説明

ズームレンズおよび撮像装置

【課題】広角高変倍比のズームレンズにおいて、色収差の発生を抑えて装置サイズを小型化する。
【解決手段】物体側より順に、変倍時に固定される正の第1レンズ群G1、変倍時に光軸方向へ単調に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群G2、全体として正の屈折力を有する後続のレンズ群Geを備え、第1レンズ群G1を、物体側より順に、いずれも負の屈折力を有する2枚以下のレンズからなる第1群第1レンズ部G11、像側に凸面を向けた正レンズおよび物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズの2枚が物体側よりこの順に配されている第1群第2レンズ部G12、1枚の負レンズ、少なくとも2枚の正レンズが物体側よりこの順に連続配置されている第1群第3レンズ部G13を配したものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広角高変倍比のズームレンズおよびこのズームレンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、民生用ビデオカメラ等に用いられるズームレンズとして、ズーム設定を広角端に定めたときの画角が60度程度で、かつ変倍比が10倍前後のものが多数製品化されている。このようなズームレンズには、第1レンズ群として、物体側より順に、負の屈折力を有するレンズ(以後、負のレンズまたは負レンズともいう)、2枚ないし3枚の正の屈折力を有するレンズ(以後、正のレンズまたは正レンズともいう)が配置されているものが多く知られている。
【0003】
また、さらに大きな画角を必要とするズームレンズの場合には、画角が60度程度の一般的なズームレンズに対してワイドコンバージョンレンズを装着したり、あるいは、そのワイドコンバージョンレンズに対応するようなレンズ部分、すなわち複数の負レンズと正レンズからなり全体として略アフォーカル系をなすレンズ部分を、上記画角が60度程度の一般的なズームレンズの第1レンズ群の物体側に配置して画角の大きなズームレンズを構成する手法も知られている。
【0004】
このようなズームレンズとして、例えば、1枚の負レンズと1枚の正レンズとからなる簡易な構成を有するワイドコンバージョンレンズを装着して画角を大きくしたズームレンズが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
ワイドコンバージョンレンズは、一般に、単体として使用可能なマスターレンズの物体側に装着されて、このマスターレンズの焦点距離を短くするものである。しかしながら、ワイドコンバージョンレンズをマスターレンズから離脱させる必要がない場合には、ワイドコンバージョンレンズとマスターレンズとを一体化した状態で最適化したズームレンズを設計した方が、小型化には有利である(特許文献2参照)。
【0006】
また、さらに、広角でありながら、望遠端での倍率が大きい(焦点距離が長い)ズームレンズ(広角高変倍比ズームレンズ)への要求も高まっている。高変倍比化に際して課題となるのが、ズーム設定を望遠側に定めたときに生じる軸上色収差の補正である。また、ズーム設定を広角側に定めたときに生じる倍率色収差と望遠側に定めたときに生じる軸上色収差のバランスを取ることも重要である。ズーム設定を望遠側に定めたときの軸上色収差の補正を主に担うのは、第1レンズ群であり、第1レンズ群中の物体側のレンズ部分が正レンズと負レンズの2枚からなる簡易な構成では、軸上色収差および倍率色収差を良好に補正することが難しい。
【0007】
そのため、第1レンズ群中の物体側のレンズ部分を3枚ないし4枚のレンズで構成して、軸上色収差および倍率色収差を補正している広角高変倍比ズームレンズも知られている(特許文献3〜5参照)。例えば、物体側より順に、負レンズ、負レンズ、正レンズ・・・を配置した広角高変倍比ズームレンズ(特許文献3参照)や、物体側より順に、負レンズ、負レンズ、負レンズ、正レンズ・・・を配置した広角高変倍比ズームレンズ(特許文献4参照)や、物体側より順に、負レンズ、負レンズ、正レンズ、正レンズを配置した広角高変倍比ズームレンズ(特許文献5参照)が知られている。
【0008】
このような広角高変倍比ズームレンズは、いずれも、最も物体側に2枚の負レンズを連続配置している。最も物体側に2枚の負レンズを連続配置するのは、広角化のために必要な強い負のパワーを2枚の負レンズに分散させて受け持たせて、レンズを通る光線の急峻な屈折を抑制して収差の発生を抑えるためである。それに対して、物体側より順に、負レンズ、正レンズ、負レンズ・・・のように、最も物体側に負レンズと正レンズとを連続配置した広角高変倍比ズームレンズは見当たらない。広角高変倍比ズームレンズとしてそのように構成されたものが見当たらないのは、ズームレンズの光軸に対して大きな角度で入射する軸外光束が急峻な角度で屈折を繰り返すことによって生じる大きな色収差の補正が難しいためである。
【0009】
また、ビデオカメラや監視カメラ等に用いられる広角高変倍比のズームレンズにおいて4群または5群構成のものが多く用いられているが、そのようなズームレンズの第1レンズ群には、1枚の負レンズ、2枚ないし3枚の正レンズが物体側よりこの順に配されているのが一般的である。この1枚の負レンズは、殆どのものがアッベ数25程度の高分散材料で形成されており、そのようなアッベ数から外れた光学部材を適用することは稀である。
【0010】
また、第1レンズ群を構成する負レンズに高分散材料を用いてさらなる高変倍化を実現しようとすると、色収差の2次スペクトルの補正が非常に難しくなる。変倍比が10以下のズームレンズでは、第1レンズ群を構成する負レンズに対して高分散材料を用いても色収差の二次スペクトルの補正が可能であり、高屈折率高分散材を用いてレンズを薄型化するメリットが大きい。一方、この色収差の二次スペクトルをより小さくするために、第1レンズ群を構成する負レンズに対して上記高分散材料よりもやや分散が小さい材料を用いた例もある。例えば、アッベ数が30〜40程度の材料を第1レンズ群を構成する負レンズに適用した例が知られているが(特許文献6〜8参照)、いずれも変倍比が10以下であり、それよりも変倍比を大きくするには、第1レンズ群の構成およびパワー配分を改良する必要がある。
【0011】
ところで、上記高変倍化に加えて広角化を実現するために、第1レンズ群の物体側に、ワイドコンバージョンレンズとよく似た構成を持ち、アフォーカル系をなすレンズ群を配置することが有効であることが知られている(特許文献6〜8参照)。このようにズームレンズを構成すると、ズーム設定を広角端に定めたときに焦点距離が短くなる分だけ、ズーム設定を望遠端に定めたときに生じる軸上色収差を小さくできるため、変倍比がやや大きくても、色収差の二次スペクトルを所望のレベルまで補正することができる。このようにズームレンズを構成するときには、第1レンズ群を構成する負レンズに対してアッベ数が25程度の光学部材からなるレンズを採用する例が多い(特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−138389号公報
【特許文献2】特許3033276号公報
【特許文献3】特許3667054号公報
【特許文献4】特開2006−119346号公報
【特許文献5】特開2009−316288号公報
【特許文献6】特開2003−98434号公報
【特許文献7】特開2005−345892号公報
【特許文献8】特開2007−3600号公報
【特許文献9】特開2007−316287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、色収差を抑えて広角化および高変倍比化を実現した広角高変倍比ズームレンズ(特許文献1〜5参照)は、第1レンズ群中の物体側(すなわち、第1レンズ群中のワイドコンバージョンレンズに対応する部分)に配されたレンズ間に大きな間隙(空気間隔)が設けられている。そのため、このような広角高変倍比ズームレンズにおいては、第1レンズ群が大型化してしまうという問題がある。さらに、そのような大きな間隙が設けられたことにより、最も物体側のレンズ(前玉)の径が非常に大きくなってしまうという問題もある。
【0014】
そのため、このような広角高変倍比ズームレンズにおいて、色収差の発生を増大させることなく、すなわち広角側における倍率色収差や望遠側における軸上色収差の発生を抑制しつつ、装置サイズを小型化したいという要請がある。
【0015】
