説明

セキュリティ装置

【課題】 屋内に設置したドップラーセンサにより屋外の状況を監視するに際し、窓ガラス面等に付着し、下降移動する雨滴等による誤動作を防止し、侵入者の接近を精度良く検出することができるセキュリティ装置を提供すること
【解決手段】 対象物の接近・離反を判定可能なマイクロ波ドップラーセンサ10を内蔵するセキュリティ装置20を、屋内の天井1に取り付ける。ドップラーセンサの監視方向(マイクロ波の出力信号の放射方向)が、窓ガラス2に対して上部から所定の角度(伏角θ=約45°)になるように設定する。侵入者が接近した場合には、ドップラーセンサの出力に基づく接近・離反判定は、「接近」となるが、窓ガラスに付着した雨滴が下降移動すると、ドップラーセンサの出力に基づく接近・離反判定は、「離反」となる。よって、雨滴による誤動作をすることなく侵入者の接近を検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ装置に関するもので、より具体的には、ドップラーセンサの出力に基づいて侵入者の有無等を検出するセキュリティ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動物体を検知するセンサの1つとしてドップラーセンサがある。特にマイクロ波を用いたドップラーセンサはマイクロ波が金属以外の物質を透過できることから、設置場所の制限が少なく、家屋内から家屋外の移動物体の有無等の状況を感知することができるので、セキュリティセンサとして適している。係る使用状態を考えたとき、侵入者は窓から侵入する場合が多く、ドップラーセンサは窓に向けて屋外からの侵入者の接近を検出するように配置される。このドップラーセンサを応用した人体検知装置としては、例えば特許文献1等に開示されたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−283347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した屋内に設置したマイクロ波を用いたドップラーセンサにて屋外の状況を検知するようにしたセンサシステムでは、以下に示す問題を有している。すなわち、例えば、雨が降っている場合を想定すると、雨滴が建物の外壁や窓ガラスに付着し、その付着した雨滴は自重により窓ガラス等の表面に沿って下降移動する。ドップラーセンサは、移動する物体を検出するため、係る下降移動する雨滴も検出されてしまう。従って、雨滴の移動を検出すると、それを侵入者と誤認識し、警報を発してしまうおそれがある。また、ドップラーセンサの監視エリア内を移動する子犬その他の小動物や、風により揺れる樹木なども移動物体有りと認識し、侵入者有りと誤認識するおそれがある。
【0005】
本発明は、屋内に設置したドップラーセンサにより屋外の状況を監視するに際し、窓ガラス面等に付着し、下降移動する雨滴等による誤動作を防止し、侵入者の接近を精度良く検出することができるセキュリティ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係るセキュリティ装置は、所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記送信アンテナから出力された前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記反射波と前記出力信号を周波数混合する2つのミキサと、前記2つのミキサの混合出力を所定の位相差とする位相変更手段と、からなるドップラーセンサと、前記複数のミキサの出力を基に対象物の接近又は離反を判定する接近離反判定手段と、前記接近離反判定手段の出力に基づいて侵入者の接近を検出する動体検出手段と、
を備え、前記送信アンテナから出力される出力信号が、斜め下方に向けて出力されるように前記送信アンテナが配置されるように構成した。
【0007】
また、別の解決手段としては、所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記送信アンテナから出力された前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記反射波と前記出力信号を周波数混合する2つのミキサと、前記2つのミキサの混合出力を所定の位相差とする位相変更手段と、からなるドップラーセンサと、前記複数のミキサの出力を基に対象物の接近又は離反を判定する接近離反判定手段と、前記接近離反判定手段の出力に基づいて侵入者の接近を検出する動体検出手段と、を備え、前記送信アンテナから出力される出力信号と窓ガラス或いは建物の壁面とのなす角が、上側が鋭角となるようになるように前記送信アンテナが配置されるように構成した。
