説明

セキュリティシステムの送信機

【課題】セキュリティシステムの送信機において、成型品たる箱体と蓋との間の防水をする防水パッキンの硬度を防水性の確保のために小さくしたとしても、防水パッキンが、嵌合保持されている成型品から外れ難くする。
【解決手段】セキュリティシステムの送信機2は、電子部品24が実装された基板27と、基板27を収納する箱体51、及び箱体51を覆う蓋52を有する筐体5と、箱体51と蓋52との間の防水性を確保するための箱体用防水パッキン53とを備える。蓋52は、箱体用防水パッキン53を嵌合保持すると共に、この箱体用防水パッキン53を保持する箇所に貫通孔を有する。箱体用防水パッキン53が蓋52の貫通孔に嵌挿されて蓋52に保持されるので、箱体用防水パッキン53の硬度を防水性の確保のために小さくしたとしても、箱体用防水パッキン53が、嵌合保持されている蓋52から外れ難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDデータを送受信するセキュリティシステムの送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セキュリティシステムの送信機として、アンテナ等の電子部品が実装された基板を筐体に収納した送信機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような送信機においては、筐体に水が掛かった場合に水が浸入し、故障する虞がある。
【0003】
そこで、送信機の筐体を成す樹脂成型品である箱体と蓋のいずれかに二色成型やインサート成型によって防水パッキンを融着保持させ、箱体と蓋の間の防水性を確保することが知られている。この防水パッキンの融着力は、硬度が大きい防水パッキンでは強いが、硬度の小さい防水パッキンでは弱い。しかしながら、硬度の大きい防水パッキンでは、箱体と蓋を組み付けたときに防水パッキンを押さえきれずに隙間ができたり、箱体や蓋がそり反ったりして防水性が確保できない虞がある。このために、硬度が、例えば20°〜40°のように小さい防水パッキンしか使用できないが、融着力が弱いので、成型品との嵌め込み形状によっては、組立工程時に防水パッキンが成型品から外れ易くなる。また、使用時においても電池交換等で防水パッキンが露出したときに手で触れた場合、外れ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−86331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解消するものであり、成型品たる箱体と蓋との間を防水する防水パッキンの硬度を防水性の確保のために小さくしたとしても、防水パッキンが、保持されている成型品から外れ難いセキュリティシステムの送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、IDデータの送受信を行い、該IDデータに基づいて電気錠の開閉を行うセキュリティシステムの送信機において、前記IDデータを予め記憶し、該IDデータを送信する電子回路を含む電子部品と、前記電子部品が実装された基板と、前記基板を収納する箱体、及び該箱体を覆う蓋を有する筐体と、前記箱体と蓋との間の防水性を確保するための箱体用防水パッキンと、を備え、前記蓋は、該蓋内に前記防水パッキンが保持されると共に、この防水パッキンが配設されている箇所に貫通孔を有し、前記防水パッキンは、前記貫通孔に嵌挿されて該蓋へ保持されているものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のセキュリティシステムの送信機において、前記蓋に固定される前面カバーと、前記蓋と前面カバーとの間の防水性を確保するための蓋用防水パッキンと、を更に備え、前記箱体用防水パッキンと蓋用防水パッキンは、前記貫通孔で接続されているものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、箱体用防水パッキンが蓋の貫通孔に嵌挿されて蓋に嵌合保持されるので、箱体用防水パッキンの硬度を防水性の確保のために小さくしたとしても、箱体用防水パッキンが、嵌合保持されている蓋から外れ難い。これにより組立工程時の作業性は良好となる。
【0009】
請求項2の発明によれば、蓋用防水パッキンと箱体用防水パッキンとが貫通孔を介して接続されているので、上記と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムの構成図。
【図2】同セキュリティシステムの送信機とタグリーダの構成図。
【図3】(a)は同セキュリティシステムの送信機を斜め上方から見た外観図、(b)は同送信機を斜め下方から見た外観図。
【図4】(a)は同送信機の分解斜視図、(b)は(a)におけるA部分での箱体用防水パッキンの斜視図、(c)は同送信機の蓋の裏面を斜め上方から見た外観図。