一方、色収差の2次スペクトルを補正するためにアッベ数が30〜40程度の光学部材を用いているズームレンズ(特許文献6〜9参照)の変倍比をさらに大きく、例えば15倍ないし20倍程度まで大きくしようとすると、再び色収差の二次スペクトルの補正が困難になってくるという問題が生じる。ここで、第1レンズ群を構成する負レンズに対してより分散の小さい光学部材を適用しようとすると、レンズの曲率を大きくせねばならずズームレンズが大型化する。また、そのような分散の小さい光学部材を適用して色収差を抑制しようとすると、色収差の二次スペクトルの補正と軸外色収差の補正との両立が難しくなる。したがって、ズームレンズを広角化および高変倍化するとともに小型化するためには、第1レンズ群を構成する負レンズに用いる光学部材、および、第1レンズ群のレンズ構成を最適化する必要がある。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、色収差の発生を抑えて装置サイズを小型化することができる広角高変倍比のズームレンズおよび撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1のズームレンズは、物体側より順に、変倍時に固定される正の屈折力を有する第1レンズ群、変倍時に光軸方向へ単調に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群、全体として正の屈折力を有する後続のレンズ群を備え、第1レンズ群が、物体側より順に、いずれも負の屈折力を有する2枚以下のレンズからなる第1群第1レンズ部、像側に凸面を向けた正レンズ、物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズの2枚のみが物体側よりこの順に配されている第1群第2レンズ部、1枚の負レンズ、少なくとも2枚の正レンズが物体側よりこの順に連続配置されている第1群第3レンズ部を有するものであることを特徴とするものである。
【0018】
前記メニスカスレンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数νd12nは、条件式(a):30<νd12n<55を満足するものとすることが望ましく、条件式(a′):35<νd12n<57を満足するものとすることがより望ましい。
【0019】
前記第1のズームレンズは、第1群第2レンズ部を構成する負のメニスカスレンズの物体側レンズ面の曲率半径をR12f、像側レンズ面の曲率半径をR12rとしたときに、条件式(b):−5.0<(R12f+R12r)/(R12f−R12r)<−1.0を満足するものとすることが望ましく、条件式(b′):−4.5<(R12f+R12r)/(R12f−R12r)<−1.3を満足するものとすることがより望ましい。
【0020】
前記第1群第3レンズ部に配置された負レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数νd13nは、条件式(c):22<νd13n<38を満足するものとすることが望ましく、条件式(c′):23<νd13n<32を満足するものとすることがより望ましい。
【0021】
前記第1群第2レンズ部を構成する正レンズと負のメニスカスレンズとを接合されたものとし、かつ、第1群第3レンズ部を構成する負レンズとこの負レンズに隣接して配置された正レンズとを接合されたものとすることが望ましい。
【0022】
前記第1のズームレンズは、第1群第1レンズ部を構成する最も像側のレンズ面と第1群第2レンズ部を構成する最も物体側のレンズ面との間隔(空気間隔/光軸上の距離)をd1、第1群第1レンズ部を構成する最も物体側のレンズ面と第1群第2レンズ部を構成する最も像側のレンズ面との間隔(光軸上の距離)をdLとしたときに、条件式(d):0.15<d1/dL<0.55を満足するものとすることが望ましく、条件式(d′):0.18<d1/dL<0.52を満足するものとすることがより望ましい。
【0023】
なお、間隔d1は、レンズ面間の光軸上における距離であり空気間隔でもある。また、間隔をdLは、レンズ面間の光軸上における距離である。
【0024】
前記第1群第1レンズ部は、1枚の負レンズで構成されたものとすることができる。
【0025】
本発明の第2のズームレンズは、物体側より順に、変倍時に固定される正の屈折力を有する第1レンズ群、変倍時に光軸方向へ単調に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群、全体として正の屈折力を有する後続のレンズ群とを備え、第1レンズ群が、1枚の負レンズ、2枚ないし3枚の正レンズを物体側よりこの順に連続配置してなる第1群A部を有するものであり、条件式(e):27<νd1mn<45、条件式(f):2.3<|f1mn|/f1m<4.5、条件式(g):1.8<f1m/(fw×ft)1/2<3.1、条件式(h):55<νd1m+<75を全て満足することを特徴とするものである。
【0026】
また、前記第2のズームレンズは、条件式(e′):27<νd1mn<43、条件式(f′):2.3<|f1mn|/f1m<4.3、条件式(g′):2.0<f1m/(fw×ft)1/2<3.0、条件式(h′):56<νd1m+<72の全てを満足するものとすることがより望ましい。
【0027】
ただし、νd1mnは第1群A部に配された1枚の負レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数、f1mnは第1群A部に配された前記1枚の負レンズの焦点距離、f1mは第1群A部全体の焦点距離、fwはズーム設定を広角端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離、ftはズーム設定を望遠端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離、νd1m+は第1群A部に配置されたそれぞれの正レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数についての平均値である。
【0028】
前記第1群A部に配された前記負レンズに隣接する前記正レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数νd1mpは、条件式(i):55<νd1mp<70を満足するものとすることが望ましく、条件式(i′):57<νd1mp<70を満足するものとすることがより望ましい。
【0029】
前記第1レンズ群は、第1群A部の物体側に、1枚以上の負レンズ、と1枚以上の正レンズとを有する第1群B部を配置し、この第1群B部の最も物体側に前記負レンズを配置したものであり、さらに、この負レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数νd1knを、条件式(j):35<νd1kn<55を満足するものとすることが望ましく、条件式(j′):37<νd1kn<55を満足するものとすることがより望ましい。
【0030】
前記第1群B部に配されたいずれかの前記正レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数νd1kpは、条件式(k):60<νd1kpを満足するものとすることが望ましく、条件式(k′):62<νd1kpを満足するものとすることがより望ましい。なお、第1群B部に配されたいずれかの前記正レンズは、第1群B部に配された前記正レンズのうち、少なくとも1つの正レンズである。
【0031】
前記第1群B部は、物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズを有するものとすることが望ましい。
【0032】
前記第1および第2のズームレンズは、第1レンズ群の焦点距離をf1、広角端におけるズームレンズ全系の焦点距離をfw、望遠端におけるズームレンズ全系の焦点距離をftとしたときに、条件式(m):1.9<f1/(fw×ft)1/2<3.1を満足するものとすることが望ましく、条件式(m′):2.0<f1/(fw×ft)1/2<3.0を満足するものとすることがより望ましい。
【0033】
前記第1および第2のズームレンズの後続のレンズ群は、物体側より順に、絞り、変倍時に固定される正の屈折力を有する第3レンズ群、変倍時に移動させて像面の位置変動を補正し合焦させる正の屈折力を有する第4レンズ群を備えたものとすることが望ましい。
【0034】
なお、後続のレンズ群は、上記第3レンズ群と第4レンズ群のみを備えたものとすることもできる。
【0035】
前記第1および第2のズームレンズは、第3レンズ群の焦点距離をf3、第4レンズ群の焦点距離をf4としたときに、条件式(n):2.5<f3/f4<5.0を満足するものとすることが望ましく、条件式(n′):2.6<f3/f4<4.8を満足するものとすることがより望ましい。
【0036】
本発明の撮像装置は、前記第1または第2のズームレンズを備えたことを特徴とするものである。
【0037】
なお、上記本発明の第1および第2のズームレンズは、第2レンズ群を光軸方向へ単調に移動させることによりズームレンズの変倍が実行されるものである。
【0038】
なお、レンズ群を単調に移動させるとは、倍率を大きくする方向に変倍させるときにそのレンズ群を1方向へのみ移動させ、倍率を小さくする方向に変倍させるときにはそのレンズ群を1方向とは反対の逆方向へのみ移動させることを意味する。
【0039】
また、「1枚の負レンズ、2枚ないし3枚の正レンズ(または、少なくとも2枚の正レンズ)を物体側よりこの順に連続配置する」とは、1枚の負レンズ、2枚ないし3枚の正レンズ(または、少なくとも2枚の正レンズ)を、これらのレンズ以外の他のレンズを含まないように配置することを意味する。
【0040】
また、接合レンズを含む場合のレンズ枚数については、n枚のレンズを接合してなる接合レンズはn枚のレンズからなるものとしてそのレンズ枚数をカウントする。
【0041】
