスヘッド型ディーゼルエンジン)であり、中間軸(図示せず)を介して、一端部にプロペラ(図示せず)が固定されたプロペラ軸(図示せず)に接続されている。
内燃機関1の動力をプロペラ等に伝えるクランク軸2は、最も後方(船尾側)に位置するクランクアーム3よりも後方において、主軸受4およびスラスト軸受5により軸受け支持されている。
【0022】
主軸受4は、クランク軸2を収容する台板6と一体に鋳造、または溶接により接続された主軸受ハウジング(台板サドル)7と、主軸受キャップ(主軸受押え金物)8とを備えている。
主軸受ハウジング7は、前方(船首側)に位置する第1のハウジング9と、後方(船尾側)に位置する第2のハウジング10とを備えており、第1のハウジング9の内周面には、クランク軸2のジャーナル11を軸受け支持する主軸受下メタル12が装着され、第2のハウジング10の内周面には、クランク軸2のジャーナル13を軸受け支持する第2の主軸受下メタル14が装着されている。
【0023】
一方、主軸受キャップ8は、第1のハウジング9の底部上方を覆うようにして、第1のハウジング9に立てられた(立設された)複数本の主軸受キャップボルト(図示せず)と、この主軸受キャップボルトに設けられた雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する取付ナット(図示せず)とにより第1のハウジング9に固定される第1のキャップ15と、第2のハウジング10の底部上方を覆うようにして、第2のハウジング10に立てられた(立設された)複数本の主軸受キャップボルト(図示せず)と、この主軸受キャップボルトに設けられた雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する取付ナット(図示せず)とにより第2のハウジング10に固定される第2のキャップ16とを備えている。第1のキャップ15の内周面には、クランク軸2のジャーナル11を軸受け支持する主軸受上メタル(図示せず)が装着され、第2のキャップ16の内周面には、クランク軸2のジャーナル13を軸受け支持する第2の主軸受上メタル(図示せず)が装着されている。
【0024】
スラスト軸受5は、第1のハウジング9の内周部に周方向に沿って形成された凹所9a内に収容されて、ジャーナル11とジャーナル13との間に位置するクランク軸2の外周面から、周方向に沿って半径方向外側にリング状に突出するスラストカラー(スラストカム)17の前面(船首側の端面)17aを軸受け支持する複数個(本実施形態では5個)のスラストパッド18と、これらスラストパッド18の周方向への移動を制限(防止)するスラストパッド押さえ19と、第2のハウジング10の内周部に周方向に沿って形成された凹所10a内に収容されて、スラストカラー17の後面(船尾側の端面)17bを軸受け支持する複数個(本実施形態では5個)のスラストパッド20と、これらスラストパッド20の周方向への移動を制限(防止)するスラストパッド押さえ21とを備えている。
【0025】
図2に示すように、スラストパッド18は、隣り合う側面同士が互いに接するようにして、周方向に沿って配置されており、両端部に位置するスラストパッド18の側面、より詳しくは、隣り合うスラストパッド18の側面と接していない側面の中央部は、スラストパッド押さえ19の先端面と接している。また、平面視L字形状を呈するスラストパッド押さえ19の基端部は、締結手段(例えば、複数本のボルト22)を介して主軸受ハウジング7に固定されている。
【0026】
一方、図3に示すように、スラストパッド20は、スラストパッド18と同様、隣り合う側面同士が互いに接するようにして、周方向に沿って配置されており、両端部に位置するスラストパッド20の側面、より詳しくは、隣り合うスラストパッド20の側面と接していない側面の中央部は、スラストパッド押さえ21の先端面と接している。また、平面視L字形状を呈するスラストパッド押さえ21の基端部は、締結手段(例えば、複数本のボルト23)を介して主軸受ハウジング7に固定されている。
なお、図1中および図3中の符号24は、はずみ車(フライホイール)を示している。
【0027】
さて、本実施形態に係るスラストパッド18,20はそれぞれ、図4に示す平面視形状を有するとともに、図5に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向外側に位置する外周縁部には、周面(外周面)31から半径方向内側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)U字形状を呈する周溝32が、周方向に沿って設けられている。
周溝32は、スラストパッド18,20の(半径方向の)長さをA、周溝32の深さをBとした場合、0.05≦B/A≦0.45を満たすようにして形成されている。
【0028】
本実施形態に係るスラストパッド18,20によれば、周溝32を設けることによりスラストパッド18,20の外周縁部が柔構造となるので、スラストパッド18,20の外周縁部に集中する応力を低減させる(スラストパッド18,20の長さ方向(半径方向)に沿って分散させる)ことができ、各スラストパッド18,20に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、スラストパッド18,20の外周縁部に応力が集中するのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、クランク軸2から遠ざかるにしたがって、スラストパッド18,20を支持する主軸受ハウジング7の剛性が高くなるからである。
【0029】
また、本実施形態に係るスラストパッド18,20によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0030】
本発明の第2実施形態に係るスラストパッドについて、図6および図7を参照しながら説明する。図6は本実施形態に係るスラストパッドの平面図、図7は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