【図5】(a)は同送信機の蓋の表面の平面図、(b)は同送信機の蓋の裏面の平面図、(c)は(a)におけるB−B線断面図。
【図6】(a)は本発明の第2の実施形態に係るセキュリティシステムの送信機の蓋を斜め上方から見た外観図、(b)は(a)におけるC部分での蓋用防水パッキンと箱体用防水パッキンの斜視図、(c)は(a)におけるD部分での蓋用防水パッキンと箱体用防水パッキンの斜視図。
【図7】(a)は同送信機の蓋の表面の平面図、(b)は同送信機の蓋の裏面の平面図、(c)は(a)におけるE−E線断面図、(d)は(a)におけるF−F線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムの送信機について図1乃至図5を参照して説明する。図1に示すように、セキュリティシステム1は、ユーザに所持されIDデータを送信するタグと呼ばれる送信機2と、送信機2から送信されたIDデータを読み取るタグリーダ3と、タグリーダ3にて判定されたデータを受信するコントローラ41と、コントローラ41によって開閉される電気錠42とを備えている。コントローラ41はイントラネット等を介してコンピュータ43と接続されている。電気錠42は許可されたユーザのみが入室できる部屋の入口扉に設置され、タグリーダ3は入口扉付近に設置される。タグリーダ3は、IDデータが認証されたデータであるか否かの判定結果をコントローラ41に送信する。コントローラ41は、判定結果がOKの場合には電気錠42を開き、NGの場合には電気錠42を施錠された状態に保持する。コンピュータ43は入室が制限された部屋の施錠を管理する。
【0012】
図2に示すように、送信機2は、IDデータを記憶する記憶部21と、IDデータをタグリーダ3に送信する通信部22と、記憶部21や通信部22の動作を制御する制御部23と、各部に電源を供給する電池25と、ユーザにより操作され通信部22からIDデータを送信するための送信釦26とを有している。通信部22は、LF通信を行なうLF帯送受信部22aと小電力無線信号を送信する小電力送信ASIC22bを有している。タグリーダ3は、LF通信を行なうLF帯送受信部31と、小電力無線信号を受信する小電力受信部32と、これらを制御する制御部33とを有する。
【0013】
送信機2とタグリーダ3の間の通信は、LF通信帯と特定小電力無線とで行なわれる。送信機2がタグリーダ3から約1.5m以内に入ると、送信機2は、タグリーダ3のLF帯送受信部31からのLF起動信号をLF帯送受信部22aで受信し起動する。起動した送信機2の制御部23は、IDデータを小電力送信ASIC22bからタグリーダ3へ送信する。タグリーダ3は、IDデータを小電力受信部32によって受信し、IDデータが認証されたデータであるか否かを判定し、その判定結果をコントローラ41へ送信する。このようにしてユーザがタグリーダ3に近づくだけで自動認証が行なわれ、電気錠42の開閉が行なわれる。また、ユーザが送信釦26を押すと、制御部23がIDデータを小電力送信ASIC22bから送信し、手動認証が行なわれる。また、送信機2をタグリーダ3に近づけると、送信機2のLF帯送受信部22aとタグリーダ3のLF帯送受信部31はLF双方向通信を行なってパッシブ認証が行なわれる。
【0014】
図3に示すように、送信機2は、上述した通信部22等の電子回路を含む電子部品を収容する箱体51と、これを覆う蓋52とから成る直方体形状の筐体5と、蓋52の表面に取り付けられる電池を覆うように該表面に着脱可能に固定される前面カバー6とを備え、これらは樹脂成型品である。前面カバー6は、筐体5にネジ8により固定される。箱体51の裏面には送信釦26が設けられている。
【0015】
図4及び図5に示すように、箱体51は、電子部品24が実装された基板27を収納している。箱体51と蓋52の間には、防水性を確保するための箱体用防水パッキン53が設けられている。箱体用防水パッキン53は、樹脂製であって二色成型やインサート成型等によって、図4(c)に示されるように、蓋52の裏面にその縁近傍の全周に亘って嵌合保持されている。この嵌合保持の構成として、蓋52の裏面には、図5(c)に示されるように、箱体用防水パッキン53を嵌合する溝55が設けられ、溝55には貫通孔54が設けられている。箱体用防水パッキン53は、図4(b)及び図5(c)に示されるように、貫通孔54に嵌挿されて蓋52の表面側に突出し蓋52を係止する抜け止め部56を有している。こうして、箱体用防水パッキン53は、蓋52に嵌合保持されると共に、抜け止め部56によって蓋52に係止される。
【0016】
蓋52は、貫通穴72を貫通し箱体51の内底面の雌ネジ71に締め付けられるネジ7によって箱体51に固定される。蓋52は、その表面に電池25を固定するための電池ボックス57を有している。前面カバー6は、その係止片6aを蓋52の開口部52aに係止させると共に、ネジ8を前面カバー6の貫通穴82及び蓋52の貫通穴83に貫通させ箱体51内底面の雌ネジ81に締め付けることにより蓋52に固定される。電池25は蓋52から前面カバー6を外すだけで交換することができるようになっている。