また、レンズ群は、複数のレンズで構成されるものに限らず、1枚のレンズで構成されるものであってもよい。
【0042】
なお、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0043】
また、d線を基準とした光学部材のアッベ数νは、ν=(Nd−1)/(NF−NC)の式で求められる値である。ただし、NF:F線(486.1nm)に対する光学部材の屈折率、Nd:d線(587.6nm)に対する光学部材の屈折率、NC:C線(656.3nm)に対する光学部材の屈折率である。
【発明の効果】
【0044】
本発明の第1のズームレンズおよび撮像装置によれば、物体側より順に、変倍時に固定される正の屈折力を有する第1レンズ群、変倍時に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群、全体として正の屈折力を有する後続レンズ群を備え、第1レンズ群を、物体側から順に、いずれも負の屈折力を有する2枚以下のレンズからなる第1群第1レンズ部、像側に凸面を向けた正レンズ、物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズの2枚のみが物体側よりこの順に配されている第1群第2レンズ部、1枚の負レンズ、少なくとも2枚の正レンズが物体側よりこの順に連続配置されている第1群第3レンズ部を有するものとしたので、色収差の発生を抑えて装置サイズを小型化することができる。
【0045】
より具体的には、このズームレンズは、負の屈折力を有する第1群第1レンズ部と正レンズと負のメニスカスレンズの2枚がこの順に配されている第1群第2レンズ部とにより広角化を図っている。そして、第1群第1レンズ部および第1群第2レンズ部を通って生じた色収差を第1群第3レンズ部で打ち消すように構成したので、第1レンズ群を大型化することなく色収差を良好に補正することができる。
【0046】
ここで、本発明の広角化を図るための第1群第1レンズ部および第1群第2レンズ部(以後、広角化レンズ部ともいう)は、最も物体側から負レンズ、正レンズ、負レンズの順にレンズが並ぶように配置されたものとみなせる。一方、従来より知られている広角化レンズ部は、最も物体側より負レンズ、負レンズ、正レンズの順にレンズが並ぶように配置されている。そのため、広角化レンズ部は従来の広角化レンズ部に比して大きな色収差を発生させることになるが、本発明の第1のズームレンズにおける広角化レンズ部ではそのような色収差を一旦発生させておく。
【0047】
そして、この広角化レンズ部で発生した色収差は、第1群第3レンズ部を通すことによって打ち消すことができる。
【0048】
すなわち、第1群第3レンズ部を、負レンズ、正レンズを物体側よりこの順に有するものとしたので、像側に凸面を向けた正レンズおよび物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズを物体側よりこの順に配置した第1群第2レンズ部を含む上記広角化レンズ部を通して生じる色収差を打ち消すことができる色収差特性をこの第1群第3レンズ部に対して付与することができる。これにより、第1レンズ群を大型化することなく、第1群第1レンズ部および第1群第2レンズ部を通して生じた色収差を、第1群第3レンズ部を通して打ち消すことができる。
【0049】
本発明の第2のズームレンズおよび撮像装置によれば、物体側より順に、変倍時に固定される正の屈折力を有する第1レンズ群、変倍時に光軸方向へ単調に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群、全体として正の屈折力を有する後続のレンズ群を備え、第1レンズ群を、1枚の負レンズ、2枚ないし3枚の正レンズを物体側よりこの順に連続配置した第1群A部を有するものとし、条件式(e)〜(h)を全て満足するようにしたので、広角高変倍比のズームレンズにおいて、色収差の発生を抑えて装置サイズを小型化することができる。すなわち、色収差の二次スペクトルの補正と軸外色収差の補正とを両方共に良好に実施しつつ、広角高変倍比のズームレンズを小型化することができる。
【0050】
ここで、条件式(e)は、第1群A部に配置された負レンズのアッベ数を規定するものである。
【0051】
この条件式(e)の下限を下回るようにズームレンズを構成すると、負レンズ、および、この負レンズに隣接配置された正レンズの屈折力が弱くなり、球面収差等の補正には有利になるが、2次スペクトルを良好に補正することが困難になる。
【0052】
また、これとは逆に、条件式(e)の上限を上回るようにズームレンズを構成すると、上記正レンズとの分散の差が小さくなり、ズーム設定を望遠端近傍に定めたときの軸上色収差の補正が困難になるとともに、各レンズの屈折力が強くなり過ぎて、球面収差補正が困難になってしまう。また、レンズの曲率が大きくなり、レンズ系が大型化してしまうという問題も生じる。
【0053】
したがって、条件式(e)を満足するようにズームレンズを構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。
【0054】
なお、「ズーム設定を望遠端近傍に定める」とは、ズーム設定を望遠端に定める場合をも含むものを意味する。
【0055】
条件式(f)は、第1群A部に配置された負レンズの焦点距離と第1群A部の焦点距離との関係を規定している。
【0056】
この条件式(f)の下限を下回るようにズームレンズを構成すると、その負レンズの屈折力が強くなりすぎ、諸収差の補正が困難になるとともに像面湾曲が大きくなる。
【0057】
また、これとは逆に、条件式(f)の上限を超えると、負レンズの屈折力が弱くなり、色収差(特に一次の色収差)を十分に補正することができなくなる。
【0058】
したがって、条件式(f)を満足するようにズームレンズを構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。
【0059】
条件式(g)は、第1群A部の焦点距離と、広角端および望遠端における全系の焦点距離の関係を規定している。
【0060】
この条件式(g)の下限を下回るようにズームレンズを構成すると、第1レンズ群のパワーが強くなりすぎて、球面収差などの諸収差の補正が困難になる。
【0061】
また、これとは逆に、条件式(g)の上限を上回るようにズームレンズを構成すると、第1レンズ群のパワーが弱くなるため光学系の全長が長くなってしまうという問題が生じる。
【0062】
したがって、条件式(g)を満足するようにズームレンズを構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。
【0063】
条件式(h)は、第1群A部に配置された2枚ないし3枚の正レンズそれぞれのアッベ数についての平均値の範囲を規定したものである。
【0064】
この条件式(h)の下限を下回るようにズームレンズを構成すると、色収差、特に、望遠端における軸上色収差の補正が困難になる。
【0065】
また、これとは逆に、条件式(h)の上限を上回るようにズームレンズを構成すると、色収差補正には有利ではあるが、いずれかの正レンズにおけるレンズ面の曲率が大きくなってしまい、このズームレンズが大型化してしまうという問題が生じる。特に、第1群A部に配された負レンズに、条件式(e)を満足するような材料を用いるときには、屈折率の小さい低分散材料で形成された正レンズの使用枚数が多くなると、曲率が大きくなってしまい、ズームレンズが大型化してしまうという問題が生じる。
【0066】
したがって、条件式(h)を満足するようにズームレンズを構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1A】本発明の実施の形態によるズームレンズを備えた撮像装置の概略構成を示す断面図
【図1B】撮像装置のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図2A】実施例1のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図2B】実施例1のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図3A】実施例2のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図3B】実施例2のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図4A】実施例3のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図4B】実施例3のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図5A】実施例4のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図5B】実施例4のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図6A】実施例5のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図6B】実施例5のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図7A】実施例6のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図7B】実施例6のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図8A】実施例7のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図8B】実施例7のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図9A】実施例8のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図9B】実施例8のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図10A】実施例9のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図10B】実施例9のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較して示す図