本実施形態に係るスラストパッド41は、周溝32の代わりに、段部42が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0031】
本実施形態に係るスラストパッド41は、図6に示す平面視形状を有するとともに、図7に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向外側に位置する外周縁部には、周面(外周面)43から半径方向内側に向かうとともに、非受圧面(非摺動面:スラストカラー17の前面17aまたは後面17b(図1参照)と対向する面(受圧面:摺動面)44と反対側の面)45から受圧面44の側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)L字形状(矩形状)を呈する段部42が、周方向に沿って設けられている。
段部42は、スラストパッド41の(半径方向の)長さをA、段部42の深さをB、段部42の奥行C、スラストパッド41の厚みをTとした場合、0.05≦B/A≦0.35および0.01≦C/T≦0.4を満たすようにして形成されている。
【0032】
本実施形態に係るスラストパッド41によれば、段部42を設けることによりスラストパッド41の外周縁部が柔構造となるので、スラストパッド41の外周縁部に集中する応力を低減させる(スラストパッド41の長さ方向(半径方向)に沿って分散させる)ことができ、各スラストパッド41に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、スラストパッド41の外周縁部に応力が集中するのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、クランク軸2から遠ざかるにしたがって、スラストパッド41を支持する主軸受ハウジング7の剛性が高くなるからである。
【0033】
また、本実施形態に係るスラストパッド41によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0034】
本発明の第3実施形態に係るスラストパッドについて、図8および図9を参照しながら説明する。図8は本実施形態に係るスラストパッドの平面図、図9は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
本実施形態に係るスラストパッド51は、周溝32の代わりに、周溝52が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0035】
本実施形態に係るスラストパッド51は、図8に示す平面視形状を有するとともに、図9に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向内側に位置する内周縁部には、周面(内周面)53から半径方向外側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)U字形状を呈する周溝52が、周方向に沿って設けられている。
周溝52は、スラストパッド51の(半径方向の)長さをA、周溝52の深さをBとした場合、0.1≦B/A≦0.5を満たすようにして形成されている。
【0036】
本実施形態に係るスラストパッド51によれば、周溝52を設けることによりスラストパッド51の内周縁部が柔構造となるので、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド51の外周縁側(半径方向外側)に移動させることができ、各スラストパッド51に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド51の外周縁側に移動させることにより、各スラストパッド51に加わる最高面圧を低減させることができるのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド51の外周縁側に移動させることにより、スラストパッド51がより剛性の高いクランク軸2から遠い側の主軸受ハウジング7で支持されて、主軸受ハウジング7の変位量(傾き)が減少するからである。
【0037】
また、本実施形態に係るスラストパッド51によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0038】
本発明の第4実施形態に係るスラストパッドについて、図10および図11を参照しながら説明する。図10は本実施形態に係るスラストパッドの平面図、図11は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
本実施形態に係るスラストパッド61は、周溝32の代わりに、段部62が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0039】
本実施形態に係るスラストパッド61は、図10に示す平面視形状を有するとともに、図11に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向内側に位置する内周縁部には、周面(内周面)63から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面(非摺動面:スラストカラー17の前面17aまたは後面17b(図1参照)と対向する面(受圧面:摺動面)44と反対側の面)45から受圧面44の側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)L字形状(矩形状)を呈する段部62が、周方向に沿って設けられている。
段部62は、スラストパッド61の(半径方向の)長さをA、段部62の深さをB、段部62の奥行C、スラストパッド61の厚みをTとした場合、0.15≦B/A≦0.35および0.1≦C/T≦0.4を満たすようにして形成されている。
【0040】