【0017】
上記のように構成された本実施形態の送信機2においては、箱体用防水パッキン53が蓋52に抜け止め状態で嵌合保持されているので、箱体用防水パッキン53の硬度を防水性の確保のために小さくしたとしても、箱体用防水パッキン53は蓋52から外れ難い。これにより組立工程時の作業性は良好となる。
【0018】
なお、箱体用防水パッキン53が、抜け止め部56を有していなくて、貫通孔54へ嵌挿される部分を有しているだけでも、嵌合保持により、上記作用効果が得られる。
【0019】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るセキュリティシステムの送信機について図6及び図7を参照して説明する。本実施形態に係る送信機2は、第1の実施形態の構成に加えて蓋52と前面カバー6との間の防水性を確保するための蓋用防水パッキン91を備えている。
【0020】
蓋用防水パッキン91は、蓋52の表面の縁近傍全周に亘って設けられ、蓋52の裏面側の箱体用防水パッキン53と一部で連結されて一体構成とされている。すなわち、蓋52は両パッキン53、91を連結するための貫通孔54を有し、蓋52の表面に蓋用防水パッキン91を嵌合する溝92を有している。蓋用防水パッキン91と箱体用防水パッキン53は、二色成型やインサート成型等によって成型され、貫通孔54を介して連結され、蓋52に保持されている。
【0021】
ここに、蓋用防水パッキン91と箱体用防水パッキン53は、蓋52を挟んで表裏同位置にあるのが望ましいが、前面カバー6の形態等によっては、同位置にない場合がある。図6(a)のC部分のように両パッキン91、53が同位置にある場合、両パッキン91、53は、図6(b)及び図7(c)に示されるように、貫通孔54を介して直接接続される。他方、図6(a)のD部分のように、両パッキン91、53が同位置になく、ずれている場合は、図6(c)及び図7(d)に示されるように、両パッキン91、53のいずれか一方が配設されている箇所に貫通孔54は設けられ、パッキン91、53の他方は、貫通孔54の位置まで延長して形成される。
【0022】
上記のように構成された本実施形態の送信機2においては、蓋用防水パッキン91と箱体用防水パッキン53とが貫通孔54を介して接続されているので、両パッキン91、53の硬度を防水性の確保のために小さくしたとしても、両パッキン91、53が蓋52から外れ難い。これにより組立工程時の作業性が良好となり、また、電池25交換時の前面カバー6の開閉及び電池交換が行ない易くなる。
【0023】
また、蓋用防水パッキン91と箱体用防水パッキン53とを上述のように貫通孔54
を介して接続せずに、それぞれを第1の実施形態と同様に、抜け止め部56によって蓋52に嵌合保持されるようにしてもよい。
【0024】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、溝55、92は設けなくても構わない。
【符号の説明】
【0025】
1 セキュリティシステム
2 送信機
24 電子部品
27 基板
42 電気錠
5 筐体
51 箱体
52 蓋
53 箱体用防水パッキン
54 貫通孔
6 前面カバー
91 蓋用防水パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IDデータの送受信を行い、該IDデータに基づいて電気錠の開閉を行うセキュリティシステムの送信機において、
前記IDデータを予め記憶し、該IDデータを送信する電子回路を含む電子部品と、
前記電子部品が実装された基板と、
前記基板を収納する箱体、及び該箱体を覆う蓋を有する筐体と、
前記箱体と蓋との間の防水性を確保するための箱体用防水パッキンと、を備え、
前記蓋は、該蓋内に前記防水パッキンが保持されると共に、この防水パッキンが配設されている箇所に貫通孔を有し、
前記防水パッキンは、前記貫通孔に嵌挿されて該蓋へ保持されていることを特徴とするセキュリティシステムの送信機。
【請求項2】
前記蓋に固定される前面カバーと、
前記蓋と前面カバーとの間の防水性を確保するための蓋用防水パッキンと、を更に備え、
前記箱体用防水パッキンと蓋用防水パッキンは、前記貫通孔で接続されていることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティシステムの送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−9458(P2011−9458A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151339(P2009−151339)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】