【図11A】実施例10のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図11B】実施例10のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較した図
【図12A】実施例11のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図12B】実施例11のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較した図
【図13A】実施例12のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図13B】実施例12のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較した図
【図14A】実施例13のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図14B】実施例13のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較した図
【図15A】実施例14のズームレンズの概略構成を示す断面図
【図15B】実施例14のズームレンズを広角端と望遠端とに設定したときの各状態を比較した図
【図16】実施例1のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図17】実施例2のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図18】実施例3のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図19】実施例4のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図20】実施例5のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図21】実施例6のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図22】実施例7のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図23】実施例8のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図24】実施例9のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図25】実施例10のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図26】実施例11のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図27】実施例12のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図28】実施例13のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図29】実施例14のズームレンズの諸収差を示す図である。
【図30】本発明のズームレンズを用いて構成したビデオカメラを示す図
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明のズームレンズおよびこのズームレンズを備えた撮像装置について図面を参照して説明する。
【0069】
図1A、図1Bは、本発明のズームレンズを備えた撮像装置の概略構成を示す断面図であり、図1Aはズーム設定を広角端に定めたときの状態を詳しく示す図、図1Bはズーム設定を広角端と望遠端とに定めたときの状態それぞれを比較して示す図である。図1B中の(W)で示す図はズーム設定を広角端に定めたときの状態を示し、図1B中の(T)で示す図はズーム設定を望遠端に定めたときの状態を示している。
【0070】
図示の撮像装置200は、小型で広角高変倍比のズームレンズ100を搭載した民生用ビデオカメラ装置である。
【0071】
このズームレンズ100は、CCDやCMOS等からなる撮像素子210の受光面210J上に被写体Hを表す光学像Hkを結像させるものである。なお、この広角高変倍比のズームレンズ100は、色収差の発生を抑えて装置サイズを小型化したものである。
【0072】
撮像装置200に配されている撮像素子210は、ズームレンズ100を通して結像される被写体Hを表す光学像Hkを電気信号に変換して、この光学像Hkを示す画像信号Pkを出力するものである。
【0073】
このズームレンズ100は、ズーム設定を望遠端に定める場合から、望遠端と広角端との中間領域にズーム設定を定める場合に亘って、開放径を制御することを想定している。
【0074】
はじめに、ズームレンズの基本構成について説明する。
【0075】
<ズームレンズの基本構成およびその作用、効果について>
ズームレンズ100は、光軸Z1に沿って物体側より順に、変倍時に光軸Z1方向に対して固定される正の第1レンズ群G1、変倍時に光軸Z1方向へ単調に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群G2、全体として正の屈折力を有する後続のレンズ群Ge、および色分解光学系や各種フィルタ類である光学部材Cg1、Cg2を備えている。
【0076】
なお、変倍時に光軸Z1方向へ単調に移動させる第2レンズ群G2は、変倍時に倍率を大きくするときには1方向へのみ移動させ、変倍時に倍率を小さくするときにはこの1方向とは反対の逆方向へのみ移動させるように構成されたものである。
【0077】
第1レンズ群G1は、いずれも負の屈折力を有する2枚以下のレンズ(ここでは、負レンズL1の1枚)で構成された第1群第1レンズ部G11と、像側に凸面を向けた正レンズL2および物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズL3の2枚のみが物体側よりこの順に配されている第1群第2レンズ部G12と、1枚の負レンズ、(ここでは、負レンズL4)、少なくとも2枚の正レンズ(ここでは、正レンズL5、正レンズL6の2枚)が物体側よりこの順に連続配置されている第1群第3レンズ部G13とを有している。
【0078】
また、この第1レンズ群G1は、1枚の負レンズ、(ここでは、負レンズL4)、2枚ないし3枚の正レンズ(ここでは、正レンズL5、正レンズL6の2枚)を物体側よりこの順に連続配置した第1群A部G1mと、この第1群A部G1mの物体側に配された第1群B部G1kとを有し、条件式(e):27<νd1mn<45、条件式(f):2.3<|f1mn|/f1m<4.5、条件式(g):1.8<f1m/(fw×ft)1/2<3.1、および条件式(h):55<νd1m+<75を全て満足するものでもある。
【0079】
ここで、νd1mnは第1群A部G1mに配された1枚の負レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数、f1mnは第1群A部G1mに配された1枚の負レンズの焦点距離、f1mは第1群A部G1m全体の焦点距離、fwはズーム設定を広角端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離、ftはズーム設定を望遠端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離、νd1m+は第1群A部G1mに配置された各正レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数についての平均値である。例えば、第1群A部中の正レンズが第1の正レンズ〜第3の正レンズの3枚のみであり、第1群A部の第1の正レンズのアッベ数をν1、第2の正レンズのアッベ数をν2、第3の正レンズのアッベ数をν3としたときに、νd1m+の値は、(νd1m+)=(ν1+ν2+ν3)/3の式によって求めることができる。
【0080】