本実施形態に係るスラストパッド61によれば、段部62を設けることによりスラストパッド61の内周縁部が柔構造となるので、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド61の外周縁側(半径方向外側)に移動させることができ、各スラストパッド61に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド61の外周縁側に移動させることにより、各スラストパッド61に加わる最高面圧を低減させることができるのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド61の外周縁側に移動させることにより、スラストパッド61がより剛性の高いクランク軸2から遠い側の主軸受ハウジング7で支持されて、主軸受ハウジング7の変位量(傾き)が減少するからである。
【0041】
また、本実施形態に係るスラストパッド61によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0042】
本発明に係るスラストパッドを具備したスラスト軸受5によれば、スラストパッドの寸法を従来と同じ寸法とした場合でも、荷重能力が向上することになるので、寸法の大型化を招くことなく、従来よりも出力の大きいより大型の内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)にも適用することができる。
一方、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラストパッドの寸法が従来よりも小さくてすむので、スラスト軸受5の小型化および軽量化を図ることができる。
【0043】
本発明に係るスラストパッドを具備した内燃機関1によれば、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラストパッドの寸法が従来よりも小さくてすむので、主軸受ハウジング7および台板6の小型化および軽量化を図ることができる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更・変形が可能である。
例えば、上述した第1実施形態と、第3実施形態または第4実施形態とを組み合わせて実施することもできるし、上述した第2実施形態と、第3実施形態または第4実施形態とを組み合わせて実施することもできる。
【0045】
また、周溝32,52の断面視形状はU字形状に限定されるものではなく、段部42,62の断面視形状はL字形状に限定されるものではなく、同様の作用効果を生じさせる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 大型ディーゼルエンジン(内燃機関)
2 クランク軸
5 スラスト軸受
17 スラストカラー
18 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
20 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
32 周溝
41 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
42 段部
44 受圧面
45 非受圧面
51 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
52 周溝
61 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
62 段部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、舶用等の大型ディーゼルエンジンを構成するスラスト軸受に適用されるスラスト軸受セグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
舶用等の大型ディーゼルエンジンを構成するスラスト軸受としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3689378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された発明では、スラストカラー14の外周縁部に、周方向に沿って断面視円弧状形状を呈する凹部28が設けられており、これによりスラスト軸受7の荷重能力の向上が図られている。
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、スラストカラー14の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部28を均一に彫り込んでいく必要がある。そのため、舶用等の大型ディーゼルエンジンでは、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要し、エンジンの製造コストが高騰してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができるスラスト軸受セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられている。
【0007】
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられている。
【0008】
上記スラスト軸受セグメントにおいて、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられているとさらに好適である。
【0009】
上記スラスト軸受セグメントにおいて、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられているとさらに好適である。
【0010】
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられている。
【0011】