【0008】
本発明では、ドップラーセンサの出力信号に基づく接近離反判定は、侵入者の接近は「接近」となる。一方、ガラス窓に付着した雨滴等が下降移動した場合、当該雨滴はドップラーセンサから離れていくので、接近離反判定は「離反」となる。よって、雨滴の移動と侵入者の接近の場合で判定結果が異なるので、屋内に設置したドップラーセンサにより屋外の状況を監視するに際し、両者を弁別し、窓ガラス面等に付着し、下降移動する雨滴等による誤動作が防止される。
【0009】
所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記送信アンテナから出力された前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記反射波と前記出力信号を周波数混合する2つのミキサと、前記2つのミキサの混合出力を所定の位相差とする位相変更手段と、からなるドップラーセンサを2個設け、前記2つのドップラーセンサのそれぞれの複数のミキサの出力を基に対象物の接近又は離反を判定する2つの接近離反判定手段と、前記2つの接近離反判定手段の出力に基づいて侵入者の接近を検出する動体検出手段と、を備え、一方のドップラーセンサの送信アンテナから出力される出力信号が斜め下方に向けて出力され、他方のドップラーセンサの送信アンテナから出力される出力信号が斜め上方に向けて出力されるようにそれぞれの送信アンテナが配置されるようにするとよい。このようにすると、両ドップラーセンサの出力が接近である場合に侵入者が接近したと判定することができ、より精度良く判定することができる。
【0010】
また、前記送信アンテナから斜め方向に出力される出力信号の水平方向に対する放射角度或いは前記なす角は、45度とするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ドップラーセンサの出力信号に基づく接近離反判定は、侵入者の接近は「接近」となるが雨滴の下降移動は「離反」となる。よって、屋内に設置したドップラーセンサにより屋外の状況を監視するに際し、窓ガラス面等に付着し、下降移動する雨滴等による誤動作を防止し、侵入者の接近を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1(a)に示すように、対象物の接近・離反を判定可能なマイクロ波ドップラーセンサ10を内蔵するセキュリティ装置20を、屋内の天井1に取り付ける。このとき、マイクロ波ドップラーセンサ10の監視方向(マイクロ波の出力信号の放射方向)が、窓ガラス2に対して上部から所定の角度をとるようにした。具体的には、伏角θが、約45°(±10°以内に設置するのが好ましい)になるように設定した。これにより、マイクロ波ドップラーセンサ10から出力された出力信号は、斜め下方に進むことになる。さらに、マイクロ波ドップラーセンサ10の指向性センターが、窓から1m程度の位置にいる侵入者3の胴体を狙える位置にあるように設定した。
【0013】
セキュリティ装置20の取り付け手段は、各種の方法が採れる。一例としては、図1(a)に示すように屋内の天井1に取り付け治具4を介して設置することもできるし、図1(b)に示すように、家屋の内壁7(或いは窓枠)に対して取り付け部材5を介してセキュリティ装置20を設置することもできる。
【0014】
図2は、セキュリティ装置20の内部構造を示している。本実施の形態では、2出力のマイクロ波ドップラーセンサ10と、マイクロ波ドップラーセンサ10から出力される位相差が90度異なる検波出力(ドップラー信号)2つの検波信号IF1(アナログ),IF2(アナログ)に基づいて侵入者の接近の有無を判定する信号処理回路とを備えている。図1では、マイクロ波ドップラーセンサ10と信号処理回路が1つの筐体内に実装された例を示したが、信号処理回路の一部または全部をマイクロ波ドップラーセンサ10が実装される筐体とは別に形成しても良い。
【0015】
信号処理回路は、2つの検波信号の出力端子に接続され、直流分をカットするコンデンサ21a,21bと、そのコンデンサ21a,21bの後段に接続されたアンプ22a,22bと、そのアンプ22a,22bで増幅された信号を二値化するコンパレータ23a,23bと、2値化されたIF1(ロジック)とIF2(ロジック)の両信号を用いて検出されたドップラー信号の1周期分が接近か離反かを判定する接近離反判定部24と、接近離反判定部からの出力により侵入者か否かを判定する動体検出部25と、を備えている。