図示のように、第1群B部G1kは、第1群第1レンズ部G11および第1群第2レンズ部G12に対応するものであり、また、第1群A部G1mは、第1群第3レンズ部G13に対応するものである。
【0081】
以後、第1レンズ群G1として、上記第1群第1レンズ部G11〜第1群第3レンズ部G13に対応する構成を有するものを第1の実施形態のズームレンズという。また、第1レンズ群G1として、第1群A部G1mに対応する構成を有するものを第2の実施形態のズームレンズという。
【0082】
なお、第2の実施形態のズームレンズには、必ずしも第1群B部G1kを備える必要はない。
【0083】
<第1の実施形態のズームレンズの基本構成をさらに限定する構成について>
次に、図示のズームレンズ100および撮像装置200の備える上記第1の実施形態における基本構成をさらに限定する構成要素およびその作用、効果について説明する。なお、基本構成をさらに限定するこれらの構成要素は本発明の第1の実施形態のズームレンズ100および撮像装置200にとって必須の構成ではない。
【0084】
また、本願発明の第1の実施形態のズームレンズ100および撮像装置200は、第1の実施形態の基本構成をさらに限定する構成要素のうち、1つのみを満足するものとしてもよいし、2つ以上を組合わせたものを満足するものとしてもよい。
【0085】
はじめに、条件式において記号で示す各パラメータの意味をまとめて以下に示す。なお、条件式(d)は、第1群第1レンズ部が1枚の負レンズで構成されていることを前提とした条件式である。
【0086】
νd12n:第1群第2レンズ部を構成する負のメニスカスレンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数
R12f:第1群第2レンズ部を構成する負のメニスカスレンズの物体側レンズ面の曲率半径
R12r:第1群第2レンズ部を構成する負のメニスカスレンズの像側レンズ面の曲率半径
f1:第1レンズ群の焦点距離
fw:ズーム設定を広角端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離
ft:ズーム設定を望遠端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離
νd13n:第1群第3レンズ部に配置された負レンズを形成する光学部材のd線を基準にしたアッベ数
d1:第1群第1レンズ部を構成する最も像側のレンズ面と第1群第2レンズ部を構成する最も物体側のレンズ面との間隔(空気間隔)
dL:第1群第1レンズ部を構成する最も物体側のレンズ面と第1群第2レンズ部を構成する最も像側のレンズ面との間隔
f3:第3レンズ群全体の焦点距離
f4:第4レンズ群全体の焦点距離
◇条件式(a)に対応する限定構成
第1の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(a):30<νd12n<55、および、より望ましい条件式(a′):35<νd12n<57は、第1群第2レンズ部G12を構成する負のメニスカスレンズL3に用いる光学部材のd線を基準としたアッベ数νd12nを規定するものである。
【0087】
条件式(a)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、負メニスカスレンズL3における凹凸両方のレンズ面の曲率を小さくしてレンズを薄型化しようとする場合には有利となるが、色収差の二次スペクトルの補正が困難になるという問題が生じる。
【0088】
また、これとは逆に、条件式(a)の上限を上回るようにズームレンズ100を構成すると、色収差の二次スペクトルの補正には有利になるが、各波長の軸上色収差をバランスよく補正することが困難になる。これとともに、第1レンズ群G1に配置された色収差の補正を担うレンズの曲率が大きくなる。また、特に、第1レンズ群G1中の正レンズにおいては、必要なコバ(縁肉)を確保するための中心厚が大きくなり、第1レンズ群G1全体の厚み、さらには、外径が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0089】
したがって、条件式(a)または条件式(a′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(a′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(a)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0090】
◇条件式(b)に関する限定構成
第1の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(b):−5.0<(R12f+R12r)/(R12f−R12r)<−1.0、および、より望ましい条件式(b′):−4.5<(R12f+R12r)/(R12f−R12r)<−1.3は、第1群第2レンズ部G12に配置された負メニスカスレンズのシェイプファクターを規定するものである。
【0091】
条件式(b)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、第1群第2レンズ部G12を構成する負の屈折力を有するメニスカスレンズL3の色収差補正への寄与が小さくなり、特にズーム設定を望遠端近傍に定めたときの軸上色収差の発生が大きくなり過ぎるという問題が生じる。
【0092】
また、これとは逆に、条件式(b)の上限を上回るようにズームレンズ100を構成すると、上記色収差を補正することはできるが、第1レンズ群G1が大型化してしまうという問題が生じる。
【0093】
したがって、条件式(b)または条件式(b′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(b′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(b)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0094】
◇条件式(c)に関する限定構成
第1の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(c):22<νd13n<38、および、より望ましい条件式(c′):23<νd13n<32は、第1群第3レンズ部G13に配置された負レンズL4に用いる光学部材のd線を基準としたアッベ数νd13nを規定するものである。
【0095】
条件式(c)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、負レンズL4の曲率を小さくすることができ、第1レンズ群G1を小型化できるが、全てのズーム設定領域に亘って、各波長域の軸上色収差をバランスよく補正することが困難になる。
【0096】
また、これとは逆に、条件式(c)の上限を上回るようにズームレンズ100を構成すると、負レンズL4の曲率を大きくしなければならず、第1レンズ群G1が大型化してしまうという問題が生じる。
【0097】
したがって、条件式(c)または条件式(c′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(c′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(c)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0098】
◇第1群第2レンズ部に関する限定構成
第1群第2レンズ部G12を構成する正レンズL2と負メニスカスレンズL3とが接合されたものとし、かつ、第1群第3レンズ部G13を構成する負レンズL4と、この負レンズL4に隣接して配置された正レンズL5とが接合されたものとすれば、色消しに有利な構成、すなわち、色収差を良好に補正できる構成とすることができるので色収差の発生を抑えることができる。さらに、接合レンズとすることにより保持機構が必要であるレンズ枚数を少なくすることができるので、第1レンズ群G1を保持する保持部材を簡素化すことができ組立精度を高めることができる。
【0099】
◇条件式(d)に関する限定構成
第1の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(d):0.15<d1/dL<0.55、および、より望ましい条件式(d′):0.18<d1/dL<0.52は、第1群第1レンズ部G11が1枚の負レンズで構成されていることを前提とする条件式である。すなわち、第1群第1レンズ部G11の最も物体側のレンズ面から、第1群第2レンズ部G12の最も像側のレンズ面までの光軸上における距離dL(間隔dL)に対する、第1群第1レンズ部G11の最も像側のレンズ面から、第1群第2レンズ部G12の最も物体側のレンズ面までの光軸Z1上における距離d1(空気間隔d1)の比率を規定するものである。
【0100】
なお、図1Aに示すように、第1群第1レンズ部G11の最も物体側のレンズ面は、負レンズL1の物体側レンズ面である。また、第1群第2レンズ部G12の最も像側のレンズ面は、負メニスカスレンズL3の像側レンズ面である。また、第1群第1レンズ部G11の最も像側のレンズ面は負レンズL1の像側レンズ面である。さらに、第1群第2レンズ部G12中の最も物体側のレンズ面は正レンズL2の物体側レンズ面である。
