説明

スロット型光ケーブル

【課題】光ファイバを傷つけることなく、容易に分岐接続作業を行うことができるスロット型光ケーブルを提供する。
【解決手段】外周部に複数の収納溝12が形成されたスロットロッド10と、収納溝12内に収容された光ファイバ20と、スロッドロッド10の外周部を被覆する被覆テープ40と、被覆テープ40の外周部に設けられたシース60と、を備え、シース60には、少なくとも1つの収納溝12を仕切るリブ13と対応する位置の外周部に突条61が設けられ、突条61に対応するリブ13の外周に設けられた前記被覆テープが突条61内に配置されるスロット型光ケーブル1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロット型光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
スロット型光ケーブルは、軸方向に沿って延在し断面でみて放射状の位置に複数形成された条溝(以下、収納溝という)を有するスロットロッドと、各収納溝内に収容された光ファイバと、光ファイバが収容されたスロットロッドの外周部に巻かれる被覆テープと、被覆テープが巻かれたスロットロッド全体を収容するシース等からなる。光ファイバは、たとえば、複数本の光ファイバを樹脂で一体化してテープ状に形成したテープ心線や、光ファイバ単心線が収容される。
【0003】
スロットロッドの収納溝の形状としては、スロットロッドの長手方向に一方向の螺旋状に形成されたS型と、所定の長さで螺旋方向が反転するSZ型の2種類がある。SZ型は、スロット型光ケーブルの途中で収納溝から容易にテープ心線を引き出すことができ、中間後分岐作業に適している。
なお、収納溝の間の仕切りは、一般的にリブと呼ばれている。
【0004】
スロット型光ケーブルの製造時には、光ファイバが収納溝に収納されたスロットロッドの上から被覆テープを巻き付ける。その後、高温の熱可塑性樹脂を被覆テープの外側に押出被覆することによりシースを形成する。
【0005】
ところで、光ファイバの分岐接続作業では、スロット型光ケーブル端末、あるいは、中間の光ファイバの分岐接続を行う位置の近傍において、数10cmにわたりシースを除去する必要がある。
前述したようにスロット型光ケーブルは、収納溝内に光ファイバを収納した状態で、スロットロッド外周に被覆テープを巻回し、さらにその外側にシースを被覆した構造をなしているので、内部の光ファイバの分岐接続を行う場合、作業者は刃物等でシースおよび被覆テープを切断する必要があり、また、このときテープ心線を傷つけないよう細心の注意を払う必要があることから、作業性が悪かった。
これを解決する手法として、シースのリブと対応する位置にノッチを設け、シースを切り裂きやすくする構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−3774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のようにシースにノッチを設ける構造では、ケーブルをドラム巻きした際の周長差で発生するシースの伸びや圧縮縮み、ケーブルを布設する際の曲げや捻回、摩擦等の外力によりシースが引き裂かれるおそれがある。シースが引き裂かれてしまった場合、ケーブル内に水が浸入したり、光ファイバに直接外力が加わる可能性があり、光ファイバの特性劣化につながり、場合によっては光ファイバが断線してしまうこともある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光ファイバを傷つけることなく容易に光ファイバの分岐接続を行うことができ、かつ信頼性も維持したスロット型光ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、スロット型光ケーブルであって、外周部に複数の収納溝が形成されたスロットロッドと、前記収納溝内に収容された光ファイバと、前記スロッドロッドの外周部を被覆する被覆テープと、前記被覆テープの外周部に設けられたシースと、を備え、前記シースには、前記収納溝を仕切るリブと対応する位置の外周部に少なくとも1つの突条が設けられ、前記突条に対応するリブの外周に設けられた前記被覆テープが前記突条内に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、スロット型光ケーブルであって、外周部に複数の収納溝が形成されたスロットロッドと、前記収納溝内に収容された光ファイバと、前記スロッドロッドの外周部に設けられたシースと、を備え、前記シースには、前記収納溝を仕切るリブと対応する位置の外周部に少なくとも1つの突条が設けられ、前記突条に対応するリブの外周側の端部が前記突条内に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のスロット型ケーブルであって、前記リブは、断面においてスロット型光ケーブル1の外側の幅が中心側の幅よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光ファイバを傷つけることなく、容易に光ファイバの分岐接続作業を行うことができ、かつ信頼性も維持したスロット型光ケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るスロット型光ケーブル1の断面図である。図1に示すように、スロット型光ケーブル1は、スロットロッド10と、テープ心線20と、被覆テープ40と、シース60と、から概略構成される。