本発明に係るスラスト軸受セグメントは、クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられている。
【0012】
本発明に係るスラスト軸受セグメントによれば、スラスト軸受セグメントの外周縁部に周溝または段部を設けることによりスラスト軸受セグメントの外周縁部が柔構造となるので、スラスト軸受セグメントの外周縁部に集中する応力を低減させる(スラスト軸受セグメントの長さ方向(半径方向)に沿って分散させる)ことができ、各スラスト軸受セグメントに加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができる。
なお、スラスト軸受セグメントの外周縁部に応力が集中するのは、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングがクランク軸から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板に結合されており、クランク軸から遠ざかるにしたがって、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングの剛性が高くなるからである。
【0013】
また、本発明に係るスラスト軸受セグメントによれば、スラスト軸受セグメントの内周縁部に周溝または段部を設けることによりスラスト軸受セグメントの内周縁部が柔構造となるので、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングへの荷重点をスラスト軸受セグメントの外周縁側(半径方向外側)に移動させることができ、各スラスト軸受セグメントに加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができる。
なお、主軸受ハウジングへの荷重点をスラスト軸受セグメントの外周縁側に移動させることにより、各スラスト軸受セグメントに加わる最高面圧を低減させることができるのは、主軸受ハウジングがクランク軸から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板に結合されており、主軸受ハウジングへの荷重点をスラスト軸受セグメントの外周縁側に移動させることにより、スラスト軸受セグメントがより剛性の高いクランク軸から遠い側の主軸受ハウジングで支持されて、主軸受ハウジングの変位量(傾き)が減少するからである。
【0014】
本発明に係るスラスト軸受は、上記いずれかのスラスト軸受セグメントを具備している。
【0015】
本発明に係るスラスト軸受によれば、スラスト軸受セグメントの寸法を従来と同じ寸法とした場合でも、荷重能力が向上することになるので、寸法の大型化を招くことなく、従来よりも出力の大きいより大型の内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)にも適用することができる。
一方、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラスト軸受セグメントの寸法が従来よりも小さくてすむので、スラスト軸受の小型化および軽量化を図ることができる。
【0016】
本発明に係る内燃機関は、上記スラスト軸受を具備している。
【0017】
本発明に係る内燃機関によれば、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラスト軸受セグメントの寸法が従来よりも小さくてすむので、スラスト軸受セグメントを支持する主軸受ハウジングおよび台板の小型化および軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスラスト軸受セグメントによれば、スラスト軸受の荷重能力を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るスラスト軸受セグメントを具備した内燃機関の要部を左側方から見た断面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の平面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るスラストパッド(スラスト軸受セグメント)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態に係るスラスト軸受セグメントについて、図1から図5を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るスラスト軸受セグメントを具備した内燃機関の要部を左側方から見た断面図、図2は図1のII−II矢視図、図3は図1のIII−III矢視図、図4は本実施形態に係るスラスト軸受セグメント(以下、「スラストパッド」という。)の平面図、図5は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明に係るスラストパッドを具備した内燃機関1は、例えば、舶用の主機として採用される大型ディーゼルエンジン(クロスヘッド型ディーゼルエンジン)であり、中間軸(図示せず)を介して、一端部にプロペラ(図示せず)が固定されたプロペラ軸(図示せず)に接続されている。
内燃機関1の動力をプロペラ等に伝えるクランク軸2は、最も後方(船尾側)に位置するクランクアーム3よりも後方において、主軸受4およびスラスト軸受5により軸受け支持されている。
【0022】
主軸受4は、クランク軸2を収容する台板6と一体に鋳造、または溶接により接続された主軸受ハウジング(台板サドル)7と、主軸受キャップ(主軸受押え金物)8とを備えている。
主軸受ハウジング7は、前方(船首側)に位置する第1のハウジング9と、後方(船尾側)に位置する第2のハウジング10とを備えており、第1のハウジング9の内周面には、クランク軸2のジャーナル11を軸受け支持する主軸受下メタル12が装着され、第2のハウジング10の内周面には、クランク軸2のジャーナル13を軸受け支持する第2の主軸受下メタル14が装着されている。
