説明

スリットノズル

【課題】気泡抜き作業のためのアイドル時間の低減と、気泡を原因とする塗膜のスジムラをなくすことが可能なスリットノズルを提供する。
【解決手段】塗布液に巻き込まれた気泡(エアー)は第1貯留部4から第2貯留部5へ流入する間に塗布液から抜け出して第1貯留部4内の天井部分に溜まるが、第1貯留部4が2つの連山状に形成されているため、エアーは天井に沿って頂部に達し、ここに開けられた気泡排出口7から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に一定の幅で塗布液を塗布するスリットノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の表面にホトレジスト等の塗布液を塗布する方法として、通常のノズルから基板表面に塗布液を滴下し、その後高速回転させることで均一な厚みとするスピンコーティングによるものがある。しかし、この方法では塗布された塗布液の90%以上が飛散してしまい無駄が多い。そこで最近では、スリットノズルを用いて基板に一定幅で塗布液を塗布した後、ある程度回転させて塗膜の厚さを均一にする方法、或いはスリットノズルを用いて基板に一定幅で塗布液を塗布し、回転させることなく塗布工程を終了する方法が行われている。
上記のように、塗布液の無駄を少なくするには、できるだけ基板を回転させないで塗膜の厚みを均一にすることが条件となる。このためスリットノズルには、吐出口から吐出される塗布液の量がスリット状吐出口に沿って均一であることが必要になる。この均一性を確保するため従来から種々の提案がなされている。
【0003】
図6(a)は、従来のスリットノズルの概要を示す斜視図、(b)は同スリットノズルを構成するノズル半体を示す図である。スリットノズル100は、2つの半体101、102を突き合わせてなり、一方の半体101の中央には塗布液供給孔103が形成され、この塗布液供給孔103から供給された塗布液は2つの半体101、102間に形成される流路104を介してスリット状吐出口105から基板表面に向けて塗布される。そして、従来にあっては流路104を天井部を山形に形成し、その頂部に流路104内の気泡を排出するための気泡排出口106を開けている。
【0004】
しかし、最近では基板サイズの大型化にともなって、スリットノズルも大型化し、これに伴い流路104の天井部の傾斜が緩くなり流路内の気泡が十分に抜けないという問題が発生してきた。気泡が抜きにくいと、気泡抜き作業のためのアイドル時間が長くなり、また、抜け切らずに残った気泡が塗布液とともに吐出口から排出されて塗膜にスジムラができる原因となる。
【0005】
特許文献1では、図6(c)に示すように、スリットノズル内の気泡の排出を行う通気口を、スリットノズルの長手方向の両端部に設けている。そしてスリットノズルの気泡溜まり部内の上部が、スリットノズルの中央部から両端部に向けて徐々に高くなるようにV字状に傾斜させている。
また、特許文献2では、スリットノズルからの気泡の排出を吸引ポンプによる気泡の吸引によって行っている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−212592号公報
【特許文献2】特開2006−87999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたスリットノズルでは気泡は抜けやすくなるが、通気口が両端のみでは気泡の排出を行う通気口までの距離が遠くなり必ずしも万全とは言えない。また、気泡溜まり部内の上部が、スリットノズルの中央部から両端部に向けて徐々に高くなるように傾斜させているため気泡溜まりが大容量となる。
【0008】
また、塗布液量に対してエアーの占める容積が相対的に大きくなるため、エアーによるダンパー効果で、塗布液供給ポンプによる塗布液への加圧が不十分となり吐出圧のコントロールが困難となることも考えられる。
【0009】
また特許文献2に開示された吸引ポンプによる手段では、塗布液と混在している気泡を分離吸引することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため本発明は、塗布液が供給される塗布液供給口と、基板上に塗布液を流下させるための幅広のスリット状吐出口と、前記塗布液供給口とスリット状吐出口とをつなぐ塗布液流路とが形成されたスリットノズルであって、前記塗布液流路の天井面は複数の傾斜を有する連山状に形成され、連山状塗布液流路の頂部に塗布液流路内の気泡を排出する排出口が設けられた構成とした。
【0011】
前記連山状塗布液流路の頂部に開口する排出口の他に、スリットノズル長手方向の両端部側面または長手方向の中央部にも排出口を形成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスリットノズルによれば、塗布液流路内の気泡を排出する排出口が連山状塗布液流路の頂部に複数開けられているため、気泡を容易に排出することができる。したがって、気泡抜き作業のためのアイドル時間の低減、および、気泡を原因とする塗膜のスジムラをなくすことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の最適な実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るスリットノズルの斜視図、図2は本発明に係るスリットノズルを構成するノズル半体を示す図、図3(a)は図1のA−A方向断面図、(b)は図1のB−B方向断面図である。
【0014】