【0013】
スロットロッド10の中心には張力を負担するテンションメンバ11が配置されている。テンションメンバ11は例えば単鋼線や撚鋼線、ガラス繊維、アラミド繊維などの抗張力部材である。
スロットロッド10のテンションメンバ11よりも外側の部分は、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアミド樹脂、エンジニアリングプラスチック等の熱可塑性樹脂からなる。この中でも、価格や製造性、使用実績より、高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0014】
また、スロットロッド10の外周部には、スロットロッド10の周方向に間隔を空けて長手方向に延在する複数の収納溝12と収納溝12間を仕切るリブ13が設けられており、図1では4つのリブ13が設けられている。収納溝12の形状は、スロットロッド10の長手方向に一方向の螺旋状に形成するS型であってもよいし、所定の長さで螺旋方向が反転するSZ型であってもよい。
収納溝12には、複数本の光ファイバを一列に配列したテープ心線20がそれぞれ収容される。なお、光ファイバの単心線を収容してもよい。
【0015】
リブは図1に示すように、断面において先端側(スロット型光ケーブル1の外側)の幅が根元側(スロット型光ケーブル1の中心側)の幅よりも小さくなるように形成されている。
【0016】
収納溝12にテープ心線20が収容された状態で、スロットロッド10の外側には、被覆テープ40が押さえ巻きされる。被覆テープ40により、収納溝12に収納されたテープ心線20がシース60の形成前に飛び出さないように固定される。また。被覆テープ40により、シース60を形成する熱可塑性樹脂が収納溝12に入り込むことを防ぐことができる。
被覆テープ40には、例えば直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エンジニアリングプラスチック等の熱可塑性樹脂等を用いたフィルムや不織布テープなどが適宜用いられる。
なお、被覆テープ40は、収納溝12に収納された光ファイバの単心線やテープ心線20がシース60の形成前に動かないように、例えば、間欠充填材などで押さえる等の対策を施したものであれば省略することも可能である。
【0017】
被覆テープ40の外側には、シース60が設けられている。シース60には、熱可塑性樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアミド樹脂、エンジニアリングプラスチック等を用いることができる。この中でも、価格や製造性より、直鎖状低密度ポリエチレンや低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0018】
また、難燃性を特に考慮する必要がある場合は、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)やエチレン酢酸ビニル(EVA)などをベース樹脂として有機系や無機系の難燃剤や難燃助剤を配合したもの、塩化ビニル樹脂、さらには塩化ビニル樹脂の難燃性をさらに向上させたもの等を用いることができる。
また、屋外での布設環境などを考慮して、カーボンブラックや酸化防止剤、紫外線防止剤や吸収剤、カラー顔料なども適宜配合することができる。
【0019】
図2は図1のII部の拡大図である。本実施形態においては、図2に示すように、シース60の外周部には、リブ13に対応する位置に沿って延在する突条61が設けられており、リブ13の先端は突条61の内部にまで伸展されている。すなわち、図2に示すように、断面において、突条61の両端をつなぐ一点鎖線L1よりも外側までリブ13が伸展されている。なお、突条61の部分におけるシース60の厚さは、他の部分とほぼ同程度であるため、ケーブル布設時の磨耗等にも充分に耐えることができる。
【0020】
なお、L1は、シース60の外周に最も近い真円と突条61との交点P1、P1を結んだ線である。
【0021】
分岐接続作業において光ファイバを取り出すには、図2の一点鎖線L1に沿って突条61に図示しない刃物を入れる。このとき、刃物の刃先が、収納溝12収納された光ファイバの単心線やテープ心線20に対し、常に平行状態となる様にする。これにより光ファイバを傷つけることなく、リブ13の先端をケーブルの長手方向に切削することができるとともに、被覆テープ40及びシース60が切り裂かれる。
【0022】
突条61が一点鎖線L1に沿って除去されても、収納溝12は露出されず、被覆テープ40及びシース60により覆われた状態となるため、収納溝12に収納された光ファイバを傷つけるおそれがない。その後、被覆テープ40及びシース60を切断部より、例えば、工具を用いないで手で開くことで、テープ心線20を損傷させることなく容易に取り出すことができる。