【0016】
2出力のマイクロ波ドップラーセンサ10は、IF1とIF2の進み/遅れ関係から接近/離反の相対方向弁別を行うために用いている。図3は、そのマイクロ波ドップラーセンサ10の具体的な構成を示している。
【0017】
図に示すように、マイクロ波ドップラーセンサ10では、所定周波数の出力信号を生成する局部発振器11の出力が第1ミキサ15並びに送信アンテナ13に接続されている。また、第1ミキサ15には、受信アンテナ14にて受信した受信信号も入力される。受信アンテナ14と第1ミキサ15の間には第1位相器17を挿入配置し、当該受信信号をその第1位相器17を経由して第1ミキサ15に入力するようにしている。そして、第1ミキサ15において、第1位相器17にて位相が変えられた受信信号と、局部発振出力(送信信号)とが周波数混合される。第1位相器17は、位相を45度遅延させるものであり、具体的には、λ/8の線路長を持つパターンにより構成する。
【0018】
さらに、第2位相器18並びに第2ミキサ16を設け、局部発振器11の出力を第2位相器18を介して第2ミキサ16に与えるとともに、受信アンテナ14で受信した受信信号を第2ミキサ16に与えるようにしている。これにより、第2ミキサ16では、局部発振出力(送信信号)を第2位相器18にて位相が変えられた信号と、受信信号とが周波数混合される。この第2位相器18も、位相を45度遅延させるものであり、具体的には、λ/8の線路長を持つパターンにより構成する。このように構成することにより第1ミキサ15、第2ミキサ16間の出力となるドップラー信号IF1(アナログ)とIF2(アナログ)の出力の位相差は90度となる。
【0019】
このアナログのドップラー信号IF1,IF2は、コンデンサ21a,21b,アンプ22a,22b並びにコンパレータ23a,23bを経て、2値化されたパルス信号となる。接近離反判定部24は、ドップラー信号の1周波毎に対象物の接近離反を判定する。具体的な接近・離反の判定アルゴリズムは、以下の通りである。
【0020】
図4に示すように、IF1(ロジック)が立ち上がるときのIF2(ロジック)の状態が、HであるかLであるかにより、対象物がマイクロ波ドップラーセンサ10に対して接近しているのか離反しているのかを判定することができる。すなわち、対象物がドップラーセンサに接近しているときIF1に比べてIF2の出力が90度遅れるようになり、対象物がドップラーセンサから離反しているときにはIF1に比べてIF2の出力が90度進むように位相器を構成した場合、図に示すように、対象物がドップラーセンサに接近しているときはIF1(ロジック)の立ち上がり時にIF2(ロジック)はHを示し、離反しているときはLを示すこととなる。このことを利用し、接近離反判定部24はIF1(ロジック)の立ち上がり時に対象物の接近離反を判定する。そして、この判定結果は、次段の動体検出部25に与えられる。
【0021】
なお、本実施の形態では、マイクロ波ドップラーセンサ10の2つの出力を基に接近・離反を判定するに際し、コンパレータを用いて二値化した信号を用いたが、本発明は必ずしも二値化する必要はない。要は2つの信号の位相の進み遅れを判定できれば他の各種の方法を用いても良いのはもちろんである。
【0022】
次に、動体検出部25の機能を説明する。マイクロ波ドップラーセンサ10から出力された出力信号が窓ガラス2に付着した雨滴で反射し戻ってきた場合を想定する。窓ガラス2に付着した雨滴6が滴り落ちると、雨滴6は下方に移動することになり、その移動に伴う検波信号がマイクロ波ドップラーセンサ10から出力される。このとき、マイクロ波ドップラーセンサ10から出力される出力信号は上方から斜め下方に向けて出力しているため、下降移動する雨滴はマイクロ波ドップラーセンサ10から離反する方向の移動となる。よって、窓ガラス2に沿って落下移動する雨滴が存在する場合、接近離反判定部24からは、離反する移動物体があるという判定結果が出される。これに対し、侵入者3が家屋に近づいてきた場合は接近してきた場合は、マイクロ波ドップラーセンサ10からの検波信号に基づく接近離反判定部24の判定結果は、接近となる。そこで、動体検出部25は、接近判定があったときのみ異常判定を行えばよく、雨滴による誤動作を防止することができる。
【0023】
図5は、動体検出部25が侵入者判定を行うためのフローチャートを示している。図5に示すように、処理開始後、Nビットシフトレジスタ(過去N個分の0(離反パルス),1(接近パルス)データを記憶するもの)を初期化する(S20)。具体的には、初期化は、図6に示すように、Nビットレジスタに対し、0と1の交番データを充填する。このNビットシフトレジスタは、図示省略するが、セキュリティ装置20内にハード的あるいはソフト的に実装されている。