【0023】
一方、主軸受キャップ8は、第1のハウジング9の底部上方を覆うようにして、第1のハウジング9に立てられた(立設された)複数本の主軸受キャップボルト(図示せず)と、この主軸受キャップボルトに設けられた雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する取付ナット(図示せず)とにより第1のハウジング9に固定される第1のキャップ15と、第2のハウジング10の底部上方を覆うようにして、第2のハウジング10に立てられた(立設された)複数本の主軸受キャップボルト(図示せず)と、この主軸受キャップボルトに設けられた雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を有する取付ナット(図示せず)とにより第2のハウジング10に固定される第2のキャップ16とを備えている。第1のキャップ15の内周面には、クランク軸2のジャーナル11を軸受け支持する主軸受上メタル(図示せず)が装着され、第2のキャップ16の内周面には、クランク軸2のジャーナル13を軸受け支持する第2の主軸受上メタル(図示せず)が装着されている。
【0024】
スラスト軸受5は、第1のハウジング9の内周部に周方向に沿って形成された凹所9a内に収容されて、ジャーナル11とジャーナル13との間に位置するクランク軸2の外周面から、周方向に沿って半径方向外側にリング状に突出するスラストカラー(スラストカム)17の前面(船首側の端面)17aを軸受け支持する複数個(本実施形態では5個)のスラストパッド18と、これらスラストパッド18の周方向への移動を制限(防止)するスラストパッド押さえ19と、第2のハウジング10の内周部に周方向に沿って形成された凹所10a内に収容されて、スラストカラー17の後面(船尾側の端面)17bを軸受け支持する複数個(本実施形態では5個)のスラストパッド20と、これらスラストパッド20の周方向への移動を制限(防止)するスラストパッド押さえ21とを備えている。
【0025】
図2に示すように、スラストパッド18は、隣り合う側面同士が互いに接するようにして、周方向に沿って配置されており、両端部に位置するスラストパッド18の側面、より詳しくは、隣り合うスラストパッド18の側面と接していない側面の中央部は、スラストパッド押さえ19の先端面と接している。また、平面視L字形状を呈するスラストパッド押さえ19の基端部は、締結手段(例えば、複数本のボルト22)を介して主軸受ハウジング7に固定されている。
【0026】
一方、図3に示すように、スラストパッド20は、スラストパッド18と同様、隣り合う側面同士が互いに接するようにして、周方向に沿って配置されており、両端部に位置するスラストパッド20の側面、より詳しくは、隣り合うスラストパッド20の側面と接していない側面の中央部は、スラストパッド押さえ21の先端面と接している。また、平面視L字形状を呈するスラストパッド押さえ21の基端部は、締結手段(例えば、複数本のボルト23)を介して主軸受ハウジング7に固定されている。
なお、図1中および図3中の符号24は、はずみ車(フライホイール)を示している。
【0027】
さて、本実施形態に係るスラストパッド18,20はそれぞれ、図4に示す平面視形状を有するとともに、図5に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向外側に位置する外周縁部には、周面(外周面)31から半径方向内側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)U字形状を呈する周溝32が、周方向に沿って設けられている。
周溝32は、スラストパッド18,20の(半径方向の)長さをA、周溝32の深さをBとした場合、0.05≦B/A≦0.45を満たすようにして形成されている。
【0028】
本実施形態に係るスラストパッド18,20によれば、周溝32を設けることによりスラストパッド18,20の外周縁部が柔構造となるので、スラストパッド18,20の外周縁部に集中する応力を低減させる(スラストパッド18,20の長さ方向(半径方向)に沿って分散させる)ことができ、各スラストパッド18,20に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、スラストパッド18,20の外周縁部に応力が集中するのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、クランク軸2から遠ざかるにしたがって、スラストパッド18,20を支持する主軸受ハウジング7の剛性が高くなるからである。
【0029】
また、本実施形態に係るスラストパッド18,20によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0030】
本発明の第2実施形態に係るスラストパッドについて、図6および図7を参照しながら説明する。図6は本実施形態に係るスラストパッドの平面図、図7は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
本実施形態に係るスラストパッド41は、周溝32の代わりに、段部42が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0031】
本実施形態に係るスラストパッド41は、図6に示す平面視形状を有するとともに、図7に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向外側に位置する外周縁部には、周面(外周面)43から半径方向内側に向かうとともに、非受圧面(非摺動面:スラストカラー17の前面17aまたは後面17b(図1参照)と対向する面(受圧面:摺動面)44と反対側の面)45から受圧面44の側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)L字形状(矩形状)を呈する段部42が、周方向に沿って設けられている。