スリットノズルは左右のノズル半体1,2を突き合わせボルトにて結合一体化することで構成され、一方のノズル半体1のノズル半体2との対向面には、塗布液流路3が形成されている。この塗布液流路3は第1貯留部4及び第2貯留部5からなる塗布液流路が形成されている。
【0015】
第1貯留部4の天井部4aはノズル半体1の厚み方向(図2の左右方向)の約半分近くの深さまで穿設され、その断面形状は同一幅で深さが深くなるほど高くなるように傾斜している。また第1貯留部4のノズル半体1のノズル半体2との対向面に開口している部分4bの形状は、図2に示すように、長手方向(図2の左右方向)に2つの連山状としてあり、中央部(谷部)において塗布液供給孔6と連通し、2つの頂上部において気泡排出口7に連通している。
【0016】
第2貯留部5は前記第1貯留部4の下側に連続して形成され、その深さはノズル半体1の厚み方向を基準として前記第1貯留部4よりも小さくされている。また、第2貯留部5の下側には他方のノズル半体2との間でオリフィスを形成する平坦面8が連続して形成され、このオリフィスの下端がスリット状吐出口9となる。
【0017】
また、第1貯留部4、第2貯留部5及びオリフィス8からの塗布液の漏れを防止するため、ノズルの両端には端板10,11が取り付けられている。
【0018】
以上において、塗布液供給孔6から第1貯留部4に流入した塗布液は、第1貯留部4を経て第2貯留部5に均等に流入する。なお、均等流入の効果を高めるため2つの山の頂点、つまり塗布液供給孔6の近傍に2つの塗布液供給孔6を形成してもよい。
【0019】
塗布液に巻き込まれた気泡(エアー)は第1貯留部4から第2貯留部5へ流入する間に塗布液から抜け出して第1貯留部4内の天井部分に溜まるが、第1貯留部4が2つの連山状に形成されているため、エアーは天井に沿って頂部に達し、ここに開けられた気泡排出口7から排出される。
【0020】
図6に既述した従来の機構では、気泡排出口が一箇所或いは塗布液供給孔6からの距離が大き過ぎたため、スリット幅の広いスリットノズルへ適用するとエアーの排出が困難となっていたが、本発明のスリットノズルでは容易である。
【0021】
本発明のスリットノズルは、上記例の他にも気泡排出口7を、複数、色々な場所に設けることができる。図4は本発明のスリットノズルの他の例を示す正面図である。簡便化のため、本図においては気泡排出口7以外の気泡排出口7a,7b,7cの位置と、気泡排出方向のみを示している。
【0022】
また、図5は別実施例を示すスリットノズルの断面図であり、気泡排出口7が開口する面をノズル半体1の上面ではなく、背面にしている。
【0023】
塗布液は、塗布液供給孔6から図示しない第1貯留部に送られる。そして塗布液に混在していた気泡はエアーとなって第1貯留部の天井部分に溜まる。ここで、排出口7aのみを頂点にした第1貯留部を形成するのが図6(b)に示した従来例である。別実施例においては、排出口7と長手方向両端の排出口7b,7bを併設する。あるいは、排出口7と長手方向両端の排出口7c,7cを併設する。
【0024】
また、排出口7を2箇所に開けるのは図2の実施例であるが、この場合、排出口を図5に示したように側面に開口させることもできる。さらに、以上説明した排出口7a、7bおよび7cのうちの2つまたはそれ以上を適宜組み合わせて、本発明のスリットノズルを構成することができる。この場合、各排出口が頂上となるよう第1貯留部を傾斜させておくことが望ましいのは既述の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るスリットノズルの斜視図
【図2】本発明に係るスリットノズルを構成するノズル半体を示す図
【図3】(a)は図1のA−A方向断面図、(b)は図1のB−B方向断面図
【図4】別実施例を示すスリットノズルの正面図
【図5】別実施例を示すスリットノズルの断面図
【図6】(a)は従来のスリットノズルの斜視図、(b)及び(c)は従来のスリットノズルを構成するノズル半体を示す図
【符号の説明】
【0026】
1,2…ノズル半体、3…塗布液流路、4…第1貯留部、5…第2貯留部、6…塗布液供給孔、7, 7a,7b,7c…気泡排出口、8…オリフィスを形成する平坦面、9…スリット状吐出口、10、11…端板、100…スリットノズル、101,102…スリット半体、103…塗布液供給孔、104…塗布液流路、105…スリット状吐出口、106…気泡排出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液が供給される塗布液供給口と、基板上に塗布液を流下させるための幅広のスリット状吐出口と、前記塗布液供給口とスリット状吐出口とをつなぐ塗布液流路とが形成されたスリットノズルであって、前記塗布液流路の天井面は複数の傾斜を有する連山状に形成され、連山状塗布液流路の頂部に塗布液流路内の気泡を排出する排出口が設けられていることを特徴とするスリットノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のスリットノズルにおいて、前記排出口はスリットノズル長手方向の両端部側面または長手方向の中央部にも形成されていることを特徴とするスリットノズル。








【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−142648(P2008−142648A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333930(P2006−333930)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】