【0024】
次いで、所定時間t秒が経過したか否かを判断し(S30)、t秒経過したならば、Nビットシフトレジスタの定期処理を行なう(S31)。この定期処理は、具体的にはNビットシフトレジスタに0と1を1つずつ追加し、古いビットから2つを破棄する(図7参照)。
【0025】
一方、t秒経過しない場合(S30でNo)、あるいは処理ステップS31を実行後に、IF1(ロジック)の立ち上がりエッジがあったか否かを判断し(S32)、立ち上がりエッジが無い場合には、処理ステップS30に戻り、上述した処理を繰り返す。これにより、IF1の立ち上がりが検出されるまでの間、t秒間隔でNビットシフトレジスタの定期処理が実行されるが、0と1を追加し、古いビットを2つ分破棄するため、Nビットシフトレジスタに格納されたデータは、初期化したときの0と1の交番データと同じ値を採る。
【0026】
分岐判断のS32においてIF1(ロジック)の立ち上がりエッジを検出したらIF2(ロジック)のレベルがHかLのいずれであるかを確認する(S33)。そして、IF2(ロジック)のレベルがHであれば2値化された信号が接近を示すドップラー信号(接近パルス)と判定され、Nビットシフトレジスタの最新ビット側に1を入れて最古ビットを破棄する(S34)。また、IF2(ロジック)のレベルがLであれば離反を示すドップラー信号(離反パルス)として判定されNビットシフトレジスタの最新ビット側に0を入れて最古ビットを破棄する(S35)。
【0027】
上述した処理ステップS30〜35は、接近パルスと離反パルスによりNビットシフトレジスタを更新し、所定時間tを越えてもIF1(ロジック)の立ち上がりエッジを検出できない場合は信号が途絶えたものとして動体検出が行われていない状態すなわち0と1で更新するようにしたものである。このようにすれば何らかの不要信号による長時間をかけて1の累積による誤検知を防ぐことができる。
【0028】
これらの処理により動体検出部25では、接近パルスを示す1の累計が所定値Mを越えたか否かを判断し(S40)、越えた場合に侵入者あり(検出)と判断し(S41)、越えない場合には侵入者なし(非検出)と判断する(S42)。すなわち、累計が所定値以下であるということは、Nビットシフトレジスタは動体を検出していないとき(0と1の数が同等)、又は動体の離反が連続していることを示す。これに対し、累計が所定値以上になるときは動体の接近が連続して発生し増加していることを示す。そこで、1の累計が一定のマージンを考慮して設定されたMを越えたならば、侵入者が接近していると判断できる。これに対し、雨滴の場合には、離反していくため、0が追加され1の累計が小さくなるため、非検出となる。さらに、例えばセンサノイズ等のランダムな信号の場合、接近と離反を繰り返すため、1の累計は一定以上には増えず、Mの値を超えないので、非検出となる(誤検出をしない)。
【0029】
尚、Nビットシフトレジスタのビット数Nは、20から100程度で設定するとよく、累計値Mは0.7×N〜0.9×N程度とするとよい。これは、IF1(ロジック)の立ち上がりを検出するということはドップラー信号が1波長発生したことを示し、このときの動体の移動距離はマイクロ波ドップラーセンサ10から送出される信号の1波分の半分(往復)である。具体的には24GHzの信号を送出した場合6mm程度であり、Nを20とした場合12cm、100とした場合には60cmになる。Nを少なくしてMを小さくすればより感度良く接近する動体を検出することができるが、草等の動体も検出する可能性がありN,Mを適宜設定することで最適な感度を設定することができる。もちろん、接近離反判定部24の出力に基づく侵入者の検知アルゴリズムは、上述したNビットレジスタを用いたものに限ることはなく、各種の判定アルゴリズムを利用することができる。
【0030】
動体検出部25が侵入者有り(接近)と判定したならば、所定の警報装置を動作させ、警報出力をする。具体的には、警報音を発生したり、警報灯を点灯させたりすることで、侵入者を威嚇するとともに、周囲にいる人に侵入者の存在を知らせる。また、所定の通信手段を介して遠隔地にいる監視装置に通知したり、メール等により外部にいる居住者に通知したりすることができる。係る機能を動体検出部に実装してもよいし、別部材として実装することもできる。
【0031】