【0101】
条件式(d)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、第1群第1レンズ部G11に配置された負レンズL1の曲率を小さくする必要が生じるため、広角化には不利になる。無理に広角化しようとすると、広角端での軸外光束の収差を補正することが極めて困難になるという問題が生じる。
【0102】
また、これとは逆に、条件式(d)の上限を上回るようにズームレンズ100を構成すると、第1群第1レンズ部G11の厚みが大きくなるとともに、外径が大きくなり、ズームレンズ全体が大型化するという問題が生じる。
【0103】
したがって、条件式(d)または条件式(d′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(d′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(d)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0104】
◇第1群第1レンズ部に関する限定構成
なお、第1群第1レンズ部G11は、1枚の負レンズL1のみで構成されたものとすることもできる。
【0105】
<第2の実施形態のズームレンズの基本構成をさらに限定する構成について>
次に、図示のズームレンズ100および撮像装置200の備える上記第2の実施形態の基本構成をさらに限定する構成要素およびその作用、効果について説明する。なお、基本構成をさらに限定するこれらの構成要素は本発明の第2の実施形態のズームレンズ100および撮像装置200にとって必須の構成ではない。
【0106】
また、本願発明の第2の実施形態のズームレンズ100および撮像装置200は、第2の実施形態の基本構成をさらに限定する構成要素のうち、1つのみを満足するものとしてもよいし、2つ以上を組合わせたものを満足するものとしてもよい。
【0107】
はじめに、説明済みの条件式以外の条件式において記号で示す各パラメータの意味をまとめて以下に示す。
【0108】
νd1mp:第1群A部G1mに配された負レンズに隣接する正レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数
νd1kn:第1群B部G1kの最も物体側に配された負レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数
νd1kp:第1群B部G1kに配置されたいずれかの正レンズを形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数
◇条件式(e)〜(h)に関する限定構成
第1群A部G1mは、条件式(e′):27<νd1mn<43、条件式(f′):2.3<|f1mn|/f1m<4.3、条件式(g′):2.0<f1m/(fw×ft)1/2<3.0、条件式(h′):56<νd1m+<72の全てを満足するものとすることがより望ましく、そのようにすれば、上記条件式(e)〜(h)を満足する場合よりもさらに望ましい効果を奏することができる。
【0109】
◇条件式(i)に関する限定構成
第2の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(i):55<νd1mp<70、およびより望ましい条件式(i′):57<νd1mp<70は、第1群A部G1mに配置された負レンズL4に隣接する正レンズL5のアッベ数を規定するものである。
【0110】
条件式(i)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、ズーム設定を望遠側に定めたときに軸上色収差を良好に補正することが困難になる。
【0111】
また、これとは逆に、条件式(i)の上限を上回るようにズームレンズ100を構成すると、そのようなアッベ数を持つ低分散材料は一般に屈折率が低く、この正レンズL5を構成するときに必要なコバを確保しようとすると正レンズL5の中心厚が大きくなってしまうという問題が生じる。特に第1群A部G1mの負レンズL4に、条件式(e)で示すアッベ数の光学部材を用いているため、正レンズL5の曲率が大きくなり易い。
【0112】
したがって、条件式(i)または条件式(i′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(i′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(i)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0113】
◇条件式(j)に関する限定構成
第2の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(j):35<νd1kn<55、およびより望ましい条件式(j′):37<νd1kn<55は、第1群B部G1kの最も物体側に配置されているレンズである負レンズL1を形成する光学部材のd線を基準としたアッベ数νd1knを規定するものである。なお、第1群B部G1kは、第1群A部G1mの物体側に配置されたものであり、1枚以上の負レンズである負レンズL1、L3と1枚以上の正レンズである正レンズL2とを有し第1レンズ群G1に属するものである。
【0114】
ズーム設定を広角端に定めたときの画角を大きくする場合、第1群A部G1mのような構成のまま広角化することもあるが、その場合、外径が非常に大きくなるとともに、収差補正が非常に困難になる。
【0115】
そのため、ワイドコンバージョンレンズのような機能を有するレンズ部分である第1群B部G1kを第1群A部G1mの物体側に配置し、その第1群B部G1kを第1レンズ群G1に取り込んで(一体化し)最適化することにより、外径を大きくすることなく、ズーム設定を広角端に定めたときの収差の発生を良好に補正することができるズームレンズを構成することができる。
【0116】
このように第1レンズ群G1を最適化してズームレンズ100を構成したので、第1レンズ群G1から第1群B部G1kを分離し除いたズームレンズは、正常なズームレンズとしての作用を奏することはできない。すなわち、第1レンズ群を、第1群A部G1mのみで構成したズームレンズは、正常なズームレンズとしての作用を奏することができない。
【0117】
条件式(j)の上限および下限を超えるようにズームレンズ100を構成すると、ズーム設定を広角端近傍に定めたときの倍率色収差や、ズーム設定を望遠端近傍に定めたときの軸上色収差および倍率色収差の補正が難しくなるという問題が生じる。
【0118】
したがって、条件式(j)または条件式(j′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(j′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(j)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0119】
◇条件式(k)に関する限定構成
第2の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(k):νd1kp>60、およびより望ましい条件式(k′):νd1kp>62は、第1群B部G1kに配置された、いずれかの正レンズ(ここでは正レンズL2)のアッベ数を規定するものである。
【0120】
条件式(k)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、軸上色収差を良好に補正することが困難になる。
【0121】
したがって、条件式(k)または条件式(k′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(k′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(k)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0122】
◇第1群B部に関する限定構成
第1群B部G1kを、物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズL3を含むものとすれば、第1群B部G1kで発生する色収差を、第1群A部G1mで発生する色収差で打ち消すことができるので、軸外収差、特に、倍率色収差を良好に補正することができる。
【0123】
<第1および第2の実施形態のズームレンズの基本構成をさらに限定する共通の構成>
◇条件式(m)に関する限定構成
第1および第2の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(m):1.9<f1/(fw×ft)1/2<3.1、および、より望ましい条件式(m′):2.0<f1/(fw×ft)1/2<3.0は、第1レンズ群G1の焦点距離f1と、広角端におけるズームレンズ全系の焦点距離fwおよび望遠端におけるズームレンズ全系の焦点距離ftの関係を規定するものである。
【0124】