段部42は、スラストパッド41の(半径方向の)長さをA、段部42の深さをB、段部42の奥行C、スラストパッド41の厚みをTとした場合、0.05≦B/A≦0.35および0.01≦C/T≦0.4を満たすようにして形成されている。
【0032】
本実施形態に係るスラストパッド41によれば、段部42を設けることによりスラストパッド41の外周縁部が柔構造となるので、スラストパッド41の外周縁部に集中する応力を低減させる(スラストパッド41の長さ方向(半径方向)に沿って分散させる)ことができ、各スラストパッド41に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、スラストパッド41の外周縁部に応力が集中するのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、クランク軸2から遠ざかるにしたがって、スラストパッド41を支持する主軸受ハウジング7の剛性が高くなるからである。
【0033】
また、本実施形態に係るスラストパッド41によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0034】
本発明の第3実施形態に係るスラストパッドについて、図8および図9を参照しながら説明する。図8は本実施形態に係るスラストパッドの平面図、図9は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
本実施形態に係るスラストパッド51は、周溝32の代わりに、周溝52が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0035】
本実施形態に係るスラストパッド51は、図8に示す平面視形状を有するとともに、図9に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向内側に位置する内周縁部には、周面(内周面)53から半径方向外側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)U字形状を呈する周溝52が、周方向に沿って設けられている。
周溝52は、スラストパッド51の(半径方向の)長さをA、周溝52の深さをBとした場合、0.1≦B/A≦0.5を満たすようにして形成されている。
【0036】
本実施形態に係るスラストパッド51によれば、周溝52を設けることによりスラストパッド51の内周縁部が柔構造となるので、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド51の外周縁側(半径方向外側)に移動させることができ、各スラストパッド51に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド51の外周縁側に移動させることにより、各スラストパッド51に加わる最高面圧を低減させることができるのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド51の外周縁側に移動させることにより、スラストパッド51がより剛性の高いクランク軸2から遠い側の主軸受ハウジング7で支持されて、主軸受ハウジング7の変位量(傾き)が減少するからである。
【0037】
また、本実施形態に係るスラストパッド51によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0038】
本発明の第4実施形態に係るスラストパッドについて、図10および図11を参照しながら説明する。図10は本実施形態に係るスラストパッドの平面図、図11は本実施形態に係るスラストパッドの側面図である。
本実施形態に係るスラストパッド61は、周溝32の代わりに、段部62が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0039】
本実施形態に係るスラストパッド61は、図10に示す平面視形状を有するとともに、図11に示す側面視(断面視)形状を有しており、半径方向内側に位置する内周縁部には、周面(内周面)63から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面(非摺動面:スラストカラー17の前面17aまたは後面17b(図1参照)と対向する面(受圧面:摺動面)44と反対側の面)45から受圧面44の側に向かって彫り込まれた(窪む)、側面視(断面視)L字形状(矩形状)を呈する段部62が、周方向に沿って設けられている。
段部62は、スラストパッド61の(半径方向の)長さをA、段部62の深さをB、段部62の奥行C、スラストパッド61の厚みをTとした場合、0.15≦B/A≦0.35および0.1≦C/T≦0.4を満たすようにして形成されている。
【0040】
本実施形態に係るスラストパッド61によれば、段部62を設けることによりスラストパッド61の内周縁部が柔構造となるので、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド61の外周縁側(半径方向外側)に移動させることができ、各スラストパッド61に加わる最高面圧を低減させることができて、スラスト軸受5の荷重能力を向上させることができる。
なお、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド61の外周縁側に移動させることにより、各スラストパッド61に加わる最高面圧を低減させることができるのは、主軸受ハウジング7がクランク軸2から遠い側の端部(図1における下側の端部(下部))で台板6に結合されており、主軸受ハウジング7への荷重点をスラストパッド61の外周縁側に移動させることにより、スラストパッド61がより剛性の高いクランク軸2から遠い側の主軸受ハウジング7で支持されて、主軸受ハウジング7の変位量(傾き)が減少するからである。
【0041】