図8(a)に示すように使用するアンテナの指向性を水平方向に扁平にするとよい。係る構成を採ると、図8(b)に示すように監視窓の範囲を広くすることができたり、敷地外の人を誤検知しない等の効果が得られる。
【0032】
図9は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態では、窓ガラス2の上方と下方にそれぞれマイクロ波ドップラーセンサ10a,10bを設けるようにした。上方のマイクロ波ドップラーセンサ10aは、第1の実施形態のドップラーセンサと同様な構成・条件で設置し、信号処理の方法も同じ態様をとっている。また、下方のマイクロ波ドップラーセンサ10bは、第1の実施形態と同様な構成を採り、送信アンテナから出力される出力信号が斜め上方(例えば俯角を45度)に向けて出力されるように設置する。なお、本実施の形態では、上方のマイクロ波ドップラーセンサ10aは、天井1の裏に設置し、下方のマイクロ波ドップラーセンサ10bは、床8の下方に設置した。これにより、侵入者等がセンサを設置していることがわからないようにでき、また、居住者にとってもセンサが室内に露出していないのでじゃまにならず、見た目も良い。
【0033】
さらに、図示省略するが、2つのマイクロ波ドップラーセンサ10a,10bにそれぞれ接続された接近離反判定部の各出力を1つの動体検出部に与え、その動体検出部にて両者の接近離反判定部の判定結果に基づいて侵入判定を行うように構成している。各接近離反判定部からの出力は、配線して動体検出部に接続してもよいし、適宜無線通信を用いたり家庭内LANや電力線重畳などの既存の方法により配線してもよい。
【0034】
動体検出部は、以下のルールに従って判定する。すなわち、侵入者が接近(離反)してきた場合は、両マイクロ波ドップラーセンサ10a,10bの出力は接近(離反)を示す。また、窓ガラスに沿って雨滴が下降移動した場合、上方のマイクロ波ドップラーセンサ10aからは離反を検出するが、下方のマイクロ波ドップラーセンサ10bからは逆に接近を検出することになる。さらに、地上を移動する小動物の場合、上方のマイクロ波ドップラーセンサ10aは検出できるものの、下方のマイクロ波ドップラーセンサ10bは斜め上方に向けてマイクロ波の出力信号が放射されるため検出できない。逆に風による木の動きの場合には、下方のマイクロ波ドップラーセンサ10bのみが検出できる。上記の検出態様をまとめると、下記表のようになる。なお、下記表において、センサ1は上方に設置したマイクロ波ドップラーセンサ10aであり、センサ2が下方に設置したマイクロ波ドップラーセンサ10bである。
【表1】

【0035】
そこで、動体検出部は、下記表に従い、両マイクロ波ドップラーセンサ10a,10bの出力信号に基づく判定結果が共に接近の場合に、侵入者が接近と判断するようにした。なお、この接近の判断は、第1の実施の形態のようにそれぞれの接近離反判定部の出力に基づいて更新するNビットレジスタを用いて行なうようにしても良いし、Nビットレジスタを用いることなく1回の判定に基づいて行なうようにしても良い。
【0036】
さらに、本実施の形態では、ドップラーセンサを2つに増やすことで、雨滴だけでなく木による影響や犬などの小動物による影響(誤動作)を軽減することができる。さらにまた、本実施の形態では、対象物の内容を判定することができ、警備状態時に侵入者警報を行えるだけでなく侵入者がうろうろしている場合(接近・離反の繰り返し)に予備警報を発することが可能となる。さらには、非警備時においては上方のドップラーセンサが離反を示し下方のマイクロ波ドップラーセンサ10bが接近を示すことで雨滴を検出することができ、雨の報知を行なうことが可能となる。
【0037】
また、上述した各実施の形態では、ドップラーセンサからの出力信号の放射方向を水平方向に対し所定角度に傾斜するようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、例えば図10に示すように、窓ガラス2が斜めに設置されているような場合には、マイクロ波ドップラーセンサ10からの出力信号の放射方向が水平方向となっていても、その出力信号と窓ガラスとのなす角θ1が、上側が鋭角となるようになるように設置すればよい。係る構成をとると、雨滴の下降移動は離反と判断でき、侵入者の接近を検出することができる。もちろん、窓ガラスが斜めに設置されている場合でも、各実施の形態のようにドップラーセンサからの出力信号の放射方向が斜めになるように設置しても良い。
【0038】