【0023】
なお、リブ13が硬質の材料からなるため、刃物によりリブ13を切断する長さが長くなると一点鎖線L1に沿って切断するのが困難になる。このため、図2において、一点鎖線L1において切断される部分のリブ13の厚さは、2mm以下であることが好ましい。2mm以下であれば、大きな力を要せずに突条61を切り裂くことができる。このことからリブは、スロット型光ケーブル1の断面においてスロット型光ケーブル1の外側の幅が中心側の幅よりも小さいことが好ましい。
【0024】
また、図3に示すように、突条61の内部に被覆テープ40のみが伸展されている構成としてもよい。この場合は、一点鎖線L1に沿って突条61に刃物を入れることにより被覆テープ40及びシース60が切り裂かれる。なお、被覆テープ40が完全に刃物で切り裂かれない状態となっても被覆テープ40の刃物が入った部分は強度が弱くなっているため、手で引き裂くことができ、上述したリブ13の先端が突条61の内部にまで伸展されている場合と同様にテープ心線20を容易に取り出すことができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
例えば、図4に示すように、被覆テープ40を設けずに、スロットロッド10の外側にシース60を直接設けてもよい。この場合、収納溝12に収納された光ファイバの単心線やテープ心線20がシース60の形成前に動かないように、例えば間欠充填材等で押さえる等の対策を施せばよい。また、収納溝12の形状も、図1のような楔形形状に限らず、底部が平坦な形状としてもよい。
【0026】
また、図1では全てのリブ13に対応する位置に沿って延在する突条61が設けられていたが、少なくとも1本以上のリブ13Aに沿って延在する突条61が設けられていればよい。例えば図5に示すように、任意の2本のリブ13に沿って延在する2本の突条61を設けてもよい。図5においては、2本の突条61の内部にまで対応するリブ13の先端が伸展されている。
【0027】
また、リブ13の先端形状も、スロットロッド10の押出加工により適宜変更可能である。図1、図2では先端断面が鋭角になっていたが、図6に示すように丸みを帯びた先端形状とし、一点鎖線L1により切断されるリブ13の先端の形状が断面半円形となるようにしてもよい。あるいは、図7に示すように角を落とした先端形状とし、一点鎖線L1により切断される先端の形状が断面四角形となるようにしてもよい。
【0028】
あるいは、図8に示すように、リブ13の一点鎖線L1により切断される部分にくびれ14を設け、一点鎖線L1により切断される先端の形状が断面略円形となるようにしてもよい。くびれ14を設けることで、リブ13をくびれ14に沿って容易に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図1のII部の拡大図である。
【図3】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。
【図8】本発明の光ファイバケーブルの一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 スロット型光ケーブル
10 スロットロッド
12 収納溝
13 リブ
20 テープ心線(光ファイバ)
40 被覆テープ
60 シース
61 突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に複数の収納溝が形成されたスロットロッドと、
前記収納溝内に収容された光ファイバと、
前記スロッドロッドの外周部を被覆する被覆テープと、
前記被覆テープの外周部に設けられたシースと、を備え、
前記シースには、前記収納溝を仕切るリブと対応する位置の外周部に少なくとも1つの突条が設けられ、
前記突条に対応するリブの外周に設けられた前記被覆テープが前記突条内に配置されることを特徴とするスロット型光ケーブル。
【請求項2】
外周部に複数の収納溝が形成されたスロットロッドと、
前記収納溝内に収容された光ファイバと、
前記スロッドロッドの外周部に設けられたシースと、を備え、
前記シースには、前記収納溝を仕切るリブと対応する位置の外周部に少なくとも1つの突条が設けられ、
前記突条に対応するリブの外周側の端部が前記突条内に配置されることを特徴とするスロット型光ケーブル。
【請求項3】
前記リブは、断面においてスロット型光ケーブル1の外側の幅が中心側の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のスロット型光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−145679(P2010−145679A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321974(P2008−321974)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】