条件式(m)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、第1レンズ群G1のパワーが強くなりすぎて、諸収差の補正、特に、ズーム設定を望遠端近傍に定めたときに発生する球面収差やコマ収差の補正が困難になる。
【0125】
また、これとは逆に、条件式(m)の上限を上回るようにズームレンズ100を構成すると、レンズ系が大きくなりすぎるという問題が生じる。
【0126】
したがって、条件式(m)または条件式(m′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、そのような問題の発生を抑制することができる。なお、条件式(m′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(m)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0127】
◇後続のレンズ群に関する限定構成
第1および第2の実施形態のズームレンズの後続のレンズ群Geは、物体側より順に、開口絞りSt、変倍時に固定される正の屈折力を有する第3レンズ群G3、変倍による像面位置の変動を補正して合焦させるための正の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなるものとすることができる。なお、後続のレンズ群Geは、上記の開口絞りSt、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4のみで構成されたものとする場合に限らず、さらなるレンズ群等を付加したものとしてもよい。
【0128】
◇条件式(n)に関する限定構成
第1および第2の実施形態のズームレンズの構成を限定する条件式(n):2.5<f3/f4<5.0、および、より望ましい条件式(n′):2.6<f3/f4<4.8は、第4レンズ群の焦点距離f4に対する第3レンズ群G3の焦点距離f3の比率を規定するものである。
【0129】
条件式(n)または条件式(n′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、大型化を抑制しつつ、長いバックフォーカスを確保することができる。すなわち、例えば、高画質のビデオカメラや監視カメラ、あるいはTV会議システム用カメラ等においては、色分解光学系を配備した3板方式を採用しており、そのような色分解光学系や、NDフィルタ、IR光のON/OF機構などを挿入することができるだけの長いバックフォーカスを確保することができる。
【0130】
しかしながら、条件式(n)の下限を下回るようにズームレンズ100を構成すると、バックフォーカスの長さを十分に確保することが困難となる。
【0131】
また、逆に、条件式(n)の上限を上回るようにズームレンズ100を構成すると、第3レンズ群G3のパワーが弱くなり過ぎて、ズームレンズの全長が長くなるとともに、球面収差などの諸収差の補正が困難になるという問題が生じる。
【0132】
なお、条件式(n′)を満足するようにズームレンズ100を構成すれば、条件式(n)を満足する場合よりもさらに望ましいレンズ特性を得ることができる。
【0133】
<具体的な実施例>
以下、図2A、2B、・・・15A、15B、表1〜15を参照し、本発明のズームレンズの実施例1〜14それぞれの数値データ等についてまとめて説明する。なお、上述のズームレンズ100を示す図1中の符号と一致する図2A、2B、・・・15A、15B中の符号は互に対応する構成を示している。
【0134】
なお、実施例1〜14のうち、第1の実施形態のズームレンズに対応する実施例は、実施例1〜11、および実施例14である。
【0135】
また、第2の実施形態のズームレンズに対応する実施例は、実施例2、実施例4、および実施例8〜14である。
【0136】
したがって、第1の実施形態のズームレンズと第2の実施形態のズームレンズの両方に対応する実施例は、実施例2、実施例4、実施例8〜11、および実施例14である。
【0137】
図2A、2B、・・・15A、15Bは、実施例1〜14のズームレンズそれぞれの概略構成を示す断面図である。
【0138】
図2A、3A・・・15Aはズーム設定を望遠端に定めた状態を詳しく示す図、図2B、3B・・・15Bはズーム設定を広角端に定めた状態と望遠端に定めた状態とを比較して示す図である。図2B〜図15B中の(W)で示す図はズーム設定を広角端に定めた状態を示し、図2B〜図15B中の(T)で示す図はズーム設定を望遠端に定めた状態を示す。
【0139】
また、図2A、3A・・・15Aの各図中に示すL1、L2、・・・の符号は、各レンズを指す符号であり、物体側から順に並ぶレンズの順番に対応している。
【0140】
表1〜15は、実施例1〜7のズームレンズそれぞれの基本的なデータを示す図である。表1〜15の各表中の上部(図中符号(a)で示す)にレンズデータを、下部(図中符号(b)で示す)にズームレンズの概略仕様を示す。
【0141】
なお、これらの実施例におけるズームレンズを構成する全てのレンズ面は球面または平面である。
【0142】
また、表15は、実施例1〜14のズームレンズに関し、条件式(a)〜(n)それぞれの不等式によって範囲が定められる各値(実施例毎に定められる不等式中の計算式によって算出される値、あるいは不等式中に記号で示すズームレンズ光学系の定数に対応する値)を示すものである。
【0143】
なお、これらのズームレンズは、ズーム設定を望遠端に定める場合から、望遠端と広角端との中間領域にズーム設定を定める場合に亘って、開口絞りの開放径を絞り込む規制を行うように制御するすることを想定している。この開放径は、望遠端においてF2.9程度になるように制御される。
【0144】
表1〜14の上部の各レンズデータにおいて、面番号Siは、最も物体側から像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、・・・)のレンズ面等の番号を示す。なお、これらのレンズデータには開口絞りStも含めて記載している。
【0145】
曲率半径Riはi番目(i=1、2、3、・・・)の面の曲率半径を示し、面間隔Di(i=1、2、3、・・・)はi番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。レンズデータの符号Riおよび符号Diは、レンズ面等を示す符号Si(i=1、2、3、・・・)と対応している。
【0146】
なお、面間隔Di(i=1、2、3、・・・)の欄には面間隔を示す数字が記載されている場合と、符号Dn(nは数値)が記載されている場合があるが、符号Dnが記載されているところはレンズ群間の面間隔(空気間隔)に対応しており、それらの面間隔(空気間隔)はズーム倍率の変更に伴い変化する。
【0147】
Ndjは物体側から像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、・・・)の光学要素について波長587.6nm(d線)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線を基準としたアッベ数を示す。
【0148】
表1〜14のレンズデータにおいて、曲率半径および面間隔の単位はmmであり、曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0149】
また、表1〜14の下部に符号(b)で示す欄に、広角端と望遠端とにおける各値、すなわち、f:レンズ全系の焦点距離(単位mm)、Fno:Fナンバー、2ω:全画角、D10、D17、D24、D31等:各レンズ群間の間隔を示す。
【0150】
なお、表1〜15は「発明を実施するための形態」における説明の最後にまとめて示す。
【0151】
また、図16〜29は、実施例1〜実施例14の各ズームレンズの諸収差を示す図である。図中には、波長587.6nm、波長460.0nm、波長615.0nmの各光に関する収差が示されている。
【0152】
上記図16〜図29の各図中に示す符号(A)〜(D)に対応する各収差図は広角端におけるものであり、球面収差(A)、非点収差(B)、ディストーション(歪曲収差)(C)、倍率色収差(倍率の色収差)(D)それぞれを示している。また、各図中に示す符号(E)〜(H)に対応する各収差図は望遠端におけるものであり、球面収差(E)、非点収差(F)、ディストーション(歪曲収差)(G)、倍率色収差(倍率の色収差)(H)それぞれを示している。
【0153】
なお、ディストーションの図は、レンズ全系の焦点距離f、半画角θ(変数扱い、0≦θ≦ω)を用いて、理想像高をf×tanθとし、それからのずれ量を示す。
【0154】
実施例1〜14に関する数値データおよび収差図等からわかるように、本発明の広角高変倍比のズームレンズは、諸収差の発生を抑えて装置サイズを小型化することができる。
【0155】
図30は、本発明のズームレンズを用いて構成した撮像装置の一例であるビデオカメラの構成図を示すものである。なお、図30では、ズームレンズ1が備える第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、開口絞りSt、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4を概略的に示している。
【0156】