なお、上述した各実施の形態ではマイクロ波ドップラーセンサを用いているが、ミリ波によるものでも良く、要は、電磁波によるドップラーセンサであれば実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施の形態の実装状態を示す図である。
【図2】第1の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図3】ドップラーセンサの内部構造を示す図である。
【図4】接近離反判定部の動作原理を説明する図である。
【図5】動体検出部の機能を示すフローチャートである。
【図6】動体検出部の作用を説明する図である。
【図7】動体検出部の作用を説明する図である。
【図8】変形例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態の実装状態を示す図である。
【図10】変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ドップラーセンサ
11 局部発振器
13 送信アンテナ
14 受信アンテナ
15 第1ミキサ
16 第2ミキサ
17 第1位相器
18 第2位相器
20 セキュリティ装置
21a,21b コンデンサ
22a,22b アンプ
23a,23b コンパレータ
24 接近離反判定部
25 動体検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記送信アンテナから出力された前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記反射波と前記出力信号を周波数混合する2つのミキサと、前記2つのミキサの混合出力を所定の位相差とする位相変更手段と、からなるドップラーセンサと、
前記複数のミキサの出力を基に対象物の接近又は離反を判定する接近離反判定手段と、
前記接近離反判定手段の出力に基づいて侵入者の接近を検出する動体検出手段と、
を備え、
前記送信アンテナから出力される出力信号が、斜め下方に向けて出力されるように前記送信アンテナが配置されることを特徴とするセキュリティ装置。
【請求項2】
所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記送信アンテナから出力された前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記反射波と前記出力信号を周波数混合する2つのミキサと、前記2つのミキサの混合出力を所定の位相差とする位相変更手段と、からなるドップラーセンサと、
前記複数のミキサの出力を基に対象物の接近又は離反を判定する接近離反判定手段と、
前記接近離反判定手段の出力に基づいて侵入者の接近を検出する動体検出手段と、
を備え、
前記送信アンテナから出力される出力信号と、窓ガラス或いは建物の壁面とのなす角が、上側が鋭角となるようになるように前記送信アンテナが配置されることを特徴とするセキュリティ装置。
【請求項3】
所定周波数の出力信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段で生成された前記出力信号を出力する送信アンテナと、前記送信アンテナから出力された前記出力信号の反射波を受信する受信アンテナと、前記反射波と前記出力信号を周波数混合する2つのミキサと、前記2つのミキサの混合出力を所定の位相差とする位相変更手段と、からなるドップラーセンサを2個設け、
前記2つのドップラーセンサのそれぞれの複数のミキサの出力を基に対象物の接近又は離反を判定する2つの接近離反判定手段と、
前記2つの接近離反判定手段の出力に基づいて侵入者の接近を検出する動体検出手段と、
を備え、
一方のドップラーセンサの送信アンテナから出力される出力信号が斜め下方に向けて出力され、他方のドップラーセンサの送信アンテナから出力される出力信号が斜め上方に向けて出力されるようにそれぞれの送信アンテナが配置されることを特徴とするセキュリティ装置。
【請求項4】
前記送信アンテナから斜め方向に出力される出力信号の水平方向に対する放射角度或いは前記なす角は、45度とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−179167(P2007−179167A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374931(P2005−374931)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(391001848)ユピテル工業株式会社 (238)
【Fターム(参考)】