また、本実施形態に係るスラストパッド61によれば、従来(上記特許文献1に開示された発明)のように、スラストカラー17の半径方向外側に位置する周面(外周面)から半径方向内側に向かって、その断面視形状が同じになるように、凹部を均一に彫り込んでいく必要がないので、舶用等の大型ディーゼルエンジンでも、クランク軸およびエンジンの製造工程に長時間を要することがなく、エンジンの製造コストを抑制することができる。
【0042】
本発明に係るスラストパッドを具備したスラスト軸受5によれば、スラストパッドの寸法を従来と同じ寸法とした場合でも、荷重能力が向上することになるので、寸法の大型化を招くことなく、従来よりも出力の大きいより大型の内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)にも適用することができる。
一方、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラストパッドの寸法が従来よりも小さくてすむので、スラスト軸受5の小型化および軽量化を図ることができる。
【0043】
本発明に係るスラストパッドを具備した内燃機関1によれば、従来と同じ荷重を受ける場合には、スラストパッドの寸法が従来よりも小さくてすむので、主軸受ハウジング7および台板6の小型化および軽量化を図ることができる。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更・変形が可能である。
例えば、上述した第1実施形態と、第3実施形態または第4実施形態とを組み合わせて実施することもできるし、上述した第2実施形態と、第3実施形態または第4実施形態とを組み合わせて実施することもできる。
【0045】
また、周溝32,52の断面視形状はU字形状に限定されるものではなく、段部42,62の断面視形状はL字形状に限定されるものではなく、同様の作用効果を生じさせる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 大型ディーゼルエンジン(内燃機関)
2 クランク軸
5 スラスト軸受
17 スラストカラー
18 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
20 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
32 周溝
41 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
42 段部
44 受圧面
45 非受圧面
51 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
52 周溝
61 スラストパッド(スラスト軸受セグメント)
62 段部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項2】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項3】
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラスト軸受セグメント。
【請求項4】
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラスト軸受セグメント。
【請求項5】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項6】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のスラスト軸受セグメントを具備してなることを特徴とするスラスト軸受。
【請求項8】
請求項7に記載のスラスト軸受を具備してなることを特徴とする内燃機関。
【請求項1】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項2】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向外側に位置する外周縁部に、外周面から半径方向内側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項3】
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラスト軸受セグメント。
【請求項4】
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラスト軸受セグメント。
【請求項5】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かって彫り込まれた周溝が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項6】
クランク軸に設けられたスラストカラーに作用するアキシアル荷重に抗して前記スラストカラーを軸受け支持するスラスト軸受セグメントであって、
半径方向内側に位置する内周縁部に、内周面から半径方向外側に向かうとともに、非受圧面から受圧面の側に向かって彫り込まれた段部が、周方向に沿って設けられていることを特徴とするスラスト軸受セグメント。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のスラスト軸受セグメントを具備してなることを特徴とするスラスト軸受。
【請求項8】
請求項7に記載のスラスト軸受を具備してなることを特徴とする内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−179661(P2011−179661A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46688(P2010−46688)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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