図示のビデオカメラ10は、3つの撮像素子を有するいわゆる3CCD方式の撮像装置であるが、本発明の撮像装置はこれに限定されず、1つの撮像素子で全波長帯域を撮像するものでもよい。ビデオカメラ10は、ズームレンズ1と、ズームレンズ1の像側に配置されたローパスフィルタおよび赤外線カットフィルタ等の機能を有するフィルタ2と、フィルタ2の像側に配置された色分解プリズム3R、3G、3Bと、各色分解プリズムの端面に設けられた撮像素子4R、4G、4Bと、信号処理回路5とを備えている。撮像素子4R、4G、4Bはズームレンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を用いることができる。撮像素子4R、4G、4Bは、その撮像面がズームレンズ1を通して形成される各色毎の光学像の結像面それぞれに一致するように配置されている。
【0157】
ズームレンズ1を透過した光はフィルタ2により不要光成分が除去された後、色分解プリズム3R、3G、3Bにより赤、緑、青の各色光に分解され、撮像素子4R、4G、4Bの撮像面上に結像される。赤、緑、青の各色光に対応する撮像素子4R、4G、4Bからの出力信号は信号処理回路5で演算処理されてカラー画像信号が生成される。信号処理回路5で生成され出力されたカラー画像信号は表示装置6に入力され表示される。
【0158】
なお、本発明は、上記各実施例に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各表中に示した数値に限定されず、他の値を取り得る。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【符号の説明】
【0159】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
Ge 後続のレンズ群
G11 第1群第1レンズ部
G12 第1群第2レンズ部
G13 第1群第3レンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に、変倍時に固定される正の屈折力を有する第1レンズ群、変倍時に光軸方向へ単調に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群、全体として正の屈折力を有する後続のレンズ群を備え、
前記第1レンズ群が、物体側より順に、いずれも負の屈折力を有する2枚以下のレンズからなる第1群第1レンズ部、像側に凸面を向けた正の屈折力を有するレンズ、物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズの2枚のみが物体側よりこの順に配されている第1群第2レンズ部、1枚の負レンズ、少なくとも2枚の正レンズが物体側よりこの順に連続配置されている第1群第3レンズ部を有するものであることを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記メニスカスレンズのd線を基準としたアッベ数νd12nが、以下の条件式(a)を満足するものであることを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。
30<νd12n<55 ・・・(a)
【請求項3】
前記メニスカスレンズが、以下の条件式(b)を満足するものであることを特徴とする請求項1または2記載のズームレンズ。
−5.0<(R12f+R12r)/(R12f−R12r)<−1.0 ・・・(b)
ただし、
R12f:メニスカスレンズの物体側レンズ面の曲率半径
R12r:メニスカスレンズの像側レンズ面の曲率半径
【請求項4】
前記第1群第3レンズ部に配置された前記負レンズのd線を基準としたアッベ数νd13nが、以下の条件式(c)を満足するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のズームレンズ。
22<νd13n<38 ・・・(c)
【請求項5】
前記第1群第2レンズ部を構成する正レンズと負のメニスカスレンズとが接合されたものであり、かつ、前記第1群第3レンズ部を構成する前記負レンズと、該負レンズに隣接して配置された正レンズとが接合されたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のズームレンズ。
【請求項6】
以下の条件式(d)を満足するものであることを特徴とする請求項5記載のズームレンズ。
0.15<d1/dL<0.55 ・・・(d)
ただし
d1:第1群第1レンズ部を構成する最も像側のレンズ面と第1群第2レンズ部を構成する最も物体側のレンズ面との間隔(空気間隔)
dL:第1群第1レンズ部を構成する最も物体側のレンズ面と第1群第2レンズ部を構成する最も像側のレンズ面との間隔
【請求項7】
前記第1群第1レンズ部が、1枚の負レンズで構成されたものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のズームレンズ。
【請求項8】
物体側より順に、変倍時に固定される正の屈折力を有する第1レンズ群、変倍時に光軸方向へ単調に移動させる負の屈折力を有する第2レンズ群、全体として正の屈折力を有する後続のレンズ群とを備え、
前記第1レンズ群が、1枚の負レンズ、2枚ないし3枚の正レンズを物体側よりこの順に連続配置してなる第1群A部を有するものであり、
以下の条件式(e)〜(h)を全て満足することを特徴とするズームレンズ。
27<νd1mn<45・・・(e)
2.3<|f1mn|/f1m<4.5・・・(f)
1.8<f1m/(fw×ft)1/2<3.1・・・(g)
55<νd1m+<75・・・(h)
ただし、
νd1mn:第1群A部に配された1枚の負レンズのd線を基準としたアッベ数
f1mn:第1群A部に配された1枚の負レンズの焦点距離
f1m:第1群A部全体の焦点距離
fw:ズーム設定を広角端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離
ft:ズーム設定を望遠端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離
νd1m+:第1群A部に配置された正レンズそれぞれのd線を基準としたアッベ数についての平均値
【請求項9】
前記第1群A部に配された前記負レンズに隣接する前記正レンズのd線を基準としたアッベ数νd1mpが、以下の条件式(i)を満足するものであることを特徴とする請求項8記載のズームレンズ。
55<νd1mp<70 ・・・(i)
【請求項10】
前記第1レンズ群が、前記第1群A部の物体側に、1枚以上の負レンズ、と1枚以上の正レンズとを有する第1群B部を配置したものであり、
前記第1群B部が、該第1群B部の最も物体側に前記負レンズを配置したものであり、該負レンズのd線を基準としたアッベ数νd1knが、以下の条件式(j)を満足するものであることを特徴とする請求項8または9記載のズームレンズ。
35<νd1kn<55 ・・・(j)
【請求項11】
前記第1群B部に配されたいずれかの前記正レンズのd線を基準としたアッベ数νd1kpが、以下の条件式(k)を満足するものであることを特徴とする請求項8から10記載のズームレンズ。
60<νd1kp ・・・(k)
【請求項12】
前記第1群B部が、物体側に凹面を向けた負のメニスカスレンズを有するものであることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項記載のズームレンズ。
【請求項13】
以下の条件式(m)を満足するものであることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載のズームレンズ。
1.9<f1/(fw×ft)1/2<3.1 ・・・(m)
ただし、
f1:第1レンズ群の焦点距離
fw:ズーム設定を広角端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離
ft:ズーム設定を望遠端に定めたときのズームレンズ全系の焦点距離
【請求項14】
前記後続のレンズ群が、物体側より順に、絞り、変倍時に固定される正の屈折力を有する第3レンズ群、変倍時に移動させて像面の位置変動を補正し合焦させる正の屈折力を有する第4レンズ群を備えていることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項記載のズームレンズ。
【請求項15】
以下の条件式(n)を満足するものであることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項記載のズームレンズ。
2.5<f3/f4<5.0 ・・・(n)
ただし、
f3:第3レンズ群の焦点距離
f4:第4レンズ群の焦点距離
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項記載のズームレンズを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−2901(P2012−2901A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135906(P2010−135906)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】